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<論文>公式の証明に関する意識調査とそれに基づく三角関数の加法定理の証明の考察

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Academic year: 2021

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(1)公式の証明に関する意識調査とそれに基づく三⾓関数の加法定理の証明の考察 教育デザインコース 数学領域. 下地 啓太 教育学研究科. 茨⽊ 貴徳 1 本研究の問題意識と⽬的. 2-2 調査の⽅法と意図. ⾼等学校の数学の授業では,授業時間数の制約や. 本研究では,⼤学 1 年⽣を対象に,公式の証明の学. ⼤学受験の影響により,問題演習やその解説に多く. 習に関する意識調査と三⾓関数の加法定理の証明を題材. の時間を割かれる傾向にある.そのため,数学の公. とした理解度調査を⾏った.. 式については紹介程度にとどまり,しっかりとその. 三⾓関数の加法定理の公式の証明は,ほとんどの教科. 証明を授業の中で扱うことは多くないと考えられる.. 書にその証明が記載されており,他の三⾓関数の主要な. し か し,Polya(1954) は, 公 式 の 証 明 を 学 ぶ こ と. 公式を導きだすための重要な公式である.しかし,岩. は「事実に根拠を与え,論理的体型を⽀えるもので. ⽥・服部(2008),下地・茨⽊(2015)の先⾏研究では,. ある」と有⽤性を指摘している.. ほとんどの⽣徒が,三⾓関数の加法定理の証明を⾃⼒で. ⼀⽅で,公式の証明は⽣徒にとってわかりにくく,. 解くことは困難であることを⽰した.そこで本研究では,. 興味を持ちにくい.よって,教師はどの程度授業で. 下地・茨⽊(2015)の研究を継続し,さらに⽣徒の公. 扱うか迷うことがある.しかし,公式の証明から学. 式の証明に対する意識と関連して調査を⾏うために,題. ぶべきことは多く,授業で公式の証明に触れる機会. 材として三⾓関数の加法定理の証明を扱うことにした.. をもつことは有⽤である(⼩久保 2015).また,⼩. また,⾼校の学習を終了し,まだ⼤学の授業での新たな. 久保(2014)は授業中に公式の証明に触れたいと思っ. 知識を得ていない⼤学 1 年⽣を対象に調査を⾏うこと. ている教師は多いことを指摘している.このように,. によって,⾼校での学習がどの程度,学⽣に定着してい. 多くの教師は公式の証明の有⽤性について認識をし. るかを測る.. ていても,どのように授業で取り扱い,どの程度時. この 2 つの調査により,(1)学⽣は公式の証明の学. 間をかけてよいものか疑問に思っていることがわか. 習に対してどのような意識を持っているのか(2)学⽣. る. ま た, 岩 ⽥・ 服 部(2008) は 問 題 解 決 型 の 学. の公式の証明の学習の意識と理解度の関係について(3). 習の調査研究を三⾓関数の加法定理の証明を題材に. 学⽣の公式の証明の⾃⼒解決を妨げている点はなにか,. ⾏っている.このように,公式の証明は,⽣徒が⾃. この 3 つの観点に着⽬して考察を⾏う.. ⼒で問題を解決する能⼒を養う良い教材になると考 える. 以上のことを踏まえ,本研究では,⼤学 1 年⽣を 対象にした調査を⾏い,⾼等学校の数学の授業にお ける公式の証明の指導の可能性について考察するこ とを⽬的とする.. 2-3 公式の証明の学習に関する意識調査の結果と考察 対象の学⽣に以下の①〜④のアンケート調査を⾏っ た. ①⾼校時代に数学Ⅲを履修していましたか. (はい / いいえ) ②公式の証明を学ぶことは必要だと思いますか.. 2 調査の概要と考察. 1. 思う. 2-1 調査の対象. 2. 少し思う. 神奈川県内の⼤学 1 年⽣(147 名)を対象に 2016 年 4 ⽉に調査を⾏った.. 3. どちらとも思わない 4. あまり思わない 5. 全く思わない 教育デザイン研究 第8号(2017年1月) 125.

(2) 公式の証明に関する意識調査とそれに基づく三⾓関数の加法定理の証明の考察. ③②の回答の理由を記述してください.. 間には公式の証明の学習に対する意識の差があるとわ. ④⾼校の数学の授業で公式の証明はどの程度扱われて. かる.. いましたか.. ⼀⽅,「3.どちらとも思わない」,「4.あまり思わな. 1. 公式が出るたびに扱われていた. い」,「5.全く思わない」と回答した学⽣のコメントを. 2. 重要な公式だけ扱われていた. 参照すると,「⽇常⽣活に必要ないから」,「最終的に公. 3. たまに扱われていた. 式は覚えて使うから」,「センターはマーク式だから」等. 4. 全く扱われていなかった. のコメントが多く⾒られた.この回答をした多くの学⽣. ①のアンケート調査より,数学Ⅲを履修していない 学⽣が 105 ⼈(⽂系),⾼校で数学Ⅲを履修した学⽣が. は,数学は受験を突破するための道具であり,⽇常⽣活 では役に⽴たないと考えていることがわかる.. 42 ⼈(理系)という結果がでた.なお,①の回答の結. 次に②のアンケート調査を⽂系と理系に分けて考察. 果は学⽣が⽂系であるか理系であるかの判断材料として. をする.表 1-1 で⽂系と理系を分けたデータにおいて,. ⽤いた.. カイ⼆乗検定の結果 x(4)= 6.664 , ns であり,公式の. ②のアンケート調査の集計結果は表 1-1 のようになっ た.. ないことが⽰された. 表 1-1 アンケート調査②の集計結果. 1.思う 2.少し思う 3.どちらとも思わない 4.あまり思わない 5.全く思わない. ⼈数(⽂系:理系) 64 ⼈(39:25) 55 ⼈(43:12) 12 ⼈(10:2) 14 ⼈(11:3) 2 ⼈(2:0). 表 1-1 で⽂系と理系を合わせたデータにおいて,カ イ⼆乗検定の結果 x(4)= 106.912 , p<0.01 であり, 残差分析の結果「1.思う」「2.少し思う」が有意に 多いことが⽰された.このことから,多くの学⽣が公 式の証明を学ぶ必要性について肯定的に考えているこ とがわかる.また,「1.思う」と回答した学⽣のコ メントを参照すると,「公式がどのように成り⽴つの か知ることで,より理解が深まる」,「公式の背景を知 ることで,応⽤することができ,アイディアの源にな るから」等のコメントが多く⾒られた.このことから 「1.思う」と回答した多くの学⽣は,公式の証明の 学習が数学の理解を深める上で,重要であり,ほかの 問題を解く上でも重要だと感じていることがわかる. また,「2.少し思う」と回答した学⽣のコメントを 参照すると「公式の暗記に役⽴つから」,「たまに役に ⽴つから」等のコメントが多く⾒られた.「1.思う」 と回答した学⽣と⽐べると,公式を忘れたときのため や,暗記の補助になると考える学⽣が多く,数学の問 題を解く上でのメリットについて⾔及するコメントも 抽象的なものが多かった.このことから,「1.思う」 と回答した学⽣と「2.少し思う」と回答した学⽣の. 126. 証明を学ぶ必要性について⽂系と理系の間には,関係が この結果から学⽣の⽂系理系に関わらず,多くの学⽣ が公式の証明を学ぶ必要性について肯定的に考えている ことがわかる.したがって,⽣徒の⽂系理系に関わらず, 公式の証明を授業で取り⼊れることによって,⽣徒から ⾒て関⼼を引く授業になる. 次に④のアンケート調査を集計すると表 1-2 のよう になった. 表 1-2 アンケート調査④の集計結果 1.公式が出るたびに扱われていた 2.重要な公式だけ扱われていた 3.たまに扱われていた 4.全く扱われていなかった. ⼈数 53 ⼈ 67 ⼈ 24 ⼈ 3 ⼈. 表 1-2 のカイ⼆乗検定の結果 x(3)=67.503 , p<0.01 であり,残差分析の結果「1.公式が出るたびに扱われ ていた」および「2.重要な公式だけ扱われていた」の 回答が有意に多いことが⽰された.この結果から多くの ⾼校の数学の授業で,公式の証明が扱われていることが わかる.このことから,後述する公式の証明の理解度調 査の題材となった「三⾓関数の加法定理の証明」も多く の⾼校の数学の授業で扱われていることが予想される. 2-4 三⾓関数の公式の証明の理解度調査の結果と考察 対象の学⽣(147 名)に共通の調査問題を回答させた. また,今回の調査では共通の調査問題を回答させた後に 2 つのグループに分けて調査問題 A(直⾓三⾓形を⽤い た加法定理の証明)と調査問題 B(単位円を⽤いた加法 定理の証明)を回答させた..

(3) 共通の調査問題(147 名). 調査問題 A は二つの直角三角形を重ね合わせた図形 を用いた証明である.共通問題で A を選んだ学生にとっ ては,イメージしやすい直角三角形の図形を用いていお り,sin(α + β)=AF という式が図形から読み取りや すいので,辺 AF の長さを求めることによって証明が成 り立つという筋道が立てやすい.一方,証明に一般性が なく,また,三角形の外角の定理を用いた考え方に気付 きにくいという可能性がある. 証明問題 B(75 名) 共通の調査問題は学生が三角関数の定義を正しく認識 しているかどうかを調査する.A(直角三角形)の選択 肢は初めて正弦,余弦,正接について学習した数学Ⅰの 三角比の定義であり,学生にとって,その印象が強く残っ ていると考えられる.また B(単位円)の選択肢は数学 Ⅱで学習した三角関数の定義である.2 つの選択肢から, 学生が三角比の定義と三角関数の定義を混同しているか どうかを調査する. 調査問題 A(72 名). 調査問題 B は単位円を用いた証明である.調査問題 A よりも一般性は高いが,cos(α−β)が図形から視覚 的に読み取りづらく,証明の筋道が立てづらい.. 教育デザイン研究 第8号(2017年1月) 127.

(4) 公式の証明に関する意識調査とそれに基づく三⾓関数の加法定理の証明の考察. 教科書で多く採⽤されている加法定理の証明は調査問. 表 2-2 のカイ⼆乗検定の結果 x(2)= 0.03 ,ns であ. 題 B の単位円を⽤いた証明であるが,下地・茨⽊(2015). り,それぞれの項⽬と調査問題 A,B には関係ないこと. の先⾏研究で⾏った調査では,三⾓関数の定義として直. が⽰された.共通の調査問題では 101 ⼈(68.7%)の. ⾓三⾓形の図形を書いて回答する学⽣が多かった.その. 学⽣が三⾓関数の定義を直⾓三⾓形の図形をイメージし. 結果を踏まえ,今回の調査では,学⽣がイメージしやす. ているという結果がでた.しかし調査問題 A(直⾓三⾓. いと考えられる調査問題 A(直⾓三⾓形を⽤いた加法定. 形の図形を使った証明)と調査問題 B(単位円の図形を. 理の証明)と調査問題 B(単位円を⽤いた加法定理の証. 使った証明)のそれぞれの回答結果を⾒ると,ほとんど. 明)の理解度の違いを調査する.. 理解度の差異が⾒られず,2 つの証明には難易度の差が. 調査問題 A,調査問題 B について,以下の質問に回答さ せた.. ないということがわかる. 次に調査問題 A と調査問題 B の結果を合算し⽂系理. 上記の三⾓関数の加法定理の証明を読んで次に当 てはまるものを選択してください. 1.理解できなかった 2.理解できたが,⾃⼒では解けない(と思う) 3.理解できたし,⾃⼒でも解ける(と思う) 本研究では「証明を読む」(1)とは, 松岡(2015)の「書. 系別に集計すると表 2-3 のようになる. 表 2-3 調査問題 A,調査問題 B の⽂理別集計結果 1. 理解できなかった 2. ⾃⼒では解けない 3. ⾃⼒でも解ける. ⽂系 40 ⼈ 50 ⼈ 15 ⼈. 理系 2 ⼈ 31 ⼈ 9 ⼈. かれた証明に⽰された情報について考えること」という 定義に基づき, 「三⾓関数の加法定理の仮定,その途中の 論理展開や式変形,結論について思考すること」とする. (2). また, 「証明を理解する」. とは, 「証明を読んで,それ. らの事柄について正しいと認識すること」とする. 「1.理解できなかった」,「2.理解できたが,⾃⼒で は解けない(と思う)」と回答した学⽣にはその理由も. 表 2-3 のカイ⼆乗検定の結果 x(2)= 16.3,p<0.01 であり,それぞれの項⽬と学⽣の⽂系理系については関 係があることが⽰され,残差分析の結果,⽂系で「理解 できなかった.」という回答と,理系で「理解できたが, ⾃⼒では解けない(と思う)」の回答が有意に多いこと が⽰された.. 記述させた.また「3.理解できたし,⾃⼒でも解ける (と思う)」と回答した学⽣には今まで公式の証明につい. 調査問題 A で「1.理解できなかった」と回答した学. てどのように学習してきたか記述させた. 共通の調査問題の結果は表 2-1 のようになった. 表 2-1 共通の調査問題の集計結果 回答 A 直⾓三⾓形 B 単位円. ⼈数 101 ⼈ 46 ⼈. ⽐率の差の検定の結果,A の回答が有意(p<0.01)に ⼤きいことが⽰された.また下地・茨⽊(2015)の先 ⾏研究で⾏われた,類似した調査でも三⾓関数の定義は 直⾓三⾓形を使って回答している学⽣が⼀番多かった. このことから,学⽣にとって三⾓関数について考える ときに,直⾓三⾓形のイメージが強いことがわかる. 次に調査問題 A,調査問題 B の調査結果について表 2-2 のようになった. 表 2-2 調査問題 A,調査問題 B の集計結果 1. 理解できなかった 2. ⾃⼒では解けない 3. ⾃⼒でも解ける. 128. 調査問題 A 21 ⼈ 41 ⼈ 13 ⼈. 2-4-1 加法定理の証明の理解の妨げとなる部分の解析. 調査問題 B 21 ⼈ 39 ⼈ 12 ⼈. ⽣のうち 14 ⼈(66.7%)が「1 ⾏⽬からわからない」 「全 体的にわからなかったです」など,ほとんど全ての箇所 で理解できていなかった.調査問題 B でも 15 ⼈ (71.4%) の学⽣に同じような回答がみられた.そこでコメントを さらに参照してみると「公式を忘れたため⻭が⽴たな かった」,「公式をはっきりと覚えていなかった」という 回答が多く⾒られた.このことから「1.理解できなかっ た」と回答した多くの学⽣は,証明の図形や式の計算に ついて理解できないのではなく,もっと根本的な三⾓関 数の定義の知識が不⾜していることがわかる. 2-4-2 調査問題 A において⾃⼒解決困難な箇所を解析 調査問題 A において,「2.理解できたが,⾃⼒では 解けない(と思う)」と回答した学⽣のコメントを参照 すると,「証明中の②の部分が思いつかない」と回答し た学⽣が 22 ⼈(53.7%)いた.証明中の②の部分は中 学校数学で習った三⾓形の外⾓の定理の知識を知ってい.

(5) れば理解できる式変形である.このことから知識として. ジして考えている」という結果より,三⾓関数の加法定. 習得していても,証明やその他の数学の問題を解く上で. 理の証明を扱う際に単位円を⽤いた図を使って解くこと. 既習の知識が,ツールとして活⽤できていない学⽣が多. に抵抗がある学⽣が多い可能性がある.. い可能性がある. また「証明中の①の部分が思いつかない」と回答した. 3 公式の証明の学習に関する意識調査と三⾓関数の公式. 学⽣も 5 ⼈(11.9%)いた.証明①の部分は,三⾓関. の証明の理解度調査の関係. 数の値を直⾓三⾓形の辺の⻑さと置き換えて考える必要. 3-1 調査の概要. がある箇所である.このように,証明すべき結論を扱. 対象の学⽣に⾏った「公式の証明の学習に関する意. いやすい式へと変形して解決に導くことを塚原(2000). 識調査」と「三⾓関数の公式の証明の理解度調査」の 2. は問題解決ストラテジーの中の 1 つである ” 再形式化 ”. つの調査結果をクロス集計し,学⽣の公式の興味関⼼,. と定義している.この ” 再形式化 ” というストラテジー. 授業で公式を扱う頻度が公式の証明の理解度にどの程. は下地・茨⽊(2015)の先⾏研究においても正しく使. 度,影響しているのか調査をする.. えている学⽣がいなかった.このことから再形式化のス トラテジーを正しく使えるようになることが,⽣徒が問 題を⾃⼒解決する上で重要である. また「何から解答を始めれば良いか最初からわからな い」と回答した学⽣は 5 ⼈(11.9%)いた.コメント. 3-2 調査の結果と考察 公式の証明の学習に関する意識調査のアンケート調査 ②の結果と三⾓関数の公式の証明の理解度調査の調査問 題 A,調査問題 B の合算の結果をクロス集計した.. をさらに参照すると「証明の書き⽅を忘れたから」,「説 明の仕⽅がわからない」という回答が⾒られた.このこ とから,学⽣がそもそも公式の証明に限らず,証明問題 を⾃分で解くことに慣れておらず,何から考えて,回答 していけば良いかわからない可能性がある. 2-4-3 調査問題 B において⾃⼒解決困難な箇所を解析 「2.理解できたが,⾃⼒では解けない(と思う) 」と 回答した学⽣のコメントを参照すると, 「証明中の③の. 表 3-1 アンケート調査②と調査問題 A,調査問題 B の 合算のクロス集計 思う 少し思う どちらとも思わない あまり思わない 全く思わない. 理解できなかった ⾃⼒では解けない ⾃⼒でも解ける 8 ⼈ 41 ⼈ 15 ⼈ 25 ⼈ 23 ⼈ 7 ⼈ 4 ⼈ 6 ⼈ 2 ⼈ 6 ⼈ 7 ⼈ 1 ⼈ 2 ⼈ 0 ⼈ 0 ⼈. 表 3-1 のカイ⼆乗検定の結果 x(8)= 21.9 ,p<0.01. 部分が思いつかない」と回答した学⽣が 14 ⼈(35.9%). でありアンケート調査②の結果と三⾓関数の加法定理の. いた.証明中の③は余弦定理を使う部分である.調査問. 理解度調査との関係があることがわかった.さらに,残. 題 A 同様に証明やその他の数学の問題を解く上で既習の. 差分析の結果「『思う』と答えて『⾃⼒では解けない』. 知識が,ツールとして活⽤できていないことがわかる.. と答えた学⽣(41 ⼈)」,「『少し思う』と答えて『理解. また「証明中の②の部分が思いつかない」と回答した. できなかった』と答えた学⽣(25 ⼈)」,「『全く思わな. 学⽣も 11 ⼈(28.2%)いた.証明中の②は 2 点間の距. い』と答えて『理解できなかった』と答えた学⽣(2 ⼈)」. 離の公式を使う部分である.コメントをさらに参照する. の回答が有意に多いことがわかった.. と「⾓度に関する証明で②のように辺の⻑さを導⼊する. この結果より,「思う」と回答した学⽣と「少し思う」. 箇所が難しい」という回答が⾒られた.このことから調. と回答した学⽣では理解度に差があることがわかった.. 査問題 A 同様に再形式化のストラテジーを育むことが,. したがって,公式の証明の学習に対して,その有⽤性を. 問題を⾃⼒解決する上で重要である.. より強く意識した学⽣の⽅が理解度は⾼く,実際の⾼校. また,「何から解答を始めれば良いか最初からわから ない」と回答した学⽣は 9 ⼈(23.1%)で,調査問題 A で同様に回答した学⽣ 5 ⼈(11.9%)よりも多い⼈. の授業でも⽣徒に公式の証明の学習の有⽤性を伝えられ るような⼯夫が⼤切である. また,アンケート調査②の結果と「⾃⼒でも解ける」. 数となった.これは共通の調査問題の「全体の 7 割近. という回答との関係はないことがわかり,三⾓関数の加. くの学⽣が三⾓関数の定義を直⾓三⾓形の図形をイメー. 法定理の証明を⾃⼒解決するという⾃覚を学⽣が得るた. 教育デザイン研究 第8号(2017年1月) 129.

(6) 公式の証明に関する意識調査とそれに基づく三⾓関数の加法定理の証明の考察. めには,公式の学習に対する意識とは関係ない別の要素. 解度に関する関係を調査し,結果として得ることができ. がある可能性がある.. た.今後は,この結果を受けて⽂系と理系それぞれの⽣. 次に公式の証明の学習に関する意識調査のアンケート. 徒を想定した授業モデルの構築や,少⼈数の学⽣へのイ. 調査④の結果と三⾓関数の公式の証明の理解度調査の調. ンタビュー調査の実施をし,⾼校数学の公式の証明の指. 査問題 A,調査問題 B の結果をクロス集計した.. 導の発展を⽬指していきたい.. 表 3-2 アンケート調査④と調査問題 A,調査問題 B の 合算のクロス集計 公式が出るたびに 扱われていた 重要な公式だけ扱 われていた たまに扱われてい た 全く扱われていな かった. 理解できなかった ⾃⼒では解けない ⾃⼒でも解ける 11 ⼈. 33 ⼈. 9 ⼈. 19 ⼈. 36 ⼈. 12 ⼈. 12 ⼈. 9 ⼈. 3 ⼈. 0 ⼈. 2 ⼈. 1 ⼈. 表 3-2 のカイ⼆乗検定の結果 x(6)= 8.59,ns であり, 意識調査のアンケート調査④の結果と三⾓関数の公式の 証明の理解度調査との関係が無いことがわかった.この 結果より,⾼校の数学の授業で公式の証明が扱われる頻 度は,学⽣の理解度に影響しないことがわかる. また,調査問題 A,調査問題 B において「⾃⼒でも解 ける」と回答した学⽣のコメントを参照すると, 「⾃分で 証明して,暗記した」 , 「問題をたくさん解いた」 , 「教科 書で証明を⾒て理解してから,⾃⼒で証明できるように していた」などのコメントが⽬⽴った.授業とは別の⽅ 法で公式の証明について学習してきた学⽣が多く,授業 での公式の証明の学習が問題の⾃⼒解決の⾃覚につなが ると感じている学⽣は少ない可能性がある. このことから,数学の授業で公式の証明をただ扱うだ けでは,実際に⽣徒が⾃⼒で解けるような⼒を育むには 不⼗分と考えられ,⽣徒が公式の証明を⾃⼒で解けると ⾃覚するようになるには,授業の中での扱い⽅の⼯夫が 必要である. 4 まとめと今後の課題 本研究では神奈川県内の⼤学 1 年⽣(147 名)を対 象に調査を⾏い以下の 3 点がわかった. (1)多くの学⽣が公式の証明の学習について必要性を感 じていること (2)公式の証明の学習に対する意識が⾼い学⽣ほど理解 度が⾼いということ (3)再形式化のストラテジーを正しく使えていないこと が,学⽣の⾃⼒解決の妨げとなっていること 今回の研究では,学⽣の公式の学習に対する意識と理. 130. 引⽤・参考⽂献 Polya.G. (1954) . 「いかにして問題をとくか」 .柿内賢 信 訳.丸善出版. 岩⽥耕司・服部裕⼀郎(2008) . 「⾼等学校数学における ⽅法型の問題解決指導に関する調査研究−三⾓関数の 加法定理に焦点をあてて−」 .全国数学教育学会誌,数 学教育研究,第 14 巻,154-165. ⼩久保正孝(2015) . 「公式の証明に関する調査と循環論 法の指導についての考察−公式の証明の振り返りを通 して−」 .⽇本数学教育学会,第 48 回秋期研究⼤会発 表記録集,391-392. ⼩久保正孝(2014) . 「公式の証明を学ぶ意義に関する調 査とその指導の検討−公式の導き⽅のアイディアを問 題解決に⽣かす視点に着⽬して−」 . ⽇本数学教育学会, 第 47 回秋期研究⼤会発表記録集,381-382. 下地啓太・茨⽊貴徳(2015) . 「公式の証明における問題 解決ストラテジーの研究〜三⾓関数の定義と加法定理 の証明に着⽬して〜」 .⽇本数学教育学会,第 48 回秋 期研究⼤会発表記録集,75-78. 松岡豪伸(2015) . 「中学数学における証明をよむことの 意義に関する⼀考察」 .⽇本数学教育学会,第 48 回秋 期研究⼤会発表記録集,419-422. 塚原成夫(2000) . 「数学的思考の構造 発⾒的問題解決 ストラテジー」 .現代数学社. (注) (1)調査問題 A,B において「証明を読む」とは,各証 明中の特に①②③について書かれた数式や式変形が正 しいかどうか考察することである. (2)調査問題 A において「証明を理解する」とは証明 中の①②③を既習事項と結びつけて正しく認識するこ とである. ① 三⾓関数の直⾓三⾓形の辺の⽐の性質より sin (α+β)= AF ② 三⾓形の外⾓の定理より,∠ACE = α ③ 三⾓関数の直⾓三⾓形の辺の⽐の性質より CD = sinα cosβ また,調査問題 B において「証明を理解する」とは, 証明中の①②③を既習事項と結びつけて正しく認識す ることである. ① 単位円を⽤いた三⾓関数の定義より,点P, Q はP (cosα,sinα),Q(cosβ,sinβ) ② ⼆点間の距離の公式より,PQ 2 = 2 −2(cosαcos β+sinαsinβ) ③ 余弦定理を⽤いることにより,PQ 2 = 2 −2 cos (α − β).

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参照

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