• 検索結果がありません。

国際販売提携の特質に関する一考察 : 日本IBMの特約店制について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "国際販売提携の特質に関する一考察 : 日本IBMの特約店制について"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)<研究ノート>. 国際販売捷携の特質に関する一考察 一日本IBMの桔約店制について-. 竹. 田. 1.問題の所在. 「すべてを内製するという"IBMの純血主義=と呼. 2.限定された"不純さ". ばれる行き方に対して・-・・鴨・・・-通に外部調達でき. 3・販売経路・その1-直販ルJ-トー. るものは徹底的に外部から買い入れる--略・--パ. 4.販売経路・その2-特約店ルートー. ソコンの心臓部であるマイクロプロセッサーはイン. 5.特約店の特質. テル社から,また半導体は世界各国の半導体メーカ. 6.むすび. ーからといった具合に,パソコン組み立てに必要な. ほとんどの部品,部なを外部調達したのである.」2, 1.問題の所在 いわゆる=純血主義=の放棄の確認である.日本市 「IBMのパソコン用構成部品の約半分は,日本,拷. 場では,この点が調達・生産面だけでなく販売面にも. 国そしてシンガポールの非IBM企業によって生産さ. 現われており,ここに新しい提携活動の特質を見い出. れている.しばしば合弁企業という形態をとるIBM. すことができる.. の生産協定(manufacturing. 日本IBMの事業活動についてはすでに多くの調査. agreement)はその産業 部門のリーダーにとって特に新しいものではない.し. 研究が行なわれ,近年では特にこの提携活動の分析3). かしながら,単純にコスト引下げのために1960年代. までなされている.したがって本稿では,日本IBMの. にRCAやGEなどによって行なわれたTV部品など. 活動全般はもとより,提携活動についても販売提携の. の海外生産とは性格的に異なっている.. IBMのパソ. 具体的形態としての特約店制に限定して検討する. 多国籍企業の提携活動は事業内容からみると,技術. コンの場合は便宜さと競争上の利益を考えた協力企業 でなく競合企業との戦略的提携によるものであり,こ. 開発,製品調達,生産,販売といった経営活動の諸側. の提携は1980年代に数多くみられるようになった新種. 面にみられる.また,その形態も資本出資を伴う合弁. の事業提携を具象化している.国内・外市場での競合. 企業設立,資本参加とともに資本出資を伴わない技術. 企業間にみる合弁企業提携のこの傾向は増加しつつ,. 協定,OEM生産委託,クロスマーケテイングなどの契. 複雑な技術を必要とする産業部門に広がっている.」. 約設定,部品メ-カーの組織化にみるような継続的な. ● ●. ■. ●. 取引関係など多岐にわたっている.ここで分析対象と 大変に長い要約引用文になってしまったが,これは 「奇妙なグローバルな仲間達」と題して新種の国際提. する日本IBMの特約店制は契約設定形態の販売提携 ということになる,. 携を論じたある評論1)の内容である.本稿ではIBMの パソコン事業に注目し, -国際提携の新しい特質の検出 を試みたい.とはいえ,周知のようにIBM-PCそれ. 2.限定された"不純さ" 1980年代に入ってIBMはインテル社の株式取得,. 自体は同社のIBUシステムの成功例としてよく論じ. TIとの超LSIの共同開発,構内交換機メーカーロル. られているので再論の必要はなかろうかと思われる.. ム社の買収および同社のシーメンス社-の売却と販売. ただ,次の事実を確認してここでの主題である同社の. 合弁会社の設立,シアーズ・ローバックとの提携など. 日本での国際提携問題に入っていきたい.. 各種の提携活動を積極的に展開している.一方,日.

(2) 104. (324). 横浜経営研究. 第Ⅹ巻. 第3号(1989). 本IBMも日本国内での代表的な経営戦略をみるとい. 全体的にとり続けてきたいわゆる"純血主義"による. ずれもこの提携活動であるのは興味深い.一般的にそ. 開発,調遵,生産,販売の各側面での行動に変質を生. れらは次の三つにまとめられる4).. じさせ,他社とくに競合企業の力を相互に活用しよう. (1)特約店網の拡充.日本メーカ-との競争から従 来まで採用していた直販制度に加え,この特約店制度 を導入したという(後段で詳述). (2)低原価生嵐. とすることの現われである.しかし,この``不純さ" は睦めて限定的なものといわねばならないし,またす でに"純血なるもの"によって構築された企業力(撹. マイクロモーターやICなど部品. をはじめ,小型コンピュータ生産を松 Fへ,キーボー ドをアルプス電気へといった生産委託をも行ってい. 節,生産,マーケテイングなど)を前提として可能に なるものと思われる5).. 以下,この点("純血主義による企業力"と"他社と. る.これらの調達先,委託先は日立,沖電気,三菱電,. の協調による不純さ"との係わり合い)に留意しつつ. 松下をはじめ1000社をこえるという.まさに部品調達. IBMの日本市場でのパーソナル・コンピュータを中. とOEM生産委託による調達提携であり,形態的には. 心とする販売提携の行動6)をみていくことになる.. 契約設定といえるだろう. (3)資本・業務提携.リース事業拡大のためオリエ ントリースとの合弁会社,. SEサービス事業拡大のた. 3.販売経路・その1一直販ルートー まず,日本IBMの販売の仕組を概観することから. めNTTとの合弁会社などの設営をはじめ各種の業務. 出発しよう.図1の左側半分が直販ルートであり,右. 提携がすすめられている.この提携活動は形態的には. 側が特約店ルートということになる7).. 合弁会社,資本参加,契約設定と各種あり,内容的に. 直販部門を簡単にみていくと,ここは同社の取扱製. はソフトウエア開発,サービス業務を含む広い意味で. 品ライン(汎用,オフィス,パーソナルの各コンピュ. の販売提携である.. ータ) (図2参照)をすべて販売するわけであってIBM 本来のチャネル政策の中核であり,全世界市場での販. その他の提携活動としてはPS/55型とAS/400型を 中心とするリコーからのOEM生産受託を見落すわけ. 売ネットワークに共通するものである.ここ数年問,. に.T・iいくまい.. 毎年千名をこえる新規採用営業マン,. 以上の諸活動のうち当然ここでは,. (1)の「特約店. SEの投入され. る直接販売活動の舞台である.大規模なシステム受注. の拡充」,つまりパーソナルコンピュータとオフィス. をはじめ,汎用,オフィスコンピュータを中心とする. コンピュータの一部を販売するために連携される販売 店契約が問題となる.あえて本稿でこの特約店制を検. 大企業向販売が同社の--ドゥエア売上高の約7割. 討する理由は,. 売経路の主軸であることに間違いない.. ○形態的には販売店契約という旧来の方式のなかに冒 頭でみた"新種の事業提携''の特質が反映している ということ. ○IBM本社もいわゆる"日本化路線"としてこれを認 めざるをえなかったこと. ○近年この特約店をソフトウエア会社などとともに "IBMビジネスパートナー"と称して社外協業体制 強化策の主軸とし,発足当初,日本IBM販売株式. (1987年時)を占めていることからも,このル-トが販. この販売経路はその中核となる「営業所」を通じて のエンドユーザー向と「OAセンター」と「機能拡張 再販売者」を通ずるものとに三分される.. 「OAセン. ター」はショールームを通じてOA関連製品の営業活 動や特約店によるPS/55型中心の営業活動の支援さら に店頭販売,見込客発掘の強化,顧客の要望の直接 把握,サービスの向上などを目的としたものである. 「機能拡張再販売者」はソフト,. -ードの両方もし. 会社(以 FJSC)のもとにあったこの特約店管理を. くは片方の面においてIBM製品の機能を一層拡大す. 現在,日本IBMの直轄下に移行したこと. るような事業を遂行する業者を特定したものである.. ○これらの流れのなかで既存の直販体制との連動に変. システム開発・技術提供,ソフトウエア・アプリケー. 化が生じ,多国籍企業の現段階における競争行動の. ション・パッケージの開発・提供などを行なう三井情. 在り方が反映していること. 報開発(株)などがその例である.. IBM社の営業カバ. などによる.. レ-ジの薄い分野を担当し,関連業務を提供すること. 国際提携はIBMに限らず,米国多国籍企業が従来. を期待したものとみられる.これは全IBM製品にわ.

(3) 国際販売提携の特質に関する一考察(竹田志郎) 園1. 図2. 日本IBM取扱製品ライン. (325). 105. EI本IBMの販売経路. たるものであるが,実態的には中型機が中心となって いるようである,特約店ルートの「付加価値製品再版 者」 (Value Added Remarketer-以下VAR)と機能 的に同一である. このVARとIBMとの間の提携条件はおよそ次の 3点にまとめられる.. (1)その企業がIBMから割引価格で取扱製品(4361, AS/400シリ-ズ,. PS/55シリ-ズ)を購入でき,しか. も独自の契約条件・価格設定ができること (2)ただし,みずからのノウハウ,サービスカなど により固有の付加価値の組み込み(ソフト・ウエア, SEサービスなど)ができること(この付加価値はIBM 製品〔-ード,ソフト〕価格の20%以上が必要である ことが目安となる) (3)所定期間・特定地域内への販売,最低販売数量 の売上げを遂行すること などである.いずれにしても,それまでの業界経験 による販売・導入活動のできる業者がこのVARとし て活用されるわけである.さらに図1の左上角にみる.

(4) (326). 106. 横浜経営研究. 第Ⅹ巻. 「販売と導入援助を行なう協力会社」は横線にみられ. ここでみるようにこの特約店網の拡大が顧客別・地 域別のマーケテイング活動の展開と地方市場の開拓と. るようにIBMの全製品についての協力を行なう.こ れにはIBMの-ード,ソフトの技術要員をもち,. 第3号(1989). IBM. ともに「同社の近年のマ-ケティング戦略の特徴とし. 製品のサービス実漬をもつソフトウエア会社とか巨大. て」10)注目されるようになったわけである.同社はこ. 銀行のようなIBM製品のシステムユーザーが含まれ. の特約店制を1982年に26社で開始し,現在では北海. る.これらの会社はユーザープログラムの開発・導入. 道2,東北9,国東69,中部北陸15,近畿24,中国. を中心にプロジェクト毎の契約により業務提携を行な. 4,四国7,九州11,沖縄1計142社にまで増加させ. う.特に後者の場合,関連業界での位置,関係が販売. た(1988年10月時現在).. 面に大きな影響を生むことを期待したものと考えられ る.. 以上の直販ルートはここで分析しようとしている特 約店制度と密接な関連をもって日本IBMの日本市場 への進出・拡大とともに,現在,質的な変容を示しつ つある.. これら特約店は次のような多くの業種に及んでい る.. 0電気機器メーカー・卸・小売(立石電機,ヤマギワ, 石丸電気など) ○事務用機器卸(大塚商会,トヨシマビジネス,エス シーエスコンピュータ・ビジネスなど) ○産業用電機・機械卸(アルプシステム,システック,. 4.販売経路・その2一特約店ルートー 前出のようにハードウエアの売上金額からみて大企 業向販売高の割合桔70%以上で残りが中小企業向とい うことになる.これに対して日本のコiンビュ-タ・メ ーカーの販売高の割合は大企業,中小企業それぞれ半 々ぐらいであるという(1987年時).こうした状況は同 社が従来大企業依存型のマーケテイング活動を展開し てきた結果であり,前章でみたような直販部門への依 存が大きく,これ以上の進展のためには中小企業市場 の開発が不可避の道となったことを示している8).こ の辺の事情は同社取締役の次の発言に反映している.. 豊通情報システムなど). ○情報サービス(リクル-ト,三菱総合研,電通国際 情報サービスなど) ○大量小売店(丸井,平和堂など) その他製造業者としてはミシンの蛇の目,楽器の河 合,繊維の鐘紡など,卸商としては自動車(東京日産, 九州三菱),化粧品(ホシ伊藤),舵(吉川商事,イム ラ封筒),酒類(ぬ利彦),建築材料(炭平本店),鉄鋼 金属(松村物産,阪和興業)など,その他のサービス 業としては消費者金融(アコム)や海運(イズミ・シ. ッビング,鶴丸海運)などがみられる. 上記特約店の規模は上場・非上場企業はもちろん従. 「日本においてはあまり規模の大きくない企業でま. 業員5000名をこえる大企業から何十名という小企業に. だコンピュータ化されていない企業が非常に多く残. 至るまでに及んでいる.またこれら142社中1989年版. っております.それは当社にとって大きなポテンシ. の申告所得ランキング88,000社のなかにその名称を見 出す企業は75社(全体約半分強)となっている.この. ャルをもった市場ということになります.これから はこのような分野にこれまでにも増して積極的に進. 点はかなり小規模な企業を特約店に指定していると同. 出していかなければならないと思っております.そ. 時に,これら企業のなかには巨大企業の子会社(電通. のためには,自社のカだけでは限界があり,いろい. 国際情報システム,キヤノンシステム販売,川鉄シス. ろな会社と協力体制を構築していく必要がありま. テム開発,イズミ・シッビングなど)が数多く存在す. す.当社は六,七年前までは研究開発から販売にい. ることを見落してはならない.. たるまで自社独自でおこなってきたわけですが1980. こうした動向はその企業の業種別・地域別販売網,. 年噴からこの面での経営戦略を大きく変更しまし. 当該業界の特殊な業務関係,資金力などをかなりきめ. た.一口でいうと,優れた力をもつ日本の他の会社. 細かく評価し,効果的に活用しようとする日本IBM. と連携・協力したビジネスを展開する方針に換えた. の姿勢の現われといえる.. わけです.合弁会社の設立,資本参加,特約店制度 の採用など外部の力を積極的にお借りするという方 向に戦略を転換したわけです. 」9). 日本IBMは1982年以降特約店の管理をJSCを通し て進めてきたわけであるが,. 1987年に直販部門とこの. 特約店との競合を避けるため,. 「その機能と権限を大.

(5) (327). 国際販売提携の特質に関する一考察(竹田志郎). 107. 幅に本社に移し」11),その直轄下におくことになった・. 同様で全販売活動と導入活動中の導入全休管理までを. この動向は現在の同社の販売活動の性格を把捉する上. 行なうことになる. なお,特約店はSHIP登録者(Software/Hardware. で重要である.. lnformation. こうした状況下にある特約店は取扱製品PS/55, AS/400,. SHIPとは. IBM以外の企業が開発したソフト,周辺機若芽をPS/55. S/36ESなど)のチャネラーとして図1の右. 側に示さatた販売経路を形成している.図の右上端に ある「IBMパーソナル・コンピュータ-販売店」は ps/55塑だけを販売する小売店(百貨店,家電用品店な ど)であり,左側の「IBM製品販売店」というのはPS/ AS/400シリーズをも合わせ. 55シリ←ズだけでなく,. Path)となりうることもある.. シ.). -ズ中心に利用可能なかたちで紹介する登録制度 である.したがってこのSHIP登録者にはソフト・ウ ェア・ハウス,製品版売店,ユーザーなどとともに特 約店も自社でPS/55シリーズを使用して開発したソフ トがある場合,登録するとIBM側のSHIPライブラ. 販売する小売店(事務用機器店,電気機器店など)であ. リーを通じて利用者にカタログ,パンフレットなどで. る.ただ,これら小売店は特約店を通して,日本IBM. 紹介され,その購入希望者と直接取引を行なうことに. が二次特約店として承認した業者に限られる・したが. なる.このSHIPに登録されているソフトの種煩はオ. って特約店の営業店のイ払子会社,提携会社などが中 心となろう.さらに「付加価値製品再版者」は特約店. ペレ-ション・システム,簡易言語,データベ-ス, 業務関連,業種関連,技術・計算関連,通信関連など 多岐にわたっているが,特約店が登録者となっている. のなかで前章でみたようなVARとしての機能をもつ. 場合はその性格上圧倒的に業種関連や業務閑適のソフ. ものをいう.つまり,特約店のなかで特に当該業種内. トが多くなっている.前出の例でみると前者には立石. 部での経験をもとにソフトウエアなりサービス業務に 優れ, IBMの弱い事業分野を補質しうる条件にある企. 電機,東京日産自動車,アルプシステムなど,後者に. 業がIBM側の承認を得て特定される・したがって図. は電通国際情報サービス,鐘紡,イズミ・シッビング. 1にみるこのチャネルとその左側直線が特約店による. などがみられる.. ユーザー-の直販ルートとなる.. 5.特約店の特質. なお,この特約店としては資本出資関係のない独立 企業が多いわけであるが,日本情報通信(1985年折半 出資)や日本ビジネスコンビュ-タ-. こうした活動内容を遂行する特約店の特質とはどの. (1983年35%資. ようなものだろうか.. 本参加),炭平本店(1989年35%資本参加)などのよう. この特約店はいずれも独立した企業体であり,過去 にIBMのユ-ザ-経験があり,上述のような販売・. な同社の関連会社もみられる. 以上のようなチャネル上の位置にある特鰍吉と営業 ●. ●. ●. ●. 占的特約店であるといえよう.これら特約店の販売地. 部門管轄下の諸機関,その他との相異を取扱品目,宿 ●. サ-ビス活動を提供するため日本全国に存在する非独. ●. ●. 域は契約上特定されるわけではないが,当該企業の規. 動領域の2点から整理しておこう・. 模・業種,過去からの実績によって全国,特定地域. 営業部を通ずる直販部門は当然全製臥特にES4381 型以上の大型機(図2参照)を重点的に取扱うとともに ス,成約)から導入活動(導入全体管乱. の実墳を前提として特約店認定を行なうわけである・. ユーザ-プ. 当該企業の既存販売経路の十分な活用を目的としてい. ログラム)までのすべてを行なう.機能拡張再販売者 ●. ′し上_,_rlI=7日典Tr. rTて⊂ナT7亡」プ_. /,. 、ーユミ1( -. ) Aレl) 1、JノJ川Lul′lL邑三ぎ莞ロロfサ月久一白\∨. a. TT^. n\ Yn⊥ヽノ. ′rヽ+El∠ゝ†ヰ,P_ Vふ′ >ノノ多ワFj. IBM側ではそ. 種(前出業種参照)に特化されている.. セ-ル. 活動債城も当然,販売活動(潜在顧客の開j乱. (瓢市,県,関東地方といった規模)あるいは特定業. I. ?_ ′Q)・. +,J,_一紙立hr乍T,ナ. Jdヽ4)1TJIllJ/=. l、.一(L--. し. ▼ノ. -rギrh自7,Tまか虫小鼻姓 t-■.フてこ/LtJ/lヽl ヽ. 麻娩幸江宕 A. 〉. Jl⊥りl=トレヽ′≠一7. ・ん⊥\=. ソナルコンピュータから汎用コンピュータの中型機. サービスによって顧客を確保し,販売しうるという点. (4361型)12)までを取扱い,活動領域は販売活動とユー. が特に重要である.. ザープログラムを除く導入活動を行なうことになる・. 領域は前述のように滞在顧客の開発から導入全体管理. これに対して特約店はパ-ソナルコンピュータ,オ フィスコンビ一夕だけを取扱う.ただし,特約店が. IBM側から与えられている活動. にまで及んでいる.. IBMと特約店との関係は当然契約設定によって成. VARに特定されれば,当然,中型の汎用コンビュ-. 立するわけだが,その契約期間は年毎に更新されるか. タをも扱うことになる.活動領域は特約店もVARも. たちをとっている.この契約により特約店としての指.

(6) 108. (328). 横浜経営研究. 定を踏えて「取扱『IBM製品』の指定」 許諾」. 「仕入・発注・納入の条件」. 第Ⅹ巻. 「商標の使用. 「価格・料金・支払. 第3号(1989) 門との営業の一体化の促進があげられる.これは直販. 部門で得た受注も製品によっては特約店と協力して納. の条件」などが確定される.ここに「価格・料金」と. 品したり,またその道もあることを意味している.特. あるのは特約店が--ドゥエア製品,ソフトウエア製. 約店の顧客が大規模な事業体の場合,小型機の端末と. 品の一部とサプライ製品については「仕入再販製品」. ともにそのホストコンピュータとしての大型機は当然. としてみずから認定する「価格」t とソフトウエア製品. 必要となってくるのである.. の一部と保守契約サ-ビスについてIBMと顧客との. この他, POS特約店制度,研修制度の強化など特約. 契約を仲介することでIBMより得る販売手数料の「料. 店強化策は種々みられるわけだが,本稿の主題から離. 金」である.. れるので省略する.. 特約店側はこの契約を前提に「営利を目的として転 売するために購入する顧客-の販売禁止」 ボ-ト要員の確保」. 「販売・サ. 「販売台数の月次報告」 「製品在庫. そこで上記3点の動向に注目するとき,日本IBM の特約店戦略はパーソナル・コンピュータ,小中型オ フィス・コンピュータ市場のシェアアップという目標. の維持」 「営業店(含二次店)社員-の義務履行の徹底」 「IBM特約店マニュアルの遵守」などが義務づけられ. に沿って促進されるなかで直販ルートで扱う大中型機. ることになる.一方IBM側も販売,販促,広告,技. の連携販売のなかで制度的にすすめうるという意味を. 術サ-ビス,特約店社員-の研修,特約店交流のため. もっていることに気付く.日本IBMが他社と比較し. の支援を行なうことになる.. て小型機への依存度が低いからこれを上昇させ,全体. この特約店制は直販ルートだけでは国産メーカーに 対応できないため「ユーザー密着の営業をしなけれ ば,日本では駄目だと社長が米国本社をさんざん口説 いて,. IBMとしては前例のない(この)制度を認めさ. せた」ものといわれている.. 1982年にこうしてスター. トした特約店制だが「それから7年.目覚ましい成果 をあげたかというと,そうでもない.実際86年当時は. のシェアアップを直営部門でできない値引を特約店と. の事業拡大を意図することを通じ本来の大型機の市場 開拓につなげることは当然といえよう. 特約店管理をJSCから本社直轄下に移したのはこ うした事態を効率的に推進しようとする努力の現われ ではなかろうか.その意味で特約店制がたんに新市場 開拓だけでなく, IBM製品全体市場のシェアアップの ために十分な意義・役割をもつといえる.. 『特約店の大半が赤字だった.数を増やすことを優先. それは日本IBMの掲げている現段階での特約店強. した結果,特約店同士の値引合戦を招き』 --略-現状では小型機のシェア拡大に特約店はそれほど貢献. すなわち, 「メーカー(日本アイピーエム)にシェアを」. するまでに至っていない」1・1)ともいわれる,. 「特約店には利益を」 「エンドユーザーには満足を」と. 化策のスローガンに反映しているのではなかろうか.. 前出の契約にみるように特約店は独自に価格・条件. いうわけだ.まさに同社にとっては「利益」より「シ. 設定ができるわけであるから,当然この事態は想定さ. ュア」が優先している.パ-ソナル・コンピュータに. れるわけで,期間内販売量の売込みのために特約店側. 限らずIBMの牙城である汎用コンピュータにしても. がマージンをゼロにしても販売するという事態も存在. 日本の競合企業は「日本国内では日本IBMのシェアを. したわけである.もとよりIBM側もこれに対して各. 蚕食しながらそれぞれのシェアを拡大してきている」. 種の対応策をとっている.. わけだし,. 第1に,中小型機の値引き幅の拡大,従来財務部門. IBM機から日本メーカー機へのリプレ-. スの理由で「低価格性」14)が大きな位置を占めている. にあった価格認定権限の一部の営業担当責任者への移. 点からみても,ここでみた特約店強化策はたんに特約. 行,業種毎に特化した奨励金の支給などがあげられ. 店に限定されるものではなく同社の日本市場開発全体. る.. に係わる基本姿勢ということができよう.. 第2に,本社営業部門による特約店との協業活動の. 6.むすび. 強化があげられる.つまり,特約店側の要請による販 売担当者・. SE派遣,特約店のSE・営業マンの新規採. 用への支援金供与などである. 第3に,この協業活動の強化による特約店と直販部. 従来の非価格競争中心から価格競争にシフトしたこ の日本IBMの行動様式は現段階での多国籍企業の競 争関係の激化を反映するものである.さらに上記特約.

(7) (329). 国際販売提携の特質に関する一考察(竹田志郎). 109. 店にみられた国際提携のあり方は"純血主義''を捨て 注. はじめているIBMでも日本だけに認めた制度という 点で同社が後発的地位にある日本市場での競合関係の. Potts,. Mark. Bedfellows,. 一層の厳しさを映し出すものといえる. この種の販売提携は従来代理店化することでオウン ・ディストリビューションの進展の途中で活用された わけだが,現段階ではこの事例が示すようにすでに自 域別・期間別に相手を定めて併用している提携といえ よう.この提携こそ前述した限定的な"不純さ"の一 部ということができるだろう.したがってこの種の契. 約設定は状況の変化によっては比較的かんたんに解消 される可能性をもつものといえよう15). 競争状況の推移からみて日本では後発のIBMとし ては他社の経営能力・経営資源の一一部を限定的にでも 活用することが新しい発展の条件づくりとなる.その 意味で調達段階における松下やアルプス電気-の生産 委託による他社の企業力の利用,生産段階でのリコー からのOEM生産受託による競合企業の販売網活用と いった提携以上に,この販売提携にみる特約店活用 を下回わる同社にとって急速に充足しえない要員力を 補喋するためいかなる可能性をも局面的,限定的に活 用しようとする必死の姿といえるだろう.. pp.. 「これだけ大きな企. 業に成長しながら成長を左右する基幹製品の開発・投 資の決定は米国の親会社が行い,日本IBMは決めら れた枠とルールの中でしか行動できないという事実に 「ユーザーの立場からすれ. ば重要な交渉に際して日本IBMの裁量粋が限られて いることは依然,不満のタネになっているのも事実」16). IBMは1つの世界なのであって,すべて. の重要決定は米国親会社の利益をまず心にとど めて1つの国籍の人びとによって下される. WTCが営業している国々の利益ではない」 World.P Tomorrow The (Ma,1ik,Rex, And. i___. 」¶レ_∫J. I,T,. ′」」一、. r. lJ. :.. __し,m__I_.. Millington,. 1975.栗田昭平「IBM. 『コンピュートピア』. 8)これは同社にとってたんに新しい小中型コンピ ∫、r. -. IBM,. 1984年8月 号43ペ-ジ)ということのためである. 7)周知のように日本IBMの「組織変更はほぼ1 年に2回のペース」 (『日経コンビェ-タ』前掲 号186ページ)で行なわれているとみられる. 対外的な機構改革はそ3tほどに簡単ではないと 思われるものの,現時点(1989年8月)では一応 このように考えられる.日本IBM販売(株)を 点線で囲んであるのは, 1987年1月以降,同社 の業務を営業開発統括本部に移行し,現在,休. これは極めて当然のこと(多国籍企業が単一国籍の _-. 1987,. 止状態にあるからである.. であることに間違いないのだから.. bV). ike. Global. Feb.. 3)官本倫好『日本IBMライセンス戦略』講談社 1988年. 4)樋田 篤編『外資系企業インジャパン PART II』同文舘1988年, 41-43ページ. 5)拙稿「多国籍企業の競争行動と国際提携」『経済 論集』 (大東文化大学)第47号, 1989年2月, 213-215ページ参照.なおこの点については別 の機会に詳論する予定である. 6)この点をあえて日本IBMの特徴的行動として 把握しないかは次の理由による.日本IBMが IBMの100%子会社であり,その売上高の「30 %弱は世界のIBMグループへの製品供給なの であり,米国IBMにしてみれば極束の-現地法 人,それも単なる開発・生産拠点というぐらい の見方」 (『日経コンピュータ』 1986年2月10日 号185-186ページ)をもっていること,さらに 「どれだけ多くの国籍の人びとがかかわるにせ. の対日戦略」. "日本化路線"として日本的特質を過大評価すること. 1. Strange. Board,. 2)郡野比古『AT&TとIBM』講談社1989年,. Znside. なおこうした日本IBMがすすめている国際提携を. は変わりはない」のだし,. Peter,. Behr,. 24-25.. よ,. SEの人数で富士通,日電. の危険性に注意すべきであろう.. &. Across. 123-124ペ-ジ.. 社販売網があり,それを前提としながら,製品別・地. は,特約店・ディーラ-数,. 1). ヽ. 寸′一一. ▼. ゝ. ・b_. Ltl虫.qゝ桝:疋をユIタ′\しノqゝ匡1年ir刀)1丁7よフ」とノ. l. ∼ヽ. ュータ市場の開発による市場拡大だけでなく,. ▼ .__._. ぐめ. 川田コンビニ-タ下削急でのマーケットシTア借 V. uJ. JJ. lr.. //J. 1. rp. 減債向への対応策としての意味をもっているこ. って,問題はそれでもなお日本市場で生存・発展する ためには``日本化路線"を認めざるをえないほどに, 競合関係が激化してきたことを本社側が評価している 点にある.本稿冒頭にみたような性格に変質した国際 提携をこの日本IBMの特約店制度は具象化してい.る ものといえよう.. とはいうまでもない. 55ペ-ジ. 9)樋田編.前掲書, 29ペ-ジ. 10)前掲書, 143ページ. ll)宮本,前掲書, 12)ただし,最近ではES/9370が同等の機能をも つため,これに代替し,このモデルは生産を中. 止し,無くなりつつあるという. 『日経ビジネス』 1989年1月16日. 13) 「日本IBM」.

(8) 110. 横浜経営研究. (330) 号,. 第Ⅹ巻. 9ページ.. 14)佐久間昭光「世界のコンピュータ産業における 支配的企業と競争企業の互換・非互換戦略」『ビ ジネスレビュー』. Vol.. 36, No.. 4,. 32-33ペー. ジ.. 15)この辺はある特約店の担当管理者の次の発言に も反映している.「この提携はわれわれにとって. 第3号(1989) 採算上芳しくなければいつでもやめられるし, かなりドライに対応できる.」その意味でこの 種の提携活動は…もろい"ものといわねばなら ない.この性格については拙著『多国籍企業の 新展開』森山書店1987年, 250-253ページ・ 16) 『日経ビジネス』前掲号,. 〔たけだしろう. 22ページ.. 横浜国立大学経営学部教授〕.

(9)

参照

関連したドキュメント

る、というのが、この時期のアマルフィ交易の基本的な枠組みになっていた(8)。

トリガーを 1%とする、デジタル・オプションの価格設定を算出している。具体的には、クー ポン 1.00%の固定利付債の価格 94 円 83.5 銭に合わせて、パー発行になるように、オプション

本プログラム受講生が新しい価値観を持つことができ、自身の今後進むべき道の一助になることを心から願って

関係会社の投融資の評価の際には、会社は業績が悪化

雇用契約としての扱い等の検討が行われている︒しかしながらこれらの尽力によっても︑婚姻制度上の難点や人格的

優越的地位の濫用は︑契約の不完備性に関する問題であり︑契約の不完備性が情報の不完全性によると考えれば︑

海洋のガバナンスに関する国際的な枠組を規定する国連海洋法条約の下で、