脊椎脊髄病に伴う慢性疼痛および神経障害の病態解明
飯塚 陽一
1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科整形外科学 はじめに 慢性疼痛のひとつである肩こりは本邦では頻度の多い愁 訴であるが, その関連因子や病態などいまだ明らかとなっ ていない点が多い. また, 脊椎脊髄病に伴う神経障害とし ては疼痛のみならずときに運動麻痺という重篤な障害が発 生する. 脊椎変性疾患に伴う運動麻痺に対しては, これま で手術療法を中心とした治療が推奨されてきたが, 手術症 例においても良好な治療成績が得られないこともあり, そ の病態および神経学的予後関連因子の解明は重要な課題で ある. 対象と方法 肩こりの関連因子と病態 大学病院勤務の看護師を対象に肩こりに関するアンケー ト調査を行い, 肩こりの有病率と関連因子について検討し た. また, 群馬県片品村での運動器検診にて肩こりと SpinalMouse (Idiag, Vplkerswill, Swizerland) を用いた 脊柱矢状面アライメント測定結果との関連を 析した. 脊椎変性疾患に伴う運動麻痺例の病態と神経学的予後関 連因子 手術を施行した腰椎変性疾患に伴う下垂足例を対象とし て MRI 所見や術中所見をもとにその病態と神経学的予後 因子について 析した. また, 頸椎症性萎縮症例を対象と して MRI 所見や神経学的所見をもとにその神経学的予後 因子を 析した. 結果 肩こりの関連因子と病態 大学病院看護師における肩こり有病率は 68.1%であり, ロジスティック回帰 析の結果から, 性別, 心理的ストレ ス, 肘関節/手関節痛および腰痛が肩こりの関連因子であ ることが明らかとなった. また, 片品村の運動器検診にお ける肩こり有病率は 52.0%であり, ロジスティック回帰 析の結果から, 性別, 腰椎前弯, 脊柱前傾が肩こりと関連し ていることが明らかとなった. 脊椎変性疾患に伴う運動麻痺例の病態と神経学的予後関 連因子 腰椎変性疾患に伴う下垂足手術例の検討においては, 腰 椎椎間板ヘルニアでは, 遊離脱出したヘルニアによる L5 神経根を含む 2根障害が下垂足例の主な病態であることが 示され, 術後の神経学的予後不良因子は, 術前における前 脛骨筋・長母趾伸筋の筋力が弱いことおよび腰椎椎間板ヘ ルニアではなく腰部脊柱管狭窄症であることが明らかと なった. また, 頸椎症性筋萎縮症例の検討では, MRI T2強 調画像における髄内輝度変化および長索路徴候の有無が神 ―115― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成26年11月25日 採択 平成26年12月4日 論文別刷請求先: 飯塚陽一 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科整形外科学 電話:027-220-8269 E-mail:yoiizuka@gunma-u.ac.jp北関東医学会奨励賞
2015;65:115∼116経学的予後に関連することが示唆された. 結語 肩こりは頻度の高い愁訴であり, 性別, 心理的ストレス, 関節痛, 腰痛および脊柱矢状面アライメントと関連してい た. また, 頸椎および腰椎変性疾患に伴い発症した運動麻 痺例におけるいくつかの神経学的予後因子が明らかとなっ た. 謝辞 平成 26年度北関東医学会奨励賞をいただき, これまで の研究に対しご指導を賜りました群馬大学大学院医学系研 究科整形外科学 高岸憲二教授, 篠崎哲也前准教授, 飯塚 伯准教授, および群馬大学整形外科学教室の教室員の方々 に深謝いたします. 文献
1. Iizuka Y,Shinozaki T,Kobayashi T,Tsutsumi S,Osawa T, Ara T, Iizuka H,Takagishi K. Characteristics of neck and shoulder pain (called katakori in Japanese)among members of the nursing staff. J Orthop Sci 2012;17:46-50. 2. Tsunoda D, Iizuka Y, Iizuka H, Nishinome M, Kobayashi
R, Ara T, Yamamoto A, Takagishi K. Associations between neck and shoulder pain (called katakori in Japanese) and sagittal spinal alignment parameters amaong the general population. J Orthop Sci 2013;18:216-219. 3. Iizuka Y,Iizuka H,Tsutsumi S,Nakagawa Y,Nakajima T,
Sorimachi Y, Ara T, Nishinome M, Seki T, Shida K, Takagishi K. Foot drop due to lumbar degenerative eth-iology:The mechanism and prognostic factors in herniated nucleus pulposus and lumbar spinal stenosis. J Neurosurg Spine 2009;10:260-264.
4. Iizuka Y, Iizuka H, Mieda T, Kobayashi R, Tsutsumi S, Nakajima T, Sorimachi Y, Ara T, Nishinome M, Seki T, Takagishi K. Prognostic factors for cervical spondylotic amyotrophy:Are signs of spinal cord involvement associat-ed with the neurological prognosis? Spinal Cord 2014;52: 364-367.
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