Japan Advanced Institute of Science and Technology
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研究開発・その多角化・技術のスピルオーバーの構造
的関係に関する実証分析
Author(s)
渡辺, 千仭; 馬場, 啓介
Citation
年次学術大会講演要旨集, 13: 150-155
Issue Date
1998-10-24
Type
Conference Paper
Text version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/10119/5667
Rights
本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す
るものです。This material is posted here with
permission of the Japan Society for Science
Policy and Research Management.
Ⅰ C7
研究開発・その 多角化・技術のスピルオーバ 一の構造的関係に
関する実証分析
渡辺 千匁 , 0 馬場啓介 ( 東工大経営工学 ) 1 . はじめに バブル経済の 崩壊以降、 日本の製造業は 低迷し、 それに伴って 高度成長期から 拡大させてきた 経営の多角 化 戦略を見直し、 縮小し、 本業を中心に 的を絞り収益性の 低い分野から 撤退する企業が 増えている。 それと 同時に研究開発活動にも 低迷と本業回帰の 動きが見られる。 また、 企業の生産性の 上昇に貢献する 要因のうち技術について 考えてみた場合、 自らの行う研究開発活動 のほかに他の 企業が行う研究開発のスピルオーパー 効果を挙げることができる。 本研究では、 研究開発の多角化がスピルオーバ 一の送り手,受け 手双方の技術的構造の 類似性を高め、 ス ピルオーバーを 効率よく授受できるという 観点に立ち、 対象を日本の 製造業各業種に 広げ、 生産性の上昇に 対する他産業からのスピルオーバ 一の貢献を、 一般的な コブニ ダグラス型生産関数に 組み込むことにより 分 析を行う。 さらに、 技術のスピルオーパーをどれだけ 取り込むことができるのかを 表す同化能力 (AssimilationCapacity) の概念を用いて 同様の分析を 行う。 2. 研究開発とその 多角化の動向 企業が研究開発の 多角化を進めるのには、 本業以外の分野に 進出するため、 他 分野の技術を 本業に生か すため、 の二つの理由が 考えられる。 経済が好調な 時には余力を 本業以外の産業に 振り分けて多角化を 進め てきた製造業も、 ここ数年の未曾有の 不況によって 余力をなくし、 本業へ専念せざるを 得なくなってきてい る。 近年の動向を 調べてみると、 多くの産業で 生産と研究開発の 本業回帰が同時に 進んでおり、 研究開発の 多角化は他産業への 進出目的が大きな 部分を占めていると 言える。 研究開発費自体もバブル 崩壊後に体制の 見直しが進んだ 結果、 かっての「聖域」とされたような 常に右 肩上がりの動きを 示しているわけではない。 すなむち研究開発費活動の 低迷が続く中で、 経営の本業回帰の 動きとともに 研究開発の本業回帰も 進んでいるのであ る。 ( 図一 1, 泰一 1) 3. スピルオーパー 企業の研究開発は 、 二つ意味で他の 企業の生産性を 上昇させると 考えられる。 その第一は、 企業が行っ た研究開発の 結果として製品の 品質・性能が 向上した場合、 その製品を中間財・ 投資財として 購入している 企業が間接的に 売手企業の研究開発の 思恵を受けることであ る。 この意味で財に 体化されたスピルオーバー 効果と呼ぶことができる。他の企業が自らの 生産において 利用できることであ る。 このルートは 第一のルートとは 異なり、 企業間の取 り引きの有無とは 関係なく存在する。 なぜなら、 知識・情報という 財は公共財的性格を 持っており、 特許制 度などの知的所有権 を保護する制度の 下でもかなり 自由に伝播していくからであ る。 本研究では後者に 注目し、 次に詳述する 技術距離の概俳を 用いて分析を 進めて行く。 4. 技術距離 知識・知見がいかに 公共財的性格を 有しているとしても、 技術知識・知見のスピルオーパーが 無条件に 起こるわけではなく、 送り手・受け 手双方の技術的な 構造の類似性に 左右されると 考えるべきであ る。 受け 手の技術的構造が 送り手のそれと 類似していれば 製品構成等も 類似してくるため、 技術知識・知見を 活かす ための補完的な 資産であ る生産設備やマーケティンバのネットワークを 既に所有している 場合が多く、 利用 が 容易であ ると言える。 また、 技術的構造が 類似していれば、 技術知識・知見そのものの 吸収・利用も 容易 となる。 反対に、 もし全産業が 本業分野の研究開発しか 行わなければ 産業同士の技術的構造は 全く違ったも のになり、 産業間の技術のスピルオーバーは 起こらない。 研究開発の多角化が 進み、 技術的構造の 類似した 他産業が活発な 研究開発を行い 次々と新しい 技術知識を生み 出している場合には、 この産業は生産性を 上昇 させていく機会に 恵まれていると 言える。 産業間の技術的構造の 類似性を計る 指標としては Ja 睡の考えに従った 技術距離を用いた。 これによれば 1 産業と J 産業の間の技術距離 P 巧は、 1 産業が行った 研究開発投資総額を R, として、 全 31 分野への各 研究開発投資額を Ri,, R 、 2, ", Ri31 とした場合に、 各分野への研究開発投資比率を 成分とするべクトル ( ℡ chnolo 目 calPosition) F, を用いて、 F,F, 両 ベクトルがなす 角の余弦として 求められる。 P 。 は 0 か ら 1 までの値を取り、 1 に近いほど 両 ベクトルがなす 角は小さく 両 産業の技術距離は 近いと言える。
五二
と + … , - 旦 聖 , 互 仝 二 F. .F R , R, A, Rj 5. スピルオー パ 一の計測と同化能力 技術のスピルオーバ 一の額は、 あ る産業にとって 技術距離が一番近い 産業を唯一のスピルオーバー 源と し 、 そのスピルオーバー 源であ る産業のテクノストック と両 産業間の技術距離の 積とする。 ( 図一 2) しかし、 こうして求められた 値はあ くまでも潜在的な 可能性を秘めた 技術のスピルオーバ 一の プ ロ一に過 きず、 それを活かすためには 受け手側産業の 同化能力が問題となる。 一 Ⅰ 5 Ⅰ 一図一 1 製造業各業種の R&D 費と 研究開発の本業率 食品工 莱 憶捷 " 化 パルプ 憶エ ま
㏄Ⅱ㏄切れ㏄㏄Ⅱ㏄ ml 俺 0 こ %0 円 ユ 0 . 73 071 0 . 69 0.63 0.6l 「 0.s Ⅰ 0 ・ 57 0 ・ s@ Ⅰ 0 「 「 0 . 5 ⅡⅡ㏄㏄の㏄ - 丁年 D こ日 ada
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相関係数 T 値判定Ⅰ相関係数
T 値 判定 食品 ・ 0 ・ 78 6.29 々 * 一次金属 ・ 0 . 94 13.3@ ** 繊維 ・ 0 . 74 5.51 々 * 金属製品 0 . 01 0.03 パルプ紙 ・ 0 . 28 1.48 一般機械 ・ 0 . 98 22.9@ ** 化学 ・ 0 . 84 7.76 々 * 電気機械 0 . 57 3.51 ** 石油石炭 ・ 0 . 67 4.52 々 * 輸送機械 0 . 69 4.84 ** 窯業土石 ・ 0 . 84 7.73 "" 精密機械 ・ 0 . 93 12.6 ** 表一 l R&D 費と 研究開発の本業率の 相関分析 一 152 一図一 2 製造業各業種と 他産業との技術距離
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雨や中小小令 一 153 一6. 分析モデル 時系列データ l を 用い、 まず始めにオーソドックスな コブニ ダグラス型の 生産関数を考える。 Ⅹ二ヵ 亡 Kp 材 , E, 「, 両辺の対数をとり、 重 回帰分析を行う。 ① ¥nY=ln ノ十移 ㎞ L 十ノ㎞ K+ り n 材 + あ lnE 干刈 nT Y 二 産出高 M 二 中間投入 量 A ニ スケールファクター E 二 エネルギー L 二 労働力 T 二 テクノストック K 二 資本 カ 次にスピルオーバ 一のフローを 生産要素の一つぼ 加えた コプニ ダグラス型の 生産関数を考える。 Ⅹ二メ㍗ K タ材 'E, 「, ム乙 同様に両辺の 対数をとり、 重 回帰分析を行う。 ② hn Ⅹ ニ hn ノ 十群 ¥nL+P ㎞ K+yln 材十 SmnE+ 目 LnT+5lnTs Ts 巨 最も技術距離が 近い産業からのスピルオー パ 一のフロー さらに、 スピルオーバ 一の プ ロ一に同化能力 Z を乗じ、 コプ ニ ダグラス型の 生産関数を考える。 上の式
と違うところは、
自らの研究開発活動によるテクノストックもスピルオーバーしてくる 技術も同等のものと して扱い、 その和を投入要素としている 点であ る。 y= ノ L@K タ材 /E Ⅱ T+ZZSY), Z ニ 同化能力 両辺の対数をとり、 重 回帰分析を行う。 ln Ⅹ 二 ln ノ十は ln Z 十 P ln K 十 Z In 五イ + あ ln E 干 す ln(r 十 Z 冗 s) ③ 二ln
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ここでZTs
は T に比べはるかに 小さいと考えられるので ㎞(1+2
Ts
一r
三 ) 二ヵ一二 冗 rと置くことができる。
二hn
力 十のhnZ
十PlnK
十yIn
Ⅳ + ガlnE
七タ0nr+Z
手ニ ) 三者の結果を 比較してスピルオーバ 一の生産に対する 貢献を見る。 「国民経済計算年報」 ( 経済企画庁 ) 、 「科学技術研究調査報告」 ( 総務庁 ) 、 「毎月勤労統計要覧」「民間企業資本ストック」6. 結果 迫 あ 仁 定数項 A 山 R2 DW 食品 ① 0 . 07 0 . 06 0.26 , 0.34 0.16 8 ● 0 0 ・ 97 1.40 (0.27)@ (0.64)@ (1.6@ (2.3*)@ (1.6) 3.0**) ② 0 . 15 0 . 06 O.16 ・ 0.36 0.04 0 ・ 13 8.1 0 . 98 1.72 0.6 0.73 1.2 2.8 々 (0.39 2.6*) (3.6 々 * ③ 0.14 0.07 0.16 ・ 0.36 0.17 0 ・ 05 8.2 0 . 98 1.71 (0.64)@ (0.75)@ (1.1)@ (2.8*)@ (1.8)@ (2.4*)@ (3.5**) 電気 ① 0 . 16 ・ 0.01 0.95 0.01 0.24 ・ 3.0 0 . 99 1.37 ( Ⅰ・ 5) (0.14 2 Ⅰ たた 0.21) (3.55** 8.2** ② 0.16 ・ 0.03 0.99 ・ 0.02 0.21 0 . 02 ・ 2.7 0 ・ 99 Ⅰ. 51 ( Ⅰ・ 5) 0.48) 17**) (0.24 (3.0**) (1.21) (2.8"") ③ 0.14 0.0 Ⅰ 0 ・ 95 0 ・ 03 0 ・ 2 0 ・ 25 -2.8 0.99 Ⅰ. 51 (1.85)@ (0.27)@ (22**)@ (0.62)@ (5.4**)@ (0.64)@ (4.2**) ここでは全ての 結果を載せることは 割愛させていただくが、 ほとんどの産業において① 式 より②式の方が さらに③式の 方が良い結果を 得ることができた。 7. 考察 研究開発の停滞は 研究開発の多角化を 縮小させる。 この本業回帰の 動きは産業間の 技術距離を拡大させ、 両者の関係は 希薄化する。 技術距離が拡大した 産業間では技術的構造の 類似性が失われるため、 研究開発活 動の成果であ る知識・知見を 技術のスピルオーパーとして 受け取ることが 困難になる。 コ方 、 技術のスピル オー パーは生産に 対してプラスの 働きを持っており、 スピルオーバ 一の停滞は生産に 悪影響を及ぼしてしま う。 スピルオーバ 一の誘発には 本研究で見てきたような 研究開発の多角化が 大きな役割を 果たしているが、 それ以外にも 共同研究や、 人材の受け入れ・ 派遣等の人的交流、 研究情報交流なども 技術のスピルオーバ 一 の一翼を担っている。 また、 財に体化された 技術のスピルオーパーを 計測する方法としては 産業連関表を 用いた分析があ る。 ど ちらか片方に 限らず、 両方のスピルオーバーが 生産に及ぼす 影響を分析することが 肝要であ ると思われる。 参考文献 [1] 後藤晃 / 鈴木和志,「 R&D の多角化と技術のスピルオーパー 効果」 ( 経済研究第 38 巻第 4 号 1987) [2]@ Jaffe ・ A,@ "Technological@opportunity@and@Spillovers@of@R&D",@ American@Economic@Review@Vol , 76
No . 5@ (1986)
[3 ] 「科学技術の 産業構造変化に 及ぼす影響の 定量的分析」 ( 三菱総研 1995 , 96)
[4 ]Behrooz Asgari, "Impact Technolo 綴 Sp Ⅲ overs 0n Socio.econ0mic Devel0pment and the 肋 le of Information ℡ chnoloW", ( 平成 10 年度修士論文 )