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がん患者の心理適応を促す看護

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Academic year: 2021

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がん患者の心理適応を促す看護

は じ め に まだ, 乳がんが局所病と捉えられていた 1980年代の ことである. 非定型的乳房切除術を受けた Y さんと廊下 ですれ違おうとした瞬間, 私のおっぱい返して. 返して ちょうだい」と Y さんが叫んだ. 予期していなかった出 来事にとまどい, とっさに対応できなかったことを覚え ている. しばらくして病室を訪れると, Y さんは照れく さそうに, ごめんなさい, びっくりしたでしょ. 自 で も何であんなことを言ったのかよくわからないの.」と 言った.私が「Y さんは,我慢強くていつも家族のことを 最優先に えているけれど, 今まで辛かったのね.」と言 うと堰を切ったように泣き崩れた. 退院の日に娘さんが 「手術のあと落ち込んでいたので心配したけれど, 今は 病気のことを話してくれるし, 部も見せてくれて, 私 の成人式の服をデザインすると張り切っています」と話 された. がんに罹患したことに加え, 乳房の喪失という 現実に直面し, それを乗り越えていくための援助の必要 性を改めて えさせされた. これまで筆者は, 乳がん患 者のボディイメージ, QOL, 心理適応について検討して きた. 今回は, 乳がん手術患者の心理適応について行っ た研究を紹介する. 乳がん患者の心理適応と関連要因に関する縦断的研究 目的:乳がん患者の術後 6ヶ月間の心理適応過程を退 院前, 1ヶ月, 3ヶ月および 6ヶ月の各時点において, State Trait Anxiety Inventory (STAI) の状態不安を測定して, その変化と関連要因を明らかにする. 方法:対象は A 病院で乳がんの手術を受け, 初回の乳 がん罹患である, がん告知を受けている, 定期的に外来 受診するなどの条件を満たし, かつ調査に同意の得られ た患者 72名である. 半構成的な面接調査を退院前, 術後 1ヶ月, 3ヶ月, 6ヶ月の計 4回行った. 調査内容は, 基本属 性と医学的背景に関する項目, 自尊感情 (Rosenberg ), 身体症状 (雄西ら ), 部の受け入れ状況, 対処行動 (千 田ら ) などである. 結果:基本属性および医学的背景は, 乳房温存術を受 けた者は 21名 (29.2%), 胸筋 温 存 乳 房 切 除 術 51名 (70.8%)で,病期 類では乳切群が温存群より stageⅡ・ Ⅲのものが有意に多かった.年齢,職業・配偶者・乳腺疾 患既往の有無, 調査前の STAI (特性不安) 得点には有意 差はなかった. 術後各時期における STAI (状態不安) は 退院前と比較して乳房切除群では 1・3・6ヶ月と術後経過 にとともに有意に低下した. 温存群では術後 1ヶ月では 有意差はなく,3・6ヶ月で有意に低下した.不安の内容は 再発や転移, 身体症状, 術後の治療, 乳房の形や外観など に関することであった. 術後 6ヶ月の STAI (状態不安) 得点に影響する術後各時期の要因を重回帰 析により検 討した結果, 乳房切除群では, 部の受け入れ状況 (退院 前,1・3ヶ月),身体症状 (1ヶ月),自尊感情 (1ヶ月),対処 行動 (3ヶ月) が関連していた. 温存群では有意な項目は なかった. 次にどのような対処行動が不安と関連してい るのかを明らかにするために, 術後 6ヶ月時点の不安と 術後各時期の対処行動内容との関連を検討した. この結 果, 術後 6ヶ月時点で不安が強い患者は, 術後 1ヶ月, 3ヶ 月に情動焦点コーピングをとる頻度が有意に高かった. 結論:これらの結果から, 乳がん術後患者の心理適応 を促進するためには, 身体症状の緩和に努めることはも ちろん, 術後早期から自尊感情を維持するような支援が 43 Kitakanto Med J 2006;56:43∼44 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科臨床看護学講座 平成17年11月4日 受付 論文別刷請求先 〒371-8524 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科臨床看護学講座 二渡玉江

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必要であること,対処行動との関連では,術後 1ヶ月,3ヶ 月に情動焦点コーピングを多くとっている者に対する適 切な援助の必要性が示唆された. お わ り に 本年 4月から毎週水曜日に群馬大学病院 合診療部お よび看護部と連携して「がん看護相談」を行っている.相 談では患者はもとより家族によるものが多い. 病気で 苦しむ患者を何とかしたい, どうすればよいのか」とい う切実な想いが述べられ, 家族を含めた支援の必要性を 痛切に感じる. がんは急性期のエピソードをもつ慢性疾 患と捉えられるようになり, 多くのがん体験者が社会復 帰し, がんとどう向き合って生きていくかが重要な課題 となっている. 今後もがん体験者と家族に対する効果的 な支援方法について探求してゆきたい. 文 献 1. 二渡玉江.わたしのオッパイ返して!.田所朔太郎・瀬 戸正子・村上優子編 癒しと看護の心. 東京 : 学会 出版センター, 1999 ; 54-58.

2. Resenberg M.Society and the adolescent self-image, Princeton : Princeton University Press, 1965; 1-36. 3. 菅佐和子.SE (Self-Esteem)について,看護研究 17. 1984; 117-123. 4 . 雄西智恵美. 乳がん患者の術後の日常生活とフォ ローアップ. がん看護 1997; 2: 97-102. 5. 千田好子, 小河育恵. 乳がん患者の社会復帰への援 助. 岡山県立短期大学紀要 1991; 36: 191-197. がん患者の心理適応を促す看護 44

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