造血器がん患者の看護において看護師が抱く困難感と関連因子
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(2) 14. 永井,ほか:造血器がん患者の看護において看護師が抱く困難感と関連因子. がん看護に携わる看護師の困難感に関連する因子として. うち,看護部長の同意が得られた3つの病院で,直接造血. は,多様ながん看護の場面において看護師が共通して抱え. 器がん患者の看護ケアに携わっている病棟看護師を対象と. る困難感を捉えることを目的とした尺度(小野寺ら, 2013). した.看護師長は除外した.また,常勤・非常勤勤務は問. を用いて,がん看護経験年数や,終末期がん患者のケア経. わないが,日勤のみで夜勤を行っていない(時短勤務等). 験の有無などが報告されている(直成ら,2016) .質的な. 者は除外した.同意が得られた3病院はいずれも無菌室を. 検討であるが,血液がん患者の看取りに対する困難感への. 所有し,看護師配置体制は7対1看護であった.看護体制. 対処方法としては,デスカンファレンスや院内研修による. は,パートナーシップ・ナーシング・システム(Partnership. 学 習 の 場 の 提 供 な ど が 有 用 と の 報 告 も あ る( 鈴 木 ら,. Nursing System;以下,PNS)とプライマリーナーシング. 2008) .また水内ら(2014)は,血液疾患患者の終末期ケ. の併用,PNS とチームナーシングの併用,プライマリー. アに携わる看護師が,ケアに関する困難感を改善するため. ナーシングのみ,の異なる3つの体制を取っていた.調査. に,知識やコミュニケーションスキルの獲得とともに,. 期間は2018年9月から10月であった.. ゆっくり話せる時間の確保や,チームでの充実した情報共. 2.調査内容. 有の必要性を示したことを報告している.しかし,これら. 1)背景因子. 因子について数量的な検討はなされていない. 本研究では,造血器がん患者の看護に携わる看護師を対 象として,彼らの困難感を軽減・予防するための方策を検. 背景因子として,性別,年齢,看護師経験年数,造血器 がん看護経験年数を用いた. 2)造血器がん患者の看護に携わる看護師の困難感. 討することを最終目標とし,困難感の実態と,困難感に関. 古川(2016)の開発した「造血器腫瘍患者の看護に携わ. 連する因子について明らかにすることを目的とした.造血. る看護師のケアにおける困難感尺度」 (以下, 「困難感尺度」. 器がん患者の看護に携わる看護師の困難感の実態を明らか. とする)を用いた.本尺度は, 「長期にわたる患者・家族の. にすることは,重点的に対策を講じることが可能な課題の. 心理的支援,意思決定支援(13項目)」 「多彩な造血器腫瘍. 解明および解決策の検討に繋がると考える.また,関連因. の病態,治療の理解(7項目)」 「化学療法や全身状態の悪. 子について明らかにすることで,予防的行動を取ることを. 化による有害事象の予防・緩和(6項目)」 「医師との連携. 可能にするための方策や,実際に困難感に直面した場合に. (4項目)」 「造血幹細胞移植による合併症の緩和(3項. 困難感を軽減するための手がかりを検討する資料になると. 目)」 「終末期の療養場所の選択,実現への支援(2項目)」. 考える.. の6下位因子,合計35項目で構成された尺度である.困難 の程度は, 「全く困難に感じない(1点)」 「あまり困難に. Ⅱ.本研究の枠組み. 感じない(2点)」 「どちらともいえない(3点)」 「やや困 難に感じる(4点)」 「非常に困難に感じる(5点)」の5. 本研究における枠組みを図1に示した.先行研究(小野. 件法で尋ね,得点化した.得点が高いほど困難感が高いこ. 寺ら,2013)を参考に,本研究では,造血器がん患者の看. とを示す.本尺度は探索的因子分析による因子構造の検討. 護に携わる看護師の困難感には,看護経験年数などの背景. により開発され,経験年数を用いた既知集団妥当性が下位. 因子,研修経験やカンファレンス参加経験などの知識やス. 因子ごとに確認されている.また,各因子0.8以上の信頼性. キルの獲得因子,ケア時間の確保などの緩和因子が関連し. 係数が示されており(古川,2016) ,内的一貫性が確保さ. ているとした.. れている. 3)知識やスキルの獲得因子 知識やスキルの獲得因子として,造血幹細胞移植,移植. Ⅲ.研究方法. 看護ケアなどに関する院内・院外研修経験,造血幹細胞移. 1.対象者. 植に関するカンファレンスの参加経験,緩和ケアカンファ. 岡山県内で造血幹細胞移植を実施している5つの病院の. レンスへの参加経験を用い,その有無と回数を尋ねた.造 血器がん患者のデスカンファレンス参加経験,意思決定支 援に関する勉強会や研修経験,コミュニケーションスキル に関する勉強会や研修経験についても,その有無と回数を 尋ね,造血器がん患者看取り経験については人数を調査し た. 4)困難感を緩和する因子 緩和因子として,先行研究(水内ら,2014)を参考に, 「ケア時間の確保(2項目)」 「ケアにおける情報共有(2 項目)」 「チームのコミュニケーションの充実(2項目)」 の合計6項目を独自に作成し,用いた.5件法で回答を求 め, 「とてもできている(4点)」 「できている(3点)」 「ど ちらともいえない(2点)」 「あまりできていない(1点)」. 図1 研究の枠組み. 「全くできていない(0点)」とする得点化を行った..
(3) 15. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. 「周囲のサポート」については, 「職業性ストレス簡易調 査票簡易版」 (厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生 課産業保健支援室,2019)の6項目を用いて尋ねた.この. Ⅳ.結果 1.分析対象者の概要. 調査票は,項目を選択して一部を使用することが可能とさ. 3病院の当該病棟に勤務する看護師82名に質問紙を配. れている.上司,職場の同僚の支援に対する各項目につい. 布し,58名から回答を得た(回収率70.7%) .夜勤の有無を. て4件法で尋ね,得点化した.得点が高いほどサポートを. 問う項目に,なしと回答した者と未回答であった者2名を. 多く得ていることを示す.. 除き,56名を分析対象者(有効回答率68.3%)とした.対. 3.データ収集方法. 象者は女性が53名と94.6%を占め,平均年齢は30.8歳(標. 調査には無記名の自記入式質問紙を用いた.看護部長に. 準偏差8.6)であった.. 質問紙一式を郵送し,当該病棟の看護師長に1セットと. 2.背景因子および知識やスキルの獲得因子の結果(表1). なった説明書と質問紙,返信用封筒を,対象の看護師に1. 看護師経験年数の平均は8.2年(標準偏差8.4) ,造血器が. 部ずつ配布してもらうよう依頼した.対象者には,2週間. ん看護経験年数の平均は4.3年(標準偏差4.0)であった.過. 以内での回答を依頼し,回答済みの質問紙は,返信用封筒. 去6か月間における造血幹細胞移植に関するカンファレン. に入れ厳封した上で回収袋に入れてもらった.研究施設・. ス参加経験は,0回と回答した者が23名(41.1%)で最も. 当該病棟からの回収は回収袋のまま行い,病棟師長からの. 多かった.過去6か月間での看取り経験人数は,1~3人. 強制力が働かないようにした.. が25名(44.6%)と最も多かったが,経験していない者も. 4.分析方法. 9名(16.1%)であった.造血器がん患者のデスカンファ. まず,造血器がん患者の看護に携わる看護師の困難感に. レンス参加経験は,なしと回答した者が46名(82.1%)で. ついて記述統計を行い,困難感の実態を示した.次に,知. あった.. 識やスキルの獲得因子,困難感を緩和する因子の正規性を. 3.造血器がん患者の看護に携わる看護師の困難感の実態. 尖度・歪度にて確認し,±1を分布の偏りの許容の目安と. 35項目のうち,4.0以上の平均値を示す項目は3項目あ. して用いた.さらに正規 Q-Q プロット(quantile-quantile. り, “青年期・壮年期にある患者が持つ,患者の将来に対す. plot)で正規分布に従っているかを確認し,その上で,困. る不安を和らげる”が平均4.1(標準偏差0.8)で最も高い. 難感尺度の6下位因子と各因子との関係を Pearson の相関. 値で, “難治性・再発・終末期の患者が表出する怒りや悲. 係数を用いて検討した.回帰分析における検定力分析で. 嘆を受け止める” “つらい治療や死をイメージする家族の. 2. は,両側検定で有意水準を0.05,効果量が f =0.15(Cohen. 不安を和らげる”は平均4.0であった(表2) .因子ごとに. の基準で中等度)であるときに検定力が0.7となるサンプ. 結果をみると,6下位因子の中では,因子1「長期にわた. ルサイズは,独立変数が1つの場合44,2つの場合55,3. る患者・家族の心理的支援,意思決定支援」 ,因子6「終末. つの場合63であった.そこで,分析対象者数を考慮し,本. 期の療養場所の選択,実現への支援」の項目得点平均値が. 研究では相関係数±0.3以上を満たす変数を独立変数とし. 3.8で高かった.. て用いることにし,困難感尺度の6下位因子それぞれを従. 4.困難感を緩和する因子の結果(表3). 属変数とする,変数増加法による重回帰分析を行った.検. ケアにおける困難感を緩和する因子の「ケア時間の確. 定力の目安には0.8が使われることが多いが,サンプルが. 保」 「ケアにおける情報共有」 「チームのコミュニケーショ. あまり収集できない場合は0.7と考えてよいとされている. ンの充実」の6項目では, “看護師同士で患者や病状に関す. (豊田,2012) .検定力分析から,重回帰分析での検討は可. る情報を共有する”が平均2.7(標準偏差0.7)で最も高い. 能と判断した.なお,本研究では,知識やスキルの獲得因. 値を, “家族とかかわる時間を確保する”が平均1.6(標準. 子の回数を尋ねた項目に欠損値が1.8~21.4%の範囲で認. 偏差0.8)で最も低い値を示した.. められたため,欠損が10%前後の項目については missing. 5.各変数間の相関分析の結果(表4). at random の仮定に基づき多重代入法(高井ら,2018;村. 困難感尺度の6下位因子のいずれかとの間に,背景因子. 山, 2011)を用いて欠損値を補完したうえで分析を行った.. では, “造血器がん看護経験年数”が,知識やスキルの獲得. 回答の偏りが大きい,あるいは欠損値の割合が多い項目に. 因子では, “これまでの看護師経験での緩和ケアカンファ. ついては「あり・なし(有無)」の2値データを分析に用. レンス参加経験の有無” “過去6か月間での造血器がん患. いた.統計解析には,IBM SPSS Statistics version23を用. 者看取り経験人数” “過去6か月間での造血器がん看護に. いた.検定力分析には R を用いた.. 関する院内研修の受講経験回数” “過去6か月間での造血. 5.倫理的配慮. 幹細胞移植に関するカンファレンス参加経験回数”が, -0.3. 対象者に対しては,研究の趣旨と調査方法,協力は自由 意思であること,協力の有無によって不利益を受けないこ. 以上の相関を認めた(-.31< r < -.47,p < .05) .緩和因子. では, “家族と関わる時間を確保する”のみが「終末期の療. と,個人を特定されないことについて説明書を用いて説明. 養場所の選択,実現への支援」に中程度の有意な負の相関. した.質問紙は無記名とし,質問紙に同意確認欄を設け,. を認めた(r=-.33,p < .05) .上司の支援,同僚の支援との. それへのチェックをもって研究協力の受諾とした.本研究. 間には,有意な関係を認めなかった.困難感尺度のうち. は,岡山大学大学院保健学研究科看護学分野倫理審査委員. 「長期にわたる患者・家族の心理的支援,意思決定支援」に. 会の承認を得て実施した(審査整理番号 U18-40) .. は,有意に相関する背景因子,知識やスキルの獲得因子,.
(4) 16. 永井,ほか:造血器がん患者の看護において看護師が抱く困難感と関連因子 表1 背景因子および知識やスキルの獲得因子の結果 (n =56) 項目. 内訳. 看護師経験年数(年). 平均± SD. 人数(%). 8.2±8.4. 背景 因 子. 造血器がん看護経験年数(年). 4.3±4.0. 知識やスキルの獲得因子. ~5年目 6~10年目 11~15年目 16~20年目. 40(71.4) 11(19.6) 4 (7.1) 1 (1.8). 過去6か月間における 造血器がん看護に関する院内研修の 受講経験回数. 0回 1回 2回 3回 4回 5回以上 回数不明. 4 (7.1) 9(16.1) 7(12.5) 11(19.6) 1 (1.8) 16(28.6) 8(14.3). 過去6か月間における 造血器がん看護に関する院外研修の 受講経験回数. 0回 1回 2回 3回 4回 5回以上 回数不明. 17(30.4) 20(35.7) 11(19.6) 2 (3.6) 1 (1.8) 2 (3.6) 3 (5.4). 過去6か月間における 造血幹細胞移植に関する カンファレンス参加経験回数. 0回 1回 2回 3回 4回 5回以上 回数不明. 23(41.1) 2 (3.6) 3 (5.4) 7(12.5) 2 (3.6) 12(21.4) 7(12.5). これまでの看護師経験における 緩和ケアカンファレンス参加経験. なし あり. 27(48.2) 29(51.8). 過去6か月間における 造血器がん患者の a デスカンファレンス参加経験. なし あり. 46(82.1) 10(17.9). これまでの看護師経験における 意思決定支援に関する勉強会や 研修への参加経験 a. なし あり. 20(35.7) 36(64.3). これまでの看護師経験における コミュニケーションスキルに関する 勉強会や研修への参加経験 a. なし あり. 15(26.8) 41(73.2). 過去6か月間における 造血器がん患者看取り経験人数. 0人 1~3人 4~6人 7~9人 10人以上 不明. 9(16.1) 25(44.6) 12(21.4) 0 (0.0) 5 (8.9) 5 (8.9). a;回数は偏りが大きかったため「あり・なし(有無)」の結果を示した. SD: standard deviation,標準偏差. 緩和因子を認めなかった「長期にわたる患者・家族の心理 .. 意な関連性を示した.決定係数は, 「多彩な造血器腫瘍の病. 的支援,意思決定支援」は,下位因子のなかでも「終末期. 態,治療の理解」が0.327, 「医師との連携」が0.219であり,. の療養場所の選択,実現への支援」因子との間に強い相関. 分析に用いた変数で看護師の困難感を11.8~32.7%説明し. が示された(r=.80,p < .01) .. ていた.. 6.困難感に関連する因子:重回帰分析の結果(表5) 下位因子と中程度以上の相関を認めた変数をそれぞれ独 立変数とする重回帰分析を行った.その結果, 「多彩な造血 器腫瘍の病態,治療の理解」には, “造血器がん看護経験年. Ⅴ.考察 1.困難感の実態. 数” (β =-.39,p=.001) , “造血器がん看護に関する院内研. 造血器がん患者の診断期から治療期,終末期まで,様々. 修の受講経験” (β =-.39,p=.001)が有意な関連性を示し. な治療に対応しつつ日々のケアに携わる看護師が感じる困. た. 「終末期の療養場所の選択,実現への支援」には, “緩. 難感について,尺度を用いて定量的に検討した.その結果,. 和ケアカンファレンス参加経験” (β =-.34,p=.010)が有. 「長期にわたる患者・家族の心理的支援,意思決定支援」.
(5) 17. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年 表2 造血器がん患者の看護に携わる看護師の困難感の各項目に関する記述統計. (n =56) 項 目. 平均 ± SD. 因子1 長期にわたる患者・家族の心理的支援,意思決定支援 [項目得点平均値:3.8] 17. つらい治療や死をイメージすることで生じる患者の不安を和らげる. 3.9 ± 1.0. 18. 難治性・再発・終末期の患者が表出する怒りや悲嘆を受け止める. 4.0 ± 1.0. 19. 侵襲的検査(採血・骨髄穿刺)を繰り返し受けることへの負担感を和らげる. 3.4 ± 1.0. 20. リスクの高い治療(造血幹細胞移植)を受けることへの不安を和らげる. 3.8 ± 1.0. 21. 長期にわたって治療を続ける患者に闘病意欲を持ち続けられるような支援を行う. 3.9 ± 1.0. 22. 終末期で化学療法や輸血を受ける患者の心境や今後望んでいることを理解する. 3.6 ± 1.1. 23. がん告知から治療開始まで時間的猶予がない患者が,治療を十分に理解できるように支援する. 3.8 ± 0.9. 24. 再発した患者が初回とは異なる治療の選択肢や効果を理解し,選択・決定できるように支援する. 3.8 ± 1.0. 27. つらい治療や死をイメージする家族の不安を和らげる. 4.0 ± 0.8. 28. 青年期・壮年期にある患者が持つ,患者の将来に対する不安を和らげる. 4.1 ± 0.8. 29. 治療の効果に過度の期待を持つ家族が,現状を受け入れられるように関わる. 3.9 ± 0.9. 30. 患者の長期入院により疲労が蓄積した家族を支援する. 3.7 ± 0.9. 31. 最期まで積極的な治療を受けて亡くなったり,急変によって亡くなったりした家族の気持ちを受け止める. 3.9 ± 0.9. 因子2 多彩な造血器腫瘍の病態,治療の理解 [項目得点平均値:3.2] 01. 患者になぜその治療が行われているのかについて,病態・病型・病期から理解する. 3.2 ± 1.0. 02. 患者に行われる治療効果の見込みについて,病態・病型・病期から理解する. 3.2 ± 1.0. 03. 各種抗がん剤における,適応疾患や使用上の注意点,副作用の特徴を理解する. 3.0 ± 1.0. 04. 全身照射(TBI)や全脳照射が行われる目的,起こりうる有害事象を理解する. 3.1 ± 1.2. 05. 造血幹細胞移植にどのような有害事象が起こりうるか理解する. 2.9 ± 1.0. 06. 造血幹細胞移植後の GVHD の対応に関する指導を行う. 3.4 ± 1.1. 13. 治療を受けた患者の急変(呼吸不全・敗血症・出血)リスクを予測する. 3.6 ± 1.0. 因子3 化学療法や全身状態の悪化による有害事象の予防・緩和 [項目得点平均値:3.0] 07. 血液疾患そのものによる症状(貧血・発熱・疼痛)を適切に緩和する. 3.0 ± 1.0. 08. 化学療法による悪心・嘔吐・食欲低下を適切に予防・緩和する. 2.8 ± 1.0. 09. 造血機能が低下した患者に,リスク(転倒・出血)に応じた安全対策を適切に講じる. 2.8 ± 1.0. 10. 化学療法による便秘・下痢を適切に予防・緩和する. 2.8 ± 1.1. 11. 治療による長期臥床や体力消耗で生じる筋力低下を適切に予防・改善する. 3.1 ± 1.0. 12. 治療や状態の悪化によって出現した倦怠感を適切に緩和する. 3.4 ± 1.1. 因子4 医師との連携 [項目得点平均値:3.4] 32. 患者の持つ知識や希望に合わせた病状の説明をしてもらえるよう医師と相談する. 3.2 ± 0.9. 33. 終末期の患者に化学療法を行うことの妥当性について医師と相談する. 3.5 ± 0.9. 34. 終末期の患者に高カロリー輸液や輸血を継続することの妥当性について医師と相談する. 3.4 ± 1.0. 35. 終末期の患者に侵襲的検査(採血・骨髄穿刺)を行うことの妥当性について医師と相談する. 3.4 ± 1.0. 因子5 造血幹細胞移植による合併症の緩和 [項目得点平均値:3.6] 14. 造血幹細胞移植後に出現する GVHD による皮膚症状を適切に緩和する. 3.6 ± 1.1. 15. 造血幹細胞移植後に出現する GVHD による消化器症状を適切に緩和する. 3.7 ± 1.1. 16. 造血幹細胞移植後に出現する疼痛を適切に緩和する. 3.6 ± 1.2. 因子6 終末期の療養場所の選択,実現への支援 [項目得点平均値:3.8] 25.終末期の患者が,緩和ケア病棟や在宅医療では輸血や化学療法を行うことが難しいと十分に理解した上で,療養場所を 選択できるように支援する. 3.9 ± 1.0. 26. 患者が最期を過ごしたいと思う療養場所が実現できるよう支援する. 3.7 ± 1.0. SD: standard deviation,標準偏差. 「終末期の療養場所の選択,実現への支援」に対する困難感. 同様の結果が示されている.これらの支援は,造血器がん. が高く,これらについて造血器がん患者の看護に携わる看. 患者のケアに携わる看護師にとって共通して困難感を抱え. 護師は,特に困難感を抱いていることが示された.古川. やすいケアと考えられる.なお,他の下位因子得点も古川. (2016)の尺度開発時の研究においても, 「長期にわたる患. (2016)の結果と類似した得点を示しており,これは,本. 者・家族の心理的支援,意思決定支援」 「終末期の療養場所. 研究対象者の看護師経験年数および造血器がん看護経験年. の選択,実現への支援」は,他の因子よりも得点が高く,. 数が古川(2016)の研究の対象者に比べて若干短いもの.
(6) 18. 永井,ほか:造血器がん患者の看護において看護師が抱く困難感と関連因子 表3 困難感の6下位因子と緩和因子における平均得点および尖度,歪度 (n =56). 困難感の6下位因子. 得点範囲. 平均 ± SD. range. 尖度. 歪度. 因子1 長期にわたる患者・家族の心理的支援,意思決定支援 (13項目). 13 - 65. 49.9 ± 10.2. 18 - 65. 0.92. -0.94. 因子2 多彩な造血器腫瘍の病態,治療の理解 (7項目). 7 - 35. 22.5 ± 6.1. 9 - 35. -0.87. -0.15. 因子3 化学療法や全身状態の悪化による有害事象の予防・緩和 (6項目). 6 - 30. 17.8 ± 5.4. 6 - 30. -0.65. 0.15. 因子4 医師との連携(4項目). 4 - 20. 13.4 ± 3.3. 8 - 20. -0.65. 0.52. 因子5 造血幹細胞移植による合併症の緩和(3項目). 3 - 15. 10.8 ± 3.0. 3 - 15. -0.55. -0.42. 因子6 終末期の療養場所の選択,実現への支援(2項目). 2 - 10. 7.6 ± 1.8. 2 - 10. 0.22. -0.58. 患者と1対1で関わる時間を確保する. 0-4. 2.4 ± 0.8. 1-4. -0.13. -0.82. 家族とかかわる時間を確保する. 0-4. 1.6 ± 0.8. 1-4. 0.14. 0.55. 看護師同士の日々のカンファレンスで 充実した意見交換を行う. 0-4. 2.1 ± 0.8. 0-3. -1.02. 0.04. 看護師同士で 患者や病状に関する情報を共有する. 0-4. 2.7 ± 0.7. 0-3. 1.14. -1.12. 他職種も含めた医療チームで 充実した意見交換を行う. 0-4. 2.2 ± 0.9. 0-4. -0.28. -0.64. 他職種も含めた医療チームで情報を共有する. 0-4. 2.4 ± 0.9. 0-4. -0.12. -0.97. [ケア時間の確保]. [ケアにおける情報共有]. 緩和因子. [チームのコミュニケーションの充実]. [周囲のサポート] 上司の支援. 3 - 12. 8.1 ± 2.0. 3 - 12. -0.21. 0.09. 同僚の支援. 3 - 12. 9.3 ± 1.7. 6 - 12. -0.27. 0.02. SD: standard deviation,標準偏差. の,類似していたことに因るものと推察される.したがっ. 者にとって移植を受ける時期は「造血幹細胞移植に伴う身. て,本研究は岡山県の看護師を母集団としており,サンプ. 体的・精神的苦痛によって死の不安が再び強くなる時期」. ルサイズは小さいものの,造血器がん看護に携わる看護師. であるとされており(山口ら,2007) ,長い治療過程の中. の特徴をある程度有した集団であると考えられる.. でも移植を受ける時期にある患者は,特に死への不安が強. 困難感の項目でみると,青年期・壮年期にある患者の将. まっていると推察される.森ら(2008)は,看護師が造血. 来に対する不安を和らげることや,患者が表出する怒りや. 幹細胞移植前後に患者に提供している看護援助の課題とし. 悲嘆を受け止めること,つらい治療や死をイメージする家. て,移植前後ともに心理的支援の難しさを挙げている.最. 族の不安を和らげることに対して,特に困難感を抱いてい. も精神的不安が強くなると考えられる移植期に,患者・家. る状況が示された.がん看護に関わる看護師の困難感を捉. 族へ心理的支援を行うことは,看護師にとって非常に大き. えることを目的とした研究(直成ら,2016)では,患者・. な困難感を与えると考えられる.. 家族とのコミュニケーションに関する困難感が高いという. その一方で,移植前の患者の心理的安定を導く医療者の. 結果が示されており,本研究と類似する点も見受けられ. サポートは,情報的なものよりも情緒的なもののほうが効. た.一方で,他のがんに比べ,白血病に代表される造血器. 果的であるとの報告も存在する(外崎,2004) .また,看. がんは青年期・壮年期の患者に多い特徴がある(国立がん. 護師が自分の身になってくれたこと自体が励みになり,治. 研究センターがん情報サービス,2019) .発達上の課題か. 療を頑張ろうと思えたことを示す報告もある(山口ら,. ら考えても,患者から社会的・心理的な葛藤に関連して生. 2014) .心理的支援は造血器がん看護に携わる看護師に. じる不安や感情が表現されやすく,看護師がこれらを和ら. とって困難感の高い支援であるが,移植を受ける患者に必. げることに難しさを感じていることを示している.また,. 要とされている支援でもある.したがって,心理的支援に. 造血器がん患者は発症当初から無菌室に入室し,家族とも. 対する困難感の軽減は,看護師・患者・家族いずれにとっ. 隔離され,医療者以外との関わりが制限された環境で治療. ても意義ある課題と考えられる.. に臨まなければならない.再発する可能性を抱え,不確か. 2.困難感に関連している因子. な状況に対するストレスも大きい.このような中で,怒り. 相関分析からは,困難感に関係する因子として,造血器. や悲嘆,不安など,患者が抱く様々な負の感情は看護師に. がん看護経験年数,緩和ケアカンファレンス参加経験,造. 向けられやすいと考えられる.そして,造血幹細胞移植を. 血器がん患者看取り経験人数,造血器がん看護に関する院. 受ける場合,更に治療期間が長期にわたることとなる.患. 内研修の受講経験,造血幹細胞移植に関するカンファレン.
(7) .03. 終末期の療養場所の選択,実 現への支援. .01. -.06 .02. -.17. -.08. -.19. -.18. -.13. -.34*. -.21. -.38**. -.36**. -.38**. -.21. -.32*. -.12. -.05. -.26. -.15. -.13. -.18. -.35**. -.13. -.31*. -.42**. -.22. .02. -.16. .02. -.18. -.14. .00. -.06. -.36**. -.26. -.11. -.36**. -.21. -.33*. 緩和ケアカンファレンス参加経験. 終末期の療養場所の選択,実現への支援. 注:変数増加法による重回帰分析 困難感の各下位因子の独立変数には,相関分析で -0.3以上の有意な係数値を示した変数を用いた. †:モデルに投入され,最終モデルとして示された変数のみを示した.. .09. .16. .02. .007 .010. -.34. < .001. .007. .001. -.21. .01. -.03. -.07. -.09. -.02. 他職種 も含め た医療 チーム で充実 した意 見交換 を行う. (n =56). -.12. .00. -.03. -.04. -.06. -.03. 他職種 も含め た医療 チーム で情報 を共有 する. .118. .129. .219. .126. .327. -. .18. .29. .25. .09. .21. .21. .22. .22. .11. .27. .24. .22. .80**. .68**. .51**. .57**. .58**. -. .54**. .73**. .39**. .63**. -. 長期に わたる 患 者・ 多彩な 家族の 造血器 心理的 腫瘍の 支 援, 病 態, 上司の 同僚の 意思決 治療の 支援 支援 定支援 理解. 決定係数(R2). -.03. .10. -.02. .001. p値. -.18. -.06. -.24. -.09. -.15. -.14. 看護師 同士で 患者や 病状に 関する 情報を 共有す る. 緩和因子. -.36. -.47. 造血器がん看護経験年数. -.36. 緩和ケアカンファレンス参加経験. -.39. 造血器がん看護に関する院内研修の受講経験. - -.39. 造血幹細胞移植に関するカンファレンス参加経験. -.11. -.12. -.25. -.16. -.23. 家族と 関わる 時間を 確保す る. 看護師 同士の 日々の カンファ レンス で充実 した意 見交換 を行う. 標準偏回帰係数. -.21. -.05. -.10. -.14. -.23. -.13. 患者と 1対1で 関わる 時間を 確保す る. 造血器がん看護経験年数. -. 独立変数†. -.05. .00. .03. -.05. .02. .04. デスカ ンファ レンス 参加経 験( 有 無). 表5 困難感の各因子を従属変数とした重回帰分析†. -.26. -.04. .00. -.19. -.06. -.18. 医師との連携. -.13. -.23. -.47**. -.20. -.42**. -.12. 意思決 定支援 に関す る研修 参加経 験. 知識やスキルの獲得因子 コミュ ニケー ション スキル 緩和ケ に関す アカン 造血器 移植カ る研修 ファレ がん患 ンファ 参加経 ンス参 者看取 院内研 院外研 レンス 験( 有 加経験 り経験 修受講 修受講 参加経 無) (有無) 人数 経験 経験 験. 造血幹細胞移植による合併症の緩和. 化学療法や全身状態の悪化による 有害事象の予防・緩和. 多彩な造血器腫瘍の病態,治療の理解. 長期にわたる患者・家族の心理的支援, 意思決定支援. 従属変数 (困難感の6下位因子). 付記; p < .05,. p < .01. .05. **. -.16. -.07. 医師との連携. 造血幹細胞移植による合併症 の緩和. *. -.04. .05. 化学療法や全身状態の悪化に よる有害事象の予防・緩和. -.12. -.07. .05. 多彩な造血器腫瘍の実態,治 療の理解. 年齢. .12. 困難感の6下位因子. 長期にわたる患者・家族の心 理的支援,意思決定支援. 造血器 がん看 護経験 看護師 年数 経験年(カテゴ 数 リー). 背景因子. 表4 困難感の6下位因子と各変数間の相関分析. .52**. .65**. .33*. -. .39*. .33*. -. .61**. -. 化学療 法や全 身状態 の悪化 造血幹 による 細胞移 有害事 植によ 象の予 る合併 防・ 緩 医師と 症の緩 和 の連携 和. 困難感の6因子. -. 終末期 の療養 場所の 選 択, 実現へ の支援. (n =56). 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. 19.
(8) 20. 永井,ほか:造血器がん患者の看護において看護師が抱く困難感と関連因子. ス参加経験,家族と関わる時間の確保が示された.重回帰. る試みで,変化をもたらす可能性もあるかもしれない.患. 分析の結果から,造血器がん看護経験年数は, 「多彩な造血. 者・家族の心理的支援,意思決定支援に関連する因子を探. 器腫瘍の病態,治療の理解」 「医師との連携」といった複数. 索することは今後の重要な課題と考える.. の下位因子の関連因子であり,偏回帰係数値は他の変数よ. 3.研究の限界と今後の課題. り高く,経験年数が長いほどこれらの困難感が低いことが. 本研究の限界として,サンプルサイズが小さかったこと. 示された.緩和ケアカンファレンス参加経験も「化学療法. が挙げられる.そのために,関連因子として検討する変数. や全身状態の悪化による有害事象の予防・緩和」 「終末期. を選択せざるを得なかった.また,研修や勉強会,カン. の療養場所の選択,実現への支援」といった複数の困難感. ファレンスなどの具体的な内容については明らかにしてい. の下位因子に関連しており,看護師の困難感に対して影響. ない.より多くの対象者で結果を確認することや,困難感. 力を持つ因子であることが示唆された.加えて造血幹細胞. に影響を与える因子についてより具体的に明らかにしてい. 移植に関するカンファレンスへの参加経験が困難感に関連. く必要があると考える.. することも示唆された. 緩和ケアカンファレンスに関しては,終末期がん看護に 限定したものではあるが,緩和ケアに関する学習ニーズは. Ⅵ.結論. 経験年数に関わらず高く,学習ニーズに対する研修を行う. 造血器がん看護に携わる看護師は「長期にわたる患者・. ことで困難感の軽減が期待できることを示した報告も存在. 家族の心理的支援,意思決定支援」 「終末期の療養場所の選. する(西脇ら,2011) .本研究では,学習ニーズに関する. 択,実現への支援」に対する困難感が高く,その中でも特. 質問項目は設定していなかったが, 「終末期の療養場所の. に心理的支援に関する困難感を抱いていた.関連因子とし. 選択,実現への支援」についての困難感が高かったことを. て,造血器がん看護経験年数に加えて,緩和ケアカンファ. 踏まえると,終末期を視野に入れた上で移植前後の段階か. レンスや造血幹細胞移植に関するカンファレンスへの参加. ら緩和ケアカンファレンスに重点を当てることは,困難感. 経験などが示された.移植前後の段階からの緩和ケアに関. の軽減に繋がる可能性があると考える.本研究の対象者の. する研修・カンファレンスの充実化を図ることや,日常業. 約半数が緩和ケアカンファレンスの経験がなかったことを. 務の中で時間的余裕が持てるような環境を構築していく必. 考えると,緩和ケアカンファレンスを充実させ参加回数を. 要性が示唆された.また,心理的支援に関連する因子を探. 増やしていく試みは,困難感を軽減する方策として有用で. 索し,困難感を軽減するための具体的検討を行うことが今. はないかと考える.. 後の課題である.. また, “家族と関わる時間を確保する”は,重回帰分析の 結果単独で有意に関連する変数ではなかったが,相関分析 では「終末期の療養場所の選択,実現への支援」に関係を 認めている.家族と関わる時間の確保を持つためには,日. 謝 辞 本研究にあたりご協力いただきました皆様に心よりお礼 申し上げます.. 常業務の中で時間的余裕を持つことが必要であると考えら れる.東口ら(1998)は,患者の心のケアをする時間がな いことや,患者や家族の心の支えになれないことに看護師. 利益相反 本研究における利益相反は存在しない.. は葛藤しており,ストレインが高い看護職者はバーンアウ ト(燃え尽き)に陥りやすい,と述べている.時間的余裕 を持ちながら働くことは容易ではないと考えられるが,時 間的余裕を持てる環境を構築していくことは,困難感の軽 減を図っていくうえで必要と考えられる. 本研究においては,困難感の平均の高かった項目を含 み,因子の中での得点も高かった「長期にわたる患者・家 族の心理的支援,意思決定支援」に関連する因子を特定で きなかったことも重要な知見である.関連因子が特定でき なかった要因として,看護経験年数や研修・カンファレン スなどへの参加で得た経験値や知識では,心理的支援に対 する困難感を補えていないということが考えられる.患者 や家族が置かれる状況は多種多様であり,看護師は個々の 事例に応じた心理的支援を行っていく必要があるため,心 理的支援に関連した困難感は複雑なものとなっていること が推察される.ただし, 「長期にわたる患者・家族の心理的 支援,意思決定支援」は, 「終末期の療養場所の選択,実現 への支援」因子との間に強い相関を認めており, 「終末期の 療養場所の選択,実現への支援」に関する困難感を軽減す. 文 献 古川陽介(2016) :造血器腫瘍患者の看護に携わる看護師 の ケ ア に お け る 困 難 感 尺 度 の 開 発,Palliative Care Research,11 (4) ,265-273. 東口和代,森河裕子,由田克士,他(1998) :病院勤務看 護職者の職業性ストレス反応と職場ストレス要因,北 陸公衆衛生学会誌,24 (2) ,55-60. 国立がん研究センターがん情報サービス(2019) :がんの 統計 ’19,2020-03-25,https://ganjoho.jp/data/reg_stat/. statistics/brochure/2019/cancer_statistics_2019_fig_ J.pdf 厚生労働省労働基準局安全衛生部 労働衛生課産業保健支 援室(2019) :労働安全衛生法に基づくストレスチェッ ク制度実施マニュアル 改定令和元年,2018-07-11, https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei 12/pdf/150507-1.pdf 九州大学病院がんセンター(2018) :造血器悪性腫瘍,2018- 06-04,https://www.gan.med.kyushu-u.ac.jp/result/ hematological_malignancies/index 水野道代(2003) :長期療養を続ける造血器がん患者が希.
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