がんサバイバーがセルフヘルプグループでの
活動を通じて新たな役割を獲得するプロセス
室 田 紗 織, 武 居 明 美, 神 田 清 子
要 旨 【目 的】 がんサバイバーが, セルフヘルプグループ (SHG) での活動を通じて, 新たな役割を獲得するプロ セスを明らかにする. 【対象と方法】 SHG で活動するがんサバイバー10名を対象に, 半構成的面接を行い, M-GTA の手法を用いて 析を行った. 【結 果】 がんサバイバーが SHG での活動を通じて新たな役割を 獲得するプロセスは,『他のがんサバイバーへ抱き始める関心』から始まった.『がんサバイバーからの享受 と相互作用の実感』を得ながら活動を継続していく中で,『社会のために活動する役割意識』へと向かってい た.また,「がんゆえに生じる恒久的な苦悩」が影響していた. 【結 語】 がんの恩恵を見出すことが新たな 役割を得るために欠かすことができないステップであった. またがんサバイバーは, SHG の情報提供機能を 求めていた.そのため看護師は,他のサバイバーとの相互作用を高める関わり,SHG が的確な情報提供の場に なるような支援を行うことが求められる.(Kitakanto Med J 2013;63:125∼131) キーワード:がんサバイバー, セルフヘルプグループ, 役割獲得, 修正版グランデットセオリー・アプ ローチ .は じ め に がんは, 現代社会において二人に一人が罹患すると推 定され, もはや一般的な疾患の一つであると えられる. さらに診断・治療技術の進歩により, 必ずしも死に至る 病気ではなくなりつつある. 部位により差異はあるもの の, 全がんにおける 5年生存率の平 は, 56.9% と着実 に 長しており, がんと共存する期間が長期化している. このような流れは先に欧米諸国で生じている. 1986年, 全米がんサバイバーシップ連合 (NCCS) は, がんと診断 されてから死の瞬間まで生存者であり続けるという思い を込め, がんと診断された人 をがんサバイバーと定義 している. この え方は, がんと共に生ある限り人間ら しく,自 らしく生きるという,生き方の転換であり, 我 が国にも広がりを見せている. 一方,1981年以来,がんは日本の死因第一位であり,命 に関わる病気であるとの認識が 8割以上を占め, 死に直 結するイメージは, 未だ根強い. またがん体験は, 告知か らその後の治療, 副作用による苦痛やボディイメージの 変容など, 苦痛な体験の連続である. そのような苦痛を 抱えながらも,早期発見・早期治療を呼びかけ,がん撲滅 の啓発活動の実施や, 自らのがん体験を 表することに より他のがん患者を勇気づけようとする試みを行うな ど, 自身のがん体験を社会活動に生かそうとするがんサ バイバーも存在する. がんを人格成長のための機会と して捉える えがあるが, 社会活動を行うがんサバイ バーには, がん体験を社会に発信していくという行為を 通して, 何らかの内的変化が生じていると える. 様々な課題に直面してきたがんサバイバーが, 同様の 課題に直面する同病者を支える意味は大きい. 当事者が 主体となり活動するセルフヘルプグループ (以下 SHG とする) においては, 同病者の存在に勇気づけられる と いった情緒的効果や, 同病者からの情報共有の効果が報 告されており, 増々の発展と活発化が期待される. また, 2012年に厚生労働省が掲げた, がん対策推進基 本計画には, 体験者によるがん患者への相談支援の充実 が掲げられている. このように, もはやがんサバイバー は, ケアの一方的な受け手ではなく, 他のがんサバイ 1 東京都中央区明石町9-1 聖路加国際病院 2 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科 平成25年2月18日 受付 論文別刷請求先 〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保 学研究科 神田清子バーへの支援を期待される立場へと変化しており, その ような社会的活動を行う能力を高める看護支援が求めら れる. これらのことから, がんサバイバーが, どのような流 れで社会的活動を行うに至るのか, には活動を継続し ていくのか, そのプロセスを明らかにすることが, 有効 な看護支援の検討につながると える. がんサバイバーに関する研究では, 島田が, がんサバ イバーは様々な苦痛とともにゆらぎを体験しており, ゆ らぎの状態はがんサバイバー自身の困難を乗り越えよう とする潜在能力を引き出すことのできる状態である と し, 心の揺らぎが, 困難を乗り越えて前に進む力になっ ていることを明らかにしている. また, 瀬山らは, がん患 者の社会的役割はがん罹患によって脅かされる こと, 川村は, 長期がんサバイバーが生きる意味を見いだすプ ロセスは, がんの罹患によって《生きられる時間に対す る認識》が変化し, それによって《自 の存在価値の模 索》が繰り返し行われるプロセスである ことを報告し ている. このように, がんサバイバーが, がん罹患及び闘 病期間によって困難を乗り越える力, またがん罹患に よって損なわれる社会的役割や, 新たな生きる意味の模 索についての研究がなされている. しかし, がんサバイ バーが体験を生かし, 社会活動へと至るプロセスに関し ては, 明確にされていない. そこで本研究では, がんサバ イバーが SHG において自らのがん体験を通して社会と 関わる中で新たな役割を獲得するプロセスを明らかに し, がんサバイバーを支える看護支援を検討することを 目的とした. .本研究における用語の定義 1.役割の獲得 役割とは, 一定の社会的位置にある個人にふさわしい ものとして期待されている行動の様式をいう. 本研究 では, 社会の集団において個人の社会的位置におけるふ さわしい行動様式を見出し, それを目的として活動しよ うという意思を抱くこととする. 2.がんサバイバー 本研究では, 全米がんサバイバーシップ連合 (NCCS) の定義である がんと診断された人 を用い, がんと診 断された時から最期の時まですべての時期にある人とす る. .方 法 1.研究デザイン 因子探索研究デザイン 2.研究期間 平成 23年 6月∼平成 23年 12月 3.対象及び場所 1)対象:本研究の対象者 10名は,G 県がん患者団体連 絡協議会へ入会している患者会, がんサロンに所属し, 会が実施する社会的活動を, 6か月以上実施しているが んサバイバーであり, 各会の代表者からの推薦者 9 名. また, G 県の患者会等の活動について 6か月以上積極的 に活動していると研究者が判断した者 1名を含めた. 研 究の趣旨を理解し参加に同意が得られた者を対象者とし た. なお, 6ヵ月という期間は行動変容ステージにおいて, 明確な行動変容が継続しているとみなす維持期にあた る ため, 設定した. 2)場所:対象者のプライバシーが保たれる個室, また は個室に準ずる場所を, 対象者と相談のうえ決定した. 4.データ収集方法 1)概要調査:独自に作成した質問用紙にて, 対象者の 性別などを調査した. 2)半構成的面接:インタビューガイドを用いて実施し た. 面接内容は, がんと診断されてから, 現在に至るまで の思い, ①所属している会に入るまで, ②入会してから の思いやメンバーとの関わりを自由に語る形式とした. 内容は, 録音の同意が得られた場合は IC レコーダーを 用いて録音を行った. 5.データ 析方法 本研究は, がんサバイバーの体験に焦点をあて, SHG での活動を通して変化していく役割への認知プロセスを 明らかにすることを目的としているため, 修正版グラウ ンデット・セオリー・アプローチ M-GTA を用いた. 析テーマは, がんサバイバーがどのような心理的過程 を経て SHG へ入会し, SHG での活動を通じてどのよう に新たな役割を獲得していくのかその一連のプロセス」 とし, 析焦点者を「SHG での社会的活動を通じて新た な役割を見出すがんサバイバー」とした. 析方法として, IC レコーダーから逐語録を作成し, テーマに関する内容を抽出し概念を形成した. 概念の関 係性を検討しカテゴリー, コアカテゴリーを生成した. 概念とカテゴリー, コアカテゴリー相互の関係を 慮し 結果をまとめ, プロセスになる結果図を作成した. 析は, がん看護に精通し, 研究歴が豊富な研究者か ら助言を受け, 真実性・透明性の確保に努めた. 6.倫理的配慮 本研究は, 群馬大学の倫理審査委員会に承認を得て
行った (承認番号 23-10). また, 研究協力者に対しては, 研究目的, プライバシーの保護, 同意撤回の自由につい て書面を用いて口頭で説明した上で, 署名にて研究参加 同意を得た. 面接の録音については了承が得られた場合 のみ行った. .結 果 1.対象者の概要 (表 1) 対象者は患者会・がんサロンで活動するがんサバイ バー10名で, 男性 4名, 女性 6名であった. 年齢は 50歳 代∼80歳で, 平 年齢は 66.9±9.2歳, 診断からの年数は 4∼25年で, SHG 入会からの年数は 2∼23年であった. 2.がんサバイバーがSHGでの活動を通じて新たな役 割を獲得するプロセス 以下,『 』はコアカテゴリー,《 》はカテゴリー, > は概念を示す. がんサバイバーが SHG の活動を通じて新たな役割を 表1 対象者の概要 n=10 性別 年齢 職業 がんの部位 診断からの年数 からの年数SHG 入会 再発・転移の有無 治療内容 A 女 50代 無職 乳腺 4年 4年 無 手術療法 B 男 70代 無職 消化器 19年 15年 無 手術療法 C 女 60代 パートタイマー 消化器 9 年 9 年 有 手術療法・化学療法 D 男 80代 無職 消化器 11年 11年 無 手術療法 E 男 70代 無職 呼吸器 5年 5年 無 手術療法・化学療法 F 女 80代 無職 乳腺 21年 21年 無 手術療法 G 女 50代 自営業 乳腺 5年 2年 無 手術療法・化学療法 H 女 60代 無職 乳腺 16年 16年 無 手術療法 I 女 60代 自営業 消化器(乳腺) 13年(8年) 8年 無 手術療法 J 男 60代 パートタイマー 消化器 25年 23年 無 手術療法 表2 がんサバイバーがセルフヘルプグループでの活動を通じて得る体験 コアカテゴリー カテゴリー 概 念 告知されたときに受ける衝撃・動揺 がんに対する恐怖 差し迫る治療選択の決断への困惑 他のがんサバイバー への関心 がんであると知って味わう 苦痛 自 だけの病気だと一人で抱え込む辛さ 体験者から得たいと願うがんに関する情報 セルフヘルプグループの存在を知り抱く関心 セルフヘルプグループ入会の迷い 自 一人だけが抱えている苦しみではないという気付き 自 一人で え込んでいる 状態から脱却するきっかけ がんサバイバーとの 流により広がる病気に対する え方 がんサバイバーから の享受と相互作用の 実感 互いの治療法や病院情報の共有 互いに助け合っていること の実感 がんサバイバーにしか からない悩みの共有により生まれる仲間意識 がんサバイバーからのアドバイスにより軽くなる心の負担感 人生を大切に生きていこうという思い がん体験をバネにする力 がんになったおかげという思い 活動の中で徐々に見えてくる自 のすべきこと がんサバイバーとしての役 割発見 がんサバイバーだからこそできることの気付き がんサバイバーとして役割を果たしたい 社会のために活動す る役割意識 がん体験を活かすことで得 られる新たな役割の認識 自 にもよい影響をもたらしているという実感 がんによって変化した日常生活で生じる苦労 がんサバイバーとしての辛い立場の実感 がんゆえに生じる恒久的な 苦悩 再発に対する恐怖 果てなく続くより深く詳しい情報入手の希求
獲得していくプロセスは, 22概念から 7カテゴリーが生 成され, 『他のがんサバイバーへの関心』『がんサバイ バーからの享受と相互作用の実感』『社会のために活動す る役割意識』の 3コアカテゴリーが形成された (表 2). データから生成された概念やカテゴリーの関係を矢印で 表し, 相互の関係や変化のプロセスを結果図として示し た (図 1). がんサバイバーが SHG での活動を通して新たな役割 を獲得するプロセスは, がん告知を受けた後《がんであ ると知って味わう苦痛》の経験から始まった. そこから 体験者から得たいと願うがんに関する情報> の思いが 生じ, セルフヘルプグループの存在を知り抱く関心>へ と進んでいた.SHG での活動を継続する中で, がんサバ イバーからのアドバイスにより軽くなる心の負担> と, 《自 一人で え込んでいる状態からの脱却》を行き来 し,《互いに助け合っていることの実感》を得ていく,『が んサバイバーからの享受と相互作用の実感』を経験する. その後,『社会のために活動する役割意識』へと進んでい た. そこでは, 《がん体験をバネにする力》を経て, が んサバイバーだからこそできることの気付き> 活動の中 で徐々に見えてくる自 のすべきこと>から成る,《がん サバイバーとしての役割発見》をしていた. に活動を 継続していく中で, 《がん体験を活かすことで得られる 新たな役割の認識》へと向かっていた.《がんゆえに生じ る恒久的な苦悩》は,SHG 入会後のプロセス全体に影響 を及ぼしていた. 1)他のがんサバイバーへの関心 『他のがん患者への関心』では,医師からのがん告知を 受け, 告知されたときに受ける衝撃・動揺>, がんに対 する恐怖>, 差し迫る治療選択の決断への困惑>, 自 だ けの病気だと一人で抱えこむ辛さ> といった《がんであ ると知って味わう苦痛》の経験から始まっていた. その 後 体験者から得たいと願うがんに関する情報> という 思いを持つことから, セルフヘルプグループの存在を知 り抱く関心>に至っていた.その時 セルフヘルプグルー プ入会の迷い> を感じるサバイバーもいた. 2)がんサバイバーからの享受と相互作用の実感 『がんサバイバーからの享受と相互作用の実感』では, SHG での継続した活動を行っていく中で, 自 一人だ けが抱えている苦しみではないという気付き>, がんサ バイバーとの 流により広がる病気に対する え方> と いう《自 一人で え込んでいる状態からの脱却》を経 験する. 他のがんサバイバーとの関わりの中で悩みを聞 いてもらったり,アドバイスを受けたりすることで, が んサバイバーからのアドバイスにより軽くなる心の負担 感>を感じていた.その後も活動を続ける中で 互いの治 療法や病院情報の共有> や がんサバイバーにしか か らない悩みの共有により生まれる仲間意識> という, 相 手に助けられながらも自 の情報も相手の役に立ってい る, つまり相互作用が生じていると感じていた. 3)社会のために活動する役割意識 『社会のために活動する役割意識』は,がんサバイバー はがんを経験したことで, 生きることの尊さを改めて実 感するといった 人生を大切に生きていこうという思い> を感じていた. また, 新たな患者仲間との出会いを大切 にする がんになったおかげという思い> といった《が 図1 がんサバイバーがセルフヘルプグループでの活動を通じて新たな役割を獲得するプロセス
ん体験をバネにする力》を得ていた.その後 がんサバイ バーだからこそできることの気付き>, 活動の中で徐々 に見えてくる自 のすべきこと>という《がんサバイバー としての役割発見》をする.この役割発見を踏まえて,行 動に移すことで 自 にもよい影響をもたらしていると いう実感 > がんサバイバーとしての役割を果たしたい> を感じる《がん体験を活かすことで得られる新たな役割 の認識》を体験していた. 4)がんゆえに生じる恒久的な苦悩 がんゆえに生じる恒久的な苦悩の体験は, がんに よって変化した日常生活で生じる苦労>, がんサバイ バーとしての辛い立場の実感>, 再発に対する恐怖>, 負の影響を最小限に留めるために続く果てなき情報入 手の希求> から成り,SHG での活動を開始した後のプロ セスに影響を示していた. . 察 1.がんサバイバーがSHGでの活動を通じて新たな役 割を獲得するプロセスの特徴 1)がんサバイバーが新たな役割の獲得に至るきっかけ がんサバイバーは《がんであると知って味わう苦痛》 を体験することにより, 他のがんサバイバーとの語らい を求めていた. これは, ピアサポートへのニーズとして, 治療全般・サバイバーの話・情報検索 が報告されている ように, 迷いながらも乗り越えてきた経験を持つ, 体験 者からの情報を望む思いが強く影響している. つまり, がんと告知され, 様々な苦痛を認識したことが, 他のが んサバイバーへ関心を抱くきっかけになっていた. 《がん体験をバネにする力》は,人格の成長のための機 会として捉えなおすことを意味する benefit-finding で あると えられる. がんサバイバーは, 体験を振り返り, がんの恩恵を見出しているが, これは, 新たな役割を得 るための前段階として, 欠かすことができないステップ である. さらに, SHG でのサポートはがん体験の肯定的 な受け止めを促す要因 であると報告されており, 本研 究においても, SHG の効果が後押しになって benefit-finding が得られていたと える. 《がんサバイバーとしての役割発見》は,『がんサバイ バーからの享受と相互作用の実感』の経験の上に成り立 つ. 他のがんサバイバーとの助け合いや仲間意識の芽生 え, 一体感といった相互作用により, がん体験を意味づ ける力を得て, 新たな役割の存在に気付きを得ている. これら一連の流れが,《がんサバイバーとしての役割発 見》を支えており, がん体験を社会に還元していこうと するきっかけとなっていた. 2)SHGでの活動を継続する要因 人の役に立つ自 を確かめることは自己の存在価値 を確かめる行為である. 《がん体験を活かすことで得ら れる新たな役割の認識》では, 活動を通じてやりがいや 充実感を得ることで, 自己の存在価値を感じている. こ のことが, SHG の活動継続に繫がっていると えられ る. また,《がんゆえに生じる恒久的な苦悩》の一つとして, 負の影響を最小限に留めるために続く果てなき情報入 手の希求>が明らかになった.SHG が持つ,情報共有の効 果 が, SHG の活動を継続する要因ともなっている. 情報を得ることが SHG に関心を抱くきっかけでもあっ たことから,がんサバイバーにとっての「情報」は,他の がんサバイバーとの 流や SHG 所属の大きな理由の一 つであると えられた. 2.がんサバイバーがSHGでの活動を通じて新たな役 割を獲得するプロセスを促進する看護援助 1)他のがんサバイバーとの 流の促進 告知後, がんに関わる様々な苦痛を感じ, 他のがんサ バイバーからの情報を求めていた. これは他のがんサバ イバーと 流を開始するきっかけである. 看護師は, こ のタイミングを逃すことなく, また SHG が多種多様で あることを踏まえ, より適した SHG を紹介し, SHG で の継続した活動が実施できるよう支援する必要がある. に, benefit-finding が得られるように, 他のがんサバイ バーとの関係性の調整や相互作用を高める働き, コーピ ングについての支援を行っていくことが求められる. 2) がんサバイバーが新たな役割を獲得するためのSH G機能の維持・向上 今回, がんサバイバーは, SHG の情報提供の機能を求 めていることが明らかになった. また, 最新の治療情報 に触れる場 の期待も報告されており, 活動を継続して やりがいを実感するためには,SHG の機能の維持・向上 が望まれる.SHG 活動の継続・活性化には,中心的役割を 担う複数のリーダーと複数のサポーターによるネット ワークの確立, SHG としての成熟に向けた工夫 などが 求められている.これらのことから,看護師は,SHG が的 確な情報を提供できるように,SHG に対して専門的知識 の提供や情報の整理等を支援すること, メンバー同士の つながりを深めるよう時にはメンバーへの介入を行うと いった,SHG が円滑に運営されるための支援をすること が必要であると える. .結 論 1. がんサバイバーが SHG での活動を通じて新たな役 割を獲得するプロセスは,『他のがん患者への関心』か ら始まり,『がんサバイバーからの享受と相互作用の実 感』を経て行く中で, 『社会のために活動する役割意
識』に向かうというプロセスであった.また,SHG 入会 後のプロセスには【がんゆえに生じる恒久的な苦悩】 が影響していた. 2. 《がん体験をバネにする力》は,がんの恩恵を見出す ことを表しており, 新たな役割を得る前段階として, 欠かすことができないステップであった. また, がん サバイバーは SHG の情報提供機能を求めていた. こ れらのことから, 看護師は, 他のがんサバイバーとの 相互作用を高める支援, コーピングについての支援, SHG 機能の維持・向上のための支援が必要であると える. .研究の限界と今後の課題 本研究は, 理論的飽和には達していないため, 一般化 には至っていない. 今後は, 理論的飽和化により役割獲 得のプロセスを明確にすること,SHG に所属しないがん サバイバーを対象とした理論生成が課題である. 謝 辞 本研究にご協力いただきました対象者の皆様, ご指導 くださいました先生方に心より感謝申し上げます. 本研究は, 平成 23−25年度科学研究費 (若手研究 B) の助成を受け実施した. 文 献 1. 国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報 サービ ス (2013年 2月 10日閲覧) http://ganjoho.jp/ professional/med info/evidence/index.html 2. 近藤まゆみ,嶺岸秀子.がんサバイバーシップ∼がんとと もに生きる人びとへのケア∼. 東京 : 医歯薬出版, 2006: 2-3. 3. 田中登美, 梶村郁子, 林田裕美ら. 一般市民のがん医療と 看護に対する認知およびがん医療従事者への期待. 大阪 府立大学看護学部紀要 2012; 18(1), 85-95. 4. 佐藤恵子.がんサロンに参加するボランティアの体験.日 本がん看護学会誌 2012; 26(1): 32-39. 5. CSR プロジェクト (編). がんと一緒に働こう 必携 CSR ハンドブック. 東京 : 合同出版, 2010. 6. 下裕子. 明るい光のさす方へ 乳ガンが教えてくれた こと. 東京 : 文芸社, 2012. 7. 影山和子. ガンのある日常―体験者 18人のいのちの力. 東京 : NTT 出版株式会社, 2003.
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The Process by which Cancer Survivors Acquire
New Roles through the Activities of Self-help Groups
Saori Muroda,
Akemi Takei
and Kiyoko Kanda
1 St Lukes International Hospital 9-1 Akashi-cho, Chuo-ku, Tokyo 104-8560, Japan 2 Gunma University Graduate School of Health Sciences, 3-39-22 Showa-machi, Maebashi,
Gunma 371-8514, Japan
Objective: To elucidate the process by which cancer survivors acquire new roles through the activities of self-help groups (SHG). Subjects and M ethods: Semi-structured interviews were conducted on 10 cancer survivors participating in SHG, and the data were analyzed using the modified grounded theory approach (M-GTA). Results: The process by which cancer survivors acquire new roles through the activities of SHG began with a growing interest in other cancer survivors . Survivors continued to engage in activities while attaining realization of enjoyment and interactions with cancer survivors ,and thereby developed role awareness for contributing to society . Cancer survivors also had a permanent pain associated with cancer . Conclusion : The suffering resulting from the diagnosis of cancer trigger-ed an interest in SHG. In addition, cancer survivors were constantly in search of more in-depth and detailed information,and SHG played an important role in the exchange of information. It is important for nurses to promote interactions while providing support that enables SHG to serve as a source of accurate information(Kitakanto Med J 2013;63:125∼131)