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〈特集: 精神科診療における精神療法・カウンセリングの必要性について〉私にとっての精神療法

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Academic year: 2021

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(1)Bulletin of Center for Clinical Psychology Kinki University Vol. 6 : 5 〜 6 (2013). 5. 特集:精神科診療における精神療法・カウンセリングの必要性について. 私にとっての精神療法 川 村 博 司 (KAWAMURA, Hiroshi) 向陽病院. 現在私は私立の精神科病院に勤務しており、入院患者の診療の他に、週 1 回の外来診療と 思春期を対象とした予約制の半日の外来診療を行っている。急性期や徐々に重度化している 慢性期の長期入院患者への対応に悪戦苦闘している現状だが、一方で外来診療も重要な仕事 と感じてきた。入院、外来に関らず治療の中心はあくまで精神療法と考え実践してきたが、 そこには未だに迷いも多く充分なものとは言い難い。今回これまでの外来での診療スタイル を中心に振り返ってみようと思う。 現在の外来診療は予約制でないため、どうしても待ち時間が長くなる。にもかかわらず一 日約 40 名余の方が受診され、それ自体は大変有難いが、その分責任の重さを感じている。 患者にとってその日受診したことが何らかの意味のあるものとなるには、一人一人にきっち り向き合うことが大切である。そのためにはこちらの集中力や充分な体力が必要で、外来日 の前日から強迫的に体調を整えるのが常となっている。診療時間枠の限られた中での精神療 法的関りとなると、やはり支持的スタンスが中心となる。ただし支持的と言えども患者の話 からこちらが感じたことを伝え返すことも必要で、そこからやり取りが生まれ、患者の中に 安心感や治療者との連帯感か生まれてくる。その場合支持されているという患者の実感こそ が大切だと思っている。特別な治療技法を駆使できるほどの力量もゆとりもないのが事実だ が、常に患者を取り巻く家族や環境、社会状況などにもしっかり関心を持ち、一回一回の診 察を大切にと心掛けている。 もちろん治療として薬物療法も併用していることが多いが、その場合も薬物の役割や副作 用について話し合うことが患者の不安、病気との向き合い方などの理解につながると考えて いる。薬物の一定の効果は認めているが、ただ昨今あまりにも薬物万能の風潮、特に非定型 抗精神病薬が登場して以来、それに対する期待の大きさや大袈裟な扱い方にはいささか疑問 や戸惑いを感じてきた。実際非定型抗精神病薬が次々と発売され、製薬会社により従来の抗 精神病薬から新薬に変更した症例の高い改善率が示され、臨床医からも同様の報告が続くと、 精神科治療は薬物療法だけで十分なのではと自らの精神療法観が揺らいだ時期もあった。し かし最近再び非定型抗精神病薬の効能が見直されており、今後の行方を注目しているところ.

(2) 6. 近畿大学臨床心理センター紀要 第 6 巻 2013年. である。 さて、この今の自分の診療スタイルの原点を考えてみると、大学病院での研修医期間も含 めた約 10 年間にあると言える。そこでは精神科治療に精通した恩師やたくさんの個性的な 先輩の精神科医に恵まれ、その診察につかせていただき、そこから学んだ診療スタイルであ る。その診察方法はまさに様々で、例えばただひたすら患者の話に耳を傾け、評価や結論め いたことは一切語らないやり方や、患者の話を基に問題点を共有し、心構えや対処の仕方を 共に考え示していくという支持的でありながら指示的でもあるやり方。また患者の主観的な 訴えはさておき、その言動を客観的にとらえ、その奥の意味を力動的に解釈しながら治療を 進めていくやり方、また患者の話をほんの少し聞いただけで上手に結論へと至り、投薬して 終わりという何とも物足りない感じであるのに患者は意外と満足し、治療者との関係は良好 に続いている場合などである。こうした違いを見てくると、確かに患者の状態やニードに応 じた診療スタイルというものを選択しているとも言えるが、それよりはむしろ治療者側の特 性、つまり性格や人生観、医療観などの違いが関係していると感じられた。精神疾患に対す る考え方、診断の持つ意味、薬物療法や精神療法の役割などに迷う中、色んなスタイルを取 り入れながら、まず「話を聞くこと」から始め、自分にとってしっくりくる、自分なりの 「味」が出せるスタイルを模索し現在に至っている。また当時、縁あって心理職やPSWの 人達との交流も多く、そこから学んだことは患者を診る時に身体面だけでなく心理社会的な 視点の重要性であり、つまり疾患だけを見るのではなく 1 つのケースとして見立て、対応し ていくことの大切さである。 こうした経緯の中、ある意味のんびりとマイペースで精神療法を主軸に診療して来れたが、 昨今の医療環境はずいぶん変化してきたように思う。私事で恐縮だが最近、自らの身体の不 調で患者として病院を受診することが多い。その際自分(患者)の感じている細かい症状や それへの不安、苦痛などは殆ど聞いてもらえず、身体にも触れる事なく検査の予定が組まれ て行くといった機械的な対応がなされる。画像などから診断がつくと、自分の訴える症状は その疾患のためと説明され治療へと進んでいく。確かに診断がついて一段落だが、患者とし ては何か釈然としない。恐らく色んなことを考えて受診した患者にとって症状への不安、複 雑な心境を共有してくれている実感がないのだろう。患者になって初めて分る事だが、この ことは精神科でも起こっており、患者の示すいくつかの症状から操作的に診断がついてしま うと、患者の心情に対する共感的な配慮が疎かになってしまいがちである。最近、精神科で も治療ガイドラインというものが重宝されているが、ガイドラインを真に有用なものにする 為にも、診断までの過程を丁寧に扱い、治療における精神療法的関りの重要性を忘れないで いたい。自分なりの「味」を大切に、今後もじっくりと患者と向き合っていこうと考えてい る。.

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参照

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