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発生-発達期における低用量ペルメトリンの慢性暴露が成熟期雄マウスの中枢及び生殖系に及ぼす影響

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(1)

発生-発達期における低用量ペルメトリンの慢性暴

露が成熟期雄マウスの中枢及び生殖系に及ぼす影響

著者

斉藤 洋克

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第18739号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00125725

(2)

博士論文

発生-発達期における低用量ペルメトリンの

慢性暴露が成熟期雄マウスの中枢及び生殖系に

及ぼす影響

東北大学大学院農学研究科

応用生命科学専攻 博士課程後期

平成

28 年 4 月博士課程後期進学

斉藤 洋克

指導教員

種村健太郎 教授

(3)

1 目次 第1 章 緒論 3 第2 章 発生-発達期における低用量ペルメトリンの慢性暴露による雄マウス 行動影響 2-1 緒言 8 2-2 材料と方法 9 2-3 結果 12 2-4 考察 14 第3 章 発生-発達期における低用量ペルメトリンの慢性暴露によって生じた 行動影響に関連した雄マウス海馬の解析 3-1 緒言 18 3-2 材料と方法 18 3-3 結果 22 3-4 考察 23

(4)

2 第4 章 発生-発達期における低用量ペルメトリンの慢性暴露による雄マウス 精巣影響 4-1 緒言 27 4-2 材料と方法 27 4-3 結果 32 4-4 考察 34 第5 章 総括 37 図表 41 引用文献 60 謝辞 74

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3

1 章

緒論

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4

動物を取り巻く環境中には多種多様な化学物質が存在しており、個体は常に何らか の化学物質にさらされながら活動している。これまで、哺乳類の個体に対する、化学 物質の中枢神経系、生殖内分泌系、免疫系における暴露影響が数多く報告されており、 安全な利用のためには、環境中で用いる化学物質の適切な選択が重要である(Mnif et al. 2011; Kabir et al. 2015)。

1962 年、レイチェル・カーソンは、著書『沈黙の春』の中で、「子どもの感受性の 強さは、大人の比ではない」と述べており、発生-発達期と成熟期では、化学物質に対 する感受性が異なる恐れを指摘している。化学物質の環境への影響に警鐘を鳴らした この著書は、当時の社会に大きな影響を与えた。そして、科学的知見からの評価が進 んだ現在、国際連合環境計画(UNEP)、世界保健機関(WHO)がまとめた内分泌かく 乱化学物質の科学的現状に関する全地球規模での評価書である『The State of the Science of Endocrine Disrupting Chemicals.2012』には、環境化学物質への暴露に対して 最も感受性の強い時期は、胎生期、幼若期など発達において重要な時期である、と記 載されている。成熟期の暴露影響は、原因となる化学物質を除去することで消失する が、発生-発達期の暴露は不可逆的な影響を及ぼす可能性が高い。そして、ホルモンが 極めて低濃度でも受容体と結合して作用するのと同様に、環境化学物質も低濃度で影 響を及ぼす能力を持つことを指摘している。発生-発達期への影響、そして低用量での 影響が、近年の化学物質影響への関心となっている。

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5

実際に、化学物質への胎仔期での暴露が、成熟後に生体への悪影響(循環器系疾患、 行動異常、雌性生殖器疾患)を誘発すること(Newbold et al. 2008; Fox et al. 2012; Juliandi et al. 2015; Sakai et al. 2018)、そして、ビスフェノール A(BPA)をはじめとした環境 化学物質が、低用量であっても生体機能に悪影響を及ぼす恐れ(異常行動、免疫機能 障害、妊孕性の低下)(Vandenberg et al. 2012)が報告されている。すなわち、親世代 の配偶子形成から受精を経て発生期および生後の発達期までの時期での化学物質暴 露が、低用量であっても、個体の成熟後に中枢神経・免疫・生殖機能に影響を及ぼす 恐れが指摘されている(UNEP and WHO 2013)。この現象については、従来の化学物 質暴露に関する影響評価系では十分考慮されていない。したがって、一般的に使用さ れ、環境中で暴露される可能性のある化学物質について、発生-発達期(個体にとって の「早期」)の暴露影響を解明することが急務である。動物生産領域においては、様々 な化学物質が、飼養時、または土壌を介して、家畜・野生動物へ影響を及ぼすことが 懸念される。動物生産で使用される化学物質にも当てはまる場合、気付かないうちに 家畜の生産性(気質や管理のしやすさ、繁殖成績など)を低下させている恐れがある。 数ある化学物質の中でも、殺虫剤は身近に存在し、農業、畜産分野においても利用 されている。本研究では、ピレスロイド系殺虫剤の1 つである「ペルメトリン」を一 般環境下で暴露される可能性のあるモデル化学物質として用いた。ペルメトリンは、 除虫菊の花に含まれる殺虫成分であるピレトリン(天然ピレスロイド)を化学的に安

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定化させ、残効・効力を増した合成ピレスロイドで、昆虫やダニに対して広く効果を 示し、残効性が高い特徴をもつ。アフリカでは、マラリア媒介蚊対策用にペルメトリ ンを含有した蚊帳が利用されており(Phillips-Howard et al. 2003)、その人畜に対する 毒性の低さと汎用性から、農業用、家庭用として世界中で広く用いられている (Miyamoto et al. 1995; Ray and Forshaw 2000; Bradberry et al. 2005)。その一方で、ペル メトリンは、哺乳類の中枢神経系および生殖内分泌系への影響が疑われている物質で もあり、哺乳動物に対しても毒性を持つことが懸念されている。ペルメトリンはその 汎用性から今後も利用されると考えられるため、発生-発達過程の動物への影響を評 価することは重要である。 本研究では、マウスモデルを用いて、環境中に存在しうるレベルの濃度を想定した、 化学物質の早期暴露によって誘発される成熟後の生体影響を解明することを目的と した。まず、早期にペルメトリンを長期にわたり低用量暴露した雄マウスの成熟後の 中枢神経系(行動)への影響を検討し(第 2 章)、その行動影響に関連する雄マウス 脳組織の解析を行った(第 3 章)。加えて、中枢神経系への影響のみならず、生殖内 分泌系への影響も疑われているペルメトリンについて、その低用量早期慢性暴露によ る成熟後雄マウスの雄性生殖器(精巣)への影響を検討した(第4 章)。

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7

2 章

発生

-発達期における低用量ペルメトリンの

慢性暴露による雄マウス行動影響

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8

2-1 緒言

ペルメトリンは、昆虫の神経細胞(軸索)に作用し、電位依存性ナトリウムチャネ ルを持続的に開くことで脱分極を生じさせ、正常な神経伝達を阻害することで殺虫効 果を示す(Aldridge 1990; Soderlund et al. 2002)。しかし、ペルメトリンを含むピレスロ イド系殺虫剤は、昆虫と同様の作用機序で、哺乳類のニューロンにおいても、電位依 存性ナトリウムチャネルの開口を延長させ、脱分極を生じさせる(Narahashi 1985; Vijverberg and Bercken 1990)。そして、電位依存性ナトリウムチャネルが、哺乳動物に おけるピレスロイドの神経毒性作用の重要な標的であるという広範な合意がある (Soderlund 2012)。そのため、ピレスロイド系殺虫剤は、標的以外の動物に対しても 神経毒性を持つ場合があり(Bjørling-Poulsen et al. 2008)、実際に哺乳類の神経系に悪 影響を及ぼす恐れがあることを示す多くの研究が存在する(Ray and Fry 2006)。ペル メトリンを含め、ピレスロイド系殺虫剤の成熟動物への神経毒性については十分な報 告があるが、発生-発達過程の動物への神経毒性については限定的である(Shafer et al. 2005)。本章では、ペルメトリンの低用量早期慢性暴露による、個体の成熟後の中枢神 経系への影響を検討する。

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9

2-2 材料と方法

実験スケジュール

実験の概要は図 1 に示した。ペルメトリン(cis/trans mixture, Toronto Research Chemicals Inc., Toronto, ON, Canada)はまず、溶媒としてエタノールに溶かし、完全に 溶けきったことを確認した後、水に溶解させた。6 週齢の C57BL / 6N 雌雄マウスを日 本 SLC(Shizuoka, Japan)から購入した。マウスはコントロール群およびペルメトリ ン暴露群の2 つに分けた。コントロール群には溶媒として用いたエタノールを溶解さ せた水を投与した。濃度設定については、日本・WHO におけるペルメトリンの一日 摂取許容量(Acceptable Daily Intake; ADI)である 0.05mg/kg/day(FAO and WHO, 1987) に基づき、これに相当する0.3ppm となるよう調整した。6 週齢から 8 週齢まで、ペル メトリンを雌雄マウスに連続的に飲水投与した。次に、交配のため雌雄マウスを1 週 間同居させた。この間も、ペルメトリンを連続的に飲水投与した。1 週間後、雌雄を 分離し、妊娠雌1 匹/1 ケージで引き続き飲水投与を行なった。出産後、産仔を 4 週齢 で離乳させるまで、雌親にペルメトリンを飲水投与した。産仔は離乳後、4 週齢から 12 週齢まで、それぞれ 4 匹/1 ケージで飼育した。行動試験は生後 10 ~ 11 週齢時に行 った。産仔の体重は生後2 週齢から行動試験に供試するまで 1 週間ごと、および行動 試験の前後で測定した。マウスは餌と水を自由に摂取できる、適切な温度、湿度およ び明暗条件で飼育した。マウスの管理および使用については、国立大学法人東北大学

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10 における動物実験等に関する規程に従った。 行動試験 我々はオープンフィールド試験(OF)、明暗往来試験(LD)、恐怖条件づけ学習記 憶試験(FZ)を含む行動試験バッテリーを実施した(図 2)。各行動試験は過去の文献 (Tanemura et al. 2009)に基づき、いくつかの改変を加えて行った。画像解析ソフト (Image OF2, Image LD2, and Image FZ2; O’Hara & Co., Ltd., Tokyo, Japan)は、ImageJ プログラムを使用して開発された。すべての試験は、同一の雄マウス(各群 12 匹) を用いて順次行われ、10:30 から 14:30 の間に実施した。実験は防音箱(78×63×65 (H)cm)の中で行った。防音箱は白色の木製で、オーディオスピーカーと光源を備 えていた。行動試験中のバックグラウンド・ノイズは約 50dB だった。行動試験中、 各試行が終了するたびに、装置の汚れを拭き取り、洗浄した。 オープンフィールド試験:装置は白いプラスチック製のもの(50×50×30(H)cm) を用い、マウスの自発運動量を10 分間測定した。LED 照明は、フィールドの中心よ り約50cm 上方に配置された(フィールド中央の照度:25 Lux)。マウスの行動は、オ ープンフィールド中央の上方に配置された CCD カメラを用いて測定した。各行動パ ラメータはImage OF2 によって測定した。 明暗往来試験:明暗往来試験に使用した装置は、開口部(3×5 cm)が設けられた壁

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11 によって2 つの部屋に分割された構造(21×42×25(H)cm)になっていた。一方の 部屋は白いプラスチック製のものを用い、明るく照らし(250Lux、明室)、もう一方 の部屋は黒いプラスチック製のものを用い、暗くした(5Lux、暗室)。明室と暗室を 隔てる中央の壁には各部屋に移動が出来るようにトンネルが設けられ(3×5 cm)、実 験者が自由に開閉できるようにスライドドアを設置した。マウスは1 匹ずつ暗室に入 れられ、試験開始から 60 秒後にトンネルのドアを実験者の操作により開放し、5 分 間開口部を通して2 つの部屋を自由に移動させた。マウスの行動は、各部屋の上方に それぞれ配置された CCD カメラを用いて測定した。行動パラメータは、不安関連行 動の指標としてImage LD2 によって測定した。 恐怖条件づけ学習記憶試験:装置は、天井付きの透明プラスチック製の条件づけチ ャンバー(17×10×10(H)cm)を用意した。チャンバーの床は、マウスへのフット ショック(電気刺激)のために 5mm 間隔でステンレススチール製のグリッド(直径 2mm)からなり、チャンバーの内壁はプラスチック製の白黒の縞模様で覆った。LED 照明はチャンバーの約50cm 上方に配置した(フロア中央の照度:50Lux)。マウスの 行動は、チャンバーの中心の上方に配置された CCD カメラで測定した。条件づけと して、マウスを個別に条件づけチャンバーに入れ、40 秒後に 6 回の音刺激と電気刺激 (20 秒間の音刺激(65dB)、音刺激の終わりの 2 秒間に 0.08mA の電気刺激)を 60 秒 間隔で提示した。その後、マウスをケージに戻した。2 日後、恐怖文脈条件づけ試験

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12 として、音刺激および電気刺激を提示せず、6 分間条件づけ時と同様のチャンバーに 戻した。さらに2 日後、恐怖音条件づけ試験として、マウスを新奇のチャンバー(異 なる作りでステンレススチール製のグリッドおよびプラスチック製の白黒の縞模様 が無いもの)に入れた。3 分後、条件づけ時に提示した音刺激(電気刺激なし)を 3 分間提示した(フロア中央の照度:50Lux)。ImageFZ2 により、マウスのすくみ反応 (フリージング)を連続2 秒間以上の不動時間として測定した。すくみ率(フリージ ング率)(%)は、[すくみ時間/実験時間]×100 として計算した。 統計解析

統計解析にはJMP11 ソフトウェア(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用い、スチ ューデントもしくはウェルチの t 検定を用いた。p < 0.05 を統計的に有意であるとし た。 2-3 結果 ペルメトリン投与による臨床的徴候と体重への影響 ペルメトリン暴露群において、ペルメトリンに起因する臨床的徴候は、投与期間中 および投与後に観察されず、一般飼育環境下での異常行動は認められなかった。また、 実験期間中および行動試験前後において、コントロール群とペルメトリン暴露群の体

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13 重に有意な差はなかった(図3)。 行動試験 オープンフィールド試験において、コントロール群に対し、ペルメトリン暴露群で 総移動距離が有意に低下した。特に不安関連行動の指標とされるオープンフィールド 試験における中央滞在時間(図4B)では有意な差はみられなかった。明暗往来試験に おいては、すべての項目でコントロール群とペルメトリン暴露群の間に有意な差はみ られなかった(図 5)が、ペルメトリン暴露群の暗室待機時間がコントロール群と大 きく異なり、増加傾向を示した(図7:Latency to enter light)。

恐怖条件づけ学習記憶試験において、条件づけが繰り返されるたびに、コントロー ル群およびペルメトリン暴露群においてフリージング率が増加していることから、両 群ともに学習の成立が確認された(図6A)。また、そのフリージング率に関して、コ ントロール群とペルメトリン暴露群の間に有意な差はみられなかったものの、3 回目 の条件提示に対するフリージング率は、ペルメトリン暴露群で低い傾向にあった(図 6A)。空間-連想記憶試験時のフリージング率について、コントロール群とペルメトリ ン暴露群との間に有意な差はみられなかった(図6B, B’)。音-連想記憶試験に関して、 ペルメトリン暴露群において、コントロール群と比較して、音刺激後に有意に低いフ リージング率を示した(図6C, C’)。

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14 2-4 考察 行動試験では、コントロール群に対し、ペルメトリン暴露群のオープンフィールド 試験での総移動距離が有意に低下したが、特に不安関連行動の指標とされるオープン フィールド試験における中央滞在時間および明暗往来試験では有意な差はみられな かった。しかし、明暗往来試験において、有意差はないものの、ペルメトリン暴露群 の暗室待機時間がコントロール群と大きく異なり、増加傾向を示した。そのため、オ ープンフィールド試験および明暗往来試験においてペルメトリン暴露群で観察され た影響は、新奇環境に対する不安の亢進というよりは、軽度ではあるが、新奇環境に 対する適応不全を示していると考えられた。恐怖条件づけ学習記憶試験においては、 条件づけ時のフリージング率に関して、コントロール群とペルメトリン暴露群の間に 有意な差は見られなかった。しかし、3 回目の条件提示に対するフリージング率は、 ペルメトリン暴露群で低い傾向にあったため、コントロール群に比べ、条件づけに対 する学習の成立が遅れている可能性が考えられた。この結果から、ペルメトリン暴露 群のマウスにおいて、短期記憶形成に軽度の影響が生じている恐れがあると考えられ た。空間-連想記憶試験では、コントロール群とペルメトリン暴露群のフリージング率 に有意な差はみられなかったが、コントロール群では、恐怖記憶の想起によるフリー ジング率の上昇、その後の条件刺激に対するフリージング率の低下(消去学習)が試 験時間を通して観察されたのに対し、ペルメトリン暴露群ではその変化がはっきりと

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15 は認められなかった(図6B)。また、音-連想記憶試験により、ペルメトリン暴露群に おいて、コントロール群と比較して音刺激後に有意に低いフリージング率を示した。 今回観察された影響は、マウスにおいて、ドウモイ酸のようなモデル化学物質投与で 誘発される重篤な記憶障害(Tanemura et al. 2009)とは異なるが、ペルメトリン暴露群 において、記憶の想起が障害されていることが示唆された。以上の結果から、ペルメ トリン暴露群において、特に学習・記憶に関与する海馬-扁桃体への影響が考えられた。 恐怖文脈条件づけ(空間-連想記憶)は海馬-扁桃体、恐怖音条件づけ(音-連想記憶) は扁桃体依存性が高いとされている(Phillips et al. 1992)。本研究では、ペルメトリン 暴露群において海馬依存性が高いとされる空間-連想記憶試験において有意な差はみ られなかった。これは、ラットにおいて海馬を損傷させても代償機構がはたらくこと により恐怖文脈条件づけが成立するという報告(Wiltgen et al. 2006)から、海馬以外 の神経回路の補償機構がはたらいたことが原因かもしれない。しかし、ラットで背側 海馬を損傷させた個体では、恐怖文脈条件づけ後の長期記憶を保持できないことが報 告されている(Zelikowsky et al. 2012)。そのため、今回の空間-連想記憶試験の結果に ついても、条件づけ後、間隔を空けて試験した場合、ペルメトリン暴露群ではっきり とした行動影響が現れるかもしれない。また、扁桃体は恐怖の古典的条件づけにおけ る条件刺激と非条件刺激の連合学習に重要な役割を果たしている(Wilensky et al. 2006)。そのため、恐怖音条件づけ試験で得られた結果に関しては、扁桃体への影響も

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16 考慮して解析する必要がある。 本実験によって、早期にペルメトリンを長期にわたり低用量暴露した雄マウスの成 熟後の中枢神経系(行動)への影響として、新奇環境における軽度の適応不全および 学習記憶異常を捉えた。すなわち、早期におけるペルメトリンの慢性暴露は、低用量 (ADI レベル)でさえ、成熟後の行動に悪影響を及ぼすことが示唆された。

(19)

17

3 章

発生

-発達期における低用量ペルメトリンの慢性暴露によって

生じた行動影響に関連した雄マウス海馬の解析

(20)

18

3-1 緒言

第2 章の結果から、ペルメトリン暴露群において、特に学習・記憶に関与する海馬 -扁桃体への影響が考えられた。

神経幹細胞は自己複製を行うことができ、かつ脳を構成する主要な細胞であるニュ ーロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトに分化する(Okano and Temple 2009)。 これらの細胞は、中枢神経系において機能的役割を果たしているが、様々な環境要因 によって影響を受けることが報告されている(Zhao et al. 2008)。 そのため本章では、ペルメトリン暴露群において捉えた行動影響に関連するマウス 脳領域、特にマウス海馬歯状回での神経回路に関わるこれらの細胞に着目して行動影 響との関連を探る。 3-2 材料と方法 組織のサンプリング 12 週齢時に、行動試験に供試した雄マウスから組織のサンプリングを行った。脳を 摘出し、メタカン液(メタノール:クロロホルム:酢酸 = 6 : 3 : 1)または 10%中性緩 衝ホルマリン液(Nacalai Tesque, Kyoto, Japan)で固定した。エタノールで脱水処理の 後、キシレン(Nacalai Tesque)に合計 4 時間組織を浸漬し、透徹処理を行った。次に 組織をパラフィンオーブン内で 60℃に温めたパラフィン(Fisher Scientific, NH, USA)

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19 とキシレンを 50%ずつ入れたキシレン-パラフィン液に 1 時間、その後パラフィンに 合計6 時間浸け、パラフィンと組織を十分に馴染ませたのち、新たなパラフィンに包 埋し、ミクロトームを用いて矢状断面で10µm の厚さに切った。薄切したパラフィン 切片は、37℃に温めた蒸留水の上で伸展し、MAS コート付きスライドガラスですく い上げ、37℃に温めたウォームプレート上で乾燥させた。 形態解析 パラフィン切片をスライドガラス上に載せた。HE 染色のために、切片をキシレン で脱パラフィンし、エタノール(100、95、90、80、70%)で段階的に再水和し、蒸留 水ですすぎ、ヘマトキシリン溶液による核染色を行った。次に切片を水洗し、エオシ ン溶液によって細胞質染色を行った。その後、切片をエタノール(70、80、90、95、 100%)で脱水し、キシレンで透徹、封入した。形態学的異常(神経細胞死や神経細胞 脱落など)を観察するため、染色像はBX63 光学顕微鏡で観察し、付属の cellSens ソ フトウェア(Olympus, Tokyo, Japan)で画像を取得した。

免疫組織化学

パラフィン切片をキシレンで脱パラフィンし、エタノール(100、95、90、80、70%) で段階的に再水和し、蒸留水ですすぎ、HistoVT One(Nacalai Tesque)により 90℃、

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30 分で抗原賦活化処理した。切片を Blocking One(Nacalai Tesque)と共に 4℃で 1 時 間ブロッキング処理し、その後、一次抗体処理を行い、4℃で一晩インキュベートし た。一次抗体には以下のものを用いた:rabbit polyclonal anti-doublecortin(DCX; Abcam, Cambridge, UK, ab18723; 200 倍希釈)、rabbit monoclonal anti-neuronal nuclei(NeuN; Abcam, ab177487; 300 倍希釈)、goat polyclonal anti-SRY-related HMG-box 2(SOX2; Santa Cruz Biotechnology, CA, USA, sc-17320; 300 倍希釈)、rabbit monoclonal anti-glial fibrillary acidic protein(GFAP; Abcam, ab68428; 300 倍希釈)、mouse monoclonal anti-myelin-associated glycoprotein(MAG; Abcam, ab89780; 300 倍希釈)。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS;Nacalai Tesque)で洗浄後、二次抗体として Alexa Fluor 488 および 555 標識抗 体(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA; 1000 倍希釈)を用い、4℃で 2 時間処理した。核は Hoechst 33342(Nacalai Tesque; 5,000 倍希釈)で染色した。一次抗体および二次抗体、 Hoechst は、Blocking One および PBS の混合溶液で希釈した。染色像は、BZ-X710 蛍 光顕微鏡(Keyence, Osaka, Japan)で観察し、付属の BZ-X Viewer ソフトウェアで画像 を取得した。

セルカウント

免疫組織化学において、海馬歯状回におけるDCX(新生ニューロンマーカー)、NeuN (成熟ニューロンマーカー)、SOX2(神経幹細胞マーカー)陽性細胞のカウントを行

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21 った。すべてのサンプルについて、細胞は蛍光顕微鏡下で 40 倍の対物レンズを用い てカウントした。DCX については、顆粒細胞下層(SGZ)および顆粒細胞層(GCL) 全体における陽性細胞をカウントした。NeuN のカウントについては、過去の文献を 参考にした(Oishi et al. 2016)。計測領域は 50µm の幅とし、海馬歯状回の顆粒細胞層 (GCL)における上側 2 カ所、下側 2 カ所の平均値を NeuN 陽性細胞数とした。SOX2 は神経幹細胞の自己複製および神経幹細胞マーカーとして広く利用されている (Graham et al. 2003; Favaro et al. 2009)。また、神経幹細胞は海馬歯状回の顆粒細胞下 層(SGZ)に存在する(Wang et al. 2016)。そのため、本研究では SGZ 全体における SOX2 陽性細胞をカウントした。各神経細胞について、1 個体あたり 9 スライド観察 したのち、各個体1 スライドあたりの細胞数を算出し、各群でその値を比較した。各 細胞の計測領域および用いた脳切片の範囲については図8 に示した。 統計解析 統計解析には JMP11 ソフトウェアを用い、スチューデントの t 検定を用いた。p < 0.05 を統計的に有意であるとした。

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22 3-3 結果 形態解析 HE 染色の結果、ペルメトリン暴露群の海馬組織切片において、コントロール群と 比較して、海馬の特徴的な変化(神経細胞死や神経原線維変化などの神経変性、神経 細胞の脱落)は観察されなかった(図9)。 免疫組織化学 免疫組織化学の結果、ペルメトリン暴露群の海馬歯状回において、コントロール群 に比べDCX(新生ニューロンマーカー)の強いシグナルが観察された(図 10A-d, e)。 また、DCX 陽性細胞数は、コントロール群に比べてペルメトリン暴露群で有意に増加 した(コントロール群: 38.37 ± 5.78; ペルメトリン暴露群: 50.48 ± 4.12; p < 0.05) (図 10B)。NeuN(成熟ニューロンマーカー)および SOX2(神経幹細胞マーカー) の陽性細胞数は、コントロール群とペルメトリン暴露群との間に有意な差はみられな かった(NeuN, コントロール群: 34.20 ± 1.79; ペルメトリン暴露群: 34.81 ± 3.10; SOX2, コントロール群: 65.85 ± 6.13; ペルメトリン暴露群: 71.04 ± 2.54)(図 11B, C)。GFAP(アストロサイトマーカー)の染色像から、ペルメトリン暴露群の海馬歯 状回で、アストロサイトの減少が観察された(図12D)。また、アストロサイトの形態 として、突起が短いものが多く観察された(図12d, d’)。MAG(オリゴデンドロサイ

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23 トマーカー)の発現パターンに関しては、コントロール群とペルメトリン暴露群との 間に顕著な差はみられなかった(図13A-D)。 3-4 考察 免疫組織化学の結果から、ペルメトリン暴露群の海馬歯状回において、新生ニュー ロンマーカーである DCX のシグナルが増加しており、その陽性細胞数も増加してい た。NeuN(成熟ニューロンマーカー)および SOX2(神経幹細胞マーカー)陽性細胞 数については、コントロール群とペルメトリン暴露群における有意な差はみられなか った。これらの結果から、早期におけるペルメトリンの暴露によるシグナルかく乱の 結果、ペルメトリン暴露群の海馬歯状回において学習記憶に関与する海馬での神経新 生のバランスが崩れたことが示唆された。また、HE 染色の結果から、ペルメトリン 暴露群の海馬組織切片において、コントロール群と比較して、海馬の特徴的な変化が 観察されなかったことから、ペルメトリン暴露群の海馬では重度の神経細胞死は起こ っていないと考えられる。つまり、ペルメトリン暴露群の海馬歯状回において、新生 ニューロンが過剰産生され、蓄積している可能性が考えられた。 また、グリア細胞に関連するマーカーを用いた解析の結果から、ペルメトリン暴露 群の歯状回門において、アストロサイトの減少および形態影響が観察された。アスト ロサイトは、ニューロンから放出された神経伝達物質の取り込みや、ニューロンへの

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24

エネルギー源の供給などに関与する(Kimelberg and Katz 1985; Schousboe et al. 2004; Pierre and Pellerin 2005)。加えて、ニューロンが未熟な状態から成熟して、ニューロン どうしが結合する(シナプス形成)過程でのアストロサイトの関与(Song et al. 2002a, 2002b; Hama et al. 2004)や、in vivo において、アストロサイトが記憶形成を助ける働 きをもつこと(Pabst et al. 2016)が報告されている。そのため、コントロール群に比 べ、ペルメトリン暴露群におけるアストロサイトは、その数の減少および形態異常に よって、これら機能が低下していることが示唆された。 発生-発達期の脳では、神経回路構築のため様々な神経シグナルが厳密に制御され ており、この時期における化学物質の暴露は、発達中の神経毒性につながる(Rice and Barone 2000)。ペルメトリン暴露群の海馬において、早期のペルメトリン暴露により、 胎仔期、幼若期における正常な神経シグナルがかく乱され、海馬における神経幹細胞 の新生ニューロンとグリア細胞(特にアストロサイト)への分化のバランスが崩れた と考えられた。加えて、ペルメトリン暴露群において、海馬でのアストロサイトの機 能不全が生じ、学習・記憶能の低下や、新生ニューロンが成熟できない可能性が考え られた。ペルメトリン暴露群では、学習・記憶、そして記憶の想起に関連した神経回 路が適切に構築されておらず、これらの影響が複合的に生じた結果、行動影響として 顕在化したと考えられる。 本実験によって、早期にペルメトリンを長期にわたり低用量暴露した雄マウスの成

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25 熟後の中枢神経系(脳組織)への影響として、学習記憶に関与する海馬(歯状回)に おいて、新生ニューロンが過剰産生され、蓄積している可能性が示された。また、海 馬歯状回におけるアストロサイトの数の減少・形態異常による機能低下が考えられた。 すなわち、早期におけるペルメトリンの低用量慢性暴露は、個体の神経回路基盤の形 成に影響を及ぼし、今回の行動影響との関連が示唆された。

(28)

26

4 章

発生

-発達期における低用量ペルメトリンの

慢性暴露による雄マウス精巣影響

(29)

27

4-1 緒言

ペルメトリンは、エストロジェンレセプターα(ERα)を介したエストロジェン様活 性を示す(Kojima et al. 2004; Sun et al. 2014)こと、精巣ライディッヒ細胞のミトコン ドリア膜を損傷し、テストステロン生合成に影響を及ぼす(Zhang et al. 2007)こと、 さらにDEET(忌避剤)との複合暴露によって、次世代以降の生殖器疾患増加の原因 となる(Manikkam et al. 2012)といった、生殖内分泌系への影響が疑われている物質 でもある。哺乳類の中枢神経系と生殖内分泌系は、視床下部-下垂体-性腺軸(HPG 軸) の制御により密接に関連している。そして、環境化学物質への暴露に対して最も感受 性の強い時期は、胎生期、幼若期など発達における重要な時期であり、その影響は成 熟期よりも大きい(UNEP and WHO 2013)。すなわち、本来神経系をターゲットとし た化学物質であっても、特に発生-発達期において、哺乳類の生殖内分泌系に影響を及 ぼす恐れがある。そのため、本章では、ペルメトリンの低用量早期慢性暴露による、 成熟後の生殖内分泌系への影響を検討する。 4-2 材料と方法 組織のサンプリング 第 2 章において行動試験に供試した雄マウス(生後 12 週齢)から組織のサンプリ ングを行った。精巣を摘出し、固定液としてメタカン液(メタノール:クロロホルム:

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28 酢酸 = 6 : 3 : 1)を使用し、4℃で 24 時間固定した。次に精巣をカッターで半分に切 断し 100%エタノールで 2 回オーバーナイトしたのち、キシレンに合計 4 時間組織を 浸漬し、透徹処理を行った。組織をパラフィンオーブン内で60℃に温められたパラフ ィンとキシレンを 50%ずつ入れたキシレン-パラフィン液に 1 時間、その後パラフィ ンに合計6 時間浸け、パラフィンと組織を十分に馴染ませたのち、新たなパラフィン に包埋し、ミクロトームで7µm の厚さに切った。薄切したパラフィン切片は、37℃に 温めた蒸留水の上で伸展し、MAS コート付きスライドガラスですくい上げ、37℃に 温めたウォームプレート上で乾燥させた。 ステージ分類 7µm で薄切した精巣切片上では、様々な段階の精細胞を含んだ精細管が観察される。 精細管内では精祖細胞からプレレプトテン期、レプトテン期、ザイゴテン期、パキテ ン期、ディプロテン期の精母細胞、減数分裂期、ステップ 1 から 16 までの精子細胞 がそれぞれ決まった組み合わせで存在する。マウスの精細管は 12 の「ステージ」に 分類される(Russell et al. 1990)。それぞれの精細管をステージ分類することで、組織 切片上の精細胞を分類することが可能になる。そのため、精巣の形態解析の際に、こ のステージ分類を参考にした。

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29 形態解析 HE 染色:パラフィン切片をスライドガラス上に載せた。切片をキシレンで脱パラ フィンし、エタノール(100、95、90、80、70%)で段階的に再水和し、蒸留水ですす ぎ、ヘマトキシリン溶液による核染色を行った。次に切片を水洗し、エオシン溶液に よって細胞質染色を行った。その後、切片をエタノール(70、80、90、95、100%)で 脱水し、キシレンで透徹、封入した。形態学的異常(精子発生不全像や精子形成障害) を観察するため、染色像はBX63 光学顕微鏡で観察し、付属の cellSens ソフトウェア を用いて画像を取得した。 メチルグリーン・ピロニン染色:パラフィン切片をスライドガラス上に載せた。切 片をキシレンで脱パラフィンし、エタノール(100、95、90、80、70%)で段階的に再 水和し、蒸留水ですすぎ、メチルグリーン・ピロニン染色液(Nacalai Tesque)を切片 上に載せ、30 分間染色した。その後 1-ブタノール(Nacalai Tesque)で脱水・脱色を 15 分間行い、封入した。メチルグリーン・ピロニン染色は核酸染色法のひとつであり、 DNA を含む核質部分が緑、RNA を含む核小体および細胞質が赤に染色される。染色 像はBX63 光学顕微鏡で観察し、付属の cellSens ソフトウェアを用いて画像を取得し た。

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30

Ribonuclease A(RNase A)処理による核酸の蛍光染色

メチルグリーン・ピロニン染色により RNA の蓄積と定義したものが RNA のみで 構成されているのか確認するため、DNA を認識する Hoechst と、DNA と RNA を認識 するPropidium Iodide(PI;Nacalai Tesque)を用いて核酸の蛍光二重染色を行った。作 製した精巣切片において、キシレンによる脱パラフィン、エタノールによる再水和処 理をし、洗浄後、PBS を溶媒として Hoechst と PI 処理をした。希釈倍率はそれぞれ 5000 倍と 2000 倍とした。反応は、4℃のモイストチャンバー内で 2 時間行った。反応 後、BX63 蛍光顕微鏡で観察を行い、付属の cellSens ソフトウェアを用いて画像を取 得した。その後、直ちにRNase A 溶液を切片上に載せ、30 分間反応させた。反応後、 再び同じ環境で観察、画像取得した。 RNA の蓄積がみられる精細管横断面の割合

RNA の蓄積や異常は、様々な疾患に関与することが示唆されている(Cooper et al. 2009)。加えて、メチルグリーン・ピロニン染色は異常細胞の検出に使用されている (Mateus et al. 2008)。そのため、メチルグリーン・ピロニン染色における RNA の蓄 積がみられる精細管横断面について、各個体それぞれ 8 視野(704μm×528μm /field) で観察し、出現頻度(%)=(RNA の蓄積がみられる精細管横断面の数)/(観察した 精細管横断面の数)×100 として、各群でその割合を算出した。各群の精巣は n = 6 と

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31 し、1 精巣あたり精細管横断面は 60 個以上観察した。指標として、①蓄積の長径が 5μm 以上のもの、②1 精細管横断面あたり 2 個以上観察されたものを RNA の蓄積が みられる精細管横断面とした。 免疫組織化学 パラフィン切片をキシレンで脱パラフィンし、エタノール(100、95、90、80、70%) で段階的に再水和し、蒸留水ですすぎ、HistoVT One により 90℃、30 分で抗原賦活化 処理した。切片をBlocking One と共に 4℃で 1 時間ブロッキング処理し、その後、一 次抗体処理を行い、4℃で一晩インキュベートした。一次抗体には以下のものを用い た:rabbit monoclonal anti-SOX9(Abcam, ab185966; 200 倍希釈)。PBS で洗浄後、二次 抗体としてAlexa Fluor 488 標識抗体(1,000 倍希釈)を用い、4℃で 2 時間処理した。 核はHoechst(5,000 倍希釈)および PI(2000 倍希釈)で染色した。一次抗体および二 次抗体、Hoechst は、Blocking One および PBS の混合溶液で希釈した。染色像は、BZ-X710 蛍光顕微鏡で観察し、付属の BZ-X Viewer ソフトウェアで画像を取得した。

セルトリ細胞数のカウント

取得した画像をもとに、セルトリ細胞(SOX9 陽性細胞)数のカウントを行った。 SOX9 陽性細胞について、各個体それぞれ 25 視野(724μm×543μm /field)で観察し、

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32 各群でその割合を算出した。各群の精巣は、精細管横断面が円形に近いものを、そし てセルトリ細胞の核を Hoechst、PI で確認することでカウントした。1 精細管横断面 あたりのセルトリ細胞数=(観察されたセルトリ細胞数)/(観察した精細管横断面の 数)×100 として、各群でその割合を算出した。各群の精巣は n = 6 とし、1 精巣あた り精細管横断面は60 個以上観察した。 統計解析 統計解析にはJMP11 ソフトウェアを用い、スチューデントもしくはウェルチの t 検 定を用いた。p < 0.05 を統計的に有意であるとした。 4-3 結果 形態解析 HE 染色の結果、コントロール群と比較して、ペルメトリン暴露群の精細管横断面 において、精子発生不全像や精子形成障害などの明らかな異常は観察されなかった (図 14)ものの、メチルグリーン・ピロニン染色において、RNA の蓄積と考えられ る染色像が、ペルメトリン暴露群の精細管横断面において頻繁に確認された(図 15 右)。

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33 RNase A 処理による核酸の蛍光染色 RNase A 処理前の切片では、精細管横断面内の細胞すべての核が Hoechst で青く、 PI で赤く染色され、RNA の蓄積と考えられる箇所に PI が特に強く反応していた(図 16B, E:矢頭)。RNase A 処理後の切片において、この蓄積像(DNA、RNA を認識する PI の染色像)は、RNase A 処理によって完全に消失した(図 16H, K:矢頭)。 RNA の蓄積がみられる精細管横断面の割合 RNA の蓄積がみられる精細管横断面の割合は、コントロール群に比べ、ペルメトリ ン暴露群において有意に高く(コントロール群: 5.90 (4.43 - 7.27) %; ペルメトリン暴 露群: 14.39 (13.31 - 20.05) %;中央値(25-75 パーセンタイル); p < 0.05)(図 17B)、 その蓄積像は、精子発生過程において、分化した精子が放出されるステージⅦ~Ⅸの 精上皮において高頻度に観察された。 免疫組織化学によるセルトリ細胞の染色 コントロール群の精細管横断面と比較して、ペルメトリン暴露群におけるSOX9 の 発現パターンに顕著な差は観察されなかった。しかし、セルトリ細胞(SOX9 陽性細 胞)数のカウントの結果、1 精細管横断面あたりのセルトリ細胞数は、コントロール 群に比べ、ペルメトリン暴露群において有意に低かった(コントロール群: 18.24 ± 1.44;

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34

ペルメトリン暴露群: 16.57 ± 0.66; p < 0.05)(図 18B)。

4-4 考察

生殖内分泌系へのペルメトリンの影響についての報告はいくつかある(Kim et al. 2005; Zhang et al. 2007; Manikkam et al. 2012)が、環境中を想定した、個体の早期に対 する低用量(ADI レベル)での影響を評価した報告はない。本実験では、行動影響を 示したペルメトリン早期慢性暴露環境下におかれた産仔の、成熟後の雄性生殖器へ及 ぼす影響を検討した。HE 染色による精細管横断面の形態解析の結果、コントロール 群と比較して、ペルメトリン暴露群の精細管横断面において、精子発生不全像や精子 形成障害などの明らかな異常は観察されなかったが、メチルグリーン・ピロニン染色 による形態解析から、RNA の蓄積と考えられる染色像が、ペルメトリン暴露群の精細 管横断面において頻繁に確認された。この蓄積像(DNA、RNA を認識する PI の染色 像)は、RNase A 処理によって完全に消失したため、メチルグリーン・ピロニン染色 において観察された蓄積像は、DNA を含まず、RNA のみで構成されたものであるこ とが明らかになった。そして、RNA の蓄積がみられる精細管横断面の割合は、コント ロール群に比べ、ペルメトリン暴露群において有意に高く、その蓄積像は、精子発生 過程において、分化した精子が放出されるステージⅦ~Ⅸの精上皮において高頻度に 観察された。過去のラットにおける研究で、メチルグリーン・ピロニン染色により、

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35 精細管管腔側で赤色に染色されるものは、残余小体であることが示唆されている (Shin et al. 2007)ことから、ペルメトリン暴露群における精細管には、大型化した残 余小体(異型遺残体)が蓄積していることが示唆された。 免疫組織化学によるセルトリ細胞(SOX9 陽性細胞)数のカウントの結果、1 精細 管横断面あたりのセルトリ細胞数は、コントロール群に比べ、ペルメトリン暴露群に おいて有意に低かった。セルトリ細胞の増殖は胎仔期に始まり、ほとんどの動物種で は新生仔期が最も重要な増殖時期であり(Sharpe 2001)、この時期の内分泌かく乱は セルトリ細胞数や精子形成能に影響を与える(Sharpe et al. 1998; Atanassova et al. 1999, 2005)ことが報告されている。つまり、組織・器官が発達段階にある発生-発達期に、 ペルメトリンが生体内のシグナルをかく乱した影響で、精細胞の支持・貪食作用・精 子離脱の補助などを担うセルトリ細胞数が減少し、セルトリ細胞が機能低下(クリア ランス作用の低下)することによって、精子発生過程で生じた残余小体がセルトリ細 胞に貪食されず蓄積していることが考えられた。今回みられた影響に関しては、ペル メトリンの構造異性体による精巣への影響の違い(Zhang et al. 2008; Jin et al. 2012) や、ペルメトリンの代謝産物にもエストロジェン活性があるという報告(McCarthy et al. 2006)もあることから、その構造の違いや副産物による影響についても今後調べる 必要がある。

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36 熟後の生殖組織(精巣)への影響として、RNA の蓄積がみられる精細管横断面の増 加、セルトリ細胞数の減少が認められた。すなわち、低用量のペルメトリン早期慢性 暴露が成熟後の雄マウスの精子発生過程に異常(残余小体の蓄積)を生じさせ、その 影響は精子発生を支えるセルトリ細胞数の減少(クリアランス作用の低下)に起因す るものであることが示唆された。

(39)

37

5 章

総括

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38 本研究では、環境化学物質の早期暴露による生体への影響を明らかにするため、環 境中で想定される暴露条件をふまえ、モデル化学物質としてペルメトリンを用いて、 マウスに低用量で飲水投与することにより、その早期からの慢性暴露による成熟後の 雄マウスへの影響について検討した。そして、環境中で想定されるレベルの濃度での 化学物質の早期慢性暴露によって、成熟後に生じる新規の生体影響を発見した。 ピレスロイド系殺虫剤への発生-発達期での暴露は、行動、神経化学的および分子レ ベルでの広範な影響(脳血管形成への影響、長期的な酸化ストレスレベルの増加、コ リン作動性神経の機能阻害、シナプス形成への影響、発達中の海馬の厚さの変化、自 発運動量の減少、成熟期での学習・記憶異常など)と関連していることが知られてい る(Vester et al. 2016; Abreu-Villaça et al. 2017)。加えて、ピレスロイド系殺虫剤への長 期にわたる低用量での暴露は、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾 患の発症に関連する環境因子であると疑われている(Baltazar et al. 2014)。第 2 章で は、早期におけるペルメトリンの暴露は、低用量(ADI レベル)でさえ、個体の成熟 後の行動に悪影響を及ぼすことを示した。第3 章では、行動影響を示したペルメトリ ン暴露群において、今回の行動影響に関連した神経回路基盤の形成にも影響が生じて いることを示した。 第4 章では、低用量のペルメトリン早期慢性暴露は、本来のターゲットである中枢 神経系のみならず、個体の成熟後に哺乳類の生殖内分泌系にも悪影響を及ぼすことを

(41)

39 示した。仮説として、ペルメトリン暴露による神経シグナルのかく乱によって、中枢 神経系からの性腺刺激ホルモンのシグナル異常が精巣での性ホルモンのシグナル異 常を引き起こし、生殖系へ影響を与え、さらに、精巣でのシグナルかく乱で分泌され た性ホルモンが脳に移行して、中枢神経系へ影響を与えたことが考えられる。もしく は、ペルメトリンが直接、脳組織(海馬)、生殖組織(精巣)に、エストロジェンレセ プターを介して作用することで、海馬、精巣それぞれで性ホルモンのシグナル異常が 生じ、中枢・生殖系へ影響を与えたことが考えられる。しかし実際には、これら間接 的、直接的な影響が複合して生じた可能性もある。現段階では中枢神経系への影響と 生殖内分泌系への影響の相関を示す結果には至らず、今後より詳細な解析が必要では あるが、本研究は、個体の早期における化学物質の低用量慢性暴露に関して、生体を 構築する機能単位の枠組みを越えた影響解析の重要性を示した。 また、本研究では雄個体について解析したが、動物生産領域においては、特に家畜 は目的に応じて性別によりそれぞれ重要な役割をもつ。化学物質の代謝には雌雄差が あるため(Legato(Eds.) 2004)、雌雄で化学物質に対する影響の受け方も異なる可能性 がある。そのため、環境化学物質の影響評価をするうえで、今後はその影響の雌雄差 にも着目することが重要になってくると考えられる。 本研究の結果より、環境中を想定した低用量の化学物質早期暴露は、成熟後の哺乳 類の脳機能および生殖機能に影響を与えることで、家畜の生産性(気質や繁殖成績)、

(42)

40 そして野生動物に悪影響を及ぼす恐れがあると考えられた。ペルメトリンに関しては、 成熟動物への長期暴露では影響はみられない濃度であっても、発生-発達期において は生体への悪影響が考えられるため、現在の規制値とは区別して、より低い濃度での 発生-発達期に対する規制値の設定が必要であると考えられる。そのため、飼養時、ま たは土壌を介して暴露されることで、哺乳類へ悪影響を及ぼす可能性のある環境化学 物質についての再評価が重要であるとともに、特に、胎生期、生後発達期の影響評価 に関しては、成熟動物よりも慎重に規制値を検討する必要がある。

(43)

41

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43

(46)

44 図3. 産仔の体重変化

A) 実験期間中の産仔(2~9 週齢)の体重変化

B) 行動試験前後(10 週齢および 12 週齢)における産仔の体重 Student’s t-test, mean ± S.D. *p < 0.05 vs Control. n = 12.

(47)

45 図4. オープンフィールド試験の結果

A) 総移動距離、B) 中央滞在時間、C) 平均移動速度、D) 移動回数 Student’s t-test, mean ± S.E. *p < 0.05 vs Control. n = 12.

(48)

46 図5. 明暗往来試験の結果

A) 明室移動距離、B) 明室滞在時間、C) 転室回数、D) 暗室待機時間(明室へ初めて入る までにかかった時間)

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47 図6. 恐怖条件づけ学習記憶試験の結果 A) 条件づけ時のフリージング率の経時的変化 A’) 条件づけ時のフリージング率の比較 B) 空間-連想記憶試験時のフリージング率の経時的変化 B’) 空間-連想記憶試験時のフリージング率の比較 C) 音-連想記憶試験時のフリージング率の経時的変化 C’) 音-連想記憶試験時のフリージング率(初期反応)の比較 Student’s t-test, mean ± S.E. *p < 0.05 vs Control. n = 12.

(50)

48

図 7.行動試験におけるコントロール群とペルメトリン暴露群との各試験結果の平均値の比較 (コントロール群の平均値を100%としたときのペルメトリン暴露群の平均値)

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49

図8. マウス脳組織(海馬歯状回)の免疫組織化学による各細胞の計測 矢状断面で薄切した脳組織は、180µm の範囲のものを用いた。 ML:分子層、GCL:顆粒細胞層、SGZ:顆粒細胞下層、Hilus:歯状回門

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50 図9. マウス(12 週齢)海馬の HE 染色像

C, F: CA1 領域、D,G: CA3 領域、E, H: 歯状回

コントロール群: A, C–E、ペルメトリン暴露群: B, F–H. Scale bars, 500 µm (A, B), 100 µm (C–H).

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51

図10. 新生ニューロンマーカー(doublecortin; DCX)による免疫組織化学

A) マウス(12 週齢)海馬歯状回における DCX の発現、B) 各群における DCX 陽性 細胞数の比較

コントロール群: a–c, g–i, m–o、ペルメトリン暴露群: d–f, j–l, p–r

Scale bars, 300 µm (a, d, g, j, m, p), 200 µm (b, e, h, k, n, q), 20µm (c, f, i, l, o, r). Student’s t-test, mean ± S.D. *p < 0.05 vs Control. n = 3.

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52

図11. 成熟ニューロンマーカー(NeuN)および神経幹細胞マーカー(SOX2)による免疫組織化学 A) マウス(12 週齢)海馬歯状回における NeuN および SOX2 の発現、B, C) 各群における NeuN およびSOX2 陽性細胞数の比較

コントロール群: a, b, e, f, i, j, m, n、ペルメトリン暴露群: c, d, g, h, k, l, o, p Scale bars, 200 µm (a, c, e, g, i, k, m, o), 20 µm (b, d, f, h, j, l, n, p).

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53

図12. アストロサイトマーカー(GFAP)によるマウス(12 週齢)海馬歯状回の免疫組織化学 コントロール群: A–C, a–c’、ペルメトリン暴露群: D–F, d–f’

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54

図13. オリゴデンドロサイトマーカー(MAG)によるマウス(12 週齢)海馬歯状回の免疫組織化 学

コントロール群: A, B, E, F, I, J、ペルメトリン暴露群: C, D, G, H, K, L Scale bars, 200 µm (A, C, E, G, I, K), 100 µm (B, D, F, H, J, L).

(57)

55

図14. マウス(12 週齢)精巣における精細管横断面の HE 染色像 コントロール群: A, B、ペルメトリン暴露群: C, D

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56

図15. マウス(12 週齢)精巣における精細管横断面のメチルグリーン・ピロニン染色像 *: RNA の蓄積と考えられる染色像が確認された精細管横断面

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57 図16. RNase A 処理による核酸の蛍光染色

白い矢頭: PI シグナルの消失

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58

図17. メチルグリーン・ピロニン染色による、RNA の蓄積がみられる精細管横断面の割合 箱ひげ図について、箱内の垂直線は中央値を表す。箱は25-75 パーセンタイルを表す。ひ げの上端と下端はそれぞれ最大値と最小値を表す。箱ひげ図の上の数値は、観察した精細 管横断面数に対し、RNA の蓄積が観察された精細管横断面数を表す。

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59

図18. セルトリ細胞マーカー(SOX9)による免疫組織化学

A) マウス(12 週齢)精巣におけるセルトリ細胞マーカー(SOX9)を用いた免疫組織化学、 B) 各群における SOX9 陽性細胞数の比較

コントロール群: A-H、ペルメトリン暴露群: I-P、白い矢頭: セルトリ細胞 Scale bars, 100 μm (A-D, I-L), 50 μm (E-H, M-P).

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60

引用文献

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図 1.  実験スケジュールの概要
図 2.  各行動試験の概要
図 7 .行動試験におけるコントロール群とペルメトリン暴露群との各試験結果の平均値の比較
図 8.  マウス脳組織(海馬歯状回)の免疫組織化学による各細胞の計測  矢状断面で薄切した脳組織は、 180µm の範囲のものを用いた。
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