高分子水溶液の結合水に関する研究 (IX)
冷葉用安定剤水溶液の結合水量と毛管上昇距離との関係
西 内 豊 道(教育学部職業科教室)
Studies on Bound Water in Aqueous Solution of PolymerS.(IX)
On the relation between ・the Bound χAbatercontent and the capillarityin aqueous so】utionof some stabilizersforlce・cream.
Toyomichi NiSHIUCHI (.Laboratory of Polymer Chemis£r:y, Ed・。icationFaculり, Kochi uni・e・rsiり) 冷菓用安定剤水溶液希釈系列の結合水量π>. (0 (jT :仝水分中結合水百分率,φ:溶質高分子1g当りの結合水 量)と濾紙毛管上昇距離hとの関係を求めて次の結果を得た. πとhとは濃度約0.15%(PGAでは約0.25%)の点て折れた折線となるか,大体反比例の関係にあり, π= k(12-h) (k :各試料について定数でグラフの直線の傾斜を表わす)なる関係式か,又y,とhとは正比例関 係にあり. (i)=K十nh (K, n:各試料について定数)なる関係式が少くとも濃度0.1%∼3%の範囲で夫々成立 する.之等の直線の傾斜は夫々の試料の解離基間距離に関連を有すると推論した. 緒 言 既報1)において冷菓用安定剰としての織維素グリコール酸ソ=ダ(Na・CMC),アルギン酸ソー ダ(Na-Alg),およびアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)について,その水溶液の 希釈系列に,おける結合水蚤を測定し,更に続報2りこおいてこれ等の濾紙毛管上昇距離を測定し報告 した.本報においては同じ試料水溶液の希釈系列における全水分中結合水百分率πおよび溶質高分 子1g当りの結合水量伊と濾紙毛管上昇距離hとの関係を求めたのでその結果を報告する. 実 験 及 び 考 察 試料および結合水量,濾紙毛管上昇距離(30°±0.2°Cで30分間の液の上昇距離cm)の測定法並 びに測定条件は既報1).2)と全く同様である. 各試料水溶液の希釈系列における結合水量πおよびy,と毛管上昇値hの測定結果を表1∼表3お よび図1,図2に示した. % h π 9ク 0 表l. Na-CMC水溶液の濃度,毛管上昇値,結合水量 0.06 0.10 0. 13 0.18 0.21 0.37 0.50 0.7.9 1.00 1.50 2.55 3. 11 12.00 4.33 0 3.90 − − 3.64 5.35 49.01 3.38 2.73 5.80 6.71 45.20 37.31 2.53 7.23 34.76 1.78 1.45 8.71 9.47 23.53 18.70 0.93 10.86 13.67 0.65 10.86 11.05 0.42 10.64 6.99 0.26 0.21 10.64 12. 10 4.08 3.89
16 高知大学学術研究報告 第11巻 自然科学 H 第4号 表2. Na-AIg水溶液の濃度,毛管上昇値,結合水量 % − h π y 0 0.06 0.10 0.13 0.15 0.25 0.34 0.50 0.60 1.00 1.25 2.50 12.00 3.15 0 3.15 − − 2.50 2.22 4.28 4.72 40.60 38.00 2.00 5.13 34.43 1.46 6.40 25.70 1.21 7.55 22.17 0.95 8.04 15.50 0.83 8.09 13.42 表3. PGA水溶液の濃度,毛管上昇値,結合水11 0.50 9.15 9.10 0.39 9.41 7.43 0.22 10.03 3.91 へ 映 w k % h π v CvJ O 1 1 8 6 4 2 0 0 0 12.00 0 0.06 0.10 0. 14 0.19 0.24 0.27 0.39 0.53 0.98 1.41 2.14 2.77 8。35 2.20 − 7.30 3.30 37.0 6.48 4.65 32.90 2 4 6 8 h(cm) −○− Na・CMC −●− Na-Alg −×− PGA (図2も同様) 5.73 6.00 29.89 1 0 図1.試料水溶液希釈系列における{舅裂ト(%) と毛管上昇値との関係 5.07 7.00 27.00 4.68 3.56 7.44 8.18 28.41 21.08 八 切 W S 、 2.68 8.64 16.22 1.35 9.46 9.50 0.71 9.72 6.80 0.37 10.02 4.45 0.24 10.58 3.72 0 0。8 1.6 2.4 3.2 4.0 4.8 5.6 6.4 7.2 h(cm) 図2/試料水溶液希釈系列におけるゴ1ぽド?l卜と毛 管上昇値との関係 各試料水溶液の希釈系列における全水分中結合水百分率π,と絵紙毛管上昇距離hとのグラフは図 1に見る如く,大体において濃変約3%∼0.15%(PGAでは約3%∼0. 25 %')の範囲で各試料に よって傾斜を異にする直線となり,また約0.15%の点(PGAでは約0. 25 96の点)で折れ,大体 0.15%∼0.06%(PGAでは大体0.25%∼0.06%)の範囲で各試料は略々平行な直線となる.すな わちそれぞれの濃度範囲でπ=a−bh(イ旦し, a, bは各濃度範囲並びに各試料によって異なる定数) なる関係式が成立し,πとhとは大体において反比例の関係にある.なお表よりπ=Oの時h=12, 故に上式はπ= C12-h)bとなる. i’II
高分子水溶液の結合水に関する研究 (Ⅸ) (西内) 17
次にこの折線のなす角度は高分子強電解質であるNa・CMC, Na-Algでは小さく,弱電解質であ るPGAでは大きい.またこれらの濃度溶液の直線の傾斜はNa・Alg. Na-CMC, PGAの順に小さ くなり,解離基開距離に関連している様に思はれる. 次に溶質高分子1g当りの結合水量9とhとの関係を求めると図2に示す通り各試料水溶液の希 釈系列について直線のグラフを得,この循合にも各試料について少くとも濃度約0.1%から3%ま での範囲で各希釈系列について<p = K + nh. (K, nは各試料によって異なる定数)なる関係式が成 立する.すなわち各希釈系列についてhといま正比例関係にある.なおこの定数K,nの値をグラ フから求めて表4に示した.Kの値はh=0の 時の9の値であり,nの値はこのグラフの直線 の傾斜を示している.衷に見る如くNa−Algの nの値を10とした場合の各試料のnの相対値は 各試料単位分子10ヶ当りの解離基数の平均値と 大体において一致している.従って直線の傾斜 nと解離基聞距離乃至解離による分子形状の変 化との間には何等かの関述性が考えられる.ま たKの値は強電解質であるNa‐CMC,Na―AIg ( l ) ( 2 ) 文 西内豊道;高知大学教育学部研究報告, No. 12 西内豊道;高知大学教育学部研究報告, No. 13 西内豊道,食品工誌, 9,(No. 3), 161 (1962) 第4. 0=K十nh式の定数K,nの値 Na-CMC Na-Alg PGA K -0.9 0.2 3.3 -13 ( 7.6) 17(10.0) 4. 7( 2. 8) D -7 10 2.1 註)nの項の( )の数値はNa-Algのnの値を 10とした時の相対値を示す. Dは各試料単位分子10ヶ当りの解離基数(平均 値)を示す. 尤もhが0.4以下では炉の値は直線より小さい 本研究に当り試料の提供を受けた第一工業製薬株式会社並びに鴨川化工株式会社に厚く感謝する. 献 137 (1960) 149 (1961) (昭和37年7月27日受理)