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新しい時代を迎えて脳科学はどこに向かうか?

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Academic year: 2021

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2   巻頭言

新しい時代を迎えて脳科学はどこに向かうか?

玉川大学 脳科学研究所長 小松 英彦  令和という新しい時代が始まりました。新しい喜びに出会うことへのたくさんの期待と、見通せない将 来へのいささかの不安が、時代の変わり目に渦を巻いているようです。脳科学にはどんな未来が待ち受け ているのでしょうか?最近の脳科学の発達を振り返ってみると、平成に先立つ 20 年ほどの期間は脳科学 の大航海時代でした。大脳皮質の探索が進み新しい領野が次々と同定されてゆき、今日私たちが思い描く 大脳皮質の地図が作られていきました。それに続く平成の 30 年間は、すばらしい技術革新の時代でした。 機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)、特に BOLD 信号を利用した脳機能イメージングは、ヒトの脳構造と 機能の関係の理解を可能にした革命的な技術でした。電気生理学の分野では多チャンネル同時記録法が広 く普及すると共に、集積回路技術の発達で今や 1 本の微小電極から 1000 チャンネルの同時記録が可能に なりました。また 2 光子顕微鏡を用いた脳のイメージングは、膨大な数のニューロンの形態と活動の可視 化を可能にしました。これらの技術の発達のおかげで、脳細胞の集団の活動の動態をまざまざと見ること が可能な時代になっています。また、光遺伝学の発展によって、特定の神経回路を選択的に操作すること もできるようになりました。令和が始まった今の時代は、誰でも望んで努力をすればそのような技術を利 用できるようになった時代なのです。問題はどのようにそれらの技術を使うのかということでしょう。ど のように問題を設定して、それらの技術を使って何をどのように探すのか、一人一人の研究者のセンスや 知識が今まで以上に問われることになります。新しい技術の発展は、それまでの時代には実現不可能で考 えることすらしなかった新しい問題へのアプローチを可能にします。そのような状況で新しい切り口から 脳の本質に迫る研究をするためには、従来の技術の視野にとらわれている訳にはいきません。人間の行動 に注意深く目を向けるだけでなく、その元になる自然や社会のさまざまな現象に目を向け、大事な情報を キャッチできるようにアンテナを立てておくことが必要でしょう。また、新しい技術は、膨大なデータを 生み出します。それをどのように処理して、そこからどのように本当に意味のある情報を引き出すのか。 そのようなデータ解析能力や、データをつなぎ合わせて理解するモデル化の能力も問われる時代だと言え るでしょう。すぐれた技術、広い知識、高い情報処理能力、それらを一人の研究者がすべて兼ね備えるの は困難です。互いの強みを活かしあって共同研究を進めるオープンな姿勢は更に重要性を増すに違いあり ません。玉川大学脳科学研究所には新しい脳研究を発展させていくために必要な、上に挙げた条件がすべ てそろっています。国内外の大学や研究機関と手を取り合って、令和の時代に脳の働きやヒトの心の理解 を深めることにきっと貢献していけると信じています。楽しみな時代の幕開けです。

参照

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