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タイ王国ウドーンタニー県における体格・体力について- 体格と体力との関係(第3報)-

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タイ王国ウドーンタニー県における体格・体力について

― 体格と体力との関係(第3報)―

千 葉 義 信

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は じ め に ヒトの発育・発達に関連する学問的価値は広く認知 されており、我が国を含む先進諸国においてはこれら に関連する調査や研究が長きに渡り続けられている。 発育や発達に関連する我が国での全国規模の調査とし ては、文部科学省9)による抽出調査によって、国民の 体格や体力に関連する情報が集約され年次公表されて いる。子どの体力は 1980 年代をピークに低下し始め、 2009 年度頃からはほぼ横ばい状況である7)。文部科学 省10)は子どもの体力向上に関連して「子どもの体力向 上推進事業」や「トップアスリート派遣指導事業」等 の取組を進めている。さらに、全国規模の調査として は全国大学体育連合13)によって、加盟校での体格や体 力測定の結果が大学種別に集約され年次公表されてい る。これらの情報は容易に知る得ることが出来る。 しかし、健康の維持・増進に不可欠なヒトの発育・ 発達に関連する情報が必要なのはむしろ開発途上の

タイ王国ウドーンタニー県における体格・体力について

― 体格と体力との関係(第3報)―

千 葉 義 信

The physique and physical fi tness of Thai Students

- Relationship between the physique and physical fi tness

(No.3)-Yoshinobu CHIBA* 国々である。開発途上の国々では衛生的な水の確保が 不十分であることや、栄養不良の人口割合の高いこと 等6)のヒトの発育・発達にネガティブな要因が混在し ている。これらの環境にある開発途上国において、体 格や体力測定のデータからそれらのスタンダードを算 出することは重要である。即ち、対象者のデータを発 育・発達の一般的なパターンと照らし合わせることに よって発育・発達状況が健全かどうかや、疾病の有無、 栄養状態などの発育異常を早期に発見することが可能 となる。しかし、本報の対象国(タイ)では、発育・発 達に関連する統一資料が十分とは言い難い現状である。 筆者はタイでの体格や体力についての資料を収集・ 分析する目的でこれらに関連する調査活動を続けてき た。特にその中で対象者の体格と体力との関係につい ての検討を重ねてきた2),3)。しかし、これまでの調査 では十分な被験者の確保が出来ず、前期中等教育期間、 後期中等教育期間等の階梯によって被験者を分類して きた。 本報では筆者が蓄積した同一年齢の被験者を対象に 体格と体力との関係を検討した。 * 総合文化教育センター 非常勤講師

The purpose of this study was to examine the physique and physical fitness among the Thai students. Target area was Udon-Taini Prefecture in the kingdom of Thailand. The examinees were students of 14-yearsd in the school where the investigation took place (147 girls and 155 boys). The research was carried out with regard to height, weight, sit-ups, sitting-trunk-fl exion, side-step, 50m-dash, standing-long-jump and grip-strength. The results were:

In grip-strength of girls and boys, a physique element was refl ected by the exercise capacity. The results of this study suggested that the heavy weight was positive with the display of muscular strength.

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mean ± S. D, S. D : Standard Deviation 表1 被験者の身体的特徴 図2 体力測定の様子(上体起こし) Thailand Myanmar Laos Gulf of ࡃࡦࠦࠢ 䇭䇭䇭䂓 ࠙࠼࡯ࡦ࠲࡯࠾࡯ Cambodia 図1 調査地域(■:首都) 方 法 1.対 象 タイ王国ウドーンターニー地方(図1)の教育施設 (以下調査校)に通学する 14 歳の女子生徒(147 名)、 男子生徒(155 名)を対象とした(表1)。 2.測 定 測定項目および測定要領は、 日本の文部科学省「新 体力テスト実施要項」11)を参照した。 調査校教員の協 力を得るために現地公用語(タイ語)での「体力測定 実施マニュアル」4)を独自に作成して測定種目の理解 を求めた。測定に際しては事前に調査校教員と実技を 交え注意事項等を確認した。 詳細な測定の流れは調 査校教員より被験者となる生徒へ伝えられたと共に、 測定の趣旨と測定内容を十分に説明して同意を得た。 体格測定項目は「身長」と「体重」の2種目を採用 した。 これら2測定値より BMI を求め被験者の身体 的特徴の把握に努めた。 体力測定項目は基礎運動能力を十分に反映する種目 と共に測定器材の不十分な調査校において測定可能と 判断した以下の6種目を選定した。 筋持久力測定:上体起こし(図2) 敏捷性測定:反復横とび 柔軟性測定:長座体前屈 規定の器材を段ボール、または厚紙にて作成した。 全身パワー・走力測定:50m 走 瞬発力測定:立ち幅とび 筋力測定:握力 スメドレー式握力測定機器(竹井機器)を使用した。 3.調査期間 2006 年、2007 年、2008 年、2009 年、2010 年の各々 8 月であった。 4.分析方法 体格計測の結果より、身長と体重のパーセンタイル 値を算出し、それぞれを 50%タイル値で区切り身長 と体重による以下の4領域を構成した(図3、表2)。 Ⅰの領域: 身長が低く、体重が軽いグループ(以下:領域Ⅰ) Ⅱの領域: 身長が低く、体重が重いグループ(以下:領域Ⅱ) Ⅲの領域: 身長が高く、体重が軽いグループ(以下:領域Ⅲ) Ⅳの領域: 身長が高く、体重が重いグループ(以下:領域Ⅳ) 上記4領域(以下:体格の4領域)を指針に体力測 定結果を男女別に分析した。 湘南工科大学紀要 第45巻 第1号

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領域Ⅰ:身長が低く体重が軽いグループ、 領域Ⅱ:身長が低く体重が重いグループ、領域Ⅲ:身長が高く体重が軽いグルー プ、 領域Ⅳ:身長が高く体重が重いグループ。 S. D:Standard Deviation(標準偏差)。 *:p<.05 表3 体格と体力との関係:女子 㪇 㪉㪌 㪉㪌 㪌㪇 㪌㪇 㪎㪌 㪎㪌 㩼㫀㫃㪼 㩼㫀㫃㪼

図3 体格の4領域 㩼㫀㫃㪼 り㐳 ૕㊀ り㐳 ૕㊀ 㩿㩼㪀 㩿㪺㫄㪀 㩿㫂㪾㪀 㩿㪺㫄㪀 㩿㫂㪾㪀 㪉㪌 㪈㪌㪉㪅㪇 㪋㪊㪅㪋 㪈㪍㪇㪅㪇 㪋㪍㪅㪇 㪌㪇 㪈㪌㪍㪅㪇 㪋㪎㪅㪐 㪈㪍㪋㪅㪇 㪌㪊㪅㪇 㪎㪌 㪈㪌㪐㪅㪇 㪌㪉㪅㪇 㪈㪍㪏㪅㪇 㪌㪏㪅㪌 ᅚሶ ↵ሶ 表2 パーセンタイル値の境界線(25-, 50-, 75% ile) 㗔ၞ ਄૕⿠ߎߒ 㐳ᐳ૕೨ዮ ෻ᓳᮮߣ߮ 㨙⿛ ┙ߜ᏷ߣ߮ ីജ

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領域Ⅰ:身長が低く体重が軽いグループ、 領域Ⅱ:身長が低く体重が重いグループ、領域Ⅲ:身長が高く体重が軽いグルー プ、 領域Ⅳ:身長が高く体重が重いグループ。 S. D:Standard Deviation(標準偏差)。 *:p<.05 表4 体格と体力との関係:男子 5.統計処理 体格の4領域間での統計的有意差検定には、対応の ない分散分析を使用し、有意差が認められた場合の多 重比較には Sheff e の方法を用いた。なお、有意差につ いては、いずれも 5%水準で判定した。 結 果 1.女子について 体格の4領域の構成は、領域Ⅰ 50 名(34.0%)、領 域Ⅱ 33 名(22.5%)、領域Ⅲ 24 名(16.3%)、領域Ⅳ 40 名(27.2%)であった。体格と体力との関係につい て表3に示した。上体起こし、長座体前屈、反復横とび、 50 m走、立ち幅とびでは体格の4領域間に有意な差 は認められなかった。握力では領域Ⅳが領域Ⅲ、領域 Ⅰを有意(p<0.05)に上回り、領域Ⅱが領域Ⅰを有意 (p<0.05)に上回った。 2.男子について 体格の4領域の構成は、領域Ⅰ 55 名(35.5%)、領

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域Ⅱ 24 名(15.5%)、領域Ⅲ 26 名(16.8%)、領域Ⅳ 50 名(32.2%)であった。体格と体力との関係につい て表4に示した。上体起こし、反復横とび、50 m走、 立ち幅とびでは体格の4領域間に有意な差は認められ なかった。長座体前屈では領域Ⅱ、領域Ⅲが領域Ⅰを 有意(p<0.05)に上回った。握力では領域Ⅳが領域Ⅲ、 領域Ⅰを有意(p<0.05)に上回り、領域Ⅱが領域Ⅰを 有意(p<0.05)に上回った。 考 察 本報の対象者(表 1)の体格の特徴について、当該 国内でのそれらに関連する先行研究や調査が十分とは 言い難いことから、日本9)との比較を行いその特徴の 把握に努めた。身長は男女共にタイが日本よりも低く 有意差(p<0.05)が認められ、体重では両者の間に有 意差は認められなかった(日本の詳細なデータは示し ていない)。本報の対象者は男女共に日本の同世代に 比べて身長が低く、体重が同等の集団であると言える。 これら集団の体格の4領域を指針として体力を比 較した。松浦8)は、発育は形態的な増加を意味し発達 は機能・能力の発生、拡大、増加を意味するとした上 で「発育と発達は現象としては相互に独立ではなく密 接に関連しあって生ずる」としている。即ち、体格要 素の発育と体力要素の発達を関連付けて考えていくこ とが重要である。体格の4領域の関係において有意差 が認められた種目は男女の握力と男子の長座体前屈で あった。本来、長座体前屈は体格の違いは反映されな いと考えられるが、体格による相違が認められたので 同時に考察していくものとした。 男女の握力では、領域Ⅱ、領域Ⅳの値が領域Ⅰ、領 域Ⅲに比べて高い傾向であった。領域Ⅱ、領域Ⅳに属 する対象者は体重が 50%タイル値以上であり、体重 が重たいことが筋力発揮にポジティブな要因であった ことが考えられる。体重と筋力との間には有意な相関 関係が見られ、体重の重たい者ほど強い筋力を発揮す ることはこれまでも知られており、筋力が大きな要素 を占める競技種目では体重別が採用されている1)。こ れらのことからも本報の結果は妥当性が高いものと考 えられる。 男子の長座体前屈では領域Ⅱ、領域Ⅳが領域Ⅰより も高い傾向であった。領域Ⅱ、領域Ⅳの対象者は領域 Ⅰの対象者に比べて、身長が高い、または身長が高く、 体重が重たいグループである。長座体前屈測定に関し て文部科学省11)は身体の大きさ(身長等)はその測定 に影響しないと述べている。また、河野ら5)は、柔軟 性は一般的な特徴が無く個人の関節による資質である としている。この様に本来は体格の違いが測定結果に 影響を及ぼさない種目であると考えられる。これらの ことから、本報での結果は体格そのものが直接影響し たのではなく、対象者個人の特質が影響したものと判 断することが妥当である。 当該国12)における経済状況の著しい変化が、子ども の発育環境を短時間のうちに変貌させている。その中 で、どのように発育・発達を遂げているかを継続的に 測定・記録することは、子どもの教育の基盤整備のた めにも重要である。本報で扱っているタイに関しては、 今後の体育科教育やスポーツ活動の充実を図るために 長期に渡る継続的な調査・研究が不可欠である。 ま と め 本報は、タイ王国ウドーンターニー地方で生活する 14 歳の男女(女子 147 名、男子 155 名)を対象とし て、体格、体力測定を実施して対象者の身長と体重の 50%タイル値を境界とした「体格の4領域」を作成し た。これを指針として体力測定結果を比較・検討して、 体格と体力との関係を調査することを目的とした。体 力測定種目は上体起こし、長座体前屈、反復横とび、 50 m走、立ち幅とび、握力の6種目であった。 体格要素が反映したと思われる体力測定種目は男女 の握力のみであった。これらの結果では、体重が重た いことが筋力発揮にポジティブな要因であったと考え られる。 謝 辞 測定に協力を頂いた調査校長 Mr. Decha Soontarakom、 体育科教員 Mrs. Pensri Boonsong、現地での日程調 整等にご尽力頂いた Mrs. Narissaiaporn Duangkota、 Mr. Suphat Thitimool に深謝いたします。 文 献 1)浅見俊雄ほか, 身体運動学概論, 11(1988),299, 大 修館書店. 2)千葉義信, タイ王国ウドーンタニー県における体 格・体力測定について ― 体格と体力との関係 ―, 神奈川大学経営学部国際経営論集, 35(2008), 39-47. 3)千葉義信, タイ王国ウドーンタニー県における体 湘南工科大学紀要 第45巻 第1号

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格・体力測定について ― 体格と体力との関係(第 2報)―, 湘南工科大学紀要, 43, 1(2009),151-157. 4)千葉義信, タイ王国における体力測定 ― 実施マ ニュアル作成について(第2報 ―, 神奈川大学経 営学部国際経営論集, 37(2009)159-166. 5)河野昌晴ほか, 保体学概論,(1993),119-134, 小林 出版. 6)木本嶺二, 世界統計白書(2009 年版), (2009),508-509, 木本書店. 7)小林寛道, 子どもの体力向上に向けての取組, 日本 発育発達学会第8回大会抄録集,(2010),29. 8)松浦義行, 現代の体育・スポーツ科学体力の発達, (1992),68, 朝倉書店. 9)文部科学省, 平成 20 年度体力・運動能力調査結果, (2009/07/07 ア ク セ ス ) http://www.mext.go.jp/ b_menu/houdou/21/10/attach/1285568.htm 10)文部科学省, 文部科学省白書平成 20 年度,(2009), 222-223, 佐伯印刷 . 11)文部科学省, 新体力テスト有意義な活用のために, 5 (2005),5-134, ぎょうせい. 12)Wikipedia(2009)タイ王国,(2010/04/22 アクセス) http://www.hanamoku.jp/wikipedia/ 13)全国大学体育連合情報部, 平成 19 年度体力測定結 果調査報告書,(2008),23-97, 明宏印刷.

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