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「区域区分(線引き)廃止が地価に与えた影響と土地利用変化に関する分析~香川中央広域都市計画区域をケーススタディとして~」

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区域区分(線引き)廃止が地価に与えた影響と土地利用変化に関する分析

~香川中央広域都市計画区域をケーススタディーとして~

( 要 旨 ) 区域区分制度は、都市計画法において土地利用規制の根幹をなす制度であるが、昭和 43 年の制 定から 30 年以上が経過し、その後の都市を巡る大きな社会経済情勢の変化に対応するため、平成 12 年 5 月の都市計画法の抜本的改正によって、都道府県の選択制へと移行した。香川県では、こ の改正により県全域で都市計画区域の拡大再編の見直しが行われ、すべての都市計画区域で線引 きが廃止された。本稿では、香川中央広域都市計画区域に着目し、線引き廃止が人口動向、地価 動向、土地利用動向にどのような影響を与えたのか分析を行った。 分析の結果、人口流出への歯止め効果は認められないこと、土地利用資源配分の非効率解消に よって旧市街化区域の地価が下落すること、農地転用による小規模な分譲宅地が増加することな どが示された。 その結果を踏まえ、土地利用の非効率解消を上回る行政コスト増加がなければ線引き廃止をし ても良いことなど、線引き廃止を検討する際の留意事項を提言した。 2010 年(平成 22 年)2 月 政策研究大学院大学 政策研究科 まちづくりプログラム MJU09064 橋本 和則 ( 高 松 市 )

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目 次

第1章はじめに ... 1 1-1.研究の目的 ... 1 1-2.先行研究 ... 1 1-3.研究の方法 ... 1 第2章 線引き制度の概観 ... 2 2-1.2000 年法改正内容の概要... 2 2-2.線引き制度の意義と効果 ... 2 2-3.地方線引き都市の問題点 ... 4 2-4.香川県における線引き廃止の背景 ... 4 2-4-1.香川県の地理的特徴 ... 4 2-4-2.香川県の線引き制度の変遷 ... 5 2-4-3.香川県における線引き制度導入後の人口動向 ... 5 2-5.香川県の線引き廃止後の土地利用規制 ... 6 第3章 線引き廃止による人口、地価、土地利用変化の分析 ... 6 3-1.線引き廃止前後の人口動向分析 ... 6 3-2.線引き廃止前後における地価の実証分析 ... 7 3-2-1.仮説の設定 ... 7 3-2-2.分析の方法 ... 10 3-2-3.地価による実証分析 ... 11 3-2-4.使用するサンプルデータの基本統計量... 13 3-2-5.推計結果 ... 14 3-2-6.推定結果の分析 ... 14 3-3.線引き廃止前後の土地利用変化の概観 ... 15 3-4.旧市街化調整区域における土地利用の実態 ... 16 3-4-1.土地利用変化(転用目的) ... 16 3-4-2.土地利用変化(転用場所) ... 17 第4章 香川県の線引き廃止に対する考察 ... 20 4-1.人口流出への歯止めに対する評価 ... 20 4-2.地価に対する評価 ... 20 4-3.土地利用変化に対する評価 ... 20 第5章 線引き廃止に対する提言と今後の課題 ... 21 5-1.分析評価をうけての提言 ... 21 5-2.今後の課題 ... 21 参考文献 ... 22

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第1章 はじめに

1 1-1.研究の目的 『区域区分制度』(以下「線引き制度」という。)は、昭和 43 年の新都市計画法において、 開発許可制度とともに高度経済成長時の急激な都市化による無秩序な市街地の拡大を防止 し、計画的な市街化を図ることを主たる目的として導入された制度である。しかし、その 後の都市をめぐる社会経済情勢は、人口減尐局面突入に伴う尐子高齢化の進展やモータリ ゼーションの進展など多くの面で大きく変化した。そのため、都市政策のあり方について も実情に見合ったものへと見直すことが求められるようになった。その後、地方分権一括 法の制定によって地方の実情に見合ったものへ見直す考え方が定着し、平成 12 年 5 月には 都市計画法が抜本的に改正され、土地利用規制の根幹部分である線引き制度は地域の実情 などを勘案して、導入や廃止を都道府県が決定できる選択制に移行することとなった。こ の改正により、香川県においては県全域で都市計画区域の拡大再編の見直しが行われ、す べての都市計画区域で線引きが廃止された。その後、土地利用変化状況の経過などは公表 されているが、その効果を検討することはいまだ行なわれていない。 本研究は、香川中央広域都市計画区域において、線引き廃止当初に香川県が掲げた、人 口流出への歯止めと新たな土地利用コントロールの導入という 2 つの目的に対して、線引 き廃止が人口動向、地価、土地利用動向にどのような影響を与えているのか分析をするこ とを目的とするものである。 1-2.先行研究 線引き廃止に関する先行研究としては、今回の法改正以前の昭和 62 年の建設省都市局長 通達により線引き廃止を行った都城広域都市計画区域を取り上げた阿部2の研究が挙げら れる。その中で阿部は、線引き廃止の経緯とともに、人口や産業動向の観点から線引き廃 止の効果を明らかにしている。 また、平成 12 年の法改正による香川県の線引き廃止を事例として取り上げたものに桑 田・越沢3や石村ら4の研究がある。桑田・越沢は、線引き廃止の経緯を整理し、人口と農 地転用の状況確認から線引き制度の問題点を指摘している。石村らは、線引き廃止直後の 人口や開発許可件数、土地利用状況を整理し、全体的な土地利用の把握から局所的土地利 用コントロールへの問題点を指摘している。 香川県の線引き廃止を取り上げた先行研究はいずれも廃止後の人口や土地利用状況を分 析し、政策評価する必要があるという認識を示しているが、今までのところ経済学的見地 から線引き廃止の評価をするような研究はなされていない。また、地価を用いて定量的に 線引き廃止を研究したものも見当たらない。 1-3.研究の方法 研究の方法としては、まず、第 2 章の線引き制度の概観において、線引き制度の意義や 1本稿は筆者の個人的見解を示すものであり、派遣元の見解を示すものではなく、誤りはすべて筆者に帰属することを お断りいたします。 2 阿部成治(1999) 3 桑田智子・越澤 明(2004) 4 石村壽浩・鵤 心治・中出文平・小林剛士(2006)

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2 地方線引き都市にもたらされる問題点、香川県の線引き廃止の背景などを整理した上で、 第 3 章の線引き廃止の実証分析において、人口動向や地価、土地利用動向の分析により線 引き廃止による影響を定量的に分析する。第 4 章の線引き廃止に対する考察では、分析結 果を人口流出への歯止めと地価に与えた影響および土地利用形態変化の観点から考察を加 える。さらに第 5 章では第 4 章の考察を踏まえて、線引き廃止に対する提言を行なうもの である。

第2章 線引き制度の概観

2-1.2000 年法改正内容の概要 (1)都市計画に関するマスタープランの充実、線引き制度及び開発許可制度の見直し ・都市計画に関するマスタープランの充実 ・線引き制度の都道府県の選択制の導入 ・開発許可基準の地域の実情に応じた変更 (2)良好な環境の確保のための制度の充実 ・都市計画基準に「自然的環境の整備または保全への配慮」を追加 ・小規模な風致地区について市町村への権限移譲 ・特定用途制限地域制度の創設 ・用途地域を定めていない区域における容積率、建ぺい率の地域の実情に応じた指定 (3)既成市街地の再整備のための新たな制度の導入 ・特例容積率適用区域制度の創設 ・建ぺい率制限の緩和 ・道路、河川等の都市施設を整備する立体的な範囲の都市計画決定 ・地区計画の策定対象地域の拡大 (4)都市計画区域外における開発行為及び建築行為に対する規制の導入 ・準都市計画区域制度の創設 ・都市計画区域及び準都市計画区域外の区域における開発許可制度の適用 (5)都市計画決定システムの透明化と住民参加の促進 ・都市計画に関する知識の普及及び情報の提供 ・都道府県が都市計画の案を作成する場合の、都道府県と市町村の役割分担に明確化 ・地区計画等に対する住民参加手続の充実 ・都市計画案縦覧の際の理由所の添付 ・都市計画決定手続の条例による付加 2000(平成 12)年の法改正は、地方分権の大きな流れに沿って行われたもので、地方公 共団体が主体となって、地域の実情に応じたマスタープランを定め、柔軟に具体の都市計 画を定めていくという体系を明確にしている。大きな改正点は以上の 5 つである。5 2-2.線引き制度の意義と効果 日本の土地利用規制の法的基礎は、都市計画法と建築基準法である。これらの二つの法 5 都市計画・建築法制研究会(2001)

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3 律の前身である「市街地建築物法」は 1919(大正 8)年に制定されたが、その後、都市計 画法(1968 年)、建築基準法(1970 年)の大改正によって現行の法体系が確立された。1992 年にはこれら 2 法の改正が行われたが法体系の根幹は変わっていなかった6。その法体系の 根幹が 2000(平成 12)年の法改正で抜本的に見直された。以下に都市計画法制の沿革を示 す。(表 2-1.)7 6 金本良嗣(2000) p183 7 都市計画法令研究会(2000) p143-147 表 2-1.都市計画法制の沿革 年 制度改正の内容 時代背景・社会的課題等 1888 ○「東京市区改正条例」(明治21年) ・伝染病の蔓延、上下水道整備の要請 ・近代国家の首都にふさわしい都市整備→既成市街地の改良 ・東京に大火が頻発、銀座瓦街の整備 ・街路整備に重点を置いた施設設計 ・劣悪な住環境の改善、未整備道路改善 1919 ○「(旧)都市計画法」(大正8年)→6大市に適用 ・日本の資本主義的発展に伴う人口の ・「交通、衛生、保安、経済等に関し永久に公共の安寧を維持し福利を 都市集中化 増進するため重要施設(注:地域地区・事業を含む)の計画」 ・第一次世界大戦を契機とする軍需工業 【内容】 ①都市計画制限 の発展による都市の拡張      ②ゾーニングの導入→地域地区の規制内容は 「市街地建築 物法」(大正8年)に規定      ③土地区画整理に関する根拠・手続き規定(耕地整理法を       大幅に準用)      ④超過収用              ⑤受益者負担を規定 1923 ○「特別都市計画法」(大正12年) ・関東大震災(大正12年)の復興 ・東京・横浜において震災復興のための土地区画整理(大正13年決定) ・帝都復興事業(大正13年~大正19年) *都市計画法適用都市の拡大 ・工業の地方分散、新興工業都市計画 ~大正12年に札幌以下地方25都市に適用。逐次拡大  昭和8年に全国適用(市の全部及び市に準ずる町村) *戦時下の都市計画(昭和12年防空法) ・太平洋戦争に突入(昭和16年) ・都市計画の目的に「防空」追加。振興工業都市の建設、軍都市整備事業 ・太平洋戦争の終結(昭和20年) 1946 ○「特別都市計画法」(昭和21年) ・戦災復興 ・全国115戦災都市の復興計画(地方都市においては初めて総合的な都市 ・新憲法施行(昭和22年)  計画事業の実施)  緑地地区(都市の過大膨張を抑止) 1968 ○「(新)都市計画法」(昭和43年) ・自民党「都市政策大綱」(昭和43年) 【内容】①都市計画区域は実質的な都市地域を単位として指定 ・高度経済成長に伴う人口・産業の      ②市街化区域と市街化調整区域の区分(線引き) 大都市地域への集中~市街地の      ③開発許可制度の導入 高容積率化問題、スプロール対策      ④都市計画決定手続きの合理化(都市計画の決定権限をすべて ・公害問題、都市環境の悪化 地方公共団体に移譲、住民手続きの充実)      ⑤都市計画制限の強化(都市計画施設の区域内の建築制限充実)      ⑥都市計画地方審議会等の設置      ⑦市街化区域における農地転用規制の除外 等 1974 ○都市計画法・建築基準法の改正(昭和49年) 【内容】 ①都開発許可制度の拡充(未線引き都市計画区域への拡大)      ②市街地開発事業等予定区域制度の創設      ③工作物に関する規制強化 年 制度改正の内容 時代背景・社会的課題等 1980 ○都市計画法・建築基準法の改正(昭和55年) ・第二次オイルショック(昭和53年) ・地区計画制度の創設 ・成田新東京国際空港一部開港 ・帝都復興事業(大正13年~大正19年) ・都市問題・地域開発をめぐる住民活動  が活発化 *同時期の都市計画関連立法として ・都市再開発法の改正(昭和55年)~都市再開発方針等 ・「幹線道路の沿線の整備に関する法律」(昭和55年)~沿道整備計画等 ・モータリゼーションの進行 1988 ○都市再開発法・建築基準法の改正(昭和63年) ・民間活力の活用と規制緩和の要請 ・再開発地区計画の創設 ・第四次全国総合開発計画(昭和62年) ~東京一極集中への対応、多極分散 *地区計画制度の拡充 型国土の形成、定住と交流の促進、 ・「集落地域整備法」(昭和63年)~集落地区計画等 東京の国際金融センターとしての整備 ・道路法等の改正(平成元年)~立体道路制度 ・大都市中心部における事務所需要の 増大に端を発した急激な地価高騰 *総合的土地対策の推進(昭和62年~) ・産業構造や輸送体系の変化等により ・「土地基本法」(平成元年)~土地についての基本理念の確立 都市の枢要な位置に工場跡地が発生 1990 ○都市計画法・建築基準法の改正(平成2年) ・経済社会構造の変化、国際化・情報化 【内容】①住宅地高度利用地区計画 の進展      ②用途別容積型地区計画 ・地価高騰が住宅地を含んで広域に波      ③遊休土地転換利用促進地区 及し、労働者の持ち家取得や良質な借 *その他都市計画に関連する土地対策立法として 家への入居困難になる現象が発生 ・大都市法の改正(平成2年)~供給基本方針、住宅市街地開発整備方針 ・土地を持つ者と持たざる者との資産格 ・生産緑地法の改正(平成3年)~都市計画において保全のうち(生産緑地) 差が拡大、社会的不公平感が増大 と宅地化農地(住宅並み課税)の区分 1992 ○都市計画法・建築基準法の改正(平成4年) 【内容】①市町村の都市計画に関する基本的な方針の創設 ・大都市地域において、オフィスビルの住宅      ②用途地域の細分化 地への無秩序な進出による住宅地の      ③誘導容積制度の創設等地区計画制度の拡充 地価上昇、住環境の悪化      ④開発許可技術基準の見直し ・居住人口の流出による都心部の空洞化      ③都市計画の決定権限の移譲等 現象が進行、コミュニティー維持が困難となり つつある地域が発生 1997 ○都市計画法・建築基準法の改正(平成9年) ・都市における居住機能の適正な配置 ・高層住居誘導地区の創設、マンション等共同住宅の容積率規制の合理化   の要請、土地の有効高度利用の促進 1998 ○都市計画法・建築基準法の改正(平成10年) ・都市計画における地方分権の推進 ・特別用途地区の多様化、市街化調整区域における地区計画制度の拡充 ・郊外型住宅の建設の促進  都市計画の決定権限の移譲

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4 線引き制度は、昭和 43 年の新都市計画法において、開発許可制度とともに高度経済成長 期の急激な都市化による無秩序な市街地の拡大を防止し、計画的な市街化を図ることを主 たる目的として導入された制度である。線引き制度は、市街化区域として市街化を促進さ せる区域と、市街化調整区域として市街化を抑制させる地域を区分することで、都市の無 秩序な拡大を抑制させ、都市の郊外化によって引き起こされる都市的土地利用と農業的土 地利用の混在による外部不経済8の減尐や道路整備などのインフラ整備の非効率を防止す る効果9が期待される。 この制度は、導入された昭和 43 年当時の人口増加局面の社会情勢を背景にしており、高 度経済成長の都市圏への人口集中を想定したもので、当時人口 10 万人以上の都市には制度 導入が義務付けられていた。特に、東京・大阪・名古屋などの三大都市圏においては、急 激な人口流入によって都市の郊外化は深刻であり、線引き制度導入によって、外部不経済 の減尐やインフラ整備の非効率の未然防止、取引費用の低減などの効果を発揮していた。 2-3.地方線引き都市の問題点 前節で述べたとおり、人口増加の局面にあった三大都市圏においては、効果的に機能し ていた線引き制度であったが、人口の流出が進んだ地方都市においては、想定したほど都 市部への人口集中は起こらず、社会経済情勢の変化とも相まって、様々な弊害が引き起こ されるようになった。その要因となった社会経済情勢としては、尐子高齢化による人口減 尐局面への移行、各家庭での自動車保有率の増加によってモータリゼーションが進展した結 果、郊外での居住や郊外大型店舗の出店など生活様式が大きく変化したことに伴う生活圏域の 広域化などが挙げられる。市町村合併や公共施設などが駐車場確保などのために郊外地域に 移転することなども郊外化に拍車をかけていると考えられる。このような広域化の社会経済情勢の 変化によって、郊外部の市街化を抑制する規制の厳しい市街化調整区域を避け、より安価で土 地利用規制の緩やかな都市計画区域外地域に居住する者が増加し、線引き制度の意図にそぐ わない状況が発生していった。さらにこのような郊外化は、道路や水道などの社会インフラ整備の 非効率や除雪や維持管理経費の増大をもたらし、地方財政をひっ迫させるといった問題も引き起 こすこととなったと言われている。 2-4.香川県における線引き廃止の背景 2-4-1.香川県の地理的特徴 香川県は、讃岐山脈から続く山麓台地、讃岐平野を中心に構成されている。都道府県面 積としては全国一小さいにもかかわらず、北部に讃岐平野が広がっているため、可住地面 積は比較的広い。この平野部はほとんどが平坦な地形となっているが飯野山などの孤峰や 台地が点在しており、地形的にはいくつかに分断されている。また、降水量の尐ない気候 のため、県内を流れる河川は、他県と比較していずれも全長が短く、水量も尐ない。その ため、河川による地形的分断が尐ないことから、居住地を選定する際の物理的阻害要因が 8都市の郊外化によって引き起こされる都市的土地利用と農業的土地利用による外部不経済には、交通渋滞や農地分断 による排水困難、それを解消するための道路や水路などのインフラ整備の非効率が挙げられる。これは市場の失敗と 呼ばれ、政府が土地利用規制をもって市場に介入する根拠となっている。 9 線引きの効果としては、市街化区域と市街化調整区域を設けることで、都市的利用と農業的利用の土地利用純化に よって、都市の郊外化による外部不経済やインフラ整備の非効率を事前に抑制することが挙げられる。また、インフ ラ整備などが計画的整備されることによって、用地買収などの取引費用の低減が図られることも挙げられる。

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5 尐なく、市街地が平面的に広がりやすいという特徴がある10 そのほかに平野部の特徴として、条里制11に端を発した地域形成がされてきたことが挙 げられる12。この地域形成により、追加的な基盤整備の必要性が尐なく、集落(住宅地) と農地が混在しやすい地域が広がっており、道路基盤もある程度整備されているため、温 暖な気候と合わせてどこにでも居住可能という条件を備えている。そのため、宅地開発な どの都市的な土地利用に関しては、極端な集中が起こらず、低密な住宅地が連坦する地域 が農地内に展開するという形態をとりやすく、線引き制度による市街化調整区域を設定し て、市街化抑制を図るという考え方が馴染みにくい土地柄であったと言える。 2-4-2.香川県の線引き制度の変遷 昭和 43 年に施行された新たな都市計画法により、県内の 5 市 16 町において 16 都市計画 区域が指定された。このうち、香川中央都市計画区域と琴平都市計画区域の 2 つの都市計 画区域が市町の行政区域をまたいだ広域都市計画区域として指定されていた。香川中央都 市計画区域については高松市、丸亀市、坂出市、宇多津町、牟礼町の 3 市 2 町を含む地域 によって 1 つの都市計画区域を形成するよう設定されており、合わせて線引きの適用が行 なわれていた。この時点では、都市計画区域の面積は約 4.4 万 ha(香川県全面積の約 24%) であった。 その後、大川町、三木町、香川町、国分寺町、綾南町、飯山町が都市計画区域に追加指 定され、線引き廃止直前には、24 市町において 19 の都市計画区域が指定されていた。県 内における都市計画区域の指定状況は、線引き廃止前(2004 年)時点で、面積約 7.6 万 ha (全面積の約 41%)、都市計画区域内人口は全体人口の 85%に上っていた。 2004 年の都市計画変更によって、新たに香南町が都市計画区域に編入され、25 市で 12 の都市計画区域に再編された。また、線引きの廃止により、それまで都市計画区域外であ った高松市山田地区、丸亀市郡家地区、及び、香南町を都市計画区域に編入し、周辺 9 つ の都市計画区域と合わせて新たに 3 つの都市計画区域(高松広域、中讃広域、坂出)とし て拡大再編を実施した。13 2-4-3.香川県における線引き制度導入後の人口動向 昭和 43 年の線引き制度導入後の人口動向は、一貫して都市計画区域外と、周辺町 10 町 の合計人口が増加した。この要因は、香川中央広域都市計画区域において人口増加の圧力 が高かったことが考えられる。また、周辺町は線引き導入時都市計画区域外であったが、 人口増加に伴い昭和 50 年代に都市計画区域の追加指定がなされたが、区域区分制度を導入 しない未線引き都市計画区域であっため、拡散しやすい地理的条件と規制の緩さが相まっ て市街化調整区域を飛び越し、周辺町に人口増加が及んだと考えられる14 10小島(全日本自治体労働組合香川県本部) 11 「条里制」とは、奈良時代の終わりころから、平安時代にかけて行われた日本最初の区画整理です。条里制地割で は、まず耕地を6町(約654m)四方の碁盤目に割って、この一区画を「里」と呼び、さらに「里」を1町(約 109m) 四方の36 区画に分け、1~36 の数字で呼称するものです。今でも田んぼが長方形に整然と区切られているのは、この 条里制地割を保ちながら、長い間、耕作され続けてきた証拠なのです。(出典:奈良県農業技術センター) 12 香川県都市計画基本構想検討委員会(2002) 13 香川県都市計画協会 (2005) 14市街化調整区域を飛び越し、周辺町に人口増加が及んだとの指摘は桑田・越澤(2004)も論文の中で指摘している。

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6 2-5.香川県の線引き廃止後の土地利用規制 香川県においては、容積率・建ぺい率などの形態規制や開発許可制度の見直し、特定用途制 限地域の新設など新たな土地利用コントロール方策の導入を線引き廃止の前提としている。これ は、ただ線引きを廃止しただけでは無秩序な開発促進が予想されるため、線引きに代わる土地利 用を適正に誘導する措置が必要との考えに基づくものである。そのため、平成 12 年の都市計画 法改正内容に沿って新設や見直しが行われている。以下に土地利用規制の見直し内容を示す15 (表 2-2.)

第3章 線引き廃止による人口、地価、土地利用変化の分析

3-1.線引き廃止前後の人口動向分析 香川県全体の人口動向は、人口減尐局面を受け、昭和 60 年を境に増加は止まり、平成 7 年に減尐に転じている。線引き導入時の香川中央広域都市計画区域の人口は前章で述べた が、線引き廃止直前の人口動向は、旧区域区分別でみると、市街化区域や市街化調整区域 の人口変動がほぼ横ばいであるのに対し、都市計画区域外である周辺 2 市 10 町のうち 8 町の人口が増加しており、スプロールが進んでいたと考えられる。16 線引き廃止後の高松市における旧区域区分別の人口動向は、以下の図(図 3-1.~3.)17 のようになる。旧区域区分について見ると、線引き廃止により、旧市街化調整区域の人口 が増加し、旧市街化区域、旧都市計画区域外の人口は減尐していることがわかる。 15小島「香川県の都市計画の見直し(線引き廃止)」の記述をもとに筆者作成。 16石村ら(2006)の分析。 17 高松市役所HP に掲載の町丁目別人口データより区域区分ごとに分類し、グラフ化した。 図 3-1.旧市街化区域の人口変遷(高松市) 表 2-2.線引き廃止に伴う土地利用規制の見直し 図 3-2.旧市街化調整区域の人口変遷(高松市) 230000 231000 232000 233000 234000 235000 236000 237000 h15 h16 h17 h18 h19 h20 h21 人 口 ( 人 ) 年度 市街化区域 H16.5.17 線引き廃止 75000 76000 77000 78000 79000 80000 81000 82000 83000 84000 85000 h15 h16 h17 h18 h19 h20 h21 人 口 ( 人 ) 年度 調整区域 H16.5.17 線引き廃止 規制内容 線引き廃止前 線引き廃止後 【見直し】 形態規制 容積率:400% 容積率:200% (容積率・建ぺい率) 建ぺい率:70% 建ぺい率:70% 【見直し】 (市街化調整区域) (市街化調整区域) 開発許可制度 対象面積:全て対象 対象面積:1000㎡以上 (都市計画区域外は3000㎡のまま) 最低敷地面積:各都計毎 最低敷地面積の統一:100~200㎡ 【新設】(旧香川中央都計区域のみ) 特定用途制限地域 用途白地における特定用途の 立地を規制 【見直し】 8地区 8地区→12地区 風致地区

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7 しかしながら、線引き廃止と同時に見直された都市計画区域の再編や市町村合併などに より、線引きによって人口が流出していた未線引き都市計画区域や旧都市計画区域外地域 が同一都市計画区域になったり、同一自治体になっていることから、行政が目的とする人 口流出歯止めの意義が不明確となっている。また、香川県全体の人口(図 3-4.)18につい ても、平成 7 年に減尐に転じてから一貫して減尐を続けている。なお、四国 4 県の人口動 向も、同様に減尐傾向である。(図 3-5.)19 3-2.線引き廃止前後における地価の実証分析 3-2-1.仮説の設定 線引きによる土地利用規制が導入される以前は、土地に対する需要は、市街地中心部が 高く、中心部から距離が遠くなるにつれて低くなる、右下がりの曲線で表すことができる。 しかし、線引きが導入され市街化調整区域に指定されると、本来土地に対する需要があ る地域であっても、原則として宅地開発が禁止されるなど土地の利用が厳しく制限される。 そのため、宅地開発が可能な市街化区域や利用規制の緩やかな都市計画区域外で土地利用 が進むこととなる。市街化区域での土地利用促進は線引き制度の意図するところであるが、 これによって、地価は上昇することとなる。 この地価の変化状況を以下で図に表していく。本来であれば、市場を通じて、需要と供 給が均衡する点 Q において、価格と供給量が決定される。(図 3-6.) 18 香川県HP 人口統計データから作成。 19 総務省HP 人口統計データから作成。 図 3-4.香川県の人口の変遷 図 3-3.旧都市計画区域外の人口変遷(高松市) 図 3-5.四国 4 県の人口の変遷 22600 22800 23000 23200 23400 23600 23800 24000 h15 h16 h17 h18 h19 h20 h21 人 口 ( 人 ) 年度 旧区域外 H16.5.17 線引き廃止 820 840 860 880 900 920 940 960 980 1,000 1,020 1,040 40 45 50 55 60 平 成 2 年 7 12 13 14 15 16 17 人口 (千人 ) 年度 人口

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8 しかし、線引きによって市街化調整区域での宅地開発が規制されると、市街化区域なら びに都市計画区域外において、市街化調整区域で賄えなかった土地需要を吸収するため、 土地への需要が上方へとシフトし、本来の均衡価格よりも上昇する。(図 3-7.) この地価の上昇は市街化区域の地価高騰を招き、自動車などによる移動コストが尐なく、 比較的近い距離に安価で規制の緩やかな都市計画区域外が存在する地方線引き都市では、 地価の高い市街化区域が敬遠され、市街化調整区域を飛び越して都市計画区域外で宅地の 立地が行われると考えられる。 一方、厳しい土地利用規制がかけられる市街化調整区域では、宅地として供給できる農 地は存在するものの、区域内居住者以外の開発が規制されるため、農地への需要が下がる。 需要の低下によって、需要曲線は下方にシフトすることとなり、農地価格は本来の価格よ りさらに下落する。20(図 3-8.)ただし、既に集落として存在していた宅地などは転売な どが許されるため、市街化区域や都市計画区域外と同様、需要が増加するため需要曲線が 上方にシフトし、本来の価格よりも上昇することとなる。 20 本来、農地価格は低いと考えられ、それ以上に低下するとは考えにくいが、ここでは理論上、下落すると想定する。 図 3-6.線引きをしていない場合の土地の需要供給曲線 図 3-7.線引きされた場合の市街化区域・都市計画区域外土地の需要供給曲線 地価  S  Q’ p’  Q p D 0 q 供給量 地価 S p  Q D 0 q 供給量

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9 これらの図を、距離別に整理し直し、区域ごとに位置関係を示し、地価変動を表したも のが以下の図(図 3-9.)である。 次に、線引きが廃止された場合の地価の変動について仮説を設定する。まず、線引き廃 止によって最も変化が激しいと考えられる旧市街化調整区域について考える。線引き廃止 区域区分(線引き)のイメージ 地価 0 中心からの距離 線引き前 図 3-8.市街化調整区域の土地の需要供給曲線 図 3-9.線引き制度による区域毎の土地価格変動 地価 都市計画区域外 農地などの地価 0 中心からの距離 市街化区域 市街化調整区域 既存宅地地価 地価   S  Q p  D  Q’ p’ 0 q 供給量

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10 によって、農地の宅地転用や開発が可能になり、それまで旧市街化区域や旧都市計画区域 外によって吸収されていた宅地への需要が旧市街化調整区域で賄われることになる。旧市 街化調整区域での宅地へ転換可能な土地供給が増加することにより、供給曲線が右方にシ フトするので、既存宅地の地価は下落する。(図 3-10.) しかし、旧市街化調整区域の農地への需要が増大するので農地の地価は線引き廃止によ って上昇する。市街化調整区域の土地供給は既存宅地の地価と農地価格が同一になる、線 引き前の本来の地価に戻るまで続くと考えられる。また、旧市街化調整区域で旧市街化区 域や旧都市計画区域外によって吸収されていた宅地への需要が市街化調整区域で賄われる ため、旧市街化区域と旧都市計画区域外の土地需要は共に下方シフトし、旧市街化区域と 旧都市計画区域外の地価は下落する。 線引き廃止の関係を、距離別に整理し直し、区域ごとに位置関係を示し、地価変動を表し たものが以下の図(図 3-11.)である。 3-2-2.分析の方法 線引き廃止による土地利用の変化が地価に現れると考えられるため、線引き廃止前の平 成 15 年と線引き廃止後の平成 21 年の香川県における公示地価と都道府県調査地価を基に、 線引き廃止が地価にどのような影響を与えたか分析を行うこととする。 図 3-10.線引き廃止による市街化調整区域の宅地の需要供給曲線 図 3-11.線引き廃止による区域毎の土地価格変動 地価 S p  Q   Q’ p’ D 0 q q’ 供給量 地価 (宅地) (農地) 0 中心からの距離 旧市街化区域 旧市街化調整区域 旧都市計画区域外

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11 3-2-3.地価による実証分析 前節の仮説を基に、平成 15 年と平成 21 年の公示地価、都道府県地価調査を用いて実証 分析を行う。本研究における対象が、香川県における線引き廃止の影響であり、分析に当 たっては、政策が与えた影響を確認することができる、DID estimator(Difference-In-Differ ences)の手法を用いる。この手法では、比較を行う線引き廃止を行っていない近隣県が必要 となるが、四国4県の中で愛媛県西条市や新居浜市でも香川県と同時期に線引き廃止を行 っているため、徳島県と比較することにより線引き廃止が地価に与えた影響を確認するこ ととした。 また推計に当たり、以下のような推計式を想定した。

推定式:

lnY=β

0

+ β

1

d2 + β

21

dAs + β

22

dAt + β

23

dAk + β

31

d2・dAs + β

32

d2・dAt

33

d2・dAk + X

Y

+ ε ε: 誤差項

ここで、Y:被説明変数(香川県と徳島県における住宅地地価。対数を用いた。) d2:政策導入後に 1、導入前に 0 となるダミー変数 dAs:トリートメントグループ(政策変化の影響を受けたグループ。ここでは香川県。) の市街化区域なら1、コントロールグループ(政策変化の影響は受けていないが、 それ以外の点ではトリートメントグループと同質のグループ。ここでは徳島県。)の 市街化区域なら0 となるダミー変数。 dAt:トリートメントグループ(政策変化の影響を受けたグループ。ここでは香川県。) の市街化調整区域なら1、コントロールグループ(政策変化の影響は受けていない が、それ以外の点ではトリートメントグループと同質のグループ。ここでは徳島県。) の市街化調整区域なら0 となるダミー変数。 dAs:トリートメントグループ(政策変化の影響を受けたグループ。ここでは香川県。) の都市計画区域外なら1、コントロールグループ(政策変化の影響は受けていない が、それ以外の点ではトリートメントクループと同質のグループ。ここでは徳島県。) 都市計画区域外0 となるダミー変数。 d2・dAx:各ダミー変数の交差項。 Xy:以下に挙げた6 つの説明変数。 なお、線引き廃止によって地価に与える政策効果として注目するパラメータは、β31, β32,β33である。 次に、被説明変数と説明変数の説明と出典根拠、予測されるパラメータの予想符号を述 べる。

変数名

内容

単位

予想符号

被説明変数 (Y) 住宅地価(香川県と徳島県の公示地価・都道府県地価)

(千円/㎡)

最寄駅までの距離 (X1)

(百m)

説明変数

JR高松駅(徳島駅)から最寄駅までの公共交通所要時間 (X2)

(分)

(X

1

~X

6

土地の面積(地積)(X3)

(㎡)

前面道路幅員(X4)

(m)

都市ガスダミー(X5)

下水道ダミー(X6)

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12 1)住宅地地価 被説明変数としては住宅地地価を用いる。データは国土交通省地価公示と都道府県地価 調査を用いる。住宅地に限定したのは、線引き廃止による新規宅地開発に着目しているた め、他用途(商業地、工業地)の地価を加えることにより、住宅地としての地価決定要因 が判別しにくくなると考えられるからである。また、国土交通省と都道府県の地価ポイン トが重複する場合は、サンプル数の尐ない国土交通省の地価ポイントを採用した。なお、 国土交通省は 1 月 1 日、都道府県は 7 月 1 日と評価時点が異なるが重複地点の地価を比較 し価格差がさほど見られないことから特段の補正は行わない。 (出所:国土交通省土地総合情報ライブラリー) 2)最寄駅までの距離 住宅地価に影響を与える変数として、公共交通機関である私鉄およびJRの最寄駅まで の距離を説明変数として用いる。データは国土交通省公示地価と都道府県地価調査に示さ れている。当該変数は、他の条件が一定ならば距離が長くなるほど地価を下落させると予 想される。 (出所:国土交通省土地総合情報ライブラリー) 3)JR高松駅から最寄駅までの公共交通所要時間 市の中心部であるJR高松駅をターミナル駅と想定し、高松駅から最寄駅までの公共交 通(JRおよび私鉄)所要時間を時間費用による影響を示す説明変数として用いる。デー タは㈱ことでんのHP時刻表および、JRの時刻表より算出した。当該変数は、他の条件 が一定ならば所要時間が増えるほど地価を下落させると予想される。 (出所:㈱ことでんHP、JR時刻表) 4)都市ガスダミー 地価に影響するインフラ整備の影響を確認するため、都市ガス設置の有無をダミー変数 として用いる。公示地価情報の給排水施設の欄に「ガス」の表示があるものを 1、表示が ないものを 0 とする。当該変数は、他の条件が一定ならば、都市ガスが設置されているこ とによって地価は上昇すると予想される。(出所:国土交通省土地総合情報ライブラリー) 5)下水道ダミー ガスと同様地価に影響するインフラ整備の影響を確認するため、下水道設置の有無をダ ミー変数として用いる。公示地価情報の給排水施設の欄に「下水」の表示があるものを 1、 表示がないものを 0 とする。他の条件が一定ならば、下水道が設置されていることによっ て地価は上昇すると予想される。 (出所:国土交通省土地総合情報ライブラリー) 6)土地の面積(地積) 地価に大きな影響を与えると考えられる説明変数の 1 つとして、面積を用いる。土地の 面積も公示地価情報に表示がある。当該変数は、土地の面積増加によって地価を下落させ ると予想される。 (出所:国土交通省土地総合情報ライブラリー) 7)前面道路幅員 モータリゼーションの進展に伴い、自動車保有率も高まり生活に欠かせないものとなっ ている。そのため、接道する前面道路の状況も地価に影響を与えると考え、説明変数の 1 つとして用いることとした。前面道路の情報も公示地価情報に表示がある。前面道路の幅 員が広ければ地価は上昇すると予想される。(出所:国土交通省土地総合情報ライブラリー) また、徳島県のデータは香川県と同一の項目で、データの出所も同じである。

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13 3-2-4.使用するサンプルデータの基本統計量 実証分析に使用したサンプルデータの基本統計量を以下に示す。(表 3-1.、3-2.) 表 3-2.徳島県のサンプルデータ基本統計量 表 3-1.香川県のサンプルデータ基本統計量 Variable サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 線引き廃止後1を取るダミー(d2) 62 0 0 0 0 13 0 0 0 0 33 0 0 0 0 線引き廃止(市街化区域)ダミー(das) 62 1 0 1 1 13 0 0 0 0 33 0 0 0 0 線引き廃止(市街化調整区域)ダミー(dat) 62 0 0 0 0 13 1 0 1 1 33 0 0 0 0 線引き廃止(都市計画区域外)ダミー(dak) 62 0 0 0 0 13 0 0 0 0 33 1 0 1 1 ln地価(千円/㎡) 62 97.60806 23.1991 54.6 155 13 54.06154 11.54964 36.2 81.5 33 48.87576 17.27209 21.4 82 最寄駅までの距離(百m) 62 11.35 7.527409 1.2 30 13 24.15385 13.50214 4 48 33 35.68788 33.12473 0.9 163 公共交通所要時間(分) 62 21.59677 9.383382 4 39 13 26.76923 9.202842 5 39 33 40.60606 17.34023 12 78 ガスダミー 62 0.548387 0.501716 0 1 13 0 0 0 0 33 0.181818 0.391675 0 1 下水ダミー 62 0.629032 0.487007 0 1 13 0 0 0 0 33 0.424242 0.50189 0 1 土地面積(㎡) 62 204.9355 65.89929 89 370 13 402.4615 105.9195 224 581 33 252.0303 104.0698 130 533 前面道路幅員(m) 62 4.720968 0.871241 3 6 13 4.623077 0.995116 3 6.3 33 4.818182 1.267245 2.3 8.5 Variable サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 線引き廃止後1を取るダミー(d2) 62 1 0 1 1 13 1 0 1 1 33 1 0 1 1 線引き廃止(市街化区域)ダミー(das) 62 1 0 1 1 13 0 0 0 0 33 0 0 0 0 線引き廃止(市街化調整区域)ダミー(dat) 62 0 0 0 0 13 1 0 1 1 33 0 0 0 0 線引き廃止(都市計画区域外)ダミー(dak) 62 0 0 0 0 13 0 0 0 0 33 1 0 1 1 ln地価(千円/㎡) 62 63.49355 19.10695 36.2 122 13 35.92308 5.866878 27.3 50.5 33 31.4303 10.55342 14.8 54.2 最寄駅までの距離(百m) 62 11.35 7.527409 1.2 30 13 24.23077 13.54716 4 48 33 35.53636 33.25942 0.9 163 公共交通所要時間(分) 62 21.59677 9.383382 4 39 13 26.76923 9.202842 5 39 33 40.60606 17.34023 12 78 ガスダミー 62 0.596774 0.49455 0 1 13 0.153846 0.375534 0 1 33 0.181818 0.391675 0 1 下水ダミー 62 0.822581 0.385142 0 1 13 0 0 0 0 33 0.545455 0.50565 0 1 土地面積(㎡) 62 204.9516 65.93102 89 370 13 394.5385 103.4711 224 581 33 253.2121 105.3861 130 533 前面道路幅員(m) 62 4.720968 0.871241 3 6 13 4.546154 0.915255 3 6.3 33 4.930303 1.527147 2.3 11 2003 2003 2003 香川県  市街化区域 香川県  市街化調整区域 香川県  都市計画区域外 香川県  市街化区域 香川県  市街化調整区域 香川県  都市計画区域外 2009 2009 2009 Variable サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 線引き廃止後1を取るダミー(d2) 84 0 0 0 0 26 0 0 0 0 48 0 0 0 0 線引き廃止(市街化区域)ダミー(das) 84 0 0 0 0 26 0 0 0 0 48 0 0 0 0 線引き廃止(市街化調整区域)ダミー(dat) 84 0 0 0 0 26 0 0 0 0 48 0 0 0 0 線引き廃止(都市計画区域外)ダミー(dak) 84 0 0 0 0 26 0 0 0 0 48 0 0 0 0 ln地価(千円/㎡) 84 94.97143 31.99641 42 188 26 52.58462 19.78472 28.1 92 48 30.14271 17.90069 4.7 66.5 最寄駅までの距離(百m) 84 19.35357 16.47077 2.6 88 26 30.84231 25.37959 5 110 48 61.22292 114.6559 2 660 公共交通所要時間(分) 84 22.04762 16.18783 1 59 26 26.11538 16.84833 1 55 48 100.375 37.67759 22 168 ガスダミー 84 0.202381 0.404188 0 1 26 0 0 0 0 48 0 0 0 0 下水ダミー 84 0.142857 0.352029 0 1 26 0 0 0 0 48 0 0 0 0 土地面積(㎡) 84 226.2262 152.826 99 1424 26 472.7308 249.3564 128 1196 48 293.6042 181.8029 99 1169 前面道路幅員(m) 84 4.895238 1.902307 0 15 26 4.519231 1.809535 3 12 48 4.5625 1.34554 3 8.7 Variable サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 サンプル数 平均 標準偏差 最小 最大 線引き廃止後1を取るダミー(d2) 84 1 0 1 1 26 1 0 1 1 48 1 0 1 1 線引き廃止(市街化区域)ダミー(das) 84 0 0 0 0 26 0 0 0 0 48 0 0 0 0 線引き廃止(市街化調整区域)ダミー(dat) 84 0 0 0 0 26 0 0 0 0 48 0 0 0 0 線引き廃止(都市計画区域外)ダミー(dak) 84 0 0 0 0 26 0 0 0 0 48 0 0 0 0 ln地価(千円/㎡) 84 66.45952 25.1114 27.6 158 26 36.15 12.72837 21.2 62.3 48 22.89583 13.22469 4 52 最寄駅までの距離(百m) 84 19.31786 16.4346 2.6 88 26 30.72692 25.45647 5 110 48 60.72292 112.3569 2 640 公共交通所要時間(分) 84 22.04762 16.18783 1 59 26 26.11538 16.84833 1 55 48 100.1458 37.97311 22 168 ガスダミー 84 0.214286 0.41279 0 1 26 0 0 0 0 48 0 0 0 0 下水ダミー 84 0.166667 0.374916 0 1 26 0 0 0 0 48 0.229167 0.424744 0 1 土地面積(㎡) 84 224.5833 151.9138 99 1424 26 453.8077 247.4764 128 1196 48 298.8958 180.0159 99 1169 前面道路幅員(m) 84 4.913095 1.932336 0 15 26 4.403846 1.75031 2.6 12 48 4.6125 1.348226 3 8.7 2009 2009 2003 2003 2003 徳島県  市街化区域 徳島県  市街化調整区域 徳島県  都市計画区域外 徳島県  市街化区域 徳島県  市街化調整区域 徳島県  都市計画区域外 2009

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14 3-2-5.推計結果 ***,**,* はそれぞれ1%,5%,10%の統計的有意水準を示す。 3-2-6.推定結果の分析 推定の結果、区域区分ごとの線引き廃止による政策効果を示す係数は、旧市街化区域に おいては、線引き廃止前に比べて、地価を 12.59%押し下げる効果をもたらすという結果(統 計的有意水準は 10%)が示された。これは、線引き廃止によって地価は押し下げられると いう仮説とも整合する。(表 3-3.) その他の旧市街化調整区域、旧都市計画区域外については、有意な統計的水準が得られ なかったものの、地価を押し下げる傾向は確認された。これらの結果を分析すると、旧市 街化調整区域においては、公表されているサンプル数が極端に尐ないため、統計的有意水 準が得られなかったと考えられる。 また、係数の符号が地価を押し下げる傾向を示していることについては、統計的有意水 準が得られていないため推定結果のみから明言できないが、仮説で示したように農地から 宅地への土地利用の変化が進み、宅地の供給量が増加したことによって、既存宅地の地価 を押し下げるという傾向を表しているのではないかと考えられる。 線引き廃止によって農地の宅地への利用転換が予想されるが、農地の価格を示すデータ が存在しておらず、地価による推計を行なうことは不可能である。実際の土地利用変化を 確認しなければならない。また、旧都市計画区域外においても、統計的有意水準が得られ ていないが、仮説のように地価を押し下げる傾向を表していると考えられる。 次に、説明変数の推定結果について分析する。最寄り駅までの距離および公共交通所要 時間は、係数が 1%有意で負の符号であり、他の条件が一定だとすると、距離が百m遠くな ると 0.4%、時間が 1 分長くなると 0.9%地価を下落させる。これは予想された結果である。 係数の値が小さく、居住地選定にあまり影響を与えていない。都市ガスと下水道は係数が それぞれ 1%、5%有意で正の符号であり、他の条件が一定だとすると、都市ガスや下水道が 表 3-3.推計結果 ln地価 係 数 標準誤差 政策実施前後ダミー(β1) -0.34998 *** 0.03889 線引き廃止市街化区域ダミー(β21) -0.05015 0.05828 線引き廃止市街化調整区域ダミー(β22) -0.12065 0.10042 線引き廃止都市計画区域外ダミー(β23) -0.31661 *** 0.06755 市街化区域政策効果(β31) -0.12587 * 0.07310 市街化調整区域政策効果(β32) -0.10277 0.14072 都市計画区域外政策効果(β33) -0.09589 0.09320 最寄駅距離 -0.00443 *** 0.00029 公共交通所要時間 -0.00962 *** 0.00045 都市ガスダミー 0.31143 *** 0.04459 下水道ダミー 0.09233 ** 0.04328 土地面積 -0.00089 *** 9E-05 前面道路幅員 0.01899 * 0.01014 定数項(β0) 4.72556 *** 0.07022 サンプル数 532 R2(adj ) 0.737

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15 整備されていると、それぞれ 31.1%、9.2%地価を上昇させる。この結果も予想のとおりであ る。土地の面積は、係数が 1%有意で負の符号であり、他の条件が一定だとすると、面積が 1 ㎡広くなると 0.09%、地価を下落させる。前面道路は、係数が 10%有意で正の符号であり、 他の条件が一定だとすると、幅員が1m広くなると 1.9%、地価を上昇させる。これらも予 想されたとおりの結果であった。 3-3.線引き廃止前後の土地利用変化の概観 線引き廃止前後における土地利用変化は、農地転用、開発許可(1000 ㎡以上)、建築確 認について区域毎に香川県において公表されている。以下に、農地転用における線引き廃 止前の平成 15 年度からの許可件数の推移を示す(図 3-12.)21。旧市街化調整区域の許可 件数は、旧香川中央広域都市計画区域を形成していた 3 市 2 町すべてにおいて、線引き廃 止後に急増しており、線引き廃止によって旧市街化調整区域の都市的土地利用への転換が 増加していることが分かる。また、開発許可、建築確認についても同様の傾向が確認され た。 21 香川県HP に公表されたデータを基にグラフ化した。 図 3-12.線引き廃止前後の農地転用許可件数の推移 0 20 40 60 80 100 120 140 H15 H16 H17 H18 H19 H20 件 数 ( 件 ) 旧丸亀市 旧市街化 旧調整 新規編入 区域外 0 100 200 300 400 500 600 H15 H16 H17 H18 H19 H20 件 数 ( 件 ) 年度 旧高松市 旧市街化 旧調整 新規編入 区域外 0 20 40 60 80 100 120 140 H15 H16 H17 H18 H19 H20 件 数 ( 件 ) 年度 坂出市 旧市街化 旧調整 区域外

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16 3-4.旧市街化調整区域における土地利用の実態 3-4-1.土地利用変化(転用目的) 前節の概観により、旧市街化調整区域の土地利用変化が顕著であることが認められた。 また、前々節の地価による実証分析において統計的有意水準が得られなかった、旧市街化 調整区域における農地から宅地への土地利用変化は捕捉されていなかったことから、実証 分析を補完するためにも、旧市街化調整区域に着目する。しかし、転用件数からは転用目 的自体が確認できないため、本節では実際の農地転用届出資料22から、より詳細に土地利 用変化を見ていくこととする。 平成 15 年から平成 21 年 10 月までの農地転用全届出を旧市街化区域、旧市街化調整区域、 旧都市計画区域外ごとに区分し、さらに転用目的ごとに分類して、詳細な土地利用変化を 確認した。分類区分は共同住宅用地(低層マンション・長屋住宅含む)、住宅用地(戸建て 住宅)、分譲住宅(集合戸建て住宅)、住宅拡張用地(増改築等)、店舗・事務所、工場・作 業所、倉庫・納屋、駐車場・資材置場、進入路・水路、その他の 10 種類とした。 以下にその結果を示す。(図 3-13.、図 3-14.) 22入手可能な資料が高松市に限られるため、高松市農業委員会資料を基に作成。 図 3-13.旧市街化調整区域転用目的別割合(件数) H16.5.17 線引き廃止

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17 転用目的別に変化を見ると、共同住宅、一般住宅、分譲住宅、住宅拡張等の住宅系の利 用目的が各年度の届出件数の約 6 割を占め、宅地の供給量が増加している。これは、旧市 街化調整区域において農地から宅地への転換が増加していることを示しており、第 3 章 2 節で示した仮説とも整合している。 次に、転用件数に占める転用目的別の割合を見ると、住宅系転用目的の中でも、共同住 宅、分譲住宅の割合の伸びが顕著である。特に、分譲住宅の割合は、農地転用件数が下が っている中においても、割合を 2.9%から 13.2%に伸ばしており、宅地の供給量が増えてい ることが分かる。 3-4-2.土地利用変化(転用場所) 前節では、農地から宅地への転換が増加していることが確認されたが、本節では、その 転換が旧市街化調整区域の、どの場所で行われているのかをさらに詳細に見ることにする。 平成 15 から 20 年度までの農地転用個所を地図上にプロットする。図から見られるように、 開発される場所の特徴は、幹線道路近辺が多い。また、極端に集中しているわけではなく、 市内に一様に分散しており、建て易い所から開発されていることが分かる。(図 3-15.) 図 3-14.各年度全転用件数に占める転用目的別割合 図 3-15.H17 農地転用個所と幹線道路の位置関係 市道 県道 国道 高速道路

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18 また、各年度の農地転用個所を地図上にプロットしたものが下の図である。 (図 3-16.~図 3-21.) 図 3-16.15 年度農地転用個所分布状況 図 3-17.16 年度農地転用個所分布状況 図 3-18.17 年度農地転用個所分布状況 図 3-19.18 年度農地転用個所分布状況 図 3-20.19 年度転用個所分布状況 図 3-21.20 年度農地転用個所分布状況

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19 さらに、前節で転用割合の伸びが顕著であった分譲住宅に着目してみると、棟数の尐な い戸建て住宅開発(以下、ミニ開発という。)が増加している。ミニ開発増加の状況を図に 示す。(図 3-22.)線引き廃止以降は、7 割以上が 10 棟未満のミニ開発となっている。 次に、ミニ開発の場所と土地利用形態の状況を確認する。ミニ開発のより詳細を観察す ると、進入路は袋小路となっている所が多い。しかし、このような進入路は開発者負担と できるため、新たな道路整備など、行政コストの増加を伴うものではない。ミニ開発と旧 開発許可の土地利用形態を以下に示す。(図 3-23.、24.) 【ミニ開発の定義】 一般的に、ミニ開発は面積で定義するが、本稿では土地利用形態に着目しているため、 戸建て住宅開発のうち 10 棟以下の開発をミニ開発と定義する。 15 年ミニ開発棟数分布 16 年ミニ開発棟数分布 17 年ミニ開発棟数分布 18 年ミニ開発棟数分布 19 年ミニ開発棟数分布 図3-20.19 年ミニ開発棟数分布 20 年ミニ開発棟数分布 図3-22.15~20 年度ミニ開発棟数分布状況 1~5棟 33% 6~10棟 16% 11~15棟 17% 16~20棟 17% 20棟以上 17% 1~5棟 33% 6~10棟 39% 11~15棟 15% 16~20 9% 20以上 4% 1~5棟 46% 6~10棟 44% 11~15棟 4% 16~20棟 4% 20棟以上 2% 1~5棟 35% 6~10棟 42% 11~15棟 12% 16~20棟 8% 20棟以上 3% 1~5棟 71% 6~10棟 8% 11~15棟 16% 16~20棟 2% 20棟以上 3%

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第4章

香川県の線引き廃止に対する考察

前章で行った各分析の結果を基に、それぞれの分析項目に対して考察を加える。 4-1.人口流出への歯止めに対する評価 区域ごとに見れば、旧市街化調整区域の人口が増加していることから、人口の歯止めに なっていると言えないこともない。行政区域、県全体として見れば、人口流出への歯止め の意義は不明確である。香川県においては、線引き廃止による都市計画区域の再編を行な ったこともあり、人口流出への歯止めの意義が薄れている。 4-2.地価に対する評価 線引きを廃止すると、旧市街化調整区域の地価を下落させることが確認された。これは、 線引きによって土地利用が制限されることで、本来の地価よりも高い価格に吊り上げられ ていたためである。また、線引きをする位置も行政が正確に把握することは困難であり、 最適であったとも言えず、これは宅地に対する資源配分上の非効率が生じていたというこ とである。 4-3.土地利用変化に対する評価 線引き廃止により、土地利用の制限が緩やかになった旧市街化調整区域の農地から宅地 への土地利用変化が増加し、その中でもミニ開発が増加することが確認された。この土地 利用変化により、資源配分上の非効率が解消されたと言えよう。また、農地から宅地への 土地利用変化による都市的土地利用と農地的土地利用との用途混在23の発生に対して、新 たな道路整備などの行政コストの増加は確認されていない。 23山崎福寿、浅田義久(2008) 図 3-23.ミニ開発の土地利用形 態 図 3-24.旧開発許可の土地利用形態

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第5章 線引き廃止に対する提言と今後の課題

5-1.分析評価をうけての提言 【提言1】線引き廃止には、人口歯止めの効果があるとは言えない。 香川県においては、旧区域区分については、人口流出の歯止めが認められたが、県全体 としての人口減尐には歯止めがかかっていない。この状況から人口流出歯止めのみを目的 とする線引き廃止の選択は、効果があるとは言えず、行なうべきではない。 【提言2】線引き廃止の検討をする際は、旧市街化調整区域における土地の利用形態変化 (ミニ開発)が増加することを認識しておかなければならない。 廃止の選択によってこのような変化が起こることを認識したうえで、検討を行なうべき である。 【提言3】線引き廃止によって地価が下落し、ミニ開発が増加するが、開発増加に対する 行政コストの増加が小さければ、線引き廃止をしてもよい。 ミニ開発の是非は意見が分かれる場合があるが,新たなインフラ整備による行政コスト の増大が無ければ,大きな問題があるとは言えない。 5-2.今後の課題 人口や地価、土地利用変化などは、依然変化を続けている。今回の分析がすべてではな く、今後も状況の調査を続け、定期的に分析評価を続けていくことが必要である。 謝辞 本稿作成にあたり、政策研究大学院大学において、梶原文男教授(主査)からは問題提 起に関する助言から理論分析や本稿全般、鶴田大輔助教授(副査)からは、地価の推計、 理論分析、下村郁夫教授(副査)からは問題提起に関する助言ならびに本稿全般について、 限られた時間の中、大変貴重なご意見を頂きました。 また、福井秀夫教授、中川雅之客員教授、安藤至大客員准教授、まちづくりプログラム 教員、知財プログラム教員ならびに両プログラムの学生の皆様からは、本稿全般に関して 大変貴重なご意見を頂きました。ここに記して感謝の意を表します。 次に、分析にあたり膨大な資料提供を頂いた派遣元の皆様にも感謝の意を表します。 最後に、1年間という長期間にわたり派遣生活に理解と協力をしてくれた、東子と康佑 に改めて深く感謝します。

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22 参考文献 2.阿部成治(1999)「都城広域都市圏における線引き廃止への経緯と効果」第 34 回日本都市計画学会学術研究論文集 No.46、271-276 頁 3.桑田智子・越澤 明(2004)「平成 12 年都市計画法改正に基づく香川県の線引き廃止と都市計画区域再編に関する 考察」 日本建築学会技術報告集 第20 号、285-288 頁 4.石村壽浩・鵤 心治・中出文平・小林剛士(2006)「香川県線引き廃止に伴う土地利用動向に関する研究」 日本建築学会計画系論文集 第607 号、103-110 頁 5.都市計画・建築法制研究会(2001)『平成 12 年度改正都市計画法・建築基準法の解説 Q&A』大成出版社 6.金本良嗣(2000)『都市経済学』東洋経済新報社、8 章 p183 7.都市計画法令研究会『地方分権後の改正都市計画法のポイント』、ぎょうせい、平成12 年 3 月 p143-147 10.小島 重俊(全日本自治体労働組合香川県本部)「香川県の都市計画の見直し(線引き廃止)」 http://www.jichiro.gr.jp/jichiken/report/rep_gunma30/jichiken/3/01.htm 11.奈良県農業技術センター http://www.maff.go.jp/kinki/seibi/ikeq/yomu/photo/setume_jouri.htm 12.香川県都市計画基本構想検討委員会「香川県都市計画基本構想検討委員会報告書」(2002) http://www.pref.kagawa.jp/toshikei/keikaku/mp/youshi.htm#c4 13.香川県都市計画協会『香川県の都市計画の見直し』 (2005) 17.高松市町丁目別人口データ 高松市 HP:http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/2226.html 18.香川県 HP 人口統計データ http://www.pref.kagawa.jp/toukei/zuiji/population/idoutyousa/popu_n20.htm 19.総務省統計局 HP 人口統計データ http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do 21.香川県 HP 線引き廃止後土地利用動向 http://www.pref.kagawa.jp/toshikei/keikaku/minaoshi/noutentou.pdf 22. 高松市農業委員会 H15~H21 農地転用資料 23.山崎福寿・浅田義久(2008)『都市経済学』日本評論社、第 6 章、137-140、148-150 頁 ・N.グレゴリー・マンキュー(2005)『マンキュー経済学Ⅰ ミクロ編』東洋経済新報社 ・八田達夫(2008)『ミクロ経済学Ⅰ 市場の失敗と政府の失敗への対策』東洋経済新報社 ・福井秀夫(2007)『ケースからはじめよう 法と経済学』日本評論社 ・中川雅之(2008)『公共経済と都市政策』日本評論社 ・ロジャー・ミラー他(1995)『経済学で現代社会を読む』日本経済新聞社 ・S・ランズバーグ(2004)『ランチタイムの経済学』日本経済新聞社 ・都市計画法制研究会(2001)『改正都市計画法の論点』大成出版社

参照

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