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教材の精選と指導の重点化の基底

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(1)

教材の精選と指導の重点化の基底

一理 科 の 場 合一

理科教育研究室高野恒雄

§1 精選・重点化のための視点

 今日,教材の精選と指導の重点化の必要性は,誰もが認めていることである。しかし,どのような観点 から精選し,指導を重点化していけばよいのか,どのような手順をふんで行えばよいのかということにな ると,定かではない。考えようによっては,論者の数だけ視点があり,論者の数だけ手法があるともいえ る。また少し厳しくみると,視点も手法もほとんど欠けていると考える人もいる。たとえば,金沢大学の 水越敏行は,つぎのようにいっている(.注1)

 「どのような手順をふめば,内容の精選ができるのカ㌧あるいは,指導の重点化ということを授業設計 の中に生かしていくには,どういう手順が必要なのか  こうしたことが,まだはっきり出されてい撫(。

個々の教師やサークルで試みられているが,一般化されているとはいいがたい。方法論とまで一一足とびに いかなくともs精選や重点化について,これこれの手順で進めてみたら,結果はこのようになった。それ を授業にかけて,子どもの反応によってフィードバックしたものがpこれこれのものである。こうゆう形 での研究がもっと数多くつまれ,その研究成果が交換され,生産的な討論を重ねること,このことがない

と,精選とか重点化はスローガンだけに終わる危険性がある。必要なのはスローガンや理念ではなく,それを 実現していくための手だてについての,誠実できめこまかい硯究の蓄積ではなかろうカも 」

 筆者も,水越氏の意見はその通りであると思う。ただ「手順」以前にシ「視点」も広く認められかなり 一致している方向がまだ出ていないことを考えると,その「手順」の模索が面縛でないことを改めて感ず

るのである。そこで,目下の指導に直面する立場を尊重して,この「視点」を考えてみたい。

 教育の目標や内容構成の問題を考えるとき,古くからどられてきた大きな視点が二つある。実質陶冶と 形式陶冶である。この重要な教育のこ側面賎精選・重点化の場合にも当然考えなげればならないことと して,議論の中に顔を出してくるものである。ここで,極めて単純な議論としては,実質陶冶と形式陶冶 のいずれかに絞る方向で精選や重点化を行えばよいではないかと考えることもある。そしてこのようなと きには多くの場合,形式陶冶を中心に考えるのが最近の傾向といってよいだろう。「単なる知識」を教え るのではなく,「科学の方法」を身につけさせることが大切であるといったいい方がされる。しかし,内 容を吟味し,構造化するならば,知識は知識でも「単なる知識」ではない。もっと関係と意味に富ん蔦 生きてはたらく知識がじゅうぶん存在しうることを考えるとf上のような単純な考え方に組みすることは できない。また反対に実質陶冶中心に傾く考え方も賛成し兼ねる。

 それでは,実質陶冶と形式陶冶と両方を大切にしなければならないことになる鵜その際,疑問が出う る。つまり両方を大切にするということは,あぶはちとらずになってしまうのではないか。口を開けば「

(2)

精選・重点化」といっているが,ねらいを精選しないで,両方大切だといっているのでは,矛盾している ではないか。また実質陶冶と形式陶冶と両方大切だという立場にそれらを統合すると,結局はどうなる のか,そこがはっきりしないとあいまいになりやすいとする考えもありうるのである。ここで前の疑問は,

教育の最も基本的な側面である実質陶冶と形式陶冶の一・・一th方に絞れというのは,あまりにも雑な考えといっ てよく,両方をともに大切にするのは妥当であろうと考えられる。問題は後の疑問である。この両側面を 統合してとらえることは精選・重点化を実質的に進めていくために,重要なことではないだろうか。

 このことを考えるにあたって,その前に現在工夫されている上の両側面をとらえる「視点」に関係する 考え方を参考にしてみよう。まず,先にあげた水越氏が中心になって研究している金沢市理科教育研究グ ループが,ここ数年間追い求めてきたとらえ方である。単元の目標を内容目標と能力目標に分けて,それ をさらに分析し,分類してとらえるのである。小学校4年「食塩水」の場合はつぎのようになる。

内 容 目 標

上 位 概念 下位 概念 要    素

A物質の変化がおこっても重さ

@は保存される

@(重さの保存)

a溶質:は水にとけても重さは保 カされる

@〔重さの保存〕

食塩水の重さは,水と加えた食 魔フ和である

b水溶液には,溶質特有の性質

@がある k特性〕

B溶質:は水にとけ水溶液ができ

@る

@(溶液一その濃度と特性)

c溶質は水に均一にとける k溶解〕

食塩水はどこをとっても味う重 ウ,濃さは均一であるQ d水溶液の濃さは,溶質と水の

ホ比できまる

@〔濃度〕

食塩水の濃さは,水と食塩の量:

ナきまる

C溶質が水に溶解度までとける

@と飽和溶液となる

@(飽禾 一回1解度と詞曲口溶液)

e溶質が水にとける量には限度 ェある

k溶解度〕

水の量と水温がきめられている ニき,食塩が水にとける量には タ度がある

f飽和した水溶液は,きまった ォ質をもつ

k飽和溶液〕

飽和食塩水はきまった性質をも

D水溶液は溶質と水に分離でき

@る

@(分離)

g水溶液を加熱し,水を蒸発さ ケると溶質が析出する k加熱による晶析〕

食塩水を加熱し,水を蒸発させ 驍ニ,食塩が析出する

h液体は蒸溜によってとり出す

@ことができる

ト蒸溜〕

食塩水から蒸発する気体を集め 驍ニ蒸溜水ができる

(3)

上 位 概 念 下 位 概 念 要     素 i析出した溶質の中には熱変化

ρするものがある

〔熱分離〕

j溶液間のかかわりあいで化学 E溶液中の物質は野いろいろな原 変化を起こすものがある

因で変化することがある 〔中和〕

(変化) k溶液と金属のかかわりあいで 化学変化するものもある

〔水素発生反応〕

1変化の速さは,条件によって 変わる

〔反応速度〕

能力目標(科学的技能の構造)

王 とらえる

1

2 3

4 5

(取得的技能) 事象をみる 資料を集め 経験を想起 祝点を持つ 用語記号を

する 澄ぼえる

嚢 組み立てる 6

7

8 9 1◎ 11

(組織化の技術) 比較・分類 データを解 結果を予想 作業仮説を 操作的定義 モデル化す

する 釈する する 立てる をする

斑 つくり出す 12 13 14 15

(創造的技能) 適用する 視点をかえ アイデアを 新らしくつ

具体化する くり出す

16 17 18 19 20 21

W できる 器具を操作 測定する 製作する 飼育・栽培 条件を統制 装置を組み

(操作的技能) する する する 立てる

22 23 24 25

V つたえる 文章で 数式で 図表で 口述で

(伝達的技能)

 この二種の自標からマトリッ0スをつくって,単元の目標を分類している。内容目標については,

 「小学校理科B区分水溶液題材についてのマクロな概念構造を上位と下位の概念の行に位置づ嬬 r食 塩水」の題材目標は,要素にあたる個所に配置している。なお,マクロな構造を,どのようにしてとり出 したかということであるが,「いうみず」,「ぐだもののしる」(9年》,「せっけん水」(2年),「

ほうさん」(3年),「食塩水」(4年),「水溶液の性質」(5年),r水溶液の変化」(6年)など

(4)

の題材について,それぞれ題材レベルでの内容目標を洗い出し,それらを統合して下位→上位と概念構造 をまとめあげていったものである。

 能力目標については,サンドとトローブリッジたちの分類を叩き台にした。その理由は,科学的能力を スキルとしてとらえ,しかも情報処理能力という観点が前面に出てきている点を評価したからである。1 とらえる(取得的技能Acguisitive ski11)p ffくみたてる(組織化の技能Organizati−

ORal skiU),Hつくりだす(創造的技能 Creative skilD, IIV できる(操作的技能 Manipulative skill),Vつたえる(伝達的技能 Communicative skilDという5

つのカテゴリーは,サンドたちのものに依拠し,それぞれ分析した25に及ぶ項目については,4分の3 ほどつくりかえて,日本の初等理科の実態にマッチするようにした。」

 このような努力については,われわれは評価しなければならないと思う。特に,この「行」と「列」と の交点で具体的9標をつぐっている工夫は評価される。たとえば,行のcfと列の9の交点についてはつ ぎのようになる。

内  容

方  法

飽和した食塩水は,どんな場合でも同体積の重さが等しく,同じ濃さである。

とけ残りの量がちがう数滴の食塩水の濃さを比べるための同体積の重さを観点にして,濃さ を定量的にとらえる実験を構成する。

水越氏らの努力を全領域,全教材に広げていき,それを実践してフィードバックさせていくのは望まし いことであろう。ただ相当長期にわたった積み上げが必要であることは事実であるが。

 つぎに,主として形式陶冶の側面について,つまり金沢市グループのf列」に相当する面での工夫とし てg日本初等理科教育研究会,学習指導研究委員会編「授業の構成の重点目標に訟ける自然認識能力の系統」

       (注2)

をみてみよう◎

 能力項目(基礎的・基本的能力と基本能力)

 1 事実認識を視点とした能力   (1)基礎的。基本的な能力要素    1 性 質

    (1)感覚的性質

    (2)思考の加わった性質    2 事実上の関係

    (1)一時的見方

    (2)変化という立場で見る     (3)因果関係的に見る

  ⑪ 基本的な能力要素(基礎よりの発展)

   1 一時的な見方の発展

    (1)横の方向一一探究範囲の拡張(外挿・内挿)

    (2)縦の方向一事実の追究・深化     (3)拡張(外・内)深化の両方向の併用    2 変化するものとしての見方の発展

(5)

  (1)構造一構造分析の方向   (2)過程一過程分析とその段階数   (3)変化の総合的見方

  3 因果関係的見方の発展

  (L 原因の正誤や必要条件・十分条件を検討する。

  (2)実験に鉛いて条件を制御する

  (3)因果関係の追究を何段階にも分析する

  (4)因果関係の追究に澄いて諸様式を複合・併用する   (5)因果関係に山ける要素間の相互作用の関係を検討する   (6)因果関係認識を深めることへと志向する

  (7)保存性をとらえる fi 論理的思考を視点とした能力

(1)基礎的・基本的な能力要素   1 思考の全般的なはたらき

  (1)判断・推理するときの深さ・精密さについての段階を検討する   (2)事物・現象を比較する

  (3)観察・思考・実践の過程を通ることを常に意識する   2 思考操作の各要素

  (1)事物・現象を直観的につかむ

  (2)全体と部分の関係で見る(分析・抽象・総合)

  (3)個と種,種と類の関係で見る。またその適用を考える(分類)

  (4)各段階の終わり鴎 内容・方法の正誤・適否を検討する。

(fl)基本的な能力要素(基礎よりの発展)

  1 とらわれない見方・考え方,多面的な見方・考え方(分析)

  (1)主観・先入観にとらわれないで見る一ありのままに見る   (2)多面的な見方・考え方と,焦点的な見方・考え方とを併用する。

  ③ 当たり前としていたりp無意識に過ごしていたりしている事物・現象の中に,疑問・批判を    意識する

  (4)大胆な発想を行なう

  (5)事物の関係に鉛ける相対性と知識の相対性を意識する

  (6)実験・観察デー一一 Bの変異の原因を多面的に考えると共に統計的に見たり,傾向をとらえたり     するQ

  2 総 合

  (1)事実についての記述と解釈,結果と結論の区別を明確にする   (2)わかったことわからないことや確度(蓋然量)を明確にする   (3)極限(限界)・境界や範囲を検討する

  (4)創造的結合を行なう   3 一一般化と限定

(6)

jv

 (1)一般化に訟いて,確度(蓋然量)と適用範囲を検討する

 (2)一般化された知識と具体との:岬町を明確に把握する(操作的定義)

認識(事実認識と論理的思考)の総合・発展を視点とした能力 1 理論の一一貫

 (1)論理が一一貫していて,矛盾の包含。併存を許容しない

 (2)感覚的認識の結果を科学的理論・論理的思考によって検討。統御する  (3)逆を考える

 (4)間接経験に対し,論理的・含糊的に対処する 2 統一的見方とその内容の記憶

 (1)各種にわたる統一的見方と,それぞれの間に関連をとらえる  (2)統一的見方の深化・拡大を図る

 (3)理解澄よび記憶を意識する 3 連続的・量的見方

 (1)不連続的な見方から連続的な見方へと進む  (2)定性的見方から定量的見方へと進む

4 問題解決過程に戦ける思考と実践の方法をとらえる  (1)問題を発見する

 ② 探究計画の必要性の認識と問題意識の持続  (3)問題を把握する

 (4)資料の収集や観察・実験を行なう  (5)仮説を設定する

 (6)仮説を検証する

 (7)検証の結果のまとめと,吟味や結論の導出を行なう 認識と相互作用の関係にある能力

1 表現する能力

 (1)表現・記録の意義(重要性)を認識し,積極的に実践する  (2)用語の使用に当たっての留意事項を認識する

 (3).意見交換。討議の重要性や正しい方法を認識し実践する 2 情意的な要素

 ① 知。創造。表現への欲求に澄ける望ましい傾向や態度を助長する  (2)耐性(強靱さと根気)を助長する

 ㈲ 虚心さ,とらわれ:ない態度を伸ばす  (4)自然との関連に診ける自己や人間を理解する

 (5)科学技術の研究と人間尊重や自然愛護との関連を考える  (6)自然の愛護・保全と有効な利用を考える

この認識能力の系統は,具体的な一脳つの教材内容に即して検討したもので,相当に緻密に組上げた ものである。これも参考になる項目が多分に盛りこまれている。

さて,さきに筆者は,実質陶冶面と形式陶冶面は両方大切だが,両面は統合されなければならないとの

(7)

べた。この方向で参考になるものに大阪教育大学の森峡氏の論がある。それは「概念構成学習」で墨難)

 「これは教材を文字ど澄り学習のための素材(materiai)と受けとめた上で,これら教材を貫く科 学的基本概念とそのとらえかたともいうべき構成概念(科学的態度といいかえてもよい)とによって統一・

的自然像に再構成しようとする。

理科教材=素材

         どのように変化しているのか)

構 成 概 念

(認識のために  帰納する概念)

a。物質的存在としての自然   (自然を物としてとらえる)

b。物質の相互作用とその変化過程

  (自然は物がたがいに働きあって変化するととらえる)

c。自然の階層性とシステム性

  (自然において部分はたがいに関連しあって全体を構成してい    るととらえる)

 科学的基本概念は,「物質の存在形態とその運動様式」を中軸として数多くの科学的基本概念(生物の 進化,……)を生成するという点のほかに賎 とりたてて説明する点はない。それぞれの教材は各学年を 通して,これらの科学的概念で貫かれることになる。いいかえれば,科学的基本概念を表現する教材は年 令がすすむにつれて,全体的包括的で,かつ単純な事象から,より機能的で複雑なものへと配列されるこ

とになる。(垂直的教科構造)◎

 自然認識を可能にする構成概念

 ユニークなのは構成概念の設定である。これによって,ある学年に澄ける各教科を関連づけ(水平的教

      り   くユ  む   り

科構造),統一的自然像の形成しようとする。そしてまた これは自然のとらえ方を意識化させたものだ から,学習者が自然から主体的に答を引きだす手がかりともなるものである。したがって,構成概念によ って科学的基本概念として具体化されるからこそ,自然認識を拡張させる契機になり得るのである。いい かえれ嬬新しい判断なり概念なりを一・つの枠組みによって構成すると,つぎにその枠組みによって自然

に問いかげて夢さらに自然の深い本質について新たな情報を獲得しようとする。(中略)

科学が明らかにしてきた自然の本質を,子どもがとらえることができるためには,たんに科学の方法だけ でなく,やはり科学者によってはじめて成功した自然のとらえ方や見方を意識的にとらなければならない。

そのとらえ方の枠組みとなるもの嬬a)自然を物としてとらえる。b)自然は物がたがいに働きあって 変化する。e)自然に澄いて部分はつねに全体と関連しあっている,である。」

 野晒のこの考え方は,実質陶冶と形式陶冶を統合する一つの見識であると思う。基本的な考え方に筆者 は賛成する。た下平教材についての具体化に診いて嬬子どもにとってどれだけぴったりした目標にな

(8)

りうるかカ㍉ これからの課題であると思う。

 以上のような,いくつかのすぐれた視点と方式を参考にしながら,筆者の考える方向をのべていきたい。

筆者は,特に「子どもの発達」という視点を大切にしたいのであるが,それに関連してつぎにのべたい。

§2.子どもの発達という視点

教育課程編成に澄いて,「子どもの発達」をじゅうぶん考慮しながら進めることの大切さは,誰しも認 めるにちがいない◎しかし,実際には,この面は割と影の薄いものになりやすいことも事実である。この

ことについて,名古屋大学の三枝孝弘,日比裕両氏はつぎのようにのべている。

 「教材精選の問題をめぐる論議はあちこちでなされているが,果たしてどれほどの成果が上がっている だろうか。成果はどうゆう角度でとらえるか,また精選をどのレベルでre・さえるのか,といった問題意識 からみると,わが国のこの問題に対する研究には,学習の主体である子どもへの着眼が欠落しているよう である。

 構造化p教科の構造,探究の論理,核とか斡枝葉というようなことが,論者によって主張されてきて いるが,その論拠であり,また研究の対象でもあるものは,客体である諸科学である。教材研究というこ

とが,客体としての教科内容の研究をさす,という長い聞の慣習力㍉このような現状を生じさせているの かもしれないが,精選研究がこの現状に終始している限りは,問題の解決は程遠いといわざるを得ない。」

 このような主張に関連して地理教育学者三沢勝衛氏はつぎのようにのべている。

「何を好んで,特に彼らのその時の生活と余り交渉を持たない,しかも不純なものを教材として選ぶ必要 があるであろうかQl

 「やがては是々の事も必要であるから,というような意味での,すなわち取越的の老婆心的の教育は,

いわゆる押し売り教育上の何者でもあり得ない。何処までも子どもは子どもらしぐ,その時,その人,そ の場所に則して教育を熱望するものである」

 このような卓見に関連して三枝,賃比両氏は,つぎのように集約する。

 「指導案に劃ける§標,単元構成,指導過程の構想,実践,評価といったt連の教師の活動に於いて,

教師と子どもがどのように自己を表出しようとしているかが問われることになる。とりわけ,学年的発達 との関連に細いては事実ないしは問題から,さらにどのような事実ないしは問題から,さらにどのような 事実ないし問題が生じていくかという点鵜内容の連続性と学年的発達にかかる教材の構成,精選(むし

ろ創出というべきか)の筋道の解明のために必要となってくる。『その時,その入,その場所に則して』

の実践であるかどうか,ということが,教師と子どもの自己関与という角度から吟味される。といいかえ ることもできよう。」

 教育に於いても「実存性」という言葉が使われることがある鵜 「その時,その人,その場所に即して の教育」はまさにこの実存性を大切にする教育であり,したがって,根本に澄いて子どもの「生き方」に つながるものである。つまり,教育の乱序子どもが心から生き生きと学び,r学ぶ喜び」を味わう場で なければならない。将来これこれのことも必要であるからという意味での準備的,手段的教育では生き生 きとした真の学習にはならない。授業の中で子どもが自己実現できるような過程をこそ大切にすべきであ

る。

  o何が発達するのか。

 理科学習を通して何が発達していくのか,させるべきなのかを,澄さえて論かなぐてはならない。これ

(9)

まで一方では知識理解の実質陶冶面を考え,もう一一方では能力・態度の形成という形式陶冶面を考えてき た。両面とも欠くことはできず,共に重視すべきであるとされてきた。

 そこでこの両面をまとめて結局は何が発達するととらえるべきかを考えてみて,私は自然に対するr認 識の枠組」が発達するとk・さえたい。同じ対象に面しても赤ん坊には多量の光や音の刺激の洪水としかい いようのない混沌しかありえない。

 しかし,成長とともに次第に外界と感覚器,感覚器と脳との間の相互作用の結果,外界からの情報のあ るものを捨て,あるものを採用するというようにして,徐々に「見るための規則を形成していく◎それ は光の混沌の中から,一つの秩序を獲得していぐ過程である。そして,感覚器にも,それを通して外界の 刺激を受心する脳にも,万人に共通なある一つの「枠組」が形成される。

 このような過程を経て,次第に観察したものを統一・b的にとらえ,その中に「図式」を見い出していくよ うになる。さらに複雑な対象を関係づけて認知し,規則性を見い出していくに至る。以上のような発達嫁 r認識の枠組」が藁蓑し,重点化することで, 「見方」, 「考え方」がふくまれるととも鴎対象への「

はたらきかけ方」がふくまれる。また, 「概念」が感覚的認知から抽象化への道をふみ出す「窓枠」の役 を果たす。このように,「認識の枠組」は総合的な視点になりうる発達の中味である。

§3s重点化の条件

 以上の視点を大切にするとつぎのような条件を満たす内容こそ重点的にあっかわれるべきである◎

   ①問題解決過程をたどれる内容

 問題意識を醸成させ,その持続下に詮いて問題を解決すべく自然事象の関係づけ,意味づけを行ってい く。そして次第にわかっていく過程こそ,生き生きとした学習になる。それはrその時,その人,その場 所に即して」の指導になる。また贈呈の素朴な「認識の枠組」が適用され,そして,問題解決過程を通る ことによってその「枠組」が変容される。したがって問題解決過程をたどれる内容こそ重点としてあっか われるべきである。

   ②日常的経験の重点

 科学は常識を深く猛り下げることから始まるといわれるが,子どもの学習も,日常的経験の中で漠然と つかんでいるものを,出発点とし鴎見直し,つかみ直し,改めて実験的なはたらきかけをしていくとき,

最も自然な生き生きとした学習が成り立ち,興味,関心も注ぐ,持続性も高い。

 また学習の結果,つかみとった論理は,高次の日常的経験を可能にする。つまb学習した論理は,学習 前より 一一歩進んだ「認識の枠組」としてはたらき,同じ対象である事象が学習前より深く,統一的に認識

できるようになる◎

 このように日常的経験を重視することは「日常的経験から出発した学習」を意味するとともに「日常的 経験へとつながる学習jも意味する。特に日常的経験が子どもの実態に適合し,内容も典型的なものをふ

くむときは効果的な内容となる。

   ③子どもの見とおしを大切にした内容の系統

 同系統の内容が学年を追って何回か配列される場合翁前段階の内容が後段階の内容を「見と澄す」ため のr認識の面懸の形成をふくんでいることが望ましい。「見と翻し」が教師によって与えられるのでな

く,子ども自身が類推的にうちたてることができることが理想である。そのためには内容の系統がしっか りとしてい旋いといけない。このとき基準となる視点は,前段階の内容で形成されたr認識の枠組」が後

(10)

段階の内容を「見とk・す」はたらきをもち,また後段階の内容を見とおすことによって「認識の枠組」が 変容され高次のものとなるという発達過程である。

 このように子ども自身が見と訟しを持ちうることは,最も主体的な学習になることであり「見と詮し」

によって次第に対象の特質と構造が明らかになるのは,最も生産的な学習である◎

   ④学;習が一一まとまりの経鹸となること

 以上の視点を大切にすると,澄のずと学習は一一一まとまりの経験となるであろう。これまで内容と呼んで きたものは, r経鹸内容」とか「活動内容」とかいうべきものである。「一まとまりの経験」とはいえな い単なる知識や単なる技術は内容としては弱い。子どもが主体的に経験」その中で経験する喜びを味わ

うことのできるものでなくてはならない。

 しかも,一まとまりの経験が始めから終りまで経過したとき,子どもがある達成感を味わうことができ ることが理想である。その達成の充実感によって,子どもは,新しい学習の意欲をわかせていぐのである。

(注1) 水越敏行:内容精選と指導の重点化,初等理科教育(初教出版),1975年4月

(注2) 初等理科教育(初教出版),1975年2月

(注3) ff 一一夫:初等・中等理科教育法(学文社),1975年3月

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