シリカフユームを用いた超高強度コンクリートの 強度試験に関する基礎的研究
孤島 法夫*
1.まえがき
シリカフユームをセメントに混入したコンクリートは、諸強度が著しく増加することが 知られている。高性能減水剤との併用によって、静的圧縮強度が1000kgf/c㎡以上になる 超高強度コンクリートが得られる。シリカフユームコンクリートの強度特性にっいては、
既往の研究でシリカフユーム混入率や養生方法の影響を受けることが分かっている。
本研究では、主として一軸圧縮疲労性状を調べるために試験体を作製し、併せて、静的 圧縮、引張、曲げ強度についても試験を実施する。シリカフユーム混入超高強度コンクリー トの圧縮疲労特性にっいての実験データは乏しく、今後多くの実験が必要となるが、今回 はシリカフユーム混入率と養生方法を変え、静的圧縮強度1400kgf/c㎡程度までの円柱供 試体について検討する。
2.実験概要 2.1 使用材料 表一1に使用材料を示す。
表一1 使用材料 使用材料 材料の名称
セメント 普通ボルトランドセメント 比重3.16、ブレーン値3200㎡/9 細骨材 鬼怒川産川砂 表乾比重2.61、吸水率2.01%
粗骨材 鬼怒川産玉砕 表乾比重2.62、吸水率1.72%、骨材最大寸法13㎜
混和材 シリカフユーム 比重2.20、比表面積20㎡/9、Sio,含有率94%
混和剤 高性能減水剤 ナフタリンスルフォン酸塩系、比重1.20、固形分比42%
2.2 試験体
試験体はφ10×20cmの円柱を使用した。コンクリートの打設を3層にし、各層を突き棒 で突きながらテーブルバイブレーターを併用して締め固めた。水中養生試験体は、打設面 を養生膜で覆った後に、恒温恒湿室(温度20℃、湿度60%)に静置して翌日脱型し、水温 20℃の水中で養生した。蒸気養生試験体は、コンクリート打設後に養生槽に入れ、前置き 2時間、昇温20℃/H、最高温度65℃で4時間保持、降温20℃/Hとした。オートクレー プ(AC)養生試験体は蒸気養生後試験体を脱型し、ひき続き180℃・10気圧まで3時間
*理工学部土木工学科教授 コンクリート工学
で昇温、保持3時間、その後徐冷とした。
なお、試験体の両端面は研磨仕上げとした。
(A)試験体の変数
表一2に試験体の変数を示す。シリカフユーム混入率を3種類とし、配合3水準、養 生条件3水準の組み合わせで計4種類とした。
これは、既往の文献との比較を含めて、コンクリート強度で500〜1400kgf/c㎡の範囲 を目標とした。圧縮強度用には一種類追加した。
表一2 試験体の変数
(B)コンクリートの配合
表一3にコンクリートの示方配合を示す。なお、シリカフユームはセメントの外割と した。又、混入率0%は比較の為に加えた。
表一3 コンクリートの示方配合
W 単位量[㎏/㎡]
記 号 (C+AD)
[%]
S/a
[%コ
混和材 混入率
[%]
混和剤 混入率
[%]
水W セメント
C
細骨材 S
粗骨材 G
混和材AD 混和剤CA FCO 44.5 45.0 0 1.0 174 391 790 969 0 3.91
FC2(Nα1) 26.0 42.0 15 2.5 137 448 729 1011 79 13.18 FC3(Nα2) 21.0 42.0 20 3.0 133 506 679 941 127 18.99
※AD:シリカフユーム CA:高性能滅水剤
(C)試験体の種類
表一4に試験体記号の一覧を示す。
表一4 試験体記号一覧 養生条件 配合記号 標準水中
[W]
蒸気
[Sコ
AC
[A]
FCO FCOW 一 一
FC2 FC2W 一 一
FC3 FC3W
(圧縮試験めみ) FC3S FC3A
※AC:オートクレープ養生
2.3 試験項目
水中養生、蒸気養生およびオートクレープ養生試験体共、7日、14日、28日、91日に圧 縮強度、引張強度、曲げ強度測定を行った。疲労試験の場合は、蒸気およびオートクレー
ブ養生試験体で各養生後3ケ月以上の気中養生を行い、水中養生試験体では、3ケ月の水 中養生後に1ケ月以上の気中乾燥を行ったもので試験を実施した。
①静的圧縮試験;圧縮試験は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」
に準拠して行った。
②曲げ試験;曲げ試験は、JIS A 1106「コンクリートの曲げ強度試験方法」に 準拠して行った。
③割裂試験;割裂試験は、JJIS A 1113「コンクリートの引張強度試験方法」
に準拠して行った。
④ 一軸圧縮疲労試験;一軸圧縮疲労試験は以下の手順によって行った。
疲労試験機はハイドロパルス式(容量1600KN)で、正弦波形で完全片振り疲労試験
である。
基準となる荷重は、疲労試験開始前に静的圧縮試験を行い、その時の圧縮強度をfc とした上で、疲労試験の下限応力度を0.10fc 、上限応力度を各水準(αfc 、βfc 、 γfc 、…)とした正弦波形による繰り返し載荷で、載荷速度を300回/分(5Hz)と する。試験は200万回まで継続するか途中破壊まですべて荷重制御とする。
2.4 測定項目
各試験の測定方法および項目について以下に示す。
①静的圧縮試験(φ10×20);材令7、14、28、91日;⑥圧縮強度、⑮応力〜ひずみ 曲線、@弾性係数
②曲げ経験(φ10×10×40);材令7、14、28、91日;③曲げ強度
③割裂試験(φ10×20);材令7、14、28、91日;③引張強度
④ 一軸圧縮疲労試験(φ10×20);材令91日超;@疲労強度、⑪応力〜ひずみ曲線;
測定時期は、繰り返し回数N=1、1000、5000、1万、5万、10万、50万、100万、150 万、200万とする。ひずみ測定は所定の回数を動ひずみ計を用いて、繰り返し載荷を 停止することなく行う。
尚、荷重計測はロードセルにより、ひずみ計測には60mmY. S. G.を用いる。
3.試験結果
図一1に各種強度と材令、および、静弾性係数と材令の関係を示す。図一1(a)の圧縮 強度は、モルタルの圧縮強度と同等の強度が得られ、既往の結果と一致している1)。シリ カフユームの混入率20%ではAC養生が早期強度で1350kgf/c㎡を示し、混入率0%の3 倍となっている。一方、標準水中養生では長期材令で7日材令の約1.8倍となり、AC養 生と蒸気養生の91日材令を上回った。又、AC養生と蒸気養生は長期材令でその強度差は なくなる。一方、混入率15%のものは常に20%のものより強度が低い。
図一1(b)は曲げ強度試験の結果である。
混入率0%と比べて他の3種は1.5倍〜2.0倍を示すが、圧縮強度との比は普通コンクリー トに比べて小さく、AC養生では1/9〜1/13である。曲げ強度も、シリカフユームの 混入により強度増加が見込まれるが、その伸び率は低い。又、水中養生によっても圧縮強 度のような強度増加はない。
図一1(c)では引張強度と材令の関係を示す。混入率0%に比べて、シリカフユームを
圧縮強度(kgf/c㎡)
1500
1000
500
/
0
,
FCOW
7 14 28
(a)圧縮強度と材令の関係
引張強度(kgf/c㎡)
60
40
20 7 14 28
91 材令(日)
●
F92ム..,・・一・・一
0.・ ︐ θ
・ 1︐
、●
理s_・一ニー.㌔一㌔
一一・… −
FC2W
FCOW
(c)引張強度と材令の関係
91材令(日)
曲げ強度(kgf/c㎡)
150
100
50
FC3A ..1
; ../ 。/ノ :
, o
_二ニニニー午≡・t・・.… 一・・・・・… .・.・.・.・ FC2W
FCOW
7 14 28
(b)曲げ強度と材令との関係
静弾性係数(×105kgf/c㎡)
4.0
3.5
91材令(日)
3・0 7 14 28 91
材令(日)
(d)静弾性係数と材令の関係(1/3割線弾性係数)
■ FC3S FC3A
﹂ノ ︐θ ︐
■
● ● ● . ・
FCOW
図一1 材令と各種強度、静弾性係数の関係
混入したコンクリートは60%程度の強度増加はあるものの、混入率、養生方法にかかわら ず圧縮強度との強度比は1/20以下と低い。尚・コンクリート打設時に・シリカフユーム を水と高性能減水剤で十分に分散させることにより、強度増加を維持することが出来るが、
シリカフユームの分散の程度が引張強度に与える影響は他の強度に比べて大きいと思われ
る。
図一1(d)は静弾性係数の結果である。
シリカフユーム混入コンクリートでは早期材令で混入率や養生方法による影響があるが、
28日材令以降では大きな差は認められない。
尚、圧縮強度1000kgf/c㎡程度のコンクリートの場合、混入率0%と比べて、又、水中 養生よりAC養生は、静弾性係数が低下するという報告もある1)。
静的圧縮応力〜ひずみ曲線を図一2に示す。
圧縮応力(kgf/c㎡)
1500 1350 1200 1050 900 750 600 450 300 150
0040080012001600200024002800320036004000 ひずみ(×10 E)
(a)材令7日
圧縮応力(kgf/c㎡)
1500
1350
:::: z;;
450 300 150
0040080012001600200024002800320036004000 ひずみ(×10−6)
(b)材令91日
図一2 圧縮応カーひずみ
表一5 一軸圧縮疲労試験結果 試験体記号 静的強度
(kgf/c㎡) S−N曲線式 標本数 相関係数 2×1σ回
疲労強度(%)
FC2W 1,142 S=].007−0.05210gN 8 0,969 67.9
FC3S 1,232 S=1.089−0.06110gN 8 0,950 70.5
FC3A 1,402 S=1.094−0.07010gN 12 0,919 65.3
FCOW 583 Sニ1.002−0.005510gN 5 0,969 69.3
上限応力比:
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0。3
3
σmax =Sfc
文献2の範囲←
JSCE
■
■ 1
■▲口
×■●▲
配合/養生/強度(kgf/《㎡)
▲;Nα1/水中/1142
■:No2/蒸気/1232
●:Nα2/AC/1358 φ10×20 文献3
×:Nα4/水中/ 582
4 5 6 7
繰返し回数:LogN 図一3 上限応力比と繰返し回数
初期材令では、混入率による曲線の立ち上りに相違があるが、長期材令では混入率0%
に比してひずみの伸びと曲線の立ち上りは、養生方法や混入率によっての差異が少なくなっ ている。材令が進むにっれ強度の伸びとともにひずみも伸び、シリカフユームの混入によ り靭性が増すことが分かる。又、応力〜ひずみ曲線は直線に近づき、脆性的になっている。
表一5に疲労試験の結果を示す。各試験体の静的圧縮強度は583〜1402kgf/c㎡である。
図一3は上限応力比(S)繰り返し回数(N)の関係を示し、あわせて土木学会示方書およ び文献2)・3)(fc =160〜800kgf/c㎡)の結果を示した。いずれも上限応力比が小さくなる にっれて疲労寿命は大きくなる。これらのデータは、各文献のS−N線図と比較してほぼ 一致している。文献によるfc =500kgf/c㎡程度以下のN=2×106回の疲労強度は62〜68
%程度であるのに対し、本実験のfc =1100kgf/c㎡以上の超高強度コンクリートでは65〜
71%となっている。一方、混入率0%のデータはやや大きめに出ているが、試験対数を増 やす必要がある。シリカフユームが混入された超高強度コンクリートの一軸圧縮疲労度は、
●−FC3A 書一FC3S
▲−FC2W
ひずみ(μ)
3000
2500
2000
1500
1000 1E十〇〇
0
川l l
{ {
0 l l︷ ︸︸
{ (
; 1ミ
0 } l l
|
l l
{ 1
l l
0
l l 0
{ lE ≡
1E十〇1 1E十〇2 1E十〇3 1E十〇4 1E十〇5 1E十〇6 1E十〇7 繰返し回数:1.ogN (a)上限荷重時ひずみの推移
●−FC3A
■−FC3S
▲r−FC2W
ひずみ(μ)
1000
500
0 l l 了
l l
l l
l lc:
0 1 ︸
l l l l 0
l l l E
1E十〇〇 1E十〇1 1E十〇2 1E+03 1E十〇4 1E十〇5 1E十〇6 1E十〇7 繰返し回数:Log N (b)下限荷重時ひずみの推移
図一4 上限応力比0.6の場合のひずみの推移
圧 10 8
6
4
2
圧10
8
6
4
2
圧縮応力度(㎏f/㎡)
100
80
60
40
20
(a)FC2W
(b)FC3S
ひずみ(μ)
0 ひずみ(μ)
FC3A
(c)FC3A
図一5 上限応力比0.6の場合の疲労回数と応力〜ひずみ曲線図
0 ひずみ(μ)
普通強度コンクリートとほぼ同等であると思われる4)。
図一4は上限応力比が0.6の場合の上限および下限荷重時ひずみの推移である。
一方、図一5は上限応力比0.6の疲労回数と応力〜ひずみ曲線図を示す。
これらより文献5)に示されているようなひずみの急激な増加がFC3Aに認められ、静 的破壊ひずみの65%程度を200万回で示している。
FC3Aは脆性的であり、疲労強度とひずみは同一の傾向を示している。
4.まとめ
本実験の範囲内で次のようにまとめられる。
① シリカフユーム混入率20%の圧縮強度はfc =1400kgf/c㎡に達するが、引張強度、
曲げ強度の強度増加はわずかである。又、養生方法により強度増加は異なる。混入率 20%は混入率15%より養生方法、材令を問わず常に強度が高い。
超高強度コンクリートは普通強度のコンクリートに比して静弾性係数の増加はほと んどなく、減少する傾向にある。又、強度が増すとコンクリートの靭性が増す一方、
脆性的となる。
これらの結果は、既往の成果を確認することが出来る。
② シリカフユームを用いたfc =1100kgf/c㎡以上の超高強度コンクリートの一軸圧縮 疲労試験においては、N=2×106回の疲労強度は65〜71%の範囲にあり、普通強度 のコンクリートの場合とほぼ同等であった。又、コンクリート強度が大きくなるにし たがって、S−N曲線の傾きは多少大きくなる傾向が見られる。
繰り返し載荷実験のひずみの推移は、上限応力時とともに下限応力時にも明確な影 響があらわれるように見え、一方、脆性的なコンクリートにっいては上限ひずみの測 定も必要になると思われる。
本実験で使用した大型構造物疲労試験機は、平成6年度私立学校施設整備費補助金によ り購入した最大荷重1600KNハイドロパルス型(東京衡機製造所(株)製)である。
本実験は、平成7年度大学特別研究助成費(A)を受け、学部卒業実験として行った。
5.謝辞
この実験については、本学大学院修了で日本コンクリート工業(株)の小寺満氏および 同研究所に多大のお力添えを頂いた。ここに謝意を表する次第である。
参考文献
1)高木宣章・明石世樹「シリカフユームを混入したコンクリートの特性について」第6回コ ンクリート工学年次講演会論文集 84年
2)松下博通・徳光善治「生存確率を考慮したコンクリートの圧縮疲労強度に関する研究」土 木学会論文報告集、第284号、 79年
3)松本嘉司・斉藤俊彦・三浦一郎・峯好武「安家川鉄道橋(上路プレストレストコンクリー トトラス橋)の設計・施工」土木学会論文報告集、第264号、 77年
4)小寺満・土田伸治・丸山武彦・孤島法夫「シリカフユームを用いた超高強度コンクリート の一軸圧縮疲労試験」土木学会第51回年次学術講演会、平成8年
5)小寺満・土田伸治・丸山武彦「シリカフユームを用いた超高強度コンクリートPCはりの
圧縮疲労性状」土木学会第50回年次学術講演会、平成7年