女子大学生の体型とボディーイメージとの関係
福 田 理 香,井 口 聖 子,勝 田 吏 賀
Relationship between physique and body image in college students Rika Fukuda, Seiko Inokuchi, Rika Katsuta
Summary
The relationship was investigated between the physique, perception of body size, eating habits in female students who hope to become a dietician. We divided the subjects into four groups based on the BMI value and the percentage of body fat: ‘thin’, ‘normal’, ‘hidden obese’ and ‘obese’. Ap- proximately 33% of the subjects were ‘hidden obesity’, normal weight and high % fat. We found a tendency to overestimate body size on all groups. A desire to be slender was more pronounced in the ‘thin’ group. There was no relationship between physique and eating habits. The results of this study indicated that the students who belong to nutrition course have misconception about the phy- sique, desire for slenderness and eating habits as well as other adolescent females.
!
.はじめに
健康日本2 1の目標項目の一つに, 「適正体重を維持している人の増加」が挙げられているが,男 性の肥満者の増加傾向,2 0〜4 0歳代の女性では痩せの増加傾向認められ,目標達成にいたっていな いのが現状である
3)。
若年女性における痩せの増加傾向は,痩身体型への強い憧れが,多くのものを減量行動,いわゆ るダイエットへと導いているためと考えられる
5,9)。過度な減量は,心身に様々な弊害をもたらす ことがいわれているが,健康に対する危機感が希薄な若年期では,魅力的な容姿等の獲得,あるい は自己満足のために細身の身体を手に入れる努力を行っているのが現状である
1)。
管理栄養士は,低体重の人や健康を度外視した減量行動を行っている人に対して,正しい知識を 提供し,食行動の変容を促す役割も担っている。管理栄養士を目指している大学生は,食に関する 知識および技術を学んでいるが,同時に痩身体型への憧れが顕著な若年層でもあり,彼女らの実態 が気になるところである。自己の身体を客観
的に把握し,健康管理ができることが他者へ の適切な栄養指導,健康指導が可能であると 考えられる。
そこで本研究では,管理栄養士を目指して いる女子大学生を対象に,体型の自己認識,
食・運動習慣等の実態を把握するとともに,
表1 対象者プロフィール 平均 ± 標準偏差 年 齢(歳)
身 長(
!) 体 重(
#) B M I(#/")
体脂肪率(%)
1 9. 6 1. 5 8 5 1. 7 2 0. 7 2 6. 3
± 1. 2
± 0. 0 6
± 7. 2
± 2. 5
± 5. 2
(1. 4 4−1. 7 9)
(3 5. 1−8 0. 7)
(1 5. 4−2 9. 0)
(1 4. 5−4 3. 1)
(最小値−最大値)を表す。
活水論文集 第5 3集 3 1
18.5 25.0
y=1.9416x・13.913 R2=0.8405
27.0%
肥満 6.4%
(n=15)
痩せ 13.9%
(n=33)
標準 46.2%
(n=109)
隠れ肥満 33.5%
(n=79)
60 50 40 30 20 10 0
体脂肪率(%)
BMI(kg/m2)
10 15 20 25 30 35
Figure #1 Figure #2 Figure #3 Figure #4 Figure #5 Figure #6 Figure #7 Figure #8
現在の
BMIと体脂肪率を考慮した体型区分との関連性について検討することを目的とした。
!
.対象と方法 1.対 象
対象は,K大学で管理栄養士を目指してK大学に在籍中の1年生から4年生の学生とした (表1) 。 本研究の主旨を説明し,協力を得られた2 5 7名のうち,4月に大学で実施される健康診断時に計測 した身長,体重,体脂肪率の結果および配布
したアンケート用紙がそろって回収できた 2 4 3名分(回収率9 4. 6%)を解析対象とした。
2.方 法
!身体計測
4月に実施される健康診断時に,身長,
体重,体脂肪率を計測した。体脂肪率は,
インピーダンス法の体組成計(TANITA 社
製
BC‐ 1 1 8)を使用した。BMI(Body Mass Index)による肥満の判定は,日本肥満学会の判定 基準を,体脂肪率による肥満の判定は,大野ら
2)の判定基準を用い,図1に示したように,4つ のグループに分類した。すなわち,BMI<1 8. 5かつ%Fat<2 7. 0%を 痩せ ,1 8. 5≦BMI<2 5. 0 かつ%Fat<2 7. 0%を 標準,
BMI<25. 0かつ%Fat≧2 7. 0%を 隠れ肥満,BMI≧2 5. 0を 肥満 と判断した。
"
アンケート調査
自記式質問票を用い,身体認識に関する項目,体重および体脂肪率に関する項目,ダイエット に関する項目,食習慣および運動習慣に関する項目について実施した。なお,身体認識に関する 項目は,Bell ら
4)が考案したシルエットチャート法を用いた(図2) 。
図2 シルエットチャート(Bell ら
4)1 9 8 6. )
3.統計処理
本研究では,4つの体型区分によって,身体認識や食習慣および運動習慣に差があるか否か検討 するために
SPSSVer.1 1. 0
Jを使用し,カイ2乗検定を行った。
図1 体型区分
3 2 福 田 理 香 ・ 井 口 聖 子 ・ 勝 田 吏 賀
#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 50
40 30 20 10 0
(%)
痩せ 標準 隠れ肥満 肥満
#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 70
50 40 60
30 20 10 0
(%)
痩せ 標準 隠れ肥満 肥満
100
60 40 80
20 0
(%)
痩せ 標準 隠れ肥満 肥満
-4 -3 -2 -1
no-change no-change
+1 +2 +3
100
60 40 80
20 0
(%)
痩せ 標準 隠れ肥満 肥満
-4
-5 -3 -2 -1
no-change no-change
+1 +2 +3
!
.結 果
1.ボディシルエットによる体型認識
"
現在の自己の体型に一致するシルエット 各グループにおいて各シルエットを選択した割 合であらわすと, 痩せ 標準 隠れ肥満 肥 満 の順にグラフのピークが#1から#8にシフ トするような結果が得られ,体型区分による4グ ループ間に有意差が認められた(図3) 。
痩せ 群では#3・#4を選んだものがそれ ぞれ約3 5%, 標準 群では#5がもっとも多く 4 4. 0%,次いで#4が3 5. 8%, 隠れ肥満 群で は#5がもっとも多く4 4. 3%,次いで3 2. 9%, 肥 満 では#7が4 0. 0%,次いで#6, #7が3 0%前 後であった。
#
理想の体型に一致するシルエット
痩せ 標準 隠れ肥満 群では,#3を選 んだ者がもっとも多く (6 6. 7%,5 6. 9%,5 5. 7%) , 次いで#4であり,両者で約9 0%を占めた。これ に対して 肥満 群では#3・4それぞれ4 0. 0%
であった。
$
±2
!および±5
!の体重変化によって予想されるシルエットの変化
体重が±2!変化した場合に予想されるボディシルエットの変化について質問した。その結果
(図5) ,+2
!ではいずれのグループも約6 0%が「変化しない」でもっとも多く,次いで「1 シルエット分上がる」 であった。−2!でもグループ間に有意差は認められなかったが, やせ と 肥満 群では「変化しない」がもっとも多かったのに対して(それぞれ6 3. 6%,8 0. 0%), 標 準 と 隠れ肥満 群は, 「変化しない」と「1シルエット分下がる」と答えたものがほぼ同数 であった。
体重が±5
!変化した場合は,いずれの群も「±1シルエットの変化」がもっとも多く,全体 図3 現在のシルエット
図4 理想のシルエット
図5.±2
"した時のボディシルエットの変化量 数値は現在のシルエットからの変化量を表している
図6.±5
"した時に予想されるボディシルエットの変化量 数値は現在のシルエットからの変化量を表している
女子大学生の体型とボディーイメージとの関係 3 3
その他(3)
食事に関する 配慮(量・内容 etc.)(53)
運動の実施
(63)
間食・アルコー ルの摂取制限
(27)
単品ダイ エット(9)
としての傾向は同様であったが,4群間に有意差が認められた。
+5!では, 肥満 群以外の3群では「+2シルエット」が約2 0%いた。また−5!では, 肥 満 群で「変化しない」が約2 0%を占め,他の3群では「−2シルエット」が約2〜3割占めた。
2.現在の体重および体脂肪率について
"
体重の増減について
痩 せ を 除 く3群 は, 「現 状維持」を望むものが約8 0%占 めたのに対して,痩せ 群では,
「減らしたい」が約6 0%を占め,
「増やしたい」 「現状維持」が
それぞれ約2 0%を占め, 「減らしたい」が約6 0%を占めていた(表2) 。体重増減の目的について は,いずれの群においても「容姿(見た目) 」が5 0%以上であった。
#体脂肪の増減について
痩 せ を 除 く3群 は, 「現 状維持」を望むものが約9 0%以 上を占めたのに対して,痩せ 群では, 「減らしたい」 が約4 0%
を占め, 「現状維持」は約6 0%
であった(表3)。体脂肪の増減の目的は, 標準 と 隠れ肥満 群は,「健康のため」「容姿(見 た目) 」の順で約9割を占めていた。肥満 群は,1 5人全員が「容姿(見た目) 」であった。
3.ダイエットについて
"ダイエット経験の有無
表4に示したように,標準 群は過去・現在ともに経験のあ るものが約4 5%であったのに対 して, 隠れ肥満 群は,約6 5%
を占め, 標準 群より高い割 合を示した。
#
ダイエットの内容
図7に示したように, 「運動の実施」 「食事に 関する配慮(量・内容)」が多く,その他に「間 食・アル コ ー ル の 摂 取 制 限」 「単 品 ダ イ エ ッ ト」などであった。
図7 ダイエットの内容 表2 体重の増減に関して
痩 せ 標 準 かくれ肥満 肥 満 増やしたい
現状維持 減らしたい
6(1 8. 2)
7(2 1. 2)
2 0(6 0. 6)
1( 0. 9)
8 9(8 1. 7)
1 9(1 7. 4)
0( 0)
7 7(9 7. 5)
2( 2. 5)
0( 0)
1 5(1 0 0)
0( 0)
数字は,人数(%)を表している。
表3 体脂肪率の増減に関して
痩 せ 標 準 かくれ肥満 肥 満 増やしたい
現状維持 減らしたい
2( 6. 1)
1 8(5 4. 5)
1 3(3 9. 4)
0( 0)
9 4(8 6. 2)
1 2(1 1. 0)
0( 0)
7 9(1 0 0)
0( 0)
0( 0)
1 5(1 0 0)
0( 0)
数字は,人数(%)を表している。
表4 ダイエット経験について
痩 せ 標 準 かくれ肥満 肥 満 現在あり 1( 3. 0) 5( 4. 6) 7( 8. 9) 3(2 0 ) 過去にあり 5(1 5. 2) 3 9(3 5. 8) 3 8(4 8. 1) 5(3 3. 3)
過去・現在
ともにあり 1( 3. 0) 5( 4. 6) 6( 7. 6) 1( 6. 7)
過去・現在
ともになし 2 6(7 8. 8) 6 0(5 5. 0) 2 8(3 5. 4) 1( 6. 7)
数字は,人数(%)を表している。
3 4 福 田 理 香 ・ 井 口 聖 子 ・ 勝 田 吏 賀
表5 欠食の有無 全体
(n=2 2 9)
痩せ
(n=3 3)
標準
(n=1 0 4)
かくれ肥満
(n=7 7)
肥満
(n=1 5)
ある ない
9 1(3 9. 7)
1 3 8(6 0. 3)
1 7(5 1. 5)
1 6(4 8. 5)
3 9(3 5. 8)
6 5(5 9. 6)
3 1(3 9. 2)
4 6(5 8. 2)
4(2 6. 7)
1 1(7 3. 3)
数字は,人数(%)を表している。
表6 運動経験の有無 全体
(n=2 2 9)
痩せ
(n=3 2)
標準
(n=1 0 4)
かくれ肥満
(n=7 7)
肥満
(n=1 5)
ある ない
1 4 1(6 1. 6)
8 7(3 8. 0)
1 6(4 8. 5)
1 6(4 8. 5)
6 2(5 9. 6)
4 2(4 0. 4)
5 6(7 2. 7)
2 1(2 7. 3)
7(4 6. 7)
8(5 3. 3)
数字は,人数(%)を表している。
4.食生活について
1日の食事回数は,4群ともに8 5%以上が基本的に3回であった。しかし,欠食をすることがあ るものは全体の約6 0%がおり,その8割が朝食であった。もっとも欠食率が高かったのは 痩せ 群であった。
また,就寝3時間前に飲食する者の割合は,全体の約6 0%であった。
5.運動経験について
これまでに運動経験があるものは全体で約6 0%であった(表6) 。 隠れ肥満 群は約7 0%と最も 高い確率であった。
!
.考 察
本研究は,将来,人々の健康を食の面から支援する管理栄養士を目指している女子大学生を対象 として,体型および自己の体型認識,食・運動習慣の実態を把握し,それらの関係について検討し た。
BMI
および体脂肪率から評価した体型は, 痩せ 1 3. 9%(n=3 3) , 標準 4 6. 2%(n=1 0 9) , 隠れ肥満 3 3. 5%(n=7 9) , 肥満 6. 4%(n=1 5)であった(図1) 。 痩せ の割合は,平成 1 9年度国民栄養調査
3)の結果あるいは末広ら
5)の結果よりも高値であり,痩せ傾向の強い集団である こと,また,BMI は適正であるが体脂肪率が多い,いわゆる 隠れ肥満 も約3 0%と高い割合で 存在する集団であることが明らかとなった。
シルエットチャート法による自己の体型認識は,図3に示したように 痩せ は#3・4, 標準 は#4・5, 隠れ肥満 は#5・6, 肥満 は#7を選択したものが多く,4つの群間に差がある ものの,いずれにおいても実際よりもやや太ったシルエットを選ぶ傾向にあった。自己の体型につ いて適切な認識ができていない可能性が浮き彫りになった。
また, 「現状から2
!あるいは5
!の体重増減があった場合,予想されるボディシルエットはど
のように変化するか」の質問に対して,2!の増減ではいずれの群もほとんど変化しないと回答し
たのに対して,5
!の増減では現状より1シルエット分「太くなる」あるいは「細くなる」と回答
したものが約7 0%を超えた。この結果は,いずれにおいても体型の変化をもたらすための体重の増
女子大学生の体型とボディーイメージとの関係 3 5
減量の境界が2〜5
!にあり,現在の体重に対する相対的な増減ではなく,単なる数字としてとら えていることが考えられる。
理想のシルエットは,いずれの群も#3が多く,現在の自己を評価したシルエットよりも1〜4 シルエット細いものであったため(図4) , 痩せ 志向の割合が多いと予想していた。しかし,予 想に反して,全体でそれぞれ1 7%と1 0%と他の研究報告
1)と比較して低値であった。この結果は,
現在ダイエットをしているものは1割にも満たないことからも(表4) ,理想の体型を獲得するに は体重の増減ではなく,他の方法,例えば運動によって筋肉をつけるなど,が必要であると考えて いるのではないだろうか。一方で, 痩せ 群においては他の3群と異なり,約6 0%のものが体重 を,約4 0%のものが体脂肪率を減らしたい希望を持っており,より 痩せ 群において強い痩身願 望があることが浮き彫りになった。自己の体型について非常に誤った認識をしており,そのことが 強い痩身願望を駆り立てているものと考えられる。
BMI
から判定すると 標準 あるいは 痩せ ていても,体脂肪率が高いいわゆる 隠れ肥満 が,若年女性にも存在し,将来肥満へ移行しやすいこと,生活習慣病を発症させる危険性が高いこ となどが報告されている
7,8)。判定基準が研究によって異なるため簡単に比較することはできない が,本研究では3 3. 5%と高い割合であった。若年女性の肥満の原因として,食事内容や食行動異常 があげられているが
6,9),これまでのダイエット経験の有無,現在の食事回数,欠食状況などの食 習慣等は他の群と比較して 隠れ肥満 群に特徴的なことはみつけ出すことができなかった。しか し,運動の経験は,7 2. 7%と高値(全体で約6 0%)を示していた。このほとんどは中学・高校時代 に運動経験があったものであり,大学生になってからの運動は皆無に等しい。つまり,大学生にな り身体活動量が激減したにもかかわらず,食事量に変化がないなどにより,エネルギーの収支バラ ンスが乱れたため,体脂肪の過剰な蓄積につながったものと推察される。この点に関しては,今後 さらに検討する必要がある。
!.ま と め