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多様性というチャンス、そして修正能力(特集 多 様性と向き合う)

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Academic year: 2021

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多様性というチャンス、そして修正能力(特集 多 様性と向き合う)

著者 久慈 るみ子

雑誌名 尚絅学院大学紀要

号 75

ページ 22‑24

発行年 2018‑07‑20

URL http://doi.org/10.24511/00000368

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を次世代に継承することの意義を、学生たちに考えさせる指導をしてきた。

 自分とは生まれも、立場も、経験もまったく違う人からは、学ぶことばかりである。学生た ちには、そうした出会いを通じた学びを興味深い、楽しいと思ってもらいたいのだが、少なく とも交流した人びとを差別することはなく、わざわざ現場を案内してくださったり、辛い経験 を語ってくださる皆さんに、尊敬の念を抱くようになるという実感はある。

 「多様性」の尊重は、違いを実体験することからはじまる。かつての私がそうだったように、

大学での学びがそのきっかけとなってくれれば、幸いである。

※本稿は、拙稿「部落問題とであって学んだこと」福岡県福祉労働部人権・同和対策局調整課『私たちはなぜ、

人権について学ぶのか』(23-26 頁、2016 年)ならびに拙編著『部落問題と向きあう若者たち』(解放出版社、

2014 年)を大幅に改訂したものである。

多様性というチャンス、そして修正能力

久 慈 るみ子(環境構想学科教授)

 今回の特集テーマである「多様性」は考えれば考えるほどむずかしい。本質に迫ることなど 絶対にできないと確信し、ここでは身近なところでの多様性がもたらす課題と自分がどう向き 合うか考えたことを述べさせていただきたいと思う。

 人は同質の人々といると自分を肯定された感覚が生じやすく、居心地が良い状態になりがち である。異質つまり多様な人々といると、自分の考えや経験と異なる事象にぶつかり、時に否 定されたように感じることも多くなる。つまり多様性はストレスを伴うことになる。多様性と 向き合うことはストレスと向き合うことかもしれない。このストレスをマイナスと感じる人は 多様性を遠ざけ、極端になると排除しようとする。しかし、プラスの刺激とみる人は、ストレ スを受容し、楽しいと考えるかもしれない。

 大学における教員の mission の一つは教育、つまり学生と向き合うことである。多様な個性 を持つ学生の存在は教員にとっては一つのストレスである。しかし前述のようにプラスにとら えることによって多様な個性は教員に良い刺激をもたらす可能性を有している。つまりチャン スのはずである。

 しかし、多様な個性と向き合う場合に、いくつかの課題ともいえるものが頭をよぎる。まず、

きわめて個人的には、多様性を楽しむ時間を過ごしたい。ストレスは傷つかない程度にしたい。

そのためにはお互いに受容する力、客観的判断をする力と、否定する力を持つことが必須であ るように思う。しかも否定する力は拒否ではなく、差を認め合う表現力をもって、はじめて意 味をなすと考えるのである。自分にとっては、かなりの難問である。

 次に教員と学生という観点からは、①様々な個性を持つ学生と向き合うにあたって公平性を どう担保するか。特に成績評価は大きな問題である。また、②人は多様なのだから、すべて受 け入れなくてはならないのか。③多様な個性の学生を受け入れ、どのような教育で、多様な個 性をどのように伸ばそうと考えるか、などなど。自分の中で課題は山積している。

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 ①の公平性について考えるとき、まず成績評価についてはルーブリックの存在が重要になっ てくると考えている。何に対して、何をどのように評価するか、何が学びのポイントとなるの か可視化しておくことが公平性を担保する手立てになると考えている。次に学習支援の公平性 であるが、二つの課題として考えている。一つ目は学生や周囲に、どこまでどのようなサポー トができるか伝えること。二つ目は教員も学生も互いに多様性を受けいれ合うことである。教 員だけではなく学生もともに受容力を身につける必要があると考えている。なぜならば、様々 な個性の学生がいるように教員も様々であることを認め合うことは大事なことと考えているか らである。

 ②と③の課題は、極言すると、大学はすべてを受け入れるわけではないのだと私は考えてい る。多様性の「多」は「多い」ということで、これは種類あるいは一つのくくり、つまり何か 限定されないと意味をなさない。しかしくくり方に大小があるため無限ループに陥る可能性が あるが、大学や、各学群・学類は、このくくりをディプロマ・ポリシー(DP)、アドミッショ ン・ポリシ―(AP)、カリキュラム・ポリシー(CP)として学生や社会に表明しているのだ と考えている。DP・AP・CP は、大学、各学群・学類がどのような教育をし、学生をどのよ うな人材に育てようとしているのか、その教育目標を果たすために、このような条件の学生を 求めているという約束であると思う。DP・AP・CP は大学の学生や社会に対する約束である。

入学条件を設けることは多様な個性を否定するのではなく、大学が教育目標を示すことで、サ ポート出来ることと出来ないことを明確にすると言い換えても良いかもしれないと考えてい る。

 そして、これらの課題は根本的な問題をさらに抱えていると思う。「差別」という極めて負 のイメージの言葉がある。一方で「差別化」という、比較的プラスイメージの言葉がある。大 学において多様性とは、何でもありという訳ではない。それぞれが違うということ、差がある ということである。差があることを認め合うということである。であれば差によって蔑するこ となく、差別化することは必要な場面もあると思う。しかし古い言い方ではあるが、島国日本 に暮らす多くの日本人は同質な集まりゆえ、同質であることを自覚せずに物事を判断してしま うことが多いように思われる。

 東日本大震災後に、所属する学会が震災復興の支援につながるプロジェクトチームの募集を 行い、故あって関わることになった。さらにその関係で、世界の避難所について少々勉強する 機会が続いている。そこで知り得た知識によると、日本の多くの避難所は世界的にみると評価 が低いという。その理由として考えられることの一つに、個に対する考え方の違いがあるよう に思う。

 日本の避難所の多くは、一つの空間に雑魚寝状態を常態としている。理由はいくつか考えら れる。例えば日本の睡眠環境が床に布団という文化であること、また非常時つまり一時的だか ら、そして気づかずにいるが協力し合う空間だから、個々の空間は後回しと考えるのが当然、

という考え方である。海外のすべての避難所がプライバシーを大切にする設備になっているわ けではないが、根本的な部分で個に対する考えが日本とは異なっているように思うのである。

協力しあうことと個は別次元の問題と思うが、日本では、なぜか一致団結して、個々のことは 後回しにすることが美徳のようになり、「みんなで一緒に」が優先される。協力することは非 常に大切なことであるが、個人差がないことを前提に多くの事柄が準備され、個は見過ごされ ているように思う。

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 しかしながら、多様性に向き合う時、自分自身は個を優先して考えているかと問われると、

後回しにすることを当たり前と考えていることが多々あるように思う。そこで自分にとって必 要となってくるのが「修正力」ではないかと考えている。自分の経験をもとに判断をしがちで あることを自覚し、多様性に向き合ったとき、自分の経験や考えと同列に他者の経験や考えを 並べ、必要に応じて修正する勇気を持ち、修正体験を積み重ねて行きたいと考えている。

 今回、多様性に向き合う機会を頂戴したことをきっかけに、少しばかり書籍や記事を読む機 会を得た。それらの中で、最も影響を受けた記事に、「多様性のあるチームは、事実をより重 要視し、より注意深く処理し、より革新的である」という内容があった。同質である集団より、

多様なメンバーの集団の方が事実認識力、修正能力が高く、客観的な見方ができるという複数 の研究報告があるとその記事は書いている。紹介されている研究報告では、被験者 200 名の模 擬裁判で、同人種のグループより多様な人種のグループの方が、提供された証拠について、事 実関係の誤りがより少なく、誤りが発生した場合も修正する確率が高かったという実験報告 や、模擬市場を設定して、金融リテラシーの高い参加者たちに株価をつけてもらったところ、

民族的に多様なチームメンバーの方が株価を正確につける確率が高かったという結果がでてい るという。またスペイン企業 4277 社の研究開発チームを対象に性別の多様性のレベルについ て統計モデルを用いて分析を行ったところ、より多くの女性を要する企業ほど、2年間の調査 期間において革新的なイノベーションを市場に導入する確率が高かったことが報告されてい る。多様性を高めると個々人のバイアスが抑制され、思い込みに疑問を呈しやすくなり、意見 も述べやすくなることから、意思決定において、情報をより注意深く処理するからではないか と考察されている。

 2019 年4月より、尚絅学院大学は多様性と向き合うことになる。人文社会学群という多様 な専門分野で構成される学群を有することとなるからだ。人文社会学群が尚絅学院大学 125 年 余の歴史に、より革新的な教育をもたらすことを神は見守ってくださることと信じている。

参考文献

デイビッド・ロック、ハイディ・グラント「多様性があるチームほど聡明な3つの理由」『DIAMOND ハーバー ド・ ビ ジ ネ ス・ レ ビ ュ ー』HBR.ORG 翻 訳 マ ネ ジ メ ン ト 記 事、2017 年 1 月 30 日、http://www.dhbr.net/

articles/_/4668?page=2

分け隔てなく ― 食の多様性 ―

細 矢 理 奈(健康栄養学科准教授)

はじめに

 このたび、「多様性と向き合う」というテーマで教育と関連した原稿を書くように依頼を受 けた。しかし、栄養学を専門とする筆者にとって「多様性(ダイバーシティ)」を一般的に論 じることは困難であるため、今回は専門分野でもある「食」にスポットを当て、多様性と関連 した思いについて書かせていただくことを了承願いたいと思う。

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