西独都市の多極的分権構成の諸問題(?) : 分都論 への一素材的考察
その他のタイトル Untersuchungen uber die Streuung
hauptstadtischer Zentren in der Bundesrepublik Deutschland (III)
著者 神谷 国弘
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 15
号 1
ページ 1‑21
発行年 1983‑11‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00022767
西独都市の多極的分権構成の諸問題(][)
一 分 都 論 へ の 一 素 材 的 考 察 ー 一
神 谷 国
弘
(2)
経済的機能A
次元たる経済的諸機能の都市別配列状況の分析に移る。経済機能の中でも,生産機能は立地 因子の拘束を受けること大なる領域であるがゆえに,必ずしも本来の都市的機能と直結しない側 面もある。したがって,ここではまず,経済機能の中,都市的要因との関係の密なる部分からとりあげていくこととする。
(a) 経済的上位団体
経済諸セクターの分析に先立って, まず経済の諸領域における上位団体
( S p i t z e n v e r b a n d )
をとりあげる。いうまでもなく,一国をカバーする上位団体はそこに結集する所属構成単位の利 害の調整,情報の交換,内部的統制などの対内的機能を果すとともに,外に向っては要求や意思 を集約して,一定の集団的影響力を行使しようとする対外的機能を営む。上位団体が一面,圧力 団体といわれる所以でもある。もっとも,ある上位団体が対内的機能を主たる目的として組織さ れたか,それとも外に向っての影響力行使を狙って結成されたかは一義的には判定しがたい。実 際には上位団体は常に,この両面を兼備しているのであり,程度の差があるのみである。ただ,現実の上位団体の立地選択からみて,対内的機能を主目標に組織されたものか,それとも対外的 な影響力を企図して結成されたものかについての,おおよその類推はつく。前者の場合は当該領 域の活動中心地に立地するのが通例であり,後者では影響力行使にあたって,もっとも有効度の 高い地点にその立地を選択する(たとえば,政治的な影響力を考慮すれば政治的中心地に近接し,
金融的利便を念頭におけば,金融的中心地に接近して立地するというように)。
すでに指摘したように,わが国においては上位団体の
9
割以上が東京に一点集中しているのに 対し,西ドイツの場合,すでに第11表に表われたように,ボンを頂点としながらも,いくつかの 都市に散在立地していることを確認した。ここでは経済領域(A
次元)について,第1
次,第2
次,第3
次の各産業別団体ならびに,それらを横断する経営側,労働側の各団体( S o z i a l p a r t n e r )
のそれぞれについて個別的にみておきたい。まず,農林関係についてみるならば(第9表の (15)参照), 81団体中55団体がボンに本拠を置い ている。農林関係団体にとってボンは決定的な立地点となっているのである。それに対して,他 都市はほとんど,意味をもたない。いうまでもなく,農業,林業は国土全体において,ほぽ均等
‑ 1 ‑
関西大学『社会学部紀要」第
1 5
巻第1
号に営まれる生業であり,特定の地域に偏在するものではない。したがって,活動密度の高い地域 に,それを統括する上位団体が立地するという経緯をとらない。むしろ農林業に対する国家の政 策如何がその盛衰に決定的な要因となる。その意味で農業について各種の政策的配慮を施してい る先進諸国家においては,農林業関係団体は政策決定機構に近接的に立地することが,関係団体 にとって,もっとも望ましい。ボンに集中する根拠がそこにある。
農林業団体のうち,綜合的かつ影響力大なるいくつかの立地を個別的にみておく。
1 .
ドイツ農 民団体( d e rD e u t s c h e Bauerband‑DBV‑)
。農地5
ヘクタール以上の地主ならびに小作人の ほぽすべてを包括し,国の農業政策の決定に大きく参与している団体。2 .ドイツ・ライファイゼ
ン団体( d e rD e u t s c h e Raifeisenverband‑DRV‑)
。 ドイツの農政家ライファイゼンの名を冠 した農業団体で農民相互の経済援助すなわち共済的活動をする団体p3 .
農業会議団体( d e rV e r ‑ band d e r Landwirtschaftskammern‑VLK‑)
。 営農ならびに経営技術指導を目的とした団 体。4 .
ドイツ農業協会( d i ed e u t s c h e L a n d w i r t s c h a f t s g e s e l l s c h a f t ‑ D L G ‑ )
。農業技術の進 歩を目的として組織された団体。これらの4
団体はドイツ農業中央委員会( d e rZ e n t r a l a u s s c h u B d e r D e u t s c h e n L a n d w i r t s c h a f t )
に結集しており,これはドイツ農民の標準的意見を集約していく機構である。 これら
5
団体の中, ドイツ農業協会(DLG)
がフランクフルトに立地してい るほかは,あとの4団体はいずれもボンに立地している。 ドイツ農業協会は政治的な影響力行使 を目指す団体というより,内部的機能を主目的として組織された団体であるところから,ボンを 立地選択しなかったと推察される。上記4
団体はすべて,ボンのバードゴーデスベルク・ハウス に本部を設置している。第
2
次産業の関係上位団体に目を向ける。第9
表の( 9 )
職人団体(Handwerkund h a n d w e r k s ‑ a h n l i c h e B e r u f e )
とU O l
工業関係( I n d u s t r i e )
をとりあげる。両領域上位団体総数4 6 5
中,1 2 2
団体( 2 6 . 2
彩)がフランクフルトに本部を置いている。続いてデユッセルドルフの9 8
団体( 2 1 . 1
彩)があり,ボソは78団体,それにつづくケルンの3 6
団体と合わせてボン,ケルン地域で114団 体となる。これはフランクフルト1 3 2
団体にヴィスバーデン2 8 ,
マインツ3
を加えた1 5 3
団体を抱 えるライン・マイン地域に比較して数の上では劣るものの,より高次の上位団体の立地という点 からみれば,ボン・ケルン地区の優位は疑いえない。ドイツ工業経済共同委員会( d e rGemein‑
s c h a f t s a u s s c h u B d e r D e u t s c h e n G e w e r b l i c h e n W i r t s c h a f t )
はボンに,連邦ドイツ工業団 体( d e rBundesverband d e r D e u t s c h e n I n d u s t r i e )
はケルンに,そしてドイツ工業・手工業 会議( d e rD e u t s c h e I n d u s t r i e ‑ u n d H a n d e l s t a g )
はボンにそれぞれ立地している。これらは いずれも,工業,手工業分野における統合的かつ中枢的な上位団体であり,政治的中心地たるボ ンもしくはそれに近接したケルンを立地点として選択している点に注目しておきたい。なお,手 工業者団体をみるかぎり(第9
表の項目( 9 ) ) ,
ボンは1 5
団体でフランクフルトの8
団体のほぽ倍 を数え,政治的中心地への志向性が工業関係団体より大なることを示している。第
3
次産業関係上位団体の本部立地状況を概観する。第3
次産業団体として,ここでは第9
表西独都市の多極的分権構成の諸問題 (Ill)(神谷)
の中から,
( 5 )
観光・保養・飲食・ホテル関係( F r e m d e n v e r k e h r ,B a d e r , G a s t s t a t t e n , H o t e l s ) ,
(8)商業・協同組合団体( H a n d e l , G e n o s s e n s c h a f t s w e s e n ) ,
U3)信用・所引所・有価証券関係( K r e d i t w e s e n , B o r s e n , E f f e k t e n )
U6) 仲介業・通商代理人・代理業・酒問屋• その他の代行業•競売業・専門職 (Makler,
H a n d e l s v e r t r e t e r , A g e n t e n , W e i n k o m m i s s i o n a r e , A u k t i o n a ‑ t o r e n , S a c h v e r s t a n d i g e ) , ( 2 4 )
保険団体( V e r s i c h e r u n g s w e s e n ) , ( 2 5 )
宣伝・見本市・展示・経 済促進関係(Werbung,M e s s e n , A u s s t e l l u n g e n , W i r t s c h a f t s f o r d e r u n g )
をとりあげる。第1 4
表は上記諸団体の都市別分布を示したものである。総括的にいって,第3次産業関係団体においても,工業の場合と同様,ボン以外の諸都市にも 広く立地分布がみられる。ただ,総体的にみて,ボン・ケルン地区(計86団体)の卓越は見逃しえ ない。ただし,ケルンの吸引力がボンヘの接近にあるか,否かは明らかでない。商業関係団体
( 8 )
ではボンに次いで,ハンブルクが多い。ボンヘの立地が政治・行政機関への接触を求めたもので あるのに対し,ハンプルクの場合,国際貿易都市として,貿易商社関係の利害統合を目指すもの と推測される。信用, 取引有価証券関係U 3 )
がボンとともに,フランクフルトに多く立地するの は,後者の金融中心地としての卓越性が影響していると考えられる。保険関係団体はケルンがも っとも多く立地している。ここには西独保険会社の本社が集まり,保険の街ともいえるケルンの第
1 4
表対象都市別第3
次産業関係上位団体の分布ら 野
I
(5) (8) (13) U6)( 2 4 ) ( 2 5 ) I 計
HH MK EF DO DS DU HB HN BN KI wI SB MZ
2 1 9 6 4 9 5 1 2 0 1 6 2 4 2 1 4 1 0
0
1 0 1 1 0 2
0 0 0 0
1 0 1 0 8 0 4 1 0 1 1 0 8 0 2 0 1 1 1 9 1 1 5 4 1 5 2 2 3 4 0 4 1 0 2 3 1 0 0 0 0 0 0
5 1 1 0 0
0 6 0 5 1 0 9 2 0 8 0 1 0 0 1 3 0 1 2
0 0
2 0 6 0 0 0 0
38104044122691872611912
W B I . ) ( . 0 ‑ ‑ ‑ 0 ‑ i ‑ ‑ ・ i ‑ ‑ 1 I 3
計 I 1 5 1 2 9 3 3 1 6 3 5 3 6 1 2 6 4
第9表より関係項目抜幸第
1 5
表労使関係上位団体の分布~I (AGV) (ANV) I
計HHMKEFDODSDUHBHNBNKI
0 1 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0
6 4 4 4 5 0 5 4 1 0 1 1 5 0
6 5 8 4 5 0 5 4 1 0 1 1 8 0 0 1 0
て
1 5 0 d e
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G N I B N
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‑ 3 ‑
関 西 大 学 『 社 会 学 部 紀 要 」 第
1 5
巻 第1
号特性を反映したものといえよう。宣伝・広告関係団体
( 2 5 )
はケルン,ボン地区に集中し,フランク フルト,デユッセルドルフがそれに次ぐ。前者の政治的中心地へのアクセス,後者の金融,報導,流通中心地との関連を推測せしめる。
上位団体の分布に関して,最後に,労使団体をとりあげる。第
9
表の( 1 )
は労使団体・職業組織( S o z i a l p a r t n e r und B e r u f l i c h e O r g a n i s a t i o n )
の分布を示したものであるが,その中,使用 者団体( A r b e i t g e b e r v e r b a n d e )
と被用者団体( A r b e i t n e h m e r v e r b a n d e )
とをとり出して第1 5
表にまとめる。使用者団体は圧倒的にボン・ケルン地区に集中し,偏在性を示すが,労働団体はいくつかの大 都市に分散立地しているという対照がみられる。ハンプルク,フランクフルト,デユッセルドル フなどは,いずれも西ドイツを代表する経済都市であり,それぞれの経済諸領域の本社,本店の 所在地であるところから,それらとの対抗的立場に立つ労働団体の中央本部も,そこに立地選好 する結果である。ボンは政治的中心地として,個別産業をこえた,より上位の労働側利益の,ぃ わば総資本に対する総労働の立場を集約する上位団体の立地を誘引したものといえる。それにし ても,わが国の労働団体の中央本部が,すべて東京に一点集中している現実と比較するならば,
西ドイツにおける労使諸団体がいかに分散的立地を示しているかがうかがいうる。
以上を総括する。経済領域における上位団体の立地点として,ボンとフランクフルトが卓越し ていることが確認された。ただし,両者における立地原理と立地団体は異っている。ボンは政治 的中心地としての誘引要素をもつものであり,主として農業,手工業など国家的政策配慮に依存 する度合いの大なる業種を包摂する全国団体の立地選好する場所となるのに対し,フランクフル トは金融,情報,交通拠点として,工業・サービス業関係団体にとって,
a t t r a k t i v
な都市とな っている。その他,ハンプルク,デュッセルドルフなども,工業や第3
次産業の全国組織を誘引 している西独主要都市であり,またケルンはボンヘの近接性とともに,国レベルの各種行政機関 所在地として,上位団体の立地誘引をもっている。( b )
企業の立地分布上でみたように,経済的上位団体の立地選好は
1
つには政治的決定機構への接触可能性によっ て,他方ではそれらの諸組織によって代弁される経済諸単位の分布によって規定される。後者に ついていえば,ある都市の経済的ポテンシャリティ_財力なり金融力なりによって社会の維持 存続に影響力をもつ経済機関がどの程度集積しているかによって生ずる潜在カ一が問題となる のである。ここでは西ドイツにおける各種経済単位の分布状況を第2次,第 3次産業企業につい て,個別的にみておく。比較の意味でわが国における企業の分布状況を第
1 6
表で示しておく。同表の本社数は東証1
部, 東証2
部,その他の市場に上場された企業本社の数である。東京が半数を占め,それに次ぐ大阪 は東京の3
分の1
弱となるが,広義東京圏(横浜,川崎,藤沢,三鷹を含む)は5 1 .9 1
彩,広義 大阪(神戸,京都,尼崎を含む)では,1 9 . 3 5
彩となり,両都市圏を併せれば,7
割以上となる。西独都市の多極的分権構成の諸間題
c m )c
神谷)第
1 6
表 日本都市の本社立地状況 都 市 名 本 社 数I 9 6
I I
都 市 名
1
本 社 数l
東 凩. 8 9 7 4 8 . 5 7
札 幌1 4
大 阪2 6 8 1 4 . 4 9
金 沢,
名 古 屋
6 5 3 . 5 2
広 島,
神 戸
4 1 2 . 2 1
仙台 7
横 浜3 3 1 . 7 8
藤 沢7
京 都3 3 1 . 7 8
刈 谷6
J I !
崎1 7 0 . 9 1
福井 5 尼
崎1 6 0 . 8 7
北九
朴l5
福 岡
1 6 0 . 8 7 鷹 5
上位1 8
都市1 4 5 4 社 7 8 . 6 3 9 6
*本社数は,
1 3
本経済新聞社発行『会社年鑑上場会社版1 9 7 8
」による。*収録会社は,昭和
5 2
年8
月2 5
日現在。*本社数には,本社,支店,東京本社等を含めた。
第
1 ?
表 対 象 都 市 別 第2
次産業大企業の分布9 る 0 . 7 6 0 . 4 9 0 . 4 9 0 . 3 8 0 . 3 8 0 . 3 2 0 . 2 7 0 . 2 7 0 . 2 7
順 位
1
都 市1
経営体数I
比 率1
累 積I I
順 位1
都 市 従 業 員 総 数I
比 率1
累 積1 W B 6 8 1 1 . 3 1 1 . 3 1 M 1 3 2 , 4 3 2 1 1 . 7 1 1 . 7 2 H H 6 6 1 1 . 0 2 2 . 3 2 W B 1 0 0 , 9 8 5 8 . 9 2 0 . 6 3 M 6 1 1 0 . 1 3 2 . 4 3 K 9 9 , 6 5 0 8 . 8 2 9 . 4 4 K 4 8 8 . 0 4 0 . 4 4 H H 9 6 , 4 0 2 8 . 5 3 8 . 0 5 F 4 4 7 . 3 4 7 . 7 5 s 9 2 , 4 2 1 8 . 2 4 6 . l 6 D 4 4 7 . 3 5 5 . 0 6 D U 9 2 , 3 2 5 8 . 2 5 4 . 3 7 N 4 4 7 . 3 6 2 . 3 7 F 8 5 , 0 2 9 7 . 5 6 1 . 8 8 s 4 0 6 . 6 6 8 . 9 8 H 6 9 , 8 3 8 6 . 2 6 8 . 0
, D O 3 2 5 . 3 7 4 . 3 , D 6 9 , 0 6 5 6 . 1 7 4 . 1 1 0 H 3 2 5 . 3 7 9 . 6 1 0 N 6 7 , 0 8 6 5 . 9 8 0 . 0
11H B 3 1 5 . 1 8 4 . 7
11D C 6 7 , 0 0 7 5 . 9 8 5 . 9 1 2 E 2 9 4 . 8 8 9 . 5 1 2 H B 5 6 , 0 8 0 5 . 0 9 0 . 9 1 3 D U 2 7 4 . 5 9 4 . 0 1 3 E 4 3 , 2 8 6 3 . 8 9 4 . 7 1 4 WI
111 . 8 9 5 . 8 1 4 W I 1 8 , 8 4 0 1 . 7 9 6 . 4 1 5 M Z 1 0 1 . 7 9 7 . 5 1 5 KI 1 8 , 0 9 4 1 . 6 9 8 . 0 1 6 KI , 1 . 5 9 9 . 0 1 6 M Z 1 7 , 0 2 7 1 . 5 9 9 . 5 1 7 B N 6 1 . 0 1 0 0 . 0 1 7 B N 5 , 6 4 1 . 5 1 0 0 . 0
計
I 6 0 2
I
計i 1 . 1 s 1 . 2 0 s I S t a t i s t i s c h e s Jahrbuch Deutscher Gemeinden, Deutscher S t a d t e t a g , K o l n , 1 9 7 7
より作成。*従業員
5 0 0
人以上の第2
次産業経営体をとりあげた。*
S a a r b r i i c k e n (SB)
は上記統計書において欠落している。*本統計では建設,公営の電気,ガス,水道関係企業体は含まれていない。
企業管理機構の集中—とりわけ首都圏への―と対比して,西ドイツの企業分布はいかなる構 成をもっているか。
( b ) ― 1
工 業 分 布 と 工 業 ボ テ ン シ ャ リ テ ィ第
17
表 は 対 象 都 市 別 の 第2
次 産 業 の 実 勢 を 示 し た も の で あ る 。 こ こ で は 従 業 員500
名 以 上 の 第‑ 5 ‑
関西大学『社会学部紀要」第
1 5
巻第1
号2
次産業(ただし,建設,公営の電気,ガス,水道関係企業体を除く)の経営体数,従業員数を 表わしたものである。対象都市の工業分布はきわめて拡散性を示していることが分る。経営体数においても,そこに 従事する従業員総数においても,日本における大都市圏への過度集中と比較して,分布の移行は きわめてなだらかであり,大きな断層はない。ポンは経営体数においても,従業者数においても 最低であり,政治都市としての機能以外には,
1
つの地方都市でしかないことを物語っている。ただし,西ベルリン,ハンプルク,ミュンヘンの 3大百万都市大企業の集積度が高いが,これも 人口規模にほぼ正比例したものであり,突出的な偏在を示たものではない。ミュンヘンはこれま で通常,文化都市,管理中枢都市として一般に知られてきたが,工業都市としても,あなどりが た<'大企業の経営体数において第 3位従事者総数においては第.1位を占め,西独有数の工業都 市であることを見逃してはならない。
( b ) ― 2
第3
次産業領域工業の実勢は必らずしも,都市との間に一義的関連をもたない。いうまでもなく,工業は立地 因子に拘束される。とりわけ,資源や位置の条件によって,より大きく規定される外来素材工業 や地方資源的な工業は必らずしも本来の都市機能と結びつかない。もちろん工業の発展は,しば しば都市形成を先導し,管理とサービスという都市本来の機能を刺激,推進する一面,これらの 機能に牽引され,都市の発展に随伴しつつ,自らの生産性を高めていくのである。この両者の相 互規定的関係は複雑であるが,少くとも都市と工業の規模が一義的に相即しないことは自明であ る。経済企業の中で,都市機能と直接に相即するのは第 3次産業一ー管理・サービス部門である。
都市の中心機能を測定する指標として,しばしばこの第 3次産業が用いられる理由もここにある。
西独都市の首都性の検出という本研究の意図からすれば,対象都市に規模大なる第3次産業機関 がどの程度,集積しているかが
1
つの指標となると思われる。以下, 「大企業ハンドプック』から対象都市における第
3
次産業機関を算出してみておく。第
1 8
表から第3
次産業の領域においても,西独諸都市は相互に大幅な都市間分業を形成してい る事実が確認できる。まず全体的な傾向をみると,ハンプルクとフランクフルトは経済的領域に おいて補完的な地位にある(具体的には商業と貿易に対する交通・運輸および金融・信用におい て)。 この二大経済都市を頂点としながら,ミュンヘン,デュッセルドルフ,ケルンの比重が大 きい。政治行政首都ボンが大中企業の立地において,最下位に位置すること,東京との対比にお いて注目したい。個別的にみれば,港湾都市ハンプルクは貿易企業の率がプレーメンと並んで,異常に高く,主 導的な貿易中心地となっていることを示す。フランクフルトは金融・信用の頷域において機関の 絶対量,都市内相対比率において圧倒的な比重をもつ。周知のごとく,フランクフルトにはわが 国の日銀に当たる連邦銀行が所在し, ドイツ・マルクもフランクフルト取引所において取引され ている。因みに,
AmericanBanker
調べによる預金規模を基準とした世界の巨大銀行ランキン第
18
表対象都市別第3次産業大企業の分布ー
7
ー 都~巴]商業貿易1
交通・運輸金融・信用保険!不動産i
テ嵐出版I
+ー危應計(%)HH 99(19. 3) 161(31. 4) 82(16.0) 52(10.2) 38(7.4) 13(2.5) 4(0.8) 9(1. 8) 54(10.5) 512(100) F 92(27.5) 21(6. 3) 27(8.1) 76(22.8) 11(3. 3) 13(3.9) 5(1.5) 15(4.5) 74(22.2) 334(II) D 115(39. 4) 29(9.9) 17(5.8) 25(8.6) 10(3.4) 7(2.4) 2(0. 7) 15(5.1) 72(29. 7) 292(II) M 60(27.0) 5(2.3) 12(5.4) 36(16.2) 36(16.2) 13(5.9) 4(1.8) 22(9.9) 34(15.3) 222(II) WB 68(35.6) 6(3. 1) 13(6.8) 28(14.7) 14(7.3) 17(8.9) 5(2.6) 13(6.8) 27(14.1) 191(II) K 63(35.2) 6(3.4) 11(6. 1) 22(12.3) 34(19.0) 8(4.5) 3(1. 7) 8(4.5) 24(13.4) 179(,,) s 55(39.0) 4(2.8) 11(7.8) 15(10.6) 11(7. 8) 7(4.9) 3(2.1) 24(17.0) 11(7. 8) 141(II) HB 23(16.4) 48(34.3) 35(25.0) 14(10.0) 4(2.9) 5(3.6) 2(1. 4) 1(0.7) 8(5. 7) 140(II) E 71(53.4) 7(5.3) 11(8. 3) 3(2.3) 0(0) 2(1. 5) 2(1. 5) 2(1. 5) 35(26.3) 133(,,) H 25(29.7) 3(3.6) 11 (13. 1) 10(11. 9) 18(21. 4) 4(4.8) 0(0) 2(2.4) 11(13. 1) 84(11) DU 29(35.4) 0(0) 29(35.4) 4(4.9) 0(0) 1 (1. 2) 1(1. 2) 0(0) 18(21. 9) 82(II) DO 42(58.3) 5(6. 9) 2(2.8) 4(5.6) 7(9. 7) 1 (1. 3) 0(0) 3(4.2) 8(11.1) 72(II) N 27(50.9) 0(0) 6(11. 3) 1(1. 9) 6(11. 3) 3(5.7) 1(1. 9) 4(7.5) 5(9.4) 53(II) SB 28(56.0) 1(2.0) 1(2.0) 6(12.0) 8(16.0) 0(0) 0(0) 2(4.0) 4(8.0) 50(,,) WI 17(39.6) 0(0) 0(0) 2(4.7) 8(18.6) 1(2.3) 0(0) 8(18.6) 7(16.3) 43(,,) KI 14(38.9) 0(0) 6(16.7) 8(22.2) 2(5.6) 1(2.8) 0(0) 0(0) 5(13.9) 36(,,) BN 8(28.6) 1(3.6) 3(10.7) 3(10.7) 2(7. 1) 1(3.6) 1(3.6) 4(14.3) 5(17.9) 28(II) MZ 8(32.0) 0(0) 0(0) 9(36.0) 1(4.0) 1(4.0) 1(4.0) 3(12.0) 2(18.0) 25(11)
計844(32. 2) 291(11. 3) I 211c10. 6) I 318(12. 2) 210c 8. o) 98(3. 7) 1 34(1. 3) I 135(5. 2) I 404(15. 4) 12. 617(,,)
耳
1塁塁さ9 や商吝 9
荼芸活 3踪亘薔︵国︶︵苓お︶
Handbuch der GroBunternehmen 1975 (Verlag Hoppenstadt & Co. Darmstadt)
本大企業年鑑では約20,000
の大中企業が網羅されているが選択規準としては,①従業員200
人以上,③資本金500, OOODM
以上,⑧年商(Jahresumsatz) 5,000, OOODM
以上の3
つの指標が用いられている。関西大学『社会学部紀要」第
1 5
巻第1
号グ表によると,上位
1 0 0
銀行に入る大銀行が西ドイツでは1 4
銀行あり,その内6
銀行( 4 3
形)が フランクフルトに集中している。(日本の場合,上位1 0 0
銀行の中に,24
銀行が入り,東京に1 5
銀行,6 3
彩が本店を構えている)。 保険部分ではケルンの卓越がみられ,それに次いで,ハンプ ルク,ミュンヘンにも,ある程度の集中がみられる。交通・運輸関係でみれば,量的にはハンプ ルク,プレーメン,デュイスバーク,フランクフルトが他都市を圧倒しているが,内部的な比率 関係からいえば,デュイスバーク( 3 5
形), プレーメン(25%)
が卓越し,河水路交通の積換基 点として交通の要衡を占めた都市であることが分る。デュッセルドルフは)レール工業地帯のマネ ージメント機関が集中しているとともに,商社,卸売部門の集積が特徴的である(日本の貿易商 社の集中はつとに有名である)。 加えて,パリと並んで,ファッションのセンターであることも 近年,広く知られるところとなった。出版関係ではシュツッツガルトが量的,比率的に最高位を占め,出版業とくに学術雑誌の出版地という点で,西ドイツでも随一の地位をもっている。
このように,西独主要都市群の間に,第 3次産業においても一種の都市間分業ともいうべき主 要機能の分散がみられることは,西独都市の多極性を示す新しい資料を付け加えたことになる。
もちろん,一定の経済領域における企業の数をもって,このセククーでの当該都市の地域的放射 力を一義的に示すことはできない。そのためには,たとえば特定企業の売上げといったような活 動基準と結びついた指標が求められよう。今後の課題である。
(c) 都市収支の構成
都市の産業活動について,主として都市の外部に働らきかける活動とその結果として内部に新 しい需要が生じ,それを充足するための活動という二種類がある。これについては,すでに
1 9 2 0
年 代より都市経済,都市計画,都市地理などの分野で並行的にいろいろな研究が進められてきた1 8 )
0いわゆる基盤
( b a s i c ) ,
非基盤( n o n ‑ b a s i c )
の理論である。基盤産業は別名,移出産業ともよばれ,都市の外部の需要にこたえて財貨,サービスを提供し,
その対価として域外から収入を獲得する産業である。
都市を分類する用語として,観光都市,工業都市,学術都市,貿易都市,政治都市などがある。
これらはその都市の中心的な移出産業に着目した呼称である。基盤産業は都市営力のきめ手であ り,この移出産業の活況,沈滞が都市の盛衰を左右する。
それに対して,都市の
non‑basic
な産業活動は都市の内部で完結,終了する活動であり,都市 経済の収源としては直接には,何物ももたらさないが,1
つにはb a s i c
な活動が直接必要とする 各種事業活動が営まれるという意味で,他方,b a s i c
な産業部門の従事人口の消費生活が支えら1 8 ) C. D.
ダンカンらはある特定の都市の諸機関が活用できる信用量を指標として,アメリカ大都市の分析 を試みている。彼らは金融という視点から,国全体に対する一都市の信用上の比重,都市の人口比との 比率関係,その都市への信用の流入と流出の割合などを計量した。そこから,信用提供者としての都市 の超地城的な力量とその影響範囲の調査をとおして,合衆国におけるニューヨークの支配的位置を明ら かにしている。0 . D . Duncan a . o . , M e t r o p o l i s and R e g i o n , B a l t i m o r e 1 9 6 1 p . 1 0 5 ‑ 1 2 1
西独都市の多極的分権構成の諸問題
(Ill)(神谷)
れるという意味で basic な活動体にとって不可欠である。
都市にとって基盤産業はいうなれば列車にとっての機関車である。この場合,客車や貨車は非 基盤産業であるのはいうまでもない。機関車の馬力の大きさは牽引される客車や貨車の多少を左 右する。それはそのまま列車の規模ともなる。このように列車は機関車の力量によって,規模や スビードが規定されるように,都市も基盤産業のあり方によって,その特性や営力が決定されて いくと考えられる。これが経済的ベースの理論といわれるものである。
経済基盤説については,これまですでに,いくつかの批判的見解がある。そうした理論的問題 点のほかにも,実際的に,基盤,非基盤両産業の区別それ自体も容易ではない。都市にある現実 の機関の活動は多くの場合,地域外指向と地域内指向を併存しており,所与の資料から,両者を どう分離するかという技術的問題もある。
ここではとりあえず,次の算式で西独主要諸都市における基盤,非基盤人口を算出し,基盤産 業のあり方によって,各都市の特性_西ドイツ全体もしくは広域的培養圏における各都市の位 置づけーーについて考察してみたい 1 9 )
0A 都市
i部門基盤産業人口 =A 都市
i部門産業人口
-A 都市 2•
3 次産業人口
x国家 i 部門産業人口 国家全産業人口
第 1 9 表は対象都市別に基盤,非基盤産業人口を算出したものである。 (ただし,西ドイツにお ける産業別人口統計は第 1 次部門, 第 2 次部門,商業・交通部門, その他部門の 4 分類からな り 2 0 ) , それ以上の細部門の統計数値はえられなかった。なお,西ドイツの国勢調査は日本と異な り,約 1 0 年に 1 回の割合で施行せられるが,本調査の段階では, 1 9 7 0 年 5
月2 7 日の国勢調査の資 料が入手できたのみである)。
1 9 )基盤,非基盤両産業を計量的に測定する方法については諸説があるので,ここではホイト ( H .Hoyt) の産業従来人口を指標とした計算方法を変型した渡辺良雄の手法によった。
国家 i 部門産業人口
この算式において A 都市 2•
3 次産業人口 X 国家全産業人口 は A 都市 i 部門従事人口の期待 値であり,いうなれば A 都市における i 部門の自給的消費担当部分=非基盤的従事人口部分を表わすも のである。計算値に負値が出る場合,当該都市のその部門においては余剰生産どころか自給相当分さえ 行なわれず,その都市の外部から輸入していることを示す。
渡辺良雄「産業の地域構造」(岩井,加藤,柴田,八島編「都市問題講座」 (I) 経済構造,
有斐閣1 9 6 5 年 ) 2 4 4 ‑ 2 4 5 頁 。
2 0 ) 西ドイツにおける産業分類はわが国とは若干異なる。国勢調査 ( V o l k s z a h l u n g ) において用いられる 各部門ごとの産業分野は次のごとくである。
第 1 次産業部門:農林業 (Land‑undF o r s t w i r t s c h a f t ) , 牧畜 ( T i e r h a l t u n g ) , 漁業 ( F i s c h e r e i ) 第 2 次産業部門:エネルギー産業 ( E n e r g i e w i r t s c h a f t ) , 水利事業 ( W a s s e r v e r s o r g u n g ) , 鉱業
(Bergbau) 加工業 ( V e r a r b e i t e n d e sG e w e r b e ) , 建設業 (Baugewerbe) 商業・交通部門:商業 ( H a n d e l ) , 交通業 ( V e r k e h r ) , 情報産業 ( N a c h r i c h t e n i i b e r m i t t l u n g ) そ の 他 部 門 : 信 用 機 関 ( K r e d i t i n s t i t u t e ) , 保険業 ( V e r s i c h e r u n g s g e w e r b e ) , サービス業
( D i e n s t l e i s t u n g e n ) , 非営利組織 ( O r g a n i s a t i o n e nohne E r w e r b s c h a r a k t e r ) , 私的家業 ( P r i v a t eH a u s h a l t e ) , 地域団体 ( G e b i e t s k o r p e r s c h a f t e n ) , 社会保障
( S o z i a l v e r s i c h e r u n g )
‑ 9 ‑
第
19
表対象都市別基盤.非基盤産業人口10
三都市人口第
2
次産業部門商業・交通部門その他部門(サービス部門) 従事人口(a)IN•B
人口(b)I
B人口(c)I c/a比従事人口(a)IN•B
人口(b)I
B人口(c)I c/a比従事人口(a)IN•B
人口(b)I
B人口(c)I c/a比 HH292,878 399,797 ‑106,919 250,103 146,347 103,756 41. 5 274,600 210,118 64,482 23.5 M 282,320 333,517 ‑ 51,197 145,383 122,085 23,298 16.0 254,335 175,284 79,052 31.1 K 174,306 189,615 ‑ 15,309 88,467 69,409 19,058 21. 5 124,987 99,654 25,333 20.3 E 136,001 133,062 2,933 2.2 65,773 48,710 17,063 25,9 70,349 69,936 413 0.6 F 205,453 262,864 ‑ 57,411 158,042 96,222 61,820 39.l 174,059 138,151 35,908 20.6 DO 133,842 121,908 11,934 8.9 55,510 44,625 10,885 19.6 59,949 64,070 ‑ 4,121 D 134,912 154,420 ‑ 19,508 75,383 56,526 18,857 25.0 105,492 81,157 24,335 23.1 s 158,621 159,969 ‑ 1,348 65,625 58,557 7,068 10.8 102,889 84,074 18,815 18.2 DU 105,275 90,597 14,678 13.9 42,658 33,163 9,495 2.2 37,336 47,614 ‑ 10,278
HB98,780 122,454 ‑ 23,666 77,182 44,825 32,357 41. 9 74,448 64,357 10,091 13.6
H102,126 118,639 ‑ 16,513 55,406 43,428 11,978 21. 6 85,083 62,352 22,731 26.7
N124,392 117,900 6,492 5.2 57,519 43,158 14,361 25.0 59,193 61,964 ‑ 2,771
BN31,788 56,436 ‑ 24,648 19,524 20,659 ‑ 1,135 64,099 29,661 34,438 53.7 Kl 36,244 50,469 ‑ 14,225 21,794 18,474 3,320 15.2 45,171 26,525 18,646 41. 3 `
WI41,404 55,202 ‑ 13,798
ーニ22,688 20,207 2,481 10.9 48,796 29,012 19,784 40.5
SB16,412 24,589 ‑ 8,177 13,763 9,001 4,762 34.6 20,109 12,923 7,186 35. 7 MZ 28,855 36,052 ‑ 7,197 14,755 13,197 1,558 10.6 30,116 18,948 11,168 37.1
... WB ・・・・・・・・・・・・ …・416,389 『.. 466,834・・・・・‑ . 50,445・・・・・・・̲ .... 『 ・・200. 062・・・・・170. 886・・・・・・・・・・・29. 176・・・・・14. 6・・r・338. 220・r・245. 350 r・・・・・・92. 870 r・27. 5・・・
涯耳汁柿「芹珈柿蛍裕演」瀬
15~ffi
1~・
(従事人口(a):当該産業部門従事人口
N•B
人口(bl:
非基盤人口B
人口(c):
基盤人口 c/a比:各部門従事人口に対する対外的結合部分人口(B)の百分比)各都市別統計資料より作成。
西独都市の多極的分権構成の諸問題(皿)(神谷)
各部門従事人口に対する対外的結合部分人口
(B
人口)の比率を都市別にみると,第2
次産業 部門では,ルール3都市エッセン, ドルトムント,デュイスバークおよびニュルンベルクを除い て,他の1 4
都市はいずれも都市収支において,マイナスを示していることがわかる。都市にとっ て,生産機能は従属的地位を占めるにすぎないことは,しばしば指摘されるが,西独主要都市群 についても例外ではない。みやこ いら
都市が都=管理,市=サービスの複合をもって,その本質とするならば,力点はむしろ第
3
次 産業にかかる。商業・交通部門ではハンプルク,プレーメンの圧倒的卓越がみられる。貿易都市 と港湾都市が相加して,この部門において,他都市を大きく凌駕したものである。それに次ぐフ ランクフルトも,また,金融的,経済的中心地であるとともに,西独最大の空路,鉄道中心地で あり,この部門の卓越を裏書きしている。ルール工業都市群はこの部門では相対的に弱く,デュ イスバークでは,ほとんど自給的消費部分 (N• B人口)を越えていない。ボンはこの領域でも,収支不足を示し,他都市との共通性も欠落している。
その他産業部門においては,第
2
次産業部門と裏腹に,工業都市群において,収支不足を示す か(ドルトムント,デュイスバーク,ニュルンベルク), 収支はほぽ掏衡している(エッセンの 場合)。 一般的に,その他部門は都市の管理的業務に付随する業態が多く,したがって,行政的 に特化した諸都市に,その比重が大きい。ボンを頂点として,キール,ヴィスバーデン,マイン ツなど,第2
次部門も,商業・交通部門も弱体なところに,この部門での対外的結合部分人口の 割合が高くなっている。ボンを除いてこれらの諸都市を積極的に,行政・管理都市と規定するこ とは適当ではない。むしろ,工業や商業・交通の領域において,いちじるしく劣っている結果と して,この部門の卓越が目立つにすぎないのである。したがって,各部門従事人口に対する対外 的結合部分人口の比率から,各都市のその部門における域外支配力なり,中心性の強さを推定す ることはできない。この比率はあくまでその都市の特化度を示すものであり,当該都市の基盤性 は対外的結合部分人口の絶対数で測るぺきである。それによれば,その他部門では西ベルリン,ミュンヘン,ハンプルク,フランクフルトが卓越し,ボンはそれに次ぐ。商業・交通部門ではハ ンプルクの卓越した基盤人口に次いで,フランクフルトが位置し,プレーメンは第
3
位になる。比率的には,はるかに低いミュンヘンが絶対数においては第
4
位にあって,対外的結合人口がこ の部門においてもきわめて多いことを示している。経済機能についての西独都市の状況を総括する。西独都市の中で,経済領域での双壁はハンプ ルクとフランクフルトである。前者は貿易,商業部門において,後者は金融,交通,経済上位団 体活動において,西ドイツ経済の両翼として,二眼レフ的な分業関係を保っている。ミュンヘン,
デュッセルドルフ,ケルンは一段階落ちながら,しかも相互に分業的補完的に,国民経済の各分 野でそれぞれの極を構成している。ミュンヘンの先端技術や情報産業,デュッセルドルフの流通,
‑ 11 ‑
関西大学「社会学部紀要」第
1 5
巻第1
号ファッション産業,ケルンの保険業などは量,質ともに他都市を凌鴛する。西ベルリンは陸の孤 島として,西独経済の分業関係の中では,必らずしも確固とした位置を占めてはいないが,工業 力において,また,管理機能と結びついたサービス的部門において高い経済的ポテンシャリティ を保っている。
このように,経済の分野においても,西独都市は多極的な分権構成を示し,しかも,その間に,
分業的な補完関係を保ちながら,有機的な都市ネット・ワークを造りあげていることが確認できる。
(3)
文化的機能—形相維持機関を中心として—社会システムの個々の成員に,全社会的価値を中継する機能は,通常,文化的機関といわれる ものによって担当される。ここでは大学,博物館,劇場,新聞社,見本市の
5
機関について,都 市別の分布を辿っておく。( a )
大 学ここでは専門大学
(Fachhochschule)
と綜合大学(Universitat)
を包括して大学として扱 う。大学は教育機関として,社会化の高次の段階を担当するのみならず,加えて第一次的には現 代科学の制度化された枠組みを構成している。社会化のインパルスのみならず,新しい認識の開 発との関連において,規範や価値の創造をもたらす動因も,しばしばこの高等教育機関から発す る。西ドイツの大学都市の間にも,さまざまな差異があり,ここでとりあげた対象都市の中,4
第
2 0
表対象都市別大学生数(留学生数)ー1 9 8 0 / 8 1
冬期登録生数一都 市
I
総 数I
比率 1 累
積喩阻腐望はI I
綜合大学総数1
留学生数i
留学生劣W B 7 6 , 7 0 0 1 5 . 1 1 5 . 1 4 0 . 4 6 6 , 5 2 1 7 , 2 2 4 1 0 . 9 M 7 4 , 9 0 9 1 4 . 7 2 9 . 8 5 7 . 7 5 8 , 5 5 6 3 , 5 8 3 6 . 1 K 5 3 , 3 6 9 1 0 . 5 4 0 . 3 5 4 . 6 3 5 , 9 1 1 1 , 7 6 7 4 . 9 H H 4 9 , 7 1 8 9 . 8 5 0 . 1 3 0 . 2 3 6 , 4 9 9 2 , 0 2 8 5 . 6 B N 3 4 , 3 9 9 6 . 8 5 6 . 9 1 1 9 . 8 3 4 , 3 9 9 1 . 3 3 0 3 . 4 F 3 0 , 0 2 8 5 . 9 6 2 . 8 4 7 . 7 2 4 , 6 8 3 1 , 9 2 3 7 . 8 H 2 7 , 4 4 6 5 . 4 6 8 . 2 5 1 . 3 1 9 , 2 6 9 8 4 8 4 . 4 MZ 2 3 , 0 6 9 4 . 5 7 2 . 7 1 2 3 . 6 2 0 , 6 7 5 9 5 6 4 . 6
s 2 2 , 5 9 1 4 . 6 7 7 . 3 3 8 . 8 1 3 , 0 1 4 1 , 1 6 6 9 . 0 D O 2 0 , 1 2 0 4 . 0 8 1 . 3 3 3 . 0 1 4 , 3 1 2 4 7 2 3 . 3 D 1 9 , 8 3 3 3 . 9 8 5 . 2 3 3 . 5 1 2 , 1 3 0 6 5 9 5 . 4 KI 1 8 , 2 4 0 3 . 6 8 8 . 8 7 2 . 8 1 4 , 0 3 9 7 0 4 5 . 0
E 1 5 , 3 3 6 3 . 0 9 1 . 8 2 3 . 6
S B 1 4 , 1 5 7 2 . 8 9 4 . 6 7 3 . 1 1 2 , 0 2 9 8 5 0 7 . 1 H B 1 1 , 3 4 2 2 . 2 9 6 . 8 2 0 . 4 7 , 2 1 1 4 4 3 6 . 1 D U 8 , 0 0 1 1 . 6 9 8 . 4 1 4 . 3
N 5 , 3 9 9 1 . 1 9 9 . 5 1 1 . 2
WI 4 , 3 1 7 0 . 8 1 0 0 1 5 . 8
S t a t i s t i s c h e s Jahrbuch D e u t s c h e r Gemeinden 1 9 8 1 より作成。
西独都市の多極的分権構成の諸問題 c m )c
神谷)つの都市(エッセン, デュイスバーク, ニュルンベルク, ヴィスバーデン)において,綜合大学 がない。一方, ここでとりあげていない都市で重要な大学都市もある。
対象都市別に大学生数をみると第 2 0 表のごとくである。西ベルリンとミュンヘンが突出してそ の数が大きく,ケルン,ハンプルクに 2 万の差をつけている。人口規模を考慮すれば, ミュンヘ ンが第一級の大学都市であることを示している。ただし,対人口比においてはマインツ, ボンの 比率がもっとも高く,他の機能の弱さから,都市における大学の相対的比重の高さを表わすもの といえよう
p周知のごとく, ドイツには古くから,純粋な大学都市が発達しており, たとえばハ イデルベルク, チュービンゲン,ゲッチンゲン, マールブルク, エアランゲン, フライプルクな どの諸都市における学生数の対人口比をとってみれば,
ない。
さらにもっと高くなることは想像に難く
留学生の絶対数は西ベルリンにおいて, もっとも高く, ミュンヘンがこれに次ぐ。大学規模と 並行関係にあるが,大学のもつ一種の対外的な基盤機能を示すものであり,それは同時に当該都 市の基盤機能を表わすものともいえる。西ベルリンを除けば,西ドイツ領内において,
ンが文化的機能において卓越した都市であることが理解できよう。
ミュンヘ
もちろん,西ベルリン, ミュンヘンの突出といっても, それは相対的なものにすぎず,第 2 1 表
第
2 1
表都市圏別大学生数の分布(日本)
三大都市園および地方園の全国に占める割合(%)
東 京 圏 東 京 区 部 大 阪 圏
1大 阪 市 名 古 屋 圏
1名古屋市
I扁各9靡
I饗 方 胃 5 3 . 2 4 9 . 4 1 9 . 6 4 . 2 6 . 1 5 . 0 7 8 . 9 2 1 . 1 5 0 . 8 4 5 . 6 1 9 . 7 4 . 0 6 . 7 5 . 8 7 7 . 2 2 2 . 8 4 9 . 5 4 3 . 8 2 0 . 6 3 . 3 7 . 0 5 . 9 7 7 . 1 2 2 . 9 資料:国土庁計画・調整局「中枢管理機能の地域的配置と昭和6 0 年推計」(昭和5 0 年度)より。
学 生 数 ︵ 四 年 制 ︶
年次
4 1 4 5 4 9
でみるような日本の状況と比較するならば,分散性は,はるかにいちじるしい。数字が示すよう に,東京区部は全国大学生数の半分近くを収容しており, そのシェアーは漸減の傾向にあるとは いえ傑出したものがある。興味ある数字は大阪である。大阪園としては対全国比 2 割を占めなが ら,大阪市自身は 3 4 % の比重を示すにすぎず,名古屋市をも下廻ることである。業務に特化 し,研究教育は京都もしくは周辺都市に委ねた大阪の実態がうかがわれる。このような日本の大 学の空間的偏在性と比較するとき,西ドイツの多核的な分散性は日本の今後の大学や研究機関の 地域的配置政策に一つの示唆となるにちがいない。
図
情報化社会にあって図書館がもつ文化的意義については疑問の余地はない,都市における図書 ( b )
書館
館の分布,貸出冊数などは都市の文化的活動の指標となる。以下,西ドイツの現状をわが国と対 比して, その実勢を追ってみる。
‑ 1 3 ‑
関西大学『社会学部紀要」第
1 5
巻第1
号第
2 2
表 対象都市別公立図書館貸出冊数都 市 貸 出 冊 数 比 率 累 積
W B 1 1 , 9 2 6 , 7 7 5 2 2 . 0 22 0 H H 8 , 0 3 7 , 9 5 4 1 4 . 8 3 6 . 8
M 6 , 0 5 1 , 5 6 6 1 1 . 1 4 7 . 9 D U 3 , 9 7 2 , 0 4 2 7 . 3 5 5 . 2
H 2 , 9 9 0 , 5 7 0 5 . 5 6 0 . 7 K 2 , 8 5 6 , 6 6 2 5 . 3 6 6 . 0 H B 2 , 8 0 7 , 9 1 5 5 . 2 7 1 . 2
E 2 , 5 0 3 , 0 4 7 4 . 6 7 5 . 8 F 2 , 1 7 4 , 3 9 9 4 . 0 7 9 . 8 D 2 , 1 0 5 , 3 4 4 3 . 9 8 3 . 7 D O 2 , 0 6 7 , 6 5 8 3 . 8 8 7 . 5
s 2 , 0 5 3 , 1 0 0 3 . 8 9 1 . 3
N 1 , 1 0 8 , 6 7 6 2 . 0 9 3 . 3 KI 1 . 0 7 5 , 1 2 4 2 . 0 9 5 . 3 W I 1 , 0 0 4 , 4 5 7 1 . 8 9 7 . 1 B N 9 2 0 , 8 9 0 l . 7 9 8 . 8 M Z 3 7 0 , 1 0 8 0 . 7 9 9 . 5 S B 2 9 2 , 0 0 9 0 . 5 1 0 0 . 0
計
5 4 , 3 1 8 , 2 9 6 1 0 0 . 0 S t a t i s c h e s Jahrbuch Deutscher Gemeinden 1 9 7 7
より作成。第
2 3
表 日本都市の公共図書館別蔵書数 蔵 書 数(単位1 , 0 0 0
冊)都 市
立 1 都道府県立 市 立
I 比
率累
積国 計
東京
( 2 3
区)4 , 4 1 1 , 9 2 2 1 , 1 6 2 9 1 2 6 , 4 8 5 , 9 2 2 3 2 . 7 3 2 . 7 名 古 屋 4 0 8 1 , 8 3 0 2 , 2 3 8 1 1 . 3 4 4 . 0
大 阪1 , 0 8 1 7 8 3 1 , 8 6 4 9 . 4 5 3 . 4
横 浜5 4 5 9 5 4 1 , 4 9 9 7 . 6 6 1 . 0
札幌 4 3 0 6 1 7 1 , 4 7 7 7 . 5 6 8 . 5 北 九 州 8 7 9 8 7 9 4 . 4 7 2 . 9
凩
‑・‑ 都
5 9 4 2 7 9 8 7 3 4 . 4 7 7 . 3 神
戸1 2 2 7 2 5 8 4 7 4 . 3 8 1 . 6 福
岡2 9 1 4 9 4 7 8 5 4 . 0 8 5 . 6
H I
崎2 3 3 4 3 4 6 6 7 3 . 4 8 9 . 0 広
島1 9 1 4 4 7 6 3 8 3 . 2 9 2 . 2
金 沢2 9 3 3 1 1 6 0 9 3 . 1 9 5 . 3
仙 台3 6 2 2 4 4 6 0 6 3 . 1 9 8 . 4
晶. 松
2 1 0 1 3 8 3 4 8 1 . 8 1 0 0
「日本の図書館
1 9 8 2 」
ci=i本図書館協会)より作成。西独都市の多極的分権構成の諸問題
(III) (神谷)第22 表は対象都市の公立図書館における貸出冊 (EntlieheneBande) の総数である
21)。 西 ベ ルリンを頂点として,以下,ハンブルク,ミュンヘンと続く。ほぽ都市人口規模に比例した配列 を示すとみてよい。ただ,その移行は漸進的であり,明確な断層はみられない。工業都市デュィ スバークが文化都市ミュンヘンに次ぐところがやや目立つ程度である。
日本との対比を第23 表でみれば東京の卓越がここにも顕著に表われている。その根拠は国立国 会図書館の存在にある。これを除けば都立,区立を合計したものは名古屋,大阪と大差はない。
国心的機能の集積,ここにこそ東京の肥大化の渕源がある。図書館ひとつをとってもこの事実を 裏書きしている。
(c)
博 物 館
12 世紀以来,「石の文化」に生きてきたヨーロッパ人にとって,歴史的思考とその結果として の地方と地方文化への志向性は自明のことである。そしてその事物的表現が博物館の整備である。
公共的諸施設のうち,公園とならんで博物館の充実は,わが国都市と異なるもっとも顕著なヨー 第 2 4 表対象都市別博物館数,入場者数
種
別
都 市 総 数
綜 合 I K G N A s I H その他 入場者総数
W B 5 5 2 7 4 2 2 ,
114 , 4 9 7 , 2 2 5 M 3 0 1 8 5 3 1 1 2 4 , 5 0 0 , 7 7 4 F 2 2 3 , 2 4 4 8 9 4 , 9 4 0
s 2 0 3 4 2 4 6 1 9 2 2 , 2 6 8
D 1 5 8 2 2 3 7 7 9 , 4 0 4 K 1 2 7 2 1 2 3 , 4 4 5 , 8 5 9 B N , 3 3 2 1 4 8 1 , 5 3 7 N , 5 1 1 1 1 8 3 2 , 0 9 8
H H 8 4 4 1 , 1 5 5 , 3 8 9
KI 7 1 * 3 1 1 1 2 2 5 , 3 5 0
H 6 4 2 6 7 8 , 5 0 4
D O 5 2 1 1 1 1 4 8 , 8 2 4
S B 5 3 1 1 1 2 4 , 4 9 4
M Z 5 2 1 1 1 4 6 1 , 8 9 6 D U 5 2 1 1 1 1 8 5 , 4 2 2
H B 5 2 1 2 5 9 0 , 6 4 2
E 4 1 1 2 2 0 0 , 6 2 1
W I 1 1 * * 9 8 , 0 0 5
* KGS * * KGNSH
K : Kunst G : Kultur und G e s c h i c h t e N: N a t u r w i s s e n s c h a f t A: A r b e i t S: Spezialsammulungen H: Heimatmuseum S t a t i s t i s c h e s Jahrbuch Deutscher Gemeinden 1 9 8 1 より作成
2 1 ) S t a t i s t i s c h e s Jahrbuch Deutscher Gemeindenの 1 9 7 8 年以降版には公立図書館関係の統計が掲載さ れていない。 1 9 7 7 年版が最新の資料である。ただし,貸出の定義は本書にはみられず,館内,館外を総 計したものと推定される。
—- 1 5 ‑
関西大学「社会学部紀要」第
1 5
巻第1
号ロッパ都市の特質かもしれない。この領域では日本は比較の対象とならない。
第
2 4
表は西独主要都市における博物館の数および入場者数を示したものである。館数そのもの では西ベルリンが最大であるが,入場者総数はミュンヘンがわずかながら多い。人口比較からい えば,ミュンヘンが圧倒的な卓越を示すことになる。文化的な誘引性において,ミュンヘンが示 す数値といえよう。それに対し,)レール工業地帯都市群は人口規模との関係からみて,いずれも 低位に属し(エッセン, ドルトムント,デュィスバーク), 港湾都市プレーメン,行政都市ヴィ スバーデンの地位も低い。第
2 4
表の入場者総数は当該都市にある博物館別の入場者数を総計したものであり,個別博物館 についての資料はここには示されていない。都市ごとに,博物館の利用特色がみられるが,ここ では「ドイツ自治体年鑑( S t a t i s t i s c h e s J a h r b u c h D e u t s c h e r Gemeinden)
」の原資料から,それを要約しておく。シュツッツガルトとデュッセルドルフは技術,自然科学ならびに民族学的 博物館に最大の入場者を迎えており,ケルンでは歴史博物館が最多数で,それとならんで芸術関 係もほぼそれに比肩する。ハンプ)レクとフランクフルトでは美術関係の博物館がもっとも誘引的 である。この点はミュンヘンも同様であるが,ミュンヘンではそれとならんで自然科学,技術史 関係博物館が西ドイツ最大の入場者を集めている(有名な「ドイツ博物館」
D e u t s c h e sMuseum
は年間1 , 4 4 0 , 3 1 4
人ー1 9 8 0
年ーの入場者を迎えている)。( d )
劇 場ヨーロッバにおいて劇場が社会において果す機能は,わが国の比ではない。それは単に,美的 価値の提供を越える機能を果している。シラーはかつて,劇場をもって「道徳的営造物 (mora‑
l i s c h e A n s t a l t e n )
」 とよんだが,これは劇場において規範的な形で,一般大衆に行動モデルを 提示してきたからにほかならない。劇場は支配的な諸規範が視覚化され,伝統的価値が培養され るのみならず,さらには既成のモデルの欠陥や問題点や新しい規範の可能性も,そこで模索され る場ともなる。同時にまた,劇場は社会結合をいちじるしく阻害する可能性のある,さまざまな 葛藤が,この中で儀式化され,その結果それが克服されうるところともなるのである。その意味 で,劇場は価値の媒介や変容と同時に,社会的統合の課題をも果しているともいえる。第
2 5
表は対象都市別の公立劇場の数および,入場者の総数を表わしたものである。ここでもミ ュンヘンの卓越が目立つ。対人口比からみても,西ベルリン,ハンプルクをはるかに凌駕し,文 化都市の性格を色濃く示す数字である。デュッセルドルフ,シュツッツガルト,ハノーファなど,地方拠点都市において,劇場数,入場者数ともに相対的に上位に位置づけられるのに対し,エッ セン,デュイスバークなどの工業都市群では最下位となる。これを座席数
1 , 0 0 0
席を基準として,大劇場の分布をみると第26表のごとくなる。
座席数