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修士学位論文

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Academic year: 2021

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(1)

修士学位論文

題名

目本産カンアオイ節植物の分子系統と送粉様式 Mo1ecu1ar Phy1ogenetics and Po11ination on

The Genusλsα〃m Section He云eア。ナγoμ(Aristo1ochiaceae)in∫apan

手旨導教授 菅原 一敬   准教授

平成 23年 1月 10目  提出

首都大学東京大学院

理工学研究科 生命科学専攻

学修番号 10881312

氏 名 後藤 なな

(2)

要旨

目次

  日本語.....

  Eng1ish・__..

I.はじめ」.........

■.材料と方法

    ユ.分子系統学的解析..........

    2.奄美大島固有カンアオイ節2種の訪花昆虫相調査..

皿.結果

    1、日本産カンアオイ節植物の分子系統......................

    2.奄美大島固有カンアオイ節2種の訪花昆虫と開花ステージ.、

w.考察

    1.日本産カンアオイ節植物の系統関係と種分化プロセス.......

    z日本産㌣アオイ節植物の送粉様式……・

V1今後の課題.............

w.まとめ............

w.謝辞........

㎜.引用文献..

1X.図表.......

.2

.4

.7

.ユ0

.ユ4

.1ら

.20

 .23

 .27

 .29

 .30

..

A..32

 .33

 .38

1

(3)

学術論文要旨(修士(理学))

後藤 なな 日本産カンアオイ節植物の分子系統と送粉様式(要旨)

 日本列島は,世界でも有数の生物多様性ホットスポットで,様々な地域で多くの固有種 が多様に分化している.カンアオイ属(λs〃舳,ウマノスズクサ科)も日本列島で多様に 分化した植物の一つである.この属は,北半球に約!30種が分布し,花形態や分子系統に 基づいてさらに4節(secせ。nλ5舳m,Geo亡e切舳ノλs{鵬舳m,Hefeγo士仰α)に分類される.そ の一つはカンアオイ節(sect.He士emf岬α)で,合着した薯筒,そして隆起した嚢を薯筒内壁 にもつことなどで特徴づけられるが,日本での種分化が特に著しく,50種ほどがこれまで に報告されている.これらは日本を舞台に多様に分化したと考えられるため,その種分化 のプロセスを理解することは日本のフロラ形成を理解する上でも重要セあると考えられる.

しかし,日本産カンアオイ節植物については,種間の系統についての課題を含め,いまだ 多くの課題が残されている.そこで,本研究では葉緑体DNAlを用いて日本産カンアオイ節 植物諸種の」分子系統解析と訪花昆虫相の野外観察を行い,日本産カンアオイ節植物の種分 化のプロセスについての考察とその送粉システムの解明を試みた.

 カンアオイ節内の種間の系統関係については一部の種について,核リボゾームのITS領 域を用いた分子系統解析が進められてきたが,日本産の多くの種についてはいまだ解析が 行われず,その系統関係も不明である.そこで,まず日本産カンアオイ節の種について網 羅的なサンプリングを行い,葉緑体DNAのコーディング領域であるm耐Kとノンコーディ ンク領域である士mKイントロン,舳LイmPの合計3088bpを用いた分子系統解析を行った.

解析においては,日本産カンアオイ42種2亜種14変種と海外産種6種,外洋としてA.

cm肋舳、λ.cm∂紐用m、λ.5肋。Z肋を用いた.その結果,台湾の3種を含めた南西諸島と九 州の一部の種のグレード,そして本州・四国・九州の一部の種を中心としたグレードの2 つのまとまりが見いだされた.南西諸島の種はいずれも島ごとにグレードを形成し,本州・

      2

(4)

四国の諸種に比べ大きな変異がみられたのに対し,本州・四国の種は単系統にまとまった

.ものの遺伝的変異はほとんどみられなかった.また,一部の種では,形態的な類縁性と今 回得られた系統樹が一致しなかった.それぞれのグレードは,むしろ地理的なまとまりと

よく対応した・一方で,これらの地理的なまと辛りは,核リボソームITSによる予備的な解 析結果や染色体の核型を用いた類縁性とは対応しなかった.これらの結果より,日本産カ

ンアオイ節の系統進化において,母系ゲノムは各地で浸透性交雑の影響を受けた可能性が 考えられた.

 カンアオイ節植物が多様な花形態を保持している理由として送粉様式の多様化が予想さ れるが,送粉様式はごく一部の種についての報告があるのみである.この調査では,鹿児 島県奄美市に自生するアサドカンアオイ(λ.肋αfm舳,以降アサドと略す)とフジノカン アオイ(A〃s加。1,フジノ)の2種について訪花昆虫の調査を行った.野外で2分間間隔 のインターバル撮影に加えて,フジノについては目視による観察も行った.観察後,顕微 鏡下で花筒内部を精査し,昆虫の卵の有無と個数を記録した.採集した卵からはDNA抽出

を行い,CO∫領域の塩基配列を決定しDNAバーコーディンクで昆虫の種類を同定した.ア サドでは,花筒内部に平均59個の卵が確認されたが,これらはすべてノミバエ科の一種と 高い相同性(95%)を示した.また,わずかに異なるハプロタイプが同一花筒内で確認さ れたが,これは複数回の訪花を裏付ける結果でもある.従ってアサドではノミバエ科の一 種との特異な送粉共生系が成立している可能性が考えられた.一方,フジノではハヤトビ バ工科の一種の訪花が確認されたが,花筒内部には産卵は認められなかった.タマノカン アオイなどではキノコバエ科による産卵を伴った訪花が報告されているが,今回確認され た送粉芦はそれらとは明らかに異なった種類であり,またフジノでみられたような産卵を 伴わない訪花は初確認である.このようにカンアオイ節では種類により,全く異なった双 翅目昆虫が訪花し,違った行動で送粉に関与している可能性が示唆された.今後は,開花 フェノロジーと送粉者との関連,そして送粉者の結実への影響をみるために人工授粉実験,

さらにはこの訪花者の違い生み出す要因についての解析を進めたい.

      3

(5)

Abs肚act

Nana Goto Mo1e㎝1arP止y1ogeneビ。sandPo11im丘。non

The Ge皿usAsαmm Sec丘。nHeτeγoか。μ(A㎡sto1oc止iaceae)in Jap m

∫apan is one of the biod−iversity hotspots,and there are many endemic p1ant

species on each area、λsm〃m L.(Aristo1ochiaceae)is aユso one of the diversified−species in

∫apan.This genus,dis位ibuted in the Northem Hemisphere,comprises about100species、

and has taxonomica11ybeen d−ivided into four sections:λs〃舳s.str.、Geo亡e〃切m、λsゴ卿〃m、

Hefeγo亡γoρα。The sect.He士eγo亡γo〃is morpho1ogicaIIy characterized by having cup−shaped

f1owers md re七。u1ated ridges on the imer surface of a ca1yx tube,but remarkab1y

d−iversifies on some f1ora1traits in the Iapanese Archipe1ago.Approximate1y50species are

㎞own in this sec廿。n in Iapan.It is important to c1arify the phy1ogeneせ。 re1ationships

a二mong the species of the sect.He士ero土70ραアsince the re1aせ。nships within the secせ。n sti11

remain uncertain−In the present s血蚊I exp1ored the mo1ecu1ar phy1ogeneticエe1ationship

based on chユ。rop1ast DNA d−ata of the taxa distributed−in∫apan/and−hrthermbre I

exa工nined the po11ination of肺vo representative species、ノし醐m肌切肋切n〃棚andノし.∫レゐ加。{

end−emictotheAmami−oshimaIs1and.

In phy1ogenetic ana1ysis.I used−42 spec1es (inc1uding 2 subspecies and−14

varieties)d−is位ibuted−m∫apan,6spec1es from Tdwan,China and−N.America.

Representative three species of the secせ。nλ5〃〃m s.str and一λ8切s〃〃m were used as

outgroups・To c1arify the phy1ogenetic re1ationships.ana1yses based on3088bp ch1orop1ast

DNA data from combined cord−ing region(m士ηand−non−cord−ing region(士mK and 舌mL一番mP)were cond−ucted.As a resu1t,two main c1ad−es were recognized−h the∫apa血ese

He士eγof70μspecies:one is Nalnsei c1ade inc1ud−ing the species occurring in the Ryukyu

4

(6)

IsIan−d−s,southem Kyushu㎜一d−Taiwan,and−the otherHokusei c1ade inc1ud−ingthe species in

Honshu,Shikoku,and−northem Kyushu.The Nansei c1ad−e has a rich genetic variation,

whi1e the Hokusei c1ade,which is remarkabIe in f1oraI diversi印has a1i制e genetic

…i・せ・・.Th・・pDNA・n・1y・i・・h・w・th・t・h…1・ti…hip…÷…p・・dwithth・

geographica1distdbutionbutdonotin congruentwiththemorpho1ogicaI simi1arityεmong

the species.In add−ition、冊e present resu1ts in some parts did−not in congment with the

previous one based−on the nuc1ear ribosoma1ITS regions.This d−isagreement may be

caused by the ch1oropIast capture a工nong the species exan㎡ned in the sect・He士ero切。ρα・

       For the species ofthe sectionHe亡ero亡γoμ、f1oraI diversi奴in coro11atu−be shape and

reせ。u1aせ。n pa廿em on imer surface of the coro11a血be appears to be c1ose1y associated

with the po11inaせ。n system,I examined the po11ination with two species,A肋肋mm and−

A〃ds加。{、both end−emic to the Amami−oshima Is1and一.I examined−iower visitors using

d−igitaI cεmera set by recor4ing intervaユs of two minutes at four popu1ations and−a1so

conducted direct visua1observation at one popu1aせ。n.After these observaせ。ns,I checked

the且。werhgstageheachf1ower,andcountedthen㎜berofeggsdepositedwithinthe f1ower−Moreover,DNA was ex位acted−from the eggs,and mtDNA CO工region was amp1i丘ed一。The amp1i丘ed fragment was used−for DNAbarcode approaches and based−on

this resu1ts insect taxa ovipositingセhe eggs within the f1owers were id−enti丘ed.In A

肋痂舳mバhe59eggs on average were found wi砒in a且。wer.The fragmen芋s of the CO工

工egion were quite simi1ar to a species of肋。γ肋e・肋rthermore.severaユhap1otypes weIe

f・md虹・h・699・d・p・・it・dwi・㎞・・且・V・・。・・g9・・せ・g・h・・・・・…1diff・・…Ph・・id・・

indlivid−ua1s visited−the且。weI.Therefore,A肋痂舳m has a specificエe1ationship with that

po11inator On the other hmd一、in f1owers ofλ〃∂s加。{、Sphaeroceridae sp,visited一、but this

insect did−n t oviposit.These insect po11inators are d−i笠erent丘。m the previous repoエts㎞

whichCo吻肋sp.(Mycetophi1idae)po11inatestheiowerofA切mm棚ewithegg−deposiせ。n.

      5

(7)

Based on these resu1ts,I suggest that∫ap三mese species be1onging to the section He切。士γoρα

may be d雌erent in kinds of insect po11inators among the species and that they make a

po11inationsystemspecifictothe dipterousinsectponinators・

6

(8)

I.はじめに.

 日本は,狭い国土内に多様な環境を含み,実に多様なフロラを形成し,・世界からみても 有数の生物多様性のホットスポットである(Iwatsuki,!995).固有種率の高い分類群は,

日本列島め地史や生育環境と強い関わりをもちながら,日本で独自の分化を遂げてきた可 能性が高い.これらの種分化のプロセスを理解することは,日本のフロラ形成過程を理解 する上でも非常に有用である.日本に分布する種数が多く,かつ固有率が高い分類群とし

て,ホトトギス属(ユリ科),ギボウシ属(キジカクシ科),アジサイ属(アジサイ科),チ ャルメルソウ属(ユキノシタ科)などが挙げられる(Okuyama/2010)が,カンアオイ属植物 もその一つである.

 カンアオイ属植物(λ5mmL.)は,ウマノスズクサ科に属し,北半球の暖温帯から冷温 帯にかけての地域に約ユ30種が分布する.この属は,花形態や花粉の形態,染色体数など の情報に基づいて,さらに4節(Secdonλ5舳m,Geo士m切m、ん1鵬mm,He士eκo施ρn)に分類 されることが多い(Araki,1953;Sugawar軋199ユ;Ke11y1997;Ke11プ998).カンアオイ節(sec亡 He切。切ρα)は,筒状に合着した菩筒と菩筒内壁に隆起した嚢状構造をもつなどの花形態で 特徴づけられている常緑性多年生草本で,世界に約80種が産し,層内で最も多様化をとげ た種群である.さらに特記すべきことには,世界に産するカンアオイ節植物種の半数以上

とも言える50種ほどが日本列島に固有種として分布している.カンアオイ節はまさに日本 列島で著しい種分化を遂げた一群であるという点で極めて興味深い.

 カンアオイ属の類縁性や系統関係を探る研究は多くの研究者により,さまざまな側面か ら進められてきた(Araki,1953;Sugawara,1991;Ke1Iy1997;Ke11y1998).上述した4節の分 類群としての独自性は,薯片の合着の程度,染色体数や根茎の様子,花粉の形態などの形 態学的な知見だけでなく,核リボソームのITS領域による分子系統学的解析による知見から も矛盾なく支持されている(Arah,1953;Sugawara,1981.1982.1987,1gg1二Ke11yユgg7;

Kenプ998).日本のカンアオイ節植物に関しても,花柱付属突起の有無や菩筒内壁の嚢構        7

(9)

進パターンの違い,菩筒入口に形成される口環の発達の程度,花筒上部のくびれ,子房の 位置など,この節で独自に獲得されたと思われる形質を基に,幾度となく分類が試みられ

てきた.例えば,前川(ユ953)は,上記に挙げた形質などからカンアオイ節内をさらに7 つのグループに分類した.しかし,一部のグループは単系統群を示さないことなどが予備 的な分子系統学的解析から指摘されていた(菅原,2004.2006).このように,最も種分化 を遂げているカンアオイ節植物の種間の系統関係は未だに一致した見解はなく,種分化の 謎を解明するための土台となる包括的な系統仮説は得られていない.

 カンアオイ節植物の花形態は,種を特徴づける重要な形態形質となっている.花は,上 述した花内部の嚢構造の複雑さや口環の発達具合,さらに花の大きさや開花期などの形質 を複雑に組み合わせることで,実に多様な種へ分化している.多様な花形態を保持した理 由として,送粉様式の多様化が予想されるが,カンアオイ節植物の送粉様式の報告はわず かしかない(田中,ユ967;目浦,!978;Sugawar島ユ9881Sugiura,1999).Voge1(ユ978)は,

北米西部産のλ.Cm肋〃m(SeCtんmm)で確認したキノコバエの一種による送粉について の報告の中で,カンアオイ属の多くの種が薯筒内壁に隆起した嚢構造をもつことから,カ ンアオイ属植物の花はキノコに擬態し,キノコバエ類を誘引し,送粉者として利用してい るgでξまないか,という興味深い説を発表した.日本でも関東地方に分布するタマノカン アオイλ.切m舳5eや近畿地方を中心に分布するミヤコアオイλ.鵬阿舳において,キノコ バエ科の一種Co物1αsp.やクロバネキノコバエ科の一種5cα仰。加〃sp.による送粉が報 告されているが(Sugawa叫19881Sugiu叫1999)1これらは一部の竿に限られており・カ ンアオイ節植物で一般的な事象であるかどうかは疑問である.澁谷(2010)は,関東地方 に自生する花期の異なる3種(ランヨウアオイA舳m{,オトメアオイA sm肋eれ馴卿.

S卿伽{,ズソウカンアオイλ.5m肋r{舳師.ρ5e伽5m肋e伽肌ρ8e伽S卿f{eγ{)に関しての訪 花昆虫相調査を行い,いずれも小型の双翅目昆虫の訪花を確認しているが,詳細な訪花者 の同定にまで至っていない.

 カンアオイ節植物は,開花ステージの後期に雄蕊が動いて自動自家受粉を行うフタバア       8

(10)

オイ節(sect.ん〃舳)やタカサコサイシン節(sectGeo切m切m)とは異なり (Sugawa叫 ユ987),柱頭の周りに配置された約が外側に裂開し,縞と柱頭が空間的にも離れ,そして運 動もしないことから,送粉には花粉媒介者が必要であると考えられている(目浦,1978;

Sugawara1988).花粉媒介者を必要とする花の構造が,この多様化したカンアオイ節植物 における種の独自性を維持する機構となっている可能性も考えられる.

 本研究では,まず日本のカンアオイ節諸種の多様性の歴史を探るため,葉緑体DNAの コーディング領域であるmα士Kとノンコーディンク領域である士mKイントロン,士mL一か〃r の合計3088bpを用いて日本産カンアオイ節植物諸種の分子系統解析を行った.また,多様 な花形態を保持するカンアオイ節植物の種の独自性がいかに維持されているのかを探るた めに,奄美大島固有のアサドーカンアオイλ.肋痂mmとフジノカンアオイAヵ細no{の2 種において,野外で訪花昆虫相の調査を行った.それらの成果をまとめて報告するととも に,日本産カンアオイ節植物の種分化プロセスや送粉システムを考察してみたい.

9

(11)

皿.材料と方法

1.分子系統学的解析

1)材料

 カンアオイ節植物は,常緑性の多年生草本で,短い根茎の先に毎年1枚の葉を展開 する小型の林床性草本である(菅原,!991).牛に一度,地際に埋もれるように花を付 けるが,その花は,口環が発達し,等筒内壁の嚢が格子状,網目状になるなどの実に 特徴的である(前川,1953;前11,ユ972).これらは日本列島を舞台に多様に分化し,

47種2亜種20変種が報告されている(Sugawar町20061SugawaraandTanikaw島20061 Sugawara,20!ユ).本研究では,分子系統解析用のDNAサンプルとして,42種2亜種 ユ4変種,そして裸名を1種類,海外産のカンアオイ節植物を6種使用した(Tab1e1).

外洋には,同じカンアオイ属植物で近節であるフタバアオイ節(SeCt.ん舳m)のλ.

Cm肋切m,λ..Cm3炉mm,ウスバサイシン節(SeCtん加m〃m)のλ.5肋。エ肋を用いた.

2)採集地と標本

 カンアオイ節植物諸種は日本列島の各地に分布し,本州の青森県を北限とし南西諸 島までに,それぞれが地域固有種として生産している.本研究では,日本産カンアオ イ節植物の種間の系統関係を解明するために,日本産種を網羅するように各地で採取 を行った(Tab1e1).また,野外で採取することができなかった一部の種については,

首都大学東京,国立科学博物館筑波実験植物園などで栽培する個体よりサンプリング を行った(Tab1e1).

 各生育地において,新鮮な葉の一部を切り取り,シリカゲル(Si02・nH20)で乾燥 してDNA抽出用のサンプルとした.別に,植物体全体の乾燥標本を作製し,証拠標本

用とした.

      10

(12)

3)DNA抽出

 葉のシリカゲル乾燥サンプルを,CTAB法(Doy1ea血dDoy1e、ユ987;Kaw出ata,1995)

を基にした方法でDNAを抽出した.まず,2m1チューブに直径5㎜のセラミック

ボール(ニッカトー社製)をユつと,1cm2程度の乾燥サンプルを入れ,蓋をしたら,

液体窒素の入?た容器のなかに入れて約2分間冷却し,ミキサーミル(Retsch社製,

MM300)で粉砕した(2500rpm,2㎞n).ここに洗浄液(HEPES−HC1bufferpH8.0,

PV耳L一アスコルビン酸)1㎞と2一メルカプトエタノールの混合溶液20μ1を加え,チ ューブを転倒混和した.その後,微量高速冷却遠心機(目立社製,CF15R)を用いて,

8000rpm,20℃で5分間遠心した.上澄みを取り除き,2xCTAB溶液500μ1(臭化セ チルトリメチルアンモニウムユOmg,Tris−HC1(pH8.0)50μ1,4MNaCIユ77.5μ1,0.5M EDTA20μ1,L一アスコルビン酸440ト9,ポリビニルプロリドン(PVP)10mg,mi1IiQ 206μ1)と2一メルカプトエタノールの25μ1をチューブに加えて転倒混和した.ヒート ブロック (IWAKI社製,L002−628)を用いて60℃で30分間インキュベートした.そ の際,撹拝させるために10分ごとに転倒混和させた.CIA溶液(クロロホルム・イソ アミルアルコール混合液,24:1v/v)を500ト1入れ,転倒混和し,6500rpm,20℃

で15分間遠心を行った.上層のDNAを含んだ液約460叫を1.5m1チューブに回収 した.再びCI今溶液と2一メルカプトエタノールを加えて,同条件で遠心し,上層液を 約400ト1新しい1.5mユチューブに回収した.一20℃に冷やしたイソプロピルアルコール

(イソプロパノール)400ト1を加えて転倒混和し,その状態で一20℃で15分以上放置し た.冷凍庫から取わ出したら,6500rpm,4℃で15分遠心しDNAを沈殿させた.底 にたまったDNAを流さないように気をつけながら上澄みを捨て,.70%エタノール1 m1を加えて,12000rpm,2ガCでユ0分間遠心した.再びDNAが流れ落ちないよう

に気をつけながら上澄みを捨て,TE buffer(Tris−HC1・EDTA混合水溶液)300μ1に ペレットを溶かした.一2ガCに冷やしたユ00%エタノール750μ1,3M酢酸ナトリウム 30μIを加えて転倒混和させ,15000rpm,4℃で5分間遠心した.チューブの底にある        11

(13)

DNAのペレット以外の上澄みを捨てた.70%エタノール1m1をペレットの上から加 え,12000rpm,20℃で5分遠心し,再び上澄み液を捨てた.小型遠心機(チビタン,

ミリポア社製)で残るた上澄み液をチューブの底に集めて,ピペットで吸って捨てた のちに,チューブのふたを開けた状態でヒートブロックを用いて60℃で2分間ほど インキュベートし,残った上澄みを完全に乾燥させた.TEbufferを150μ1加えてDNA

を溶解させた.これを各サンプルのDNAサンプルとして一20℃で保管した.DNA抽 出液はNanoDropを用いて核酸量と純度を測定した.

4)葉緑体DNAの塩基配列の決定

 系統解析に用いた領域は,葉緑体DNAのコーディング領域であるm士K(Ooi et a1.、!995)とノンコーディンク領域である士mKイントロン(Demesure et a1.、1995)

一(以下,隣接する領域であるmfK領域とかnK領域を合わせて±mK/舳±Kと示す),

云mLイmP(Tabr1eteta1リ1991)の合計3088bpである.全てのPCR反応は,Ampdirect⑧ 酵素セットの酵素のみをExtaq(丁汲aRa社製)に変更した20ト1反応系で行った/2x AmpdirectBuffer(Shi血azu社製)10叫、Primerset(sigma社製/BEX社製、10μM/1)

1μ1x2/Extaq(TaKaRa)0.1山Mi11ique7.4μ1/・斧領域のPCR条件とプライマー 情報についてはTab1e2とTab1e3にまとめた.

 1%アガロースゲルを用いて100V10分間の電気泳動を行い,対象の領域が増えて いるかどうか確認した後,ExoSAP−IT(GEHea1thcare社製)反応液を加えて37℃60 分,80℃20分間反応させPCR産物の精製を行った.精製により得られたDNA断片

を用いてダイレクトシーケンスを行らだ.シーケンス反応(ラベリング)には,BigDye teminatorv3.1kit(App1ied−BiosystemsInc.、Foste耳CA,USA)を用いた.シーケンス 反応に用いたプライマー情報はTab1e3にまとめた.シーケンス反応後に,100%エタ

ノールと3M酢酸ナトリウムによって反応物の沈殿を行い,その後70%エタノールで 洗浄した.70%エタノールを取り除き,さらに52℃で2分間インキュベートを行い完       12

(14)

全に乾燥したら,ホルムアミドをユ0μ1加えてヒートショックを行い,ABI3ユ00型シ ーケンサー(Perhn−EImer,ABI)によって塩基配列の決定を行った.

5)分子系統樹の構築

 得られた塩基配列はMUSCLE(Robert,2004)を用いてアライメントを行った.

 アライメントした各領域の配列 膚報を用いて,最節約法(MP)による系統樹を構築 した.最節約系統樹の探索は発見探索法で行い,分岐口環は系統樹の切断と最接続(TBR)

で行った.各領域の最節約系統樹の厳密合意樹を構築し,各領域で系統樹のトポロジ ーの比較,一致指数(CI)と修正指数(RI)を確認し,ホモプラシーが少ない領域が

どうかを確認した.

 系統樹の構築には士mK/m肘Kと士mL一士mP領域を繋げた配列を用いた.系統樹の構築 には,PAUP*4,Mr台却esv3.0b4(Hue1senbeckandRonqui昨200ユ)を用いて,近隣 接合(N∫)法とMP法(TBR),Bayes法の4つの手法による系統樹の構築を行った.

N∫法 とMP法の系統樹構築の際にはブートストラップ試行を1000回反復し一得られた 系統樹の各分岐の信頼性を評価した.Bayes系統樹の構築に用いた塩基配列モデルは,

Mmode1test2.3(Ny1ander et a1.、2004)を用いて探索し,AICで最も支持された GTR+I+Gモデルを用いた.そして,M由ayes3.1.2(Ronquista血dHue1senbeck,2005)

で10世代ごとにサンプリングを行い,合計2984000世代のマルコフ連鎖モンテカルロ 法(MCMC)を行った.AverageStandardDeviationofSp1it甲requencies(ASDSP)が 0.0ユ以下になったことをMCMCが収束したと考えた.また,始めの1/4の樹形はbum−in periodとして捨てた.得られた系統樹はTREEVIEW1.6.6で確認した.

13

(15)

2.奄美大島固有カンアオイ節2種の訪花昆虫相調査

1)材料

 南西諸島(大隅諸島〜先島諸島)には島ごとに独自に種分化したと思われるカンア オイ節植物が18種分布する.奄美大島には,8種のカンアオイ節植物が分布し

(Hatsush㎞一aandYam出ata,1988;Hottaeta1リ2005二Sugawa吻2011inpreβs),それぞ れが特徴的な花形態を有している.谷筋や川沿い,尾根筋など垂直分布も広範囲に分 布し,近接した地域に複数種が生育することもある.

 似たような環境に生育する異種間で,送粉者による生殖的隔離が存在する牟どうか をみるために,鹿児島県奄美市に自生するアサドカンアオイλ.肋材m舳とフジノカ ンアオイλ.〃ゐ加。1の2種について,訪花昆虫相の調査を行った.

アサドカンアオイ λ5舳m肋肋伽m(Fig.1)

5一ユ0㎝ほどの卵形もしくは三角状卵形の光沢のない葉を持つ.2月後半から3月頃 に花期を迎え,一つの茎に一つの椛つける.薯筒が11−11㎜ほどの鐘状の筒形で,

口環が発達し開口部が非常に狭いことが特徴的な花を咲かせる.花の菩筒内壁が複雑

・に発達し,細し.、隆起線は縦裂が約19−24,一横嚢が約5−8で格子構造を形成し,花柱の基 部に向けてより綴密な格子構造となる.

フジノカンアオイ λ5舳m〃∂8切。{(Fig.2)

 10−22cmほどの,比較的大きな卵形または三角卵形の光沢のある葉を持つ.花期は2 月から4月の間で,集団により花期がずれることがある.成熟した個体は一つの個体 に複数の花をつけることがある.花は,鞘が15−31㎜ほどの鐘型で,口環があり花 の入り口部は狭くなっている.

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(16)

2)調査地と採集地

1鹿児島県奄美市朝戸川沿いにおいて,アサドカンアオイの自生地2集団,そしてフ ジノカンアオイの自生地2集団,合計2種4集団での調査を行った(Fig.3).調査地 の詳細情報はTab1e4にまとめた.アサドカンアオイ集団を和瀬1,和瀬2,フジノカ ンアオイ集団を和瀬3,和瀬4とした.それぞれの集団は最も離れている集団同士でも 2㎞、圏内であったが,和瀬1から和瀬3は朝戸川沿いにある集団で,フジノカンアオ イの自生する和瀬4のみ斜面上部にあり川からは離れており若干環境が異なっていた.

3)インターバル撮影と目視による観察

 各種の訪花昆虫相と訪花行動の探索のために,各調査集団において,以下の観察調 査を行った.

 20u年3月ユー6目に,訪花昆虫を特定するために,それぞれの種の観察株において,、

送粉者自動撮影システム(OptioW90,Pentax社製、gori11apod三脚、IOBY社製)で2 分間隔の自動撮影を行った(Pi&4).撮影終了後に写真に訪花昆虫が写っているかど

うかを確認した.口環付近や薯筒内部に昆虫類が写っていた場合を 萌花 とし,連続 した画像に映っていたものは同一個体と見なした.2分間以下の間に訪花した昆虫につ いては訪花がなかったという評価した.昆虫類が確認できた場合,その大まかな同定

と訪化数の高い時間帯の特定を行った.

 訪花昆虫の厳密な同定と有効な送粉者を特定するために,奄美市和瀬峠斜面上集団 のフジノカンアオイの個体群では,2011年3月5目に,2株について目視による観察 を行った.観察時に花内部へ侵入した昆虫は,一連の訪花行動の後に吸虫管(小昆虫 採集用虫管(管付)二重式,滋賀昆虫社製)により捕獲し,光学顕微鏡下で花粉付着 の有無を確認した.また捕獲した昆虫は,DNAバーコーディンクによって同定を試み

(後述rDNAバーコーデインク」を参照),体組織の一部はDNAバーコーデインク

用とした.

      15

(17)

4)花内部の精査と産卵数調査

 訪花昆虫相の観察が終了した後に,調査地で花を採集した.花は研究室に持ち帰り,

花の入り口の直径をノギス(新潟精機株式会社製)で計測するとともに,花の開花ス テージ(柱頭の肥大化の有無,柱頭の黒ずみの有無,菊と花粉の状態)を確認した.

また,昆虫の卵などの有無と個数を記録した.花の内部で確認された昆虫の卵につい ては,一つずつ慎重に取り分けて100%エタノールの入った200μLチューブに保管し

た.

5)DNAバーコーディンク

 確認された昆虫の卵や訪花昆虫が何の種類であるかを同定するために,ミトコンド

リアDNAのCα領域を用いてBOLDsystemDNAバーコーディンクを行った

(Ra血asinghamandHebert,2007).DNAバーコーディンクは以下の手順で進めた.

5一ユ)DNA抽出

 卵は,卵の保管容器である200ドLチューブから卵を吸い出さないように注意し ながらピペットで100%エタノールをできる限り回収した.52℃で2分間インキ ュベートし,残っている100%エタノールをとばした.別に,昆虫組織の一部とし て保管した後脚はここで200μLチューブに入れた.その200ドLチューブのなか に,抽出混合液{!MTris−HC110μ1,05EDTA2μ1,5NNac130μ1,Che1ex(2gノエ00 m1)2.5μ1,}を30μ1加え,卵と昆虫組織がしっかりと潰れるようにしながらよく 混和レた.そこに,プロテテーゼK(ユng/m1,丁瓜aRa社製)を2μ1を加えて,56℃

で2時間のインキュベートした後に99.9℃で3分間熱処理をした.

5−2)ミトコンドリアDNAの塩基配列の決定

 今回,DNAバーコーディンクに用いた領域はミトコンドリアDNAのCO∫領域        16

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である.PCR反応には,SapphdreA㎞pTM(T6K疵a社製)を用いたユ0■反応系 で打つだ./SapPhireAmpTM(TaKaRa社製)5山 primerset(グライナー・ジ ャパン社製,10μM八)0.2μ1,Mi1Iique3.6叫primerはLCOユ490と工C02198

(Po1mereta1.、1994)を用いた(Tab1e5).PCRの設定は以下の通りである:最初 の変性として94℃ユ分を行い,98℃5秒,55℃5秒,72℃ユ0秒のセットを

30回反復させた.

6)PCRによる対象領域の増幅の確認からダイレクトシーケンス法については,葉緑   体DNAの塩基配列の決定方法と同様に行った(参照「葉緑体DNAの塩基配列の

  決定」).

5−5)DNAバーコーディンク

 ダイレクトシーケンスによって塩基配列決定した後に,BOLDsystemを用いて DNAバーコーディンク を行った(Ratnasi皿ghξm,S.&lHebert,2007).さらに,

MUSCLEを用いてアライメントを行ったのちに,その配列情報から,Ne榊。rk

vers1on4610(担)によってハプロタ

イプネットワーク図を構築した.

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皿.結果

1.日本産カンアオイ節植物の分子系統

1)領域ごとの配列情報

 ・系統解析に用いた領域のアライメント情報,領域の変異情報(thenumberofvariab1esites,

andpars㎞onyinfomaせvesites),一致指数,修正一致指数等の情報についてはTab1e6に まとめて述べた.各領域の一致指数と修正一致指数を確認したところ,いずれの領域もRI,

CIともにO.80以上の値を示した.

 変異数とParsimonyinformaせvesitesの値は,いずれの領域も小さい値を示し,系統樹を 構築するために情報量としては少ない傾向にあった(Tab1e6).士mK/m士Kと士mLイmPそ れぞれの領域でMP法による系統樹を構築したが,信幸度量が少ないため,ほとんどが箒状 の系統樹となった(Figs.5and6).

2)葉緑体DNA2領域を統合した系統樹

 日本産カンアオイ節植物78個体について,亡mK/m励K,士mLイγ畑の2領域の塩基配功情 報に基づいて,ベイズ法による系統樹を構築した(Fig.7).統合した葉緑体DNAデータセ ットから構築したN∫法とMP法での系統樹で共通して支持された分岐に関しては,枝の上 部に!000回反復ブートストラップ確率を示した(Fig.7).

 得られた系統樹は,上記したように情報量が少ない傾向があり(Tab1e6),事後確率が低 い,またMP法やN∫法のブートストラップ確率では支持されない分岐もみられた.カンア オイ節植物は,海外産種のグレード(Fig.7で海外産種グレードをオレンジ色で示す),台 湾の3種を含み南西諸島種を中心としたグレード(Fig.7で日本南西グレードを青色で示す),

そして本州・四国の種を中心としたグレード(Pig.7で日本北東グレードをピンク色で示す)

の3つのグレードにまとまった.海外産種グレードはアメリカ産のλ.8ρec{os〃m,中国産の       18

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λ.m肌伽舳とλ.加〃gた。mgmseの3種の海外産種によって形成された.日本南西グレードは 台湾産のλ.伽ぴm舳m,λ.肋。mn5eと未同定種の3種に加え日本産オモロカンアオイ,

センカグアオイ,エクボサイシン,ヤエヤマカンアオイ,サンゴカンアオイ,ナンゴクカ ンアオイ,クワイパカンアオイ,オオバガシアオイ,ウンセンカンアオイ,キンチャクカ ンアオイ,サツマカンアオイ,カゲロマカンアオイ,トクノシマカンアオイ,ハッシマカ ンアオイ,タニムラカンアオイ,トカラカンアオイ,ヤクシマカンアオイ,ミヤビカンア オイ,フジノカンアオイ,トリガミネカンアオイ,ナゼカンアオイ,アサドカンアオイと いう南西諸島の種々や九州本土,九州近辺の島々の種を中心に形成された.一方,日本北 東グレードはクイリンアオイ,マルミカンアオイ,コシノカンアオイ,コウヤカンアオイ,

ミヤコアオイ,カギガタアオイ,サンヨウアオイ,カンアオイ,トサノアオイ,ランヨウ アオイ,オトメアオイ,ズソウカンアオイ,サカワサイシン,イワタカンアオイ, ミチノ グサイシン,イセノカンアオイ,ヒメカンアオイ,アツミカンアオイ,ユキクニカンアオ イ,エチセンカンアオイ,スズカカンアオイ,コトウカンアオイ,ミヤマアオイ,サンイ ンカンアオイ,クロビメカンアオイ,タマノカンアオイ,オナガカンアオイという本州・

四国の種や残る九州本土の種によって構成された.

 日本南西グレードは,さらに,4つのグレードを形成した(Fig.8,それぞれa−dで示す).

その4つのグレードは地理的なまとまりを示す傾向があった(Pig.8).例えば,尖閣島と 酉表島の種,台湾と石垣島の種のグレード,また奄美大島産種のグレードといった具合で ある.一方で,本州・四国の種を中心とした日本北東グレードは,本州の多くの種を含ん だ本州グレードとそれらと姉妹群となるように,九州産のクイリンアオイやマルミカンア オイ,オナガカンアオイ,大分県産サンヨウアオイといった種がみられたが,日本南西グ

レードと比較すると全体の遺伝的な変異は少なくまとまっていた(Fig.8).

 また一部の種(Fig.8で黄緑色の囲いで示した種)はいずれも九州に分布している種であ り,特にサンヨウアオイやキンチャクアオイなどは分布域も重なりあい連続しているにも 関わらず,日本南西グレードと日本北東グレードにそれぞれ分かれるように配置された.

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2.奄美大島固有カンアオイ節2種の訪花昆虫と開花ステージ

1)インターバル撮影と目視で確認された訪花昆虫

 各調査地での,アサドカンアオイ, フジノカンアオイそれぞれの観察個体数,合計観察 撮影枚数,合計撮影時間はTab1e7にまとめた.インターバル撮影の写真のなかで,花筒へ の進入や口環付近で確認された個体のみを 訪花 と定義づけ,訪花昆虫類が写っていたも のの枚数をTab1e7,Tab1e8にまとめた.花筒外壁や専裂片上で確認されたものは 訪花

ら除外した.

 調査を通じて,アサドカンアオイとフジノカンアオイの両種で複数の訪花者が確認され た(TabIe8).アサドカンアオイの訪花昆虫類は,ほ一どんどが微小なサイズで写真からの同 定は困難なものが多数あった.そのなかでも,口環付近から白い昆虫の幼虫と思われるも のが複数写っていたのは興味深い結果であった(Pig.9).一方,フジノカンアオイの和瀬4 集団では,双翅目短角亜目の一種が複数確認され(Fig.10),1日あたり4.4回訪花し,確 試された訪花昆虫の中で最も大きな値を示した(Tab1e7).

 フジノカンアオイ和瀬4の集団での目視の観察時には,花の入口から出入りし,花のな かで一定時間を過ごしたのちに再び外に出てくる双翅目昆虫を複数回確認することができ た.花内部への進入行動を確認後,その双翅目昆虫を吸虫管で吸引し,実験室↑持ち帰り 観察を行ったところ,その毛深い体表にはカンアオイの花粉を付着していることが確認で

きた(Fig.ユ1).またDNAバーコーディンクを用いた結果,これはハヤトビバ工科の一種 との相同性が95%で最も高かった.

 これらを合わせて考えると,フジノカンアオイ和瀬4の集団でのみ,インターバル撮影 で複数回確認された一連の双翅目短角亜目の一種と目視によって複数回の訪花が確認され たハヤトビバェ科の一種は,活動時間の一致や外部形態から同一種である可能1性が極めて 高いと考えられる.インターバル撮影によって記録された時間帯から,このハヤトビバ工 科の一種の訪花時間は8時から16時の間に集中して訪花していることが判明した(Fig.ユ2).

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2)花の入り口直径と開花ステージ

 インタドバル撮影を終えた後,各集団から花を採集し,実体顕微鏡下で,花の入り口の 直径と開花ステージの判断のために,柱頭の黒ずみと子房の肥大化について確認をし,そ れらをTab1es9&:10にまとめた.

花の入り口の離については,アサドカンアオイでは平均3.32㎜であるのに対し,フ ジノカンアオイでは平航44㎜であり,約2倍もの違いがみられた(Tab1e9/Tab1110).

 柱頭の黒ずみの程度と子房の様子に関しては,アサドカンアオイでは和瀬1集団と和瀬2 集団ではいずれも集団間の違いはみられなかったが,フジノカンアオイでは和瀬3と和瀬4 で違いがみられた.つまり,アサドカンアオイでは,2集団で二部は柱頭の黒ずみは見られ たもののいずれも子房肥大はみられなかったが(Fig.ユ3),フジノカンアオイでは,和瀬3 集団で子房の肥大化が進んでいる個体が多く,観察した個体のなかには種子形成がある程 度まで発達しているものも見られたのに対し,和瀬4集団では子房肥大もみられず,柱頭

も開花初期の状態であった(Fig.14).

3)花内部の卵の確認一

 両者の花内部で確認されたものをTab1es9&10にまとめた.アサドカンアオイでは,虫 の卵が多数確認され,多いものでは1花当たり98個,少なくとも5個であり,昆虫の卵の ない花は存在せず,すべて合計すると415個の卵を確認した.花の部位を,薯筒内壁,花 柱基部,蕊柱というよう分けてそれぞれの部位で卵の数を数えたところ(Fig.15),花柱基 部への産卵が最も多くみられた(Tab1e9).

 一方で,フジノカンアオイに関しては,花内部への産卵は全く認められなかった.しか し,双翅目昆虫,幼虫,フシトビムシの一種の3個体が確認された(Tab1e!0,Fig.ユ6).

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(23)

4)昆虫の卵のDNAバーコーディンク

 アサドカンアオイで産卵が確認された全7花から卵は4ユ5個確認され,そのうち6花か ら39個の卵の塩基配列の決定に成功した.BOLDsystemから,それらの卵はすべてノミバ エ科の昆虫のみと高い相同性(95%)を持つ同一種に由来すると推定された.すべてのシ ーケンステータをアライメントし,比較すると全長552bpのうち最大で5塩基ほどの塩基 置換が確認された(Fi317A).これは全体の配列の1%程度のものであった.これらのやず かに異なるハプロタイプは10個確認され,同一花内でも複数のハプロタイプが確認された

(Fig・17B)・

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(24)

IV.考察

1.日本産カンアオイ節植物の系統関係と種分化プロセス

 今回の結果からカンアオイ節(sect.He士eγo的ρα〉の単系統性が示され,Ke11y(1998)によ る分子系統解析による結果と一致した.しかし,Niedenberger(2010)による葉緑体DNA のm励K領域,ψ32一士mL領域,亡mQ一印sエ6領域の3領域2726bpを用いたアメリカカンア オイ群(今回海外産種グレードに位置したA SρeC{o舳mが含まれる種群,アメリカ東部に分 布)を中心とした系統解析では,カンアオイ節のなかにλ.5肋。励(sect.λs加5舳mウスバ サイシン節)が含まれるとしていて,今回行った解析に長野県産λ.s肋。1肋を含めたが,得 られた結果は異牟るものであった.A s肋。1肋は外洋に入り,カンアオイ節植物はひとつの グレードにまとまった(Pig−7)一これらの不一致は,タグソンサンプリングが不十分である 上に,使用した葉緑体DNA全体としてpers坤。ny infomative charactersの値が小さいた め,ホモプラシーが含まれる領域による影響もあるのではないかと考えられる.ウスバサ イシン節とカンアオイ節の間には,落葉性と常緑性という違いがあり,また花筒の合着の 程度なギからもはっきりとした形態学的な差異がみられる.使用した領域が異なっており,

それらの葉緑体DNAデータを足し合わせた上で議論する必要性があるが,今回の結果は,

核DNAによる系統解析や形態形質からの支持とも矛盾なく一致していたといえる.

 海外産種グレードに含まれるアメリカカンアオイ群の種λ.SρeC1oS舳は,分類体系によっ てはsect.He〃吻脆としてカンアオイ節植物と別説で扱われることもあるが(Arah,1953二 B1omquis㌧195乃Sugawara.1981.1982二So1tis、ユ984二Goddy1987),根茎が長く伸びることが ないことや花柄が伸びず堆面に横たえて花をつける様子や,約より短い花糸をもつことな

どの共通点からカンアオイ節植物とごく近縁であると考えられた(Sugawara、ユ991).さら には,同じくグレード1に属するA伽虹m舳やλ.1制gた。nge鵬eといった一部の中国産種 は,染色体数などから,日本産カンアオイ節植物よりもアメリカカンアオイ群と似た形態       23

(25)

をもつことも論じられており(Sugawara。ユ991),今回の結果はそれ宇支持するものであった.

 日本産種に関しては,南西グレードと北東グレードの2つに分かれ,南北の種で大きく 遺伝的な変異のあることが示唆された(Fig.7).南西グレードでは,さらに4つのグレー

ドが認識されたが,それぞれに枝も長く,強く単系統性が支持されていた(Fig.8).

 南西端グレードに台湾産の3種が含まれていたが,これは台湾と西表島では地理的に約 200㎞しか離れていないことや,近年台湾でヤエヤマカンアオイが確認されていることか らも,過去に氷河期などで島同士が陸続きになったときに分布域を両島に広げたことが考 えられた(Lueta1.、2009).

 すでに述べたようにカンアオイ節植物は,花内部の嚢構造の複雑さや口環の発達の程度 などの多様化した形質,さらに花の大きさや開花期などの形質を基に節内の類縁関係が推 測されてきた(前川,ユ953二Arah、ユ953二Sugaw阜r町198ユ、1982二Ke11y1997).特に着目され た形質として,カンアオイ節植物で特有に発達した花柱付属突起,菩筒内壁の嚢構造,ま た花筒のくびれや子房の位置などが挙げられる.例として,前川(1953)は日本産カンア オイ節植物についてそれらの形態形質に基づき,クイリンアオイ亜群,ミヤコアオイ亜群,

サカワサイシン亜群,ツクシアオイ亜群,カンアオイ亜群,ヒメカンアオイ亜群,ランヨ ウアオイ亜群という7つのグループに分けた.そのなかでも特に特徴的な形態形質を共有 するグループはクイリンアオイ亜群,ミヤコアオイ亜群,サカワサイシン亜群の3つであ

る.これらの形態形質が,今回得られた分子系統解析の結果と対応するかどうかを検討し

た.

 クイリンアオイ亜群は,花筒の上部がくびれ,薯裂片が波状にうねることで特徴づけら れる一群である.九州南部に分布するサツマアオイ,九州北部から中国地方西部に分布す

るクイリンアオイ,東海地方に分布するカギガタアオイ,伊豆半島に分布するアマキカン アオイ,関東地方に分布するタマノカンアオイの5種がここに分類される.このように,

この一群は日本列島の東西に離れて分布するにもかかわらず,それらの種の分化について は単系統性を前提にした,分化のプロセスが論じられてきた(前川,ユ953;目浦,1968).

      24

(26)

今回の葉緑体DNAで構築した系統樹においては,鹿児島県に分布するサツマアオイのみが 日本南西グレードに,それ以外の4種が日本北東グレードに位置し,多系統となった.核 リボソームDNAのITSによる先行研究でも,この亜群の単系統性は見いだされていなかっ た(菅原,2004)が,今回の結果とはそれとも少し異なっていた.つまり,ITSでは九州地 方に分布するサツマアオイとクイリンアオイの2種が一つのグレードを形成し,本州に分 布するカギガタアオイ,アマキカンアオイ,タマノカンアオイの3種が同一グレードを形 成するというものであった.また,この九州の2種と本州の3種という区分は,染色体の 核型でも相互の差異が論じられている(Sugawar斗1981).

 花筒上部が著しく枯れ,子房下位であるミヤコアオイ亜群もまた,その構成種が南西諸 島から本州にまで分布するグループである.今回の分子系統解析の結果からは,それぞれ の種が遺伝的には異なるグレードに配置され,これらのまとまりは支持されなかった.例 えば,雄蕊の数のみが異なり,一部混在しながら連続的に分布しているサンヨウアオイと キンチャクアオイ(分類学的には同種内の種内分類群として扱われる)おいて,」日本南西 グレードと日本北東グレードに,さらにサンヨウアオイに関しては中国地方産個体と九州 大分産個体がそれぞれ異なるグレードに配置された.

 サカワサイシン亜群は,サカワサイシン,ホシザキカンアオイ,トサノアオイ,オナガ カンアオイの4種で構成されるが,菩筒内の嚢構造が縦裂のみであり,また柱頭が点頂す るなど共通し形態をもつことで特徴づけられる一群である.今回の系統解析には,一zシザ

キカンアオイ以外の3種が含まれている.これらはすべて日本北東グレードに含まれたが,一 サカワサイシンやトサノアオイに関しては,他の種との遺伝的な変異がほとんどみられず,

オナガカンアオイに関しては,ミヤコアオイ亜群とされている大分産のサンヨウアオイと 同一グレードを形成した.

 このように,日本産カンアオイ節植物の葉緑体DNAによる系師解析からは,形態的なま とまりよりも地理的なまとまりが強く見出された.ここから,急激な形態形質の平行進化 が日本産カンアオイ節植物で多発的に発生している,もしくは浸透交雑などの影響により       25

(27)

地理的なまとまりの中で葉緑体捕獲が生じているという2つのことカ干考えられた.しかし,

クイリンアオイ亜群でみられたような先行研究の核リボソームDNAのITSによる分子系統 解析との不一致やサカワサイシン亜群での染色体の核型でのまとまりとの不一致など不可 解なふるまいも見られた.このように核DNAや染色体の核型と葉緑体DNAの振る舞いの 不一致から,カンアオイ節植物では浸透交雑による葉緑体捕獲の影響を受けている可能性 があるのかもしれない.葉緑体捕獲は同じウマノスズクサ科で日本に分布するウマノスズ クサ属植物やカンアオイ属ウスバサイシン節植物でも同様に報告されている現象である

(W早tanabeeta1リ2006二Watanabeeta1リ2008;Y∂majieta1リ2007a;Yamajieta1.、2007b).今後 核DNAのデータを足し合わせることで,より詳細な系統関係の構築をしていく必要性があ

る.

 今回得られた葉緑体DNAによる分子系統解析では,種ごとの詳細な系統関係は議論する ことには適していないが,樹形に着目し全体的な日本産カンアオイ節植物の分散と種形成 について検討したい.南西グレードと北東グレードを比較すると,北東グレードにはさら にいくつかの強く支持されるグレードが認められ,大きな遺伝的変異がみられるのに対し,

北東グレードでは比較的変異数が蓄積されていなかった.つまり,日本産カンアオイ節植 物は地理的分布域の南北の種で異なる振る舞いを見せており,特に北東gレートに含まれ

る種が多く分布する本州・四国では,急速に分散した上でそれぞれ地理的な隔離によって 形態的な多様性を築き上げた可能性が推測される.カンアオイ節植物は種子の分散能力の 低いことから,しばしば日本列島の地史と関連づけて,その多様化が論じられてきた(前 川,1953;目浦,1978.1979),今回の分子系統解析からは,遺伝的な変異を共有しつつ,

予想より速い速度で分布域を拡げた可能性が考えられる.

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(28)

2.日本産カンアオイ節植物の送粉様式

 アサドカンアオイでは訪花している成虫個体を直接確認することはできなかったが,体 長1㎜にも満たない白い幼虫が複数枚写真に記録されていた(rig.1).これが実際何の幼

虫で,送粉にどの程度関与しているかは確認できなかった.花筒内部の精査を行うと,ひ とつの花に平均59個もの卵が産みつけられていることが確認された.これは,親個体が産 卵あために訪花していたことを示す証拠である.DNAバ二コーディングの結果から,この 卵はすべてノミバエ科の一種であることがわかった.ノミバエ科の種内と種間のCO工領域 の遺伝的変異を比較すると,種内変異はユO%内に収まるといわれており(Boe㎞1e et a1γ 20ユ0),今回は最大でも5塩基の差異しか確認されず,これらの遺伝的変異は種内変異であ

ることが判明した.また,最大で5bp程の差異がある10ハプロタイプが同一花内で確認 され(Fi&ユ7B),これは産卵を行った親個体が複数訪花していることを裏付ける証拠であり,

アサドカンアオイヘの重要な訪花者であることが示唆された.ま」た今回最も相同性の高か ったノミバエ科の一種は体長2㎜ほどであった(Pig.18).ノミバエ卵が確認された花で は,花柱基部に卵がより集中する傾向がみられたため(Tab1e9),成虫個体が花の奥まで侵 入していたことは確実である.これは一方では約との接触の機会が増すことにもなるので,

花粉牽移動させていた可能性は非常に高いと考えられる(Fig19).

 Sakai(2002)は,パナマ産のウマノスズクサ科ウマノスズクサ属(ル{5土。loc肋α)の一種に おいて,ノミバエ科のMeg鵬e肋s肋加が花筒内壁に産卵する際に送粉することを報告して いる.今回報告したアサドカンアオイでもノミバエ科の複数の親個体が複数回産卵に訪れ,

大量の卵を産んでいた.また花の口環付近において昆虫の幼虫が複数回確認された(Pig9).

この幼虫がノミバエ科の一種の幼虫であるかどうかは今回同定できなかったが,もし仮に その幼虫であったなら,花が送粉者の養育に使われるような特異な送粉関係を結んでいる 可能性は十分考えられる.

 一方,フジノカンアオイでは訪花昆虫としてハヤトビバェ科の一種(以下,ハヤトビバ        27

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工)が送粉に寄与している可能性が示唆された.ハヤトビバエは,全身を体毛に覆われて おり,体毛に花粉を付着させ(Fig.11),容易に送粉することが考えられるが,事実捕獲した ハエにはフジノカンアオイの花粉が付着しており,これはカンアオイ類の花粉であること が確かめられた(Fig.11B).また,ハヤトビバ工科の一種は10時から14時と決まった時 間に訪花していることがインターバル撮影で確認された(Fig.12).

 花筒内部の精査の結果から,フジノカンアオイでは和瀬3集団では柱頭の黒ずみや子房 の肥大化が進んでいる個体が多く見られたのに対し,和瀬4集団では柱頭も新鮮であり子 房の肥大も確認されず約の花粉残量も多かったため,これらの集団間では開花ステージが 異なっていた可能性がある.さらに,開花ステージが開花初期と判断できた和瀬4と開花 後半と判断できた和瀬3の集団の間で,昆虫の訪化数が異なっていた.これは,フジノカ ンアオイでは開花ステージ初期にのみ,特定の送粉昆虫を誘引するための原因物質を分泌

している可能性を示唆しているのかもしれない.

 カンアオイ節植物の送粉様式についての先行研究ではキノ』バエ類を中心とした送粉系 が報告されていたが(Sugawar町1988二Sugiu叫1999),今回の調査からは,キノコバエ類 の属する双翅目長角亜目の種ではなく,短角亜目の2種が送粉に寄与している可能性が示 された.また,澁谷(201ユ)は,関東地方に分布するカンアオイ節植物ランヨウアオイ,

オトメアオイ,ズソウカンアオイの3種での訪花昆虫を報告しているが,科レベルまでの 同定がなされていないものの,短角亜目のハエ類の訪花が確認されている.このように,.

日本産カンアオイ節諸種では,異なった双翅目昆虫と送粉関係を結んでいることが少しず つ明らかになってきた.さらに,先行研究では,カンアオイ類の花が双翅目昆虫に産卵場 所を提供するということが報告されていた(Sugawara,1988)が,今回フジノカンアオイで 確認された産卵を伴わない訪花は初確認である.これは送粉者の違いによる訪花行動の違 いを反映した可能性もあり,送粉者との関わりをより深く追跡するうえでも注目すべき結 果である.

 さらにカンアオイ節植物の送粉様式の解明を進めることで,日本産カンアオイ節植物の       28

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