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修 士 学 位 論 文

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(1)

修 士 学 位 論 文

曲 線 座 標 を 利 用 し た 二 極 小 ポ テ ン シ ャ ル を 持 つ 分 子 のVSCF‑CI計

指 導 教 授 波 田 雅 彦 教 授

平 成28年1月7日 提 出

首都大学東京大学院

理 工 学 研 究 科 分 子 物 質 化 学 専 攻

学 修 番 号14880337

岩 瀬

(2)

M‑18

曲線座 標 を利 用 した 二極 小ポ テ ンシ ャル を持 つ分 子 のVSCF‑Cl計

理論 ・計 算化 学研 究室 岩瀬

序 諭 】 分 子 の振 動 回転 スペ ク トル は 分 子 構 造 や 反 応 機 構 の 重 要 な情 報 で あ り、化 学 の 広 い 分 野 で 活 用 され て い る。 これ を理 論 的 に解 析 ・予 測 す る為 には 非 調 和 性 や 多 自由度 を考 慮 した 高 精 度 な 理 論 が必 要 で あ る。 近年 、 分 子 軌 道 法 と類 似 した 理 論 的 枠 組 み を持 つVSCF‑CI法 が 非 調 和 振 動解 析 に広 く用 い られ て い る。VSCF法 は振 動 モ ー ドを分 割 し、 全 波 動 関数 を単 モ ー ド波 動 関 数 の 且artree積 で 近 似 す る為 振 動 自 由度 の 増 加 に強 い とい う利 点 を 持 つ 。 しか し、現 代 分 子 科 学 で 重 要 な反 転 や 内部 回転 に 沿 った 多 極 小 ポ テ ンシ ャル 曲面(PES)を 扱 う場 合 、 振 動 モ ー ド間 の 結 合 が 強 く、VSCF法 で 一般 に 用 い られ る基 準 座 標 を利 用 した モ ー ド分 割 で は 近 似 が 出 来 ない 。 本研 究 で は 、従 来 の基 準座 標 で は な くVSCF計 算 に適 切 な 曲線 座 標 を得 る方 法 を考 案 した。 ま た 、 こ の 曲線 座 標 を 用 い てVSCF‑CI計 算 を行 うプ ロ グ ラ ム を作 成 し、傘 反 転 に二 極 小 ポテ ン シ

ャル を持 つNH3分 子 の 応 用 計 算 を行 っ た。

【理 論 】VSCF法 で は 、 一般 に ポテ ン シ ャル 関数 の 一 階微 分係 数 が零 で あ る点 を原 点 に取 り、

原 点 にお け る調 和振 動 子 近 似 で 得 られ る基 準座 標Gκを用 い て 振 動 の 波 動 関数 を 単 モ ー ド波 動 関 数 のHartree積 で表 す 。

た だ し、プとは振 動 自由度 数 で あ る。単 モ ー ド波 動 関数 は基 底 関数 展 開 され る。本 研 究 で は位 置 演 算 子 の 固有 関数 で あ るDVRを 用 い た。

〈q、,、IQA、1q、,」〉=δ ノq、,i

VSCF法 で は 平 均 場 近 似 を用 い 、有 効 ハ ミル トニ ア ン行 列 の対 角 化 を繰 り返 す 事 で 単 モ ー ド波 動 関数 を得 る。 計 算 量 は振 動 自由度 の線 形 に比 例 し、 大 き い 分 子 に対 して も適 用 出 来 る とい う利 点 を持 つ。VSCF‑CI法 で は 、VSCF波 動 関数 の 各 状 態 の線 形 結 合 で全 振 動 波 動 関数 を表 現 し、結 合 係 数 を変 分 的 に決 定 す る。

分 子 の ポ テ ン シ ャル 関数 は(5)式 の よ うに有 限 次 の テ イ ラ ー展 開 で 近 似 す る。 基 準 座 標 は ポ テ ン シ ャル 関 数 の二 次 の振 動 モ ー ド結 合 は ゼ ロで あ る よ うに 定 め られ る が 、 三 次 以 上 の モ ー ド結 合 は 存 在 し、 これ が 大 きい 場 合VSCFの(1)式 に よ る近 似 が 成 立 しな い。

v(q,,…,qf)‑v・+±]EVkkqk2+6ΣVkl.q・qlq.+…

本 研 究 で は、 基 準 座 標 で は な く(5)か ら(8)式で 定 義 され る 曲線 座 標sκを利 用 して振 動 モ ー ド結 合 を 小 さ く し、VSCF法 の精 度 を向 上 させ た 。 こ の 曲線 座 標 の座 標 軸 は原 点 で基 準座 標 に 一 致 す る が 、 原 点 近 傍 で ポ テ ン シ ャル 関数 の ヘ ッセ 行 列 の 固 有 ベ ク トル に平 行 で あ る とい う点 で基 準座 標 と異 な る。 ま た 、(8)式に よ り体 積 要 素 の変 化 が原 点 近 傍 で 最 小 に な る。 座 標 の 変換 を行 うの み な の で 、VSCF‑CI法 に も 直 ち に 利 用 す る 事 が 出 来 る 。

ρ、‑5、+去 Σz翫 ∫轟

乙〃Z=1

(5) z翻=o(k≠landl≠mαndm≠k) (6)

zトz鴇 馬(Vkk≠Vu)(た ≠z) (7)

zだ・一 Σz差 (8)

(3)

M‑18

【結 果 】 図1にNH3分 子 のPESとVSCF、VCIの 波 動 関 数 を示 した 。 図1上 段 の 左 か ら、基 準 座 標 にお け るNH伸 縮q,と 傘 反 転q,の 面EのPES及 び 伸 縮 の 基音 振 動 のVSCF、VCI波 動 関 数 、下 段 の左 か ら、 曲線 座 標 に お け るNH伸 縮Slと 傘 反 転S2の 面 上 のPES及 び 伸縮 の 基 音 振 動 の VSCF、VCI波 動 関 数 で あ る。 座 標 の 原 点 は 傘 反 転 の 遷 移 状 態 に 取 っ た 。 ポ テ ン シ ャ ル 関 数 は CCSD(T)/aug‑cc‑pvtzで 計 算 して 多 項 式 に最 小 二 乗 フ ィ ッ トした 。ハ ミル トニ ア ン に はWatson の 振 動 ハ ミル トニ ア ン を 用 い た 。NH3分 子 は 傘 反 転 に 二 つ の 極 小 を持 ち 、 基 準 座 標 に お け る こ れ らの 極 小 と遷 移 状 態 を結 ぶPESの 谷 線 は 傘 反 転 とNH伸 縮 平 面 上 で 大 き く 曲 が っ て い る 。 こ れ は 傘 反 転 とNH伸 縮 に は 大 き い モ ー ド結 合 が あ る こ と を示 して い る。 振 動 波 動 関 数 は こ の 谷 線 近 傍 で 大 き い 値 を 持 つ と言 え る が 、VSCF波 動 関数 は座 標 軸 に 沿 っ た 関 数 しか 表 す こ とが 出 来 な い 。VCI波 動 関 数 を見 る と、 谷 線 に沿 っ て 歪 む こ と が 分 か る。 一 方 、 曲線 座 標 に お け る 傘 反 転 の 軸 はPESの 谷 線 に 近 く、 二 つ の 極 小 点 は ほ と ん ど∫2軸上 に あ る。 こ の 為 全 波 動 関 数 の歪 み は 基 準 座 標 に 比 べ て 小 さ く な り、VSCF波 動 関 数 で も 良 い 近 似 と な る。

表1にNH3分 子 の 基 準 座 標 と曲 線 座 標 を 用 い た 非 調 和 振 動 解 析 結 果 を示 した 。 従 来 の 基 準 座 標 を 用 い た 場 合 、 強 い モ ー ド結 合 に よ りVSCFの 振 動 数 は 傘 反 転 で50%以 上 の 大 き い 誤 差 を 生 じ る。 本 研 究 の 曲線 座 標 を 用 い る 事 で 、 誤 差 は10%以 内 に収 ま っ た 。 他 の モ ー ドの 振 動 数 はVSCFレ ベ ル で も3%以 内 で あ り、 曲 線 座 標 の 有 用 性 を 示 して い る。

0.40.4r‑TO,4

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一1‑O .500,5

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一〇.500.51

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・∫ 『 一 一'1二

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一1‑。.,。 。.51'O・'‑1‑。.5。 α51"O"‑1‑。.,・d・

S21a.u.S21a・u・S21a・u・

O,2

.コ."ロω

0

一〇.2

〇.4 1

図1NH3分 子 のPESと 振 動 波 動 関 数

実験 基準座標 曲線座標

VSCF VSCF VCI

トンネ ル 分 裂 0,793 0,020 0,451 0,642

傘反転 v芝 932.43 1473.84 58.1% 994.55 6.66% 961.11 3.08%

968.12 1475.18 52.4% 1017.30 5.08% 985.29 1.77%

縮重変角 v才 1626.28 1647.74 1.32% 1649.04 1.40% 1624.04

・0.14%

1627.37 1647.76 1.25% 1649.49 1.36% 1626.46 ・0.06%

伸縮 vf 3336.08 3207.34 ・3.86% 3371.16 1.05% 3337.29 0.04%

vf 3337.11 3207.36 ・3.89% 3371.61 1.03% 3338.91 0.05%

縮重伸縮 vま 3443.68 3555.13 3.24% 3526.71 2.41% 3443.29

・0.01%

(4)

目次

1序 2理

2‑1VSCF法 2‑2曲 線 座 標

2‑2‑1ヘ ッ セ 行 列 の 固 有 ベ ク トル 2・2‑2曲 線 座 標 の 媒 介 変 数 表 示 2‑2‑3運 動 エ ネ ル ギ ー 演 算 子 2‑2‑4体 積 要 素

2‑3赤 外 ス ペ ク トル

3プ ロ グ ラム

3‑1振 動 解 析 プ ロ グ ラ ム の 概 要

23344567899

4応 用 結 果 4‑1

4‑1‑1

ア ンモ ニ ア 分 子 ポ テ ン シ ャル 関数

4・1‑2ア ン モ ニ ア 分 子 の 基 準 座 標 と 曲 線 座 標 4‑1‑3振 動 解 析 結 果

4‑1‑4赤 外 ス ペ ク トル シ ミ ュ レ ー シ ョ ン

5結 論 6参 考文献 7謝 辞

111246789111111111

(5)

1序 論

分 子 の 振 動 回転 は分 子構 造 や 反 応 機 構 の重 要 な情 報 で あ り、化 学 の 広 い 分 野 で 活 用 され て い る。 これ ら を理 論 的 に解 析 ・予 測 す る為 に は 、非 調 和 性 や 多 自由度 を考 慮 した 高 精 度 な理 論 が必 要 で あ る。 近 年 、 分 子 軌 道 法 と類 似 した 理 論 的 枠 組 み を持 つVSCF[1][2]法 及 び VSCF‑CI[2】[3]法 が非 調 和 振 動 解 析 に広 く用 い られ て い る。VSCF法 は振 動 モ ー ドを分 割 し、 全 波 動 関数 を 単 モ ー ド波 動 関数 のHartree積 で 近 似 す る為 振 動 自由度 の 増加 に強 い と い う利 点 を持 つ 。 しか し、現 代 分 子 科 学 で重 要 な 反 転 や 内部 回 転 に沿 っ た 多極 小 ポ テ ン シ ャ ル 曲面(PES)を 扱 う場 合 、振 動 モ ー ド問 の 結 合 が 強 く、VSCF法 で一 般 に用 い られ る基 準 座 標 を利 用 した モ ー ド分 割 で は 良 い近 似 に な らな い 。

基 準 座 標 に代 わ る 変数 を取 る事 で振 動 解 析 の 精 度 が 大 き く変 わ る事 は指 摘 され て い る[4]。

内部 座 標 や ロー カ ル モ ー ドを利 用 した 方 法 も報 告 され て い る[5][6】 が 、 これ らは適 用 可 能 な 分 子 が 限 られ て しま う。 どの様 な座 標 系 が 適 切 で あ る か 、万 能 な座 標 系 が あ るの か は 明 ら か で な い。 ま た 、 モ ー ド結 合 は多 様 な為 、 一般 論 を展 開す る事 は それ 自体 が 難 しい 。

本 研 究 で は 、従 来 の基 準 座 標 で は な くVSCF計 算 に適 切 な 曲線 座 標 を用 い る事 で こ の 問題 を解 決 した 。 こ の 曲線 座 標 の と り方 を ポ テ ン シ ャル 関 数 の偏 微 分 係 数 か ら決 定 す る方 法 を 開発 し、一 般 的 に利 用 可能 に した 。 ま た 、Fortran2000に よ り曲線 座 標 を用 い たVSCF・CI 計 算 及 び 振 動 回転 ス ペ ク トル の シ ミュ レー シ ョン を行 うオ ブ ジ ェ ク ト指 向 プ ロ グ ラ ム を 開 発 した。

(6)

2理 論 2‑1VSCF法

VSCF法 で は 、 振 動 の 全 波 動 関 数 Φ励 を 振 動 自 由 度 数 ア個 の 単 モ ー ド波 動 関 数 のHartree 積 で 近 似 す る 。

振 動 の座 標 は 一 般 に基 準 座 標 縣 を用 い る。 分 子 の あ る構 造(一 般 に は ポ テ ン シ ャル 関 数 の 一 階 偏 微 分 係 数 が 全 て ゼ ロで あ る構 造)を 原 点 に取 り、原点 にお ける分子 のポテ ンシャル 関 数 のヘ ッセ 行 列 の 固 有 ベ ク トル の うち 、 並 進 と回転 以 外 の 固 有 ベ ク トル を基 準 座 標 と定 め る。 ヘ ッセ 行 列 は(2)式で 定 め られ る。

P‑{〉 △x、,砺 △y、,阿 △z、,…,vmi△ZN},(2),(3),

Hkl=

ρk∂ ρ1'(4)

△Xi=:pc一xlo)

た だ し 、 ハ1とは 原 子 数 、Xiと は 播 目の 原 子 のx軸 方 向 の 位 置 、 κlo)とは 原 点 に お け る 播 目 の 原 子 の κ軸 方 向 の 位 置 で あ る 。 振 動 と 回 転 の 相 互 作 用 を 無 視 す る と 、VSCF法 で 解 く べ き Schr6dinger方 程 式 は 次 の よ う に な る 。

購+肱 〉‑EH1¢ ・(Q・)〉

た だ し 、v(q、,..,qf)とは ポ テ ン シ ャ ル 関 数 今 、 あ る モ ー ドqrに 注 目 し 、 各 単 モ ー ド波 動 関 数 は 規 格 化 さ れ て い る と し て(5)式 の 両 辺 にH{≠r〈Φκ(q)1を 乗 じ る と次 の よ うに な る 。

2∂q.2+㎞)隔 〉一← 一書 曝

㎞)一(H〈 ¢・(q・)1)肱砺(ロ ト㎞>>

κEk=Φk(Q・)1‑2∂q

、・ Φk(Qk)

(6), (7), (8)

KEkは 定 数 で あ る。従 っ て 、式(6)の 左 辺 の 演 算 子 で あ る 有 効 ハ ミル トニ ア ン に 対 す る 一 変 数 の 固 有 値 問 題 を 解 け ば よ い 。 こ の 固 有 関 数 を 得 る 計 算 を 全 て の モ ー ドで 繰 り返 し、固 有 値 が 収 束 した と こ ろ で 全 波 動 関 数 の 近 似 解 とす る 。こ の 為 、VSCF計 算 量 は アの オ ー ダ ー で あ る。

こ の 為 、 振 動 自 由 度 の 増 加 に 強 い とい う特 徴 を 持 っ 。

(7)

2‑2曲 線 座 標 ポ テ ン シ ャ ル 関lftv(q

,,一,Qf)の振 動 モ ー ド結 合 が 大 き い 場 合 、 全 波 動 関 数 が モ ー ド分 割 され る と い うVSCF法 で は 良 い 近 似 に な らな い 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 基 準 座 標 で は な く 基 準 座 標 を 非 線 形 変 換 した 曲 線 座 標 を 利 用 し て 振 動 モ ー ド結 合 を 小 さ く す る 方 法 を 考 案 し た 。

2‑2‑1ヘ ッ セ 行 列 の 固 有 ベ ク トル

基 準 座 標 は 、原 点 に お い て ポ テ ン シ ャル 関数 が 次 の よ うにテ イ ラー 展 開 出 来 る よ うに定 義 され て い る。

吸(レQ,)=v・+Σv・q・+± ΣvkkQ・2+6ΣVkl.q・Q・q.+…

一般 に はV

k=0で あ る よ うに 原 点 を取 る。三 次 の項 が無 視 で き る よ うな 原 点 近 傍 にお い て は モ ー ド分 割 され て い る。三 次 の 項 が 無 視 で き な い よ うな 点 にお い て、基 準座 標 にお け る ポ テ

ン シ ャル 関数 の ヘ ッセ 行 列 は次 の よ うに 書 け る。

H‑{∂ 護 海}=H⑩)+Σ,£i')q.+…'

(H9))‑v・ ・m

H(o)=diag(Vkk),

(10),(11), (12)

故 に 、交 差 項 の係lkVkimが ゼ ロで ない 場 合 ヘ ッセ 行 列 の 非 対 角 要 素 がゼ ロで な くな り、固 有 ベ ク トル の 向 き が変 わ る。

原 点 以 外 の点 で も、 そ の点 に お け るヘ ッセ 行 列 の 固有 ベ ク トル を振 動 の座 標 軸 に取 れ ば 、 そ の 点 近 傍 に お い て 振 動 モ ー ドは 分 割 され る。 そ こ で本 研 究 で は 、原 点 でqκ軸 に 一 致 し原 点 以 外 で はヘ ッセ 行 列 の 固 有 ベ ク トル に平 行 な座 標 軸 を持 つ よ うな座 標 系Skで 振 動 モ ー ド を 分割 す る。

式(10)で 定 義 され るヘ ッセ 行 列 の 固有 ベ ク トル に平 行 なベ ク トル 、 つ ま り座 標 系Sκの基 底 ベ ク トル を 求 め る。 こ のベ ク トル を並 べ た 行 列 をUと す る。 ポ テ ンシ ャル 関 数 が 実 関数 で あ る の で 、行 列Uは ヘ ッセ行 列 を次 の よ うに対 角 行 列 に 変 換 す る。

uTHU・ ・di・g(Z、,.,Zf) (13)

ヘ ッセ 行 列 は 式(10)の よ う に 原 点 近 傍 で テ イ ラ ー 展 開 で き る の だ か ら 、 行 列Uも 同 様 に テ イ ラ ー 展 開 可 能 で あ る。原 点 に お い てSκの 座 標 軸 は 基 準 座 標 と 一 致 す る の で 、 こ の テ イ ラ ー 展 開 は 次 の よ うに な る。

U‑E+Σ ・£')q・+…

(8)

∫κの座 標 軸 は直 交 す る とい う条 件 か ら、次 の様 な 関係 が 必 要 で あ る。

U†U‑E+Σ((U£1))+U£1))Qk+… →(U£1)) 一(u£1))

m、(z≠m)

式(13)の 左 辺 に 式(10),(14)を 代 入 す る と次 の よ うに な る 。

U†HU‑H(・)+Σ(H現)+H(・)Ug)+(Ug))H(o))q.+…

す る と、 式(16)の 行 列 が 対 角 で あ る 為 に 次 の 関 係 を 得 る。

(HSI))+(H(・)u!i1))+((uh'))H(・))一 ・(k≠Z)

→Vklm+蝋ug))

、t+((uh')))Vtl‑・(k≠

→(u!i1))(Vl一Vkk)‑Vklm(k≠z)

モ ー ドk・1につ い て は 式(・7)を 轍 す 事 が 出 来 な い の で(uh'))、1‑・ とす る ・ そ れ 以 外 の

場 合 基 底 ベ ク トル の成 分 の 一 部 は次 の よ うに決 定 で き る。

歳1蹴 野)

行 列u翻 の対 角 成 分 以 外 は、 これ で全 て得 られ た。 対 角 成 分 につ い て は この 時 点 で 決 定 で き ない 為 、後 に別 の 方 法 を用 い て決 定す る。

2‑2‑2曲 線 座 標 の 媒 介 変 数 表 示

座 標 系Skの 、座 標 系Qzに お け る基 底 ベ ク トル は次 の よ うに 表 す こ ともで き る。

u‑{諺

そ こ で 、∫κを基 準 座 標 原 点近 傍 で テ イ ラー 展 開す る。原 点 にお い て 基 準座 標 に 一 致 す る事 か ら次 の よ うに な る。

z塩=z缶 (20),(21)

式(20)を 式(19)に 用 い る と 、 次 の 関 係 式 が 得 られ る。

(9)

U‑{諺}‑E+Σ{Z翻 ρ翫+… →Z翫 一(ug))

す る と、 座 標 軸 の 直 交 を 定 め る 式(15)か ら次 が 分 か る 。

Z島t=‑Z差m(k≠1) (23)

こ の 時 、k,1,m全 て が 異 な る 場 合 を 考 え る と 、 式(21)よ り 次 を 得 る 。 Z翫=‑Z献=‑Z振=Z麗=Z超=‑Z塩

→Z彦 π=0(k≠1αndl≠mαndm≠1と) k,1,mの う ち 一 組 が 等 し い 時 、 式(18)よ り 次 を 得 る 。

z菱 一 一zk、‑Vl一v、 、(k≠1αndVkk≠Vt∂

2‑2‑3運 動 エ ネ ル ギ ー 演 算 子

座 標 系 を変 換 す る と、運 動 エ ネ ル ギー 演 算 子 も変 換 され る。運 動 エ ネ ル ギー 演 算 子 の変 換 は 厳 密 に行 わ な けれ ば な らな い 為 、基 準座 標 の 媒 介 変 数 表 示 は厳 密 に決 定 す る必 要 が あ る。式 (20)を 二 次 の 展 開で 打 ち切 る事 も出 来 るが 、 この 表 式 は 都 合 が悪 い。 これ は、基 準 座 標qκで 表 され た 関数 をSkで 表 す 事 が難 しい か らで あ る。そ こで 、式(20)の 逆 変 換 の展 開 を 二 次 で 打

ち 切 った 媒 介 変 数 表 示 で表 され る 曲線 座 標 を用 い る。

基 準 座標 にお け る運 動 エ ネ ル ギー 演 算 子 は 、一 般 に 次 の よ うに書 け る。

T‑一 一2b[llillG・1(Q 、,.㊥ π

た だ し 、Gと は 計 量 テ ン ソル で 、 振 動 と 回 転 の 相 互 作 用 を 無 視 す る 場 合 は 単 位 行 列 で あ る 。 振 動 回 転 相 互 作 用 を 含 め たWatsonの ハ ミル トニ ア ン[7]の 場 合 、計 量 テ ン ソル は 基 準 座 標 の 関 数 で あ る 。Watsonの ハ ミル トニ ア ン に 本 手 法 を 適 用 す る 為 に 、(26)式 を 曲 線 座 標 に 変 換 す る 。 偏 微 分 の 連 鎖 則 に よ り、

Σ

で あ る が 、(27)式 が 演 算 子 で あ る こ と に 注 意 す る と次 の 式 を 得 る 。

(10)

τ一Σ餓(聡

Σ 一(UTGU)kt一

Uの 厳 密 な表 式 を得 る為 に は 、Uの 逆 行 列 を利 用 す る。

∂qκ

∂Sl

式(30)を 用 い れ ば、 運 動 エ ネ ル ギ ー 演 算 子 の変 換 に必 要 な行 列uTGUを 得 る事 が 出 来 る。

2‑2‑4体 積 要 素

座 標 系 を変 え る と、体 積 要 素 も変 化 す る。 この 為 、基 準座 標 にお け る規 格 化 条 件 に 対 して 、 曲線 座 標 にお け る規 格 化 条 件 は 次 の よ うに な る。

∫ ¢ ・Φdq・ ・…'dqf‑∫ ¢ ・・IU‑・ldS・ ・…'dSf‑・

この 行 列 式lUlを 含 ん だ積 分 の厳 密 な 計 算 は 困難 で あ る。 そ こ で 、全 波 動 関 数 を次 の式 で 表 され るΦ∫に取 り直す 。

Φ=IUI‑iΦ (32)

す る と 、 波 動 関 数 Φ∫に 対 し て は 基 準 座 標 と 同 じ規 格 化 条 件 が 得 られ る 。 こ の 時 、 ハ ミ ル ト ニ ア ン が 次 の よ うに 変 換 さ れ る こ と が 知 られ て い る[8]。

H‑T+レ+Σ{1∂ 謬1(U・GU)kl∂i鐸1一 耳〜蔵(U・GU)kl∂ 罪1)}

す る と、体 積 要 素IUIが 基 準 座 標 と 比 べ て 大 き く 異 な る と 、こ の 演 算 子 の 影 響 が 大 き く な る 。 そ こ で 、 原 点 近 傍 でIUIの 変 化 を 最 小 に す る 為 に 次 を 定 め る 。

。‑1Ultr(U‑1∂IUl∂Sk)

これ に よ り、座 標 変 換 の 媒 介 変 数 表 示 が決 定 で き る。

(11)

2‑3赤 外 ス ペ ク トル

分 子 の 振 動 と 回 転 の 波 動 関 数 取.を 用 い る と 、 そ の 分 子 が Ψノκ'り'へ遷 移 す る 時 の モ ル 吸 光 係 数 ε(ω)は電 気 双 極 子 近 似 す る と 次 の よ う に 書 け る 。

ω ・fk"・k。N。1〈ΨwlFl㌦>1

(ω 一6・j・k・v',jkv)+γ。u2

た だ し、ωノ'k'〆丞vと は 各 状 態 の エ ネ ル ギ ー の 差 娠 。‑Eノ'k'v'と 同 じエ ネ ル ギ ー を 持 つ 光 の 角 周 波 数 。 ま た 、γc。llとは ス ペ ク トル の 衝 突 幅 で 、 分 子 の 大 き さ 、 質 量 及 び 気 体 の 圧 力 に 依 存 す る。ま た 、pと は 分 子 の 電 気 双 極 子 モ ー メ ン ト。NAは ア ボ ガ ドロ 定 数 、eoは 真 空 の 誘 電 率 、 充は デ ィ ラ ッ ク 定 数 。 こ の 分 子 の み か ら成 る 気 体 の 赤 外 ス ペ ク トル を シ ミ ュ レー シ ョ ンす る に は 、 各 状 態 の 精 密 な 波 動 関 数 Ψ痂 と 、 状 態 間 の 電 気 双 極 子 モ ー メ ン ト の 変 化

Ψノ'、》1咄 り〉を 計 算 す る 必 要 が あ る 。

波 動 関 数 ㌦.を 計 算 す る 時 に も 、 本 研 究 の 曲 線 座 標 は 利 点 を 持 つ 。 基 準 座 標 に お け る振 動 と 回 転 の ハ ミル トニ ア ン は 、Watsonの ハ ミル トニ ア ン[7]と して よ く 知 られ て い る。

H‑一 一 Σ 一Gkl‑+V一 百t・(μ)+iΣ ル μ・協

Σ Σ('^00^!・o・・ご∂q、+̀∂lilGkal・)

た だ し、μαわと は 慣 性 モ ー メ ン トの 逆 行 列 で 、計 量 テ ン ソ ル と 同 じ で あ る 。 σ醜 は 計 量 テ ン ソ ル の 振 動 と 回 転 の 要 素 で あ る 。 慣 性 モ ー メ ン トの 基 準 座 標 に お け る テ イ ラ ー 展 開 は 既 に 知

ら れ て お り、 こ れ を 曲 線 座 標 に 変 換 す る 事 は 式(26)を 用 い れ ば 容 易 で あ る 。 基 準 座 標 に お け

る翻 量麟 子毒 についても・翻 エネノレギー麟 子を変拠 た日寺と同様に変換す る事が 出 来 る。こ の よ うに 、本 研 究 の 曲線 座 標 を利 用 す る事 で 精密 な 振 動 回 転 の ハ ミル トニ ア ン も 直 ち に用 意 す る こ とが 出来 る。

(12)

3プ ロ グ ラ ム

3‑1振 動 解 析 プ ロ グ ラ ム の 概 要

本 研 究 で 開発 した プ ロ グ ラ ム の 主 な ク ラス 図 は 次 の よ うで あ る。

pkg

《<irlterface》>

IVWav● 血mc価on

+getMomentumO:void +ge甘 くineticEnergy(}:void +getPosition(1:void

+getMomθntt/mO=vo'd +getκ'net'cEnergyO=レo'd +9θtPositionO二vo'd

,い}卜

VSingleModeWaveFunctionク ラ ス は 、VSCF波 動 関 数(単 モ ー ド波 動 関 数 のHartree積) の ク ラ ス で あ る 。単 モ ー ド波 動 関 数 を モ ー ド数 だ け 保 有 し 、運 動 エ ネ ル ギ ー 演 算 子 や 位 置 演 算 子 の 期 待 値 を 計 算 す る。

IVSingleModeWaveFunctionsイ ン タ ー フ ェ ー ス は 、 基 底 関 数 展 開 され た 単 モ ー ド波 動 関 数 の イ ン タ ー フ ェ ー ス で あ る 。DVRや 調 和 振 動 子 基 底 等 、 こ の イ ン タ ー フ ェ ー ス を 実 装 す る 事 で 基 底 関 数 展 開 の 方 法 は 容 易 に 拡 張 可 能 に な っ て い る 。

VSCFMethodク ラ ス はVSCF法 の 解 を 求 め る ク ラ ス で あ る 。VSingleModeWaveFunction の イ ン ス タ ン ス を保 有 し、SCFサ イ ク ル でSchr6dinger方 程 式 を 解 く度 に 単 モ ー ド波 動 関 数 の 基 底 関 数 展 開 係 数 を 更 新 す る 。

IVOperatorイ ン タ ー フ ェ ー ス は 、 演 算 子 の イ ン タ ー フ ェ ー ス で あ る 。VSCF波 動 関 数 か ら運 動 量 演 算 子 や 位 置 演 算 子 の 行 列 を 取 得 し、 組 み 合 わ せ て 運 動 エ ネ ル ギ ー 演 算 子 や ポ テ ン シ ャ ル 関 数 の 演 算 子 を 作 る 。ポ テ ン シ ャ ル 関 数 、運 動 エ ネ ル ギ ー 演 算 子 は こ の イ ン タ ー フ ェ ー ス を 実 装 して い る 。そ れ 以 外 の ユ ー ザ ー が 定 義 し た 新 しい 演 算 子 も 、こ の イ ン タ ー フ ェ ー ス を 実 装 す れ ば 利 用 で き る 為 、 容 易 に拡 張 可 能 に して い る。

VEffectiveOperatorク ラ ス は 、VSCFサ イ ク ル を 行 う際 の 有 効 ハ ミル トニ ア ン を 計 算 す る

(13)

VCIMethodク ラ ス は 、VCI波 動 関 数 の ク ラ ス で あ る。VCI法 に お け る ハ ミル トニ ア ン 行 列 の 対 角 化 も 行 う。 こ の ク ラ ス は 】VWavefunctionイ ン タ ー フ ェ ー ス を 実 装 して い る 。 こ の イ ン タ ー フ ェ ・ス は 、IVOperatorを 受 け 取 りそ の 演 算 子 の 行 列 形 式 を 返 す 手 続 き を 持 っ て い る 。 これ を 利 用 し て 電 気 双 極 子 モ ー メ ン トの 積 分 値 等 を 得 て 赤 外 ス ペ ク トル シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 う事 が 出 来 る。 ま た 、 】VWavefunctionイ ン タ ー フ ェ ー ス を 実 装 す る 事 でCI以 外 の 高 精 度 な 振 動 波 動 関 数 を 容 易 に 実 装 、 組 み 込 む こ とが 出 来 る 。

(14)

4応 用結果

4‑1ア ン モ ニ ア 分 子

ア ンモ ニ ア分 子 は 、傘 反 転 に 二極 小 を持 つ 分 子 で あ る。傘 反 転 の遷 移 状 態 を原 点 に基 準座 標 を作 る事 で 、二 極 小 ポ テ ン シ ャル 曲面 を考 慮 した振 動解 析 を可 能 に した。 しか し、 この基 準 座 標 系 で は 傘 反 転 とNH伸 縮 の振 動 モ ー ド結 合 が 非 常 に 強 い こ とが 分 か って お り、従 来

のVSCF法 で は振 動 数 が 実 験 とほ とん ど一 致 しな い。

4‑1‑1ポ テ ン シ ャ ル 関 数

精 密 な 振 動 解 析 を 行 う為 に 、 対 称 性 を 利 用 し て 精 密 な ポ テ ン シ ャ ル 関 数 の 作 成 を 行 っ た 。 ポ テ ン シ ャ ル 関 数 は 有 限 次 多 項 式 に 最 小 二 乗 フ ィ ッ ト した 。

傘 反 転 の 遷 移 状 態(D3h)を 原 点 に 基 準 座 標 を 作 る と 、 振 動 モ ー ドの 対 称 性 は 、N且 伸 縮 G1(AD、 傘 反 転Q,(鰐)、 縮 重 伸 縮q3a,q3b(E')、 縮 重 変 角q4α,q4b(E')で あ る 。た だ し 、q3a,q4α は あ る σvに 対 して 対 称 な モ ー ド とす る。 対 称 操 作C3は 縮 重 モ ー ド軸 を120。 回 転 させ る の で 、 こ れ を 簡 潔 に 記 述 す る 為 ま ず 縮 重 モ ー ドは 次 の よ う に 極 座 標 表 示 す る 。

膿 鍛:81多 驚:1麟:ε1£

ポ テ ン シ ャ ル 関 数y(A乞)を 基 準 座 標 原 点 に お い て テ イ ラ ー 展 開 し て 式(37),(38)を 用 い る と 、 ポ テ ン シ ャ ル 関 数 は 次 の 式 の よ う に フ ー リエ 級 数 展 開 で き る 。

Σ

た ら   れ    りの      +h、 、m。。,・in(・ θ、+Pθ4)}

各 対 称 操 作 は振 動 モ ー ドを 次 の例 の よ うに変 化 させ る が 、 ポ テ ン シ ャル 関 数 は これ に対 し 不 変 で あ る。

C,V(q、,q、,r,,e,,・ 、,e、)‑V(q、,q、,r・,e・+lz・ …e・+1π)'

CSV(Q、,q、,r、,θ 、,r、,e、)=レ(Q、,‑q、,γ,,一 一e3,r・,一 θ・)・

σhV(q、,q,,r3,θ3,r4,e4)=V(q、,‑q2,r3,θ3,r4,θ4),

σ 。V(q、,q2,r3,e3,r4,θ4)=V(Q、,q,,r3,‑e3,r4,一 θ4)

(40), (41), (42), (43)

従 っ て 、 係 数 ακ漁 。p,妬 ㈱ 。pの一 部 は 対 称 性 か ら零 と 決 ま る 。

わ伽 η。Pニo・

α規ηLπop=0(ε アZ=2̀十1,̀∈Z),

α伽 。。P=0(げ ・+P=3̀±1'ご ∈Z)

(44), (45), (46)

こ こ か ら 、一 部 の テ イ ラ ー 展 開 係 数 は ゼ ロ に 決 ま る 。 更 に 、 明 ら か に ゼ ロ で は な い テ イ ラ ー

(15)

展 開 係 数 に つ い て も 、 対 称 性 か ら 制 限 が か か る 。 例 え ば 、 縮 重 モ ー ドに 関 す る 三 階 微 分 係 数 は 次 の 様 な 関 係 を も つ 。

∂3レ

∂ρ、。∂e,、2。 ∂ρ,。3。

(47),

∂3V∂31/

(48),

∂q

、。∂q、。2∂q、 。∂Q、、2(

49)

∂3V∂3V

∂ρ・∂q・・∂q・・ 。

こ れ に よ り 、 多 項 式 フ ィ ッ ト に 必 要 な 係 数 を 大 幅 に 減 ら す 事 が 出 来 る 。

4‑1‑2ア ン モ ニ ア 分 子 の 基 準 座 標 と 曲 線 座 標

NH,分 子 は 傘 反 転 に 二 つ の 極 小 を 持 つ 。CCSD(T)/aug‑cc‑pvtzで 構 造 最 適 化 す る と 、安 定 状 態 の 構 造 と遷 移 状 態 の 構 造 は 次 の 図1の よ う に な る 。

図1.CCSD(T)/aug‑cc‑pvtzで 計 算 し た ア ン モ ニ ア 分 子 の(左)安 定 状 態 の 構 造 と(右) 遷 移 状 態 の 構 造

NH結 合 長 は 遷 移 状 態 と安 定 構 造 で ほ と ん ど変 化 しな い 。 こ の 為 、 直感 的 に は 傘 反 転 の 変 数 と して 分 子 軸 とNH結 合 の 成 す 角 やNH結 合 長 を取 れ ば 良 い 事 が 分 か る 。実 際 に そ の よ うな 変 数 を 用 い る 事 で 高 精 度 な 振 動 解 析 を 行 う事 が 出 来 る と分 か っ て い る が[5]

[6]、本 研 究 の 曲線 座 標 は これ を経 験 的 で な くポ テ ン シ ャ ル 関 数 か ら理 論 的 に 得 る 事 が 出 来 る。

遷 移 状 態 を原 点 に 取 っ た 時 の 傘 反 転 の 基 準 座 標 ρ2及びNH伸 縮 の 基 準 座 標q1の 表 す 運 動 は 、図2の よ うに な る。 基 準 座 標 は 原 子 の 直 線 的 な 運 動 を記 述 して お り、傘 反 転 の 基 準 座 標 だ け を変 位 させ て も安 定 構 造 に な らな い 。 ま た 、傘 反 転 が 変 位 した 先 で もNH伸 縮 の 変 位 ベ ク トル は 元 の 平 面 構 造 と平 行 な 向 き で あ り、NH伸 縮 を 表 現 で き て い な い こ

と が 分 か る。

(16)

図3.CCSD(T)/aug‑cc‑pvtzで 計 算 し た ア ン モ ニ ア 分 子 の(左)傘 反 転 の 基 準 座 標 が 表 す 運 動 と(右)NH伸 縮 の 基 準 座 標 が 表 す 運 動

ア ン モ ニ ア 分 子 の 本 研 究 の 手 法 に よ る 曲線 座 標 は 、傘 反 転S2とNH伸 縮Slの ニ モ ー ドだ け を 見 る と、 次 の 式 の よ うに パ ラ メ ー タ 表 示 され た 。

∫、=q、+019×q22,S、 ニq、‑037×q、Q、 (50),(51)

   

係 数 の 単 位 はa.m.u.‑5A。 こ の 時 、 全 微 分 は 次 の よ うに 表 さ れ る 。

dS1ニd(〜1十 〇37×(〜2d(〜2,dS2=(1‑037×(〜1)d(〜2‑037×q,d(〜i (52),(53) す る と、NH伸 縮 の 曲線 座 標 が 表 す 微 小 な運 動dS1は 基 準 座 標 原 点 にお い て 基 準 座 標 の微 小 運 動dQ,と 一 致 す るが 、傘 反 転q,方 向 に 動 く と傘 反 転 の基 準 座 標 の微 小 運 動dQ,が 混 ざ る。

ま た 、 傘反 転dS2は 傘反 転q,方 向 に動 く と伸 縮 の 基 準 座 標 の 微 小 運 動dQ1が 混 ざ る。 これ ら を 図示 す る と、図4の よ うに な る。 これ ら運 動 は 、直感 的 な 傘 反 転 とNH伸 縮 の 運 動 とも一 致 して い る。

(17)

図4.CCSD(T)/aug‑cc‑pvtzで 計 算 し た ア ン モ ニ ア 分 子 の(左)傘 反 転 の 曲 線 座 標 が 表 す 運 動 と(右)NH伸 縮 の 曲 線 座 標 が 表 す 運 動

4‑1‑3振 動 解 析 結 果

図5にNH3分 子 の 基 準 座 標 及 び 曲 線 座 標 に お け るPES及 びVSCFとVSCF‑CIの 波 動 関 数 を 示 した 。 ハ ミル トニ ア ン に はWatsonの 振 動 ハ ミル トニ ア ン[7]を 用 い た 。VSCF 関 数 の 単 モ ー ド波 動 関 数 はDVR[9][10][ll]を 利 用 して 基 底 関 数 展 開 した。 座 標 の 原 点 は 傘 反 転 の 遷 移 状 態 に 取 っ た 。基 準 座 標 に お け る これ ら の極 小 と遷 移 状 態 を 結 ぶPESの 谷 線 は 傘 反 転 とNH伸 縮 平 面 上 で 大 き く曲 が っ て い る。 この 為 、傘 反 転 とNH伸 縮 に は 大 き い モ ー ド結 合 が あ り、VSCF‑CI波 動 関数 はPESの 谷 線 に 沿 っ て 歪 む 。VSCF波 動 関 数 で は こ の 歪 み を 表 現 出 来 な い 。

基 準 麟 に お け るNH伸 縮 の 第 一 励 起 状 態 のVSCドCI瀬 ΦΣIQ>は・次 の 式 の よ うにVSCF波 動 関 数 の 線 形 結 合 で 表 され る。 ま た 、NH伸 縮 の 第 一 励 起 状 態 は縮 重 変 角 の 二 倍 音 と擬 縮 退 して い る為 、CI波 動 関 数 に 多 く含 ま れ る 。 た だ し 、vfの 右 上 の 添 え 字 は 傘 反 転 の 波 動 関 数 の 対 称 性 を 表 す 。+は 対 称 、 一は 反 対 称 で あ る事 を示 す 。

1ΦΣIG>‑6鮒 〉+・ ・%(12v才 ・〉+12vあ 〉)+8%1ゆ+…

一 方、曲線 座 標 に お け る傘 反 転 の 軸 はPESの 谷 線 に近 く、二 つ の 極 小 点 は ほ とん どS2軸 上 に あ る。 こ の 為 、VCI波 動 関 数 の 歪 み は 基 準 座 標 に 比 べ て 小 さ くな り、VSCF波 動 関 数 で も良 い 近 似 とな る。実 際 、曲 糎 標 に お 。ナるVSCFCI瀬 ΦΣ1、〉は 次 の よ うに

な る 。

(18)

1ΦXi,、〉‑79%lvぞ 〉+9%(12vあ 〉+12vあ 〉)+…+・%lv芝 〉+… (55) 基 準 座 標 で は8%程 含 まれ て い た 傘 反 転 の 基 本 振 動 の 波 動 関数 は ほ とん ど含 ま れ て お ら ず 、 確 か に モ ー ド結 合 が 小 さ く な っ た。

表1にNH3分 子 の 基 準座 標 と 曲線 座 標 を用 い た 非 調 和 振 動 解 析 結 果 を 示 した 。 従 来 の 基 準 座 標 を 用 い た 場 合 、 強 い モ ー ド結 合 に よ りVSCFの 振 動 数 は 傘 反 転 で50%以 上 の 大 き い 誤 差 を 生 じ る。本 研 究 の 曲線 座 標 を 用 い る事 で 、誤 差 は10%以 内 に 収 ま っ た 。他 の モ ー ドの 振 動 数 はVSCFレ ベ ル で も3%以 内 で あ り、曲 線 座 標 の 有 用 性 を示 して い る。

.︒5¥σ200 20

40

ρ

︑熱

皿三

///〃

//厚う/L.'

一1‑0 .50α51

Q2/a.u・

r!

/,f

4コ 、≧、

、一 総 桜

娑夕

鴬勢し!り 月

一1‑0 .500.5

Q21a.u.

/

///

美蒙 浸 話

q

〈1

0.2\ ↓02

   

響 麟

〇.4 1‑i嚇0。500。51

Qプa・u.

0.4{).4 O.4

0.2

,.ロ¥

0

一〇 .2

訟lll

̀'κ

'//μ//

\\ ≡三ニ

〇 、4

‑1‑O .500.51‑1‑O.500.51 S2/a.u.S21a・u・

図5.(上)左 か ら 、 基 準 座 標 に お け るNH伸 縮q1と 傘 反 転Q,の 面 上 のPES及 び 伸 縮 の 基 音 振 動 のVSCF、VCI波 動 関 数 。(下)左 か ら 、 曲 線 座 標 に お け るNH伸 縮 ∫1と傘 反 転 ∫2の面 上 のPES及 び 伸 縮 の 基 音 振 動 のVSCF、VCI波 動 関 数 。

v‑'dy  T‑一 一h'}H‑rH‑一 一'一一一、

/〜'}∫ 一へ\

α2惣 ≧:1た

一受 ゲ α2

・尋}癩 蕎ジ ノゑ熱 ・募

遷 導多 、 ∵=1醤劾

̲0.21\ 一=ノ 、魑一「 一一/・ の.2

レー‑‑'T"一/1‑'一 ▼"曹'一

1'̀

.0.4」0、4

層1圃 〕.500.51

S21a・u・

実験 基準座標 曲線座標

VSCF VSCF VCI

トンネ ル 分 裂 0,793 0,020 0,451 0,642

傘反転 v芝 932.43 1473.84 58.1% 994.55 6.66% 961.11 3.08%

968.12 1475.18 52.4% 1017.30 5.08% 985.29 1.77%

縮重変角 v才 1626.28 1647.74 1.32% 1649.04 1.40% 1624.04

・0.14%

1627.37 1647.76 1.25% 1649.49 1.36% 1626.46 α06%

伸縮 vf 3336.08 3207.34 ・3.86% 3371.16 1.05% 3337.29 0.04%

vf 3337.11 3207.36 ・3.89% 3371.61 1.03% 3338.91 0.05%

縮重伸縮 vま 3443.68 3555.13 3.24% 3526.71 2.41% 3443.29

・0.01%

v三 3443.99 3555.15 3.23% 3527.16 2.41% 3444.52 0.02%

表1.NH3分 子 の 振 動 数(cm‑1)

(19)

4‑1‑4赤 外 ス ペ ク トル シ ミ ュ レ ー シ ョ ン

ハ ミル トニ ア ン に はWatsonの ハ ミル トニ ア ン を 用 い 、 振 動 のVCI波 動 関 数 と 剛 体 回 転 子 近 似 に お け る 回 転 の 波 動 関 数 のHartree積 の 線 形 結 合 で 全 波 動 関 数 を 表 し 、 結 合 係 数 を 変 分 的 に 決 定 し た 。

図2にNH3分 子 の 赤 外 ス ペ ク トル 及 び シ ミ ュ レー シ ョ ン を 示 し た 。 傘 反 転 の ピ ー ク の 分 裂 を 再 現 す る事 が 出 来 た。 振 動 回 転 相 互 作 用 を取 り入 れ る事 に よ り、 この傘 反 転v芸の 吸 収

バ ン ドの 形 状 を再 現 す る事 が 出 来 た 。

75"Qom

Vtavenumbers(cm一

rb●Lo6

{‑

1'・・as l'o'"

書:=

図2.NH3のIRス ペ ク トル 。(上)実 験[12】(下)本 研 究 。

(20)

5結 論

座 標 軸 が ポ テ ン シ ャル 関数 のヘ ッセ 行 列 の 固有 ベ ク トル と平 行 で あ る よ うな 曲線 座 標 を 用 い る事 で 、VSCF法 の精 度 を 向上 させ た。

曲線 座 標 を利 用 した 非調 和 振 動 解 析 を行 い 、赤 外 ス ペ ク トル を シ ミュ レー シ ョンす る プ ロ グ ラ ム を 開発 した。

従 来 の基 準 座 標 と開発 した 曲線 座 標 を用 い て 、二 極 小 ポテ ン シ ャル を持 つ ア ンモ ニ ア分 子 のVSCF‑CI計 算 を行 っ た 。 曲線 座 標 を利 用 す る事 で ア ンモ ニ ア分 子 の 振動 数 はVSCFレ ベ ル で 実験 と よ く一 致 す る事 を示 した。計 算 したVCI波 動 関数 を利 用 して振 動 回 転 のCI波 動 関数 を計 算 し、 赤 外 ス ペ ク トル シ ミ ュ レー シ ョン を行 っ た。

(21)

6参 考文献

[1]J.M.Bowman,"Self‑consistentfieldenergiesandwavefunctionsfbrcoupled oscillators,"J.Chem.Phys.68,608,1978.

[2]PhilipR.BunkerandPerJensen,MOLECULARSYMMETRYAND SPECTROSCOPY,ARC.CNRC.

[31F,L.Tobin,J.M.Bowman,"AnSCF・stateinteractionmethodforcoupled oscillatorsystems,"Chem.Phys.47,151(1980).

[4]K,Yagi,M.Keceli,S.Hirata,"Directvibrationalself‑consistentfieldmethod:

ApplicationstoH20andH2CO,"J.Chem.Phys.137,204118,2012.

[51N.C.Handy,S,Carter,S.M.Colwel1,"Thevibrationalenergylevelsofammonia,"

Mol.Phys.96(4),477,1999。

[6】T.Rajamaki,A.M.,L.H.,"Vibrationalenergylevelsforsymmetricand asymmetricisotopomersofammoniawithanexactkineticenergyoperatorandnew potentialenergysurfaces,"J.Chem.Phys。118(14),6358,2003.

[7]J.K,G.Watson,"Simplificationofthemolecularvibration‑rotationhamiltonian,"

Mo1.Phys.15(5),479,1968.

[8]B.Podolsky,"Quanturd‑mechanicallycorrectfbrmofhamiltonianfunctionf()r conservativesystems,"Phys.Rev.32,812,1928.

[9]A.S.Dickinson,P.R.Certain,J.Chem.Phys.49,4209,1968.

[10]D.0.Harris,G.G.Engerholm,W.D.Gwinn,J.Chem.Phys.43,1515,1965.

[11]R.Meyer,J.Chem.Phys.52,2053,1970.

[12]NIST,[オ ン ラ イ ン].Available:http:〃webbook.nist.gov/chemistry/.

(22)

7謝 辞

本 研 究 を進 め る に あ た り、多 くの ご指 導 ・ご助 言 を下 さい ま した指 導教 官 で あ る波 田雅 彦 教 授 及 び 放 送 大 学 の 橋 本 健 朗 教 授 、様 々 な 場 面 で お 世 話 に な りま した 阿部 穣 里 助 教 を は じ め とす る理 論 ・計 算 化 学研 究 室 の方 々 に感 謝 致 しま す 。

参照

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