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石井富美子

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Academic year: 2021

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(1)

1 本研究の目的

児童養護施設等では, 被虐待児の入所数が増えており, 対応に苦慮するという声を頻繁に聞 くようになった。 現場の施設職員と共に, 施設における被虐待児の対応を具体的に検討してい くことを本プロジェクト研究の目的とする。 被虐待児童の具体的な問題を検討し, 机上の空論 ではない実務に直結した対応法を模索する。 また, 施設職員との研究会 (講演会) と事例検討 会を行うことによって, 本学と埼玉県内の福祉施設との連携関係を深め, 一種の産学協同体制 作りをすることも本研究のねらいの一つとしたい。

2 研究期間

平成12年10月〜平成14年3月

3 研究方法

調査研究, 事例研究, 児童養護施設等の職員との研究会という三つの観点から研究を進める。

プロジェクト研究 「児童養護施設等における 被虐待児 の対応について」 中間報告

村尾 泰弘 (代表)

**

石井富美子

***

杤尾 勲

****

大竹 智

*****

爾 寛明

******

安藤 健一

*******

大和田明見

********

大村 智重

*********

勝田 雅実

**********

*The Interim Report of the Research Project, On the Treatment of Abused Children in Nursing Institution

**Yasuhiro MURAO (立正大学社会福祉学部人間福祉学科)

***Tomiko ISHII (立正大学社会福祉学部人間福祉学科)

****Isao TOCHIO (立正大学社会福祉学部人間福祉学科)

*****Satoru OTAKE (立正大学社会福祉学部人間福祉学科)

******Hiroaki SONO (立正大学社会福祉学部人間福祉学科)

*******Kenichi ANDO (立正大学大学院社会福祉学研究科修士課程2年)

********Akemi OWADA (立正大学大学院社会福祉学研究科修士課程2年)

*********Tomoe OMURA (立正大学大学院社会福祉学研究科修士課程1年)

**********Masami KATSUTA (立正大学大学院社会福祉学研究科修士課程1年) キーワード:児童虐待, 被虐待児, 児童養護施設

(2)

事例研究

施設職員が実際にかかわってきたケースを素材に, 埼玉県内の施設職員とともに事例研究を おこなう。 児童養護施設等における 被虐待児 の対応について, 接近困難な点を整理すると ともに, よりよい対応を検討する。

児童養護施設等の職員との研究会

当大学に虐待研究者を招いて講演会を開催する。 施設職員とともに虐待につての研究会を行 い, 虐待についての理解を深める。

調査研究 (児童養護施設等職員の被虐待児の処遇と職務に関する意識調査)

埼玉県内の児童養護施設 (17施設) を対象に, 対応が難しい被虐待児のイメージ, 処遇の実 態等を明らかにする。

・本プロジェクト研究員と施設職員との集まりを講演会とケース研究として開催し, その一方 で, 本プロジェクト研究員によるアンケート調査のためのプロジェクト研究会議を行った。

詳細は研究経過を参照。

4 研究経過

事例研究

第1回 虐待事例検討会

時:平成13年4月26日

午後3時〜5時

所:立正大学 熊谷キャンパス 5号館 5205教室 事例提供者:児童養護施設 「おお里」 大塚良一氏

第2回 虐待事例検討会

時:平成13年6月28日

午後3時〜5時

所:立正大学 熊谷キャンパス 5号館 5205教室 事例提供者:児童養護施設 「雀幸園」 荒木浩二氏

第3回 虐待事例検討会

時:平成13年10月11日

午後3時〜5時

所:立正大学 熊谷キャンパス 5号館 5205教室 事例提供者:児童養護施設 「いわつき」 古賀裕巳氏

第4回 虐待事例検討会

時:平成13年11月15日

午後3時〜5時

所:立正大学 熊谷キャンパス 5号館 5205教室

(3)

事例提供者:児童養護施設 「子供の町」 根岸 昇氏

以下のような視点から討論が展開された

・被虐待児の暴言・暴力への職員としての対応

・職員間の役割機能の分担

・共同生活の場としての施設生活の維持と被虐待児への治療的対応

・心理的な対応と生活処遇

・措置変更の判断基準をどのように考えるか

・被虐待児を家庭復帰させる場合の判断基準をどのように考えるか

・児童相談所やその他の関係機関との連携

児童養護施設等の職員との研究会 第1回 虐待講演会

時:平成13年3月13日

午後3時〜5時 テーマ:臨床心理学からみた 「虐待」

所:立正大学 熊谷キャンパス 6号館 6101教室 師:上智大学 助教授 横山恭子氏

第2回 虐待講演会

時:平成13年5月22日

午後3時〜5時 テーマ: 「虐待」 と 「福祉」

所:立正大学 熊谷キャンパス 8号館 8101教室 師:日本社会事業大学教授 高橋重宏氏

第3回 虐待講演会

時:平成13年7月9日

午後3時30分〜5時 テーマ:弁護士の視点で虐待を考える

所:立正大学 熊谷キャンパス 8号館 8101教室 講師:弁護士 小笠原彩子氏

第4回 虐待講演会

時:平成13年9月20日

午後3時00分〜5時 テーマ:被虐待児の心理とその対応

所:立正大学 熊谷キャンパス 8号館 8101教室 師:大阪大学 助教授 西澤 哲氏

・以上のように, 生活, 心理, 法律, 制度など多角的な視点から虐待についての理解を深めた。

(4)

調査研究 (児童養護施設等職員の被虐待児の処遇と職務に関する意識調査)

① 経 過

平成13年3月13日 午前10時〜12時 統計基礎講座 所:立正大学 熊谷校舎 9号館2階談話室 師:山田裕紀子氏

(アンケート調査のコンピューター処理に向けての準備として, 大学院生等を対象とした講義) 平成13年5月22日

午後5時

虐待講演会に参加した施設職員対象に, 虐待についてのパイロット調査を施行。

アンケート用紙作成についてのプロジェクト研究会議 平成13年6月5日

午後6時〜8時

平成13年7月10日

午後6時〜8時

平成13年7月24日

午後6時30分〜8時30分 平成13年8月7日

午後3時〜5時

平成13年8月30日

午後4時〜6時 平成13年9月29日

午後6時〜8時 平成13年10月2日

午後6時〜8時 平成13年10月20日

午後3時〜5時 平成13年10月23日

予備調査

平成13年11月30日 三愛学園訪問 (石井・大竹)

埼玉県児童養護・児童自立支援施設協議会 高瀬会長に調査協力依頼 平成13年12月20日

アンケート用紙完成

平成13年12月26日

アンケート用紙発送に向けての準備

平成14年1月7日

アンケート調査用紙発送 (埼玉県内児童養護施設17施設)

(以上, 平成14年1月15日現在での研究経過)

② 調査用紙作成

a. 被虐待児の症状・病態, 特徴的行動について

先行研究・調査では, 被虐待児の症状・病態, 特徴的行動について, 以下のように明らかに されている。

児童精神科医の岩田は, 被虐待児の症状を, 身体面, 行動面, 精神・神経面の三つに分け, 上げている。 (表−1〜3)(1)

症状は多彩で, ほとんどの被虐待児には10以上の症状が認められる。 身体面の症状および運 動発達, 言語発達の遅れは, 比較的早く改善する。 それに対して, 精神・神経面と行動面は, 時間が経過してから出現することが多く, 数年後ということもある。

小児科医の奥山は, 虐待を身体的虐待, ネグレクト, 性的虐待, 情緒的虐待の4つに分け,

(5)

それぞれの虐待を受けた子どもに見られやすい, 行動および心理的問題をあげている。 (表4)(2) 児童養護施設に入所した被虐待児調査研究で, 深刻な虐待として, 生命にかかわる身体的虐待 や性的虐待が大きく取り上げられているが, 心 理的虐待やネグレクトの方がはるかに多くの特 有の (不適応) 行動を引き起こすと指摘し, そ れぞれの行動特徴を次のようにあげている(3) 身体的虐待 「自己中心的傾向」 「偽成熟性」

性 的 虐 待 「逸脱行動化」 「身体行動化」

心理的虐待 「暴力的行動化」 「親密な人間 関係障害」 「自己中心的傾向」

「偽成熟性」 「逸脱行動化」

ネグレクト 「逸脱行動化」 「親密な人間関 係障害」 「偽成熟性」 「意欲喪失」

「自己中心性」

関東弁護士会連合会が行った子どもへの虐待

表2 行動面の症状 1) 食行動異常

過食, 多食, 異食, 盗食, 食欲不振 2) 便尿失禁, 弄便

3) 常同姿勢 4) 自傷行為 5) 緘黙 6) 虚言 7) 盗み, 万引き 8) 家出徘徊 9) いやがらせ 10) 他児への暴力 11) 集団不適応

12) おちつきがない, 多動 13) 器物破壊

14) だらしなさ 15) いじめ 16) 火遊び, 放火 17) 性的いやがらせ 18) 性的逸脱行動 19) 自殺企画

表3 精神・神経面の症状 1) 運動発達の遅れ

2) 情緒発達の遅れ 3) 言語発達の遅れ 4) 抑うつ 5) 過敏 6) 不眠 7) 体が硬い 8) 無表情 9) 活気がない 10) 頑固 11) 気分易変 12) 易興奮 13) 注意集中困難 14) 人との距離がない 15) 大人の顔色をうかがう 16) パニック

17) チック 18) ファンタジー 19) 転換症状, 心因性疼痛 20) 解離症状

21) 確認強迫 22) 不定愁訴 23) 被害念慮

24) 加害者意識 (現実から遊離した) 25) 希死念慮

表1 身体面の症状 1) 体重増加不良

2) 低身長, 成長障害 3) 皮膚症状

皮下出血, 擦過傷, 表皮剥離, 膿疱, 皮膚 緊張低下

4) 打撲傷, 裂傷, 切傷 5) 骨折, 脱臼, 骨端破壊 6) 熱傷, 火傷

7) 頭部外傷

頭蓋骨骨折, 硬膜下血腫, 脳内出血 8) 内臓損傷

9) 脊椎損傷, 麻痺 10) 眼症状

網膜剥離, 白内障 11) けいれん 12) てんかん 13) 脱水症, 低栄養 14) 下痢, 嘔吐, 消化不良 15) 循環障害

16) 凍傷

17) 歯牙脱落, 舌損傷 18) 肛門・性器の損傷 19) 死亡

(6)

の調査では, 児童養護施設の職員が日常生活で対処に困難を感じる被虐待児の行動について, 62の自由記述回答が報告書の資料にあげられている(4)

b. 児童養護施設における児童の処遇について

児童養護施設は, 長く 「保護者のない児童, 虐待されている児童とその他環境上養護を要と する児童を入所させて, これを養護する」 ことを目的とし, 施設現場では, 「家族的処遇」 が 求められてきた。 児童虐待が社会問題化し, 被虐待児の最後の拠り所として児童養護施設への 期待が高まっているが, 虐待についての専門的な理解が共通のものになっていないため, 被虐 待児への処遇がどうあるべきか職員は苦慮している現状である。 児童養護施設が専門性をたか めていくためにも, 科学的な調査を行い処遇のあり方を論議する必要が指摘されている(5)

児童養護施設には, 自立支援計画の作成が義務付けられ, 入所3ケ月で支援計画の見直しが 行われ, 年2回総括される。 この計画により, 具体的で適切な施設処遇と環境調整が可能とな るが, 計画の作成に当たっては, 子どもの行動を把握し, 虐待についての認識を共有すること が求められる(6)。 高橋は, 被虐待児に特徴的な行動は, 「虐待環境への適応行動の結果」 であ り, 児童養護施設は, 「再養育機能」 をもたなければならないと指摘している。 被虐待児の① パニック・癇癪行動 (絶叫, 号泣, 自害・他害行動) ②緘黙行動 (特定の場面・人に対する極 度の緊張) ③拒絶行動 (特定の場面・人に対する極度の拒絶) ④際限のない甘え・依存行動 (見捨てられ症候群) は, 生活の中のできごとと密接に連動して出現するという。 これらの行 動への対応として, 自己選択・自己決定を徐々に拡大するようなプログラムを作成し, ステッ プアップしていく 「行動療法的接近」, 生活の中でグループワークを通して行われる 「治療的 接近」, タイムアウト・セラピューティックホールディングなどの身体的介入による 「危機回 避」 を提言している。 いずれの対応も生活の中で行われることに大きな意味があると強調して

表4 各種虐待を受けた子どもに見られやすい, 行動および心理的問題 (奥山, 1997より)

身体的虐待 ネグレクト 性的虐待 情緒的虐待

・生活を楽しむ能力の低 下

・精神症状:夜尿・遺尿 症, 激しいかんしゃく, 多動, 奇異な行動・低 い自己評価

・学校での学習問題

・引きこもり

・反抗・過度の警戒 (凍 り付いたような凝視)

・強迫的行動

・擬成熟行動 (以上Mltinら,1976)

・暴力 (爆発的)

・ 愛 情 剥 奪 − 感 情 分 離 (過度の愛情希求と離 れることの繰り返し)

・感情の極端な抑圧

・他者と共感する能力の 低下

・暴力

・非行

・一般の知的能力の低下 (認知的刺激の欠如に よる)

(以上Polanskyら, 1981)

・多動

・頑固

・擬成熟

・恐怖あるいは不安

・抑うつ

・学校での困難

・怒りや憎悪

・不適切な性行動

・家出や非行

(以上Finkelhor,1986)

・集中力の低下や空想に 耽ることの増加

・自己評価の低下 (自分 を汚いものと感じる)

・身体への過度の関心

・身体症状の訴えの増加

・自己評価の低下 (愛さ れておらず, 求められ ておらず, 自分には価 値がないという感情)

・自己破壊的行動

・抑うつ

・他者の顔色をうかがう

・激しい怒り, 憎悪, 攻 撃性

・孤立しやすい (他者と かかわりを結べない)

・不安や恐怖

・多動や衝動性

(7)

いる(7)

c. 本調査の構成について 本調査は, 3部構成とした。

1部は, 児童養護施設における 「被虐待児」 への対応の概況についての調査である。 主に, 全国養護施設に入所してきた被虐待児童とその親に関する研究報告書 (1994)(8), 全国児童相 談所における家庭内虐待調査 (1997)(9), 児童虐待防止法施行後の状況と課題に関するアンケー ト (2001)(10)を参照して項目を作成した。 施設ごとの回答を依頼した。

2部は, 児童養護施設職員の処遇と職務に関する二つの意識調査から構成されている。 ひと つは, 入所被虐待児の急増と処遇困難に苦慮している状況にあって, 過重な職務を負っている 職員の意識について, バーンアウト心理尺度(11)を参照して項目を作成した。 もうひとつは, 職員は対応に苦慮する子どもと比較的対応しやすい子どもそれぞれに異なった行動特徴見出し ているか, あるいは異なったイメージを抱いているかについて, 主に虐待についてのパイロッ ト調査に基づいて項目を作成した。 職員一人ひとりに回答を依頼した。

3部は, 児童養護施設における子どもの行動と状態がどのように変容するについての調査で ある。 児童票から虐待の状況を把握する項目は, 主に, 子ども虐待ケースマネイジメント・マ ニュアル(12)を参照して作成した。 子どもの行動と状態については, 反社会的行動, 非社会的 行動, 共同生活に関わる行動, パーソナリティ, 自己意識, 精神・身体症状の項目から構成し ている。 また, 子どもの行動が展開される場を, 街中, 学校, 施設を設定した。 作成に当たっ ては, 児童虐待の臨床的概念−児童精神科の立場から−, 児童虐待の臨床的サイン−小児科の 立場から−, 被虐待児調査研究−養護施設における子どもの入所以前の経験と施設での生活状 況に関する調査研究の調査項目, 子どもへの虐待調査の自由記述項目, パイロット調査に上げ られた行動・症状を再分類・統合した。 一人ひとりの子どもについて, 各行動が見られた時期 のチェック, その行動への対処の難易度について3段階の評定を依頼した。 また, 各時期で工 夫した対処についての自由記述欄を設けた。

参考文献

(1) 岩田康子, 1999, 児童虐待の臨床的概念―児童精神科の立場から―, 精神療法第25巻第6号, 513―

519

(2) 奥山眞紀子, 1999, 児童虐待の臨床的サイン―小児科の立場から―, 精神療法第25巻第6号, 521―

529

(3) 堤賢他, 1997, 被虐待児調査研究―養護施設における子どもの入所以前の経験と施設での生活状況 に関する調査研究―, 日本社会事業研究所年報

(4) 関東弁護士会連合会, 1998, 子どもへの虐待調査, 子どもへの虐待―その予防と救済のための提言―, 関東弁護士会連合会シンポジュウム報告書

(5) 福田雅章, 2000, 分科会報告 児童養護施設と自立援助ホーム, 子どもの虐待とネグレクト第2巻 第1号, 124―129

(8)

(6) 厚生省児童家庭局, 1999, 子ども虐待対応の手引き, 日本児童福祉協会

(7) 高橋正彦, 2000, 施設における被虐待児の理解と援助, 子どもの虐待とネグレクト第2巻第1号, 124―129

(8) 全国養護施設協議会調査研究部, 1994, 全国養護施設に入所してきた被虐待児童とその親に関する 研究報告書, 子どもの虐待防止センター

(9) 全国児童相談所長会, 1997, 全国児童相談所における家庭内虐待調査, 全児相通巻62号別冊 (10) 第37回関東ブロック児童養護施設長研究協議会, 2001, 児童虐待防止法施行後の状況と課題 (11) 堀洋道監修, 山本真理子編, 2001, 心理尺度集, , , サイエンス社

(12) 芝野松次郎編, 2001, 子ども虐待ケースマネジメント・マニュアル, 有斐閣

(文責 石井富美子)

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