長崎 大学工学 部研究 報 告 第 31 巻 第 5 6 号 平 成 1 3 年 1 月 1 25
熟赤外線映像法の道路橋変状調査への適応
後藤恵之輔*・ 浅利公博 **・ 山中 稔***
後藤健 介**** ・ 渡連浩平*・ 後藤松生*
Appl i c a t i o nofThe r ma l ‑I nf ra r e dI ma gl ngMe t hod t oBr i dg eDe t e r i or a t i o nSuⅣe y.
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Ke i n o s u k eGOTOH* , Ki mi h i r oAS ARI * * , Mi n o mYAMANAKA* * * , Ke n s u k eGOTO* * * * ,
Ko h e i WATANABE*a n dMa t s u oGOTO*
A da ma ges ur ve yf orr oa dbr i dgene e dsma nyc os ta ndmuc ht i mei nge ne r al .Buti ti sc ons i d e r e dt ha tt het h e r ma l ‑ i nf r a r e d i ma gl ngme t hodi sa bl et os u r ve ya nyda ma gepa r ta tl owc os ta ndi ns hor tt i me・l nt hi spa pe r ,da ma g es u r v eyf ort woc onc r e t er oa d br i de si nOi t aPr e f e c t u r ewe r ec a r r i e doutus e dbyt heme t hod.Asar e s ul toft hes ur v e yl tWa sC Onf i r me dt het he r ma l ‑ i nf r a r e d i ma gl ngme t hodha spos s i bi l i t yt of i nds omeda ma gepa r t sort wobr i dge s .
1. は じめに
構造 物 は、外 見的 には健全 な構造物 で あ る と見 て と れて も、構造物 内部 で は重大 な変状部 が存 在 してい る 場 合が あ る。 また、表面 に現 れ て きた小 さな欠陥等 か ら内部 の変状 が推 定 され る と して も、それが実際 に ど の くらいの規模 で あ るか はその構造物 を破壊 もし くは 超音波 調査等 の様 々な方法 に よって時 間 をかけて確 か めてみ なけれ ば把握 す る こ とはで きない。 しか し、 そ の構造物 が 日常 の 中で重 要 な役割 を果 たす道路橋 や鉄 道橋 で あ る場 合 にはそれ を破壊 して確 かめ る こ とは難 しい。 また、短 時 間の調 査 で確 かめ る こ とが可能 で あ ればそれにこ した こ とはない。
そ こで本研 究 で は、大分県南部 に存在 す る構造物 を 実際 に調査 し、構造物 内部 の変状 部の規模 や具合等 を 熱赤外 線 映像法 を適用す る こ とに よって、 よ り短 時 間 に把握 す ることがで きないか を試 みるたので ある。
2. 現地調査地点
現地調査 は大分県内の 2 つの コ ンクリー ト橋 梁 ( A 橋 と B 橋 ) を対象 と した。
図 ‑ 1 に A 橋 と B 橋 の位 置 図 を示 す。 この 2 つの道 路 橋 は一般 国道 1 0号線 に架か ってい る橋 梁 で ある。 国道 1 0 号線 は、北 九州市 を起 点 に大分市 、宮 崎市 を経 て鹿 児 島市 を終点 とす る東 九州 の大動脈 とな る道路 で あ る
図 ‑1 現地調査地点位置図
といえる。
3 . 調 査方法
3. 1 熟 赤夕臓 映触法 および装置の概要
熟赤外 線 映像法 は物 体 か ら放射 され る熱 赤外線 エ ネ ルギー を検 知 し、その表 面温度 を平面 的 に映像化す る こ とに よって物 体 内部 の状態 や性 質 を調査 す る方法 で
平成1 2 年 1 0月 27 日受理
*大学 院生産科学研究科 ( Gr a dua t eSc hoolofSc i e nc ea ndTe c hnol ogy)
**西鉄 シー ・イー ・コンサ ル タン ト ( 株) ( Ni s hi t e t s uC. E. Cons ul t a ntCo. , Lt d. )
***社会開発工学科 ( De pa r t me ntorCi vi lEngi ne e r i ng)
****大学院海洋生産科学研究科 ( Gr a dua t eSc hoolorMa r i neSc i e nc ea n dEngi ne e r i ng)
1 26 後藤恵之輔 ・ 浅利 公博 ・ 山中 稔 ・ 後藤健介 ・波速浩平 ・ 後藤松生
ある 1 ' 。今 回の観測対象物 である道路橋 の観測箇所 の 内部 に剥耗箇所 または漏水箇所等が存在 すれば、その 部分 は健全部 と比べ る と加熱冷却 における温度 の経 時 変化が異なって くると考え られる。
今回使用 した熱赤外線装置 は、受動形の高感度赤外 放射温度計 で、測定対象物 か ら自然放射 されている赤 外放射 を光学走査することによ り、温度信号 を二次元 的 な電気信号 に変換 し、温度分布画像 を得 るための装 置 である。検 出部か ら送 られたアナログ信号 を、 コン トロール部 に送 り、処理す ることでデ ィスプ レイに対 象物 をカラー、 または白黒の熱画像 として表示する。
用いた熟赤外装置の特徴 を以下に示す。
1) 小型、軽量であるため現場 、研 究用 、製造 ライ ンや温度異常の監視 に使用で きる。
2) オー トフ ォーカス、 自動環境反射補正 、オー ト レベル、 自動感度設定、 自動室温補正等の必要機
能 に自動処理機能があ り、容易 に観測 することが で きる。
3 ) 光学 ズーム機能 により、遠 い測定対象物 で も大 きく見 ることがで きる。 また画像分解能 もその ま まで鮮明な画像 を得 ることがで きる 2 ) 0
3. 2 A 橋 における調査方法
図 ‑2 お よび図 ‑3 に調査箇所 を示す。写真 ‑1 お よび 写真 ‑2 は現地での調査状況である。 この A 橋 は、昭和 3 5 年 に架設 された RC3 径間連続 で桁橋である。
( a ) 橋梁上面の調査方法
橋梁上面 については、アス ファル ト舗装面 に亀裂部 分が存在 している。そ こに水 を注入する と、あふれる ことな く舗装内部 に浸透 した。 これは、アス ファル ト 舗装 と調整モル タル もしくは調整モル タル と桁上面が
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図 ‑2 A 橋上面調査箇所
図 ‑3 A 橋底面調査箇所
写真 ‑1 A 席上両調査状況 写真 ‑2 A 棉底面調査状況
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̲トト.‑︻ー 11こ熱赤外 線 映像法 の道路橋 変状 調査 へ の適応
図 一4 B 橋調査箇所
剥離 してお り、 その剥離 層 に水が浸 透 して い ったため ではないか と考 え られ る。そ こで熱赤外装置 を用いて、
アス フ ァル ト舗装 の剥従 箇所 を推 定 しよう とす る もの である。調査方法 は、その亀裂部分 に冷水 ( 約 5℃) を 注 入 し、道路脇 に設置 した熟赤外 線装置 か ら冷水 の注 入 に よる アス フ ァル ト舗 装 面 の温 度 変化 を観測 して、
剥離部 分の抽 出 を行 った。観測 時 間は7: 00 か ら1 9: 00 と し、対 象物 の中心温度 を2 8. 0 ℃ 、温度 間隔 を0. 7 ℃ と し て観測 を行 なった。
( b) 橋 梁底面の調査方法
橋 梁底面 につ い ては、剥 離箇所 または漏 水箇所等 の 変状 箇 所 の推定 を行 うもので あ る。調査 方 法 は、観 測 箇所 を加熱 す るため にジェ ッ トヒー ター を用 いて底 面 を加熱 し、橋 梁下 に設 置 した熱赤外線装置 よ り、床 板 等 の底 面 の加熱過程 お よび冷却過程 の温度 変化 の観 測 を行 ったO観測時 間は1 6: 0 0 か ら1 8: 5 0まで とし、対象物 の中心温度 を 21. 0 ℃ 、温度 間隔 を0. 7 ℃ と して観測 を行 なった。
3. 3 B 桶 におけ る調査方法
図 ‑4にB橋 における調査箇所 を示す。写真 13は現 地での調 査状 況 で あ る 。 B 橋 は昭和 41 年 に架設 され た
PC2 径 間単純 ポ ス トテ ンシ ョン T 桁橋 であ る。
画像 ‑1 冷水注入 中
1 2 7
写真 ‑3 B 橋調査状況
この B 棟 において は、橋 梁主桁桁 側面 にお け る変状 箇所 の推 定 を行 った。調査 方法 は、調査箇 所 で あ る橋 梁 主桁 側面 をジェ ッ トヒー ターに よ り加熟 し、橋 梁横 に設置 した熟赤外 線装置 を用いて A 橋 底面 の場 合 と同 じ く、加熱過程 か ら冷却 過程 の温度 変化 の観 測 を行 な った。観測時 間は9: 00 か ら11 : 3 0 まで と し、中心温度 を 1 7. 0 ℃、温度 間隔 を1 . 0 ℃ と して観測 を行 った。
4. 調査抵果お よび考察
4. 1 A 稀 にお け る調査結果 および考察
画像 ‑2 冷水注入後
2 8 後藤憲之輔 ・ 浅利 公博 ・ 山中 稔 ・ 後藤健介 ・渡連浩平 ・ 後藤松生
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図 ‑5 A橋 における観測点温度の経時変化
画像 ‑ 3 加熱過程 における最高温度状態
画像 ‑ 5 最低温度状態 一最高温度状態の差画像
( a) 橋梁上面の調査結果お よび考察
画像 ‑ 1 に冷水注入中の状態 を示 し、画像 ‑ 2 に冷水注入 後の画像 を示す。
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画像 ‑4 冷却過程 における最低温度状態
画像‑ 1 お よび画像 ‑2 か ら見て とれるように、冷水 を 注入す ることで、冷水注水箇所 を中心 にアスファル ト 舗装面の温度が低下 していることが わか る。 この こと は、注水 した冷水が アスファル ト層下の剥離層 に浸透
していったためではないか と考 え られる。別途、アス フ ァル ト舗装 お よび調整モル タルの部分の撤去調査 に おいて も、剥離部分 に帯水 していた雨水 と思 われる水 の染み出 しが確認 されている。
( b) 橋梁底面の調査結果および考察
画像 ‑3 に、 ジェ ッ トヒー ターによる底面の加熱過程 における最高温度状態 を示 し、画像 ‑4 に冷却過程での 最低温度状態 を示す。
A橋底面の ジェ ッ トヒー ターに よる加熱お よび冷却 過程 を観測 した結果、温度変化 の大 きい箇所が存在 し ていることが分か った。それ ら箇所 の温度経時変化 を 調べ るため に温度変化の大 きな所 に観測点 a‑ Cを設 定 し、温度変化の比較的小 さい所 に観測点 d‑ eを設 定 した。 なお、観測点は画像 ‑ 3 お よび画像 ‑4 に示 して
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熱赤外線映像法 の道路橋 変状調査‑ の適応
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圭 図 ‑6 間庭橋 における観測点温度の経時変化
画像 ‑6 加熱過程 における最高温度状態
画像 一8 最低温度状態 一最高温度状態の差画像
ある点である。
図 ‑5 は観測点 a‑e の温度経時変化 を示 した もの で、 これ を見 る と、温度変化 の大 きか った観測点 a‑
1 29
画像 ‑7 冷却過程 における最低温度状態
C
では観測 を開始 した 1 6: 0 0 の時点で既 に温度変化の比 較的小 さい観測点 d‑e に比べ て温度が高 くなってい る 。1 6: 4 0 付近で観測点は最高温度 に達 したが、その後 冷却過程 に入 り冷却が進 む と今度 は観測点 a‑ Cは思 速 に冷 まされ観測 を終 えた 1 8: 4 0 には、観測点 d‑e よ りも温度が低 くなった。 これは観測点 a‑ Cのそれぞ れの位置 に剥離箇所 または漏水箇所等の変状部が存在 す ることを示唆する ものである。特 に観測点 a は 、A 橋 の変状 図 に記 されている剥離箇所 と一致 している。
しか し、 これは観測箇所全体のデー タでな く、点的 な デー タであるのでその変状部の規模 は見て とることは で きない。そこで観測箇所の温度変化のデー タを面的 に捉 えるため、 また観測箇所の汚れ等 による表面温度 分布‑の影響 を取 り除 くために最低温度状態の画像か
ら最高温度状態の画像 を差引いて差画像 を求めた。
画像 ‑5 に求めた差画像 を示す。 この差画像か ら温度 差の大 きい箇所が面的 に確認で きる。 これ らの箇所 を、
別途 、 目視調査で得 た変状図 と比較する と、剥離 また
1 3 0 後藤憲之輔 ・ 浅利 公博・ 山中 稔・ 後藤健介 ・波速活平 ・ 後藤松生
は漏水等が確認 されている所が差画像 において も、特 に観測点 a 付近で よ く一致 していることが わかった。
また、 この他 に も剥離あるいは漏水箇所 と思われる所 が認め られる。 これ らの箇所は、 これ までの変状調査 等で確認することので きなかった変状部分ではないか
と考えられる。
4. 2 B 橘における調査結果および考察
画像 ‑6 にジェットヒー ターによる側面の加熱過程 に おける最高温度状態 を示 し、画像 ‑7 に冷却過程 におけ る最低温度状態 を示す。
B 席側面のジェッ トヒーターに よる加熱お よび冷却 過程の棋測 において も熟 しやす く冷めやすい箇所が存 在することが分かった。 ここで もこれ ら箇所の温度の 経時変化 を調べ るためにそれ らの箇所か ら温度変化 の 大 きい所 に観測点 a〜 Cを設定 し、温度変化の比較的 小 さい所 に横測点 d〜 e を設定 した。なお、観測点は 画像 ‑6 お よび画像 ‑7 に示 している点である。図 ‑ 6 に観測点 a〜 e の温度の経時変化 を示す。 ここで も温 度変化の大 きかった観測点 a‑ Cは棋測の開始時間か ら温度変化の小 さかった観測点 d‑ e に比べて温度が 高 くなっている 。1 8: 30 にすべての観測点が最高温度 に 達 し、その後、冷却過程 に入っている。冷却が進むに つれて観測点 a‑ Cは観測点 d〜 e との温度差が小 さ くな り、観測 を終えた 1 1: 3 0 には、ほ とんど差がな くな っている。 これは、観測点 a〜 Cのそれぞれの位置 に 変状部分の存在が考え られる。 これ を面的 に捉 えるた
めに最低温度状態か ら最高温度状態 を差引いた差画像 を求めた。求めた差画像 を画像 ‑8 に示す。 これを見 る と、画像 の中央部分 に変状部 と思われる箇所が現れて いる。調査のために表面が削 られた箇所 も明瞭に現れ ていることが分かる。
5 . 結論
今回の調査か ら、道路橋の床板お よび桁側面にジェ ッ トヒー ター等の熱源 を用いることで、熱赤外線影像 法 による変状部分の推定 を行 うことがで きた。 コンク
リー ト橋 の健全度 を評価する調査 は数多 くあるが、今 回のこの ジェッ トヒー ターを熱源 とした熱赤外線映像 装置 を用 いる調査方法は、種 々の調査 に比べ、短時間 で より広 い範囲の調査がおこなえる所 に大 きな特徴 を 有 している。 また遠僻地か ら安全 に危険箇所の推定が 行える所 も大 きな特徴である。本方法 によって、変状 部分の推定が行 えれば今後増加 してい くであろう道路 橋等の コンクリー ト構造物の変状調査 に多大 な威力 を 発揮するであろうと思われる。
参考文献
1 )熟赤外映像法 によるの り面診断研究会 :熟赤外線 映像法 による吹付 けの り面変状診断マニュアル, 建設省 土木研究所 ,p p. 1 3‑1 4
2)NEC 三栄編 :サーモ トレーサーコン トロール 部 TH31 00 シリーズ 取扱説明書 ,pp. ト2‑1
‑3. 1 9 9 6.
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