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著者 小野 祐一郎

雑誌名 教育研究協議会要項 : 共に創りあげる授業 : 資質

・能力を育みながら,「教科ならではの文化」を味 わう子どもたち

巻 令和元年度

ページ 5‑12

発行年 2019‑10‑17

出版者 静岡大学教育学部附属静岡中学校

注記 題材名 : 「平家物語」から考える人の生き方 著者版フラグ publisher

URL http://hdl.handle.net/10297/00026820

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国語科授業案

国 語 科 授 業 案

授業者 小 野 祐一郎 1 日 時

2 学 級

令和元年10月17日(木) 第1時 10 : 20 - 11 : 10 2年D組 ( 2年D組教室)

3 題 材名 「平家物語」から考える 人の生き方

4 題材の目標

「平家物語」のいくつかの話を読み比べることを通して, 叙述をもとに当時の武士の言動や思いを読み取り, そ こにある生き方について考えることで, 無常観について自分なりの考えをもつことができる。

5 題 材 観

(1) r平家物語」から学ぶことの意義

「平家物語」は軍記物と呼ばれる古典作品の一つで す。平家一門の隆盛から滅亡までが描かれており, そ こには,脚色も含んだ歴史上の事実が諮られています。

それだけではなく, 数々の合戦が繰り広げられる動乱 の時代を描写している物語には, その当時の人々の命 を賭した行動が描かれています。たとえ向かう先に苦 難が待ち受けていようとも, その状況を何とかしよう と自分のできることに精一杯立ち向かう盛が生き生き と描かれ, 現代の人にも伝わる思いがそこにはありま す。また, r平家物語Jは滅びるものの美しさだけで なく, 次の時代を担う武士の姿や, その生き方も同時 に描いています。私たちが, 古典の作品を味わうこと のよさの一つに,自分の実体験がない世界だからこそ,

先入観無しに作品の世界観で頭の中を満たしていける ことが挙げられます。そのように読むことは, 純粋に 叙述と向き合い, そこから想像力を働かせて読む楽し さを味わうことにつながります。

「平家物語」は, さかのぼれば明治時代より教科書 に掲載されています。このことからわかることは, 日 本がl時代とともに変化しでも, そのときを生きる人々 が「平家物語」を読むことで, 何か得るものがあると いうことです。それを可能にしているものは, 今と過 去をつなぐ言葉かもしれません。その言葉が伝える先 人の生き方にふれることで, 私たちは時を越えてもの の見方や考え方について捉え直し, 言葉から自分の人 生を見つめることができます。

(2) 平家と源氏

「平家物語Jが, 現代でも多くの人々の心を引きつ ける魅力のーっとして, 当時の人の 「生き方」に見ら れるドラマがあります。そこには, 登場人物の置かれ た状況やそれに対する葛藤が描かれています。彼らは,

大事な場面において必ず武士としてのふるまいを決断 しなければならないのですが, なぜ彼らはそのような

生き方ができたのでしょうか。

「平家物語」が作られたl時期は, 古代から中世への 転換期, 貴族の時代から武士の時代へ変わる動乱期で した。本来武士だった平家は, 繁栄とともに貴族化し ていきました。栄撃を極め, 日本の半分を統治下にお いた平家が進んだ道は, 皮肉にも時代の流れと逆行す ることになりました。その結果, 当時の先端を生きる ことができなかったので, 一つの時代の終わりを象徴 する存在になってしまいました。

対する源氏は, 貴族権力による搾取からの解放を求 めました。また, 自分たちの領土を増やすために, 平 家との戦いに勝てるよう命をかけて戦いました。たと え自分が死んでも, 手柄さえ立てておけば, 子孫が後 を引き継ぐことができたので, 彼らは心おきなく戦い に挑みました。当時, 彼らは戦う際に必ず名乗りを上 げました。それは, 周りにいる多くの仲間に, 自分の 手柄の目撃者になってもらうためでした。首を取って,

自分の大将の所へ持っていくのもそのためです。手柄 や名誉は, 武士という兵士としてのプライドだけでは なし 経済的な実益のためという目的もありました。

源氏方の東国の武士は, 自分たちのカによって, 自 分たちの自由を獲得するために戦いました。そして,

そこで立てた手柄によって自分たちの生活を虫かにし ていきました。この営みが当時の源氏方の武士たちを 支えた源でした。

この両家の対立は, 当時の人の生き方を色鮮やかに 描いているので, この物語にふれた私たちの心を揺さ ぶるのです。

(3) r祇園精舎Jから考える

「祇園精舎の鐙の声, 諸行無常の響きあり。沙羅双 樹の花の色, 盛者必衰のことわりを表す」は, 知らな い人はいないと言える有名な書き出しです。七五調を

わかんこんこうぶん

交えた和漢混清文でつづられている 「祇園精舎」は,

音読をするだけでもリズミカルな躍動感にふれること

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ができます。 口頭部分からだけでも. í平家物語」は 平家の盛衰を過して 「無常観」を表した作品だと読み 取ることができます。

しかし, 当時を生きていた人には 「無常観」はあり ふれた思想だったようです。そのため.í無常・観Jは「祇 園精舎」以外の物語の中で描かれている人物の生き方 にも色濃く表れています。

滅亡するほかなかった運命に逆らい. 1蹴い, 逃げ,

もがL、た人々の何みを捉えていくことで. íl1正常観」

について読み深めることができるでしょう。

(4) í敦盛最期Jから生き方を考える

①直実にみられる 生き方

「敦盛最期」において直実の気持ちの変化を読み取 ることで, 武士として生きることはなんたるものなの かと葛藤する直実の思いが伝わってきます。自分の気 持ちを抑え, 兵士として手柄を立てるため, 任務遂行 に徹することこそが, 当時の武士らしさであると言え ます。 しかし, 直実は, 武芸の強さとは反し, 敵に情 けをかけることができる慈しみに満ちた人物です。 そ の意味では, 戦場には不向きかもしれません。

武士としての生き方を選ぶばかりではなく, そこに 人間味あふれる自分の思いを隠さずに表現する直実の 姿から, 人生は葛藤の繰り返しで, 自分や相手との向 き合い方が大切なのだと考えることができるでしょ う。 直実の生き方を考える際におさえたいことは, 人 間らしい心の葛藤です。

直実は戦場経験が:l!!I:富な武士でした。 しかし, 身分 は小領主であり, 当時満足のL、く領地を保有していま せんでした。そのため, 戦場において功組を残すこと に関しては, 他の武士よりも一際強L、執着心がありま した。ーノ谷の戦いでは, 息子の小次郎と先陣を取ろ うとしましたがうまくL、かず, 名高い武将を討ち取る こともできませんでした。直実が, 手柄を立てること に固執していることが 「あつばれ, よからう大将軍に 組まばや」から読み取れます。

そして, 助け船に乗ろうと逃げてくる武将を待ち構 えます。 これほどの思いをもち, 切望していた敵武将 の首を取ろうとした直実は, 敦盛の顔を見た途端に,

気持ちが変わり始めます。

直実「小次郎が薄手負うたるをだに, 直実は心苦し うこそ思ふに, この殿の父, 討たれぬと聞い て, いかばかりか嘆きたまはんずらん。あは れ助けたてまつらばや。J

屈強な直実も, 敵に対して, 父親のような感情を抱 いてしまい, 若武者を助けることを決心します。 しか し, 背後には直実の味方が迫ってきているので助けら

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れるはずがありません。ここにも葛藤が表われます。

直実「同じくは, 直突が手にかけまゐらせて, のち の御孝養をこそっかまつり候はめ」

相手に対する慈悲の念があるのでしょう。あるいは,

首を討ち取りたくなくてもそうせざるを得ない自分を 納得させるための言葉だったのかもしれません。味方 が追いつくまでには猶予がなかった直実は, 泣く泣く 若武者を討ったのでした。

あれほどまでに手柄を立てることを切望していた気 持ちとは全く反対の思いを抱いた直実。 若武者を助け るどころか殺さなければいけなかった自分の情けなさ や, 人を殺すことでしか認められない武士という生き 方に嘆き, 泣き続けます。 直実が欲しがった手柄は,

いざ手にしてみると, ひどく惨めなものでした。その ような矛盾にも満ちた人間味あふれる直実の心的から は, 今も昔も親心には差はないということが感じられ ます。 さらに大きく捉えれば, 人が人を思う気持ちに 時代の差はないのでしょう。

②敦盛にみられる 生き方

会んだ1'>

平家の公達として, 戦場に箇を持ち込む風流なふる まいや, き麗な装束, 立派な馬。敦盛は, 出で立ちも 精神も立派な武士でした。しかし, 貴族としての素養 は高くとも, 武士としての訓練や戦場経験は浅かった と考えられます。 汚れの�い真っ直ぐな武士としての 生き方を貫く純粋さが, この話の悲劇l性をさらに高め ています。 中でも, 自分を殺そうとしている敵への一 言は, あまりに衝撃的です。

敦盛 「ただ, とくとく首を取れ」

「さては, なんぢにあうではなのるまじいぞ。

なんぢがためにはよい敵ぞ。」

このような時に, このような若い人が, き然とした 態度がとれるでしょうか。 自分をH予び止めた屈強な直 実の姿を見て, 敦盛は自分にはかなわぬ相手と思い,

死を覚悟したので発したのかもしれないこの言葉に は. fi!J.盛の武士としての生き方が凝縮されているよう にも読み取れます。

また, 現代に生きる者と, 武士の世界に生きる者で は, 一言に「生きる」と言っても捉え方に大きな迎い があると考えさせられる台詞です。

現代に生きる私たちが, 生きることを考えたときに は, これから先に待ち受ける人生, つまり未来をどの ように生きるかを考えることが多いでしょう。 一方で 武士の世界に生きる者は,生きている聞に何をしたか,

どのような人生の終わり方を迎えるかに注目している ようにも読み取れます。

そこには, 武士という生き方にプライドをもってい

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国語科授業案

て, その気持ちを遵守しようとする芯-志の強さを感じ られるからではないでしょうか。

敦盛の武士としての生き方にふれると, 生きている 限り 自分の信じる道を貫くことの大切さに気づくこと ができるでしょう。

(5) 他の場面における 人物から考える

① 「木曽の最期」における 義仲の生き方

義仲は, 武見には優れていたものの政治や経済は全 く解せず, 貴族的な教養にも欠ける人物でした。 武芸 に秀でている義仲は,戦場においては勇猛果敢であり,

不利な局面も不可能を可能にするほどの采配や実力を もった戦一筋な武士でした。 腕つぶしを疑う人はL、な い, 右に並ぶ者など一人もいない実力は, 戦乱の世を 制した武士としての生き方を代表するでしょう。

戦一筋ではありながらも, 人間味あふれる行動がで きる義{中は, 味方からの信頼は厚く, よき家臣に恵ま れていました。 このような, 義仲の姿から, 人は一人 では生きていけないという生き方を読み取れるでしょ う。 戦場において, 武士の鏡のような男も, このよう なことを忠臣に諮ります。

義仲 「義fl礼者11にていかにもなるべかりつるが, こ れまで逃れ来るは, 汝と一所で死なんと思ふ 為なり。 所々で討たれんよりも, 一所でこそ 討死をもせめ。」

これまで勝ち戦を続けているときはこのような気持 ちを微鹿にも感じさせない義{中ですが, いざ 自分の最 期を感じると, 強さとは裏腹に, 心を許した家臣にこ のようなことを漏らせる人間味あふれる姿が読み取れ ます。

他者が入り込む余地がある人間性は, わかり合い支 えてくれるよL叶lド聞に出会い, 仲間とともに生きてい くことが大切なのだと気づかせてくれるのかもしれま せん。

② 「木曽の最期」における 今井の生き方

名脊を守るための最期。 生きるということは, 終わ り方まで含めて生きることだということを義仲の忠臣 の今井から読み取れるでしょう。

|

今井 「弓矢取りは、 年来日来いかなる高名候へど も. 最後のH寺不覚しつれば, 長き筑にて候ふ なり。j

この台詞から, 主君の最期に向かう大切さを説いて いることが読み取れます。 戦場の村!とも言える義仲 に, このような物言いをできる今井は主従関係にある といっても, 本音で語り合える仲のよい先輩・後輩の ようにも感じます。 それでもなお 自覚をもたない義仲

に, 次のように語ります。

今井「敵に押し隔てられ, いふか ひなき人の郎等に 組み落とされさせ給 ひて, 討たれさせ給ひな ば, さばかり日本国に聞こえさせ給ひつる木 曽殿をば, 某が郎等の討ち奉ったりなんど申 さん事こそ口惜しう候へ。 ただあの松原へ入 らせ給へ。」

義仲を激する今井の姿から, 本当に心が通じ合って いる二人なのだと読み取れます。 この後今井は, 主君 が安心して白書できるよう, 迫りくる騎馬50騎の中 に突入し, 一騎当千の働きをします。 残念ながら今井 の思いは届かず, 義仲は白書前に敵に打ち取られてし まいます。 主君の思いに沿ったのか, 守るべき主がい なくなった瞬間に, 名乗りを上げて自ら万を飲み自害 する潔さは武士の世界では美しいと言うのでしょう か。 死ぬことを美化することは現代にはない考え方で すが, 自分の信念に従い, 実現するための努力を惜し まない生き方と考えると尊敬の念を抱けるくらい立っ すぐな生き方と言えるでしょう。

説イ中が集団の長として走り続けるためには, 今井の ように長をかいがいしく支え, 時には本質を突いた鋭 い発言ができる有能な{II1JI舗が必要でユした。 互いに信頼 し合い, 助け合い, 共に生きてL、く。 これは, いつの 時代でも閉じことでしょう。

ただのり みやこおち

③ 「忠度の都落」における 忠度の生き方

当時の人にI監獄の守忠度(市盛の末の弟)とはどの ような人かと尋ねたら, すぐさま武芸と和歌の述人と 答えられたそうで'す。 「忠度の都落Jからは, 立場や 身分に捉われず, 自分の大切にしたいもののために生 きることを読み取ることができます。また, その人が 大切にしていたものは他の人にも伝わります。 「忠度 の者11落」の内容には, 生きるという営みは, その人の 生き方によって成り立っているのだと考えさせられ,

今の私たちにも逃和!惑がありません。

後白河法皇に見限られ, 朝敵になった平家一門は,

西をめざします。

和歌の名手でもあった忠度は, 都落の途中で危険を 脳lみず藤原俊成の屋敷へ引き返します。 そして, 俊成 に. r勅撰集が撰ばれるときは, 生涯の名牲に一首で も撲に入れてほしL、」と秀歌百余首の巻物を預けます。

この話では, 自分の家の命運をかけて戦っているさな かに, 武士であるにも閲わらず 自分が大切にしていた 和歌を後生に残すために行動を起こしたことが告かれ ています。

忠度「西海の波に沈まば沈め, 山野に屍をさらさば さらせ。 今は誕き1止に思ひ置くことなし。 さ

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らば暇申して。」

俊成に和歌を託し, 思い残すことはないと立ち去る のですが. 1前途程遠し, 思ひを雁山の夕べの雲に馳 す」とこれから先の自分の行く末をつぶやきます。 そ こには, 都を落ちるにあたって自分のささやかな望み は叶えられたが, これから先に待ち受ける運命を予感 している様子が伝わってきます。 彼が俊成に託した和 歌 「さざなみや志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜 かな」は, 朝敵となってしまったがために詠み人知ら ずとして千載集に残されます。 和歌を愛し, 和歌のた めに危険を顧みない武士忠度。 そのような世の中にま たとない武芸にも和歌にも秀でた風流な存在である 彼 は, もしかしたら, 壬申の乱に負けて白書していった 大友皇子と自分を重ねていたのかもしれません。

(6) 本題材における 国語科ならではの文化

本題材における国語科ならではの文化をIr平家物 語』で描か れる武士たちの思いや大切にしてきたこと について, 叙述を根拠に読み取ることを通して, 当時 の人たちの生き方について共感的に読んだり, 批判的 に考えたりしながら作品の世界に浸って読みを深めて いくこと」を国語科ならではの文化とします。 様々な 人物に対しての思いを通して, 今まで自分が考えてき た生き方の視点を広げながら, 対話を過して子どもた ちが自分自信を見つめ直していく盗に期待していま す。

(7) 題材と子どもたち

これまでに子どもたちは「名づけられた葉」や「形」

という作品について学習してきました。「名づけられ た葉」では. 1うつくしく散る法を」について, よい 終わり方をするために努力するのか, 努力している姿 がよい終わり方なのか. 1散る」という言葉に着目す ることで「生きる」ことについて深く考えてきました。

「形」では, 中村新兵衛の拾の遣い手としての「内実,

実力」と, その実力と相まってカをもち始めたシンボ ルとしての 「形」の二つについて議論を行いました。

この作品は. 1形Jの力に対する認識φ薄かった新兵 衛が. 1形」のカにどのように気づくか, 新兵衛の有 名になるまでの生き方と, 表面的な他者からのイメー

ジの力を借りてからの生き方について考えました。

子どもたちは, 武士としての生き方を:crこうともが いている登場人物との対話から, よりよいものを求め て努力している今の自分を重ね, 自分の生き方につい て見つめ直していくのではないかと考えます。 現代を 生きる子どもたちは, 武士とは異なり, ルールだけに 従っていればよいわけでも, 結果さえ出せれば何をし てもよいわけではありません。

自分が関わる人たちと. :!!!!かなコミュニケーション をとりつつ, よりよい人間関係を構築しながら自己実 現をしていかなければなりません。 むしろ, 武士の世 よりも, 現代の方がしがらみが多く, 自分の思いを優 先しにくい世の中になっているとも考えられます。 だ からこそ, 武士らしく, 人間らしく生きる登場人物の 生き方に共感をもてるでしょう。このように 「生き 方」についてスポットを当てて読む子どもたちは.1平 家物語」の登場人物たちの姿に自分を重ね, 生きるこ とについて自分なりの考えを広げていくのではないで しょうか。

また, 盛者必衰という言葉は世の中の真理を突いて います。 私たちが生きている現代でも, ひとたび繁栄 した会社や有名人も, いつかは衰退していきます。 成 功だけを続け, 成長を止めないものなど存在しないで しょう。

「平家物語」で取り上げられている紙常観は, 子ど もたちがこれまでの人生を踏まえて, 無限に広がる未 来について, どこに向かつて生きていくのか考える きっかけを与えてくれるでしょう。

特定の環境下におかれ, その役割を演じることを求 められた人たちが, 己の思いと周囲から要求されたあ り方に悩みつつも自分の思いに従って最期を迎えてい く作品と向き合うことで, よりよい 「生き方」を追求 していくことにつながっていってほしいと願っていま す。 明日のことを思い煩うことなかれ。

参考文献:安野博之(2008) r教科舎で 「平家物語」はどう読まれてきたか:1忠度都落Jを例に』

鹿服義塾大学襲文学会, 岩松研吉郎教授高官利行教授退任記念論文集 笠谷和比古(2007) r武士道概念の史的展開』 日本研究

桜井|湯子(2011) r90分でわかる平家物語』 小学館 千明守(2004) r平家物語が面白いほどわかる本』 中経出版 吉村昭(2010) r平家物語上・下』 講談社

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国語科授業案

6 新学習指導要領との関連

〔知識及び技能〕

(3) 我が国の言 語文化に関する事項

イ 現代語訳や語注などを手掛かりに作品を読むことを通して,古典に表れたものの見方や考え方を知ること。

〔思考力, 判断力, 表現力等〕

C 読むこと

オ 文章を読んで理解したことや考えたことを知識や経験と結び付け, 自分の考えを広げたり深めたりするこ と。

7 題材構想(全9時間)

(1) I平家物語の祇園精舎Jと出会い, 感想、を交流しよう(1 時間) (2) I敦盛の最期」を読み, 作品の世界観を捉えよう(11時間) (3) 敦盛と直実の思いにせまる(2 11寺間〉

(4) I平家物語」の他の話を読み比べよう(2時間) (5) 5人の「生き方Jにせまる(2時間 本時はその2) (6) I無常観」について考えよう(1時間)

(1) I祇園精舎」と出会い,感想を交流しよう( 1時間) 授業者は軍記物という作品の ジャンルがあるが, ど のようなものか知っているかと問いかけるところから 授業を始めます。 聞き111れない言葉に首をかしげる子 どももいるでしょう。 そこで, I:l本を代表する軍記物 語である「平家物語」の冒頭部分を映像で流します。

当時の人たちが 「平家物語」に出会ったl瞬間と閉じよ うに, 琵琶法印lîが11.今じる映像を見ます。 すると, 子ど もたちは, 次のように話すでしょう。

-単語が複雑でよ くわからなかった

-物語を語っているというよりは歌っている .琵琶の音色がなんともいえない

-百人一首のようなリズムだ -祇国精舎や諸行無常とは何だろう

・3傑の夜の?J!�と言ったのはなぜだろう .散についての話なのだろうか

など 琵琶法師が弥き語る「祇園精舎」は, 子どもたちに とって, 様々な意味で衝撃が大きいと予想します。 ど うして歌うように諮るのか, どうして漢語表現が多い のかなど, これまでの知識だけでは理解しきれないこ とがあるため, 作品の世界観を理解するために, 必要 な11寺代背景については, 授業者が解説をしていきます。

また, I平家物語」には, 多数のî;î段があり, 多くの 登場人物が出てくる中で, 三つ話を取り上げて読み深 めていくことを伝えます。

琵琶の音色にあわせて語られる 「祇園精舎」平家物 語の世界を感じることで, 子どもたちは, I平家物語」

に興味をもって読んでいくでしょう。

(2) I敦盛最期」を読み, 作品の世界観を捉えよう ( 1時間)

「平家物語」の内符に興味をもった子どもたちは,I平 家物詰」 の作品の特1徴故とも言える様々な要索が詰まつ ている「敦盛起

一ノ谷の戦いてで,平家が敗走したことや, 直実が息子の 小次郎と手柄を立てようとしていたが, 何の収磁も得 られなかったことを簡単に確認します。 このことをふ まえて, 通読することで, 子どもたちは次のような疑 問や感想をもつでしょう。

;敦盛に関すること

.敦盛は身に付けているものが宗務だから優雅な人

; だったのだろう

・ ・どうして戦場に笛を持ち込んでいたのだろう

ij!:J.盛は本当は生きたかったのではないか

・まだ私たちと同じくらいの敦盛はどうして死ぬ|瑚

;

|療にあれほど潔くいられたのだろう

など

(

:直実に関すること

.敦盛を逃がすことはできなかったのだろうか

・手柄を立てた直笑が出家した理由がわからない

・直実はどうして涙を流したのだろう

-敦盛を助けたかったのに首を取ったのはなぜか など:

疑問や感想、を交流することで解決できる疑問もある でしょう。 そこで授業者は, 現代ではとうてい理解で きない状況について, I二人はどのような思いで戦っ ていたのだろうか」と問いかけることで, 子どもたち は, 敦盛と直実の行動や揺れ動く心について注目して

(7)

読み深めていく見通しをもつでしょう。

(3) 敦盛と直実の思いにせまる ( 2時間)

この時間では.1敦盛と直実がどのような思いで戦っ ていたのか」に注目して個人で追求していきます。 授 業者は, 二人の人物像を比較しながら追求していくこ とを提案します。

敦盛の思い

-大将軍だが!j出に悦れていなかったのではないか

・敦盛は「ただ, とくとく首を取れ」と言っていた から,命乞いはしなかった。 逃げていたのだから,

死にたかったわけではないはずなのに

・年齢が16 -7歳ということは, 私たちとそれほ ど変わらないのに,堂々と敵に対峠しているのは. 武士だからなのか

・「なんぢにあうては名乗るまじいぞ」と言ってい るから, 敵と向き合う心の強さを感じた

・直実に助けましょうかと言われたのに, 逃げな かったのは松期まで強さを見せたかったからだろ

・討ち取られた後に, 供養されることは霊要なのだ ろうか

など:

直実の思い

・敦盛の顔を見たら, 討ち取ろうとした相手なのに 助けようとしている。 自分の子どもと閉じくらい の年齢だから本当の父親でもないのに, 感情移入 してる

・敵を挑発して名乗りを上げるのはいかにも武士ら しい感じがする。 敦盛を倒すことで手柄を立てる ことが身分の低い直実にとっては大切なことのよ うだ

・敦盛の父の気持ちを思うと助けたいが, ここで自 分が討ち取った方が, 自分の味方が討ち取るより もよいと思ったのはなぜだろう

・手柄を立てたのに, 出家を選んでいるから, 敦盛 を倒したことを悔やんでいたのだろう

など 二人についての追求が深まってきたところで全体共 有に入ります。

-敦盛は潔い死に方を選ぶことを, 大将軍のあり方 だと思っていたのではないか

・直実は反対で, 感情の変化が激しいけれど, 相手 や相手の家族の気持ちを考えることができる思い やりのある人だ

・敦盛は若いけれど, 平家の公達としての自覚を

もって生きていたのだろう

・直実は敦盛を討ち取った後に出家しているから.

敦盛を本当に供養した有言実行タ イ プの人だ など

(

二人について全体共有をすると, それぞれの特徴が 浮かびあがってくるでしょう。 そこで授業者は. 1両 者の生き方や考え方の共通点はどこだろうか」と問い 直すと, 子どもたちは以下のように考えを述べるで しょう。

-武士であり, 戦場において敵同士である -二人とも自分の信念をもって戦に臨んでいた -武士として手柄を立てることや, 潔い最期を選択

しようとしているから目的をもって行動している .相手に弱みを見せない敦盛に対して親心を見せる

直実の人間味からそれぞれの生き方がある など 二人の思いや行動を比較することを通して, 直実の

「自分の言ったことを守るJという信念, 敦盛の「武 士として恥じない生き方を貫く」という信念やプライ

ドに, 子どもたちは気づくでしょう。

そして, 授業者は. Ir平家物語』の他の登場人物た ちはどのように生きたのだろうか」と問いかけ, 次時 から「木曽の最期J1忠度の都落」を読んでみいくこ とを提案します。

(4) 1平家物語」 の他の話を読み比べよう ( 2時間)

「木自の最期J1忠度の者11落」のどちらかを各自で選 択し, 登場人物の生き方を追求してL、くl時聞を設定し ます。 前i時で学習した. 1敦盛最期Jにおける二人の 生き方と比較しながら読み, この時代を生きた人たち の「生き方」がどのようなものであったかについて語 り合いをすることを提案します。

①「木曽の燈期」を追求する

平家を滅ぼすことを目的とする源氏の中で, 味方同 士で争った話を読んだ子どもは次のように考えるで しょう。

:i義仲についての発言

-今lオはよろいが重く感じると言っているから, 精 神的にもかなり疲れているのではなL、か

・義{中は戦場では強い人だったけれど, 最後は今井 に一緒に死のうと言っているから, 意気地がない 人なのか

-武将として情けないと捉えることもできるけれ ど, 気の合う人と最期まで一緒にいたいと思うこ とは当たり前のことだろう

-非の打ち所がないリーダーよりも, 人間味のある

nu 唱'A

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国語科授業案

方がよいと思う。 義仲は人間味のある人だったか ら今井のような立派な人が一緒にいてくれたのだ ろう

-人に恵まれた生き方をしていたのかもしれない

・自害することは当時の人にとって大事なことだっ たのだろうか

選んだ話について個人追求が進んだところで, 同じ 話を選んだ子どもたちでグループをっくり, それぞれ の人物についてわかったことや疑問を共有する時聞を 設けます。 このことにより, さらに読みを深め, 次H寺 の語り合いにつなげます。

など: (5) 5人の「生き方」にせまる( 2時間 本時はその2)

:今井についての発言

: ・今井はものすごく強い武士だ。50騎相手に一人 で立ち向かつて, やられないのだから

・識や11よりも今井の方が言ってることに筋が通って いる。 どちらが主君なのか台詞のうえでは読み|制 越えてしまいそうだ

-毅NIが立派な最期を遂げるために時聞を稼ぐの は, すごく切ないことだけど迷わずやれることが すごし、。 心も強L、し, 戦も強し、。 今井は今まで読 んだ中で一番強い武士だ

・名だたる武士は終わり方も大�jJと言っているからe 今井は武士としての生き方がわかっている人だ。

武士という生き方を最期まで望んでいるのだろう .義flllがゃれたらすぐにもう時II.\Jを稼ぐ必要はない と切り替えられる今井は, 目的をもって行動して いる人だ

など

「木曽の最期」で壮絶な最JVlを遂げるこ人。 その終 わり方について, 義frllのこれまでの功縞と真逆なこと が話のスパ イ スになっていると感じるでしょう。また,

最後まで寄り添う今井の姿が, 読む人の心をつかみ,

この話における二人の対になる生き方について説みを 深めていくでしょう。

②「忠度の都落」を追求する

-武士なのに和歌が得意で, 和歌を愛する心をもっ ているのは意外だ

・都を追われ逃げていく最中にも和歌を大切にして いるのは自己中心的ではないか

・忠!度にとってただの趣味ではなく, 人生の一部な のだろう

・自分の信念の元に, 逆境に立ち向かっていくこと

!

なんて誰にでもできることではない

. !蹴の場であっても自分の大切にしたもののために;

生きるというのはロマンチックだ

忠度が文武両道を1!lく立派な人だということに, 子 どもたちはすぐに気づくでしょう。 武芸にも和歌にも 秀でた人がとった行動から, 忠度が大切にしたものが 読み取れます。

前時までに子どもたちが追求してきた「木曽の最期」

「忠度の都落」について, 木曽か忠度を追求した人が 必ず一人以上含まれるよう4人グループを作ります。

そのうえで, それぞれがどのような人物であったか共 有します。

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, ・義仲は, 武士=兵士としては極めて優秀だったの に, 強いだけでは駄目だったとわかった

・今井という存在から, リーダーが活躍するために は, それを支える人が大切だとわかった

.忠、度は武道にも和歌にも秀でた人だった

など

ij':J.雌と直実に加えて, 議イ111や今井, 忠度という新た な人物像について共有したところで, r 5人の人物像 から, 当時の人たちのどのような生き方がわかるだろ う」と問いかけます。 すると次のように子どもたちは 発言していくでしょう。

- ・義イ111も忠度みたいに, 強さとともにも政治を動か ・ す力ももっていれば人生が変わったかもしれない:

: ・義仲と直実は気持ちで動くところが似ている

・ ・敦盛と今井は武士としてのプラ イ ドを重んじた生

;

き方が似ている

; ・直実は敵の大将を討ち取ったのだから, 武士とし ては名誉なことこの上ないのに, 出家してしまっ : た。 武士として生きることに疑問をもったのだろ

・武士の中にも, I画実のように考えが揺れ動く人が;

いた。 戦いの中に生きることは葛藤の述続なのだ:

ろう

・同じ武士という立場なのに, 生き方には個性があ

;

ふれている

・今井のように主君の名誉を守ることに命をかける:

強さがある人もいる一方で, 迷うl直実もいる など

i .

・---ーーーー・・・ー・・・・・ーーーーーーーーー・・・・・・・・・ーー・ーーーー・・・・・・・・

子どもたちは, このように自分の読み取ってきた叙 述を恨拠に比較を始めるでしょう。 そこで授業者が,

「それぞれの生き方のうJ:J.;)ill点はどこだろうか」と問L、

直すと, 子どもは登場人物の生き方を比較していくで しょう。

(9)

-敦盛と忠度には貴族的な優雅さがあり, 戦場に笛 と和歌を持ち込む文化的な教養があることから,

自分という生き方をもって行動している

・感情の起伏が激しい直実や義仲は, それだけ自分 の思いや生き方をもっているのだろう

-直実と義仲は思ったら即行動, 即発言することか ら 自分の意志を貫く行動力がある

-敦盛や今井は, 武士としてのプライドを守るため に, それぞれの選択をしている

-戦功か家の繁栄かは異なるが, 全員一度は必ず人 生の中に勢いに乗っている時期がある

・直実は出家をし, 他の人物は武士としての死に方:

を求めていた

' ・源氏も三代で滅亡していたから終わりは必ずある - 自害することも含めて人生の最期をどのように迎

えるかを重要視している

・敦盛のように 自分は美しく死ぬために行動するこ とは考えられない

‘ーーーーーーーーーーーーーー,ー・ーーーーーーーーーーーーーーー---ーー---�などj

子どもたちは, 全ての登場人物の輝かしい実績は一 瞬であり, 時の経過とともにその光は失われていくこ とを読み取っていくでしょう。この読みをもとに, も う一度「祇園精舎」を読んでみようと提案して次時に つなげます。

(6) I無常観」について考えよう(1時間)

初めは聞き慣れない歌のように聞こえた「祇園精舎」

を改めて聞いてみます。子どもたちは, 登場人物たち の思いにふれ, I生き方」という視点でこの題材を読 むことで, 自分の考える「無常観」について 「祇園精 舎」のフレーズの一つ一つに5人の生き方を照らし合 わせて次のように語るでしょう。

-終わりのないものはないということだ

5人は人生を変える転機があった。敦盛と忠度は 日本の半分を統治した平家として, 義仲と今井は 京都を一時的に支配した勢力として, 直実は自分 より身分の高い武将を討ち取った実力者として。

みんな文字通りの栄華を極めた

・正確には, 一度勢いに乗ったからと言っても, 長 くは続かないという意味だろう

. I春の夜の夢のごとし」はどうして「春の夜」な のだろう

. I春」は桜も散るので, はかない感じを表すので はないか

・祇園精舎を調べたら仏教に関わる言葉らしし、。話 の冒頭には仏教の宗教観も出てきている

-沙羅双樹は花がポトッと落ちるから, 武士として;

首が落ちることを重ねたのかもしれない

・人の行いはどんなに華やかに見えても必ず終わり がくる。それが無常観なのかもしれない

・源氏の隆盛も風の前の慶に同じだということを 知っているから, よりはかなさが伝わってくるだ ろう

・ 自分が好きな物語にも, 無常観がある。無常観は 現代の作品にも使われていると実感した

・駿府械の桜は美しいけれど, 一年中咲き誇ってい たら, その美しさの価値が下がるのかもしれなL、。

これも無常観なのだろうか

など 子どもたちは, これまで読み取ってきたことを今の 自分の世界に結びつけて考え, 自分 自身を見つめ直し ていくでしょう。

授業者は最後に題材を通して考えた 「生き方」につ いてまとめて書こうと伝えます。子どもたちは次のよ うに思いを記すでしょう。

j -部活動が 自分たちの代になったから, 引退まで;精 一杯取り組むと決めたから貫きたい

-芸人さんたちのように一時は売れても様々 な理由 で廃れてしまうことがある。l時代を築いていく中 でもどのように終わりを迎えるかは大事なことだ

・現代では寿命 100歳の考えがあり, 肉体的な死に は無常観を感じにくいと思う。むしろ, 社会的に 死ぬことの方が人としての生き方を問われるから 無常観を感じる気がする

-人が生きるということは, 必ず終わりがくるとい うことだからこそ5人の武士のように 自分の信念 を貫くことが大切なのだと思った

・無常観はどの時代にもあてはまることなのだ . I名づけられた葉」で考えた「うつくしく散る法をJ:

にも無常観をあてはめられるのではなL、か

-ーーーーーーーーーーーーーーーーー・ーーーー・・ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー-. などj この授業をきっかけに, 生きるとは何か, 自分の人 生を見つめ直し, 言葉からもらった考えを言葉で伝え ていく営みに広がっていくことを願い, 授業を閉じま す。

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参照

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