気相温度制御イヒ学気相成長法によるアルミニウム 単結晶薄膜成長の研究
著者 小林 司
雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告
巻 16
ページ 145‑147
発行年 1995‑03‑28
出版者 静岡大学大学院電子科学研究科
URL http://hdl.handle.net/10297/1272
氏名・ (本 籍 ) Jヽ 林 司 (山 梨県 )
学 位 の 種 類 博 士 (工 学 )
学 位 記 番 号 工博乙第 52 号 学位授与の日付 平 成 5年 12月 22日 学位授与の要件 学位規則第 4条 第 2項 該当
学位論文題目 気相温度制御イヒ 学気相成長法によるアルミニウム単結晶薄膜 成長の研究
論文審査委員 (委 員長
)教 授 助 り │1徳 三
教 授 福 家 俊 郎 教 授 藤 波 達 雄 教 授 畑 中 義 式 助教授 中 西 洋 一郎
論 文 内 容 の 要 旨
現在の大規模集積回路 (LSI)に おいて、アル ミニウム (Al)は 欠 くことので きない配線材料である が、近年エ レク トロマイグレーション、ス トレスマ イグレーション、ヒロック形成 といった種々の間 題が指摘 されている。 これ らの問題 はすべ てAl膜 が多結晶であ り結晶粒界力沈 1原 子の拡散経路 を提供 していることに起因 している。そこで、単結晶配線が実現すれば、これ らの問題 は氷解すると期待 さ れる。 また、現在行われているスパ ッタリング法では、将来必要 とされる微細なホール内へのAl膜 の 埋め込みは困難である。一方、化学気相成長法 (CVD)は 表面反応 を利用するため、この ような微細 なホールで も埋め込みが可能である。Alの CVDは 将来の配線形成法 として大 きな可能性 を有するが、
従来の研究では、えられる膜の表面平滑性が悪い とい う重大な欠点があつた。本研究は、将来の超LSI に対応可能な、優れた膜質を有するAl膜 の作成法 を、 cvD法 により検討することを目的 とした。
本研究では新規に考案 された気相温度制御 CVD(GTC‐ CVD)法 の Al‐ CVDへ の適用を試みた。 GTC‐
CVDは 原料ガスが基板 に到達する直前 に、 GTCを 用いて効率良 くガスを加熱する熱 CVD法 である。原 料 として トリイソプチルアル ミニウム (π BA)を 用いた GTC― CVDの 機能、反応機構に関することが調 べ られた。まず、・ 1lBAを 用いた CVDに おけるジシラン添加効果が調べ られた。ジシラン添加はAl膜 の 成長過程 において各島の合体 を促進 し、膜 の表面平滑性 を向上 させる効果があることがわかった。 ま た、従来合金 ターゲ ッ トを用いたスパ ッタ法で実現 されていた Al‐ Si合 金が、ジシラン添加 による CVD
法で直接形成できた。次に、■ BAを 用いた GTC― CⅥDに おける GTCの 機能が調べ られた。その結果、良
質なAl膜 をえるためには、 GTC温 度 とガス流量 を適当に設定する必要があることがわかった。 また、
CVD反 応過程 において、成長するAl膜 の結晶配向性 に大 きな影響 を及ぼす ような中間生成物が関与 し ているとの見通 しがえられた。 GTCの 機能はこの中間生成物 を効率良 く生成 し、基板 に供給す ること にあると思われる。 この供給量が十分であれ │ま ゝ i基 板の面方位 にかかわらず、 (∞ 1)配 向 したAl膜 が
えられる。 しか し、この中間生成物が何であるかは同定で きていない。
次 に、 GTC‐ CVDに よる Si基 板上のAlエ ビタキシャル成長が調べ られた。五種類のエ ビタキシャル膜
が え ら れ た が 、 こ の う ち 、 Al(∞ 1)〃 Si(Hl)、 Al(lH)〃 Si(Hl)、 Al(001)〃 Si(∞ 1)、 Al
(HO)〃 Si(115)、 は四吋 ウェハー全体 にわたる平坦 な単結 晶膜である。従来、物理蒸着法では何種 類 かの単結晶膜が報告 されていたが、 Al(∞ 1)〃 Si(Hl)、 Al(∞ 1)〃 Si(∞ 1)、 及び Al(HO)〃 Si
(115)と い う膜が得 られたのは本研究が初 めてである。 また cVD法 による Alの 単結晶成長 は本研究が 初めてであ る。 これ らの膜のエ ビタキシャル関係 は Si(H5)上 の一部の膜 を除いてすべ て Al[HO]
〃 Si[110]で あった。 Siと Alの 格子定数の不整合が大 きい に もかかわ らず この ようなエ ビタキ シャル成 長が実現す るのは、 [H01方 向 に添 つて四周期分の Alと 三周期分の Siが 長周期的 に整合するためであ る と思 われる。 これ らの界面の断面電子顕微鏡観察 によれば、 Siと Alの 格子配列は界面 を堺 として急峻 に変化 してお り、 Al四 周期分 と Si三 周期分が整合す るようすが観測 された。今 回の単結晶膜の 中で、特 に Al(Hl)〃 Si(lH)膜 は鏡面反射率 90%以 上 と非常 に表面が平滑であ り、結晶性 も従来報告 されて い る もの に比べ 良好であることが明 らか になった。 この膜 で は ヒロ ック等 は発生せず、 またエ レク ト ロマ イグ レー シ ョンやス トレスマ イグ レーシ ョン耐性 とい つたLSI配 線 としての特性が格段 に優れてい ることがわか った。 この ような膜力℃ VD法 で実現で きた意義 は大 きく、優れた膜質 と段差被 覆性 を兼 ね備 えたAl成 膜法の可能性が開けた と言 える。本研 究 の範 囲内では、 これ らの膜 は実用的に直 ちに利 用可能 な もの となっていない。 しか し、従来不可能 と思 われていたAl単結晶配線技術の実現 の可能性 の一端が、本研究 によ り開かれた もの と思 われる。本研 究 を契機 に Al‐ CVDの 研究が活発化 し、近年優 れた成果 も報告 され始めてい る。
以上述べ た ように、本研究 はLSIの 配線材料 としてのAlの 、 Si基 板 上 における結晶成長の物 理的性 質
を明 らか に し、かつ単結晶配線技術 の実現 の可能性 を実証 した もの として位置付 け られる。
論 文 審 査 結 果 の 要 旨
集積回路 は年々集積度が増 し、最近では超大規模集積回路 (ULSI)と して、高密度化、微細化がは か られ最小寸法が lμ m以 下 となっている。 この様 な uLSIに おける電極配線 には通常 アル ミニ ウム (Al)が 用い られているが、寸法の減少 とともに電流負荷耐性、機械的歪耐性等が厳 しくな り、故障 の原因 として問題が生 じている。従つて、その解決が緊急問題 となっている。
研究では従来のAl配線で生ずる問題が多結晶薄膜 を用いるために、その結晶粒界に起因するものと 考えた。そ して本論文は単結晶を用いれば、その問題が解決出来るとの観点 より研究 を行つたもので ある。第 1章 では、本研究の歴史的背景 と目的が述べ られ本研究の位置付けがなされている。第 2章 は 各種薄膜作製方法 によるAl薄 膜 について述べ、蒸着法 、 スパ ッタリング法、熱的化学気相堆積法
(CVD)及 びプラズマ CVD法 等による、エ ビタキシャル薄膜形成の比較が述べ られている。
第 3章 では本研究で提案 された気相温度制御化学気相成長法 (GT‐ CVD)に ついて、その原理及び実 験装置 について述べている。更 に トリイソプテルアル ミニウム (■ BA)に ついて、反応モデルが示 さ れ、またその他の有機金属 との比較 もなされている。
第4章 では GT‐ CVDに よるシリコン (si)基 板上へのAlの エ ビタキシャル成長について述べ られてい る。 Si(lH)基 板上へはガス流量の多い ときに、 Al(Hl)が 成長 し、少ない ときには Al(∞ 1)が 成 長することが分かった。 また得 られた膜質は Al(Hl)が 最 も良 く、光学反射率は Alの 単結晶バルクと 同 じであった。一方、 Si(∞ 1)上 のものは Al(∞ 1)が 成長するが光学反射率はスパ ッタリング法によ るもの と同程度であった。
第5章 では Si基 板 とAlヘ テロエ ビタキシャル層の関係 を断面班〕 Mに よる原子像 を用いて検討 してい る。格子間隔か ら Al(Hl)/Si(lH)と Al(∞ 1)/Si(∞ 1)と は 4:3の 周期で長周期的に整合 し、原 子像観察か らも接合界面で完全に緩和 した状態 にあることが判明 した。 Al(110)/Si(∞ 1)の 場合、
整合性 をもち互いに直交する二つの組み合わせが存在 し双晶が生ずることが分かった。 また一方の成 長を抑制する Al(HO)/Si(H5)の 基板 を用いることで単結晶の得 られることも実証 している。第 6章 では配線材料 としての評価 を行い単結晶Al膜 を用いるときに電気的機械的耐性の向上することをしめ
した。特 に Al(Hl)/Si(Hl)は 優れていることが分かった。第 7章 は結論である。
以上要するに、本論文は GT‐ CVD法 によるAysiの ヘテロエ ピタキシャル成長機構 を解明 し、将来の ULSIの 配線技術 に新 しい可能性 を示 してお り、博士の学位 を授与するに充分な内容があるものと認定 する。
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