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日本語教員に求められる知識と能力 : 学会誌にお ける研究動向から

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(1)

日本語教員に求められる知識と能力 : 学会誌にお ける研究動向から

著者 佐々木 倫子

雑誌名 静岡大学教養部研究報告. 人文・社会科学篇

巻 22

号 1

ページ 220‑202

発行年 1986‑08‑30

出版者 静岡大学教養部

URL http://doi.org/10.14945/00008510

(2)

日本語教員に求められる知識と能力

一一 w会誌における研究動向から一一

佐々木倫子

はじめに

 どの分野においても同様であろうが,新しくそこに入った者にとって,

それまでの歴史の蓄積を把握することは容易ではない。日本語教育にも16 世紀からの短くはない歴史があり,これまでの成果を把握することは容易 ではない。しかし,容易ではない故に,それを砥とんど知ろうともせず,

安易に「分野としては水準が低い」などと片付ける参入者が居るとしたら,

本人のみならず,分野全体にとっても不幸なことである。H本語教育には 実践面での厳しい自己研鐙の歴史がある。それは,時に学習者の遠慮のな い批判を受け,蒔にこちらの思う通りの反応を見せない学習者に悩んだ結 果,積み重ねられてきた自邑改善の道,研鐙の歩みである。日本人学習者        (1)

のみを対象としている語学教育とはまた異質の厳しさと言ってよい。こう いった過去の血と涙の結晶である研究成果を踏まえずに,学習者をいたず

らに惑わせ,無駄なエネルギー・を使わせるといった 有史以前 の教え方が,

今も国外のみならず,国内においても見受けられる。又,これまでの幾多 の研究成果と現在の研究動向にほとんど触れることなく終わる教員養成講 座もある。研究動向に敏感であることは決して各良の教育者,研究者とし ての貞立性を損なうものではない。日本語教育が急速に広がりつつあり,

他分野からの参入者が続く今,研究動向を見つめ直す必要があるのではな いだろうか。

 以下,この小論では,まず,日本語教育の分野の規定とその下位分類を        (2)

試みてみたい。そして,到達した下位分類に従って,日本語教育学会の学 会誌『臼本語教育』にこれ憲で掲載された全論文の分類・整理を試みる。

現場で教えている者を申心とした目本語教育関係者が何を問題にしてきた かを概観することによって,H本語教員に求められる知識・能力を探って いくのがこの小論の目的である。さらに,.今後の研究動向も考えてみたい

(220) 97

(3)

と思う。

1 分類の基準

 1.『日本語教育文献索引』に見られる分類

 『日本語教育文献索引』は「日本語教育指溝参考書」の第10編として,日 本語教員の指導上の参考に供するため刊行された。その中では以下の分野       (3)

名および分野番号が用いられている。

言 語  言語種別  形式・単位

変 化

評 価(基準)

 言語研究 言語問題 雷語周辺

言語活動  思 考  表現・理解  行動様式  条 件

言語要素

 音声

  単 音

  音節

  音変化   付加要素

文字・表記

  記号   漢字

  仮 名

 −︷234567  −←9編つe4

C

Cl

Cll C12 C13 C14

C2

C21 C22 C23

      ヨノ      ヘノ

マ記問      彙類成語書味 詞書形詞そ詞辞 一 字彙       の溝用        法  化 詞 .表国語語藝器慣慧文晶用変名副助接

アスペクト。表現  アスペクト等  待遇・可能表現  表現意図

 関係表現

(4)

 文の種類  文の構造  成 分  成分関係 文章・文体  文 章  文 体  話 法

言語能力

言語教育  言語教育   学習言語   外国語教育   日本語教育史  学習者・教師   教育の場所   学習者   教 師

 教授法・学習段階   教授法

  学 習   学習作業   学習段階

  カリSF =・ラム

  クラス 教育内容

 立  ・ i「

  目  ア鷺

 文 字

  語 彙

 文 法  発 話  聴解・読解

C61 C62 C63 C64

C7

C71 C72 C73

D

 1111213221222333132333435364414243444546

 作 文  対 訳 教 材 測定・評価 視聴覚教育  視聴覚教育  視聴覚教材

機 関  教育機関

  教育機関(日本)

   対 象    学習目的    レベル    設置機関    各機関    講座名

  教育機関(海外)

   地域・国・都市    対 象

   レベル・

   設置機関    各機関   研究機関    学 会    研究機関等  教師養成機関  関係機関

人 物

 H本語教育者  言語研究者 教材原作者

47

FF珊珊珊珊珊珊班班斑珊斑珊珂FFFFF S8 T677172  −占り々Qり  11111213141516221222324252212234

(218) ρ9

(5)

書名

 研究書  言語資料  教科書

 喉1り自つO

教材

辞典・参考資料

言語名

H4 H5

1

 これはよく考えられた上の分類ではあるが,項目の数の多さと,項目同

士のいくつかの重なりに気付く。A2とC4の領域, A 7とB3・B4の 領域,又,A4とE6との関連,さらに, B 2とE4・DとE4にも重な りがあるようである。EとFとの重なりも見られ,特にE22とF111, E 3とF11などが目に付く。全体として眺めてAとCとを1つの項目にまと められないかという気もする。

 研究動向を見るためには一つ一つの論文がなるべく少ない項目,出来れ ば1項臼におさまった方が良い。この分類では何項目にもまたがる論文が 多く出る恐れがある。

 2.TESOL Quarterlyの分類

 ここで 外国語としての英語 教育がどうなっているかを見てみたい。

この種の最大の学会であるTESOL(Teachers of English亡o Speal〈ers of

Qther Languages)の機関誌TESOL Quarterlyを見てみた。1984年の

       (4♪

TESOL QuarteTly e:i Selected Topic Indexがあるが,これは以下のよう になっている。

Bilingualism/Biiingual Education Classr◎om−centered Research Conもrastive Studies

Cu∬iculum/Syllabus Design

English for Special Purp◎$es/EST/Technical Writing Lis七ening

Me七hods/Ma七erials

Phonology/Pronu nciatiolt Teaching

Professional Standards and Concerns

Pτogram AdministratiOn and Evalua亡iont

Psycholingu.istics

(6)

Reading

Second Language Acquisition Sociolinguistics/Culture

Syntax/Grammer Teaching Teacher Training

Testing

Text Analysis

Writng

 これは一瞥すると分かるように各項自がアルファベット順に並べられて いるだけで,項目同士は関係付けられていない。ただ,どんな項鼠が上が っているかを見ることによって最近の研究動向を知ることが出来るe一さら にTESOL Quarterlyに関しては次の論文に言及したい。

       「5)

 伊藤は「TESOL Quarterly掲載論文にみる研究動向1970〜1983」にお いて14年間にTESOL Quar七erlyに発表された400以上の英語教育研究論 文を分類し,英語教育研究の動向把握を試みている。そして,そこで設定 されているのが以下の分類である。カッコ内に伊藤の分析の簡単なまとあ をしるした。             ・

1 応用言語学(含・psycholinguis七ics, neurolinguistics.研究が推奨され  ているが低調)

H 言語習得(含・eτr◎ranalysis,冒語技能・言語要素そのものの研究。

   関心が高い)

皿 英 語

刈三り山り04轡0 標準英語(含・語法研究)

非標準英語・変種 他言語との比較

文化・社会(sociolinguis七icsへの関心は高い)

2言語併用(2言語使周)(研究・実践ともに盛ん)

W カリキュラム(含。教授プログラム)

V.教 材 w 教授法

鴨 テス}   (テメトそのものの研究であり後のr評価」とは別扱い)

       ζ216)   10ズ

(7)

234     凪  x刃

彊 指導技術(全論文中32%を占める)

 1.言語i技能(「聞・話」一一42%,「読」−20%,「書」一一26%,残りが総     合。科学的実証研究が少ない)

   欝語要素

   視聴覚教具・教材(必要性があるが,徐々に関心がうすれている)

   その他(ゲt・…ム・rGle−playingの研究の必要性は高い)

  評 価(研究が遅れているが,最も注意が払われるべき)

 学力の評価

 カリキュラム・教材の評緬  教授法・指導技術の評価  その他

学習者(研究は数少ない。もっと注意されるべき)

教授者(含・教員養成。今後も関心を呼ぶだろう)

 この分類の明快さは評価したい。といって,ここにあるr英語」をr日 本語」に置き換えてそのまま使えるというわけではない。日本語の場合,

皿の項鼠に於いて,2が極めて数が限られるのに対し,3が逆に多いこと は想像に難くないし,5もこれから始まるというところであろう。1から 5まで並列する分類法が適正とも思えない。1とttも大項目として成立す るだけの比重を置かれてはいないだろう。そこで改めて日本語教育に立ち 返り,分類法を考えてみる。

 3.r日本語教員に期待される能力」からの分類

 昭和51年に日本語教育推進対策調査会は臼本語教育に期待される能力の       《6)

具体的内容を53項潟にわたってあげた。以来,この53項目が日本語教員養 成講座の基準として採り上げられることも多い。ただ,報告から10年を経 過し,現状を踏まえて若干の見直しが必要であるという意見,又,一つ一 つの項目に異論はないとしても各項目毎の必要度の差を考えるべきだとい

う意見が出てきていることは確かである。

 1984年3月に国際キリスト教大学でICU目本語教育30周年シンポジウ ムが開かれ,分科会Bでは「教師養成,教師の資格」が採り上げられた。

その際,この53項厨の一つ一つにつき,必要性の大小に関する統計がとら

れた。会場には53名の日本語教育関係者が居たが,アナライザーを使用し

て,「1.必要性が大いにある,2.ある,3.必要性があまりない」かを答え

(8)

ていったのである。アナライザーe不慣れのため,あるいは,答えに時間を とりすぎたため,頂目によって人数総計が37から53までになるという変則 的な統計となった。しかし,ともかく各項目別にその総計を100として,

1,2,3それぞれの占める割合をパーセントで出し,必要度の高いもの に3点,普通に2点,必要度の低いものに1点をかけて,各項目の必要度 を数字で出してみた。もし回答者全員が「1.必要性が大いにある」と答え たとすれば,その項目のパ・一セントは「1−100,2−0,3−Ojとなり,数 字は300となる。逆に全員が「3.必要性があまりない」と答えれば,「1−一一 e,2−0,3−100」となり,数字は100となる。こうして得たi数字の260〜

300を必要度1位,200以上260未満を2位,200未満を3位として,53項目 とあわせて提示したのが以下の表である。

内 容

瞭度

憎19翻3 456 ワ・89 0ーウ翻3 噌⊥ームー− 4F◎ 雪⊥−←

1 書語に関する知識・能力

 1 臼本語の構造に関する体系的・具体的な知識  (1)音 声

  ① 発声。発音の機構   ②音韻体系と音節構造

  ③連音法・アクセント・イントネーションなど  (2)文字・表記

  ① 表記体系

  ②嘆字の音訓の機能

  ③漢字及び仮名の字形・字源

 (3) 書吾彙・意財ミ

  ①現代語の語彙の構成   ② 語の形態

  ③ 語の意昧  (4)文法・文体

  ① 現代語法の理論と用語   ②待遇,陳述,接続等の蓑現   ③ 文語文法

  ④日本語の文体的特色

2 H本人の喬語生活・言語行動の特色に関する知識  (1)現代言語生活の特色と問題点

  ①現代書語生活の種々相

  ②待遇蓑現行動,言語随伴行動など

222 り々109 221 9碍−孤3り甜 21ゐ

(214)  103

(9)

内 容

£Uワ・ −←− 8Qゾ 暦←1 AV1 9暫り仰 234 9郁9嗣9臼 POρQ り仰りρ 7890 り4り々2りδ 123 Qσ33 45慶U gJ◎りQり 78 0UOO

39

② 日本人の雷語意識

 ①音声言語と文宇言語に関する意識   e  ②共通語と方書に関する意識

3 その他日本語に関する知識

(1)日本語の歴史

 ① 日本語の変遷

 ② 日本人の言語生活の変遷

(2)目本語の方言

 ①言語の地方的変異とそめ分布

 ②現代共通語の成立,方言と共通語との交渉

(3)古典と文芸

 ①古典の読解・鑑賞  ② 現代文学の読解・鑑賞  ③ 文芸の伝統

(4)国語間題と国語施策

 ①国語問題の沿革と現行の国語施策  ②外国の言語問題との比較

4

 5

∬ 臼本語の教授に関する知識。能力  (1)日本語教授法に関する知識

  ①種々の外国語教授法の理論とそれらの教授法の特色   ②日本語教育に用いられている各教授法の実態

 (2)日本語教育の歴史と翼状に関する知識  (3)指導計画の立案に関する能力

  ①到達目標・進度の設定,学習時間の配分   ②教授内容・教材・指導場面等の選定

 (4)指導に当たっての個別的・具体的指導技術に関する知   識・能力

  ① 音声・文字・語彙・文法等の指導技術 言語学的知識・能力

① 一一wi般欝語理論,主な需語の特色

② 言語体系の分析的・総合的記述方法

③ 言語生活・言語行動の観察・分析・記述の能力

④鷺本語と外国語とに関する雷語学的対照の知識・能  力

⑤ 雷語学の歴史       

⑥ 日本語に関する臼本人及び外園入の研究とその歴史 外国語に関する知識・能力

瞭度

9ωウ甜 礎リハδ 0り6◎ 609銅3 3直ソ耐 ワ研り49甜−凸 3り0ーム ウ欄−りα 可←1←

1

(10)

審号} 瞭度

40

41

42

43

44

.45,

46 47

n◎9AV ㌧445 糧まワ翻OU 押◎F◎P◎

   ② 復習・再確認・導入・、既習慕項との関連づけ・整理     及び指導結果の効果的な定着・習慣化に関する指i導    ③ 学習心理に基づいての指導の展開の計画,機会・場     面の活用

   ④学習者の日本語学習目酌・学習期聞・年齢・日本語     能力・学習の場所等に即した指導技術   g

   ⑤ 指導目標や学習の場に応じた教材の選択・提示・使     用及び参考書・辞書等の使用に関する指導

   ⑥教育原理・教育心理・教育方法等の教育学・心理学     に関する知識

 ・(5)教材・教具に関する知識とその利用及び作成の能力    ①教材・教具に関する知識及びその利用能力・一    ② 教材作成の能力   ,

   ③ 視聴覚教材・視聴覚機器に関すろ知識汲びそQ利用    能力

  ⑥ 評価法に関する知識と評価能力    ①各種のの評価法の理論と技法

   ② 学習者の日本語能力の測定・分析・評価    ③ 評価の結果による指導の修正

皿 その他日本藷教育の背景をなす事項についての知識・理解   (1>日本に関する知識・理解       ,

  (2)世界の諸地域に関する知識・理解   (3>その他の一一般的な知識

1

1

1

1

2

111 ウ臼噌三− 噌⊥9翻りρ

 4。研究動向分析のための分類

 「日本語教員に期待される能力」の項目をもとに,前記の諸分類も合わ せて考察して,優先項目はより詳しく,非優先項目は犬きくまとめてとら えたのが,以下の分類である。全体をまず3大別した。1は言語,つまり 雷語研究に力点を置いたものであり,Irは言語教育に力点を置いたも⑳,

そしてrulは背景となる知識・理解とした。さらに・各分野を重要度に律い・

下位分類してみた。これは分類基準自体が既にかなり現在の研究動向を反 映しているのではないかと思う。

語 本 日

1︒

1

(212)   105

(11)

  (o)総論  (1)音声  (2>表記  (3)語彙  (4)文法一一@総論 ①用

  雷 ②変化形 ③名詞類 ④副詞類 ⑤助詞類 ⑥接辞類 ⑦文型・

  文構造・文節等  (5)アスペクト・表現・文体一①アスペクト等   ②表現意図等 ③待遇表現 ④関係表現⑤文体

 2。言語一般

  (1)対照研究  ②外国語研究。言語学e日本語学説等  3。言語行動・文化

H 言語教育  1.教授法

  (1)教授法理論  ②指導計画一⑥総論 ①ニーズ分析・指導目標・

  シラバス・ヵリキュラム ②レベル・クラス形態・機関 ③学習者身   分・専門・母国語  ③教師・教員養成

 2.  誤用例。教育内i容●ヂ旨導i技看擬

  (o)総論  (1)発音  ②文字・表記  ③語彙  (4)文法・文型   (5)口頭表現  (6)読解  (7)作文  (8)対訳  ⑨言語行動・文化・

  思考  (lo)学習作業

 3.教 材  4.視聴覚教育

  (1)視聴覚教材・設備  (2)教室作業・聴解教育

 5.評価法

 6. 同本語教育事情

  (1)日本語教育史  (2旧本語教育の親状一⑥総論①国内②アジ    ア(日本以外)③大洋州 ④北米 ⑤中南米 ⑥欧州 ⑦中東・ア   4フリカ

皿 背景となる知識・理解  ユ. 日本語にかかわる知識

 2. 日本事情        3.国際関係・世界各国事情

][調査結果

1.調査原則

(12)

 調査対象の学会誌『日本語教育』は,創刊準備号から58号までの全59冊 で,収録されている論文数は482であった。この外に96の研究例会発表要

ぐ7)

旨を始めとして,随想・報告・書評・新刊紹介・アンケー一ト等があった       (8)

が,調査対象からは削除した。

 さて,482の論文分類にあたっては以下の原則を設けた。

(1)数多くの論文が2項目以上のポイントを採り上げたり,1つのポイン  トを2項目以上の立場から論じているが,原則として最重点項目に従い  1論文1項目とする。

②ただし,2項圏に同程度の比重でまたがるものは,それぞれを£んと数  える。

(3)多くの論文が,誤用例分析,対照研究を出発点に論旨を展開している  が,それが中心課題となっている論文のみを,これらの項輿に分類す  るe

(4)総論の項即こは,抽象的に全体像に触れているものも,下位分類のい  くつかの項目にまたがって触れているものも含める。

2.特   集

 調査結果を検討する前にもうひとつ留意すべき点がある。『日本語教育』

には17号以後毎圓特集が組まれており,毎号いくつかの特集関係の論文が 掲載されている。ただし,特集外の論文も毎号最低二つは掲載される。ち なみに,最近の5号,54号から58号までの論文の内訳は,特集内40論文,

特集外17論文である。ただ,特集自体が研究動向を反映していることもあ り,分類の際特集内か特集外かの区別は行わなかった。

 以下に特集名を掲げる。

 。rは」と「が」…………・・…・………・・……・・…・・……7号

 。語いの与え方,辞書の使い方………一…・・……17号  ◎Pt Ptマ字使用について・…・…………・………18号  ・海外における日本語教育の聞題点………・……臼・………・………・・19号  ・文法について…………・……・……・一…・……・……・………20号  。導入期の問題………・…・・………・…………・…・………21号  。日本語教育の最終目標………・…・…………・22号  。進んだ段階における話し言葉の指導………・………・23号  。日系人のための日本語教育………・…・…………・…・……・・24号  。日本語教師論__・…………・・………・…・…………・・……・・…25号  。言語理論と日本語教育………・…………・・……・・……r……26号

(21◎)   107

(13)

。「日本語教育」と文化…一…………・・……・………27号

。動いている日本語………・………・…・……・・………・………・・28号

。留学生の日本語教育以前の問題1…・………・…!・………29号

。初等中等教育における臼本語教育………・…・・………30号

。教師養成・研修・資格認定について………・・…・・………・・…31号

。評価と標準テスト…・…・…………・………・…・……・………32号

。日本語の表現一一慣用語句,特別な言いまわし………33号

。文法上の誤用例から何を学ぶか………・……・…・…………34号

。敬語と敬語指導をめぐる問題………・・………・…35号

。文字を書く………・………・……・…・…・…・36号

・中級をめぐる諸問題………・……・……・……・・………37号

。臼本語教育における視聴覚的方法…………・……・・………38号

。母語別教材とは何か一その理想と現実一・…・…………・…・………40号 Pカタカナ書き・・轡…一,、 f・……・………・………42号

。表現の指導一一書くことを主として一………・…・…………・…43号

。日本語教育への提言………・…・………・……44号

。初級のカジキュラムとその教授法………・・……・………−46号 e言語行動…一………・…・…・…・…………・……・………・…・・……−49号

。目本語教育の現状と今後の展望……・…………・・……・…………・・50号

・専門別の日本語教育一科学。技術系学生にどう対応するか一…51号

。竃ンピ。・一一タと日本語教育………一………・・…・…54号

◎日本語教育と外国言吾教育…………・…・………・………55号

・能力とその測定……・・………・…◆…………・…・…………・…・…・…58号

。國溺の問題点

(1)ASEAN諸国の日本語教育………・・一…・………・・……39号

② 中国における日本語教育………・……・・…幣・…………・……41号  (3)オーストラリア。ニュージー・・ntランドにおけるEil本語教育…45号

(4)韓国における日本語教育………・…・・………轡………48号

㈲ 申南米における日本語教育………・・………・………・−53号  (6) ヨー撹ッパにおける日本語教育一一EC諸国を中心rc−一……57号

。品詞別研究

・(1)動詞の研究…一一・…………1−…・……一…一∵・………47号

tt

A 副詞指導の問題点……・………・・………:…・・…一一……52号

(3)接続の表現・量一…………・・………一・一…一・∵…一…56号

(14)

3.調査結果一覧

 分野別の掲載論文数は以下のとおりである。数字は論文数を表す。さら にカッ=内に下位分類の論文数を出し,内訳を示した。

1 言 語

1. 目本語の構造  (0)総 論  (1)音 声  (2)表 記

 (3)語彙一意味・慣用句・

  ゆれ等を含む  ㈲ 文 法   ⑨総 論

  ①用言一動詞・形容詞・

   形容動詞・助動詞類   ②変化形一活用形等   ③名詞類一形式名詞・代    名詞・指示語・疑問名    詞等を含む

  ④副詞類一接続詞・感動    詞・数量詞等を含む   ⑥助詞類

  ⑥接辞類

  ⑦文型・文構造・文節等  ㈲ アスペクト・表現。文体

  ①アスペクト等一テン    ス。ムード・受身・使    役等

  ②蓑現意図等   ③待遇袋現

  ④関係表現一接続・条件・

   原因・時等

  ⑤文体一話し雷葉・書き    言葉・談話・段落・文章

2.言語一般

 (1)対照研究

創刊

 〜

10号

11

1,5

16

(1)

\薗ノ︶ ◎り9御 〆㍉︵

(7)

︶ 401よ ︵

(ユ)

OU

11号

 〜

20号

2

2

6.5

(1)

(1)

(1)

(3.5)

 ︶ 4噌1  ︵ ㍉ノ\︐ノ リ詣哩⊥ ︵/k

5

2工号

 〜

30琴

℃1QΩド◎

8

(1)

(4)

︶ QUり癖 ︵

(1)

(1)

2. 5

31碧

 〜

40号

20◎

 2.5

(0,5)

(1)

6.5

(1)

︶ 5㍉ノ 唇1 4〆㍉ ︵

3

41号

 〜

50号

0,5 2.5

11.5

(6,δ)

(2)

(2)

(1)

2

(1)

14.5

51号

 〜

58号

2

6.5

(2.5)

(1)

(1)

(2)

8.5

(2)

(2)

(4)

(O. 5)

Z5}

峯隣

1

4

5.5

21

51

24

35.5

(208)   109

(15)

 (2)外国語研究・言語学・

  H本語学説等 3.言語行動・文化

∬ 需語撒育 1,教授法

 (1)教授法理論一メソッド   言語習得理論,学習心理   等

 (2)指導計画   ⑥総 論

  ①ニーズ分析・指導目標・

   シラバス・カリキュラ    ム

  ②レベル・クラス形態。

   機関

  ③学習者身分・専門・母    国語

 (3)教師・教員養成 2. 誤用例・教育内容・指導  技術

 (0)総論  (1)発音  ② 文字・表記

 ㈲ 語彙

 ㈲ 文法・文型  ㈲ 口頭表現一会話

(6)読解  ⑦ 作 文  (8)対 訳

 (9)鴛語行動・文化・思考  ㈲ 学習作業一予習・復習・

  i導入・展開・練:習・ゲー   ム・β一ルプレイ等 3,教材の知識。利用・作成  一辞典・参考資料等を含む

創刊

 〜

10号

1.5

 ︶ 3耀1  ︵

(2)

5

(1)

(0,5)

(1)

(2。5)

1

11号

 〜

20号

1

1

(1)

12

(1)

(5.5)

(3.5)

(1)

0.5

21号

 〜

30号 2

2

6,5

8.5

(1)

(5.5)

(2)

5.5 17.5

(2.5)

(1.5)

(2)

(0。5)

(3)

(1.5)

(2)

︶ 滞◎\ノ 脅−義 Qり︵ ︵

2

31号

 〜

40号

3

5

(1)

(3)

(1)

2

18.5

(4.5)

(1)

(6.5)

(1)

(1)

(2)

(1)

(1.5)

4.5

41号

 〜

50号

2

8

3

5

(4.5)

(0.5)

4G︾  1

(1.5)

(4)

(1)

(2)

(4.5)

ヘノ︶ り々OO ︵︵

4

51号

 〜

58号

1

6.5

 5.5

(1.5)

(4)

10

㍉ノヘノ ーQJ ︵/k

(1)

(2.5)

(1)

(0,5)

0.5

5

11

20.5

28

U.5 82

12.5

(16)

創刊

 〜

10号

11号  21号  31号  4ユ号  〜   〜   〜   〜

20号 30号 40号 50号

50号

〜  計 58号

4,視聴覚教育 1 3 3 8 0.5 9.5 25

(1)視聴覚教材・設備 (1) (1) (1) (7) (0.5) (9.5)

② 教室作業・聴解教育 (2) (2) (1)

5.評価法一テスト。測定 2.5 9 2 14 27.5 6.日本語教育事情 3.5 22 20 11.5 23 27 107

(1)霞本語教育史 (0.5) (2) (2) (1)

② 日本語教育の現状

⑨総 論 (1) (1)

①国 内 (0.5) (2) (6.5) (9)

②アジア(日本以外) (1) (5) (3) (11) (7.5) (2)

③大洋州 (2) (7) (5) (2)

④北米 (1,5) (8.5) (4) (1)

⑤中南米 (1) (1) (0.5) (8,5)

⑥欧 州 (2.5) (1) (5、5)

⑦中東・アフリカ ①

皿 背景となる知識・理解

ユ, 日本語にかかわる知識一 1 1 2

歴史・方言・文芸・国語間 題等

2. 瞬本事情 4.5 1 5.5

3.国際関係・世界各国事情 1.5 0.5 0.5 2.5

曇鐸 i4・i6・lg31851・・31…1】482

皿 分 析

 1.r言語」の分野について

 日本語の構造,つまり,言語の構造的研究の下位分野は,論文の多い順 に,文法・語彙・表記・音声となった。しかも文法に関する論文数は,51 と群を抜いている。研究上・教育上の重要性を示すものであろう。特に助 詞関係の論文が多く,その中でも「は」と「が」に関するものは特集内で

5,特集外で3と目立っている。

 語彙の分野では当然のことながら類義語に関する研究が多い。「気・感 じ」「言う・話す」「ずいぶん・かなり」等,学習者にとって使い分けの難 しい語は多い。最近は『ことばの意味』(平凡社)と『基礎日本語』(角川

(206)   111

(17)

書店)の各3冊等,一連の出版も続き,f現代国語例解辞典』(小学館,

1985)には類義語における用法の違いを示す枠組み表も載っているが,一一 層の硬究が望まれる分野である。又,日本語教育における慣用句は,こと わざ的な表現よりも範囲が広く,決まった動詞と名詞との結び付き等も当 然扱われる。このほかに,外来語,オノマトペ,語のゆれ等も研究されて きた。音声と表記関係の論文が少ないが,これは後の冒語教育の項と合わ せて見る必要がある。

 アスペクト・表現・文体の項目で一番集中して採り上げられているの が,関係表現申の条件の形rと,ば,たら,なら」である。この微妙な使 い分けを学習者がVスター出来るように提出することは容易ではない。待 遇表現に関する論文が最近は出てきていないが,既に過去においてかなり の研究がなされているということかもしれない。これと入れ替わるように して出てきているのが,3の言語行動・文化の項目である。雷語生活,(外 圏人)言語場面等が採り上げられている。

 2の(1),対照研究を中心にすえた論文はさすがに多く,35.5を数えた。

外国人学習者による日本語の誤用例をすべて対照研究の立場から説明しよ うとした時代は過ぎたが,かといって対照研究の必要性がなくなったとい うことではない。誤用が日本語内部の文法項目の衝突によるものか,学習 者の母国語あるいは既習外国語の干渉によるものか,又は不完全な臼本語 習得によるものかを見分け,より効率的な日本語習得を可能にするために も,対照研究は必要である。さて,対照された言語は下の表の左側のとお       (9♪

りであるが,これを世界の日本語学習者数(右側)と比べてみたい。

量獅 五瞬

語語翻語語語語語  鞭ム㌢マ  く 属 語イナ桝β  鮮峯エガル     ウ 中英朝タベスタビ

論 文 数

14 7 7

3.5 1 1 1 1

国 名

(3,000人以上) 学習者数

国国ル国アアイ湾港ル隔  衆  リシ  開 民合ジ一フネ  ポ  カ   ト      ル      ぬ       ウ 韓リラ スド   カ  メ   鱒ン    ン 大アブ申オイタ台香シペ

231,3el 35,203 27,628 21,575

19, 843

12,161  9,217  8,745  7,305

 3, 905

 3,624

(18)

 学習者数の方は調査時期が1982年と古いため,現状にそぐわない点もあ るが,多種の雷語との対照研究が必要なことは確かである。今後は文化の 研究も含めた広い意味での対照研究が,さまざまな言語・文化との聞でな

されていくであろう。なお,後に述べる日本語教育事情の項では,ブラジ ルやイソドネシアが多く採り上げられている。

 2. 「言語教育」の分野について

 言語教育の分野の1の(1),教授法理論では,各日本語教育機関のメソッ ドを具体的に論ずるものよりも,外国語教授法理論を概観するものの方が 多かった。各メソッドは各々の機関誌で多く扱われるぜいかもしれない。

(2>の②,レベルでは,入門・初級を扱ったものが5.5,中・上級が3とな っているが,昨今は上級まで進む学習者の増加,初級教材・教授法の充実 等から,研究の比重が中・上級に移りつつあるのではないだろうか。教 師・教員養成に関する論文は数が限られているが,21世紀に向けてこの分 野の発展・充実が待たれる。

 誤用例・教育内容・指導技術を扱った論文はさすがに多く,82にの醸る。

教育内容の各分野別の論文数は,文字・蓑記19,文法・文型10,発音7.5,

作文7.5,言語行動7,語彙6と続き,日本語の講造的研究の順位とは異 なっている。文字・表記の場合,教え方の研究がより重要視されているわ けである。

 4の視聴覚教育はLLに始まり, VTR,=ンピュ・ 一タへと移ってきて いる。教育機器・情…報機器の発達に伴い,ますます研究の盛んになる分野 であろう。

 評価は2度の特集(32号,58号)を中心にかなりの論文がある。ただ

「日本語能力試験」を始めとするいくつかの特定の試験に関わる論文に集 中している傾向がある。言語適性テスト,アチーブメント・テスト,能力 テスト,プレースメント・テスト等,多種多様な評価形式を研究していく 必要があるのではないだろうか。

 日本語教育事情には100を越す論文が集まっている。日本語教育の現状

を見ると,国内ではインタ・−eナショナル・スク・・…一ル,帰国子女,中国から の帰国者,理科系留学生といった特定のグルPtプを採り上げて,その現状

と問題点に言及したものが目に付く。アジア地域(海外)は論文数が群を 抜いて多い。国別では韓国の5を始めとして,タイ,イソドネシア,シン

ガポール,マレーシアが多く採り上げられている。大洋州ではオーストラ

       (204)   113

(19)

リアがUと圧倒的で,30号の特集との関係もあり,中等教育に関するもの が多い。北米はカナダが1論文のみで他は米国である。大学とか日系人と いった特定グループを扱ったものが多い。中南米はブラジルが4.5と多く,

次がメキシコの3である,欧州はフランスとオランダのみが複数論文で扱 われているにとどまり,これからというところであるが,ソ連・東欧諸国 もまだ扱われていない。中東・アフリカに至っては,まだ特集で採り上げ られていないこともあるが,エジプトに関するもの1論文のみという状況

である。

 ただ,全体としてみれば日本語教育事情の項目に分類される論文は極め て多いと言える。「事情」のもとに扱われる内容は多岐にわたる。言語教 育に関するすべての項目が採り上げられ,特に,指導目標,カリキュラ

ム,行事(弁論大会等),クラス形態,機関,学習者,教員,教育内容,教 材,評価はしばしば醤及されている。さらに,これらの論文からは国の歴 史や経済状態から,教育捌度,機関の置かれた位置や学習者の就職問題に 至るまでの幡広い知識が得られる。教材も満足に手に入らない,日本語教 師としての資格も能力もない人間しかいない,国の経済状態が悪化してい る,日本語を学んでもそれを生かせるような仕事がないといった悪条件と 戦っている日本語教師の姿を知り,状況改善に取り組んでいくのは日本語 教師全員の務めと言ってもよい。ただ,「事情」の形は全体像を知るには 好都合でも,広く浅い知識で終わってしまう傾向がある。カリキュラムひ とつをとっても,深い分析まではなされない。一部の地域以外は個々の項 目を深く堀り下げる時代になったのではないだろうか。

 3.「背景となる知識・理解」の分野について

 背景となる知識・理解に関する論文は当然数が限られている。29号の特 集が「留学生の日本語教育以前の問題」である関係上,留学生関係のもの は4.5を数える。日本語の歴史・方言・文芸も中心課題としてはほとんど 扱われていない。背景知識は学会誌の研究対象にはなりにくいようである。

おわりに

 これはひとつの学会誌『日本語教育』に現れた論文の研究動向にすぎな

い。これまでに出版されたおびただしい日本語教育関係の著作には触れて

(20)

いないし,関連分野一言語学・国語学・英語教育等一の文献も分析には反 映されていない。しかし,この限られた資料の中からも,日本語教員に求 められる知識と能力の概要はつかめるのではないだろうか。この小論が,

新しい教育者・研究者の出発点のひとつとして役立つことを願っている。

(註)

(1)田辺洋二(早稲田大学教育学部)は次のように述べている。「ある意味で,英  藷教師と日本語教師の最大の根違は,英語教師が,最近の世界共通の語学教授法  を知らなくても日々をすごせるのに対し,一方,H本語教師は,世界の人々の強  い学習への動機と:・・一ズに対し,真っ向から立ち向かい,しかも満足さぜなけれ  ぽならない厳しい立場にあることであろう。」P.7「目本語教育と日本入に対す  る外国語教育」『臼本語教育』55号 1985.3

(2)臼本語教育学会は1977年に,外務省・文部省共管の社団法人として設立された。

 ユ962年に発足した「外国人のための日本語教育学会」が発展したものである。会  員数は,1986年4月現在,国内会員1,600名,海外会員205名を数える。「目本語  を第一言語としない者に対する日本語教育の研究促進とその振興を図り,もって  学術の発展と諸外国との相互理解・学術文化の交流に寄与する」ことを目的とす  る。その学会誌は1962年・6月の発刊以来58号(1986t4s 3月現在)を数える。

(3)P.7〜P.9国立国語研究所1982『目本語教育指導参考書 10 日本語教育文  献索引』国立国語研究所

(4) P.780 TESOL Quarterly V◎L 18 No.4, December 1984

(5)P.13〜P.20,伊藤 聰「TESOL Quarterly掲載論文にみる研究動向一1970〜

 1983年」1985『TEFL IN JAPA.N・一一一一JALT 10周年記念論文集』JALT本部

(6)P.ユ3{・P.29日本語教育推進対策調査会「日本語教員に必要な資質・能力とそ  の向上策について」1983『外国人に対する日本語教育の振興に関する報告集』文  化庁

(7)研究例会で口頭報告された竜のでも論文の形に書き改められたものは研究論文  に含められている。

(8)以下の基準を満たしたものを一応論文とみなした。

 1. 5ぺP・・ntジ以上の長さを持つ。

 2.論拠及び結論が示されている。

  ただし,特集の中の4ページ以下のものでも,論文としての形態及び内容を備  えているものは,それぞれ独立した論文として調査対象に加えた。

(9)P。192「国・地域別日本語学習状況」1985『日本語教育および日本語普及活動  の現状と課題』総合研究開発機構

(202)   ズヱ5

参照

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