審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名:太田陽子 審査論文
題 名:Speech recognition in bilaterally cochlear implanted adults in Tokyo, Japan (両側成人人工内耳聴取能の検討)
著 者:Yoko Ohta, Atsushi Kawano, Sachie Kawaguchi, Kyoko Shirai, Kiyoaki Tsukahara
掲載誌:Acta Otolaryngol. Mar 16:1-5. (2017)
(審査論文要旨:日本語論文の場合1,000字以内・英語論文の場合500 words)
【はじめに】
両耳人工内耳装用効果には両耳加算効果、頭部シャドウ効果の改善、スケルチ機能など騒音下の聞き取 り改善や、音の方向感改善、良聴耳の疲労軽減などがある。今回我々は、「成人の両耳人工内耳手術症例で は一側のみに比べ聴取能が改善するか」についてレトロスペクティブに検討した。
【対象と方法】
東京医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科では1986年から2015年の間に人工内耳手術778例を行っている。
このうち100例が両側人工内耳植込み術の症例であり、100例中初回手術時年齢が20歳以上の成人で、術 後1年以上経過し聴取能の得られた34症例を対象とした。
第一に一側目人工内耳と両側使用時の聴取能を静寂下と雑音下で比較した。第二に、一側目と二側目の 静寂下聴取能に関する相関性を検討した。第三に、両耳手術間隔と二側目の静寂下聴取能に関する相関性 を検討した。聴取能はWilcoxon の符号付順位和検定にて比較、相関性はSpearman の相関係数にて検討 し、p<0.05を有意とした。
【結果】
静寂下における一側目と両側使用時の聴取能
単語は一側目の平均73.8%(SD28.9)、両側平均85.8%(SD17.2)であり、p=0.013で有意差がみられ た。文は一側目の平均69.5%(SD36.7)、両側平均85.2%(SD24.9)であり、p=0.025で有意差がみられ た。
雑音下における一側目と両側使用時の聴取能
単語は一側目の平均68%(SD31.2)、両側平均81.8%(SD17.7)であり、p=0.008で有意差がみられた。
文は一側目の平均73%(SD28.6)、両側平均83.2%(SD22.3)であり、p=0.01で有意差がみられた。
一側目と二側目の聴取能に関する相関性
単語の相関係数は0.36、 p=0.12、文の相関係数は0.17、p=0.48であった。単語、文とも相関性はみら れなかった。
両耳手術間隔と二側目の聴取能に関する相関性
単語の相関係数は-0.049、 p=0.83、文の相関係数は-0.22、p=0.35であった。単語、文とも相関性は みられなかった。
【考察と結論】
両耳人工内耳装用下では一側人工内耳のみに比べ、静寂下および雑音下において聴取能が有意差をもっ て良好であり日本語における両耳人工内耳の有用性が示唆された。一側目と二側目の聴取能の相関性は単 語と文ともに有意差がみられず、一側目の聴取能が悪くとも二側目の聴取能について悲観する必要はない といえる。両耳手術間隔と二側目の聴取能に負の相関性を認めなかったため、成人では手術間隔が開いて いても二側目人工内耳の手術を検討可能と考える。
東 京 医 科 大 学