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東医大誌 74(3): 299
-300, 2016
学会参加記
アメリカ細胞生物学会 2015 年次集会に参加して
2015 Cell Biology, The American Society for Cell Biology, Annual Meeting
橋 口 美津子 Mitsuko HASHIGUCHI
東京医科大学細胞生理学分野
1 12
月12
日から5
日間にわたって、アメリカ、カ リフォルニア州サンディエゴのコンベンションセン ターで開催された2015 Cell Biology, The American Society for Cell Biology, Annual Meeting
(ASCB
)に参 加・発表の機会を頂きましたので報告いたします。サンディエゴというとトム・クルーズの出世作「トッ プガン」を思い出しますが、今も太平洋艦隊の主要 な母港ですし、航空母艦ミッドウェイも
The USS
Midway Museum
として展示されています。コンベンションセンターの湾側のテラスからの眺めはとて も素晴らしく、近くには観光のスポット、ガスラン プクォーターや、湾に沿って広がる公園があり、海 を眺めたりシーフードを楽しんだり、ゆったりと静 かな時間を過ごすことができます。
今年は
“Exploring the Frontiers of Cell Biology in
San Diego”
というテーマで発表が行われましたが、そのなかで最も注目された発表は、Manuel Théryら の研究チームの「ストレスは微小管をより強固にす る。Nat Mater. 2015 Nov ; 14(11)
: 1156
-63. Schae-
del L et al.
」という演題でした。ストレスにより壊れた微小管は壊れた部分の上部からブロックをひと つひとつ積み重ねるように修復されると伝統的に考 えられてきましたが、構造変化(折れ曲がりや湾曲)
を感知する機械感受性(mechanosensitive)により、
壊れた部分に直接二量体チューブリンのブロックが
コンベンションセンター外様 微小管修復スキーム
東 京 医 科 大 学 雑 誌
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巻 第3
号( )
積み重ねられて修復されるという、既存の考えを根 底からくつがえす内容であり、今まで報告のない分 子レベルでの機械感受・応答の発表でした。さらに、壊れた箇所は、再度曝されるストレスに対応すべく、
以前よりも強固に再構築され、微小管の脱重合進行 を止めるブロックとして機能するという結果も驚き でした。
次に私の研究テーマに関連した演題で興味深いも のは、リン酸化タウ蛋白質の核移行と細胞毒性に関 する発表でした。異常リン酸化タウ蛋白質の機能喪 失、細胞内凝集そして細胞死誘導というアルツハイ マー病(AD)発症のステップではなく、異常リン 酸化タウ蛋白質が
nuclear
-tau
同様に核に移行する という発表は、神経細胞死に関与する新たな制御機 構にリン酸化タウが関わる可能性を示す報告でし た。タウ蛋白質の特定部位がリン酸化されると、タ ウ蛋白質に核輸送蛋白質インポルチン(importin)のコンセンサス配列があることから、インポルチン はリン酸化タウ蛋白質と結合そして積極的に異常リ ン酸化タウ蛋白質を核内に輸送することが明らかに されました。この核移行と神経細胞死の具体的な関 連についての報告はありませんでしたが、インポル チンは神経性変性疾患とリンクしていること、急性 酸 化 ス ト レ ス や
mild heat shock
は、 非 リ ン 酸 化nuclear
-tau
の核内移行を促進、nuclear
-tau
はストレ スにより壊れたDNA
と結合そして修復するという 報告から、異常リン酸化タウの核移行もDNA
の修 復に関わっている可能性があり、AD発症機序の解 明や治療への新たな展開が期待されます。最後に、私は 「Effects of protein-
protein interactions on tau phosphorylation at proline
-rich domain.」という
演題でポスター発表を行いました。正常脳では、タ ウ蛋白質はリン酸化を促進するキナーゼを含む多く の微小管結合蛋白質と複合体『タウ蛋白質リン酸化 複合体(tau protein phosphorylation complex : TPPC)』を形成しているにも関わらず、そのリン酸化の程度 は低く保たれていることから、TPPC構成蛋白質が 複雑に関与する蛋白質−蛋白質相互作用によりタウ
2
リン酸化は統合的に制御されているという仮説を提 唱しています(
Hashiguchi M et al. Int Rev Cell Mol Biol. 2013 ; 300 : 121
-60)。
そこで
TPPC
の構成蛋白質で、AD脳での発現亢 進がありAD
発症の原因因子であるCDK5、GSK3β
そしてPKA
の活性のキナーゼ−キナーゼ相互作用 について報告いたしました。二種類のキナーゼ相互 作用では、AT8やAT100
特異的部位のリン酸化抑 制を担う主なキナーゼはGSK3β
とPKA
でした。一 方三種類のキナーゼ相互作用では、「CDK5とGSK3
β」または「GSK3β
とPKA」の二種類のキナーゼの
あらゆる組み合わせ(同時または連続的)の
prein- cubation
により、PKAまたはCDK5
の活性がそれ ぞれ抑制され、AT8やAT100
特異的部位のリン酸 化をすべて抑制しました。唯一の組み合わせ「CDK5 とPKA」による preincubation
は、GSK3βの活性を 抑 制 す る こ と は な く、PHF-タ ウ(AT8とAT100)
特異的部位のリン酸化をさらに促進しました。これ らの結果から、タウリン酸化に関わる多くのキナー ゼが共存、あるいは
AD
進行に伴ったキナーゼの発 現変化(連続的変化)が認められる条件下であって も、必ずしも相乗的にリン酸化が亢進されることは なく、キナーゼ−キナーゼ相互作用によるリン酸化 の抑制的制御機構が存在する可能性があることを報 告しました。今まで、AD研究は病理組織学から始まったこと から、正常状態でのタウリン酸化制御の報告は稀で、
本来リン酸化を促進するはずのキナーゼが特定の条 件下では全く反対の活性を有することを示した私の 発表には、多くの人の関心が集まり、今後の
in vivo
での検討を期待されるなど有意義な討論を交わすこ とができました。また、今回の学会参加で、今まで提唱されてきた