キー溝を有する高周波焼入れ鋼(S45C) の回転 曲げ疲労強度*
芳 賀 武 西 村 博 之 関 川 三 男
Fatigue Strength of Induction Hardening steel (S45C) with a Key Groove in the Experiment of Rotated Bending
by
Takeshi HAGA Hiroyuki NISHIMURA and Mituo SEKIKAWA
Thisstudylュasinvestigatedoutthefatiguestrengthofinductionhardeningsteel materials.Somekindsofspecimenpossessedkeygroovesandsomedidnot.Paticularly, thematerialswithkeygroovesusedinthisexperimentpossessedthevariousdepths ofinduction hardening.Thefracturesurfaceswere investigated by meansofan electronmicroscope.
Theconculusionsobtainedareasfollows:
(1)Fatiguelimits(1Ⅹ10TcycleHncreasedabout13.6%atthematerialA(deepinduction hardeningstee
l
),about21.6%atthematerialB(Shallow inductionhardeningsteel),
andabout8.16%atthematerialC(steelwithnoinductionhardening).Fatiguelimits mentionedabovewerecaluculatedusingfatiguelimitsofthematerialsofkeygrooves asstandardofcalculation.(2) Thecrack propagation patternsoffatiguewasobservedin thekey groove.Im particular,themeterialA wasobservedtohavecrackpropagationtothedirection of45degreesfrom therootofthekeygroove.
1. 緒 口
日常生活に使用 している電動横の伝動軸は安全を確保す るために,いろいろ と開発 されて いる.中で も疲労強度は熱処理方法を変 えることに よって増加 した り,減少 した りす る.従 ってこの熱処理方法の選び方は疲労寿命に重要な役割を果す.一般的にはシャフ トの部分に キー溝を有す る場合が多い. このキー溝が切欠 き効果の原因を生む結果 と考 え られ る.従 っ て, シャフ トが突然破壊す る例 もあ り,深刻な問題 となっている。破壊の原因はキー溝底部 に応力が集中
(1)( 2 )す るため, き裂の発生 と伝はが進み破壊す ると考えられる.キー溝を有 し たね じり疲労の研究が中川( 3 ) ,山本( 4 )等 によって実験的になされている. 実用伝動軸は回転 を ともない,ね じ り,曲げ両モーメソ トを同時に受けていることが多い. しか もキー溝を有
* 昭和63
年3月 日本機械学会北陸信越学会 第1
7回学生員発表講演会に一部発末
* * 横桟工学科 助教授
* * * 長野高専 第21 期横桟工学科卒業 現在 日本 DEC( 秩)
** * * 機械工学科 教授
原稿受付 昭和6
3年9 月2
8日
8
芳賀 武 ・西村博之 ・関川三男
す るので授雑な現象要素を含み解析は困難である.
本研究は実際に使用 されている丸軸やキ‑溝を有す る材料に高周波焼入れをほ どこした疲 労強度を回転曲げの方法に よって調べることを 目的 とした.試険材料は
4種で,キー溝を有 す る深い高周波焼入れ鋼 (A材) ,キー溝を有す る浅い高周波焼入れ鋼 (B材) ,キー溝を有 し加工のまま
(C材),お よびキー溝がな く熱処理 もない
(D材)材料について 疲労強度 を 求め,破面模様お よび硬 さか ら破壊現象を調べ比較検討 した.
2.試 験 方 ・法
Fig.1
はキー溝を有す る丸棒試験片の形状 と寸法を示す. 辛‑溝付近の寸法は
d 14で, 辛‑溝の深 さ
2.5mm, キー溝 の先端部
R‑2.5mmの試験片を使用 した.
E 6 0 . l n. :
ー● ▲
̲‡ ≡ ≡主
≡ ≧!且 ±
Q I T L + ‑ U l A ‑ + ‑ T ‑ N‑
Fig.1 For
m a n d d i m e n s i o n s o f f a t i g u e t e s t s pe c i me n,
1
) 処理方法 としての高周波焼入れは
d30のコイルに高周波電流を流 し表面部のみを加 熟 した.サイクル数は
20KHzで加熱時間は
20mm/secで加熱後水性冷却剤を使いて焼入 れ した.特に浅い方は
Fig.1に示す
A部を
20mm/sec,深い方は
A部を
10mm/secで焼 入れ した.焼戻 し温度は
600‑650oCで, 加熱時間
1.6secとし, 移動速度は
9mm/secで 移動 し,その後空冷 した.
2)
高周波焼入れ鋼 の焼入れ状態を調べるため, 硬 さの 測定を行 った. 硬 さは試験片を 軸方向に
2等分 し,その断面の表面か ら
6mmまで ピッカ‑ス硬 さ試験機を使用 し測 定 し た.
3)
疲労試験は回転曲げ疲労試験椀に より行い
,S‑N曲線を作成 した.
Sは応力であ り,
Nは破壊 した ときの繰返 し数である.
4)
疲労途中の観察は疲労寿命の
30,50お よび
75%を液体窒素中に
5min間保持後, シャ ル ピー衝撃試験 より破壊させ,破面観察は走査型電子顕微鏡で行った.
3.実験結果および考察
Fig.2
と
Fig.3は表面 の焼入れ状態を示 し,各点における深 さ方向の硬 さ分布である.
Fig.2
は
A部 の加熱時間を
10mm/secの速度で焼入れ した場合である. この時焼入れ深 さ は
Fig.2のキー溝底で硬化 層が2.0‑3.
0mmあるものを深い高周波焼入れ鋼A材 とした.
キー溝付近 の表面碇は
Hvで
500‑600の値を示 した.Fi
g.3はA部 の加熱時問を
20mm/secの速度で焼入れ した場合である.この時焼入れ深 さはFig.3のキー溝底で硬化 層が1.0
‑1
.5mmあ るものを浅い高周波焼入れ鋼B材 とした. キー溝 付近の表面硬 さほHv で400‑
500
の値を示 した.
qL:
1.0 2.0 3.0 4,0 5.0 6,0 DistancefromSurface‑mm Fig.2 HardnessDistribution
(Material
A)
1.0 2.0 3.0 4,0 5.0 6.0 DJStancefromSurface.mm Fig.3 HardnessI)istribution
(Material
B)
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芳賀 武 ・西村博之 ・関川三男
Fig.4は各種の材料に対す るS‑N
曲線を示す. この
S‑N曲線 より強度を比較すると, 焼入れなしでキー溝がある場合はキー溝がない場合に比べて非常に弱い.しか しキ‑溝があ って焼入れすると,その強度はキー溝のない場合 とほとんど変わ らず, 疲労限度 (
1×107同を言 う)は上昇す る.
S‑N
曲線か ら
Tablelの結果を得た.その結果はC材 ( 加工のまま)を基準にすると, 疲労限度はA材で1
3.6%,B材で
21.6%,D材で
8.16%いずれ も増加 した.また1×106回, お よび
5×105回疲労強度はいずれ も増加 し,・中で も
D材 (キー溝がな く熱処理 もしない) が増大 した.
つ ぎに,Tabl
e2か らD材を基準にすると疲労限度 は
A材および
B材で増加 し, 特 に
B材は約1
2%増加 した.
しか し1×1
08回お よび
5×105回強度では減少 し,
中で も
A材は5×105回強度で1 1
.2%減少 した. このことは焼入れす ることに よ って疲労強度は増すが, 1
×106
回お よび
5×105回強度では逆に減少す る.ま た,浅い焼入れ材 (B 材) は
Fig.1に見 られるようにかな りば らつ きがあ り, 不安定である′ .っ ぎに疲労 途 中の破面模様を観察す る ために,筆者 らの
1人が提 案 した方法
(5)を使用 した.
Fig.5
は疲労寿命の
30,
50お よび75%で運転中止 し.
その後衝撃用試験片に加工 し.液体窒素中に
10min保持後,衝撃を行 った.
C
材 と
D材の衝撃吸収エ ネルギーは30
%以降急敦に減少す る. しか し
A材 と
B材 の焼入れ材は50%以降急 激 に減少す る. このことよ り
C材 と
D材は30%以降疲 労進展が急速に進むのに対
Table 1 MATEBIALCBASE
MaterialA 】 MaterialB I MaterialD
Table 2 MATERIAL D BASE
MaterialA I MaterialB MaterialC + 5.03% 1 +ll.95% ‑ 7.55%
‑ 4.6% E ‑ 4.12% ‑12.36%
‑ll.22% l ‑ 5.85% l ‑13.17%
的糊鵠
脚
⁝抑柚「00003 nU
021(巨.普)^BJau山 1UD
d∈lo MQteriQLA
● MQteriQtB X MQtericLLC
0 McLteriQLD
RqtioofFQtigue life(N/Nf) Fig.5 Relation between ImpactEnergy
andRatioofFatiguelife
L,A材 とB ネ オ ● は5
0%以降疲労進展が急速にむ進 ようであ る. しか しこの術幣吸収エネルギーと疲労強度 との関連性は不明である.
phot0.1か らphot0.4はそれぞれの材料に対す る破面模様を示 した ものである.疲労
寿命
100% と疲労寿命の3
0,50お よび7
5%の ときの破面模様 である.破inはキ ー 粥付近か ら 発生 し,特 にキー満底R 部か らキ裂 の発展を観察す る.
photo.1は深いl ' : . ' i 周波焼入れのA 材 を示す.キー溝底の先端部付近か ら疲労が進展 し,内部に伝はす る.巾で もキ
ー粥底R郡 よ り下方 向
450に大 きな クラックの痕跡が観察 された.
photo.2は伐い市議周波焼入れの
B材 を示す
.Aネ オと同様,キー溝底
R部 よ り疲労が進展 し,内部に伝はす る投機が観察 された.
伝ばを示す ス トライエーシ ョソ投機が観察 され, このス トライェーツョソはキー糾
庶R冊に 非常に細か く観察 された ことか ら,焼入れに よる効果 と判断す ることがで きる.
(a) 100%
(
b) 30%( C
) 75%photo.1 SEM fl・aCtOgraPhs(Matel・ialA,0‑53kg/mm2,N‑2.12×109)
phot0.3
はキー溝を有 し加工 のままのC 材を示す.1
00%破断時でphoto.3(a)はキー港 底付近で
450方向にき裂 の凸凹破面が明瞭に観察 された.phot
o.3(b)と
(O
)は内部の疲労進 展模様を示 し, ス トライェーツョソの比較的大 きな模様が観察 された.
phot0.4はキー溝がな く熱処理 もないD
材を示す.通常 の
S45C材 と同様 の模様
(6)が観 察 され,ス トライェーシ ョソを初め,中央部にはデイソプル模様な どが観察 された.
上記 のことか ら,キー溝底の加工精度が重要な役割を果たす とともに,焼入れをすれば強
(
a) 100%( b
) 30%( a )
50% (α) 75% photo.2 SEM fractographs(MaterialB. q=48kg/mm空
.N‑1.03×100)photo,3 SEM fractographs(MaterialC,0‑40kg/mm2,N‑1.59×100)
photo.4 SEM fractographs(MaterialD,0‑52kg/mm2,N‑4.
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×10,)度は良 くなるが,その焼入れの程度に問題がある.すなわ ち,焼入れ層に対す る強度 と切欠 き強度 とを混合 した突放であるため,今後は特に加工精度な どに十分注意 して多 くの試畝を 試み る必要があると考 える.
4.結 論
キー溝を有す る高周波焼入れ鋼の回転 曲げ疲労強度を実験的に調べた.試験片の柾餅はキ ー瓶を有す るもの とキー溝な しのものを使用 した.疲労破断後お よび疲労試奴を中断 した途 中の破面について フラク トグラフィ観察を行 った.その結果,
つ ぎの よ うな結論を得た.
(1
) キー溝を有す る材料
(C材)を基準に考 えたな らば,疲労限度
(1×107回) は
A赫 ( 深い高周波焼入れ鋼)で
13.6%,B材 ( 浅い高周汲焼入れ鋼)で
21.6%,お よび
D材 ( 高 周波焼入れ しない鋼)で
8.16%上昇 した.
(2)
衝撃吸収エネルギーは
C材 と
D材で
30%以降急速に減少す るのに対 して
,A材 と
B材 の高周波焼入れ鋼は
50%以降急速に減少す る.
(3)
疲労 のき裂進展模様はキー粍底部で観察 され,砧周波焼入れ鋼材はス トライェ‑シ ョ ソ模様が細か く,特に, A材はキー藩政 R部 より下方向
450に大 きな クラップの痕跡が観察 された.
以上のことよ り,キー沸底の加工精度が重要な役割を果たす.
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芳賀 武 ・西村博之 ・関川三男
終 りに試験片の提供 と作製に当た り御協力下 さった山浦‑仁氏 ( 山洋電気 ( 秩) ) に感謝
申し上げます.参 考 文 献
(1)
西 田正孝
,〝 応力集中〟p.
659(1978)森北出版.
(2)
大久保肇,細野喜久雄,榊 芳, 日本機械学会論文集,3
2,16(1966). (3)中川隆夫,徳納久陸,杉山昭司,材料,33
,454(1984).(4)
山本義秋,中川隆夫,徳納久陸,大嶋正和,材料,35,33
7(1986). (5)芳賀 武,野 口 徹,日本金属学会誌,52,7
55(1988).¢)