プロジェクト・コントロール情報に 関する一考察
中 村 博 之
1 . はじめに
近年の科学技術の進歩には目をみはるものがある。それと同時に,コンビュ ータを中心に据えた CI M をはじめとする様々なテクノロジーが製品生産の場 である工場に急速に導入されるようになってきている。このようなハイ・テク ノロジーの導入に際しては,それが以前に増して巨額の投資を要し,戦略的な 観点、からの判断も必要不可欠になっており,その成否は企業の将来的な競争力 の維持に大きく影響する。管理会計においては,このような設備への投資に関 しては,設備投資の経済計算,あるいは資本予算の領域として扱われている。
そして,この設備投資の問題は期間が長期に及ぶ戦略的計画設定とされる。従 来より,管理会計は計画設定と統制のための会計情報システムと考えられるが,
1 年間のような短期の場合には,一般的な予算が典型であり, 1 期間の財務的 な計画である短期の予算と,その後の統制のための差異分析によって,会計は 情報システムとしてプランニングとコントロールの役割を果たすものとして取 扱われている。ところが,期間が長期にわたる資本予算に関しては,計画段階 で意思決定に及ぶまでの計算手続きについては詳しく説明されているものの,
その後の統制,すなわちプロジェクトのコントロールの段階については,どの ような内容の管理会計情報を中心にどのようなコントロールするべきかについ ての扱いについては明らかではない。そこで,本論文では設備投資プロジェク トの特性が,新たなテクノロジーを用いて大きく変化していることを念頭に置
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いたうえで,現在のところ,戦略的計画段階との関連でプロジェクトのコント ロールのために,どのような管理会計情報が必要になるかについて考察を加え ることにしたい。
2 . コントロールと戦略的計画のための情報
そもそも一言でコントロールと言っても,そこで抱くイメージは微妙な違い があろう。支配や規則というように外部から働く様々な作用を思い浮かべるこ とも可能である。ところが,ここで扱う設備投資プロジェクトの問題は,期間 が長期にわたり戦略的な意義を持つ意思決定に関するものである。そこで,こ
こでは, Anthony の定義するように,コントロールを戦略の実行の確保という 意味でとらえるのが最も適切であろう。
では,このように,コントロールのための情報を戦略の実行に関連づけて考 えるために,まず,戦略的計画からコントロールへという流れに従い,戦略的 計画のための情報の特性を明らかにしたい。
戦略的計画では,貨幣の時間価値を考慮した正味現在価値法や内部収益率法 を仮定すると,設備投資プロジェクトの意思決定を行うときの情報の特徴は,
次のようになる。
( 1 ) 部門別ではなく,プロジェクト単位で集計・評価する。
( 2 ) キャッシュ・フローで測定する。
( 3 ) 例えば, l 年という通常の 1 期間ではなく,プロジェクトの耐用年数の全 体にわたる計算を行う。
( 4 ) 税引後基準で測定する。
このような財務的な情報をもとに意思決定のための計算を行うが,ここで重 要なのは,このようなキャッシュ・フロー予測情報について,そのおのおのの 数値の予測の仮定をあらかじめ明確にしておくことである。そうしておかない と,その後,企業をとりまく環境の変化があったときに,予測の方法自体に誤 りがあったのか,それとも,環境の変化によって予測の結果が異なってしまっ
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たのかが明らかにできなくなってしまうからである。具体的には,
( 1 ) どの部門がどのような判断から販売量を予測したか。つまり,毎期の販売 量に関する仮定。
( 2 ) 販売価格に関する仮定。
( 3 ) 作業能率に関する仮定。
( 4 ) 賃金に関する仮定。
( 5 )公害規制に関する仮定。
( 6 ) インフレ率に関する仮定。
などをあげることができる。
以上のような仮定に立つ戦略的計画段階での予測情報に基づき,設備投資の 意思決定が行われ,プロジェクトは実行あるいは却下される。そして,実行さ れることになると,設備の設置が始められることになる。
ところで,計画の段階では,以上にあるうちの金額的要素での評価,つまり 金額を明らかにするだけでは不十分である。むしろ,戦略的な意図から非金額 的なもの,例えば,不良品の発生率,材料等の取扱量などをも明らかにしなく てはならない。金額的に評価されていないものの,これらによっても,企業が 目指すべき将来に向けての競争力が保たれるからである。
では,次に,計画の実行に続いて行うべきコントロール段階での情報の特徴 をあげてみたい。
( 1 ) コスト・センター,部門などの責任センター別に情報の集計を行う。
( 2 ) 1年や 1ヶ月のように定期的会計期間に基づくことが多い。
( 3 ) 一定の項目について常時集計される。
上記のようなコントロール情報で,戦略計画を達成するための努力がなされ ることになる。ここで明らかなように計画の情報とコントロールの情報は全く 同じものではない。戦略計画はプロジェクト全体を単位にして判断がなされる のに対し,コントロールは担当する部門や個人を単位とするためにプロジェク トを細分して行われるからである。しかし,この違いは,予測の情報を作成す
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る時から,部門ごとに分けていけば済むことである。最終的に重要なのは,企 業目的に関連して,計画段階で戦略的に重要とされた要素をコントロール段階 でも重視してコントロールを実行していくことである。次節では,そのような コントロールを千子うためのプロセスについて考えてみることにしたい。
3 . コントロールのプロセス
計画を最初の予測通りに実現させるためには,何らかのコントロールが必要 となるが,そのためのコントロール・プロセスは一般に次の通りである。
( 1 ) 業績の標準を明らかにする。
( 2 ) 現状の把握とコントロールする部門へのこのような情報の伝達。
( 3 ) コントロール部門が現状の実績と標準を比較。
( 4 )標準と不一致があれば,是正措置を指示。
以上のような一連のプロセスをとることになるが, Anthony は,組織の戦略 達成のために,管理者が組織メンバーに影響を及ぼすプロセスをマネジメン ト・コントロールとした上で,プロジェクトのコントロールを段階ごとの図に よって提示している。これは,時間の経過をもとに,プロジェクトのマネジメ ン卜・コントロールの各段階の関係を示したもので,次にある図 1 の通りで ある。この図で,まず最初に注目すべきところは,評価が行われるたびに計画 の修正が行われていることである〆企業を取巻く環境は確実に変化するもので ある点を考慮すると,前にも指摘したように予測を行う計画段階で,あらかじ め仮定を明示しておくことが有効である。そのようにしておくことにより,計 画修正が必要となるたびに,正しい評価が行われ,さらに必要な部分について の計画修正が常に行われることになる。ただし,ここでのマネジメント・コン トロール情報は,責任センターや行われる作業ごとに集計するべきものである。
このようなプロセスによって,プロジェクトのコントロールは実行可能であ るが,この中でプロジェクト・コントロールのために重要なのは,実績に関す る情報を収集し,標準すなわち計画と比較するということである。しかしなが
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図 1 プロジェクトのマネジメント・コントロールの各段階
f: 始
企||時間
F千 ・
時間 ! 終了
ら,ただ単に実績といっても,様々な実績と呼ばれる指標がある中で,一体ど のような実績についての情報が重要なのか。当然,このことについて考えなく てはならない。
このような問いに答えるためには,次のような戦略的投資に関わる全体の関 係を考慮しなくてはならない。
企業目標一→戦略一→投資計画一→実行一→コントロール
設備への投資およびコントロールは戦略の達成,ひいては企業目標の実現の ために行われるものである。したがって,戦略や企業目標の実現のためのコン トロールでなければならない。つまり,目前の作業において,コストがただ単 にいくらになったという情報にとどまるものではないはずである。たとえば,
企業目標が顧客の満足を通して利益を獲得するということであれば,製品の製 造段階において,より高品質の製品をタイムリーに製造し,顧客に販売されな ければ最終的な目標が達成されたとはいえない。それを実現するための情報を 直接的に集計して,プロジェクト全体をコントロールしなければならないので ある。
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以上のように,コントロールの枠組みとそのための情報についてとらえるも のとして,さらに,プロジェクト・コントロール・システムが扱う情報は,よ り具体的にはどのようなものとするべきなのか。このことが次の課題となる。
4 . コ ン ト ロ ー ル す る べ き 要 素
プロジェクト・コントロールのための情報は,戦略との関連で決定すること で,そのコントロールが企業目標の達成のために貢献することになる。では,
会計は情報システムとして,戦略と関連して,具体的にどのような情報を集計 すべきなのか。 Anthony によれば,プロジェクトの最終計画は,次のような 3 つの部分から構成され,コントロールはそれと深く関連して実行するものとし ている。
( 1 ) 範 囲 ( s c o p e )
これは,測定可能な新たに増加する作業(ワーク・パッケージと呼ばれる)
の詳細と責任を取るべき個人名あるいは組織単位の名称からなる。
( 2 ) スケジュール
これは,各ワーク・パッケージの予測時間数と,そのワーク・パッケージ聞 の相互関係である。
( 3 ) コスト
コストはプロジェクト予算であり,通常はコントロール予算とも呼ばれる。
あるいは, Kezsbom らは,次のような 4 つの実績を測定し,評価すると考え ている。
( 1 ) スケジュール ( 2 ) 予算
( 3 ) 技術仕様
( 4 ) 資源の必要量(スタッフ,材料,設備など)
ここで注意すべきことは,戦略を通じての企業目標達成の手段である設備は,
現在はハイテク設備とも呼ばれコンビュータがその中心をなすものへと変わっ
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てきており,従来の人間の直接加工作業が中心の生産から機械による生産へと 移り変わってきているということである。そこで,戦略と直結するために,現 代的な生産システムである C I M やオートメーション・テクノロジーがもたら してくれる価値について考慮しておかなければならない。 Canada らは,次のよ うなものをあげている。
( 1 ) 正確さの上昇
( 2 )繰返しの可能度が高まる(たとえば, 10 0 0 個の部品を全部同じように作る ことができる。)
( 3 ) 部品の製図から完成品に至るまでの時間の削減 ( 4 ) 材料の適切な使用によりクラップが減少 ( 5 ) 製造時間の減少
( 6 )機械の柔軟性の増大
これを, A d l e r は次の 3 つの要素に大別し,その価値を評価することができる という。
( 1 ) コスト:直接費の大幅な改善がなされるだけでなく,さらに重要なことに は,間接労務費,材料費,在庫保管費,スペースのコストも改善される。
( 2 ) 品質:仕様書との一致の度合いが非常に増すことで,不良品が非常に減少 するだけでなく,工程の能力向上につれて,実績に関して新たな特徴があら われ始める。
( 3 ) 時間:製品のスループット・タイムの短縮,さらには,段取時間と切替時 間短縮が製品切替にインパクトを与え, CAD/CAM 統括は新製品開発サイク ルの時間にインパクトを与える。
ここまでの諸説からわかることは,戦略の確実な遂行のために,プロジェク ト・コントロール情報に要求されるのは,単に予算やコストという金額だけで なく,品質や時間のように,発生する原価や収益の源泉となるものを正確にと らえ,管理するということである。
特に,現在は,戦略的な武器として時間の意義は非常に大きいものとなって
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いる。製品のライフサイクルの短縮化もあって,いくらすばらしい製品を作る プロジェクトを採択することになっても,そのプロジェクトの実施までに時間 がかかりすぎては,他社に追抜かれることは容易に想像できる。なるべく適切 なコントロールをしながらスケジュール通りに製品の製造・販売まで到達しな くてはならないのである。このような意味からは,スケジュールも時間関連の 要素ととらえることも可能でトある
Dさらに,プロジェクトが製造販売可能な段 階まで到達したとしても,顧客の側からはなるべくタイムリーに発注したもの を入手したいという要求があり,作る側としては,短時間の製造をし,しかも 設備利用時間を適切に調整し,遊休時間を少なくし,設備の有効活用をした製 造が望ましい。また,リード・タイムや加工時間のようにそれ自体を削減した いような時間もある。このように,時間は,スケジュールのように早期に製品 等を提供するための調整的要素と,加工時間のようにそのものの短縮を目指す
ものの 2 つがある。
このような時間関連の要素の有効な管理があった上で,収益や原価の発生額 が重要となる。顧客への時間的な満足と品質に関する満足が保証されてはじめ て製品は売れ,プロジェクトが続行されるのである。そして,売れる要素をし っかり確保した製造をしながら,その製造に関する原価をも集計し,原価の管 理をしなくてはならないのである。このような情報を責任センター別に評価し なくてはならない。しかも,プロジェクト・コントロールという見地からは,
当然プロジェクト単位での原価の集計も必要となろう。
さて,以上のようにプロジェクト・コントロールのための情報を時間,品質,
コストという大きな分類で集計するとして,さらに具体的にどのような測定が 試みられるかを,以降では考察することにしたい。
( 1 ) 時間
1 ) スケジュール
時間に関してまず最初に重要なのは,プロジェク卜のスケジュールをコント ロールすることである。時間の経過は止めることができない。いくら優秀な製
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品を作る計画があっても,その製造開始までの時間がかかりすぎるものであれ ば何の意味もない。したがって,適正な期間内で製造できるように設備建設・
導入のスケジュールをたて,そのスケジュールを達成しなくてはならない。常 に定期的にプロジェクトの完成度を確認し,計画とのズレがある場合には,進 行を急ぎ,最終的な予定の完成時点に間に合うように是正措置をとるようにし なければならない。これは製造開始までの時間的なコントロールと考えること ができる。
また,製造開始後のスケジュールについても,遅れがあってはならない D そ もそもプロジェクトは,さまざまな個々の作業の組合わせであるため,それら の間のつながりが非常に大きい。それぞれの作業のスピードが高くても全体と してまとまらないとプロジェクトは計画通りには進行しない。よって,個々の スケジュールの進行度を測定しながら,全体のスケジュールを調整していかな
くてはならない。
2 )製造時間
現代のオートメーション設備への投資の計画で重視される要素として非財務 的な要素がある。プロジェクトのコントロールでも,そのような戦略的な意義 を持つ要素の測定が,戦略計画の実現のために必要となる。たとえば,前にオ ートメーションの価値として指摘したようにスループット時間の短縮などが計 画通りであるかを調べるために測定しなくてはならない。
( 2 ) 品質
品質は購入の際の重大な要件である。企業にとって,この品質がまず保証さ れないと長期的な販売は見込めなくなる。品質に関しては一般に,不良品が少 ないことが高品質,つまり仕様書との一致という意味でとらえられる。したが って,不良品の数,仕損率,補修作業費,品質保証費,歩留りなどを測定して,
予測段階の数値と比較し,分析することになる。
ところが,品質を製品等の機能の向上と意味にとらえると,それは,戦略的 な大きな目標をもとに,企業全体の努力から生み出されるものとなる。そう考
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えると,品質は単に製造する部門やオートメーションという機械だけではなく,
管理部門や販売部門やそこに属する人間に直接関連する要素が,高品質の達成 に貢献することになる D プロジェクトの計画にそのような意図があれば,コン トロールでも当然そのような要素を満たすような方向にもっていかなければな らない。このようにとらえるとプロジェクトのコントロールはもはやここまで の枠を越えて非常に広範囲にわたるものとなる。この場合, B a d i r u によれば,
品質の計画と管理は,次のようなさまざまな要素を統合したものから達成され るものと考えられる。
・製品品質
・オペレーターの生産性
.設備保全
・顧客の満足度
.設備の利用度
・材料の質
−顧客へのサービスの質
このようなものを品質達成のための要素とすると,前のものに比べてさらに 多くの測定すべき具体的な項目が決定されることになろう。そして,その項目 について現実の数値を測定し,評価をすることで,プロジェクト・コントロー ルを実行することになる。
( 3 ) コスト
設備建設のように,設備が完成して製品の製造までにそれなりの期間を要す るようなプロジェクトの場合,単に一定の期間にプロジェクトに要した金額で はなく,建設の進行度を勘案してコストをコントロールしなくてはならない。
そのために,次のような測定を行う方法( EarnedV a l u e A n a l y s i s , E V A) がある。この方法によれば,スケジュールに関連させて,実際のコストと当初 の予算との差異の計算を行う。
まず差異の基礎となる金額は以下の 3 つである。
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1 ) 作業スケジュール予算コスト (B CWS)
これは,スケジュール通りに作業したときの予算額であり,所与の期間内に 行うように,あらかじめたてられたスケジュール通りの作業レベルでの予算コ ストである。
2)
実際作業予算コスト (B CWP)
これは,すでに終わった作業についてのコストの予算額であり,所与の期間 内に実際に完了した作業活動についての予算額である。
3 ) 実際作業実際コスト( ACWP)
これは,所与の期間内に完了した作業に,実際に費されたという報告がなさ れた金額である。
以上のようなコストをもとに,コスト差異( C V )を計算する。
CV=BCWP‑ACWP
この差異がマイナスの時はコスト超過を意味する。
スケジュール差異( S V )の計算は,
s v
ニBCWP‑BCWS
差異がマイナスの場合はスケジュールの遅れを意味する。
これらの差異の関係をグラフであらわすと図 2 のようになる。
図 2 EVA コスト
完成時予算時間
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このように,時間的なスケジュールと関連させてコントロールすることによ り,単にプロジェクトの進行がスケジュール通り,あるいはそれ以上に早いこ とが良いことではなく,当初の予算内での進行を図ることが望ましいことが明 確になる
Dさらに,何らかの外的な影響で遅れがある場合の評価については,
これにより,コスト差異がマイナスでなければ十分なコントロールがなされて いることがわかる。
ただし,この方法では,何らかの環境の変化によって,予算がどうしてもそ の通りには実行できそうもない時には,誤った基準との比較になってしまう。
したがって,そのような場合には,環境変化を考慮した最新の予算をもとにコ ストの差異を計算し,分析および評価を行わなければならない。
最後に注意すべきは,ここでのコントロール要素の中には,プロジェクト実 行により達成される,金額による測定が難しい項目の中でここには含まれてい ないものがあることである。つまり,現実には,在庫の削減やフロア・スペー スの節約なども設備投資プロジェクトのベネフィットとされている。これらに ついては,当然,それが計画通りに実現されたかどうかを測定しなくてはなら ない。さらに,設備の持つ柔軟性についても同様である。
5 . むすび
本論文では,設備投資プロジェクトがコンビュータ等のハイ・テクノロジー を用いたものへと変化していることを前提に,戦略的計画と関連して,プロジ ェクトのコントロールのためには,どのような情報が重要かを検討してみた。
プロジェクト・コントロールは,戦略的計画を実現するための手段であり,
環境変化が著しい中で,計画段階で予測の仮定をした上で,最終的には企業目 標を達成するためのものでなくてはならなし凡そして,収益の確保と原価の削 減の実現のための設備としてのオートメーション等のもたらす価値を最大に発 揮し,戦略を実行するためには,単にコストだけでなく,品質・時間(スケジ ュールを含む)に関連してのコントロールが不可欠である。この 3 つの要素を
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中心にプロジェクト関連の情報を集計しなくてはならない。そして,この 3 つ の要素のそれぞれを細分化し,おのおのについて測定すべき具体的な要素があ ることが明らかになった。
本論文での検討で,戦略実行のためにプロジェクト・コントロールで用いる べき情報と,その測定の枠組みを示すことはできたものの,さらに今後に向け ての課題も残されている。ここでは,通常にも増して非常に広範囲にわたる情 報を集計することが必要になることが明らかになったが,情報の過剰はお金と 時間のムダであるとの指摘もある。従来の管理会計や原価計算システムとは別 に情報を収集するべきなのか。このような情報のコストとベネフィットを考慮、
した上で,あらためて情報の必要度を決定することになる。
しかも,企業の組織レベルでは,戦略的計画として主として会計担当部門が 集計したものが,現実にプロジェクトがスタートし,実際に製造が行われるよ うになると,その後は短期のコントロールの枠の中で品質管理や生産管理とい った部門との関わりが非常に大きくなる。このような部門で集計したデータを どのようにプロジェクト単位で集計し,長期と短期をバランスよくコントロー ルすることができるか。このような問題については,今後の課題としたい。
1 ) Anthony, R.N . , The Management C o n t r o l F u n c t i o n ( B o s t o n , Mass. : Harvard B u s i n e s s S c h o o l P r e s s , 1 9 8 8 ) , p . 7 .
2 ) この仮定は Brigham の例示に基づくものであるが,以下において表にま とめて非常に具体的に示している。
Brigham, E . F . , F i n a n c i a l Managem 仰と T h e o r yand P r a c t i c e ( H i n s d a l e , I l l . : The Dryden P r e s s , 3 r d e d . , 1 9 8 5 , H o l t ‑ S a u n d e r s I n t e r n a t i o n a l E d i ‑ t i o n s ) , p . 3 7 6 .
3 ) K a p l a n , R . S . , and A . A . A t k i n s o n , Advanced Management A c c o u n t i n g (Englewood C l i f f s , N . J . : P r e n t i c e ‑ H a l l , I n c . , 2nd e d . , 1 9 8 9 ) , p p . 4 8 5 ‑ 4 9 0 . 4 ) Anthony, R.N , . The Management C o n t r o l F u n c t i o n ( B o s t o n , Mass. :
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Harvard B u s i n e s s S c h o o l P r e s s , 1 9 8 8 ) , p . 8 . 5 ) I b i d . p 1 1 9 .
6 ) / b i d . p l l 0 ‑ 1 1 1 .
7 ) Kezsbom, D . S . , D . L . S h i l l i n g and KA.Edward, Dynamic P r o j e c t Manage‑
m e n t , A P r a c t i c a l G u i d e f o r Managers and E n g i n e e r s ( N . Y . : John Wiley
& S o n s , I n c . , 1 9 8 9 ) , p . 1 4 0 .
8 ) C a n a d a , ] . R . , and W . G . S u l l i v a n , Economic and M u l t i a t t r i b u t e E v a l u a t i o n o f Advanced M a n u f a c t u r i n g S y s t e m s (Englewood C l i f f s , N . J . : P r e n t i c e ‑ H a l l , I n c . , 1 9 8 9 ) , p p . 5 6 ‑ 5 7 .
9 ) A d l e r , P . S . , Managing F l e x i b l e Automation , C a l i f o r n i a Management Review ( S p r i n g 1 9 8 8 ) , p . 3 6 .
1 0 ) B a d i r u , A . B . , A Systems Approach To T o t a l Q u a l i t y Management , I n d u s t r i a l E n g i n e e r i n g (March 1 9 9 0 ) , p p . 3 3 ‑ 3 4 .
1 1 ) K e r z n e r H . , P r o j e c t Management ( N . Y . : Van Nostrand R e i n h o l d , 1 9 8 9 ) ' p p . 8 0 4 ‑ 8 0 5 .
1 2 ) Kezsbom, D . S . , D . L . S h i l l i n g and KA.Edward, Dyn αmic P r o j e c t Man‑
。 : g e m e n t ,A P r a c t i c a l G u i d e f o r Managers and E n g i n e e r s ( N . Y . : John Wiley & S o n s , I n c . , 1 9 8 9 ) , p . 1 5 4 .
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