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エアーセル式車いすシートの評価 西村 博之

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Academic year: 2021

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エアーセル式車いすシートの評価

西村 博之*1 本 明子*1 石川 弘之*1

Development of the Air Cell-type Wheelchair Sheet

Hiroyuki Nishimura, Akiko Moto and Hiroyuki Ishikawa

近年,車いす利用者が増加すると共に,車いすの利用時間が長くなり,活動範囲が広くなっている。しかしなが ら,車いす利用者にとって既存の車いすシートでは,床ずれの心配や長時間の着座による痛み,蒸れによる不快感 等の不安・問題が発生している。そこで,本研究では車いす利用者の生活の質の向上を目指して,以前開発した床 ずれ防止マットレスの技術を応用した,エアーセルが交互に膨張・収縮を繰り返す新しい機能を持った車いすシー トの開発を行った。市販品と開発品の体圧分散性を比較した結果,開発品の方が良好な体圧分散性を有しているこ と,またシート内の温湿度を比較した結果,開発品の方が温度・湿度供に上昇しにくいことが分かった。

1 はじめに

近年,高齢社会が進展し,2009年には高齢者(65歳 以上)の人口が約2,900万人になり,全人口に対する割 合は22.7%となっている1)。また,高齢者および身体 障害者を取り巻く社会情勢の変化にしたがって,車い す利用者が年々増加しており,従来に増して利用時間 が長くなり行動範囲も拡大してきている。

ところが,長時間車いすに乗っていると,「床ずれ が心配である」,「臀部が蒸れてしまう」,「体がずれて しまう」,「痛みや不快感が生じる」といった不安や問 題が発生する。

現在市販されているエアークッション,ウレタンク ッション,ゲルクッション等の車いすシートは,一旦 着座するとその状態のままクッションが沈み込んでい く静止型がほとんどであり,上記の不安・問題が解決 できているとは言い難い。

そこで,このような不安・問題を解決し,車いす利 用者の生活の質を向上させるために,エアーセルが交 互に膨張・収縮を繰り返す新しい機能を持った動的な 車いすシートを,(株)九州日立マクセル等と共同で開 発した。本開発には,以前,(株)九州日立マクセルと 協力して開発した床ずれ防止ハイブリッドエアマット

「P・wave(ピーウェーブ)」の技術を応用した。

本報告では,体圧分散性の簡易的な測定方法を検討 し,市販品と開発品との体圧分散性の比較を行った。

また,着座時のシート内の温湿度を測定し,エアーセ ルの膨張・収縮によるベンチレーション機能について

検証した。

2 実験方法 2-1 体圧分布測定

実際に被験者が着座しないで,車いすシートの体圧 分散性を簡易的に測定するため,ウレタン製のジグを 作製した。その上に人間の上半身相当の重りを載せ,

ニッタ(株)製タクタイルセンサシステム(圧力分布測 定システム)を用いて体圧分布測定を行った。測定条 件を下記に示す。

〈測定条件〉

測定時間 :60分間

使用車いす:カワムラサイクル製介助型車いす 使用シート:開発品,市販品(図1)

ウレタン製の臀部を模したジグの上に40kgの重りを 載せる(図2)。

開発品 市販品

空気の入っているAの セルとBのセルが交互 に膨張と収縮を3分サ イクルで繰り返す

*1 インテリア研究所 図 1 測定に使用した車いすシート

(2)

測定開始直後 60 分後 図 3 市販品の体圧分布図

A セル収縮/B セル膨張 A セル膨張/B セル収縮

mmHg エアーセル切換中

図 4 開発品の体圧分布図

30 40 50 60 70 80

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 時間(分)

圧力(mmHg) 市販品

開発品

図 5 ピーク圧力の変化 車いすシート

ウレタン製ジグ 重り 40kg

センサーシート 車いすシート

ウレタン製ジグ 重り 40kg

センサーシート

図 2 測定方法

2-2 シート内温湿度測定

エアーセルの膨張・収縮によるベンチレーション機 能について検証するために,被験者を用いてシート内 の温湿度を測定した。測定条件を下記に示す。

〈測定条件〉

被験者 :5名(表1) 測定箇所 :臀部及び大腿部 測定時間 :30分間

使用車いす:カワムラサイクル製介助型車いす 使用シート:市販品,開発品(図1)

被験者は,シートを置いた車いすに安静に着座した 状態で,膝関節を90度にし,背中は背もたれに接し,

肘はアームレストに置き測定する。

表 1 被験者の属性

被験者 性別 年齢 (歳)

身長 (cm)

体重 (kg) A 男 41 179 77.0 B 男 33 172 76.2 C 男 32 166 52.0 D 男 33 171 86.8 E 男 37 166 68.2

3 結果と考察

3-1 体圧分布測定結果

市販品の体圧分布測定結果を図3(体圧スケールは図 4を参照)に,開発品の体圧分布測定結果を図4に示す。

一般的に,床ずれは,骨の出ているところに体重が 集中することによって,皮膚組織への圧迫が継続され ることで発生すると言われている。そのため,高い圧 力が同じ部分に長時間かからないようにすることが床 ずれの予防となる。

測定の結果,市販品は着座直後も30分後もほとんど 体圧分散に変化がなく,同じ箇所に高い圧力が長時間 かかっている状態であった(図3)。そのため,床ずれ

になる可能性が高いと考えられる。

一方,開発品はエアーセルが交互に膨張・収縮する ため,圧力の高い部分が膨張・収縮に合わせて入れ替 わり,収縮中においては圧力の高い部分が減少し,同 じ箇所に高い圧力がかかっていなかった(図4)。この 傾向は60分後も変わりなく,床ずれ予防の効果が持続

(3)

すると考えられる。

次に,ピーク圧力の変化を 図5に示す。市販品は,

開発品と比較してピーク圧力が高い上,時間経過と共 に圧力が徐々に上昇し,変動がほとんどなかった。そ のため,前述の通り,床ずれになる可能性が高いと考 えられる。

一方,開発品は,膨張・収縮に合わせてピーク圧力 が大きく変動しており,周期的に低い圧力が実現でき

ていたため,床ずれになりにくいと考えられる。

以上の結果は,昨年度実施した被験者を用いた体圧 分布測定実験2)と同様であり,本実験において検討し たジグを用いた簡易的な測定方法で,人に負担をかけ ずに体圧分布測定ができることが分かった。

3-2 シート内温湿度測定結果

着座時のシート内の温湿度を,測定開始時からの温 度変化および相対湿度変化として表した。これらの変 化は,各測定箇所で30分間測定した被験者5名の平均 値から求めた。臀部における温度変化を図6に,大腿 部における温度変化を図7に示す。臀部における湿度 変化を図8に,大腿部における湿度変化を図9に示す。

0 2 4 6 8 10

0 5 10 15 20 25 30

時間(分)

上昇温度 市販品

開発品

図 6 臀部の温度変化

0 2 4 6 8 10

0 5 10 15 20 25 30

時間(分)

上昇温度℃) 市販品

開発品

図 7 大腿部の温度変化

-6 -4 -2 0 2 4 6

0 5 10 15 20 25 30

時間(分)

湿度変化%Rh 市販品

開発品

図 8 臀部の湿度変化

-6 -4 -2 0 2 4 6

0 5 10 15 20 25 30

湿度変化(Rh 市販品

開発品

市販品と比較すると開発品の方が臀部,大腿部共に 2℃程度低く,温度の上昇が抑えられていた(図6,7)。

また,相対湿度の変化において開発品の方が湿度が減 少してい た(図8,9)。このことか らエ アーセル の膨 張・収縮により,シート内の空気の入れ換えが起き,

長時間着座しても蒸れが生じず快適な状態を保つこと ができると考えられる。

4 まとめ

本年度の研究では,体圧分散性の簡易測定方法につ いて検討し,被験者を用いなくてもジグと重りで代替 的に実験が行えることが分かった。

エアーセルが膨張・収縮を繰り返すことにより,シ ート内の空気の入れ換えが生じ,その結果温度・湿度 共に低減され快適な着座を提供できることが分かった。

今後は製品化に向けて,車いす利用者にシートを使 用してもらう臨床実験を行う予定である。

5 参考文献

1)総務省統計局,統計トピックス(人口推計),No.41 2)西村博之,本明子,石川弘之:福岡県工業技術セン

ター研究報告,No.19,pp.62-64(2009)

参照

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