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数学入門講義ノート 第 1 章論理

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(1)

   数学入門講義ノート

新居 俊作    

読書百遍義而自見

「魏志」王粛伝注董遇伝

教科書や参考書は解るまで何度でも最初から読み返すこと

小人之学也入乎耳出乎口

荀子

唯講義を聴くのみではなく、自分が講義できる様になること 千日の稽古を鍛とし万日の稽古を錬とす

宮本武蔵

自分で多くの練習問題を解き、計算力を養成すること 志なき人は聖人もこれを如何ともすることなし

荻生徂徠

「必死で」勉強する意欲の無い学生に対しては、教員の方からは助ける術は無い

(2)

初めに

本講義及び「コアセミナー」の演習の内容は、本来数学の他の科目の 勉強を始める前に習得しておくべきものである。しかし残念ながら、そ のようなカリキュラムを組む時間的な余裕がないため、他の科目の講義 が既に始まってしまった状態で並行して行なわれる形になる。従って、 講 義の内容をその場で習得する ことを必要とする短期間に駆け足で進む授 業になる。

以上のような理由により、他の授業と比して毎週の予習復習、特に予 習が欠かせないので、そのつもりで授業にのぞんでもらいたい。

以下にこの授業を受ける学生への要請、及び授業の進め方を述べる。

授業当日までに最低三回は教科書の指定された範囲を読んでくるこ と。(週日に良く分からない点をチェックしながら一通り読み、週 末にしっかり理解しながら熟読し、授業の前の晩にもう一度確認 する。)

各回の数学入門の講義及びコアセミナーの演習の内容は翌週までに 復習し、完全に習得しておくこと。

教科書及び授業で出てくる定義は全て何も見ずに書ける様にしてお

くこと。

(定義を知らないで、何かが分かるはずがない。)

毎回授業の初めに小テストを行ない、予習復習を十分してきたかを確認 する。

成績は「数学入門」の講義と「コアセミナー」の演習を一体のもの と見なし、「数学入門」と「コアセミナー」に同じ点を付ける。

成績は試験

(毎回の小テスト、中間テスト、期末テスト) 50

点、演 習

50

点の

100

点満点とする。

試験の点は小テストの合計、中間テスト、期末テスト各三分の一づ

つとする。

(3)

3

第 1 章 論理

第一講

1.1

命題論理

定義

1.1

成り立つか成り立たないかが 客観的に 定まっている主張を 命題 とよぶ。ある命題が成り立つときその命題は 真 であるといい、成り立た ないときその命題は 偽 であるという。

論理学においては、一般に命題の間の関係を問題にし、箇々の命題そ のものは問題にしないので、命題を抽象的に

p, q, r· · ·

等と表す。

例  

p:0.˙3 = 13

である。

q:0.˙96= 1

である。

とすると、p は真で

q

は偽である。

定義

1.2

命題

p

に対して、「p ではない」という命題を、命題

p

の 否定 とよび

p¯

で表し、「p ではない」等という。

例  先の例については  

p:0.¯ ˙36= 13

である。

q:0.¯ ˙9 = 1

である。

となる。

当然のことながら、ある命題

p

が真ならば命題

p¯

は偽となり、p が偽 ならば

p¯

は真となる。

定義

1.3

 二つの命題

p, q

に対して「p と

q

が共に真である」という命 題を、

p

q

の 論理積 といい

pq

で表し、「p かつ

q」等という。

例  先の例の

p, q

については、p

q

は「0.

˙3 = 13

であり、かつ

0.˙9 6= 1

である」となる。

定義

1.4

 二つの命題

p, q

に対して「p と

q

の少なくとも一方は真であ

( p, q

共に真である場合を含む

)」という命題を、 p

q

の 論理和 と

いい

pq

で表し、「p または

q」等という。

(4)

例  先の例の

p, q

については、p

q

は「0.˙3 =

13

または

0.˙96= 1

である」

となる。

定義

1.5

 二つの命題

p, q

に対して「p と

q

の真偽が一致する」つま り、「p が真である時は

q

も真で、

q

が真となるのは

p

が真であるときに 限る」という命題を、 同値命題 といい

pq

で表し、「p と

q

は同値であ る」等という

1

例  これまでの例の

p, q

については、p

q

は偽であるが、p

q¯

は真で ある。(p の式の両辺を

3

倍すると

q¯

の式になる。)

定義

1.6

与えられた命題が真である こと( 真である とき ではない

)

1、

偽である こと を

0

で表したとき、これをその命題の 真理値 とよぶ。

命題どうしの真理値の対応関係を示した表を 真理表 という。

例  否定命題の真理表は以下の様になる。

p p¯ 1 0 0 1

問題

1.1

論理積、論理和と同値命題の真理表を書け。

定理

1.1 p, q, r

を命題とする時、以下の同値命題は全て真である。

反射律  

¯¯

pp

  ベキ等律  

(pp)p

(pp)p

  交換律  

(pq)(qp) (pq)(qp)

1この記号の使い方は教科書と異なる。教科書60ページを必ず読むこと

(5)

1.1.

命題論理

5

結合律  

((pq)r)(p(qr)) (

これを単に

pqr

と書く

)

((pq)r)(p(qr)) (

これを単に

pqr

と書く

)

注意 この性質の証明は必要なことである。実際、他の演算で結合 律の成り立たないものがある。例えば、実数の割り算については

(a

÷

b)

÷

c6=a

÷

(b

÷

c)

なので

a

÷

b

÷

c

という表記は意味を持 たない。

分配律  

(p(qr))((pq)(pr)) (p(qr))((pq)(pr))

吸収律  

(p(pq))p (p(pq))p

ド・モルガンの法則  

(pq)pq)¯ (pq)pq)¯

問題

1.2

上の定理を真理表を書くことによって証明せよ。

定理

1.2 (

同値変形

) p, q, r

を命題とする。

(1)

pq

が真ならば以下の同値命題は全て真である。

(i)

   

p¯q¯

(ii)

(pr)(qr)

(iii)

(pr)(qr)

(2)

pq

 と 

q r

 が真ならば 

pr

 も真である。

(6)

第二講

定義

1.7

命題

p, q

に対して、「p が真であることが

q

も真であることを 意味する」という命題を、条件命題

(或は含意命題)

といい

p q

で表

し、「p ならば

q」等という。

これはつまり、命題

p

が真であるという状況は、命題

q

が真であると いう状況に含まれているという命題である。下図参照。

&%

'$

p

'

&

$

%

q

定義

1.8

条件命題

pq

に対して

q p

をその命題の 逆

¯

pq¯

をその命題の 裏

¯

q p¯

をその命題の 対偶 とよぶ。

次は明らかであろう。

公理

2

二つの命題

p, q

について次の同値命題は真である。

(pq)qp)¯

下図参照。

&%

'$p¯

'

&

$

%

¯ q

条件命題の真理表を考える。

先ず定義から以下は明らかである。

p q pq

1 1 1

1 0 0

2数学で議論の前提とする約束事のこと

(7)

1.1.

命題論理

7

更に、対偶を考えることによって対偶の公理より次が得られる。

p q p¯ q¯ q¯p p¯ q

0 0 1 1 1 1

最後に

p q pq 0 1

についてだが、もしこのときの

pq

の真理値が

0

であるならば

pq

の真理表は以下の様になり同値命題の真理表に一致してしまう。

p q pq

1 1 1

1 0 0

0 1 0

0 0 1

即ち、p

q,pq,pq

の三者が論理的に区別できなくなってしまう。

&%

'$

p

'

&

$

%

q

pq

&%

'$

p q

pq

&%

'$

q

'

&

$

%

p

pq

よってこの場合の真理値は

1

でなくてはならない。

以上をまとめて条件命題の真理表は次の様になる。特に、

p

が偽のとき は

q

が真であっても偽であっても

pq

は真である。

p q pq

1 1 1

1 0 0

0 1 1

0 0 1

問題

1.3

次の同値命題が真であることを、真理表を書いて証明せよ。

(pq)pq)

(8)

問題

1.4

命題

p, q

に対して、p

q

の逆と裏の真理表を書け。

定義

1.9

命題

p, q

に対して

pq

が真であるということを

pq

で表 し、q は

p

の必要条件、p は

q

の十分条件であるという。

定理

1.3

命題

p, q, r

について

pq

かつ

qr

のとき

pr

である。

問題

1.5

上記の定理を真理表を書いて証明せよ。

定義

1.10

命題

p, q

に対して

p q

p q

の両方が成り立つことを

pq

で表し

p

q

の必要十分条件であるという。

問題

1.6

命題

p, q

に対し

pq

であることと、同値命題

pq

が真で あることとは同じことであることを真理表を書いて証明せよ。

定義

1.11

これまで

p, q, r, . . .

で表してきた命題の最小単位を 原子命題 と よび、その間の論理関係を表す記号  ,

¯ ∧,∨,≡,

等を有限回用いて作っ た命題を 論理式 とよぶ。

定義

1.12

(1)

恒等的に真である

(

その論理式を構成する原子命題にどのように真 偽を割り振っても論理式全体としては必ず真になる

)

論理式を 恒真 命題 または トートロジー といい、I で表す。

(2)

恒等的に偽である論理式を 恒偽命題 または 矛盾式 といい、

O

で表す。

この定義の意味するところは、これまでやった様に、有限個の命題を

p1, . . . , pn

と記号で表し、その間の論理関係を表す記号  ,

¯ ∧,∨,≡,

等 を有限回用いて作った論理式を単なる

p1, . . . , pn

の式と見たときに、個々 の

p1, . . . , pn

の意味やその真偽に関わらず論理式全体としては必ず真で ある、又は偽である、という意味である。

例  

(1)

排中律  

pp¯

は恒真命題

(2)

矛盾律  

pp¯

は恒偽命題 定理

1.4

命題

p

に対して

(1) pI

(2) Op

問題

1.7

上記の定理を真理表を書いて証明せよ。

(9)

1.2.

述語論理

9

第三講

1.2

述語論理

定義

1.13 p(x1, . . . , xn)

x1

から

xn

を変数とする

(n

変数の

)

命題関 数 であるとは、x

1

から

xn

のとりうる範囲

X1

から

Xn

が指定されてい て、各

x1, . . . , xn

の組を決めるごとに、p(x

1, . . . , xn)

が命題となること とする。このとき、変数

xi

Xi

を動くという。

pk(x, y):xy

は 自然数

k

で割り切れる。但し

x, y

は整数の範囲 を動くとする。

注意 以下では、変数

xi

の動く範囲は具体的に指定できる対象

(

整数、

実数等

)

に限ることにする

3

与えられた命題関数

p(x1, . . . , xm), q(y1, . . . , yn)

に対し、

否 定 :p(x

1, . . . , xm)

論理積 :p(x

1, . . . , xm)q(y1, . . . , yn)

論理和 :p(x

1, . . . , xm)q(y1, . . . , yn)

同値命題:p(x

1, . . . , xm)q(y1, . . . , yn)

条件命題:p(x

1, . . . , xm)q(y1, . . . , yn)

が自然に定義される。但し、変数

x1, . . . , xm

y1, . . . , yn

の間に共通の 変数がある場合には、それらの動く範囲は一致していなければならない。

pk(x, y):xy

は自然数

k

で割り切れる。但し

x, y

は整数を動く。

ql (y, z):yz

は自然数

l

で割り切れる。但し

y, z

は整数を動く。

とすると、p

k(x, y)ql(y, z)

は「x

y

k

で割り切れ、y

z

l

で割 り切れる」となる。但し

x, y, z

は整数を動くとする。

定義

1.14 p(x)

を命題関数とし、x は

X

を動くとき、「X 内の全ての

x

について

p(x)

である」という命題を

4x p(x)

と表し、 全称命題 とよぶ。

注意

x

の動く範囲

X

が集合の場合

∀xX p(x)

と書く場合もある。ま た、X が条件として与えられているときは

∀x”条件” p(x)

と書かれたり する。

3「物の集まり全体」等のハッキリしない対象は考えない

4英語の副詞句 ”forall を表す記号

(10)

p(x):x2 +x >0、X ={ x

は実数

| x >0}

のとき「∀x p(x)、x は

X

を動く」という命題を

∀xX p(x)

と書いたり、∀x >

0 x2 +x >0

と書いたりする。

公理

p(x)

が命題関数で

x

X

を動くとき、X 内の

a

に対して

∀x p(x)p(a)

定理

1.5

命題関数

p(x), q(x)

に対して

(∀x p(x))(∀x q(x))⇔ ∀x (p(x)q(x)) (∀x p(x))(∀x q(x))⇒ ∀x (p(x)q(x))

注意 定理の第二式の逆「(∀x p(x))

(∀x q(x))⇐ ∀x (p(x)q(x))」 は

成り立たない。

問題

1.8

上記の定理を真理表を使って証明せよ。

問題

1.9

上記の定理の第二式の逆の反例

(

成り立たない例

)

をあげよ。

次は明らかだろう。この場合第二式も必要十分である。

定理

1.6

命題関数

p(x)

と命題

q ( x

に依らない

)

に対して

(∀x p(x))q⇔ ∀x (p(x)q)

(∀x p(x))q⇔ ∀x (p(x)q)

定義

1.15 p(x1, . . . , xn)

x1

から

xn

を変数とする

n

変数の命題関数 で、x

1

から

xn

のとりうる範囲が

X1

から

Xn

であるとき、「X

i

内の全 ての

xi

について

p(x1, . . . , xi, . . . , xn)

である」という

(xi

以外の

) n1

変数命題関数を

∀xi p(x1, . . . , xi, . . . , xn)

と表し、 全称命題関数 とよぶ。

p(x1, . . . , xn)

x1

から

xn

を変数とする

n

変数の命題関数であるとき、

変数

xi

について

∀xi p(x1, . . . , xi, . . . , xn)

は命題関数なので、

i6=j

で ある

xj

について

∀xj(∀xi p(x1, . . . , xi, . . . , xn))

を考えることができる。

これを単に

∀xj∀xi p(x1, . . . , xi, . . . , xn)

で表す。以下同様にして

k6=i, j

ならば

∀xk∀xj∀xi p(x1, . . . , xi, . . . , xn)、· · ·

を考えることができる。

以下の定理は直観的には当たり前なので証明は略す

5

5この手の定理の証明には、先ず論理の公理系を決めてから議論を始めなければなら ないが、本講はそのようになっていないので証明できない

(11)

1.2.

述語論理

11

定理

1.7

命題関数

p(x, y)

について

∀x∀y p(x, y)⇔ ∀y∀x p(x, y)

定義

1.16 p(x)

を命題関数とし、

x

X

を動くとき、 「X 内の少なくとも 一つの

x

について

p(x)

である」という命題を

6x p(x)

と表し、 存在命 題 とよぶ。

注意

x

の動く範囲

X

が集合の場合

∃xX p(x)

と書く場合もある。ま た、X が条件として与えられているときは

∃x”条件” p(x)

と書かれたり する。

p(x):x2+x0、X={ x

は実数

| x0}

のとき「∃x p(x)、x は

X

を動く」という命題を

∃xX p(x)

と書いたり、∃x

0 x2 +x 0

と書いたりする。

公理

p(x)

が命題関数で

x

X

を動くとき、X 内の

a

に対して

p(a)⇒ ∃x p(x)

定理

1.8

命題関数

p(x), q(x)

に対して

∃x (p(x)q(x))(∃x p(x))(∃x q(x))

∃x (p(x)q(x))(∃x p(x))(∃x q(x))

注意 定理の第二式の逆「∃x

(p(x)q(x))(∃x p(x))(∃x q(x))」 は

成り立たない。

問題

1.10

上記の定理を真理表を使って証明せよ。

問題

1.11

上記の定理の第二式の逆の反例

(

成り立たない例

)

をあげよ。

次も明らかだろう。この場合は第二式も必要十分である。

定理

1.9

命題関数

p(x)

と 命題

q ( x

に依らない

)

に対して

∃x (p(x)q)(∃x p(x))q

∃x (p(x)q)(∃x p(x))q

6英語の節”thereexistsを表す記号

(12)

定義

1.17 p(x1, . . . , xn)

x1

から

xn

を変数とする

n

変数の命題関数 で、x

1

から

xn

のとりうる範囲が

X1

から

Xn

であるとき、「X

i

内の少 なくとも一つの

xi

について

p(x1, . . . , xi, . . . , xn)

である」という

(xi

以 外の

) n1

変数命題関数を

∃xi p(x1, . . . , xi, . . . , xn)

と表し、 存在命題 関数 とよぶ。

p(x1, . . . , xn)

x1

から

xn

を変数とする

n

変数の命題関数であるとき、

変数

xi

について

∃xi p(x1, . . . , xi, . . . , xn)

は命題関数なので、

i6=j

で ある

xj

について

∃xj(∃xi p(x1, . . . , xi, . . . , xn))

を考えることができる。

これを単に

∃xj∃xi p(x1, . . . , xi, . . . , xn)

で表す。以下同様にして

k6=i, j

ならば

∃xk∃xj∃xi p(x1, . . . , xi, . . . , xn)、· · ·

を考えることができる。

以下の定理も直観的には当たり前なので証明は略す。

定理

1.10

命題関数

p(x, y)

について

∃x∃y p(x, y)⇔ ∃y∃x p(x, y)

(13)

1.2.

述語論理

13

第四講

注意 二変数の命題関数

p(x, y)

について、一般には

∀x∃y p(x, y)6⇔ ∃y∀x p(x, y)

問題

1.12

実際に上が成り立たない例をあげよ。

定理

1.11

∀x∃y p(x, y)⇐ ∃y∀x p(x, y)

は成り立つ。

定理

1.12 (

ド・モルガンの法則

) p(x)

を命題関数とする

(1) ∀x p(x)⇔ ∃x p(x)

(2) ∃x p(x)⇔ ∀x p(x)

どちらも意味を考えれば当然であろう。しかし、一応「証明

7

」を与えて おく。

両方やると長くなるので

(2)

のみ示す。

以下の証明では、次の二つの公理

(推論規則)

を用いる。

(I) A

を仮定して

B

が得られるとき、A を仮定せずに

AB

として よい。

(II)A

AB

から

B

としてよい。

(2)∃x p(x)⇒ ∀x p(x)

の証明

∃x p(x)

を仮定する。

ある

α

について

p(α)

とする。(背理法の仮定) 上記より

∃x p(x)

である。

これと仮定より

∃x p(x)∧ ∃x p(x)

である。

(これで p(α)⇒ ∃x p(x)∧ ∃x p(x)

がいえたことになる。) よって

p(α)

である。(演習問題第二回)

7本来やるべきことは、述語論理の公理系を定めておき、その公理系の中でこの定理 が証明できることを示すことである。その意味では此処での「証明」はナンセンスなの だが、感じをつかんでもらうために、公理系を明示する代わりにこれまでの講義のに合 わせて多少修正した「証明」を書いておく。より詳しくは記号論理学の教科書等を参照 のこと。

(14)

従って

∀x p(x)

である。

(これで ∃x p(x)

を仮定して

∀x p(x)

が得られたことになる。) 以上より

∃x p(x)⇒ ∀x p(x)

である。

∃x p(x)⇐ ∀x p(x)

の証明

∀x p(x)

を仮定する。

∃x p(x)

とする。(背理法の仮定)

上より

(ある α

について)

p(α)

である。

また、仮定より

p(α)

である。

上二つより

p(α)p(α)

である。

p(α)p(α)q (定理1.5、1.6

、また

q

は変数を含まない命題)

p(α)p(α)q¯

従って、p(α)

p(α)(qq)¯

である。

(これでp(α)p(α)

p(α)p(α)(qq)¯

が得られた。) 即ち

qq¯

が得られた。

元々

p(α)

が仮定されていたので

p(α)(qq)¯

。 即ち

∃x p(x)(qq)。¯

先ほどと同様に

∃x p(x)

(これで∀x p(x)

を仮定して

∃x p(x)

が得られたので)

∃x p(x)⇐ ∀x p(x)

である。

1.3 ε − δ

論法

これまで述べてきた命題論理や述語論理が、標準的な数学の教程

8

で最 初に現れるのは微積分の

εδ

論法である。その中からここでは、数列 の極限と関数の連続性の定義を紹介する。

高等学校の数学では、数列

an (n= 1,2,3, . . .)

について

nlim→∞an=α

8日本の多くの大学の数学科での教程という程度の意味であり、他意は無い。

(15)

1.3. εδ

論法

15

とは、「n を大きくしたとき

an

α

に限りなく近づくことである」と いった類の「定義」がなされている。しかしこの定義では、様々な数列 を扱っていくうえで曖昧さが付きまとう。例えば次の数列は

0

に近づい ているのであろうか?

1,0,1,0,0,1,0,0,0,1,0,0,0,0,1,0,0,0,0,0,1,0. . .

この数列では、1 と

1

の間に入る

0

の個数が一つずつ増えていくものと する。

或は、関数

f(x)

x = 0

で連続であるとは、f(x) のグラフが

x= 0

で繋がっていることである、といったイメージを持っているかもしれな い。これについては、次の例は

x= 0

で連続な関数であろうか?

f(x) =

(sin 1x (x6= 0)

0 (x= 0)

この関数のグラフは

x = 0

で繋がっているのかどうか判然としない。

このような曖昧さをさけるために

(他にも可能性のある中で9)

以下で紹 介する所謂

εδ

論法による収束や連続の議論が標準となった。

先ず

lim

n→∞an = α

の意味について考える。「a

n

α

に限りなく近い」

のなら、素朴に考えれば「どんなに小さい

(しかし有限の10)ε >0

につい ても

|anα|< ε

が成り立ちそうなものである。しかし

an 6=α

であるな らば、ε

= |an2α|

ととれば当然

|anα| > ε

である。従って

lim

n→∞an =α

の意味を「a

n

α

に限りなく近い」ととると、

an =α

ということになっ てしまい、「近づく」のではなく「一致する」ことになってしまう。

ここで見落としているのは当然、「n を大きくしたとき」という条件で ある。即ち、小さい

n

についてはどうでも良いのである。という訳で先 の考えを修正して、「十分大きい

n

即ち、ある大きな

N

以上の

n

につい ては、どんなに小さい

ε >0

についても

|anα|< ε

が成り立つ」と解 釈してはどうだろうか。

ところが、この解釈でも先ほどと同じ理由で

N

以上の

n

については

an=α

でなければならなくなる。(もちろんそのような定義も可能である が、その場合

lim

n→∞

1

n = 0

等は成り立たないことになって不便である。

)

そこでさらに高校の定義をよく見ると、「n を大きくしたとき」、「a

n

α

に限りなく 近づく」となっているので常に近い必要はない。即ち、先

9無限小や無限大の概念を認める超準解析(non-standard analysis)等がある

10通常の数学には無限小の概念はない

(16)

ず近さを指定されたら、それが如何に近かろうが

(「限りなく」)、n

を 大きくさえすれば

an

はその近さの範囲にある

(「近づく」)、と考えるの

である。

これを数学らしく数式を使って書けば、「どんなに小さな

ε >0

が指定 されても、その

ε

に合わせて十分大きな

N(ε)

を選べば、N

(ε)

以上の

n

については

|anα| < ε

が成り立つ」となる。これが

lim

n→∞an = α

が成 り立つことの厳密な定義である。

lim

n→∞

1

n = 0

について

どんなに小さな

ε > 0

が指定されても、N

(ε) = 1

ε

+ 1

とすると、

n N(ε)

ならば

1 n 0

= 1

n 1

N(ε) = 1 1

ε

+ 1 < 1

1 ε

=ε

が成り立つ。

(

但し、[a] は

a

以下の最大の整数とする。この

[ ]

をガウ ス記号とよぶ。)

ここでの課題は、上で得られた

lim

n→∞an = α

であることの定義を論理 記号を使って表現することである。結論から先に書くと、

「∀ε >

0 ∃N ∀nN |anα|< ε

が成り立つ」

または

「∀ε >

0 ∃N (nN ⇒ |anα|< ε )

が成り立つ」

となる。(p

q)pq)

なので上と下は同じである。

問題

1.13

上の二つが同じであることを示せ。

注意 言葉で書いたとき「どんなに 小さな

ε > 0

が指定されても」だっ たものが 「∀ε >

0」となって必ずしも小さい場合だけに限っていない理

由は、小さい

ε >0

に対して

N

を選ぶことが出来れば、大きな

ε >0

に ついても

N

が選べるのは当然だからである。

例えば

ε = 100001

に対して

∀n N |anα| < 100001

が成り立つ

N

が 見つかれば、ε

= 10000

に対しても同じ

N

について

∀n N |anα|<

1

10000 <10000

となるからである。

(17)

1.3. εδ

論法

17

同様の考え方に従って

lim

xx0

f(x) =α

であることの厳密な定義は、

「どんなに小さな

ε >0

が指定されても、その

ε

に合わせて十分小さな

δ(ε)

を選べば、0

<|xx0|< δ(ε)

を満たす

x

については

|f(x)α|< ε

が成り立つ」となる。

lim

x0ax = 0 (a 6= 0

は定数

)

について

どんなに小さな

ε >0

が指定されても、

δ(ε) = ε

|a|

とすると、

|x0| =

|x|< δ(ε)

ならば

|ax0|=|ax|<|a|δ(ε) =|a| ε

|a| =ε

が成り立つ。

上の定義を論理記号で書けば、

「∀ε >

0 ∃δ >0 0<|∀xx0|< δ |f(x)α|< ε

が成り立つ」

または

「∀ε >

0∃δ >0 ( 0<|xx0|< δ ⇒ |f(x)α|< ε )

が成り立つ」

となる。この二番目は当然

「∀ε >

0∃δ >0 ∀x ( 0<|xx0|< δ → |f(x)α|< ε )

が成り立つ」

とも書ける。

この定義に従って、

f(x)

x=x0

で連続であるとは

lim

xx0

f(x) =f(x0)

で定義される。

問題

1.14

上の三つの表現が同じであることを示せ。

以上の様に論理記号で書くことの利点は、例えばド・モルガンの法則 を使って否定命題が簡単に書けることである。

問題

1.15

(1)

「数列

an

α

に収束しない」という命題を論理記号で書け

(

当然極 限が存在しない場合も含む

)。

(2)

関数

f(x)

について「

lim

xx0

f(x) = α

ではない」という命題を論理記

号で書け

(

当然極限が存在しない場合を含む

)。

(3)

関数

f(x)

x=x0

で連続ではないという命題を論理記号で書け。

(18)

ε-δ

論法小史

ニュートン、ライプニッツ等によって創始された微分積分学は、当初 は、非常に小さい量

∆x, ∆y

を用いて今日の

dydx

に対応するものを有限 量の分数

∆x∆y

として扱い幾何学的な議論を行う等、非常に小さい量と無限 小の区別がなく、かなり曖昧な議論に基づいていた。

これを厳密化しようという動きの中、最初にボルツァノの

1817

年の論 文に今日の

ε-δ

の萌芽がみられる。しかし直ちには

ε-δ

論法は極限の標 準的な定義とはならなかった。

次の段階はコーシーによる

1826

年の「解析学教程」の中で今日の日本 の高等学校での極限の定義に近いものが導入され、先ず小さな有限量と 無限に小さくなる量との区別がなされた。これにより、極限の概念が導 入され微分積分学はかなり厳密化された。

しかしコーシーも「f

n(x)

が連続で

lim

n→∞fn(x) =f(x)

ならば

f(x)

は連 続である」ことを上書の中で「証明」しており

(Project

問題の

III

参照)、

また「連続な関数は孤立した点を除いて微分可能である」(このことはガ ウス等の当時の数学者達に広く信じられていた) という「定理」を何度も

「証明」しては撤回する等している。

コーシーがこのような誤りを犯したのは、当然ことながら彼

(やガウス

等のそれまでの数学者達) が無能だった為でではない。原因は、「極限の 定義」が依然として曖昧さを含んでいた為に「何を示せば証明したこと になるのか」が曖昧であり続けたことにある。

最終的に

ε-δ

論法の導入によってこの曖昧さが完全に排除されるのは ワイエルシュトラスによる

1859/60

年のベルリン大学における解析学の 講義においてである。彼はまた上記の「定理」に対する反例

(下記)

も構 成している。

ワイエルシュトラスによる反例

(1872

年)

a

3

以上の奇数、0

< b <1、ab > 1 + 32π

とするとき

f(x) =

X

n=1

bncos(anπx)

は全ての

x

で連続であるが微分不可能である。

(19)

19

第 2 章 集合と写像

第五講

2.1

素朴集合論

定義

2.1

「もの」の集まりを一つのまとまりとしてとらえるとき、その まとまりを 集合 とよぶ。集合を形成する個々の「もの」をその集合の 要 素 或は 元 とよぶ。

注意 ここで考える「もの」は、本講では具体的な対象

(

整数、実数、関 数、· · · 等

)

に限定する

1

注意

2

あくまで、「もの」の集まりを 一つのまとまり としてとらえたと きに集合とよぶのであって、ただの集まりは集合ではない。

定義

2.2

「もの」x と集合

X

について、

x

X

の要素であるとき

xX

と書いて「x は

X

に 属する 」等という。

x

X

の要素ではないとき

x6∈X

と書いて「x は

X

に 属さない 」等という。

集合を具体的に書く方法は二通りある。一つは外延的記法とよばれ、

{x1, x2, x3, . . .}

という具合に中括弧の中に実際に要素を書き並べる方法 で、もう一つは内包的記法とよばれ、{

x| x

は〜を満たす

}

という具合 に中括弧の中に

x

X

の要素であるための条件を書く書き方である。

X ={1,3,5,7,9, . . .} (外延的記法)

={ n | n

は正の奇数

} (内包的記法)

定義

2.3

要素を一つも含まない集合を

と書いて 空集合 とよぶ。

注意 ものの集まりを一つのまとまりとしてとらえるというのは、例え ていえば、物が雑然と集まった状態ではなく、集まった物の入った箱のこ とを集合と呼ぶようなものである。従って、{1,

2,3}

は集合だが、1,

2,3

はただ数が三つ集まっているだけであって集合ではない。また

={ }

、 つまり空集合は何もないのではなく、空の箱のようなものである。

1教科書では「客観的に規定された”もの”」としているが、本講ではたとえ客観的に 規定されていても、具体的にハッキリとしない対象は扱わない。従って教科書135ペー ジのラッセルのパラドックスに登場するような対象は扱わないことにする。

(20)

例 よく使う集合の記号

N

:自然数の集合

(

自然数全体を一つのまとまりと考えたもの

) Z

:整数の集合

(

整数全体を一つのまとまりと考えたもの

) Q:有理数の集合(

有理数全体を一つのまとまりと考えたもの

) R

:実数の集合

(

実数全体を一つのまとまりと考えたもの

) C

:複素数の集合

(

複素数全体を一つのまとまりと考えたもの

)

定義

2.4 X, Y

を集合とするとき

(1) x X x Y

のとき

X Y

と書き、X は

Y

の 部分集合 であ る、または、X は

Y

に 含まれる という。X

Y

が成り立たない、

即ち

X

Y

の部分集合ではないことを

X 6⊂Y

で表す。

(2) X Y

かつ

X 6=Y

であるとき

X

6− Y

と書き

X

Y

の 真部分 集合である という。

定理

2.1 X, Y

を集合とするとき明らかに次が成り立つ。

X =Y ⇐⇒X Y

かつ

X Y

次の定理は一見当たり前だが、証明には以前に学んだ条件命題の真偽 を用いる。

定理

2.2

任意の集合

X

について

∅ ⊂X

問題

2.1

上の定理を証明せよ。

定義

2.5 X, Y

を集合とするとき

(1) XY :={x | xX

かつ

xY }

によって

XY

を定義し、

X

Y

の 共通部分 という。特に

XY =

のとき、X と

Y

は 互い に素 であるという。

(2) XY := { x | x X

または

x Y }

によって

X Y

を定義し

X

Y

の 和集合 という。特に

X

Y

が互いに素のときにはこれ を

XY

または

X`

Y

と書き、X と

Y

の 直和集合 という。

注意 上で用いた記号

:=

は、「等号の左辺を右辺で定義する」という意 味の記号である

(

英語で:は「即ち」の意味なので

:=

で「即ちイコール」

の意味となる。

)

(21)

2.1.

素朴集合論

21

定義

2.6 X, Y

を集合とするとき

(1) X\Y :={ x | xX

かつ

x6∈Y }

によって

X\Y

を定義し、 差 集合

(

正確には

X

から

Y

を引いた差

)

という。

(2) X△Y := (X \Y)(Y \X)

によって

X△Y

を定義し、

X

Y

の 対称差 という。

数学の理論においては、そのとき考えている集合は全てある一つの集合

の部分集合であるような場合が少なくない。Ω =

R

、Ω =

Z

、Ω =

N

e.t.c.。

定義

2.7

枠組みとなる集合

を一つ固定し、扱う集合を全てその集合 の部分集合に限るとき、

(1)

この

を 全体集合

(

又は 普遍集合

)

という。

(2)

全体集合

が定まっているとき、Ω の部分集合

X

に対し

Xc :=

\X

によって

Xc

を定義し、

X

( Ω

内での

)

補集合 という。

定理

2.3

を全体集合とし、X, Y, Z, をその部分集合とするとき以下が 成り立つ。

c =

c = Ω

反射律  

(Xc)c =X

ベキ等律  

XX =X XX =X

交換律  

XY =Y X XY =Y X

結合律  

(XY)Z =X(Y Z) (XY)Z =X(Y Z)

参照

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定義 2.1.4.. Sorgenfly, On the topological product of paracompact spaces, Bull. 他の文献ではゾルゲンフライ直線を定義する際,[q, p)

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