写像空間と評価写像の代数的模型について
栗林 勝彦 信州大学理学部
1.
序CW
複体と同じホモトピー型を持つ空間のホモトピー圏は,
特異単体的集合関手S ∗ ( − )
と 幾何学的実現関手により単体的集合のホモトピー圏と同値になる.
しかし関手S ∗ ( − )
を用い て代数構造を伴った特異チェイン複体をつくり,
さらにホモロジーをとることで多くの幾何 学的情報は失われてしまう.
すなわち一般に(
コ)
ホモロジーで空間のホモトピー型を完全 には記述出来ない.
こうした状況を克服するため,
一般コホモロジーをはじめ多くの位相不 変量が定義され応用されていることは承知のとおりである.
一方,
有理ホモトピー論の成功 を受けて,
そのアナロジーとして(
コ)
チェイン複体レベルに様々な構造を付加して空間を解 析する方法が開発されてきた.
そこに現れる道具の一つが私達のいう 空間の代数的模型 で ある.
ここでは空間の代数的模型をいくつか紹介し,
特に写像空間のオペラド模型,
有理模 型に関して解説すると共に,
それら応用の一部を述べる.
この稿を通じて「空間」は連結な
CW
複体のホモトピー型をもった位相空間を意味する ものとする.
2.
空間の代数的模型空間の模型を定義するために
,
ホモトピー論が展開できる圏をまず考える1 .
定義
2.1.
始対象φ
をもつ圏C
を考える. C
に2つの射の類W e
とCof
が定義され,
次の3 つの公理(C1),(C2),(C3)
をみたすときC
をシリンダー圏[24]
という. W e, Cof
に属する射 をそれぞれ' // , // //
と表し,
弱同値,
コファイブレーションと呼ぶ.
(C1) C
の射f : A → B
とg : B → C
に対してf , g, gf
のうち2つがW e
に属すならば残り の射もW e
に属す.
さらにf, g ∈ Cof
ならばf g ∈ Cof
である.
(C2)
射i : A → B, j : A → C
がCof
に属するならばpush-out A
²² j
²² // i // B
j
0²²
C i0// B `
A C
が存在し
, i 0 , j 0はCof
に属す.
さらにj ∈ W e
ならばj 0 ∈ W e
である.
(C3)
任意の射f : A → B
に対してi ∈ Cof , q ∈ W e
が存在してf = qi
となる2 .
対象
R
からの任意の射i : R // ' // B
に対してr : B // R
でri = 1 Rをみたす射が存
在するとき, R
をファイブラントとよぶ.
射 φ → A
がコファイブレーションのときA
をコ
ファイブラントとよぶ.
Quillen
のモデル圏[43]
やBaues
のコファイバー圏[3]
はシリンダー圏となることに注意する
.
1 § 2
の内容は[24]
で展開されたHess
の議論に基づいている.
モデル圏の枠組みからはみ出る圏の中にも,
空 間を考察するために有用な”
代数的模型”
がある.
これらを統一的に記述する言葉としてHess[24]
のシリンダー 圏を選んだ.
2
この分解に関手性は要求されない.
1
さてシリンダー圏
C
において, (C2)
によって得られる重ね合わせ写像(id+id) : A `
A → A
を考える.
この射に(C3)
を適用して,
分解A `
A // i // IA ' p // A
を得る
.
シリンダー対象と呼ばれるIA
を用いてホモトピーの概念を定義する3 .
定義
2.2.
シリンダー圏C
の2つの射f, g : A → B
に対して,
シリンダー対象IA
と射H : IA → B
が存在してf + g = H ◦ i
が成り立つとき, f
とg
はホモトピック(f ' g)
と いう.
ファイブラントかつコファイブラント対象のなす充満部分圏
C cfにおいてホモトピー関係
'
は同値関係になる[3, II, § 2].
この事実をふまえて,
空間の模型を次のように定義する.
定義 2.3. T
を位相空間の圏またはそのある充満部分圏, C
をシリンダー圏とする.
このと
き多重値函手M : T → C
でそれぞれのホモトピー圏上で関手M : h( T ) → h( C )
となるも
のをモデルという4 . T
の対象X,
射f
に対してM (X)(
の一つ), M (f)(
の一つ)
をそれぞれ 空間X
の模型,
写像f
の模型 と呼ぶ.
3.
代数的模型の例この章ではいくつかのシリンダー圏またはモデル圏に付随して現れる空間の代数的模型 について紹介する
5 .
3.1.
有理模型.
有理ホモトピー論はQ
上の可換微分代数がつくる圏と空間のある充満部 分圏がホモトピー圏として同値であることを主張している(Sullivan[45]
流).
より正確に述 べるため, Bousfield-Gugenheim[5]
に従い,
有理微分形式がつくる単体的微分代数A P Lを用
いて,
可換微分代数の圏D
と単体的集合の圏∆ S
の間の関手
∆ : D → ∆ S , Ω : ∆ S → D
を
∆A := Hom D (A, A P L ), ΩK := Hom ∆ S (K, A P L )
と定義する.
また空間X
に対して, A P L (X) := ΩS ∗ (X)
と置く.
さらに微分代数A
の幾何学的実現| A |
を単体的集合∆A
の幾 何学的実現として定義する: | A | = | ∆A | .
このとき次の圏の同値を得る[5].
h( Q
上有限型の連結,
べき零,
有理化空間の圏)
∼ = A
P L( · )
²²
h( Q
上有限型連結可換微分代数の圏).
|·| OO
Q
上有限型連結可換微分代数がつくる圏は擬同型6
からなる類をW e,
全射微分代数射をF ib, W e ∩ F ib
に対してLLP(left lifting property)
をもつ射からなる類をCof
としてモデ ル圏となる[5].
また知られているように
, Q
上連結余可換なチェイン余代数の成す圏のホモトピー圏はQuillen
関手によりQ
上連結微分(
チェイン)Lie
代数のホモトピー圏h(DGL 0 )
と同値である
.
結果として,
単連結有理化空間のホモトピー圏とh(DGL 0 )
は同値になる[44].
上述の圏の同値性を用いて
,
様々な幾何的概念は代数的なものに翻訳されている.
例えば ファイブレーションの代数的模型[21], pull-back
の模型[46], [47], L-S
カテゴリーの有理模 型的解釈[16]
などがそれにあたる.
こうした翻訳が有理ホモトピー論の世界を豊かにしてい るといえる.
3
モデル圏における左ホモトピーの定義である.
4
シリンダー圏に対するホモトピー圏h( C )
はC
のW e
に関する局所化またはC
cf の通常の(
位相空間の圏に 対して定義される)
ホモトピー圏を意味する[3, (3.6)Proposition], [15, 6.2. Theorem].
5
他にも空間の代数的模型が存在する. Goerss[18]
は単体的集合のつくるホモトピー圏は単体的余代数のホモ トピー圏と同値であることを示した.
したがって空間に付随して現れる単体的余代数は空間の模型である.
6
コホモロジー上で同型となる射.
2
3.2. Lie
模型, Adams-Hilton
模型.
Dwyer[14], Hess[24]
によるtame
ホモトピー論か らZ
上のLie
模型が得られる.
これはちょうど有理ホモトピー論におけるLie
模型に対応し ている.
R ∗ = { R k } k ≥ 0を環R k := Z [ n 1 ; 2n ≤ k + 2]
からなる系とする.
単連結CW
複体の圏にお
いて, W e
をπ k+1 (f ) ⊗ R kが同型である写像f
からなる類, Cof
を部分複体の包含写像から
なる類として定義するとこの圏はシリンダー圏CW 1 (R ∗ )
をつくる.
また連結微分Lie
代数
の圏において, W e
をH k (ϕ) ⊗ R kが同型であるLie
準同型写像ϕ
からなる類, Cof
を微分
Lie
代数の自由拡張L → L `
f
からなる類, Cof
を部分複体の包含写像から なる類として定義するとこの圏はシリンダー圏CW 1 (R ∗ )
をつくる.
また連結微分Lie
代数 の圏において, W e
をH k (ϕ) ⊗ R kが同型であるLie
準同型写像ϕ
からなる類, Cof
を微分
Lie
代数の自由拡張L → L `
L (V )
からなる類として定義すると,
シリンダー圏DGL 0 (R ∗ )
が得られる.
ここでL (V )
は自由加群V
から生成される自由Lie
代数を意味する. tame
ホモ トピー論は圏同値M : h(CW 1 (R ∗ )) −−−→ ∼ = h(DGL 0 (R ∗ ))
の存在を保障している.
一般にX
がセル構造X = (pt.) ∪ ( S
j ∈ J e j ), deg e j > 1をもつと
きM (X)
はM (X) = ( L (x j ; j ∈ J ), d), deg x j = deg e j − 1
という形の微分自由Lie
代数
であり,
普遍包絡環関手U
との合成U M
がAdams-Hilton
模型になるものが選べる[24].
ま
たp
を素数, S = Z [(p − 1)! − 1 ]
とする.
このときAnick
による結果([2, Theorem 8.5])
より
M ⊗ S
はp
次元以下のCW
複体のつくる圏からS
係数微分Lie
代数の圏DGL 0 (S)
へのモ
デルになることがわかる.
Anick[1], Dupont, Hess[12][13]
によりファイブレーションやpull-back
の代数的模型が,
Adams-Hilton
模型を用いて構成されていることもここで述べておく.
3.3. TV-
模型. 1.1
で述べたSullivan
型有理模型の正標数版の一つがここで述べるTV-
模型
[23]
である.
体上の結合的微分(
コチェイン)
代数の圏においてW e
を擬同型からなる類, Cof
を自由拡張A → A `
T (V )
からなる類とすると,
この圏はシリンダー圏DA
となる[3,
(7.10) Theorem].
ここでT (V )
はベクトル空間V
で生成されるテンソル代数を意味している
.
単連結空間のホモトピー圏からこのシリンダー圏DA
のホモトピー圏への関手(
モデル と呼んだ)
は存在するが,
空間のホモトピー圏のどの部分圏と同値になるかは不明である7 .
M : h( ? ) −−−→ ∼ = h(DA).
Munkholm[40]
はEilenberg-Moore
スペクトル系列の退化問題を考察するためにshc-
代数(strongly homotopy commutative algebra)
の概念を導入した. shc-
代数A
とは微分代数で あり,
さらにbar
関手B, cobar
関手Ω
を用いて適切な公理をみたす微分代数の射µ A : ΩB(A ⊗ A) → ΩB(A)
が存在するものとして定義される
.
大雑把にいってshc-
代数とはその”
積”
を微分代数の圏に 押し込めて考えることが出来る微分代数といえる8 . 「体上の正規化特異コチェイン複体関手
は位相空間の圏からshc-
代数の圏への関手である.
」というMunkholm
自身の結果からshc-
代数の重要性を知ることができる.
Ndombol, Thomas[41]
はshc-
代数をTV-
模型を用いて考察する方法を整理し, shc-
極小模型や
shc-formal
の概念を導入した.
こうして有理ホモトピー論的手法をshc-
代数の圏においても展開出来るようになった
9 . その後shc-
代数模型に同伴したpull-back
の模型[29], TV-
模型の具体的計算への応用[32]
やコホモロジー上のSteenrod
作用素を生み出す付加構造を
持つshc-
代数, π-shc-
代数の概念(Ndombol-Thomas[42])
も現れている.
7
筆者は知らない8
微分代数が非可換であるとき,
一般に積を与える射は代数の射にはならないことに注意. 9
例えば自由ループ空間のコホモロジー環の計算に新手法が導入された.
3
3.4.
オペラド模型( E -
代数模型).
オペラドE
上の代数のつくる圏E - A lg
においてW e
を擬同型射, F ib
を全射, Cof
をW e ∩ F ib
の射に対してLLP
をもつ射として定義するとE - A lg
はシリンダー圏の定義のうち(C1), (C3)
をみたし10 , (C2)は, A
がコファイブラント
であれば成立する11 . 結果, ( E - A lg) c = ( E - A lg) cf
上でホモトピー関係は同値関係となり,
ホ
モトピー圏が定義できる12 .
, ( E - A lg) c = ( E - A lg) cf
E
をF p上のE ∞オペラド(
後述) E ∞ F pとするとき, Mandell
のp-adic
ホモトピー論[38]
(
後述) E ∞ F pとするとき, Mandell
のp-adic
ホモトピー論[38]
は
,
位相空間のつくる圏のある充満部分圏がE - A lg
のある充満部分圏に同値であるとを保障 している13 . これは次のようにまとめることが出来る.
h(
有限p-
型の連結,
べき零, p-
完備化空間の圏)
∼ = C
∗( · ; F
p)
²²
h(E ∞ F p - A lg
のある充満部分圏)
|·|
OO
C ∗ ( − ; F p )
はF p係数の正規化特異コチェイン複体関手である.
また幾何学的実現| · |
を与え
る関手は有理ホモトピー論で用いた関手と同様に定義される.
具体的には,
単体的微分代数
A P Lの代わりに単体的E ∞ F p -
代数C ∗ (∆[ • ]; F p )
を用いて| A | := Hom E−A lg (A, C ∗ (∆[ • ]; F p ))
で与えられる14 .
E ∞ F p -
代数C ∗ (∆[ • ]; F p )
を用いて| A | := Hom E−A lg (A, C ∗ (∆[ • ]; F p ))
で与えられる14 .
Mandell
のこの定理はE ∞オペラドE ∞ F pのとり方に依らず成立する.
したがって解析し
.
したがって解析したい空間の性質に従いオペラドを使い分けることも可能であるが
,
空間の性質とオペラドの関 係は明らかになっていないようである.
また, n
次元球面のオペラド模型はBerger, Fresse[4]
により
,
ファイブレーションの模型はChataur[10]
により構成されているが,
一般にオペラド 模型の構造は複雑なため有理模型のようにこの模型を具体的計算に応用することは難しい.
4.
写像空間のオペラド模型とBPS
スペクトル系列この章ではオペラド上の代数を思い出し
,
写像空間のオペラド模型とそれに同伴するスペ クトル系列とその性質を述べる.
特に断らない限り微分代数は体K
上で定義されているも のとする.
以下でオペラド上の代数の定義を簡単にまとめる.
定義
4.1. E = {E (r) } r ≥ 0がK -
オペラドとは次のデータからなる. (1)
各E (r)
は体K
上のチェイン複体であり、対称群Σ rの右作用をもつ.
.
(2)
写像γ : E (k) ⊗ E (r 1 ) ⊗ · · · ⊗ E (r k ) → E (r 1 + · · · +r k )
が定義されそれらは単位的(unital),
結合的,
対称群の作用を保つ15 .
例
4.2. (The endomorphism operad) (V, d)
をK
上の微分加群とする.
微分加群End V (n)
をEnd V (n) := Hom K (V ⊗ n , V ), δf = df − ( − 1) deg f f d
と定義する.
さらにγ : End V (r) ⊗ End V (i 1 ) ⊗ · · · ⊗ End V (i r ) → End V (i 1 + · · · + i r )
を
γ(α, β 1 , ..., β r ) = α ◦ (β 1 ⊗ · · · ⊗ β r )
と定めるとEnd V := { End V (n) }
はオペラドになる.
定義4.3.
オペラドE = {E (r) } r ≥ 0において各E (r)
が自由K [Σ r ]-
加群かつacyclic
であると
きE
をE ∞ -
オペラドという.
定義
4.4. E
をオペラド, A
を微分加群(
コチェイン複体)
とする.
オペラドの射E → End A
が存在するとき, A
をE -
代数と呼ぶ.
10 [38, Proposition 2.6]
から従う11 [38, Corollary 2.9]
と[15, 3.14 Proposition (ii)]
の証明から従う. 12
オペラド上の代数については§ 4
で簡単に述べる.
13
ここでいうE - A lg
の充満部分圏の範囲も明確にされている[38, Characterization Theorem].
14
ここで∆[ • ]
は標準的単体的集合∆[n] := Hom
∆( , [n])
で定義される余単体的単体的集合である. 15
詳細は例えば[28]
参照4
FACT ( McClure-Smith[39], Berger-Fresse[4] 16 ) C ∗ ( − ; K )
を単体的集合の体K
係数の正 規化特異コチェイン複体関手とする.
このときE ∞ K -
オペラドE
で,
任意の単体的集合X
に 対してC ∗ (X; K )
をE
上の代数にするものが存在する.
特にC ∗ ( − ; K )
は単体的集合の圏か らE
上の代数の圏への関手になる:
C ∗ ( ; K ) : ∆ S −−−→ E - A lg.
以下では
F (X, Y )
により空間X
からY
への連続写像全体にコンパクト開位相をいれた空間または
,
単体的集合X
からY
への射がつくる単体的集合17
を表すものとする.
写像空間のオペラド模型を述べる前に
,
ここでLannes
関手がテンソル積関手の左随伴関 手であることを思い出す.
Hom E - A lg (( : B) E - A lg , D) ∼ = Hom E - A lg ( , B ⊗ D)
定理
4.5. (Fresse [17] 18 , Chataur-K[11, Theorem 1.3]) Y
をn-
連結,
有限p-
型19 , べき零単
体的集合とし, X
を非退化元が有限な単体的集合でn ≥ dim X
をみたすものとする.
この
とき圏E - A lg
において次が成り立つ:
C ∗ ( F (X, Y ); F p ) quasi-iso ' ( E (V ) :C ∗ (X; F p )) E -Alg
ただし
, E (V ) → ' C ∗ (Y ; F p )
はY
のコファイブラント模型(cofibrant replacement )
である. E (V )
の単体的分解を利用したとしても,
一般にLannes
関手を計算することは難しい.
そ こで”
通常の定石”
どおりスペクトル系列を構成する.
定理4.6
で述べるスペクトル系列は, Bousfield, Peterson, Smith[6]
により有理ホモトピー論を用いて構成されたBPS
スペクトル 系列の正標数版である.
mod p BPS
スペクトル系列を述べる前に,
一般Steenrod
代数を思い出す.
作用素(
元)P s
とp > 2
のときはβP s , s ∈ Z
により生成される結合的自由代数のAdem relations
で生成さ
れる両側イデアルによる剰余環をB
と表して,
拡大Steenrod
代数とよぶ. Mandell
の結果
[38, Theorem 1.4]
によりB /(Id − P 0 )
は通常のSteenrod
代数A
と一致することに注意す
る.
以下B
上の非安定F p -
代数の圏をK - F p と表す.
またこの章ではF p -
係数コホモロジーを
H ∗ ( )
と表す.
.
またこの章ではF p -
係数コホモロジーをH ∗ ( )
と表す.
定理
4.6. [11, Theorem 1.4]
定理4.5
の仮定の下, H ∗ ( F (X, Y ))
に強収束する第2,3
象限型 スペクトル系列{ E r , d r }
が存在して次をみたす:
E 2 s, ∗ ∼ = L s (H ∗ (Y ) : H ∗ (X)) K - F
p
.
さらに
{ E r , d r }
はX
とY
に関して自然である.
ただし, L s ( − : H ∗ (X)) K - Fp は圏K - F p上
のLannes
関手( − : H ∗ (X)) K - Fp のs
次左導来関手を意味する.
Lannes
関手( − : H ∗ (X)) K - Fp のs
次左導来関手を意味する.
定理
4.7. [11, Theorem 1.5] A
とB
を有限型の非安定A -
代数とする.
このとき任意のs
に 対して, L s (B : A) K - FpはL s (B : A) S - FpにB -
加群として同値.
B -
加群として同値.
この定理の系として
,
先のmod p BPS
スペクトル系列は第2
象限型となることがわかる.
さらに次を得る.
命題
4.8. [11, Theorem A.7] mod p BPS
スペクトル系列{ E r , d r }
は微分代数構造をもち,
さらにB
上の(
したがってA
上の)
非安定加群の構造を持つ.
すなわち(1) β ε P i d r = ( − 1) ε d r β ε P i ,
16 Eilenberg-Zilber
オペラドZ (the “endomorphism operad” [25])
はC
∗(X )
に作用する.
さら にE
∞-
オペラドであるBarratt-Eccles
オペラドE
からZ
へのオペラド写像が存在する[4]: E (r) :=
C
∗(the bar construction of Σ
r) → Z (r) := Nat(C
∗( )
⊗r, C
∗( )) 17 F (X, Y )
•= Hom
∆S(X × ∆[ • ], Y )
と定義される.
18 Fress
によるF (X, Y )
のF
p上のオペラド模型は各π
i(X)
が有限群であることを仮定して構成されている. 19 mod p
コホモロジーが各次元で有限次元5
(2)
任意の作用素β ε P i ∈ B
に対してβ ε P i : E r s,t → E r s,t+2i(p − 1)+ε , (3) Cartan formula
が成立する
.
さらに{ E r , d r }
は代数として, B -
加群としてH ∗ ( F (X, Y ))
に収束する.
スペクトル系列の淵準同型写像(edge homomorphism)
に関連し重要な結果がある.
命題4.9. [11, Proposition 4.6]
定理4.5
の仮定の下,
評価写像の誘導写像ev 0 ∗ : H ∗ (Y ) → H ∗ ( F (X, Y )))
はmod p BPS
スペクトル系列{ E r , d r }
の淵準同型写像(edge homomorphism)
を挟んで分解する,
すなわち次の図式は可換である:
H ∗ (Y ) ev
∗0
//
θ ²²
H ∗ ( F (X, Y )) E 2 0, ∗ = L 0 (H ∗ (Y ) : H ∗ (X)) K - Fp // // E 3 0, ∗ // // · · · // // E ∞ 0, ? ∗ .
OO
E 2 0, ∗からH ∗ ( F (X, Y ))
に向かう淵準同型写像は非安定B -
代数の射であることがわかる
[11, Remark 4.7].
こうして原理的にはH ∗ ( F (X, Y ))
の非安定B -
代数構造をLannes
関手を
用いて部分的に調べることができる[11, Theorem 6.4, Example 6.7].
5.
写像空間と評価写像の有理模型私達は写像空間の
E -
代数模型を手に入れた.
しかしながらその複雑さのために,
現在の ところ自由に使いこなすことが出来ない20 . ところでLannes
関手から得られるこの代数模
型は実際どのような問題に適用可能であろうか. Brown, Szczarba[7]
は有理ホモトピー論内
で
Lannes
関手を用いることにより写像空間の有理模型を構築した(
加えて[6], [20]
も参照).
したがって先の問いに対する解答を得るために
,
この有理模型に注目することは自然である.
この章と続く章では写像空間の有理模型を用いて近年得られた結果を紹介する.
∧ V
を次数付きベクトル空間V
により生成される自由可換代数とする.
すなわち偶数次数 の元からなるV
の部分空間V even上の多項式環と奇数次数の元からなる部分空間V odd上の
外積代数のテンソル積である:
∧ V = Q [V even ] ⊗ E(V odd )
連結可換微分代数
A
に対して擬同型( ∧ V, d) → ' A
で「任意のv ∈ V
に対しdv ∈ ∧ V
が分解 元」をみたすものが存在してホモトピーを除いて(
実際は同型を除いて)
一意的に定まる.
す なわちA
の特別なコファイブラント模型が選べる.
この微分代数( ∧ V, d)
をA
の極小模型と 呼び,
特にA = A P L (X)
であるとき( ∧ V, d)
を空間X
の極小模型と呼ぶ.
F (U, X; f )
をf : U → X
を含む写像空間F (U, X )
の連結成分とする. Brown, Szczarba[7]
による写像空間
F (U, X; f)
の連結成分の有理模型は次のように構成される.
まず可換微分 代数の圏D
においてLannes
関手( − : B) Dを考える:
Hom D ((A : B) D , C ) ∼ = Hom D (A, B ⊗ C)
Brown, Szczarba[7]
の結果からA = ( ∧ V, d)
が極小であるときは可換代数として(A : B) D ∼ =
∧ (V ⊗ B ∗ )
が成立する,
ただしB ∗はB
の双対を表す21 .
今
α : A = ( ∧ V, d) → ' A P L (X)
をX
の極小模型, β : B → ' A P L (U )
をU
の有限型可換模 型とする.
さらに次を仮定する.
dim ⊕ q ≥ 0 H q (U ; Q ) < ∞
またはdim ⊕ i ≥ 2 π i (X) ⊗ Q < ∞ .
(A : B) Dの極小模型E
をとる.
連続写像f : U → X
の有理模型からE
の0-
単体∆(E) 0の
に適切な元u
を定め[26, Section 3],
このu
より[7, Section 6]
の手続きに沿って得られるE
u
を定め[26, Section 3],
このu
より[7, Section 6]
の手続きに沿って得られるE
20 mod p BPS
スペクトル系列のE
2項を計算する適切な”
マシン”
もない.
筆者の力不足. 21
双対対象の次数はB
−d= B
dであることに注意6
のイデアルを
M fとする.
このとき[7, Theorem 1.5]
の証明から次の図式が可換であること
がわかる(
前頁の仮定はξ
が擬同型を証明するときに必要).
E a minimal '
model
//
π ²² ²²
(A : B) D
adjoint of id
(A:B)D
// Ω∆((A : B) D ) ' // A P L ( F (X, Y ))
²²
E/M f '
ξ // A P L ( F (X, Y ; f))
こうしてF (X, Y ; f )
の有理模型E/M f
が得られる.
これをF (X, Y ; f )
のB-S
模型と呼ぶ.
定理5.1. [30][8][26]
写像m(ev) : A = ( ∧ V, d) → (E/M f , δ) ⊗ B
をx ∈ A
に対して,
m(ev)(x) = X
j
( − 1) τ( | bj| ) π ◦ r(x ⊗ b j ∗ ) ⊗ b j ,
と定義する
,
ただしτ (n) = [(n + 1)/2], r : (A : B ) D → E
はレトラクション, { b j } jはB ∗の
基底である.
このときm(ev)
は可換微分代数の射であり,
かつ次の図式はホモトピー可換で
ある:
.
このときm(ev)
は可換微分代数の射であり,
かつ次の図式はホモトピー可換で ある:
A P L (X) AP L(ev) // A P L ( F (U, X; f ) × U ) A P L ( F (U, X; f ) ⊗ A P L (U )
OO '
( ∧ V, d)
' α
OO
m(ev) // (E/M f , δ) ⊗ B
' OO ξ ⊗ β
特に
, ( ∧ V, d)
を基点付空間(X, ∗ )
の極小モデルとするとき, ι(v) = v ⊗ 1
で定義される写像ι : ( ∧ V, d) → (E/M u , δ)
は評価写像
ev 0 : F (U, X; f ) → X; ev 0 (f ) = f ( ∗ )
の有理模型である.
ここで構成した
B-S
模型は決して”
絵に描いた餅”
ではなく,
具体的な問題に適用可能であ る.
次章でこれら有理模型をGottlieb
群の解析,
計算に応用する.
6.
写像空間有理模型の応用(Gottlieb
群)
ev 0 : F (U, X ; f ) → X
を評価写像とする. n
次のGottlieb
群G n (U, X ; f )
とは次で定義 されるn
次ホモトピー群π n (X)
の部分群である.
G n (U, X; f) := Im { ev 0 ∗ : π n ( F (U, X ; f )) → π n (X) } .
特にG n (X, X; id X )
をG n (X)
と表す.
この
Gottlieb
群G n (X)
は位相不変量でありさらに,
任意のn
に対してG n (X) = 0
なら ば, X
をファイバーに持つ任意のファイブレーションが作るホモトピー長完全系列は単完全 列 に分解するという性質をもつ.
また,
空間X
のトーラスランク22
はdim G 1 (X) ⊗ Q
によ り上から評価されることも知られている[22].
こうした結果からもGottlieb
群はトポロジー において重要な研究対象の一つと考えられる.
しかしながらG n ( − )
は位相空間の圏から群 の圏への関手にはならない.
この非関手性がGottlieb
群の取り扱いと計算を難しくしている のである.
一般にf ∗ : G n (U ) → G n (U, X ; f )
が成り立つので
, Gottlieb
群の研究において群G n (U, X; f )
を考えることはごく自然なこと である[35], [48], [49].
有理
Gottlieb
群G n (X) ⊗ Q
についていえば, Halperin-F´ elix [16]
による先駆的な仕事が ある.
これが有理L-S
カテゴリの仕事の中に現れたことはGottlieb
群の応用を論じる上で22
トーラスT
kのX
への作用ですべての等方群が有限であるものを考える(k ≥ 0).
このような作用のうち トーラスの最大次数がトーラスランクである.
7
非常に興味深い
. Halperin-F´ elix
はこの有理Gottlieb
群を与えられた空間の有理模型の間のderivations
全体と同一視することにより考察している.
近年この解析方法はLupton-Smith
[36], [37],
により一般の有理Gottlieb
群G n (U, X; f ) ⊗ Q
にまで拡張されている.
しかしな がらこれらの手法はX
の単連結性を必要とするため,
基本群の部分空間であるGottlieb
群 には残念ながら適用されない.
私たちの研究手法は写像空間
F (U, X; f )
のB-S
模型を基に評価写像の有理模型を具体的 につくり, X
が有理化空間である場合にそれらを用いて,
ベクトル空間G n (U, X; f)
の双対 を考察するというものである.
この方法は必ずしもX
が単連結であることを必要としない ため,
適用範囲はLupton-Smith
の手法のそれよりも広い.
特に1
次Gottlieb
群に関して私 たちが得た結果を次章でまとめる.
6.1.
結果. G
を群とする. Γ 1 G = G
と定義しさらに, { xyx − 1 y − 1 | x ∈ G, y ∈ Γ j − 1 G }
で生 成されるG
の部分群をΓ j G = [G, Γ j − 1 G]
と帰納的に定義する.
このときG
の降中心列G = Γ 1 G ⊃ Γ 2 G ⊃ · · · ⊃ Γ j G ⊃ · · ·
に対して得られるアーベル群Γ q G/Γ q+1 G
を以下(Γ q /Γ q+1 )G
と表す.
定理
6.1. [26, Theorem 1.7] f : U → X
を連結べき零空間の間の写像とし,
以下の(i)(ii)
を 仮定する. (i) f
から誘導されるψ-
ホモトピー空間の間の写像π ψ 1 (f ) : π ψ 1 (X) → π 1 ψ (U )
は 単射である. (ii) U
が有限CW
複体であるかまたはX
はdim ⊕ i ≥ 2 π i (X) < ∞
をみたす有理 化空間.
このとき,
(1) (Γ k /Γ k+1 )π 1 (X) ] 6 = 0
をみたすならば任意のi (i < k)
に対して, dim ³
Γ i G 1 (U, X; f) ±
Γ i+1 π 1 (X) ∩ Γ i G 1 (U, X; f ) ´
⊗ Q ≤ dim(Γ i /Γ i+1 )π 1 (X) ⊗ Q − 1.
(2) ([π 1 (X), π 1 (X)]/Γ 3 π 1 (X)) ] 6 = 0
ならばdim
³
G 1 (U, X ; f ) ±
[π 1 (X), π 1 (X)] ∩ G 1 (U, X ; f )
´ ⊗ Q ≤ dim H 1 (X; Q ) − 2.
上の定理は
Gottlieb
群がホモトピー群の部分群としてどのくらい”
小さく”
なるのかを意 味している.
次に具体的計算への応用を述べる
. n
次元トーラスT n上のS 1バンドル
S 1 → X f → T n
S 1 → X f → T n
を考える
.
この分類写像f : T n → K( Z , 2)
をH 2 (T n ; Z ) ∼ = [T n , K( Z , 2)]
上でH 1 (T n ; Z )
の 基底{ t i } 1 ≤ i ≤ nを用いて,
ρ f = X
i<j
c ij t i t j
と表す
.
さらに(n × n)-
行列A fをA f = ¡ c 0 ij ¢
と定義する
.
ただしc 0 ij = c ij (i < j), c 0 ij = − c ji (i > j), c ii = 0
である.
今A f をQ
上に成分を持つ行列と見て,
その階数をrankA f と表す.
このとき次を得る.
.
このとき次を得る.
定理
6.2. [26, Theorem 1.9] G 1 (X f ) ∼ = Z ⊕ (1+n − rankAf) .
6.2.
証明の概略.
写像空間F (U, X ; f )
の模型E/M fを§ 5
の手続きに沿って構成することで,
写像空間の連結成分と評価写像の(
比較的扱い易い)
模型を同時に手に入れることができる.
さらに
Gottlieb
群の定義から次の可換図式を得る.
(Γ i /Γ i+1 )π 1 ( F (U, X; f ))
ev
∗²² ²²
ev
∗,, Y
Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y Y
M := Γ i G 1 (U, X; f )/(Γ i+1 π 1 (X) ∩ Γ i G 1 (U, X; f)) // // (Γ i /Γ i+1 )π 1 (X).
この図式の双対に
[5]
における基本群の有理ホモトピー論的解釈を適用して定理6.1
の結果が,
さらに降中心列を有理ホモトピー論を用いて解析して定理6.2
の結果が得られるのである.
8
7.
結び写像空間や評価写像の模型に関連して
, § 6
の結果以外の応用を述べて結びとする. (i) Q
上可換微分代数A
の反復巡回的ホモロジーHC ∗ (k) (A)
が[34]
で定義されている.
さら にk
連結空間X
に対して,
次数つき代数として同型HC ∗ (k) (A P L (X)) ∼ = H S ∗1( F ( T k , X); Q )
が成り立つ23 .
この証明には,
定理5.1
における評価写像の有理模型および[9]
で展開された 方法が用いられている.
(ii)[33]
では,
基点を保つ写像から得られる写像空間F ∗ (X, Y )
のループ空間への分解定理が与えられている
. Y
の極小模型とX
のLie
代数模型を用いて具体的に構成されるB-S
模型( § 5
参照)
がその証明で用いられている.
(iii)[26]
ではさらにGottlieb
群G ∗ (U, X ; f )
がπ ∗ (X)
の真部分群になるための十分条件をπ ∗ (X)
上の”
検出元”
の存在性と関連づけて与えている.
ここでも定理5.1
の評価写像模型の 威力が発揮されている.
上述の定理6.1,6.2
の証明でも検出元は利用されている.
(iv)
空間M
の自己ホモトピー同値写像全体がつくる空間の恒等射を含む連結成分をaut 1 (M )
とする. aut 1 (M ) = F (M, M ; id M )
であるから§ 5
のB-S
模型からこの写像空間の有理模 型を作ることができる. [31]
ではコホモロジーシンプレクティク多様体(M, a) 24に対し
て, H ∗ (B aut 1 (M); Q )
の特性類 Kedra-McDuff µ-
類[27] 25 をB-S
模型の言葉で記述した. H ∗ (Baut 1 (M ); Q )
に収束するEilenberg-Moore
スペクトル系列の計算において定理5.1
の
評価写像模型は重要な役割を果たしている.
B-S
模型の言葉で記述した. H ∗ (Baut 1 (M ); Q )
に収束するEilenberg-Moore
スペクトル系列の計算において定理5.1
の 評価写像模型は重要な役割を果たしている.
さらに私たちが写像空間や付随する空間の持つ正標数的
(
有理ホモトピー論では検出でき ない)
性質を解析するためには, § 4
で述べた写像空間のオペラド模型に対して(1)
連結成分 の代数的模型の構築, (2)
評価写像のオペラド模型の構成,
が必要になる.
これらは今後の課 題である.
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23 S
1のF ( T
k, X)
への作用はS
1のトーラスへの対角写像を用いて定義される. 24 M
は2n-
次元閉多様体, a ∈ H
2(M ; Q )
でありa
n6 = 0
をみたす.
25
普遍M-
ファイブレーションの全空間のコホモロジー類としてのa
の拡張e a
があるとき,
定義によりR
M