大学生の社交不安障害(
SAD
)傾向といじめられ経験・
QOL
についての検討
藤田彩香 樋町美華
福山大学大学院人間科学研究科 福山大学人間文化学部心理学科 キーワード:Social Anxiety Disorder,Quality of Life,いじめ
はじめに はじめに はじめに はじめに 昨今でも各メディアでとても高い関心を示している社会の現象のひとつに,いじめという問題がある。文部科学 省によると(2012),15,675件の学校においていじめが認知されていることが明らかとなっている。その中でも,思 春期の生徒が属する小学校・中学校は,7,558件・5,796件であり,割合にすると両者を合わせて85%にもなる。加 えて,いじめはその場での心身における傷つきだけでなく,2 次的症状も生み出すことが研究によって示唆されて いる。例えば石橋・若林・内藤・鹿野(1999)によると,いじめられた経験のある大学生は心身ともに悪影響を受 けており,特に心理面においては,社交不安障害(Social Anxiety Disorder:以下SAD)に類似した対人恐怖傾向が高 まっていることが指摘されている。
SADとは,不安障害の中では広場恐怖の次に患者数が多いと報告されており,米国の調査によるとSADの生涯
有病率は13.3%であり,これは精神疾患の中でも3番目に高い有病率となっている(Kessler, McGonagle, Zhao, Nelson,
Hughes, Eshleman, Wittchen, Kendler, 1994)。世界中で診断に使用されるDiagnostic and Statistical Manual of Mental
Disorders-Ⅳ-TRのSAD診断基準の一部には,「E.人から注目されるような場面や,恥ずかしい思いをするかもしれ ない社会的場面を回避したり不安を感じることで,社会生活上に支障をきたしている」といった症状があると記載 されている。また,岡島・坂野(2006)によると,SADとは人から注目されるような場面や,恥ずかしい思いをす るかもしれない社会的場面に対する強い不安と社会的場面からの回避を特徴としていると述べている。SAD傾向の ある者の特徴として,井上・渡辺(2000)によると,自分は内気であると信じるなどといった中核的信念,話に入 ったとしても会話に入れないだろうと信じる条件付き信念,「話には入らないでおこう」といった道具的信念を持っ ているとされている。そのような信念を持っている人は社交的状況にさらされた場合,自分にとってネガティブな 評価がされているかもしれないと認知することが指摘されている。そしてそのような自動思考を経て,不安・恐怖 などといった,感情や回避などの行動がみられるということも示唆されている(井上・渡辺,2000)。このような SAD傾向の人が感じるパフォーマンス場面や社交場面に対する不安・恐怖・回避行動は,悪循環となって症状の回 復を遅らせ,受診の機会を遅らせることが永田(2010)によって明らかにされている。しかし彼らは,自らの症状 を性格であり治療できないと考えているために,不安・恐怖を抱え込んだり,受診しても本当の症状を訴えること が少ないとも指摘がされている(永田,2010)。 さらにそれだけではなく,回避行動は学校などの社会的状況への不参加を生み出し,それによる人間関係の交流 を持たないような生活を長びがせる。そのため,しだいに人とのかかわり方がわからなくなってしまうといった状 態に陥ることが指摘されており,そしてその影響の結果,思春期の人格形成に極めて重要な影響を与えることが笠 原(1995)によって明らかにされている。SADはこのように思春期の児童・生徒の人格にまで影響を及ぼすもので あり,井上・渡辺(2000)もSADとはSAD患者の「生活の質(Quality of Life:QOL)」にまで影響を与える障害で あるとも警鐘を鳴らしている。石橋ら(1999)によっても,いじめを受けた当時の苦痛が大きくなるにつれ,いじ め被害者の長期的な影響も強くなることが示されている。このことは大いに注目すべき事実であり,いじめが終わ った後のフォローも重要であることが示唆されている。このことより,いじめを受けたことのある人の間でも,そ の後の生活の質に何らかの影響が及ぼされていると考えられる。このことからも,いじめられ経験とその後の生活
の質の研究が必須である。しかし,いじめられ経験の有無とその後の被害者の生活の質についての研究は十分とは 言い難い。
そこで本研究では,現在のSAD傾向をLiebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)日本語版とShort Fear of Negative
Evaluation Scale(SFNE)で測定,自身の生活に対する満足感を主観的幸福感尺度により測定し,これらの得点から過 去のいじめられ経験を予測することか可能であるかを検討することを目的とした。仮説としては,LSAS日本語版, SFNEの因子の得点によって,過去にいじめられたことが有るか無いかを予測することができ,現在のSAD傾向が 高い者・現在の生活に対して幸福でないと捉えているものほど,過去のいじめられ経験が有る傾向が高いと推測し た。 方 方 方 方 法法 法法 調査対象者 地方私立大学生の男性48名,女性52名の計100名(平均年齢20.45±1.51歳)を対象とした。有効 回答率は90.91%。 調査期間 :2011年9月29日~11月14日。 調査材料 :
1. Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)日本語版 朝倉・井上・佐々木・佐々木・北川・井上・傳田・伊藤・ 松原・小山(2002)によって翻訳されたものを使用。本尺度は,社会的場面に対する恐怖感・不安感の程度と回避 の程度を測定する尺度であり,24×2の全48項目から構成されている。恐怖感・不安感は「全く感じない(0)」「少 しは感じる(1)」「はっきりと感じる(2)」「非常に強く感じる(3)」の4件法,回避は「全く回避しない(0)」「回 避する[確立1/3以下](1)」「回避する[確立1/2以下](2)」「回避する[確立2/3以上または100%](3)」の4件法 で回答を求めるものであった。
2. Short Fear of Negative Evaluation Scale(SFNE) 笹川・金井・鈴木・嶋田・坂野(2004)によって作成 された,他者からの否定的な評価に対する恐れを測定する12項目の尺度。「全くあてはまらない(1)」「ややあて はまらない(2)」「どちらでもない(3)」「ややあてはまる(4)」「非常にあてはまる(5)」の5件法で回答を求め た。 3. 主観的幸福感尺度 伊藤・相良・池田・川浦(2003)によって作成された青年から成人までの主観的幸福感を 測定できる尺度。12項目4件法で回答を求めた。「自信」「人生に対する前向きな気持ち」「人生に対する失望感の なさ」「達成感」の4領域で構成されている。得点が高いほど自己の生活に満足していると測定された。 4. いじめに関するフェイスシート 過去にいじめられたことがあるかどうかを確認するために,質問紙の最終ペ ージに,小学校・中学校・高等学校の各時期における経験の有無を聞いた。有りの対象者にはその後,肉体的いじ めであったか,精神的いじめであったかを2件法で質問した。 調査手続きと倫理的配慮:本研究では,質問紙を配布させていただく授業を担当している教師の許可をいただき, 参加者には口頭と紙面での説明を行った上で,記入をもって同意とみなした。また本研究は,いじめられ経験とい ったナイーブな問題についての設問項目であったため,回答中に気分を害したり体調不良になった参加者に対して, 責任者に繋がる電話番号を明記しておくことで,倫理的配慮を施した。また,封筒を使用し,質問紙も冊子を閉じ た際に回答が透けて他人にみえないように配慮を行った。
結 結 結 結 果果 果果 1. 1. 1. 1. 各尺度における因子ごとの相関各尺度における因子ごとの相関各尺度における因子ごとの相関各尺度における因子ごとの相関
大学生の現在のSAD傾向とQOLの関連性を見るために,LSAS日本語版・SFNE・主観的幸福感尺度の各因子 得点における相関分析をいじめられ有り群・無し群に分けて行った(Table1,2)。 Fp Ap Fs As 否 定 的 解 釈 肯 定 的 解 釈 自 信 前 向 き な 気 持 ち 失 望 感 の な さ 達 成 感 Fp 1.00** 0.74** 0.84** 0.63** 0.53*** 0.88** -0.50*** -0.23** -0.33*** -0.21** Ap 1.00** 0.63** 0.83** 0.54*** 0.10** -0.50*** -0.02** -0.29*** -0.24** Fs 1.00** 0.77** 0.57*** 0.20** -0.42*** -0.31** -0.36*** -0.29** As 1.00** 0.61*** 0.25** -0.37*** -0.07** -0.28*** -0.26** 否 定 的 解 釈 1.00*** 0.52** -0.24*** -0.10** -0.17*** -0.28** 肯 定 的 解 釈 1.00** -0.05*** -0.15** -0.01*** -0.25** 自 信 -1.00*** -0.49** -0.56*** -0.34** 前 向 き な 気 持 ち -1.00** -0.59*** -0.37** 失 望 感 の な さ -1.00*** -0.44** 達 成 感 -1.00** *p<.05,**p<.01
Note. LSAS=Liebowitz Social Anxiety Scale; SFNE=Short Fear of Negative Evaluation Scale; Fp=Fear of Performance; Ap=Avoidance of Performance; Fs=Fear of Social interaction; As=Avoidance of Social interaction;
否定的解釈=他者からの評価に対する否定的解釈; 肯定的解釈=他者からの評価に対する肯定的解釈; 前向きな気持ち=人生に対する前向きな気持ち; 失望感の無さ=人生に対する失望感のなさ Table 1 いじめられ経験有り群におけるLSAS日本語版,SFNE,主観的幸福感尺度の各因子相関(N=46) まず初めに,いじめられ経験が有る者の各因子得点の平均値の差を検討した。その結果,SFNEにおける他者か らの評価に対する否定的解釈と,LSAS日本語版の間には,中程度の正の相関がみられた(Fp:r=.53,p<.01,Ap: r=.54,p<.01,p<.01,Fs:r=.57,p<.01,As:r=.61,p<.01)。また,主観的幸福感における自信と,LSAS日本 語版におけるFp(r=-.50,p<.01),Ap(r=-.50,p<.01),Fs(r=-.42,p<.01)の間には,中程度の負の相関がみ られた。このことより,いじめられ経験が有る者において,他者からの評価に対して否定期に解釈してしまう認知 傾向が高い者は,社交場面やパフォーマンス場面における不安感や回避傾向が高い。また,将来に対する自信が高 い者ほど,社交場面における不安感・パフォーマンス場面における不安感や回避率が高いことが示された。 Fp Ap Fs As 否 定 的 解 釈 肯 定 的 解 釈 自 信 前 向 き な 気 持 ち 失 望 感 の な さ 達 成 感 Fp 1.00** 0.85** 0.87** 0.82** 0.51*** 0.32** -0.42*** -0.19** -0.36*** -0.20** Ap 1.00** 0.74** 0.88** 0.39*** 0.26** -0.43*** -0.16** -0.33*** -0.20** Fs 1.00** 0.84** 0.57*** 0.40** -0.51*** -0.24** -0.27*** -0.20** As 1.00** 0.46*** 0.27** -0.50*** -0.23** -0.27*** -0.25** 否 定 的 解 釈 1.00*** 0.37** -0.46*** -0.46** -0.44*** -0.22** 肯 定 的 解 釈 1.00** -0.29*** -0.21** -0.13*** -0.04** 自 信 -1.00*** -0.60** -0.45*** -0.31** 前 向 き な 気 持 ち -1.00** -0.43*** -0.25** 失 望 感 の な さ -1.00*** -0.10** 達 成 感 -1.00** *p<.05,**p<.01
Table 2 いじめられ経験無し群におけるLSAS日本語版,SFNE,主観的幸福感尺度の各因子相関(N=54)
Note. LSAS=Liebowitz Social Anxiety Scale; SFNE=Short Fear of Negative Evaluation Scale; Fp=Fear of Performance; Ap=Avoidance of Performance; Fs=Fear of Social interaction; As=Avoidance of Social interaction;
否定的解釈=他者からの評価に対する否定的解釈; 肯定的解釈=他者からの評価に対する肯定的解釈; 前向きな気持ち=人生に対する前向きな気持ち; 失望感の無さ=人生に対する失望感のなさ
次に,いじめられ経験が無い者における各因子得点の平均値の差を検討した。その結果,SFNEにおける他者か らの評価に対する否定的解釈と,LSAS日本語版のFp(r=.51,p<.01),Fs(r=.57,p<.01),As(r=.46,p<.01) において中程度の正の相関が見られた。このことより,パフォーマンス場面における不安感が高い者・社交場面に おける不安感や回避傾向が高い者ほど,他者からの評価に対して否定的に解釈する傾向があることが示された。 また,主観的幸福感における自信と,LSAS日本語版におけるFp(r=-.42,p<.01),Ap(r=-.43,p<.01),Fs(r=-.51, p<.01),As(r=-.50,p<.01)の間には,中程度の負の相関がみられた。さらにSFNEにおける他者からの評価に 対する否定的解釈と,主観的幸福感における自信(r=-.46,p<.01),人生に対する前向きな気持ち(r=-.46,p<.01), 人生に対する失望感の無さ(r=-.44,p<.01)の間にも,中程度の負の相関がみられた。 2. 2. 2. 2. いじめられ経験の有いじめられ経験の有いじめられ経験の有いじめられ経験の有無における各尺度得点の平均点の差無における各尺度得点の平均点の差無における各尺度得点の平均点の差無における各尺度得点の平均点の差 次に,いじめられ経験の有無によって,LSAS日本語版・SFNE・主観的幸福感尺度の平均点の差を検討するた めに,t検定を行った(Table3)。 Fp 15.41 .(7.97) 13.20 .(7.64) 1.41 n.s. Ap 11.35 .(7.22) 10.41 .(7.18) 0.65 n.s. Fs 18.52 .(8.77) 15.80 .(8.11) 1.61 n.s. As 14.35 .(8.28) 12.85 .(8.41) 0.89 n.s. 否定的認知 27.26 .(8.09) 26.35 .(7.42) 0.55 n.s. 肯定的認知 14.17 .(3.49) 14.22 .(3.58) 0.68 n.s. 自信 10.26 .(2.67) 11.39 .(2.67) 2.11 * 前向きな気持ち/ 9.02 .(2.29) / 9.30 .(2.06) 0.63 n.s. 失望感のなさ/ 6.74 .(2.29) / 7.52 .(2.17) 1.75 n.s. 達成感/ 5.93 .(1.50) / 6.30 .(1.14) 1.37 n.s. Note. Fp=Fear of Performance; Ap=Avoidance of Performance
Fs=Fear of Social interaction; As=Avoidance of Social interaction
否定的解釈=他者評価に対する否定的解釈; 肯定的解釈=他者評価に対する肯定的解釈 前向きな気持ち=人生に対する前向きな気持ち; 失望感の無さ=人生に対する失望感のなさ * p <.05 Table3 いじめられ経験の有無ごと におけ る各因子得点の平均値の差 t値 いじめられ経験有(N =46) いじめられ経験無(N =54) 平均値(SD) その結果,LSAS日本語版とSFNEにおいては,いじめられ経験の有無によって得点の平均点には有意な差はみ られなかった。主観的幸福感においては,「自信」因子のみ有意な差がみられ(t(98)=2.11,p<.05),いじめられ経 験の無いものはあるものに比べて,有意に将来に対して自信を高く持っていることが示唆された。 3. 3. 3. 3.各尺度の因子得点によるいじめられ有無の予測各尺度の因子得点によるいじめられ有無の予測各尺度の因子得点によるいじめられ有無の予測各尺度の因子得点によるいじめられ有無の予測 LSAS日本語版・SFNE・主観的幸福感尺度の各因子得点を独立変数,いじめられ経験の有無を従属変数として, SAD傾向や主観的な幸福感によっていじめられ経験が予測できるかどうかをロジスティック回帰分析(変数増加法 ステップワイズ:尤度比)を用いて検討した。モデル係数のオムニバス検定を行った結果,χ2(1)=4.41(p<.05) であったため,ロジスティック回帰モデルの適合度検定の結果は適合していた。結果,有意な変数は自信のみであ り(p<.05),オッズ比は0.85(信頼区間95%:.73-.99)であった。また,HosmerとLemeshowの検定はχ2(1)=11.45 (p>.05)であったことから,本モデルの予測精度は高いことが示された。この結果より,主観的幸福感における
自信因子が低い者ほど,過去にいじめられた経験がある可能性が高いことが示唆された。しかし,判別の的中率は 58%であった。このことより,モデルは有意であったが,判別を行うにはおおよそ42%の誤りが出る可能性がでる ため,本結果では,LSAS日本語版・SFNE・主観的幸福感の因子得点によっていじめられ経験における影響を予 測することは困難であると結果づけた。 考 考 考 考 察察 察察 本研究では,大学生の現在のSAD傾向,QOLによって,過去のいじめられ経験を予測できるかどうかを検討し た。 まず,LSAS日本語版・SFNE・主観的幸福感の因子間の相関分析より,過去にいじめられた経験のある者にお いて,パフォーマンス場面・社交場面において不安・恐怖を高く感じている者は,他者から評価されることを否定 的に解釈する認知傾向が高く,将来に対する自信は有意に低い結果が得られた。また,過去にいじめられた経験の 無い者は,他者からの評価されることを否定的に解釈する認知傾向が高い者は,不安・恐怖感が強く,社交場面を 回避する傾向が高く,将来に対する自信・有望感や前向きさが低い傾向があることが明らかにされた。このことよ り,過去にいじめられた経験の無い群は,現在のSAD傾向が低いほど,将来起こりうる出来事に対して自己を統 制できると自信を持っており,人生に対して有望感を持っていて,前向きな気持ちが高い傾向があることが示され た。しかし,いじめられ経験の有無において各尺度因子得点の平均値の差を検討すると,いじめられ経験の無い者 の方が,将来に対する出来事に対して自信のみが高いことがしめされた。また,LSAS日本語版・SFNEによる現 在のSAD傾向,主観的幸福感によるQOLによって,過去のいじめられ経験を予測を行ったところ,自信のみ有 意な影響度が見られたものの,判別的中率が58%であるために,このモデルは採用されなかった。よって,LSAS 日本語版・SFNEによる現在のSAD傾向,主観的幸福感によるQOLによって過去のいじめられ経験を予測する ことは困難であることが示された。
これらの原因として,LSAS日本語版・SFNE・主観的幸福感尺度の因子相関係数が弱いものが多いこと,LSAS 日本語版やSFNE,主観的幸福感尺度は,参加者の現在について尋ねるものであったが,いじめられ経験の有無と いった質問は過去についての設問であり,時間軸が異なるものであったことなどが原因として考えられる。真船・ 鈴木・大塚(2006)によると,現代の大学生は「大学生活」「課外活動」「アルバイト」「家族」などのさまざまな 生活領域を有しており,友人・恋人に限らず教員やアルバイト先などの人間関係における負担があることを明らか にしている。このような研究からも,現代の大学生はいじめられ経験と言った過去の要因よりも,現在における要 因が,SAD傾向やQOLに影響を与えることが考えられた。 また,本研究では,SAD傾向とQOLの程度は直接影響する結果は示唆されなかったものの,いじめられ経験の 無いものの方が,経験の有るものよりも,将来に対する自己統制感が高いことが明らかとなったから,いじめられ 経験の有無の差が要因の一つとなりえる可能性が示唆された。そのため今後は,QOL ではなく,将来に対する自 己統制感の高さを検討する必要があると推測した。また,主観的幸福感を開発した伊藤ら(2003)によると,自身 と自尊心には強い相関があると述べている。自尊心とは,自己に関する評定感情であり,自分自身の評価を価値の ある存在であるとする感覚のことである(遠藤,1999)。「自信」の項目も「自分が勇気をもってそれに立ち向かっ て解決していけるという自信がありますか」などといった自己に関する評定の項目であることから,自尊心の面か らもいじめられ経験との関連性を検討していく必要があることが示された。
さらに今回の研究では,SAD傾向とQOLを同次元として扱った。しかし, SAD傾向の慢性化によってQOL に影響することも考えられ,逆に日常生活全般におけるQOLの低下が,SAD傾向に影響を与えることも考えられ る。このようにどちらかが先行することで一方が後発する可能性も考えられる。よって,階層的なモデルを構築す
ることによって,全体像が明らかになる可能性が考えられ,検討する必要性がある。これらを検討するためには、 共分散構造分析を使用した統計解析処理を行うなどの手段を使用することがあげられる。それによって背景要因や モデルを明らかにすることにより,治療で重点を置くべき条件や,アセスメントで抑えるべき点をより明らかにす ることで,SAD傾向を有する患者のアセスメントや治療に活かすことができる可能性があると推測した。 引用文献 引用文献 引用文献 引用文献 朝倉 聡・井上誠志郎・佐々木 史・佐々木幸哉・北川信樹・井上 猛・傳田健三・伊藤ますみ・松原良次・小山
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Examination of college student's SAD tendency, experience of bullying and QOL
Ayaka Fujita & Mika Himachi
It is known studies that the experience of bullying affects Taijin-kyofusyo tendency, and it resembles Social Anxiety Disorder(SAD). Further, fear and avoidance of SAD affects everyday life. In this study, measured SAD tendency and QOL of the current university students, In this study, measured SAD tendency and QOL of the current university students, and evaluated it which can predict the experience of bullying. The results showed that it is difficult that SAD trendency and QOL cannot predicts the experience of bullying. However, Someone who had not been bullied was significantly high which control for their own life.