■ 研究論文
自己設計化する共同体
一 散逸構造 と触媒機能の視点か らの考察 ‑
Self‑DesigningCommunity
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士後期課程
辻 朋 子
TbmokoTsuji
■キーワー ド
散逸構造、触媒機能、オー トポイエーティツク ・システム、創発
1 .は じめに
先行研究 においてル ーマ ン等1)2)3)は社会進化 を生活領域 における非連続 に進む動揺、破壊、再 創造の機能分化の繰返 しによる課題処理能力の限 界突破 ととらえる。 しか し、先行研究では共同休
を静態化 と動態化 を意識 して説明 しているものの、
人間の働 きかけを契機 として共同体の動態化が促 進 され る仕組みは十分に解 き明か されていないよ
うに思われ る。
本論は以上の問題設定に基づ き、先行研究の補 足 を試み る。予測可能性 か ら予測不可能性への社 会パ ラダイムの転換 を踏 まえ、偶然 を発見する能 力 をセレンデ ィピテ ィ(serendipity)(注目とすれば、
セ レンデ ィピテ ィの発見主体 としての人間には、
偶然 を偶然で終わ らせ ない仕掛 けや仕組みづ くり の能力が必要 である。本研究 はその過程 を、必然 化行動、偶然化行動、偶然の必然化行動の三段階 を通 して、 これ までの論者の継続研究 を踏 まえて、
共同体の自己設計化の ありかたとして探究す る。
論者 は中小企業診断士、東京女学館大学等の非 常勤講師 と して、2003年 か ら学生 参加 の まちづ くりを通 して商学公連携事業の推進に携わってい る。衣食住、教育、福祉などの流通経路、連携経 路 を組み替 えて、暮 らし易 さのためのサービス機 能の創 出を図 るのが主 な仕事である。
しか し、学生参画型の大学等教育機 関 と社会 と の連携 事業活動 その ものが全 国的に2002年 ごろ か ら増加 し始めた動 きであ り、先行研究 としての まとまった規範 も事例の集約 もほ とん ども存在 し ないのが現状 である。 けれ ども現場活動の只 中に いれば、参加者 か らは 「私たちは、いったい何 を やっているのですか。 どこにい くのですか」 と問 われ ることが頻繁 にある。 そ うしたなかで、中間 媒介者 として地域経営の現場で、共同体が今 ある 状況 を客観 的に把握 し、進むべ き方向性 を見極 め、
現場 をあるべ き次 なる段階に到達 させ るために、
共同体の生成過程 その もの を究明す る必要性 を強 く感 じるよ うになった。
その時代背景 は、マク ドナル ド化社会か らボス
4 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第12号 2008年3月
トマ ク ドナル ド化社会 へ の変容 を踏 ま えた、予測 可能性 か ら予測 不可能性 へ の社会パ ラダ イムの転 換 が あ る。 リッツア4)は フ ァス トフー ドレス トラ
ンの マ ク ドナル ドを取 り上 げ、 マク ドナル ド化社 会 を機械 論 的社会観 に基づ く人 間性喪失 の時代 と し、基本 的 な構成要 素 を効率性 、人 間の予測不 可 能性 に対 す る制御 に置 いた。一方 、 ポ ス トマ ク ド ナル ド化社会 を人 間性 回復 の時代 と し、予測不 可 能性 に価値 を置 く時代 と位 置づ け る。
また、 デ ュル ケ‑ ムは、機 械論 的社会観 とその 超越 を社会 分業 の仕組 み か ら説 明 し、人 間社会 の 健 全状態 は、相互 に調整 しよ うとい う分 け合 うた めの分業 、す なわ ち協働 が限界 を超 えて次 な る闘 値 を超 えよ うとす る と ころに求 め られ る とす る。
論者 は こ う した社会 パ ラダイムの転換 に応 える 社会 組織 の創 出 を模 索 し、実践活動 を実験 と位 置 づ け、 あ る局面 の実験 が終 了す る度 に それ を論 理 づ けす る とい う帰納 法 的 な手法 を通 し継続 研究 を 続 けて きた。
現 在 は その集大 成 を博 士論文 に まとめ る研究 に 取 り組 んで い るが、本 論 は その途 中過 程 と して、
これ まで の学 会 発 表3回、論 集 投 稿2回 の成 果 を 踏 まえ、新規 に論文 テ ーマ を設定 し、 その テ ーマ に添 って 内容 も新規 に構想 し、作成 した。学会 発 表表 題 、投稿 論文掲 載 文献 、 お よび概 要 は以下 の 通 りで あ る。
2. これまでの研究の概要
(1)研 究局 面 1
「サ ー ビス コ ミュニ テ ィの設計
一 生 活領域 を有機 的 に設計 す る視 点 か ら
‑」
学 会 発表 日 日本 経 営 診 断学 会 第38回 全 国 大
会 (2005年10月1日)
投 稿 論 文 「日本 経 営 診 断学会 論 集
6
」 (同友 館,2006.)(6)暮 ら しに必 要 な サ ー ビス を充 足 す る範 囲 を
"生 活領域 (livingdomain)" と定義 し、 その実 体 は 目的価値 に対峠 す るプ ロセス アプ ローチ と い う意 味 での組織 連 携 が創 る過程 価値 に あ る と
い う発見 を提示 した。 (実験 フ ィール ドは東 京 都武 蔵 野市 (以下、M市) に位 置 す る路 線 商店 街F及びFを中心 とす るM市西部地域)0
(※1詳細 は巻末 資料参 照)
( 2 )
研 究局面2「サ ー ビス コ ミュニ テ ィの デザ イ ンに お け る理 論化へ の試 み
‑ 生 活 領 域 の有機 的 な経 営概 念 とその 必 然性
‑ 」
学 会 発表 日 日本 経 営 診 断学 会 第39回 全 国 大 会 (2006年9月30日)
投稿 論 文 「日本 経 営 診 断学会 論 集
7
」 (同友 館,2006.)(7)ル ーマ ン等 の研究 を踏 まえて、非連続 に進 む 動揺 、破壊 、再創 造 の機 能分化 を フ レーム ワー ク と して、社会 システ ムを構成 す る三軸 (時間 軸 、空 間軸 、資源軸) を提起 し、生 活 領域 とは 自身 の な か か ら次 段 階 の生 活 領 域 を生 み 出 す オ ー トポ イエ ーテ ィ ツク ・システ ム (autopoietic system)で あ るこ とを提示 した。
(3)研 究局 面3
「幸 せ な コ ミュニテ ィモデルの創 出
‑ ものづ くりの支援 を通 したサ ー ビス機 能 の可 視化 を基盤 に して
‑」
学会 発表 日 日本 経 営 診 断学 会 第40回 全 国大 会 (2007年10月21日)
しか し、研究 局面2で は人 間 の働 きか け を契 機 と して共 同体 の動態化 が促進 され る仕組 み は 十分 に解 き明 かす こ とは叶 わ なか った。
研究 局面3で は、 その点 を克 服 す るた め にひ とつ の典型 的 な手法 と して、触媒機 能 を持 つ人 間や組織 を前述 の セ レンデ ィピテ ィとい う概念 で位置 づ け た。 それ を発掘 し、既 存 の仕 組 み に 組み込 む システ ム と しての ビジネス コ ンテ ス ト
を事例 に、 ものづ く り支援 とサ ー ビス機 能 の可 視 化 を実現 した。 それ らを通 して、協 働 に よっ て創 出 され た生活領 域 の あ り方 その もの を "辛 せ な コ ミュニテ ィモデル" と して提示 した (実 験 フ ィール ドは東 京 都 小金 井 市 (以下、K市))
(※2 詳細 は巻末 資料参 照)0
3. 研究方法
本論の進 め方 はこれまで と同様 に、実践活動 を 実験 と位置づけ、ある局面の実験 が終了する度 に それを論理づ けす る研究方法に拠 ることとする。
その第‑の論拠はア‑ウイックが展開するフォ レッ トの主張 を通 した議論に拠 る。 フォレッ トは 経営管理の基礎 は協働の科学 に求 め られ8)、その 基礎 にあるのは環境の保持や社会貢献 といった奉 仕、すなわち共感に基づ くサービス活動 としての 協働の生成 にあるとす る。そ して、それ を論証す る方法 として実験 とその論証 を通 して知識 を整合 す ることか ら一定の標準が生 まれ るので、それに よって成 され る体系づけを科学 ととらえようとい う方法論9日。)を掛 昌する。
第二 の論拠 はプ リゴジ ンとス タ ンジェ‑ル11) に拠 る。彼 らは社会組織の変容 を物理学 における 熱力学の第二法則か ら援用す る。すなわちわれわ れの社会 は宇宙が重ねる年齢の範囲にあ り、そこ に包含 され る生態系進化は宇宙物理学 を端 とす る ハ ー ドサイエ ンスをよりソフ トな生命の化学 と関 連づける新 しいアプローチか ら説明 され るとす る。
そ して、それは社会の発展過程にまで関連づけ られ る可能性 を述べている。すなわち、発展 とし ての進化は平衡か ら遠 く離れた状態 において、対 象性が破 られ ることによる不安定性がゆ らぎを創 出 し、それがコ ミュニケーシ ョンによる分岐 を選 択することを通 して安定に至 る道筋 を繰 り返す こ とで進む とされ る。 この宇宙 における秩序 と混沌 (chaos)の繰 り返 しを力学における "在 る"と "成 る''との関係 として提示 し、これ を首尾一環 して 記述す るためにはこの両方の概念が必要 であると す る。そ して、それは実験結果 と新 しい理論概念 を組み合わせて見 るがままに描 くこと以外に本質 に迫 る道はない と結論す る。
以上ふたつの議論 は共通の因子 として、過程 ア プローチか らの実験 とその論理づ けの正 当性 をあ げている。論者 はこれ まで手探 りで、 こうした方 法 を選択 して きた。
しか し本論では、 これ らふたつの議論 を拠 りど
ころに、 これ までの研究局面 を "研究 局面1,2,3"
とし、 これ までの研究の継続 と して本論 を "研究 局面4"と位置づ けた うえで、実験 とその論理づ け を通 して究明を進 める。すなわち、目的については ある程度 あいまい性 を残 したまま、実験 としての 実践活動 を進め、次 ぎにその論理づけを行い、 さ らに両者 を相互架橋す ることか ら事後 に成 したこ との意味 を洞察 し、結論 を導 くとい う手法 をとる。
4. 実験 か らのアプローチ
研究局面4の実験 は、2つ の フェーズか ら構成 され る。第一 フェーズは研究 局面3において、 ビ ジネスコンテス トによって動態化 (第1次) とい うべ き状況 を得 たK市 が次 な る動態 化 (第2次) に向か う自己組織化への論者 による参加型実験 で ある (ここでの論者の位置づ けは動態化 (第2次) 促進 にかかるフアシ リテ一夕)0
第二 フェーズは東京都商工会連合会 が主体 とな り、従前ば らば らに展 開 されて きた商学公連携事 業 を、東京都 を領域 として統括展開 しようとい う 動 きへの論者 による参加型実験 である。
学生参加のまちづ くりを基軸 とす る商学公連携 事業 は2002年 頃か ら日本 各地 で まった く非関連 に現出 し、急増す るとい う様相 を見せている。今 回の実験 はこうして自己組織化 し始めた大学や学 生参加型の まちづ くりの本質 を究 明す る調査 を踏 まえて、東京都全域 を領域 と して、あるまとまっ た形で活動 を活性化す るための仕組み案、事例案 を創出す ることが 目的である。
この段階に至 るとK市の事例 と しての特筆性 は 消失 し、都内市区町村のひ とつ として東京都全体 のゆ らぎのなかに吸収 され る。 ある意味で閥値 を ワンランク超 えた上位組織 における自己組織化の 様相 を探 る実験の始 まりとい える (論者の位置づ けは東京都商工会連合会 における同事業推進 ファ シ リテ‑タ).
本論 では、ふたつの実験 か ら得 られ た情報 を、
実験の途上 とい うことでのあい ま
い
性 は、あえて そのまま残 したまま、"フィール ド及び概要"、"栄6 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第12号 2008年3月 見"、 "仮説" と して以下 のよ うに まとめる。
1 )K
市 における自己組織化の創 出 と進化 (1)フィール ド及び概要K市 は現 在、 「ビジネス コ ンテス ト事業 (既 述
)
」 と並行 させ、 「水湧 く (みわ く) プロジェ ク ト構想」 とい う名称 で、K市独 自資源 である 地下水、湧水 と江戸東京野菜の再生 を核 に した 地域活性化事業 を進行中で ある。行政 は両事業 を統括 し、現状 の産業振興 プ ラン (地域経済活 性 化 プ ラ ン) を改 訂 し、2033年 まで継承 す る ことを視野 に入れ た新産業振興 プ ランを計画 し ている。並列 す る上 記2つ の "計画 " が基盤 にな り、
学識経験者、商業関係者 、工業 関係者、公募市 民、行政関係者 、市職員等 による "創発" を通 して予測不可能 な上位 "計画 (新産業振興 プ ラ ン)" を模索す るプロセス中で ある。
論者 は実験終 了時における、行政区を単位 と す る自己組織 化の進化過程の洞察 を視野 にいれ て、 フアシ リテータとして同事業の参加型実験 を進めてい る。 (※3 詳細 は巻末資料参照)
(2)発見
① 大 目的 で あ る 「新産 業 振興 プ ラ ン」 とい う "計 画 され た ネ ッ トワ ー ク (prescribed network)"に向 けて、 さま ざまな セ ク ター の実質 的な リーダーが、K市経済課 が仕掛 け 人 (中間媒介者、 この段階では触媒 とも考 え られ る) に よって集 め られ るなかで、構 成 員間 に 自主 的 に役 割 を探 索 しあ う動 きが生 まれ、"創 発 され たネ ッ トワーク (emergent network)"がゆ らぎと して発生12日 注3)0
② 中間媒介者 と構成員の間での、課題の投 げ かけ と反応 の反復で、 さらに大 きいゆ らぎの 誘発。
③ ゆ らぎは、"経営資源 (水、江戸野菜)×マネ ジメ ン トシステム (セ レンデ ィピテ ィ発掘装 置)"の統合 による"第三の解"の発見 によって 秩序化 に向か うと予測 され る。 しか し、その
究極 の落 ち着 きどころ(大 目的の具体的な形) は、 この段階では参加者 の誰 に もわか らない。
(3)仮説 (過程論 的アプローチによる現状分析) 従前の 自治体行動 (必然化行動、計画) に偶 然化行動の要 因 (経営資源 とセ レンデ ィピテ ィ 発掘装置) が組込 まれ ることで動態化 (利 発、
ゆ らぎ) が現 出。 さらに 「改定版産業振興 プラ ン」 (偶然 の必然化行動、計画) を通 して、予 測不可能 な次段階の多数のゆ らぎ (偶然化行動、
偶然の必然化行動) が現 出。
2)東京都商学公連携事業の 自己組織化 と進化 (1)フィール ド及び概要
東京 都商工 会 連合 会 は2002年 よ り 「産 学 公 連携事業推進研究委員会」を発足 し、都全域 にお ける連携 モデル事業 の検討 を開始 した (i]i4)(往5). 本事業 目的は これ までの調査事業 を踏 まえた具 体的実施 に向 けた仕組み案、事例案の創 出にあ る。論者 は参加型実験 を通 して、商学公連携事 業増加の社会 的意味 を分析 し、同時に事業推進 の指導 にあた るフアシ リテ一夕の役割 を務 めて いる。 (※4 詳細 は巻末資料参照)
(2)発見
① 商学 公連携 事業 が2002年 以 降、 ラ ンダム に同時 多発的 に 日本 各地 で ラ ンダムに生起。
時代のニ ーズに応 えるためのなにかの"予兆"
と観 えるが本現象につ いての まとまった研究 は存在 しない。
② M市、K市 において中間媒 介者 と しての役 割 を果 していた論者 が、気 がつ けば、東京都 とい う広域 の生活領域 のなかに触媒 と して放 り込 まれていた。 自身の力 を超 えて、周 りが 動 き出 し、社会組織 その ものが動態化 し始 め てい ることに後か ら気づいた。
(3)仮説 (過程論 的アプロ‑チによる現状分析) 東京都商工会連合会の動態化 とは、 日本 各地 に 同時多発す る商学公連携事業 (偶然化行動、偶然 の必然化行動) を統合す るよ り大 きな枠組み (そ の うえの閥値 における) による予測不可能 な偶然 化行動、偶然の必然化行動の現 出。
5. 論理づけか らのアプローチ
1)理論化のためのフレ‑ムワーク
以 上 の実験 を理論 化 す るため、次 の2点 の フ レームワークを構築す る。
(1)社会 を動態化す る仕組み としての散逸構造 商学公連携事業が論者の個人的活動 も含めて、
21世紀 とい うポス トマク ドナル ド化社会への 価値転換の時期 に、各地で社会 的なさまざまな 大学 と地域 との取 り組み と してほぼ一斉 に起
こったことは興味深い。
自身の仕事 でい えば、M市 (2003年 〜)、K 市 (2005年〜)、そ してK市の取 り組みの最中に、
上部団体である東京都商工会連合会か ら招請 さ れ、単会 の フ アシ リテ 一夕か ら、東京 都27商 工会 を統括す るフアシ リテ一夕へ と役割の領域 拡大 (2007年 〜) が生 じて い る。 それ は誰 に 導かれ るで もな く、偶然の重 な りとして、社会 ニ ーズの求める答 えの探索者 とも言 うべ き役割 へ、後か らみれば自身の存在の必然化に向けて 見 えざる手によって誘導 されて きたかにも見 え る軌跡である。
こうした存在の必然化 を導かれた経過は、 自 身が関与 し、巻 き込 まれ ることによって、空間 的に広がった社会組織の動態的な生成過程 その
ものである。
その生成過程 を科学的に究明す るためのキー ワ ー ドと して こ こで は散 逸 構 造 (dissipative structure)をあげ る。 プ リゴ ジ ン13)は熱 力学 の第二法則か ら解 き起 こし、設定 された温度勾 配 が臨海値 を超 えると、新 しい分子的秩序が自 発 的につ くられ るが、 それ は外界 との エネル ギー交換によって安定化 された巨大 なゆ らぎに 対応 しているとす る。つ まり、物質 が系 と外界 との相互作用、すなわち非平衡条件下 に系 を置 くことによって、物質が新 しい動的状態 をつ く りだす。 この状態 を散逸構造 と呼ぶ。
そ してプ リゴジンは構造安定性の問題 は物理 学、熱力学の領域 に とどまらず、社会的な事例 への応用が非常に多い とし、平衡か ら遠 く離れ
たところで対象性 を破 る不安定によって最初の 勾配 がで きる仕組みは、生命の誕生 が自然秩序 か ら遠 くはなれて実際に起 こった自己組織化過 程の最初の形態にお きか えることがで きるとし ている。
一方、Jantsch14)は散逸行動 はふ たつ の タイ プの行動 をとるとす る。ひ とつ は平衡 に近いと ころでの、秩序 を破壊 す る行動である。 もうひ とつ は平衡 か ら遠 く離れたところでの、秩序 が その まま維持 された り、不安定 な状態 が続 いた あ と、新 しい秩序 が出現 した りす る行動 で あ る。後者の行動はコ ヒー レン ト (coherent)行 動 と呼ばれ る。周囲の環境 とエネルギーや物質 を交換す ることで、 システムは内部の非平衡状 態 を維持 し、逆 にこの非平衡状態が交換 プロセ スを維持 させ る。平衡 を失 いなが ら、 よろめき なが ら前に進み続 けることで、なん とか倒れな いような場合 を考 えれば感 じがつかめるだろう とJantschはい う。散 逸構 造 は この よ うに して 持続 的に自身を再生 し、自身の一貫性 と自己再 新 を繰 り返す。 その意 味でJantschは散逸構造 は自己創 出性 (autopoiesis)の構造 を備 えると 位置づけた。
プ リゴジ ンとJantschの考 え方 の相違 の整理 は別の機会 に譲 るが、両者の共通す るところは 平衡の対象性の破れが自己組織化の始 まりとい う点にある。プ リゴジンは散逸構造の自己創出 性 について、分岐 とカオスへの転移 とい う考 え 方で説明 している。平衡 に近い条件では、系は 空間的に一様 な状態 に止 まる。 しか し、平衡か ら遠 く離れた領域では、系のなかをめ ぐる科学 物資の拡散 が、空間的対象性 を破 るよ うなゆ ら
ぎの増幅 を生 む。 こうして生 じた方法で対象性 が破れ、自己組織化過程 が始 まるとそれは系が 安定性の聞値 を超 えた最初の分岐 まで続 く。 こ の分岐が平衡 か らの臨界距離 と しての間値 を構 成す る。 これは一回限 りの ものではな く、その 後、系は無数に分岐 を通過す るたびに平衡 とカ オスによる非平衡 を繰 り返す ことになる。
そ して分岐点に到達す るともはや決定論的記
8 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第12号 2008年3月
述 はで きな くなる。 なぜ な ら系に存在す るゆ ら ぎの型 がその後、系がたどる分岐 を選択するこ とになるか らである。 こうして、系が次々に系 を生 んでい く様 は、Jantschのい う自己創 出性 (autopoiesis)に重 な る。本論 の実験 が研究 局 面 をつないで継続 した仕組み もそれによって説 明で きると考 えられ る。
(2)触媒機能が引 き起 こす創発
社会 における対象性の破れのひ とつ をが、本 研究 におけるマク ドナル ド化社会 か らポス トマ ク ドナル ド化社会への価値観転換 が もた らすゆ らぎと考 えれば、新 しい価値観 によって求め ら れ る環境 を模索 し、環境 との相互作用のなかか ら生活領域の課題解決 を図 ろうとす る動 きが、
非平衡状態である。 そ して、既存の社会価値 と しての平衡状態 と新たな社会価値 としての非平 衡状態のせめ ぎあいのなかか ら社会 が課題解決 の限界突破 をす ることが開値の突破 と定義で き
よう。
そ う した社会進 化 を促進す る役割 が触媒 で あ る。 プ リゴ ジ ンとス タ ンジェ‑ル は さま ざ まな 自己組 織 化 が 出現 す る基 本 条 件 は触 媒 作用 に よる とい って い る15)。 この点 につ いて Jantschは開放 的 な進化の展 開 とともに自己組 織 化 が 自発的 に進 む最 も単純 な例 で あるとす る。 さ らにJantschは、PrigogineとGransdorff を引用 し、 この種 の構造 が自発的 に形成 され るためには、周 囲 の環境 とのエ ネル ギ ー、物 質交換 に関す る開放性、平衡 か ら遠 く離れ た 状態、 反応 鎖 にお け る、次 に説明す るよ うな 自己触媒 (autocatalysis)的、および相互触媒 (crosscatalysis)的ステ ップの存在 が必要 であ ることをあげている。
自己触媒 とい うのは反応 に加わる分子の うち、
自分自身 と同 じ分子 をつ くるために自分 自身 を 必要 とす るものであ り、相互触媒 とい うのはま ず、別の中間分子 をつ くった うえで、 自分自身 をつ くるもの を指す。 これ らの要件がそろうと、
結果 として与 えられ た基準値 との差 を消すので
はな く、逆 にそれ を増大 させ るような行動 が起 こる。世界の人口爆発やその他の成長要 因 を惹 き起 こすのはこれであるが、同時に創造行為の 基本要素 と考 えられている。
Jantschの い う自己触 媒、相互 触媒 には、論 者の関与 した商学公連携事業においては、ある 場合には学生、ある場合 には中間媒介者、ある 場合 にはセ レンデ ィピテ ィ発掘装置 によって発 見 された革新的アン トレプレナーが当てはまる。
学生の役割はまさに自己触媒であ り、社会組 織 に投げ込 まれ ることによって、平衡状態 を非 平衡化 させ る因子 として機能す るのである。 ま た、中間媒介者 は、学生 を平衡組織 に投 げ込む とい う意味で相互触媒であるとともに、学生 と ともに平衡状態 に飛び込み、非平衡化への科学 反応 を促進す るのであれば、同時に相互触媒で あるといえよ う。また、K市におけるセ レンデ ィ ピテ ィ発掘装置によって発見 されたアン トレプ レナーは、学生 とは別の意味で平衡状態の組織 にポカ リと空いていた空席に飛び込んだことで、
組織 を動態化 させ た存在 としての自己触媒であ る。
いずれに して も、社会価値のゆ らぎに応 える ひ とつの手法 として、商学公連携事業 は社会 に よって選択 されたといえよ う。社会 は大学、学 生 とい うこれ までの自分たちが築いた平衡状態 にはない機能 を自己治癒方法 として、本能的に、
自身に投入することを選択す ることで、 自身を 再生成 し、 また大学などの教育機 関は座学 によ る知識詰め込みに変わ る体験学習 としての学び を、地域に求 めることによって教育 の再生成 を す る機会 を得た。
そ うした双方のニーズが絡み合 って触媒機能 を成立 させた。すなわち、触媒機能の考 え方に 拠れば、商学公連携事業がここ数年間で水があ る温度 にいたって急にた くさんの細かい気泡 を 生 じて沸 き立つ ように、全国各地で互 いに図 る ことな しに多発す るに至 った本源的な仕組み を 説明す ることがで きる。
このように社会 その ものが自身の秩序の創造
的破壊 をもとめた結果、中間媒介者の個人的意 図を超 えて、社会その ものが健全性 を目指す未 来図に向か うとい う設計意図 をは らんで、 さま ざまな地域で、 さまざまな形 をとって自己組織 化 した。それは本継続研究が さまざまな研究局 面で課題 として きたところの、計画 (必然) と 創発 (偶然) とい うふたつの仕組みのせめぎあ いか ら生 まれ た、 よ り上位概念 と しての創 発 (emergent)の実態である (iji6).
2)散逸構造 と触媒機能がもた らす自己設計化 この過程 を具体的にす るため、再度、研究局 面3を通 して整理 してみ たい。研究 局面3で は K市商工会主催 ビジネスコンテクス トをセレン デ ィピテ ィ発掘装置 と置いて、発掘 されたア ン トレプ レナー、学生 を、中間媒介者 を触媒 とし て、異能集団 とのマ ッチ ングによる組織循環の 変容のなかか らモノとサービス機能が成果 とし て もた らされた。
ここでは、その論理づけの枠組 として、サー ビスの付加価値生成 メカニズ ムに注 目したい。
Enis,Roering16)はサービス機能 を有形財 (核製 品) と無形財 (製品差別化戦略、マーケテ ィン グ ミックス戦略、潜在的製品 としての環境保持 力や社会貢献力) を統合 した便益の東 (bundle ofbenefits)と理解す る。一方、フォレッ ト】7)は、
組織 は導 き方次第で、全体の生 む成果 は構成部 分の単 なる合計でな くそれ以上の価値 を持つ と す る考 え方 を提唱 した。両者 を統合すれば、 も のづ くりとい う財物の可視化 を協働で進めるこ とで、水面下の不可視のサービス価値 が増分す る仕組み を導 くことがで きるとす る。
次に、組織循環の変容に着 目すれば、セレン デ ィピテ ィを未整理の循環 に投入す ると、協働 の誘 発 によって関係性 が整理 され る。 それ に よって空席 がで きるとこれ まで応 分の能力 が あったにもかかわ らず、場に恵 まれなかったセ レンデ ィピテ ィが、 ごく自然 に放 りこまれ る。
これは発掘装置 を仕掛けた側 か ら見れば、あた か もそれがひ ょいと飛び込んで きたような印象
を受 けるが、いずれに して もそれによって連結 組織全体の活性化 が起 こる(18)。潜在化 してい た関係性 が ものづ くりに向けて自己組織化する。
絡 まりあって意味 をな さなかった関係 が再統 合 され、その過程で有用な選択 と無用な選択の 見分けが参加者 に可能 となる。 この関係 はイン フォーマルな構造化 (セ レンデ ィピテ ィが もた らす柔 らかい組織、創 発 された組織、 カオスの 状況) と、 フォーマルな構造化 (既存の固定的 組織、 目的追求型の計画 によって拘束 された社 会通念、秩序 の状況) との相補 的な関係 として 進む。
それは速度 をはやめなが ら組織全体で 目的を 模索 しつつ、各 自がそこに向けての役割 を工夫 す る過程で、組織内部での計画 と革新のぶつか り合 いを繰 り返す。 その結果 として、 これ まで 想像 もつかなか った "第三 の解" (よ り上位概 念 としての創発)の発見 と "結束力の増大" と い う成果が付加価値 として もた らされ る。
これが、サービスの付加価値生成機能 を組織 循環か ら説明す る支 える仕組みである。その結 果、K市 とい う自治体のなかで小規模 なが ら散 逸構造が起 こり、組織の健全な整理統合 を促 し、
自己組織化の力が増す とい う関係が生成 した。
ここで自己組織化 と自己設計化の違いについ て簡単 に言 及す ると、海老滞 19)は、 ̀̀自己組織 化は混沌 としたなかか ら自分 自身の自律的能力 によって自己 を創造 した り、変化 させた りす る ことにかかわ る" とす る。そ して自己設計化は、
"参加者全員 が全体状況 のなかで 自己の役割 を 認識 し、自然発生 的に自己の役割 を設計 してい
く自己組織化のひ とつの形態" としてい るO そ うであるな らば、論者がかかわった研究局 面3、及び それ以降の実験、 また、 日本 各地 で 同時期 に起 こった商学公連携事業 に共通 に見 ら れ る、ある意味で、設計思想 をもった自己組織 化 を自己設計化 と呼ぶ ことが可能である。 その 場合の自己設計化は、環境 との相互関係のなか で求め られ るポス トマク ドナル ド化社会のニー ズ としてのサービス機能の創 出が、触媒 を機能
10 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第12号 2008年3月
させ ることによって活性化 され、 それが引 き起 こ した散逸構造 によって もた らされた もの と考 えることがで きる。
6. 結論 実験 とその論理 づ けの相互 架 橋 として
プ リゴジンとス タンジェ‑ル は物理科学の諸概 念 を根底 か ら見直 し、組織 は平衡状態 において単 にそこに "在 る"状態 と、非平衡 か らカオスを通
して散逸状態 を誘発す る "成 る"状態 を繰 り返 し、
統合す ることで進化す ると述べてい る。
これ を踏 ま えるな らば、本継 続 研究 は2003年 にM市 における小規模 な "在 る" と "成 る"の繰 り返 しを経 て、第‑の分岐に到達 した.一端 は途 切れ たかに見 えたが、空間の異質性 を連鎖 させ て 隣接す るK市 において ビジネスコ ンテス トを通 し た ものづ くり支援 を経て、第二の分岐に到達 した。
そ して今度 は立川市 に拠点 を置 く東京都商工会連 合 会 を拠点 に東京都の全商工会 を包摂 した新 たな カオスに向かお うとしてい るO この一連のつ なが りは必然化行動、偶然化行動、偶然の必然化行動 を通 して次の よ うに説明で きる。
①必然化行動 で は、計画 され た 目的に向 けて、
組織や人間の行動 が受動的、静態的に展 開 され る。
目的追求の ための組織 が単 にそこに "在 る"状況 を指す。(む偶然化行動 では、事前 に計画 され た 目 的追求行動 に対 して、人間がセ レンデ ィピテ ィを 発見す るための仕組み を組み込 むことで、偶然の 探索や発見 が誘発 され る。 これが創 発行動である。
目的追求行動 に対 して、ほかの組織や人間による、
能動的、動態 的行動 が "ゆ らぎ" として ランダム に生起 す る。単 にそこに "在 る"が動 きを伴 った
"成 る"への変容 を遂 げる。 プ リゴジンによれば、
beingか らbeco血ngへ の発展 行動で あ る20)0③ 偶 然の必然化行動では、発展行動が、再度、 目的追 求行動 と連動 し、計画 と創発の同時実現行動 を起 こす。静態 と動態 が ランダムに時間 を共有す るこ とを本論では共時性 と定義す る。共時性 を通 して、
企業 も旬 合 した さまざまな社会組織 で同時多発的
に、偶然化行動、 そ して偶然の必然化行動 が起 こ る。社会性 を伴 った自己組織化や 自己設計能力 を 行動過程思想 と して もつ組織 が共 同体 と して生成 され、特定の組織 や地域 とい う閥値 を超 え、挑戦 的な しか も未知の段階に向か う。
フォ レ ッ ト2‑)は組織 の動態 的管理 には科学 的 管理 と仕事 を超越す るサー ビス動機 が ともに必要 であるとす る。
この場合 の科学 的管理 とはテ イラーが提唱 した 単 なる標準化 を通 した固定 的標準化 を意味す るも のではない。実験 とその論証 を通 して知識 を整合 す ることか ら一定の標準が生 まれ るので、それに よって成 され る体系づけを科学 ととらえよ うとい う考 え方 で ある。
その基本的な姿勢 として、実験 、論証か ら学び 取 る継続 的な過程 か ら、人間は責任的態度 をとる ことがで きるとす る。 その場合 の責任的態度 を支 配す るのが、私的な利益 のみでな く社会 に必要 な もの を互 いに与 え合 う機能 と してのサービスであ る。すなわ ち、 フォレッ トはサ ー ビス とはた とえ ば天然資源の野放図な開発 を管理す るといった意 味での能率 的な管理機能で あ り、同時に社会貢献 とい う意味での奉仕機能で あると述べている。
以上 を総括すれば、目的論 に基づ く、事前 に計画 された 目的追求行動 としての静態的組織 が、 フォ レッ トの提示す るよ うな動態的管理のための機能 に出会 うと、創 発行動 を通 し、組織全体が動態的 組織へ と変容す る仕組みが理解 で きる。 さらにこ うして生成 され た動態 と、新 たに遭遇す る静態の 共時性 が偶然の必然化行動 を繰 り返す道筋が見 え て くる。す なわち、組織 が この循環 を獲得すれば 途切れ ることな く質的改善 を通 した持続性 に向か う共同体の生成過程 をた どることが可能 となる。
以上 を通 して、セ レンデ ィピテ ィ発掘装置が誘 発す るのはマク ドナル ド化社会の全否定ではな く、
その動揺、創造的破壊 、再創 造の過程 であ り、成 果 としての、環境の保持や社会貢献への共感 に基 づ く補 い合 うための分業であ り、付加価値 の創出 であるとい うことがで きる。
そ うした関係性 のなかで偶 然の必然化行動が異
質 な空間の人間の共感 を得 られ るな らば、空間 を 超 えた協働が誘発 され る。計画 と創発の共時性 が 共振化 を起 こし、同 じコンテクス トを供 え、実現 形態は生活領域 ごとの独 自資源 によるために、異 なるコンテ ンツを持つ複数の動態的組織 があちこ ちにふつふつ と、誕生す る。それ らは散逸構造 を 形成 し、空間の異質性 を超 えて、いきな り大 きく 増殖す る可能性 を学む。
これ をn次の間値 突破 と位置づ け る。 それ は、
ミクローマクロ ・リンクの理論に則れば22)、低次 のマクロが複雑性の縮減 により高次の ミクロに進 化す るとい う循環 を繰 り返 しなが ら組織 が組織 を 生むオー トポイエーテ ィツク ・システムに相当す る。以上すべての考察 を通すな らば、自己設計化 す る共同体の本質は、国境 を超 える可能性 を学み なが ら生活領域 を過不足 な く充 たす進化過程が示 す、閥値突破の繰 り返 しとして整理す ることがで きる。
【 巻末資料】
※1 東京都武蔵野市の多 目的スペ ースの活性化 プロジェク ト
1.概要
1)実施期間 2003年10月か ら2004年9月 2)事業主 体 武蔵野市 (以下、M市)商店会
連合会 3) コンセプ ト
M市西部地区における、富士見通 り商店会 (以下、F商店会) (路線商店街、商店数58) にM市が開設 した多 目的スペース活用による、
地域サービス創出事業。総合学園東京工学院 (以下、T学院) (東京都小金井市) の学生約 100人の体験学習の場 を同所 に設定 し、商店 会関係者、行政関係者、教育関係者、地域住 民等、総計300人 による、 コ ミュニ テ ィの自 己組織化 を実験。地域 にとっての必要サービ ス機能 を創出 し、量販店 との競合、後継者不 足 などを課題 とす る商店街の衰退化対策事業 を推進
4)実践事業
① チ ャレンジシ ョップ 「手打ち讃岐 うどんの 店舗」の設計 と運営 (2003.12月 )
① イメージキ ャラクター公募事業の設計 と実 施 (2003.12月〜2004.2月)
③祭 りの設計 と実施 (2004.7月) 2.成果
1) 実践活動か らの共通軸の発見 :既存 コ ミュ ニテ ィへの学生 とい う異能集団の組込みによ る地域 コ ミュニテ ィの自己組織化の促進。そ れは秩序 を壊 し次の秩序 を創 出す る組織生成 過程 その ものであるとい う発見。
2) 活動の定着 とその限界 :F商店会 を拠点 と す る学生の触媒機能は、終了 したが 「さぬ き うどんチ ャレンジシ ョップ
」
「イメージキ ャ ラクター」
「祭 り」 は商店会 関係者 と地域住 民により継承 され、地域 に定着。 しか しそれ は当所設計 されたコンテ ンツの模倣の領域 に とどまり、学生 が参加 しな くなった以降、商 店会 と地域のせめ ぎあいか ら必要 なサービス 機能の創出が図 られたか どうか とい う意味で は、 コンテクス トの レベルでのシステム的発 展 は見 られないのが現状。※2 東京都小金井市商工会主催 ビジネスコ ンテ ス トを通 した実験
1.概要
1) 実施期間 2006年10月‑
2) 目的 地域 の独 自資源 の連携 に よ る生活 領域 ブラン ドの創 出
3) コ ンセプ ト .M.ウエ ーバ ーによる合理化 研究 を軸 とす る社会 モデル として提示 された
『マク ドナル ド化の世界』 (リッツア,1993)1) において、次に創 出 され るべ き社会 と して提 示 された人間性復活 を志向す るポス トマク ド ナル ド化社会 が 目指す "衣"の生活設計 4) 社会 情勢 か ら観 た必然性 中小企 企業庁
による中小企業重点施策 (2007年度) "新連 携"支援 (根拠法 :中小企業新事業活動促進 法) との共通性
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5) 事業主 体 東京都小金井市商工会 (以下K 市商工会)
6 ) K
市 に お け るE
社 の 事 例K
市 商 工 会 は 2006年度 よ り、上 記 目的 に よ る ビ ジネス コンテス ト (第‑ 回 :2006年10月開催) を開始。
本研究 は第一 回優秀賞獲得企業 (E社。同社 は ビジネスコ ンテス トが発掘 したセ レンデ ィ ピテ ィで、 ア ン トレプ レナ ーで あ るN氏 に よって2000年 に創 業。2006年7月、K市 に転 入) をコア企業 に構成。同社転入趣 旨は小金 井市 に人間性 回復の ビジネス展 開の風土 とし ての可能性 を感 じたため (N氏 (33歳))0 E 社の伝統 的な帆布製職人前掛 けを現代的に再 生 す る ビジネス セ ンス と製 造技 術、東 京 女 学館大学 (以下、T女学舘大学)学生 (本件、
支援 コンサル タン トである論者 が指導)の先 入観のないデザ インカ、商工会 の組織力 を連 携。
7) 支援体 の組織規 模 E社 (従 業 員3名)、T 女学館大 学 (国際教養学部学生19名)、K市 商工会 (組合員数1470名/商店全数17) 8) 支援 内容
① 月に1回の フ アシ リテ ‑テ ィング (連携体 全体の体制確立支援)
② コア企業 に向けての製品開発支援
③ 学生 に向 けての戦 略立案、 な らびに ア イ デア創 出能力向上指導
9)支援 コンサル タン ト 1名 (中小企業診断士、
T女学館大学非常勤講師) 2.成果
1) 有形財 商工会ユニ フォーム "あ きん どベ ス ト"の開発 (本 件 を含む 「K市 シナジース キーム事業」 は東京都主催 「シナジ‑スキー ムコンテス ト」に採択 された(2008‑2011年, 支援金1500万円))
2) 無形 財 (サ ー ビス機 能) E社 に は新 分野 開拓技術、学生 には職業能力開拓、商工会 に は会員結束 と関連製品の開発。市民 には小金 井 に暮 らす楽 しみ と誇 りを提供す るサービス 機能の創出。
※3 K市産業振興 プ ラン改訂,及び改 訂版、新産 業振興 プランの実施運営
1.概要
1)実施期間 2007年10月〜〜2033年
2 )
目的K
市産 業振興 プ ラン改訂、新産業振 興 プ ランの実施3) 事業主 体 東京都小金井市経済課 (以下K 市経済課)
4) 改 定 委 員 会 の 組 織 規 模 学 識 経 験 者 (2 名)、商業 関係者 (4名)、工業 関係者 (3名)、
公募 に よる市民 (2名)、行政 関係者 (1名)、
市職員 (1名) 5) 事業 内容
① 月に1回の全体会議 (連携体全体の体制確 立 に向けての協議等)
2.途 中成果
1) 新 たな中間媒介者の発見
これ まで中間媒介者 (触媒) の役割 を務 めて いた論者 もふ くめて、"構成 員 を使 い こなす"
力 を市経済課 (具体 的にはU主査 が中心 的触 媒) が発揮 し始 めた。
2) 会議回数 を重 ね るごとに、「推進組織づ く りには コア会議 が必要 で あ り、 その 内容 は、
̀̀会議 を進 めなが ら固めてい くことにな るだ ろ う」 とい う過程 アプローチ的考 えが複数の 委員間にみ られ るよ うになる (動か してい こ うとい う意志 が "ゆ らぎ" と して現 出)。行 政 はゆ らぎをすばや くキャ ッチ し、 コア会議 の基本案 を構成員各 自の提案 を統合 して作成。
構成 員に再問いかけ。 自己組織化 に向 けての キ ャッチボール を行政 が触媒 とな り誘導。
※4 東京都商工会連合会 による商学公連携事業 1. 概要
1)実施期間 2007年10月‑
2)実施主体 東京都商工会連合会
3) 目的 東京都商工会 (多摩地域 、及び島唄 地域 に お け る27商工会) を統 合 した商学 公 連携事業の活動仕組み案、事例案の創出) 4) 委員会の組織規模 学識経験者 (1名)、教
育機 関 (1名 )、商業 関係 者 (2名 )、商 工会 関係者 (3名)、東京都 中小 企業振興 公社 (1 名)、実施 機 関事務 局 (2名)、 フアシ リ テ一夕 (1名)
5) 活動 内容
① 月に1回の フアシ リテ‑テ ィング (連携 休 全体の体制確立 に向けての協議等)
①事例調査 (注 千葉県鴨川市商工会の食 に よるまちお こ し事業、東京都小金井市の水 と 江戸野菜 によるまちお こ し事業等)等 2.途中成果
1) 調査者 間における 「中間媒介者 (学生指導 者 を含む) とい う触媒の機 能分析 と役割の明 確化の必要性
」
「仕組み と しての場 の構築 必 要性」の再認識2) K市での取 り組みは ミクロ領域。 それ を統 合 した都商連の取 り組みは、マクロ領域。両 者 は相互 に影響 しあいなが ら、同時多発的に 湧 き上 が るよ うに、環境 を取 り込みなが ら(ポ ス トマク ドナル ド化社会 のニーズに応 えなが ら)、現在進 行 中で あることを、調査者 間で 再認識。
【 注】
(1) セ レンデ ィピテ ィとは1754年 に イギ リスの 文筆家H.ウイポ ールが創作 した造語で、"当 てに していない もの を偶然 に うまく発見す る 能力" とされ る (滞泉重
一
打昂然か らモ ノを 見つ け出す能力』角川oneテーマ21,12ページ, 2002.)。 これが転 じて "思いがけない拾い物"を合意す る。
(2) 同市 は2002年 か ら2007年 に実施 した現行 の 産業振興 プランを状況変化対応 を図 るために 時限3年 をもって改訂す ることとなった。
(3) Tichyに よれ ば、 ネ ッ トワークは フォーマ ル に構 造 化 され た (prescribed)計 画 され た組織 と、 イ ンフ ォーマル に構 造 化 され た (emergent)創 発 され た組織 との相互関係 の なかで出来上 が り、それ は さまざまな変形パ
ター ンを持つ とされ る。
( 4 )
もともと商学 公連携 事業 は関西 の大学 か ら 発祥 し、関東圏、特 に東京都 で商学公連携事 業 が積極化 した時期 は2002年以降である。(5) 全 国の商学公連携実施大学 数、及び事業数 の詳細 な数字 は把握 されてい ない。おお まか な数字の類推 は 日本経済新聞社発行のデータ ベ ースに拠 る関連 記事 で1994年 以 降75件 あ げ られてい ることが参考 とな る (1994,1件、
1998、1件、1999、2件、2000,7件 2001, 9件、2002,13乍巨 2004,24件、2005,8件、
2006、25件) (出所 「平 成18年 度 商 学 公 連携事業事例調査報告書」東京都商工会連合 会、2007年)0
(6) (5)で示 した 「平成18年度 商学公連携事 業事例調査報告書」 は、活動 における連携 の 重要性 を指摘 す る。理由は本文 の次の記述 に よる。 「関西 (主 に近畿地方 ) での取 り組 みは調査事業 が多 く、大学単独の取 り組みで あったのに対 し、関東地方 の場合 は多様 な組 織連携 を背景 に展 開 されてい ることが特徴的 で あ る
」
「近畿地方 において は調査事業 が多 く (中略)教育研究活動 が母体 となる場合 は 情報発信源 は大学 とな り、商業者 、公的機 関 か らの情報発信 が従 となる結果、社会 的認知 度 も高 ま らない。 (中略) 関東 で は連携 す る 商業者 、大学、公的機 関が まず連携事業 の企 画 を検討す る組織 を形成 し、 その うえで具体 的な振興策 が立案 され るとい うプロセス を経 てい るよ うに思 われ る」
「学生 の研究活動 の 一環 と して連携事業 が開始 され、 そのひ とつ の成果 と して さまざまな振興 策が提案 されて いる と思 われ るが、 (中略) 関東 の大学 の取 り組みでは、連携す る商業者 、大学、公的機 関の合意の したで事業 内容 が決定 され ると考 えられ るため、組織 だった情報発信 によって・社会 的な情報提供効果 が高 くなると考 え られ る
」 。
14 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第12号 2008年3月
【 参考文献】
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4)リッツア.G.正岡寛司訳 『マク ドナル ド化の世 界』早稲 田大学出版部,2003年,6ペ ージ。
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7)辻朋子 「サー ビス コ ミュニ テ ィのデザ イ ンに おける理論化への試み 一生活領域 の有機 的 な経営概 念 とその必然性
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15)ブ リゴジ ン,I.,ス タンジェ‑ル,Iリ伏見康治,伏
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22)Martin,K.,Tsai,W ,op.°it.,p.87‑110.
謝辞 :本論 の執筆 には社会人大学 院生 として在籍 す る神奈川大学大学院経営学研究科博士課 程 の指導教授である海老揮栄一先生 に貴重 な教 えを頂 きま した。深 く感謝 申 し上 げ ま す。