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IFLA 災害への準備と計画: 簡略マニュアル International Preservation Issues No.6

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(1)

国際図書館連盟 資料保存コア活動

2006年

IFLA 災害への準備と計画: 簡略マニュアル

International Preservation Issues No.6

ジョン・マッキルウェイン マリー=テレーズ・バーラモフ監修

国立国会図書館訳

2010 年

仮訳

(2)

IFLA Disaster Preparedness and Planning: A Brief Manual

(International Preservation Issues Number Six)

by John McIlwaine

University College London

Under the direction of Marie-Thérèse Varlamoff IFLA-PAC Director

Published 2006 by the International Federation of Library Associations and Institutions (IFLA) Core Activity on Preservation and Conservation (PAC)

©Copyright 2006 by IFLA-PAC

(3)

序文

IFLA資料保存コア活動(IFLA Preservation and Conservation Core Activities: PAC)の主要な目標 は、「図書館や文書館の、あらゆる形態の刊行及び非刊行資料が可能な限り長期間、利用可能な状 態に保存されることを保障すること」である。

蔵書の劣化を遅らせる様々な予防的措置のなかでも、資料防災計画における予防措置には高い優 先順位が与えられる。

最近の出来事を見ると、武力紛争や自然災害は減少するどころか、逆に、深刻な増加傾向にあるこ とを、我々は認識しなければならない。

IFLA/PACは、文書遺産に対する脅威について意識喚起するために、ブルーシールドの枠組にお いて会議、セミナー、ワークショップなど多数のイベントを開催し、参加してきた。

2003年には、世界の国立図書館を対象に、資料防災計画があるか否かを調査した。結果は、憂慮 すべきものであった。177館のうち39館しか資料防災計画を持っていなかった。28館は防災計画を策 定する予定はあるが、策定に至っていない理由として、モデルとすべきものが無いことを挙げていた。

これは、この問題に関する出版物、マニュアル、小冊子が多数存在していることを考えると、全く驚くべ きことである。とは言うものの、それらの大半は英語で書かれたものであり、また、その中には内容が極 めて高度であるために、限られた資源で運営されている小規模な機関にはあてはめることができないも のもある。そういうわけで、IFLA/PACは、資料防災計画を策定する際に考慮すべき主要な点に焦点 を当てた基本的マニュアルを作成することとした。すなわち、リスク評価、災害リスクの管理、災害時対 応のための備え、対応、復旧がこのマニュアルで採り上げる主要な段階である。まず初めに3ヵ国語で 刊行するが、世界中のできるだけ多数の機関でこのマニュアルが利用されることを、また、他の多数の 言語に翻訳されることを期待している。

このマニュアルは、図書館・文書館の世界で働く人々から成る少人数のグループによって作成され た。IFLA資料保存分科会の前議長のJohn McIlwaineには、彼の経験と専門的知識をもってオリジ ナルの英語版マニュ アル を執筆してくれたことに何より感謝し たい 。ま た、国際 文 書館評 議会

(International Coucil on Archives)において保存を担当しているTed Steemersに対しても、彼の 的確なアドバイスに感謝したい。最後に、フランス語訳とレイアウトと編集を担当したCorine Koch、ス ペイン語訳を担当したSolange Hernandezに感謝する。

(4)

マリー=テレーズ・バーラモフ IFLA/PAC国際センター長

(5)

目次

序文 ... 3

1 はじめに ... 7

1-1 計画策定 ... 8

1-2 対応 ... 8

2 リスク評価(災害を引き起こす可能性のある原因を確認する) ... 11

2-1 リスクを評価する ... 11

a 建物の外部から来るリスク ... 11

b 建物の構造や設備によるリスク ... 11

c 個人や集団による人為的な妨害行為によるリスク(放火、破壊行為、騒乱、 テロ) ... 12

2-2 既存の対応手順を評価する ... 12

2-3 火災と水害 ... 13

3 予防と保護(災害リスクを管理する) ... 14

3-1 建物の周辺 ... 14

3-2 建物の構造 ... 15

3-3 セキュリティ ... 15

3-4 書庫システム ... 15

3-5 保険 ... 16

3-6 水害に対する保護 ... 16

3-7 火災 ... 17

a 保護 ... 17

b 検知 ... 17

c 消火 ... 17

4 準備(対応の準備をする) ... 19

4-1 資料防災計画を作成する ... 19

4-2 災害対応チームメンバーの役割 ... 19

4-3 資料防災計画の利用可能性 ... 20

4-4 計画の更新 ... 20

4-5 職員研修 ... 20

(6)

4-6 優先的に救出する資料を指定する ... 21

4-7 資料防災計画の実施に役立つよう文書の維持・更新を行う ... 22

4-8 外部の機関及び個人との連携を確立・継続していく ... 22

4-9 救急用設備の整備と維持 ... 23

4-10 当座の危険準備金を手配する ... 24

4-11 「復旧」作業のための場所を特定し、場所の確保のために適切な手配を行 う ... 24

4-12 災害発生後、できるだけ早く、利用者に対するある程度のサービスを再開 するための様々なシナリオを描く ... 25

5 反応と対応(災害発生時) ... 26

5-1 最初の対応 ... 26

5-2 主要な災害対応 ... 26

5-3 救出 ... 27

a 状況とニーズに関して、再評価する ... 27

b すべての活動と支出を記録しておく ... 27

c 環境を安定的な状態にする ... 27

d 水損資料の移動の準備 ... 27

e メディアとの関係 ... 28

f 職員、作業要員への支援 ... 28

g 水損資料を事前に選定した復旧作業場所に移動させる ... 28

h 復旧エリアの資料は処理方法によって分ける ... 29

i 水損資料の処置 ... 29

6 復旧(正常な状態に戻すこと) ... 31

6-1 利用者へのサービス ... 31

6-2 建物 ... 31

6-3 蔵書 ... 31

6-4 保険 ... 31

6-5 災害の分析 ... 32

付録 ... 33

(7)

1 はじめに

災害は、天災であれ人災であれ、「予期しない、真に破壊的な結果をもたらす出来事」である(Hilda Bohem, “Disaster Prevention and Disaster Preparedness,” Berkeley, CA, 1978)。図書館と文 書館は、現実に起こりうる災害に備えるために、自館の状況や資源を分析し、資料防災計画を策定す ることにより、あらゆる努力をする必要がある(この資料防災計画は、多くの章から成るかもしれないこと を心得ておくこと。このガイドラインでは、災害時の対処に関する計画について後述するが、それはす べて一つの計画プロセスの一部である)。

資料防災計画の基本的な考え方は、以下のとおり。

―リスクを可能な限り最小限にすること。

―災害発生時の対応効率を最大化すること。

効果的な計画を策定するには、以下のことが必要である。

―起こりうる主な危険要因とその相対的可能性について、細心の注意を払って評価を行うこと。

―既存の資源や災害対応手順、及びそれらについて組織の予算や人員構成の中で、どこまで強 化し、改善することが可能なのか、ということについて、現実的な認識を持つこと。

―資料防災計画において勧告されている事を今後、そして将来にわたって責任を持って継続的 に推進し、実施すること。

資料防災計画を有効なものにする上で最大の問題の一つは、その計画を実施する必要がないかも しれないということである。要するに、資料防災計画を実施する必要がないという状態で、職員の熱意、

財政支援、危険要因と優先順位に関する評価を何年間も繰り返し行動しなければならないということで ある。

資料防災計画を策定する人たちは関係者全員に対し、資料防災計画が機関存続のために極めて 重要な役割を持っているということを、納得させなければならない。関係者全員とは、図書館や文書館 の専門職員だけではなく、すべての補助スタッフ(清掃員、運搬人、門衛等)と、上部機関や資金源を 提供する団体の上級管理職も意味する。資料防災計画は、これらのすべての人々が、その重要性を 信じ、なおかつ信じ続ける場合に限り、効果を持つことである。

(8)

一つの資料防災計画がすべてのケースに当てはまるわけではない。

各機関の状況は極めて多様である。そうした状況の違いは資料防災計画の策定のあり方について、

例えば以下のように影響するだろう。

1-1 計画策定

―計画は、新しい建物に関するものか、既存の建物に関するものか?

新たに建設中の建物を対象とした資料防災計画を策定する機関もあるだろう。その場合、建設中に 多くの要件を設計に反映することが可能だろう。

しかし、既存の建物を対象とした資料防災計画を策定するケースの方が多いだろう。その場合は、

実施可能なことは建築・工学上の要件と財政上の条件に制約されるだろう。

―計画は、単独の建物が対象か、または建造物の一部が対象か?

計画の対象が、図書館、文書館が占有する単独の建物である場合、計画策定に際しては、その機 関の管理責任者に自由裁量があるだろう。

また、

図書館、文書館が単独で入っている建物が、物理的には別の隣接した建造物の一部である場合、

隣接する建物の状況も考慮に入れる必要があるだろう。

また、

図書館、文書館が、大きな建物の中の一区画または一連の部屋である場合、計画の詳細のほとん どは、図書館、文書館を収容している建造物の状況によって決められるだろう。

―組織としてどの程度の独立した決定権を有するのか?

図書館、文書館が独立した運営組織であり、他の意見を求めることなく計画決定ができる場合もあ る。

また、

独立した運営組織ではなく、すべての決定や実施に際し、より大きな行政機関との調整が必要とさ れる場合もある。

1-2 対応

現実の災害状況は様々であろう。各機関がどのように災害対応計画を実施し、復旧作業を行うこと

(9)

ができるかは災害の状況によるであろう。

―災害は特定の場所だけに起きたものか、一定の地域に及ぶものか?

災害が一つの機関にのみ限定される場合、例えば、洪水や火災がその機関の建物内部で起きた場 合、災害復旧計画の実施に当たっては、計画において指定した様々な機関や専門家からの助力や支 援を期待できるだろう。

また、

ある特定の機関において発生した災害が、地域的災害や全国的災害の一部である場合、例えばハ リケーンやサイクロン、地震、津波の場合、救急サービスは広範囲における人命や財産の救出で手一 杯になり、電気などのサービスは何日も利用できないだろう。また、その機関の職員も自分自身や家族 や財産のことにかまけないわけにはいかないだろう。

―機関は、市街の中心にあるか、それとも遠隔地にあるか?

市街地の中心にあって、救急サービス(消防隊や救急隊)がほんの2、3分の距離にあり、その他の 助言や支援もすぐ近くで得られる機関もあるだろう。

また、

救急サービスやその他の支援を受けられるところから相当の距離で離れた所に位置する機関は、一 層長い期間にわたり、一層多くの自助努力によらなければならないだろう。

―従って、以下のことは大変役立つだろう。

 他機関が作成した資料防災計画を調べること

 他機関が実際の災害に際してどのように対応したかという記録を読むこと

 既存の資料防災計画マニュアルが示す助言に従うこと(末尾の参考文献一覧には、数多くの 優れた例を挙げた)

以上を踏まえるとして、各機関は、それぞれの持つ特定の事情や要件について綿密に調べた上で、

各機関の特定のニーズに即した資料防災計画を策定すべきである。

このガイドラインは、倣うべき特定のモデルを示そうとするものではない。そうではなくて、このガイドラ インは各機関がそれぞれの計画を策定する際に考慮すべき問題点を示すものである。そうした問題点 について、各機関は自らのニーズや状況に応じた答えを出すべきである。

各機関は「最悪のケース」に対するシナリオを用意しておくことが最善である。そうすれば、より限定 的な出来事に対応するのも、対応の度合いを小規模にするだけのことであり、容易になるだろう。

(10)

実際、数多くの災害が図書館や文書館が閉館中に起きていることを覚えておこう。警報装置が1日 24時間、必ず稼動し対応が可能なようにしておくべきである。

このガイドラインは、ここで示している提案の多くを実施するには、多数の国において資源が不足し ているということを十分踏まえたものである。従って、提案における言葉の使い方は、次のように区別す る。「必ず行う(ensure)」は、「その提案を実現するために、あらゆる試みを行う」ことを意味する。そして、

「検討する(consider)」または「可能ならば(if possible)」という言葉は、「提案は重要だが、費用の面 で対応できない場合も多い、だが、費用の面で対応できれば実施可能であるということを認識してい る」という意味である。

(11)

2 リスク評価(災害を引き起こす可能性のある原因を確認する)

資料防災計画を書く前に、すべての機関は、その機関と蔵書にとって最大の脅威となりうる事につ いて詳細な評価を行うべきである。また、そうした脅威に対応するために既に機関内に存在している仕 組みがあれば、それについても詳細な評価を行うべきである。リスクを確認し、リスクの発生する可能性 及び想定される重大性に応じた等級付けをするべきである。

2-1 リスクを評価する

様々なリスクに対する潜在的な物理的脆弱性を調査すると共に、知識に基づいて評価を行うこと。

a 建物の外部から来るリスク

下記の点に関して評価すること。

―機関の地理的位置とその地域の一般的な気候と地質的特質。嵐、ハリケーン、地震などの発生 頻度を検討すること。建物が以下の事に影響を受ける可能性を検討すること

 嵐による被害(近くにある木や他の建物や建造物に注意すること)

 洪水(近くにある海、河川、峡谷、また地域の地下水の水位にも注意すること)

 地震、津波、地滑り、噴火による建造物の被害

―近いところで行われることによって被害を与える可能性のある、以下のような人間の活動

 火災、爆発、汚染のリスクを伴う商業・産業設備(例えば、化学プラントや塗料倉庫)

 高速道路、鉄道、航空機の飛行経路

 騒乱やテロの標的となりうる施設(例えば、政府施設、放送局、軍事施設)

b 建物の構造や設備によるリスク

建物の材質について評価すること、特に屋根、ドア、窓、天窓、地下部分など、弱点となる可能性の ある部分の品質と耐候性に関して評価すること。

―以下の原因によって起こる火災のリスク

 電気回路やガス設備

 機械や設備(コンピュータ、複写機等)

 施設内にある実験室・製作室(資料保存、マイクロ作製用等)

(12)

 可燃性化合物(ガス・ボンベ、ペンキ、洗浄液、化学物質等)

注意: 所蔵資料のなかにナイトレートフィルム(すなわち、1890年から1950年までの間に作製され たあらゆるフィルム)がある場合、それらのフィルムを直ちに隔離し、専門家に相談すること。

―以下のような給水設備における水漏れのリスク

 屋根の雨どい

 給水管(例えば、手洗所や洗面所への給水管)と排水システム

 空調システム(冷房、暖房、換気)

 消火システム

―人為ミスや不注意によるリスク

 個人の喫煙

 水道の蛇口の締め忘れ

 請負業者による保守または新築作業

c 個人や集団による人為的な干渉によるリスク(放火、破壊行為、騒乱、テロ)

下記の点との関連において評価すること

―現行のセキュリティ対策と人の出入り

―地域の政情

―政治的または宗教的な観点から特にデリケートな問題とされる可能性がある所蔵資料

リスク評価は1回限り行えばよいというものではないことを忘れてはならない。先に例として挙げ た要因や状況の多くは、時が経てば変化するものであり、見直しを行う必要が生じるものであ る。少なくとも、年1回の評価を実施することを検討すべきである。また、特別な変化(例えば、高 速道路が開通した、隣接地に新たに工場が建設された、新たな重要コレクションを収集した、な ど)があった場合には、その影響を考慮し、直ちに見直しを行うことが必要となることを心得てお くべきである。

2-2 既存の対応手順を評価する

また、リスク評価の実施に際しては、機関内に既に存在する、災害予防・災害対応の仕組みと手順 のすべてについて、(及び、それらに現在責任を有する各スタッフ)を確認し評価することが必要であ る。

(13)

例として、以下の事項を挙げる。

―セキュリティ(例えば、建物への人の出入りの管理、建物内外のパトロール、閉館時間中のパトロー ル、警報装置を介した消火及びセキュリティサービスへの接続)

―保管設備(事務室と事務室への通路、既存の書架、キャビネ、戸棚、箱など)

―清掃作業(内部:事務室、書庫、文書及びその他の資料。外部:例えば、雨どいや平屋根などの 清掃)

―火災予防、警報と消火設備、職員研修(例えば、消防訓練)

そして、現行のスタッフ数、研修のレベル、機関の財源、地域内または国内の専門施設の活用や専 門技術者にお願いすることが可能かどうか、(あるいは、それらが不足しているかどうか)について、十 分に考慮しなければならない。

2-3 火災と水害

以下のガイドラインは、特に火災と水害の予防と復旧に関するものである。

火災は、図書館や文書館で最も頻繁に発生する損害の原因の一つである。火災は自然現象(稲妻、

電気系統の冠水、山火事)、又は人による攻撃(放火)によって引き起こされる場合がある。しかし、ビル 火災の大半は、内部の電気配線や設備の不調か、人間の不注意によって引き起こされる。

水害は、外的原因(河川、嵐、排水システムの氾濫)、内的原因(システム異常、地震もしくは乗り物や 木々などの激突で損壊し、発生する給水管の破裂)、または消火の際に使用する水によって引き起こさ れる場合がある。災害復旧に関する文献の多くは水損資料を移動、乾燥させ、復旧することに関するも のである。

2004年 のIFLA/PACに よ る 国 立 図 書 館 に お け る 資 料 防 災 計 画 に 関 す る 調 査 ( 参 照 International Preservation News, No.34, 2004 pp.23-38)では、回答者の61%が火災を最も起こ る可能性の高い災害として挙げており、次に41%が洪水を挙げている。

(14)

3 予防と保護(災害リスクを管理する)

予防とは、事故の発生を防止するための対策に関することである。

保護とは、事故が発生した際に資料の損傷を抑えるための対策に関することである。

リスク評価の実施によって、確認されたリスクの一覧表を作成する。また、以下のことに関連して注意 すべきことの優先順位付けも行うべきである。

―最も起こる可能性の高いリスク

―既存の建物の構造とシステム、及び既に実施している管理手順とを適合させる際に確認された不 備

以下に推奨する事の多くは、建物とその設備の定期点検の手配に関することである。すべての定期点 検についての詳細な記録は、後で参照できるように、また「弱点」や繰り返し発生する恐れのある問題 点を確認することができるように、必ず残しておくこと。

どのような行動をとるべきかについては、様々な要素に関連づけて検討するべきである。

3-1 建物の周辺

―洪水や地滑り、また、乗り物が建物に衝突した場合の衝撃をかわすか、和らげるために、防壁、排 水溝(排水路)、または、それと同様の構造物を建てることを考慮すること。窓やドアに、嵐の際に 下ろすシャッターが無い場合や、それと同様の装置が無い場合は、その設置を検討すること。

―水道と電力供給、下水と排水設備、高速道路整備などを担当する自治体や民間の機関が必ず定 期的な設備点検を行うようにすること。

―高い木(嵐の際に建物に大きな被害を及ぼす可能性がある)と灌木(破壊者の隠れ場所になり得る、

火災の危険がある)は、刈り込むか、除去すること。

―安全のために外灯を設置すること、既に外灯を設置している場合は点検し、適切なメンテナンスを 必ず行うこと。もし可能なら、そして適切と思われる場合は、安全のために周囲に塀を作り、また、

侵入防止警報器の設置を検討する。あるいは、周囲に塀を作るか、侵入防止警報器の設置を検 討するか、いずれかを行う。

―近隣の建物の居住者や所有者と話合いや情報交換を行うこと。先に挙げた手段と以下に推奨す

(15)

る活動の多くには近隣の人々に必ず参加し、協力してもらえるようにすること。もし可能なら、完 成した資料防災計画のコピーを交換すること。

3-2 建物の構造

―建築技師による定期点検を必ず行うこと。必要なら、建物の補強工事について検討すること。

―特に風や水の被害を受けやすく、許可されていない人でも出入りが可能な、弱点となるような場所

(屋根、天窓、ドア、窓、給水管など)については、危険信号を見逃さないよう、セキュリティと清掃 のスタッフによる定期検査を必ず行うこと。

3-3 セキュリティ

―鍵の貸与と返却について適切な管理を行うこと。

―建物に出入りするすべての人についての確認を、適切な方法で必ず行うこと。出入口の数はでき るだけ少なくし、理想的にはただ一つとすること。

―就業日の終わりに、出入り口を閉鎖し施錠する際の手順を厳格なものにし、順守すること。

―可能なら、人間による24時間警備体制を採り、警備員は事務室にただ座っているのではなく、建 物内をくまなく定期的に見回るようにすること。

―建築業者など職員でない人が建物内で作業している時は、特別に注意を払うこと。常に正確な作 業場所と使用する道具のうち危険性のあるものすべてについて、必ず十分に把握しておくこと。

―侵入防止警報器の導入を検討すること。

―必ず、セキュリティに関する事故記録のすべてを維持管理し、事故の傾向を把握し、改善策を提 言できるようにすること。

―武力紛争が発生しやすい地域に位置している場合は、他の文化機関と協力してブルーシールド 国内委員会(参照 http://www.ifla.org/VI/4/admin/protect.htm)の設立を中央政府に強く求 めることを検討すること。

上記の目的で導入している機械や電子システムのすべてについて、1日24時間、週に7日、年に52 週、常時運用し、定期的に検査・保守を行う必要がある。また、それらのシステムは、閉館時間帯にも 感知するようにする必要がある。例えば、地元の警察か消防署、もしくは職員の自宅で警報が聞こえる ようにする必要がある。

3-4 書庫システム

(16)

―すべての資料を床より少なくとも150mm上に排架し、洪水の影響を遅らせるようにすること。

―できれば、最上階に資料を保管するのは避けること。

―木製書架(排架されたまま定位置で資料は燃えるが、熱帯地域においては虫害を受けやすい。)

と金属製書架(より頑丈だが、熱で曲がり、排架した資料は落ちてしまう。)を比較して、それぞれ の長所と短所を検討すること。

―書架の最上部の上に水よけ(天蓋、フード、プラスチックシート)を備えること。

―火や水から保護し被害を少なくする「防護システム」(例えば、文書類のための保存箱、地図や版 画、設計図のための引き出し、スライドやフィルム、写真のためのファイルキャビネットなど)をでき るだけ多く使うこと。必ず、それらの容器の外側に防水ラベルを貼るようにすること。

―非常に貴重な資料用には耐火金庫か、少なくとも施錠が可能な保管庫の使用を検討すること。

3-5 保険

地域の保険会社が補償するものすべてについて、可能な範囲で保険をかけること。

例えば、

―事故への対応に必要な人件費と設備関係経費

―復旧及び修復処置を行う専門家の雇用

―外部の凍結乾燥施設の使用

―建物の修繕

―書架、電気設備、備品などの交換

多くの国では、所蔵文書の代替物入手については保険の対象とされていない。

3-6 水害に対する保護

―すべての配水設備について定期点検を必ず行うこと。必ず、多数ある流量調節弁(栓)を確認し、

これらの位置を職員に周知すること。自動的に栓が閉まる蛇口を(洗面台や流し台に)設置する こと。

―配水設備システムのコース変更を検討すること(例えば、資料のすぐ上に配管が引かれている場 合など)。財政上または設計上の理由で、それが不可能な場合は、配管を囲むなどの「防御シス テム」を導入するか、蔵書をより安全な場所に移すことを検討すること。

―建物内、特に湿気の影響を受けやすい場所(例えば、地下)については相対湿度の定期点検を 行うこと。

(17)

3-7 火災 a 保護

―電気回路とすべての電気設備について定期的な点検と保守管理を行い、点検及び点検の結果 行う保守作業のすべてについて詳細な記録を保管すること。

―必ずコンピュータや複写機などの機械はすべて、文書の保管場所から離し、夜間は停止させる。

できれば自動的に停止するのが望ましい。組織の管理下にない個人用の電気器具、例えば電 気湯沸かし器などの使用を禁止すること。

―火災を周囲から遮断し、延焼を遅らせるために、できるだけ多くの防火ドアと防火壁の設置を考慮 すること。同様に、各室や保管領域の電気回路についても、それぞれ遮断できるようなものの設 置を検討すること。

―職員と利用者のための禁煙規則について、まだ定めていない場合は定めて実施すること。

―すべての関係業者とメンテナンス・スタッフに対する監督を必ず適切に行う。特に溶接器具やブロ ー・トーチ(燃焼工具)などを使用する場合。

b 検知

自動警報を始動する検知器の導入を検討すること。導入する場合は、熱検知器や火炎検知器より、

文書の燃焼に対して、より感度の高い煙検知器を選ぶこと。

c 消火

電力供給が不安定という問題があるため、また、地域に良い保守設備が十分に無いために、ハイテク・

システムがあまり役に立たないことはよくある、ということを覚えておくこと。当てにならない自動システム よりも、バケツの水や消火器など手作業の方がはるかに望ましい。

自動消火システムの導入を検討すること。

―ガス系システム

ガス系システムは、狭く、閉じられた場所に適しており、水に比べて、設備(例えば、コンピュータな ど)に与える損害は少ない。しかし、広い領域には水系システムとすることが必要である。地域の安全衛 生規則では、ガス系システムに使用が許可されているのはどのような化学物質か、確認すること。二酸 化炭素)が最もよく用いられている。

―水系システム

自動水系消火システムは資料を意図的に水に濡らすものであるため、水系システムが適切かどうかと

(18)

いう議論が依然として多くの国で続いている。そうした議論については参考文献に挙げた文献を参照 し、他の専門機関から助言を得ること。また、最寄りの救急サービスから各機関までの距離などの要件 も考慮すること。

―自動消火システム

 「ミスト」システムと「水」システムを比較し長所と短所を考慮すること(資料に対するダメージは

「ミスト」システムの方が少ないと考えられるが、「水」システムはより迅速な効果がある)。

 「湿式」スプリンクラー(配管には、いつも水が満たされているので、迅速な対応が可能)と「乾 式」スプリンクラー(警報装置が作動したときにだけ、配管に水が入る。これは、反応時間が遅く なるが、水漏れや事故による被害を起こしにくい)を比較し、長所と短所を検討すること。

 特定の火元を標的として、不必要に多くのスプリンクラーヘッドが作動し、他の場所で水濡れ の被害が起きるのを減らすために、「局所反応」スプリンクラーヘッドを選んだ方がよい。

 消火システムを導入する場合、また、既に設置している場合も、専門家により、そのシステムの 使用がその時点でまだ適切であるかどうか定期的にアドバイスを受けること。なぜなら、消火シ ステムは進展の速い分野であるからだ(例えば、低酸素通気システムの開発に注目すること)。

建物内の「消火器」と明確に表示のあるところには、手持ち式の消火器を、必ず十分に配置すること。

どの「消火器」配置場所においても、水消火器と二酸化炭素消火器の両方を利用できるようにするの が望ましい。電気が原因となって発生した火災の場合には、二酸化炭素消火器だけを使用すること。

 消火器は全部、定期点検、詰め替え、取り替えの必要がある。

 全職員が、消火器の使い方について、定期的な訓練を必修のものとして受ける必要がある。

必ず、水のホースリール、または、ホースをつなぐ給水塔(栓)の所在がはっきりわかるように表示し、

簡単に利用できるようにすること。

多くの機関では、完全な予防/保護プログラムを実施するのに必要な人員と財源が不足しているので、

優先順位をつける必要がある(例えば、重要なコレクション、または損傷しやすいコレクションがある区 域など)。

(19)

4 準備(対応の準備をする)

4-1 資料防災計画を作成する

資料防災計画は、リスク評価と使用可能な資源に基づいて作成するべきものであるが、リスク評価の 結果、より多くの資源を必要とすると決定した場合は、そのための論拠を示すべきである。

―チームリーダーまたは資料防災計画コーディネータを任命すること。資料防災計画の実施の成否 は、このポストに任命される人の力によるところが大きいだろう。従って、このポストには、他部署 の上級管理職と対等に会って交渉でき、また災害の際にスタッフを動員したり資金を調達したり できる立場にある上級管理職を任命するべきである。

―指名されたスタッフ (及び不在の場合の代理)を、「災害対応班」(disaster response team)を指 導する立場に任命し、その役割を明確にすること。

果たさねばならない多くの役割があることを心得ておくこと。少なくとも、以下の事について責任を持つ 人を必ず指名すること。スタッフの数が少ない機関では、勿論、何人かの人がいくつかの役割を兼ね て果たさなければならないこともあるだろう。

4-2 災害対応チームメンバーの役割

―非常事態を宣言し、資料防災計画を実行すること。

―復旧チームを指揮すること。

―コンピュータや通信システムへの対応を行うこと。

―マスメディアに対応すること(「広報担当者」)。

―保険会社に対応し、保険請求を行うこと。

―復旧設備を確保し、専門家を雇用すること。

―冷凍施設や専門家などと連絡をとること。

チームの構成員を支援するスタッフを任命し、その役割の概要を示すこと。

「災害対応チーム」のメンバーに任命されない人も含め、機関内部のスタッフ全員の責任を明確に すること。

チームの主要メンバーが同時に不在の状態(休暇をとる、会議に出席するなど)にならないように、

必ずすること。

(20)

4-3 資料防災計画の利用可能性

資料防災計画は必ず印刷し、広く入手できるようにすること。現実に緊急事態が発生した場合、館 外で ―例えば、災害対応チームメンバーの自宅で―資料防災計画のコピーがすぐに使えるようにし ておくべきである。

また、水害の際にも使用できるように、いくつかはプラスチック製のジャケットに入れるか、ラミネート 加工しておくべきである。

資料防災計画は次のところに配布すべきである。

―図書館や文書館の全職員

―機関の管理責任者

―関連する救急サービス(消防とレスキュー隊)

―隣接する建物の管理責任者

―保険会社

―災害対応の際に協力し合う可能性のある他の図書館、文書館、その他の文化機関

資料防災計画の中に秘密事項の記載がある場合は、その部分をその他と切り離した独立した章に して、外部機関には配布しないように気をつけること。

4-4 計画の更新

計画を定期的に更新するための正式な仕組みを確立すること。状況は、建物、資料、職員、業者な どに関連して絶えず変化するものである。毎年1回の大幅更新、3か月ごとの見直しを目指すこと。

手順と責任の概要が明示され、機関の管理者から正式な承認を得た、正式な計画文書が存在すると いうことは、防災が、その機関の管理過程と責任において不可欠な要素となっている、ということの重要 な証拠である。

4-5 職員研修

職員の意識喚起と訓練の場を定期的に、参加が必須なものとして設けること。職員の防災に対する 意識、参加意欲、熱意を高いレベルで保つのは非常に大切である。

―定期的な話し合い

(21)

他機関で起きた災害に関する切り抜き、写真、ビデオを使用し、それに基づいた話し合いを行う(「他 人の不幸から学ぶ」)。

―実習または「模擬災害」

様々な非常事態をシミュレーションすること。消防訓練に組み合わせること。

可能なら、救急サービスの人たちも参加させること。

必ず、全職員が出火原因に即して消火器を適切に使用できるよう訓練すること、そして、全員が止 水栓と電源の電気のメインスイッチの位置を承知しておくこと。

―清掃員や警備員を参加させるよう、特に努力すること。彼らは毎日の施設内の巡回やゴミの収集を する際に潜在的な問題に気づくことがあるので、その仕事の重要性を強調する。

―機関が直接雇用しているスタッフ以外で、ボランティア「作業要員」となり、避難や救助に使える、可 能性のある人(例えば、親機関の職員や大学等の学生組織など)を見つけ、関心を持たせるようにする こと。可能なら、実習に参加させること。

―親機関の上級管理職、特に機関の資金調達に責任を持つ者には、必ず資料防災活動について定 期的に知らせること。

4-6 優先的に救出する資料を指定する

優先的に救出する資料のリストを作成し、建物の平面図に所在場所の印をつける。

―資料を優先的に救出するカテゴリーに振り分ける際には、現実的かつ実際的に行うこと。「極めて 重要な記録」(それが無いと、その機関と親機関が機能できないというほどの文書類)が主要な候 補であることは明らかである。他の資料については、単に資料そのものの価値や金銭的な値段 より、むしろ代替資料の有無、利用頻度、他機関で利用できるかどうか、といった要素を考慮する こと。

―必ず、関連する救急サービスに優先順位を知らせておくこと。そして、該当する資料とその保管区 域を必ず、平面図に印しを付けるとともに物理的に表示すること(例えば、書架やキャビネ上に蛍 光ストリップを使って示すなど)。しかし、これは泥棒や破壊者に機関の最も価値ある資料を教え てしまうことにもなりえる、ということに留意すること。

―特定の重要な資料(例えば極めて重要な記録、目録、検索ツール)については複製の作成を考 慮すること。そして、これらのハード・コピー、または電子コピーを建物以外の他の場所に保管す ること。すべての電子データ(ソフトウェアを含む)は必ず、定期的にバックアップを作成し、離れ た場所に保管し、理想的にはリモート・ホストに置かれたサーバ上で利用できるようにすること。

(22)

4-7 資料防災計画の実施に役立つよう文書の維持・更新を行う

文書のコピーは全職員と救急サービスが、必ずすぐに利用できるようにすること。また、実際に緊急 事態が起きたとき安全に取扱えるよう、これら文書はプラスチックの保護フォルダーに入れて利用でき るようにすべきである。

―建物平面図

最低限、平面図は出入口全部(ドア、窓、天窓、階段、エレベータ)、全サービス・システム(電気、水 など)の主な経路、止水栓、ヒューズ・ボックスやその他の絶縁システム、すべての電気作動機器の配 置、すべての消火設備(消火器、自動スプリンクラーヘッド、ホースの栓)の配置、資料種別(図書、ファ イル、地図、マイクロ、CD-ROM等)ごとの主な保管区域の位置、優先的に救出する資料の位置を明 示すべきである。

―詳細な連絡先

災害対応チームの全スタッフと外部機関や専門家等の連絡先(自宅住所、固定電話と携帯電話の 番号、ファックス、Eメールアドレス)が必要である。こうした詳細な連絡先は、特にこまめに更新する必 要がある。

4-8 外部の機関及び個人との連携を確立・継続していく

―救急サービス(地域の消防・レスキュー隊もしくは救急サービス)

救急サービスの中心人物(非常時に実際招請されるチームの責任者)には、必ず、建物や蔵書の状 況をよく理解してもらい、資料防災計画とその改訂版や、建物の平面図を渡しておくこと。

救急サービスには人事異動があることや、定期的な連絡を取り合うことを忘れないこと。(「消防士を 昼食に連れていく」)。

―保険会社

状況の変更についてはすべて(建物に関わる変更、新規重要コレクションの受入等)通知する。

―商業用、工業用の冷凍施設

商業用、工業用の冷凍施設は、濡れた資料を持込み、冷凍して保管する際に役立つ。図書館や文 書館にサービスを提供した経験のある専門の施設がない場合は、食糧供給業者、食肉業者、スーパ ーマーケットなどに当たってみる。いざ必要になった場合には、使える場所を確保できるよう、こうした

(23)

施設と契約を結ぶことを検討すること。

―輸送

濡れた資料を冷凍施設に輸送する。長距離の場合は、冷凍設備を備えた輸送業者を使うことを検 討すること。

―専門家

一般的な資料と特に専門的カテゴリーの資料、例えば、版画と図面、写真、動画フィルム、電子デー タなどの両方について、救出と復旧に関する助言ができる専門家

―救急用備品の供給業者

災害後、復旧のためにレンタルする必要がある、発電機、送水ポンプ、送風機など、大きくて高額な 備品。

―地域のコミュニティと住民

地域のコミュニティと住民は、災害後の救出のボランティア要員である。もし、適切であれば(例えば、

学生寮の近くにある大学図書館、軍の基地の近くにある政府文書館など)、それらの要員を使った救 出・復旧の訓練プログラムを作る。そのお返しとして、一般的な災害においは、各機関が地域のコミュ ニティを支援すること(例えば避難場所の提供)ができるかもしれないということを忘れないこと。「パート ナーシップ」の観点を強調すること。

―都市、地域、国にある他の図書館、文書館、その他の文化機関(博物館、美術館・・・)。これらの機 関との連携は以下のような利益を可能とする。

 各々の防災計画に関する情報の共有(防災計画を策定する場合においても協力できるだろう)

 設備のコストの共有、すなわち、共有財産として皆で使えるようにすること(例えば、扇風機、ポンプ、

特殊な冷凍施設)

 災害が起きた場合、他機関からの支援が受けられること。支援には、人力、専門知識・技術、設備、

復旧作業に使う敷地の利用可能性等が含まれる。

 地方や国の行政機関に共同アピールする際の協力(例えば、ブルーシールド国内委員会の設置)

4-9 救急用設備の整備と維持

「モップとバケツ」のような、大型でなく、安い物品(付録に提示されている品目を見よ)。これらの必

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需品をリスト化し、それらの物品がそこにあり、実際に使える状態かどうか、定期的にチェックすること。

そして、いくつかのコレクションに分けて(簡単に移動するプラスチックの容器、例えば車輪付き容器や ブックトラックなどに、すぐ使えるように詰め込んだもの)、建物内の別々の場所に保管すること。

4-10 当座の危険準備金を手配する

災害が起きた場合、親機関から財源の手配がすぐに行われるべきである。この財源は以下の目的に 必要とされる。

―救急用設備を借りる。

―冷凍施設の中のスペースと、冷凍施設に資料を運ぶための輸送手段を借りる。

―災害チームと要員への食料支給、支援

―専門家から保存に関する助言を得る。

―乾燥と修復

理想的には、特別基金を作り、災害の結果、必要となった支出に、即対応できるよう、長期にわたっ て維持するべきである。しかし、そのような特別基金が、ほとんど、もしくは決して使われることがなく、組 織が他の活動のために資金を使う必要があるような場合には、特別基金を維持していくのは難しいだ ろう。そうした基金が無い場合には、緊急に資金を提供するという明確な書面による取り決めを、組織 の財政当局から得るべきである。そして、資料防災計画に関する調整役か災害チームのリーダーが、

当座の支出を許可する権限を持つべきである。

もし上級管理職から防災のための資金提供に関して抵抗がある場合は、災害が主要な資料やサービ スを長期にわたって奪ってしまうというシナリオを想定し、そのシナリオによる損害を見積るように提案し よう。上級管理職にとっては、示された結論よりも、自ら考えて気づくことの方がむしろ非常に説得力の あるものとなる。

4-11 「復旧」作業のための場所を特定し、場所の確保のために適切な手配を行う

「復旧」場所とは、救出された資料を移動し、空気乾燥させ、冷凍するために資料を梱包する、など の措置を行う場所である。これはその組織の敷地内か、または、隣接する機関内(他の図書館、文書 館、学校、体育館、スポーツセンター...)であるかもしれない。

(25)

4-12 災害発生後、できるだけ早く、利用者に対するある程度のサービスを再開す るための様々なシナリオを描く

このことは、例えば、他の機関との協力によって成し遂げられる。これは勿論、災害の程度、建物の 被った損害、その災害が局地的なものか、広域にわたるものであったかどうか、による。

(26)

5 反応と対応(災害発生時)

―いかなる緊急時においても、常に、人命の安全が最も優先されるということを忘れないこと。

―組織は常に、安全の問題に関わる場合、救急サービスに従わなければならないことを忘れないこ と。

―対応の種類は、災害の影響がある機関に限ったものであるか、または、災害の影響が地域全体/国 全体にわたるものであるか(例えばハリケーンや地震)による。必要なら、可能な限り、「独力で対応 する」ことができるよう準備すること。

5-1 最初の対応

―警報を発して、職員の中のしかるべきメンバー及び適当な救急サービスと連絡を取ること。

その機関の通常の開館時間外に起きる災害は、おそらく、警備員かメンテナンスの作業員によって 発見されるということを忘れず、彼らに対し、必ず、通知の手順について適切に周知しておくこと。

―建物から避難すること。適切で安全であれば、部分的な救済活動を行うこと(例えば、水道を止める、

消火器を使うなど)。

5-2 主要な災害対応

災害対応チームのリーダーは、救急サービスと協力して、適切なレベルの対応を決定するために、

状況を評価すべきである。そして、リーダーとチームの他のメンバーは必要に応じて、以下の人たちと 連絡をとるべきである。

―他のスタッフ

―ボランティアになり得る可能性のある要員

―外部機関

―保険業者

―専門家

最初の評価は、災害の性質により、建物の外部からしかできない可能性がある。そして、敷地内に再 び入ることを救急サービスが許可した時に、その次の段階の評価を行う必要があるかもしれない。

(27)

5-3 救出

「急がば回れ」(急ぐほど遅くなる)を忘れないこと。損傷を受けた資料はできるだけ早く移動させなけれ ばという心理的プレッシャーがあるだろうが、状況を的確に評価して、救出を始める前に場所が安全な 状態になることが肝心である。特に、その場所から移動した資料は必ず、すべて適切にリスト化し、資 料を入れたコンテナにはラベルを貼ることがとても大切である。それによって、後で、その資料がどこに 行ったか容易にわかるからである。建物が修繕されるよりずっと前に、「極めて重要な記録」にアクセス する必要が生じる機関もあるだろう。

救急サービスから、その場所に再び入ることが許可された時は、様々な手段が採られるべきである。

a 状況とニーズに関して、再評価する

b すべての活動と支出を記録しておく

行動を起こす前に、保険と後から行う分析のために、被災場所と被災資料を写真かビデオ撮影する こと。救出の全過程を通じ、継続して写真により記録しておくこと。余分の支出が生じた場合はすべて の請求書を取っておくこと。

c 環境を安定的な状態にする

―電気はすべて、必ず主電源を切ること。

―被害を受けていない資料は、例えばビニールシートで覆うなどして、風雨から保護すること。

―(被災)場所は必ず窃盗や略奪から守ること(柵を作る、警備員による警護など)。

―必ず水をくみ出すこと。

―許容できる環境レベルを作り、維持していくために、必要に応じて扇風機、除湿機、ヒーターなど を使うこと。可能なら、温度と相対湿度を定期観察する装置を設置して必ず環境をチェックするこ と。

d 水損資料の移動の準備

―リーダーの監督の下に、移動要員を動員し、簡潔に指示すること。

―復旧チームには潜在的な危険が多々あることを注意させること(例えば、不安定な建物、ぐらぐら する棚、滑りやすくでこぼこな床面、汚染された水など)

―全員が必ず適切な服装をすること。必要なら、長靴、手袋(現場が泥や下水等に汚染されている かもしれないので)、マスクをすること。

(28)

―何を一番先に救出すべきかについて、決められた優先順位に従うこと。

e メディアとの関係

「広報渉外担当者」を任命し、定期的に報道・放送関係者への発表を行うこと。

―広くコミュニティ全体や、修復、再建プロジェクト等に対して寄付をしてくれる可能性のある人たち から、同情や支援を引き出すため。

―その機関の利用者に、資料の被害状況やサービス再開への進捗状況について知らせるため。

―公表する情報は、専門分野のウェブサイト(例えば、図書館、文書館関連のメーリング・リスト)にも 搭載すべきである。

f 職員、作業要員への支援

―復旧作業に携わるすべての人々が定期的な休憩と食事、飲み物をとれるよう用意し、現実に即し た労働時間とすること。必要な場合、適当な避難場所(テントや毛布など)を用意すること。

―進捗状態、未解決の問題、職員個々の貢献の重要性について、全員が認識できるよう、定期報 告を行うこと。

―ボランティアには必ず、報酬を払うか、または他の形で謝礼をすること。

―その機関の職員自身が、自分の職場環境が破壊されているのを見ることにより相当な心理的トラ ウマに苦しんでいる可能性があることを忘れないこと。適切なカウンセリングを行うことを検討するこ と。

g 水損資料を事前に選定した復旧作業場所に移動させる

水で濡れた紙はとても脆いことを忘れないこと。

―資料は別々に運ぶこと。

―最初に、床に置かれた資料を移動させること。次に、書架の一番上段の資料を動かし、順次下段 に進めていくこと。

―資料の移動経路をつかみ、情報管理を良くするために、明確な流れ作業の手順に従って資料を 移動すること。事前に注意深く研修を行い、実際の処理に当たっては適切な監督の下で行うこと により、復旧後に、資料がどこにあるか確認するための時間やコストを、かなり軽減することができ る。

―閉じた本は閉じたままにし、開いた本は開いたままにすること。くっついてしまった本同士や一枚 物同士を引き離さないこと。

―写真資料の表面に触れないこと。

―泥まみれの閉じた資料は閉じたまま、きれいな流水で(ホースを使って)洗い流すこと。例えば煙

(29)

で損傷した資料を非常に丹念にクリーニングする場合は、資料が乾燥するまで待つこと。

h 復旧エリアの資料は処理方法によって分ける

紙資料について、まず決めなければならないことは、被災場所で資料を洗浄し乾燥させるか、冷凍 工場に移していったん冷凍し、後で処理するかどうか、である。その決定は以下の条件によるだろう。

―資料の冊数

―資料がどの程度、水に濡れ、汚れ、汚染されているか。

―資料の性質。可溶性インク(手稿本インク、ある種の印刷用インク)とコート紙は、可能なら、冷凍し た方がよい。

―利用しやすく手ごろな値段の冷凍施設が使用可能かどうか。

―災害が局地的なものか、それとも広域にわたるもので、外部の施設が存在したとしても利用できな いようなケースであるかどうか。

i 水損資料の処置

―わずかに水に濡れた資料(可溶性インクを使った資料やコート紙は除く)のためには

 空気乾燥させる。

 これは多くの場合、被災現場で実施可能であるが、スペースが必要であり、大きな労力を要す る。

 乾燥作業を行なう環境を除湿し、可能な限り、扇風機を使って空気を循環させる。 空気を継 続的に動かすことは、乾燥スピードを速めるとともに、カビの発生を防ぐ。

 資料を広げる(例えば、架台式テーブルの上に)

 過分な湿気は、きれいなスポンジか吸い取り紙を使ってやさしく拭いて、吸収すること。

 製本した本は、立てて、ページが扇形に広がるようにする(大型本または薄表紙の大型本は支 えるものが必要である)。または、吸い取り紙(例えば、きれいな新聞印刷用紙、薄い吸い取り 紙)をページの間に差し込み、次に圧力をかけ、定期的に紙を替える。ゆるく綴じた文書や一 枚ものの資料は、可能なら、水平な棚上に置いた吸い取り紙の上に広げるか、または、木綿の 物干し用ロープにかけて干す。

―びしょびしょに濡れた資料や、くっついてしまった一枚物の資料や、水溶性インクまたはコート紙 を使った資料はすべて、(もし利用可能で手ごろな金額であれば)冷凍庫に送る。びしょびしょに 濡れた資料は48時間以内に、カビが生える可能性がある。

資料を冷凍庫に入れ冷凍することにより、資料を無期限に安定的な状態にすることができる。それに

(30)

より、後で処理可能な分量に分けて取り出して乾燥させることが可能になる。

 資料は(可能な範囲で)個別にビニール袋や包装紙に包み、プラスチックの箱に入れること。

図書は背を下にして梱包すること。

 動かしやすく、水に強い容器(プラスチックのトレイや箱、ビニールで裏打ちした標準規格の保 存箱)を使うこと。処理しやすいように、たくさん詰め込みすぎないこと。

 資料にラベルを貼り、記録する。

 冷凍やその他の処理を行うために送り出される資料の容器には、必ず、機関名と容器の内容

(情報管理のためのファイル番号、請求記号、シェルフ番号等)を防水マーカーで記したラベ ルを、はっきりわかるように貼ること。

 現場から離れた場所に運んだすべての資料についての記録を必ずその機関で保管すること。

記入用紙を予め用意することを検討すること。この段階で時間をかけておけば、後で時間を節 約することができる。

前もって取り決めた冷凍施設への資料輸送を手配する。輸送に数時間もかかる場合には、冷凍設 備のあるバンやトラックの手配を検討すること。

―写真資料と電子資料

可能なら、専門家に助言を求める方が常に安全である。写真は現像などの過程で、水処理をするこ とが多い。そのため、写真資料は、冷たいきれいな水で処理可能なことがよくある。

ネガ(銀塩フィルムやフィッシュを含む)、磁気テープ、写真の印画については、洗浄し、感光乳剤の 側を上にして空気乾燥することが可能である。銀塩マイクロフィルムについては、一時的に冷たい水を 張ったバケツに入れてから、フィルム処理施設に運ぶことが可能である。

(31)

6 復旧(正常な状態に戻すこと)

6-1 利用者へのサービス

ある程度の利用者サービスをできるだけ早く、必要なら代替施設で、再開するようにする。

―機関の一般公衆からの評価と支援を得るために。

―スタッフの精神衛生のために。

―そして、もちろん、利用者の便宜のために。

6-2 建物

―被害を受けた建物の修復可能性について、建築工学者や建築家に専門的な助言を求める。

―必要なコストの見積を取る。

―修復を行うための財政的支援の申請を開始する。

―建物のある部分または全体が修復不可能と判断される場合、代替施設を探すか、新しい建物の 建設の検討などを始める。

6-3 蔵書

水損資料の乾燥を継続する。冷凍乾燥や真空乾燥などの技術的設備がもし利用可能で手ごろな金 額であれば、実施を検討する。そうでない場合は、予め冷凍し安定した状態にしておいた資料を、処 理可能な数量に分けて、空気乾燥させる。資料をいったん乾燥させた後は、個々の問題については、

修復専門家に専門的な助言を求める。専門家による処置が必要な資料がたくさんある場合には、優先 順位を決めて、優先順位が低い資料は時間と資金ができた場合に処理すべき資料として箱詰めにし ておく。

専門家による処置が必要な資料すべてについて、かかるコストと時間を相対的に判断し、可能なら ば代替物を検討する(新たな副本の購入、またはマイクロフィルムやデジタル化による代替による)

か、もしくは、処置を行うより廃棄することを検討する。

6-4 保険

(32)

実際にコストが明らかになったら、保険業者と交渉する。被災に対応する間に作成された文書と写真 による記録を用いる。

6-5 災害の分析

―防災システムや災害対応計画の成功と失敗について評価するために、報告会を開く。批判的で あるとともに現実的でなければならない。災害が全国的規模である場合には、計画した対応の多 くが実施不可能であるだろう。

―将来、事故が起きた時の対応をより良いものにするための基礎となるものとして、写真、ビデオ、チ ームリーダーの報告、全スタッフとの討論を活用する。討論に続き、その記録は将来の訓練と災害 対応に活用可能な情報源として整理する。

―詳細を記した、正式報告書を作成し、機関の上級管理職と財政当局、保険業者、再建・改築のた めの寄付をしてくれる可能性のある人に提出し、また、将来の参考とする。

―災害対応計画を経験に照らして書き直す。

―同業の専門家の意識喚起を図るよう努める。起こったこととその機関の対応の詳細を、例えば、雑 誌記事に書く、会議でペーパーを発表するなどして、広く他の図書館や文書館にも入手可能とす るよう検討する。詳細はウェブサイトにも掲載する。

(33)

付録

機関が緊急時に備えて集め維持すべき道具と必需品の例。車輪付きの容器に保管しておく。これら の物品のいくつかには「有効期限」があり、更新、取替が必要である。

救出チームの保護に必要な道具

 保護服:オーバーオール、つなぎの作業服、ビニールのエプロン

 ゴム長靴(全サイズ)

 ゴム手袋(全サイズ)

 安全ヘルメット

 マスク(ほこり、ガスから保護するため)

 保護用のゴーグル

 応急手当に必要なもの

 作業要員を組織するチームメンバーを識別するためのバッジ

作業に必要な道具

 懐中電灯

 携帯用ランプ(ヘッドライト)

 電気延長ケーブル(電力供給が安全な場合、照明、ポンプ、扇風機等を動かすため)

排水・乾燥器具(大きな装置は、リースか、借用しなければならないだろう)

 排水ポンプ(手動)

 水洗い式または乾燥式真空掃除機

 ホース(資料洗浄用、消火用ではない)、霧吹き

 電気扇風機

 除湿機

 モップとバケツ

資料梱包、ラベル貼付、資料移動に必要な器具、材料

 ポリエチレン製の箱

 ポリエチレン製のシート(予め切り分けてあるものとロールの両方)

 ポリエチレン製の袋(多種類のサイズ)-資料保管用とごみ処分用の両方

(34)

 キッチンタオル

 白い吸い取り紙

 きれいな新聞紙

 シリコンペーパー

 スポンジ

 メモ用紙

 パーマネント・マーカー・ペン

 自動接着性、防水性のテープとラベル

 はさみ、ナイフ、紐、粘着テープ

被災現場と復旧活動を記録するための道具

 事前に印刷してある被害記録リスト

 カメラ

 ビデオカメラ

 テープレコーダー

 以上の機器に必要な電池、フィルム、テープ

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