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ルーミーの思想を読み解く

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Academic year: 2021

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東京外国語大学総合文化研究所 総合文化研究 第 23 号(2019)

Tokyo University of Foreign Studies, Trans-Cultural Studies, Vol. 23 (2019)

ある日城を抜け出し初めて目にした貧困や病、死をきっかけに神への帰依に覚醒し、王位や財産を棄てバグダードへ出奔、イラクやシリア、ヘジャーズを巡り、学識を身につけたといわれる彼の生涯は、我々にブッダを想起させうる。イブラーヒームの生地バルフや、タリバンに大仏を破壊されたことで一気に知名度の上がったバーミヤンにも仏教徒が多く住んでいたことからも推察できるように、イブラーヒームとブッダの共通点は単なる偶然ではないのかもしれない。

  講演者シャキービー氏が本講演で紹介したのは、イブラーヒーム・アドハムが登場する二つの象徴物語である。一つは、貧しい身なりで浜辺で針仕事をするイブラーヒームを見た王に気づき、イブラーヒームが針を海に投げ入れると、魚たちが金の針をくわえて波間に顔を出すという話である。イブラーヒームは王に「心を支配するのがよいか、それともこの世を支配するのがよいか」と問いかける。ペルシア神秘主義文学では、魚は神に辿り着くことを目指す修行者、海は神の象徴である。いま一つの逸話は、夜イブラーヒームが寝ていると屋根裏で音がするので何事かと問うと、「ラクダを探している」との返答。屋根にラクダがいるものかと答えると、「あなたは王座も地位もあるのに、神との邂逅を望んでいるではないか」と言われて

ルーミーの思想を読み解く 〜『精神的マスナヴィー』の説話が描く世界

報告   佐々木あや乃

  二〇一八年度末、科学研究費(究(

研究に関する講演会を締めくくる好機となった。 とりわけルーミー年度内に既に実施した二つのペルシア文学、 同標記のペルシア文学講演会を開催した。これは、力のもと、 総合文化研究所の協によるプロジェクトの活動の一環として、 )に関する基礎的研究」(叙事詩)秘主義詩人ルーミーのマスナヴィー C)「   ペルシア神秘主義詩人ルーミーの『精神的マスナヴィー』という神秘主義文学の大著は、原語では、

mathnavī-ye ma ‘navī

と称される。

ma ‘navī

という語に「神秘主義的直観に基づく」、「神秘主義的体験において開示される実在の真相に淵源する」といった意味があることからわかるように、この作品には神秘家としてのルーミーの実在体験が反映されている。ルーミーの凝縮された神秘主義思想を語るべく用いられた数多の逸話の中で、特に「イブラーヒーム伝説」に焦点を当てたのが、シャキービー氏による本講演であった。

  イブラーヒームとは勿論旧約聖書のアブラハムを指す場合もないわけではないが、ルーミーの作品内では、イブラーヒーム・アドハム()という、イスラーム初期の禁欲家、高名な神秘家である場合が大半である。バルフ(西)の王族であったにもかかわらず、

本稿の著作権は著者が保持し、クリエイティブ・コモンズ表示 4.0 国際ライセンス (CC-BY) 下に提供します。

https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja

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報 告

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東京外国語大学総合文化研究所 総合文化研究 第 23 号(2019)

Tokyo University of Foreign Studies, Trans-Cultural Studies, Vol. 23 (2019)

しまう。その夜以来、イブラーヒームは忽然と姿を消すのである。現世で享楽()を貪り地位や財産を求める者は、そうした執着を棄てない限り、神に到達することはできないと説く逸話である。シャキービー氏の噛んで含めるような説明が、学部学生の関心をも惹きつけたことを実感した講演会であった。

  イブラーヒーム伝説に興味を持たれた方には、佐藤次高著『聖者イブラーヒーム伝説』(角川叢書)を是非お勧めしたい。

二〇一九年三月七日(木)講師:シャキービー・モムターズ・ナスリーン

参照

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