中国における公安機関による私人間紛争の解決(一
)
その他のタイトル The Settlement of Civil Dispute by Public Security in the People's Republic of China
著者 宇田川 幸則
雑誌名 關西大學法學論集
巻 49
号 5
ページ 718‑762
発行年 1999‑12‑20
URL http://hdl.handle.net/10112/00024463
目 次 は じ め に
第一章中国における私人間紛争の解決制度
一司法的解決方法と非司法的解決方法の混在
二 非 司 法 的 解 決 方 法 の 種 類
括~ 三
第二章法規定上に見る公安機関による私人間紛争の解決
一 中 国 の 公 安 機 関
二公安機関が私人間紛争を解決すると規定する法律・法規
三公安機関に私人間紛争を解決させる理由および目的
四 小 括
︵ 以 上 本 号
︶
第三章公安機関による私人間紛争の解決の実際
お わ り に
宇 田 川 幸 則
中国における公安機関による私人間紛争の解決
一六
〇
(
‑
︶
︵七
一八
︶
中国
にお
ける
公安
機関
によ
る私
人間
紛争
の解
決︵
一六
私人間に紛争が生じた場合︑それをいかなる方法でどのように解決するかと問われた場合︑西洋法的制度になじん
だ者は︑最終的には司法機関
11
裁判所︵中国では法院︶によって解決されることを想起する︒しかし︑中国において
は︑人民政府をはじめとする法院以外の様々な機関・組織が私人間紛争を解決すると規定する法律・法規が多く存在
する︒しかも規定が存在するだけでなく︑実際に多くの市民が司法機関以外による私人間紛争の解決制度を利用して
おり︑また多くの司法機関以外の機関・組織も積極的に私人間紛争の解決に関わっているという実体が存在する︒
そのうちでとりわけ目を引くのが︑公安機関による私人間紛争の解決が中国において制度化されており︑しかも実
際に機能していることである︒近代法治国家においては︑警察権の発動は厳しく制限されており︑いわゆる民事不介
入の原則により︑民事上の法律関係には介入できないとするのが︑近代国家における警察のあり方である︒もっとも︑
中国をはじめとする社会主義国家においては︑公安機関
11
警察は階級独裁の主要な道具のひとつとして認識されてい
ることから︑民事不介入は原則とはなり得ない︒しかし︑階級独裁の主要な道具であるとはいえ︑公安機関が国の暴
力装置
11
生の権力機関である以上︑民事上の法律関係に介入することにはやはり一定の限界が存在するのではないか
と考える︒にもかかわらず︑公安機関が私人間紛争の解決にあたるとされるのはなぜか︒あるいは中国における紛争
ないしは紛争解決に対する認識が︑われわれのそれと大きく異なることに起因するからなのか︑あるいは紛争解決に
おける司法機関・行政機関の担う役割がわれわれのそれと異なることに起因するからなのか︒また︑いかなる私人間
紛争の解決にあたるとされているのか︑具体的にはどのように解決されているのか︒
は じ め
に
︵七
一九
︶
ある︒その場合には︹︺で原語を表記した︒
第四九巻第五号
︵七
二
0)
このような問題意識にもとづき︑本稿では︑中国における公安機関による私人間紛争の解決の検討をつうじて︑中
国において紛争解決に果たす公安機関ないしは行政機関の機能と役割を明らかにしたい︒ところで︑公安機関
1 1警察
とは国家の暴力装置であり︑生の国家権力を直接市民に行使することが可能な行政機関であることから︑市民と公安
機関との関係には︑市民と行政との関係がもっとも端的にあらわれるということもできよう︒そこで︑中国における
公安機関の私人間紛争に対するあり方の検討をつうじて︑ひいては中国における法・行政・市民三者の関係を浮き彫
りにするとともに︑ひいては法の実現・執行における行政の役割の一端をも析出することを試みたい︒
以下では︑まず第一章で中国における私人間紛争の解決に関する法制度全体を概観する︒第二章では公安機関によ
る私人間紛争に関する制度について検討をくわえ︑公安機関に私人間紛争の解決を任せる理由とその目的を探る︒そ
の上で︑第三章では主に公開されている裁判例の分析をつうじて︑公安機関による私人間紛争の解決の実際を分析し︑
公安機関の私人間紛争の解決に対する機能と役割︑行政と法とのありようの析出を行いたい︒
なお︑本稿では︑第三者が間に入って紛争当事者間の和解を促す意の漢語である﹁調解﹂を︑原語をそのまま使用
する︒現在︑調解は調停と邦訳することが定訳となっているが︑調解という語は場面場面で使われるニュアンスが微
妙に異なり︑ある場面では調停と訳すべきであるがある場面では和解と訳するほうが適切である場合もある︒本稿で
は調解という語が使用される場面が多岐にわたっていることから︑あえて邦訳することをしない︒また︑中国の警察
権力を司る行政機関の﹁公安﹂および勤務先・職場を意味する﹁単位﹂についても︑同様の理由から︑あえて原語を
そのまま使用する︒また︑これら以外にも訳語にくわえ原語を併記した部分およびあえて原語のまま表記した部分が 関法
一 六
中国
にお
ける
公安
機関
によ
る私
人間
紛争
の解
決
略︶民事紛争を解決﹂すると規定している︒ 混在する状況にあるといえる︒
一 六
一部例外は存在するも
本稿で中国における公安機関による私人間紛争の解決について検討をすすめる前に︑中国における私人間紛争の解 決に関する制度について︑本稿の関心にそくするかたちであらましを概観する︒結論からいえば︑中国においては私 人間紛争を司法機関によって解決する制度︵以下︑司法的解決方法とする︶と大衆的自治組織・行政機関などによっ て解決する制度︵以下︑非司法的解決方法とする︶とが存在する︒しかも︑いわゆる調解前置主義のように︑非司法 的解決方法を司法的解決方法に至るための前提条件として規定するものと︑司法的解決方法によるか非司法的解決方 法によるか︑その選択については当事者に任せるものとが存在し︑司法的解決方法と非司法的解決方法とが︑いわば
司法的解決方法と非司法的解決方法の混在
西洋法的制度になじんだ者にとっては︑私人間に紛争が生じた場合︑その解決については︑
(2 )
のの︑最終的には国の司法機関︵裁判所・法院︶によって解決されると考えるのが常である︒
中国においてもまた︑八二年憲法︱二三条および人民法院組織法一条において︑人民法院が国の裁判機関であると
(5 )
規定し︑民事訴訟法六条一項では﹁民事事件の裁判権は人民法院が行使する﹂と規定している︒そのうえで人民法院 組織法︱︱一条一項では﹁人民法院の任務は刑事事件および民事事件の裁判であり︑あわせて裁判活動をつうじて︵中
第 一 章 中 国 に お け る 私 人 間 紛 争 の 解 決 制 度
︵七
ニ︱
)
第 四 九 巻 第 五 号 これらの規定からすると︑中国においてもまた司法的解決方法によって私人間紛争は解決されているように見える︒
しかし︑個別の法律・法規について検討してゆくと︑実は必ずしも司法的解決方法によってのみ私人間紛争を解決す
るとはされておらず︑多くの場面で非司法的解決方法による私人間紛争の処理が予定されていることに気付く︒
非司法的解決方法の種類
︵ 七 ニ ニ
︶
法律・法規に規定される私人間紛争の非司法的解決方法については︑司法的解決方法との対比においてとらえた場
合︑大きくは以下の二類型にわけることができる︒すなわち︑①非司法的解決方法を司法的解決方法の前提条件とし
て規定し︑第一義的には非司法的解決方法により︑私人間紛争の解決が図られるもの︑②司法的解決方法と非司法的
解決方法とが並列的に存在し︑いずれの方法により私人間紛争が解決されるかについては︑当事者の選択に任される
とす
るも
の︒
(6 )
①については︑商標法三九条一項をその例として挙げることができる︒同条は︑登録商標専用権侵害行為に対して︑
被権利侵害者は権利侵害者の所在地の県級以上のエ商行政管理部門に対して処理を要求することができ︑その処理に
不服な場合には︑人民法院に対して訴訟を提起することができると規定する︒これは︑いわゆる調停前置主義と同様
に︑非司法的解決方法が司法的解決方法の前提条件であるとするものであり︑私人間紛争の処理をひとまず非司法的
解決方法にゆだね︑それが困難な場合には︑司法的解決を図るとするものである︒同様の規定としては︑獣薬管理条
(7 )
︵8
)
︵9
)
例四七条一項︑技術契約法二二条・︱二二条︑薬品管理法五六条一項などがある︒
( 10 )
一方︑②の具体例としては︑特許法六0条一項前段を挙げることができる︒同条では︑﹁特許権者の許諾を経ずに︑ 関法
一六
四
一六 五
その特許を実施する特許権侵害行為に対して︑特許権者あるいは利害関係者は特許管理機関に対して処理を行うよう
請求することができ︑また人民法院に対して訴訟を提起することもできる﹂と規定する︒これは紛争解決の手段とし
て︑特許管理を行う行政機関による非司法的解決方法と人民法院による司法的解決方法のふたつがメニューとして並
列的に示され︑そのいずれを選択するかについては︑特許権者あるいは利害関係者に任せるというかたちを採用して
( 11 )
︵1 2 )
︵1 3
)
︵1 4
)
︵1 5 )
いる︒同様の規定としては︑水法三六条︑河道管理条例四七条一項︑広告管理条例二0条二項︑草原法一八条︑植物
( 16 )
新品種保護条例三九条一項などがある︒
なお︑②の一類型として︑司法的解決方法と非司法的解決方法が並存し︑そのいずれによって紛争を解決するかは
当事者の選択に任せられてはいるものの︑運用上では︑まず非司法的解決方法によって紛争解決をはかる︵あるいは
非司法的解決方法に実質的に誘導しようとする︶ものが存在する︒これは︑前述の二つとは異なり︑実体法上の具体
的規定に織り込まれるという形を採るものではなく︑紛争解決に関する手続法ないしは紛争解決にあたる非司法的紛
( 17 )
争解決機関の仕組みに関する法に規定されている︒この例としては︑人民調解委員会組織条例などにもとづく人民調
( 19 )
解︑司法助理員工作暫行規定︑民間紛争処理辮法などにもとづく司法助理員調解などの行政調解︑郷鎮法律服務業務
( 20 )
︵2 1 )
工作細則などにもとづく社会調解など︑いわゆる訴訟外調解︵法院外調解︶を挙げることができ︑後述するように︑
これらの対象となる紛争は︑いわゆる生活紛争が中心となっている︒
これらはいずれも︑非司法的解決方法により特定の私人間紛争の解決を図ろうとするものであるが︑さらにはどの
( 2 2 )
ような機関が紛争解決を主宰するかによる区分も可能である︒紛争解決の主宰者に着目した場合︑m大衆的自治組織
によ
る紛
争解
決︑
S行政機関による紛争解決︑団その他に区分することができる︒ここではそれぞれの代表例として︑
中国
にお
ける
公安
機関
によ
る私
人間
紛争
の解
決︵
一︶
︵ 七 ニ ︱
︱ ‑ ︶
第四九巻第五号
人民調解とは︑大衆的自治組織である人民調解委員会の主宰の下に行われる調解であり︑紛争当事者双方の合意の
下において︑説理心服・教育・︹疏導︺︵当事者の仲をとりもつこと︶などの方法によって︑
し︑当事者双方の争いの元を取り除き︑溝を埋め︑関係を改善することを目的とする︵人民調解委員会組織条例二条︑
( 23 )
八条
︶︒
人民調解委員会は︑都市部においては居民委員会︑農村部においては村民委員会内部に設けられる組織であり︵八
二年憲法︱︱一条二項︑人民調解委員会組織条例二条︶︑
︵七
二四
︶
一般的な民間紛争を解決
一部の単位においては︑単位内部の従業員間の紛争を解決
( 24 )
する目的で︑単位内人民調解委員会を設けるところも存在する︒
人民調解において︑いかなる種類の紛争の解決を図るのかについては︑人民調解委員会組織条例では︑単に民間紛
争を調解するとのみ規定するだけである︵同法一条︑二条︑五条︶︒ここにいう民間紛争とはどのような紛争である
( 25 )
かは、民間紛争処理雛法三条で「公民間の人身•財産的権利利益およびその他の日常生活において発生した紛争であ
る﹂と定義しているだけである︒解釈論によれば︑民間紛争とは公民個人の間に生じた紛争であって︑例えば嫁と姑
との不仲︑夫婦喧嘩︑隣人どうしのけんか︑同僚どうしの口論︑婚姻・家事・贈養・扶養・相続・債務・家屋・宅地・土地・山林・水利・家畜・農機具•財物の損害およびその他の生活•生産に関する問題により惹起された紛争、
あるいは軽微な傷害・虐待・遺棄などの行為により惹起された紛争で︑事案が簡明でかつ社会危害性が比較的軽微な
( 2 6 )
ものである︒このうち︑人民調解が処理する民間紛争は︑これらの民間紛争のうちの一般的な事案でかつ複雑でない m人民調解 m
人民
調解
︑
S行政調解︑団社会調解を取りあげる︒ 関法
一六
六
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機関
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る私
人間
紛争
の解
決︵
一︶
会が調解をすると定められたものと考えられる︒
一六
七
一方で当事者に対して履行義務を付しながら︑ 人民調解委員会は︑これらの民間紛争の当事者の申請によって調解に着手するが︑当事者が申請しない場合であっても︑人民調解委員会がイニシアティプをとって調解を行うことができるとされる︵同法七条一項︶︒調解委員会が紛争あるいは紛争の芽を能動的に発見し︑積極的かつ能動的に調解あるいは適当な措置を採って予防しなければなら
( 28 )
ないとされる︒矛盾の激化を防止し︑紛争の発生を防止し︑社会安定︵治安︶を維持することを目的とする人民調解
制度にあっては︑初期的段階で紛争を解決することが重要となることから︑当事者の意思にかかわらず人民調解委員
人民調解はあくまで紛争当事者間の合意の下に行われるものであり︑当事者に対して法的拘束力を有しないとされ
るが︑当事者は調解内容を履行しなければならないと規定される︵同法九条一項︶︒人民調解委員会もまた当事者に
( 29 )
対して履行を促す一定の責任があるとされる︒人民調解委員には街や村の顔役的な人物が多いことから︑法的効力は
ないとはいうものの︑社会的な圧力により当事者に履行させることで︑実質上の効束力を有している︒にもかかわら
ず当事者が調解合意に翻意した場合および合意に達し得ない場合には︑基層人民政府に処理を請求することができ︑
また人民法院に対して訴訟を提起することができる︵同法九条二項︶︒
他方では調解合意の翻意を認めており︑同法九条は一項と二項との間で統一性を欠いているといえよう︒この点につ
いては︑﹁人民調解委員会の調解に何らかの拘束力を付与すべきことを意識しながらも︑自治組織としての調解委員
( 3 0 )
会の限界を認めたものといえよう﹂との見解が存在する︒
ところで︑このような人民調解による私人間紛争の解決に対しては︑﹁民事紛争の予防および解決において積極的
( 27 )
ものであるとする︒
︵七
二五
︶
S
行政調解
度のユニークさを端的にあらわしているといえよう︒
第 四 九 巻 第 五 号
一般
一六
八 ( 31 )
な作用を発揮するだけでなく︑憂いを除いて困難を解決するという効果も収めている﹂として評価されている︒また︑
人民調解の司法制度上における位置づけについては︑﹁人民調解委員会の任務は民間紛争を調解することであり︑調
解活動をつうじて法律・法規・規章および政策を宣伝することであり︑これと民事訴訟法が規定する民事訴訟法の任
務は︑その基本的精神は一致しており︑大量の民間紛争を人民調解委員会で解決し︑調解委員会は民事紛争を解決す
る第一の防御線であ﹂り︑なおかつ民事訴訟法は人民調解委員会は基層人民政府および基層人民法院の指導の下に︑
民間紛争を解決する大衆性組織であると規定することから︵民事訴訟法一六条︶︑﹁民事訴訟法は法律上人民調解委員
会の性質・地位および機能を肯定しており︑人民調解を人民司法の軌道に導き入れ︑人民調解は民事紛争を解決する
道のひとつであることを肯定し︑これは人民大衆が自ら教育し︑自ら矛盾を解決するという好ましい形式であり主要
( 32 )
な経験である﹂として︑司法制度上の一環であると認識されている︒このことは︑人民調解制度を大衆的自治制度で
あると位置づけながらも︑実際には司法制度の一翼を担う制度であることを明らかにしており︑中国における司法制
( 3 3 )
行政調解とは︑法にもとづき調解の義務を負う国家行政機関が特定の民事経済紛争に対して行う調解を指す︒
には︑司法助理員︵詳細については後述する︶による調解︑公安機関による調解︑および労働争議の調解が行政調解
( 34 )
の範疇に含まれる︒近時の立法では︑一九九七年︱一月三日の国家工商行政管理局の﹁契約争議行政調解雛法﹂で︑
法人・組合・個人工商業者・農村請負経営者およびその他の経済組織相互間に発生した契約紛争について︑エ商行政
( 3 5 )
管理機関が調解を行う旨規定している︒ 関法
︵七
二六
︶
され
る︒
中国
にお
ける
公安
機関
によ
る私
人間
紛争
の解
決︵
一︶
につ
いて
概観
する
︒
一六
九
ところで︑先の①②で述べた︑行政機関による﹁処理﹂が︑果たして行政調解の範疇に含まれるのか否かが問題と
なる︒この点を明らかにする文献等は︑管見のおよぶ限りにおいては存在しない︒商標法三九条一項にいう﹁処理﹂
( 36 )
について︑国務院の手によって編纂されたコンメンタールにおいては﹁裁決﹂を指すようであるが︑必ずしも明確で
はない︒同じく﹁処理﹂という用語を使用する人民調解委員会組織条例九条二項は︑基層人民政府による行政調解の
意に用いられてい酎︒また︑一九九一年六月︱︱日の最高人民法院﹁︿中華人民共和国行政訴訟法﹀を貫徹・執行す
る若干の問題に関する意見︵試行︶﹂の六では﹁行政機関が公民・法人あるいはその他の組織およびそれら相互の民
事上の権利利益をめぐる紛争の間に入り調解を行いあるいは法律・法規の規定にもとづいて仲裁処理を行い︑当事者
が調解・仲裁に不服で︑人民法院に対して訴訟を提起する場合︑人民法院は行政事件として受理しない﹂として︑行
政機関が私人間紛争の調解を行うことを︑いわぱ自明のこととして規定している︒このことからして︑各条文にいう
﹁処理﹂の中に調解処理も含まれるのではないかと強く推測させる︒しかし︑このように﹁処理﹂の意味するところ
が統一されておらず︑しかもひとつの﹁処理﹂という用語の中にも様々な内容・概念が含まれている可能性が大きい
ことから︑本稿ではひとまず①②にいう行政機関による﹁処理﹂については行政調解の範疇に含めないこととする︒
司法助理員︵基層人民政府︶調解が行政調解の代表例であることから︑以下では司法助理員︵基層人民政府︶調解
司法助理員調解︑あるいは基層人民政府調解ともいうが︑これは基層人民政府に所属する司法助理員による調解を
指す︒司法助理員調解は司法助理員工作暫行規定︑民間紛争処理雛法および郷鎮法律服務業務工作細則によって規律
︵七
二七
︶
第四九巻第五号
︵七
二八
︶
まず︑司法助理員について︑司法助理員は基層政権の司法行政工作人員であると規定され︑鎮・街道辮事処には専
従の司法助理員をおかなければならないとされる︵司法助理員工作暫行規定二条︶︒しかし︑専従の司法助理員をお
<郷鎮人民政府・街道弁事処は少なく︑郷鎮人民政府の場合の多くは兼職の司法助理員であり︑街道弁事処に至って
( 3 8 )
は兼職の司法助理員すらおいていないところが多いという
司法助理員は︑基層人民政府の司法行政工作人員であり︑民間紛争処理工作に具体的に責任を負うとされ︵民間紛
争処理雛法二条︶︑郷鎮人民政府・街道弁事処および県︵区︶司法局︵科︶の指導および基層人民法院の指導の下に
︵郷鎮法律服務業務工作細則二条後段︶︑以下の職務を遂行するとされる︵同三条︶︒日人民調解委員会の活動を管理
( 39 )
すること︒口民間調解活動を指導・検査し︑困難な紛争の調解に参加し︑人民調解活動に関する来信・来訪を接受し
処理すること︒曰実際の必要性と切り結び︑関係する政策・法律・法令および道徳気風の宜伝・教育を行うこと︒回
管轄区内に発生した紛争の原因︑特徴および法則を調査研究し︑あわせて紛争防止方法を提出すること︒田大衆の現
行の法律・法令および司法工作に対する意見および要求を理解し︑あわせて上級機関に報告すること︒
このように︑司法助理員は人民調解委員会の活動の管理・指導・検査を行うほか︑一定の範囲の民事・経済紛争を
直接的にあるいは間接的に調解するとされる︒民間紛争処理雛法によれば︑基層人民政府
1 1司法助理員が処理する民
間紛争の範囲は、人民調解委員会組織条例に規定する民間紛争、すなわち公民の間の人身•財産上の権利利益および
その他の日常生活において発生した紛争であるとすることから︵三条︶︑郷鎮法律服務業務工作細則三条にいう紛争
もまた︑民間紛争を意味するであろう︒具体的には︑司法助理員は二種類の紛争の調解︑すなわち︵人民調解委員会
( 40 )
で調解する事が困難な︶複雑な民事紛争および一般的な経済紛争を調解する︒ 関法
一七
〇
中国
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によ
る私
人間
紛争
の解
決
司法助理員調解の効力について︑司法助理員調解も人民調解と同様に非司法機関による調解であることから︑その 効力もまた紛争当事者に対して法的効力を有するものではないとされる︒しかし︑﹁司法助理員は基層政権組織の司 法行政工作人員であり︑彼が主宰する調解は︑基層政権組織を代表する調解であり︑当事者に対して一定の行政的拘 束力を有し︑また司法助理員は当事者に対して一定の行政的督促権を有し︑その主宰の下に達したところの調解合意 の執行を保証する﹂として︑法的拘束力はないものの︑行政機関の威光とメンツにより︑当事者に対して実質上の拘
( 42 )
束力を有するという学説が存在する︒このように︑司法助理員調解もまた︑人民調解と同様︑当事者に対する法的拘 政調解の場合も最大の目的としていると考えられる︒
一七
解決が困難な複雑な民事紛争とは︑紛争の事情が比較的複雑で︑争われている事実があまり明らかではなく︑調査 し証拠を収集することが比較的困難で︑当事者双方の権利義務関係があまり明確ではなくかつ対立感情が深刻で︑争
( 4 1 )
われている金額が比較的大きく︑人民調解委員会が解決するのが困難な紛争であるとされる︒たとえば︑長年にわた る隣人間の対立︑当事者双方の権利義務関係に関して書面による合意が存在しない場合︑事実関係が簡明な場合で あっても当事者間の感情的なもつれがすこぶる深刻で︑互いに一歩も譲歩しそうにない場合︑人民調解委員会の力量 に問題があり︑人民調解では解決できなかった場合︑これらが解決が困難な紛争と見なされるようである︒
手続について︑司法助理員が調解を受理するには︑当事者の申請あるいは人民調解委員会の請求による場合と︑司 法助理員が自ら紛争あるいは紛争の芽を発見し︑能動的に調解を行う場合とがある︒当事者の申請の有無にかかわら ず司法助理員が紛争の事実あるいは紛争の萌芽を発見した場合に自ら調解を行い得るとする点は︑人民調解の場合と 同様である︒このことから︑人民調解と同様︑治安維持および紛争が︵刑事事件に︶発展する事を抑止することを行
︵七
二九
︶
中国
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ける
公安
機関
によ
る私
人間
紛争
の解
決(
‑)
い︵
同二
項︶
︒
( 4 6 )
的サーヴィスの提供を目的とする大衆組織のひとつであると解するのが通説のようである︒その理由は明確ではない
が︑私見によれば︑郷鎮法律服務所は郷鎮人民政府および司法助理員により設立・運営されてはいるものの︑それを
担っている郷鎮法律工作者が大衆に依拠しているために大衆組織とみなされているものと思われる︒
郷鎮法律服務所は法律家人口の少ない地方・農村部において法的サーヴィスを人民に提供することを主たる目的と
している︒それゆえ︑郷鎮法律服務所が提供すると規定される服務
1 1サーヴィスには︑各種各様のものが含まれてい
る︒たとえば︑企業などの招聘に応じて法律顧問となること︑民事・経済・行政訴訟活動に紛争当事者の代理として
参加すること︑非訴事件に代理参加すること︑紛争の調解を主宰すること︑法律相談に応じること︑法律文書を代筆
すること︑公証事務の処理に協力すること等である︵郷鎮法律服務業務工作細則三条︶︒このうち︑本稿の関心との
関係から︑以下では郷鎮法律服務所による調解について検討を進める︒
( 47 )
郷鎮法律服務所は以下の紛争の調解を受理する︵郷鎮法律服務業務工作細則五0条一項︶︒日郷鎮企業およびその
他の集団所有制・私営経済組織の生産・経営および管理の過程において発生した各種の経済紛争および労働争議紛争︒
口請負経営戸・個人工商業戸・個人組合組織および農村村民の生産および経営の過程において発生した各種の経済・
財産上の権利利益にかかわる生産・経営に関する紛争︒曰農村公民の間に発生した遺産相続︑分家による財産分け︑
農配.扶養・扶育︑債権債務︑民間贈与︑不法行為損害賠償などの財産上の権利利益の性質を有する民事紛争︒ただ
函 ︶
し︑法律・法規および規章力必ず専門機関により管轄・処理される紛争であると規定する場合︑人民法院・公安機関
およびその他の部門がすでに受理あるいは解決した紛争である場合︑郷鎮法律服務所は調解を受理することができな
一七
三
︵ 七
三 一
︶
りは
ない
︒
第四九巻第五号
︵七
三二
︶
郷鎮法律服務所が調解する紛争のうち︑日口については︑行政調解の範疇にある経済紛争とほぼ同じであり︑曰に
ついては︑人民調解の範疇である民間紛争とほぼ同じとみなしてよい︒このように︑社会調停でありながら︑行政調
解と人民調解の双方の機能を郷鎮法律服務所による調解が担うのは︑郷鎮法律服務所の設立目的が︑農村部における
郷鎮法律服務所による調解の効力については︑人民調解および行政調解と同様に法的な拘束力はないとされるが︑
郷鎮法律服務業務工作細則では︑当事者双方は自覚的に全面的に履行しなければならないと規定するとともに︵六二
条一項︶︑当事者の一方あるいは双方が故なく履行しないあるいは履行を遅滞する場合は︑郷鎮法律服務所は当事者
に対して説服教育を行い︑履行を促さなければならず︑また当事者の一方あるいは双方に困難ないしは意外な原因が
あることにより期日に履行することができない場合には︑双方に取り決めを結ばせて履行期日を延期させなければな
らないとする︵同二項前段︶︒しかし︑当事者の一方が調解内容を履行せず︑説服も功を奏さなかった場合には︑郷
鎮法律服務所は他方当事者に対して人民法院に対して訴訟を提起するよう告げることができるとするとともに︵同二
項後段︶︑当事者が調解を拒絶しあるいは調解が不調に終わった場合には︑事案の性質にしたがって︑仲裁機関に対
する仲裁の申し立てあるいは人民法院に対する訴訟の提起により︑また解決が困難な民間紛争については︑郷鎮人民
( 50 )
政府に対する処理の請求により︑それぞれ紛争を解決するよう︑当事者に告げると規定する︵六三条︶︒
このように︑郷鎮法律服務所による調解もまた︑当事者に対する法的拘束力はないとされながら︑郷鎮法律服務所
および郷鎮法律工作者の積極的な関与により︑実質上の拘束力を有するとするところは︑人民調解・行政調解と変わ 法的サーヴィスの空白を補うことにあるためである︒ 関法
一七
四
中国
にお
ける
公安
機関
によ
る私
人間
紛争
の解
決
一七
五
本章では中国における私人間紛争の解決に関する制度を概観した︒そこには司法的解決方法と非司法的解決方法と が混在しており︑しかも非司法的解決方法が積極的に私人間紛争の解決の役割を担っていることがわかる︒これはと くに調解制度において顕著で︑司法的解決方法への道を閉ざすものではないが︑当事者の自由意思による調解である としながらも︑社会的圧力による拘束力の担保等により︑実際上は調解制度によってできる限り紛争を終結させよう ところで︑訴訟外調解制度の検討をつうじて︑紛争のレヴェルにしたがって調解を主宰する機関・組織が異なるこ
とに気付く︒すなわち︑中国では二種類の私人間紛争︑すなわち軽微な私人間紛争
11
民間紛争とそうではない︑いわ
ば一定程度まで進展した私人間紛争
11
民事紛争が存在すると観念されており︑民間紛争については訴訟外調解制度を 用いて解決を図るとしている︒また︑民間紛争にもいくつかの段階があり︑もっとも軽微な民間紛争については︑大 衆的自治組織である人民調解委員会による調解で解決を図り︑人民調解委員会で解決することができない
かった︶民間紛争
11程度が進んだ民間紛争については司法助理員による行政調解で解決を図ろうとしている︒そして
行政調解でも解決することができない程こじれた民間紛争
11
民事紛争については︑法院による解決を図ろうというの
である︒平たくいえば︑私人間紛争は︑もっとも軽微な民間紛争←より進展した民間紛争←民事紛争という段階を踏 んで発展し︑その発展段階に応じた紛争解決能力を持つ組織・機関︑すなわち﹁大衆的自治組織﹂︵人民調解委員会︶
←﹁行政組織﹂︵司法助理員︶←﹁司法機関﹂︵法院︶という段階で︑それぞれ解決に当たるというものである︒
このような紛争の分類とそれに対応する解決機関の設定という構図は︑﹁矛盾の転化﹂︑﹁民間紛争の激化﹂という
と努力する様子がうかがえる︒
小
括
︵ 七 ︱
︱ ︱ ︱
︱ ‑ ︶
︵で
きな
について︑その制度的側面について検討する︒ 紛争観に根ざすものである︒すなわち︑﹁紛争は些細なことからの口喧嘩や姦情がきっかけとなって﹂﹁生活への影響︑
( 51 )
群殴︑凶殺︑民族対立︑自殺にまで発展するので適切な処理が望まれる﹂のである︒
このような紛争観とそれにもとづく紛争処理という観点に留意しつつ︑次章では公安機関による私人間紛争の解決
註(1)裁判・司法をどのように定義づけるかについて︑小口彦太ほか﹃中国法入門﹄︵三省堂︑一九九一年︶四七頁では︑ある
紛争解決が裁判によるといえるためには︑少なくとも以下の属性をそなえていなければならないとする︒第一に︑裁判の前 提として争いや事件が現実に存在すること︒第二に︑それらの紛争・事件に対する訴えが当事者の一方または双方からなさ れること︒第三に︑裁判はあい争う当事者に対する第三者の立場からの判定でなければならないこと︒第四に︑この第三者 による判定は当事者の主張と反論を基礎としたものでなければならないこと︒第五に︑決定の主体は他人に業務の一部ない し全部を委譲することなく︑自らの手で独立して決定を下すものでなければならないこと︒そして︑このような方式による 実体的判断が客観化された法準則にのっとって行われるとき︑これを司法と称することができるが︑逆に客観的法準則があ るからといって裁判が行われているとは限らないという︒以上をまとめれば︑紛争の存在︑当事者からの訴えの提起︑第三 者による判定と対審構造︑裁判の担い手の当事者からの独立︑あらかじめ示された法的根拠にもとづく手続が︑裁判・司法 の要件であるということになる︒私見によれば︑くわえて担い手が国の司法機関である裁判所であること︑および紛争解決 の結果の当事者に対する法的拘束力も要件とされるべきではなかろうかと考える︒本稿では以下に︑これらの要件がさしあ たりそなえられているものを﹁司法﹂とし︑他方︑これらの要件がそなえられていないものを﹁非司法﹂とすることとする︒
もっとも︑中国における紛争解決制度について︑二分法的に﹁司法的﹂﹁非司法的﹂︵あるいは﹁法的﹂﹁非法的﹂︶と単純 に区分することは︑一面において実体を正確に反映し得ない可能性がある︒たとえば︑中国の司法機関である人民法院によ る﹁裁判﹂といえども︑以上の要件が必ずしもすべてそなえられているとは限らず︑実際には多くの場合︑非司法的手法に
関法
第四九巻第五号
一七
六
︵ 七 ︳ ︱
‑ 四 ︶
中国における公安機関による私人間紛争の解決︵
一七
七
よって紛争解決がはかられていることが︑これまでにも多く指摘されてきていることは︑周知のとおりである︒高見澤麿
﹃現代中国の紛争と法﹄︵東京大学出版会︑一九九八年︶︑鈴木賢﹁人民法院の非裁判所的性格﹂比較法研究五五号(‑九九
︳︱‑年︶︑同﹁中国における民事裁判の正統性に関する一考察﹂小口彦太編﹃中国の経済発展と法﹄︵早稲田大学比較法研究所
叢所二五号︑一九九八年︶等参照︒この点のみからしても︑法院による紛争解決であるからといって︑必ずしもそれが司法
的紛争解決であると断言することはできず︑司法的解決と非司法的解決の中間的なケースが広範に存在している︒
そこで︑中国においては︑ある一線を境にして︑一方を司法とし︑他方を非司法と区分し得るというよりは︑むしろ︑一
方を﹁司法﹂の極とし他方を﹁非司法﹂の極として︑その間に︑様々な中間形態がいわぱグラデーション状に分布している
ととらえるぺきであって︑しかもグレーゾーンの幅が広く︑ある一線をもって司法・非司法を区別することは困難であると
思われる︒しかし︑そうはいってもある制度を評価する際において︑その制度が司法・非司法を両極とするグラデーション
上のどこに位置するかを︑相対的にあらわすことは可能であろうと考える︒そこで︑本稿ではあえて︑紛争解決方法につい
て︑﹁司法﹂の極に近い事象を﹁司法的﹂紛争解決方法と︑また﹁非司法﹂の極に近い事象を﹁非司法的﹂紛争解決方法に︑
それぞれ区分することとした︒
(2
)
例えば︑日本における公害紛争処理法にもとづく公害等調整委員会による公害紛争の解決︑労働関係調整法にもとづく労
働委員会その他の第三者機関による労働争議の解決など︒
(3
)
一九八二年︱二月四日分布・施行︒
(4
)
一九七九年七月五日分布・一九八0年一月一日施行︒一九八六年ニ一月一0
日に 一部 改正
︒
(5
)
一九九一年四月九日分布・施行︒
(6
)
一九八二年八月二三日公布︑一九八三年三月一日施行︒
(7
)
一九八七年五月ニ︱日公布︑一九八八年一月一日施行︒
(8
)
一九八七年六月二三日公布︑一九八七年︱一月一日施行︒なお︑同法は︑一九九九年一0月一日の契約法施行にともない︑
失効 して いる
︒
(9
)
一九八四年九月二0日公布︑一九八五年七月一日施行︒
( 1 0 )
一九八四年三月︱二日公布︑一九八五年四月一日施行︒
︵七
三五
︶
関法 第四九巻第五号
( 1 1 )
全国人民代表大会常務委員会法制工作委員会刑法室・中国高級律師高級公証員培訓中心編著﹃中華人民共和国法律集注﹄
︵法律出版社︑一九九二年︶一〇七八‑10
七九 頁参 照︒
( 1 2 )
一九八八年一月ニ︱日公布︑一九八八年七月一日施行︒
( 1 3 )
一九 八八 年六 月一
0
日公 布・ 施行
︒
( 1 4 )
一九 八七 年一
0月二六日公布︑一九八七年︱二月一日施行︒
( 1 5 )
一九八五年六月一八日公布︑一九八五年一0
月一 日施 行︒
( 1 6 )
一九九七年三月二0日公布︑一九九七年一0
月一 日施 行︒
( 1 7 )
一九八九年六月一七日公布・施行︒
( 1 8 )
一九八一年︱一月一八日公布・施行︒
( 1 9 )
一九
九
0年四月一九日公布・施行︒
( 2 0 )
一九九一年九月二0
日公 布・ 施行
︒
( 2 1 )
現行制度の下での調解には︑大別すると訴訟︵法院︶内調解と訴訟︵法院︶外調解の二種類があり︑本稿では以下に訴訟
︵法院︶外調解について検討を進める︒なお︑訴訟︵法院︶内調解とは︑民事審判手続において法院主宰の下︑当事者双方
の自由意思にもとづいて行われる調解であって︑調解合意に至ると判決と同様の法的効力を有するとされる︒民訴法八五条
ないし九一条︒なお︑法院調解︵訴訟内調解︶を中心に︑中国において紛争解決に調解が多用される点を理論的に解明した
研究として︑高見沢・前掲註
(1
)参
照︒
( 2 2 )
大衆的自治組織とは︑基層の人民政府のさらに下に設置された住民による自治機関で︑都市部においては居民委員会︑農
村部においては村民委員会︑およびその下部委員会である人民調解委員会・治安防衛委員会・公衆衛生委員会などがこれに
あたる︒一般には﹁自治組織﹂と呼ばれているが︑実質は末端行政機関の出先に近い役割を担っているとみたほうがよい︒
木間正道ほか﹃現代中国法入門﹄︵有斐閣︑一九九八年︶七八ー七九頁参照︒(23)人民調解の歴史的経緯については、田中信行「現代中国の人民調停制度ー一九四0—一九五三ー」東京都立大学法学
会雑誌第二三巻第二号一四七頁以下を参照︒また︑人民調解制度を法創造との関連で検討した研究として︑季衛東﹁調停制
度の法発展メカニズムi国法制化のアンビバレンスを手掛りとしてー(‑)ー(‑︱︱・完︶﹂民商法雑誌第一0二巻第
一七 八︵ 七三 六︶
中国における公安機関による私人間紛争の解決︵一︶
一七
九
六号
︑第 一
0三巻第一号・第二号参照︒
( 2 4 )
常恰主編﹃中国調解制度﹄︵重慶出版社︑一九八九年︶七五頁以下︒なお︑単位内部における調解について︑季衛東﹁調
停制度の法発展メカニズム︵二︶﹂民商法雑誌一0三巻一号五0
頁以 下参 照︒
( 2 5 )
一九
九
0年四月一九日司法部令第八号発布︒(26)常恰•前掲註(24)
10
二頁
10
八頁
!︱
‑八 頁︒ (27)常恰•前掲註(24)
10
二頁
︒
(28)常恰•前掲註(24)-―九頁。(29)常恰•前掲註(24)―二八頁。
( 3 0 )
周作彩﹁人民調停委員会﹂天児慧ほか編﹃現代中国事典﹄︵岩波書店︑一九九九年︶五九0
頁 ︒ ( 3 1 )
楊栄新主編﹃民訴法教程﹄︵中国政法大学出版社︑一九九一年︶二六頁︒
( 3 2 )
柴発邦主編﹃民事訴訟法学新編﹄︵法律出版社︑一九九二年︶一四頁︒(33)常恰•前掲註(24)一三九頁。(34)常恰•前掲註(24)一四0ー一四一頁参照。
( 3 5 )
﹃中華人民共和国国務院公報﹄一九九八年代二号八一頁以下︒
( 3 6 )
﹃中華人民共和国法律集注﹄前掲註
( 1 1 )
九七 五頁
︒
(37)常恰•前掲註(24)一四三頁。(38)常恰•前掲註(24)一四二頁。なお、基層人民政府における司法助理員の実数については不明である。
( 3 9 )
行政機関や司法機関に対する︑手紙や訪問による相談をいう︒(40)常恰•前掲註(24)一四三頁。(41)常恰•前掲註(24)一四三頁。(42)常恰•前掲註(24)一五0頁(43)常恰•前掲註(24)五一頁。
( 4 4 )
社会主義の道の堅持︑人民民主主義独裁の堅持︑共産党の指導の堅持︑マルクス・レーニン主義・毛沢東思想の堅持を指
︵七
三七
︶
す︒82年憲法の前文にも﹁国是﹂として規定されている︒(45)常恰•前掲註(24)六一頁。(46)常恰•前掲註(24)六一頁。
( 4 7 )
一九九一年九月二0日司法部令第一九号︒出典は中国司法行政年鑑編輯委員会編﹃中国司法行政年鑑
出版社︑一九九七年︶八八七頁以下︒
( 4 8 )
夫婦間の扶養を﹁扶養﹂︑親から子・祖父母から孫・兄姉から弟妹への扶養を﹁撫養﹂︑子から親・孫から祖父母といった上の世代に対する扶養を「贈養」と、それぞれ呼ぶ。木間ほか•前掲註(22)二四三ーニ四四頁参照。
( 4 9 )
全国人民代表大会および同常務委員会が規定した法を法律︑国務院が規定した法を︵行政︶法規︑国務院の下の各部が制
定した法を︵行政︶規章と呼ぶ︒
( 5 0 )
司法所における民間調停をめぐる裁判例として︑中国高級法官培調中心・中国人民大学法学院編﹁中国審判案例要覧一
九九六年民事審判巻﹄︵中国人民大学出版社︑一九九七年︶四一0頁を挙げることができる︒
[事
案]
一九七八年四月の洪水の際︑被告Y男の兄・訴外A男が︑原告x男を救助しようとして死亡した︒その後Y
の家 族は
A
の葬儀費等をX
に要 求し たが
︑
Xに負担能力がないことおよび双方が姻戚関係にあること等から︑葬儀費用等はY家の負
担で 行い
︑
Xはとうもろこし百斤および反物二件を補償としてY家に渡し︑生産隊もまた杉の木八本を補助としてY
家に
渡した︒その後両家の関係は良好であったが︑一九九四年に双方に紛争が生じ︑YはAの死亡による賠償問題をあらため
て提起した︒一九九五年一月に︑YはXに対してAの死亡により生じた葬儀費一︑五
00
元の賠償を要求し︑現地の司法
所主宰の調解により︑双方は合意に達し︑書面による取決めを締結した︒しかし︑その後Xは当該調解合意は司法所の詐
欺.脅迫の下に承認したものであることを理由に︑人民法院に対して賠償合意の取消を求めて訴訟を提起した︒
祠決
一 ]
審で
は︑
Aの配偶者︑子ども︑父母のすべてが健在であることから︑弟であるYには相続権はなく︑したがって相続
権から派生する損害賠償請求権も生じないこと︑なおかつAの死亡後︑その家族から一度も賠償請求がなされていないこ
とから︑訴訟時効期間をすでに超過していることを理由に︑Xの請求を全面的に支持し︑司法所主宰の調解を無効とした︒ 関法
第四九巻第五号
一八
〇
︵七
三八
︶ 一九
九五
﹂︵ 法律