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国連公海漁業実施協定第七条における一貫性の原則

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国連公海漁業実施協定第七条における一貫性の原則

その他のタイトル Principle of Compatibility under Article 7 of the Straddling Stocks Agreement

著者 加々美 康彦

雑誌名 關西大學法學論集

巻 50

号 4

ページ 718‑769

発行年 2000‑11‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00023597

(2)

目 次 第 一 章 は じ め に 第二章一貫性原則を必要とした背景 曰国連海洋法条約における漁業関連規定上の問題点 口 沿 岸 国 側 の 見 解 曰 公 海 漁 業 国 側 の 見 解 第 三 章 起 草 過 程 日第七条の起草過程

,9 . 

* 

︱ ︱

第四章第七条における保存管理措置の一貫性

 

日﹁一貫性﹂の意味

口一貫性の確保方法と第七条二項の列挙要因 曰合意なき場合の手続 第五章むすびにかえて

加 々 美 康 彦

国連公海漁業実施協定第七条における一貫性の原則

九 四

︵七 一八

(3)

国 連

公 海

漁 業

実 施

協 定

第 七

条 に

お け

る 一

貫 性

の 原

九 五

漁業に関する国際法は︑第二次大戦後︑主に二つの線に沿って発展してきたと言われる︒まず第一に︑条約︑とり

わけ地域的な条約により︑公海漁業の自由を修正することによって︑そして第二に︑沿岸国による管轄権の公海への

( 1 )  

拡大によってである︒こうした修正を必要とした背景には︑戦後の技術革新に伴う過当な漁獲競争と︑それに伴う資

源の減少︑ひいては魚類資源の商業的な枯渇があった︒伝統的な海洋の国際法構造である﹁せまい領海︑ひろい公

海﹂という二元構造の下では︑公海においては︑漁獲能力の高い者が魚類資源を獲得するという自由競争ルール︵公

海自由原則︶が支配し︑そこでの資源保存という観念は︑希薄なものであった︒

•こうした中で、沿岸国は、沿岸漁業共同体の利益を重視し、外国との競争の回避、公海魚類資源の配分及びそこか

ら得られる経済的利益を確保するため︑公海において何らかの優先的立場あるいは管轄権の拡大を主張するという立

( 2 )  

場をとってきた︒これに対し︑遠洋漁業者の利益を重視する公海漁業国は︑公海において自国漁船が受ける規制を最

( 3 )  

小限にして︑自国民が漁獲できる漁場を確保することに利益を有する︒

もっとも︑沿岸国と公海漁業国は共に︑公海における魚類資源の保存管理が必要であることには異論はない︒しか

し︑保存管理を行う権限は︑﹁そこで誰が魚を獲るのか?﹂という問題と密接に関係するため︑その権限をめぐって︑

沿岸国は自らの権限を公海に及ぼそうとするのに対し︑公海漁業国は関係国が平等を基礎に協力して当たるべきであ

るとして対立してきた︒漁業に関する国際法は︑まさにこの両陣営の対立を軸として発展してきたのである︒

これまで世界的な規模で締結されてきた条約は︑沿岸国側にくみする形で︑沿岸国が管轄権を主張することのでき

第 一 章 は じ め に

︵ 七

一 九

(4)

第五 0

巻 第 四 号

る海域を拡大することで︑対立の解消を図ってきた︒そしてこれは︑国連海洋法条約が距岸二

0

0 カイリの排他的経

済 水

域 ︵

以 下

︑ E

E N

)

制度を導入したことで終了したと考えられた︒全世界の漁獲量の九割以上が

EEZ

内から水

揚げされるからである︒しかし︑

EEN

と公海という区分を認めたことは︑新たな問題を投げかけることとなった︒

回遊魚の保存管理問題である︒

︵ 七

0 )

海洋の国際法構造の︱つの特徴は︑その規律対象となる事象とは離れた︑政治的な考慮に基づき区分される海域毎

に︑関係国が行使しうる権能を配分してきたことである︒漁業制度についても︑今世紀はじめ︑英国のフルトン

( T .  

W .   F

u l t o n ) は ︑ 次 の よ う に 述 べ て い る ︒ ﹁ ︵ 領 海 ︶ 三 カ イ リ の 限 界 が 選 択 さ れ た の は ︑ 別 段 漁 業 を 根 拠 と す る の

ではなく︑それが既に認められていたからであり︑そして当時の砲弾のおよその射程距離として表された︑戦時の中

( 4 )  

立権及び交戦権との関係で効力を有していた﹂にすぎず︑﹁その漁業権への適用は︑偶然かつ恣意的なものである﹂︑

( 5 )  

と︒その意味では︑今日の

EEZ

制度にも同じことが言える︒魚類資源は︑政治的に定められた

EEN

の内外を自由

に回遊するのであって︑実効的に管理するためには︑

EEN

の内外で資源を一体として管理することが望ましい︒と

ころが︑海洋法条約が設けた

EEZ

と公海を区分する管理方式︵ゾーナルアプローチ︶は︑距離を基準に区分される

海域毎に︑異なる管理措置をとらせるものであり︑魚類資源の生態に即したものとはなり得ない︒そこで︑いかにし

て海洋法条約の制度を︑かかる魚類資源の生態に沿う形で管理させうるか︑という問題が持ち上がった︒

しかしながら︑ここで大きな困難に直面する︒海洋法条約上のゾーナルアプローチを前提とする場合︑資源全体を

一体として管理する︱つの方法として︑

EEZ

内外の措置に整合性を持たせることが考えられるが︑その場合︑公海

の規則が︑既存の

EEN

の規則に適合すべく作成され又は変更されるのであれば︑それは沿岸国管轄権の拡大を意味

関 法

九 六

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日国連海洋法条約における漁業関連規定上の問題点

第二章

一貫性原則を必要とした背景

魚の保存管理制度上の問題点を見ていくこととする︒

九七 し︑他方︑多数国間で採択された公海の規則に両立するするような

EEN

の規則を設定するのであれば︑それは沿岸

( 6 )  

国の主権的権利の侵害を意味するのである︒

( 7 )  

一九九五年︱二月四日に署名のため開放された国連公海漁業実施協定︵以下︑実施協定とする︶は︑その第七条

︵保存管理措置の一貫性︶において︑

EEZ

内外の保存管理措置を一貫させるという原則を導入することで︑上記の

難問を解決するための︱つの試みを行っている︒本稿は︑実施協定第七条の定める制度が︑資源全体を一体として管

理するために︑どのような解決方法を定めたのかについて考察するものである︒ではまず︑海洋法条約が抱える回遊

国連海洋法条約は︑その第五部において︑

EEN

に関する詳細な規則を定めている︒この﹁第五部が扱う唯一の側

( 9 )

1 0 )

 

面は︑漁業に関する事項﹂であり︑﹁そのほとんどが︑沿岸国の権利を規定している﹂とさえ言われるが︑実際︑沿

岸国がそこで行使しうる権限は︑極めて広い︒すなわち︑生物資源か非生物資源かを問わず︑天然資源の探査︑開発︑

保存及び管理のための主権的権利を有する︵条約第五六条︶︒さらに︑この主権的権利の行使に係る紛争の多くが︑

義務的紛争解決手続から除外されていることからも明らかなように︑沿岸国は︑広い裁量権に基づき︑資源を保存管

( 1 1 )

1 2

)  

理できるのであって︑事実上ほとんどの資源を沿岸国に配分するという結果となっている︒

このような制度が導入された背景には︑伝統的な漁業制度では︑﹁せまい領海﹂に隣接する公海漁場において自由

︵ 七

ニ ︱

)

(6)

第五0巻第四号

︵ 七

二 二

原則に基づき操業する外国漁船から︑自国沿岸漁民の利益を十分に保障しえないという沿岸国の根強い不満があった︒

そこで︑第三次国連海洋法会議の討議の過程で︑この経済水域制度の導入が確実視されるや︑条約の発効する以前か

ら︑﹁つまみ食い﹂され︑多くの国の国内法令に取り入れられたことは周知の通りである︒しかしながら︑多くの海

域で二

0

0 カイリ水域が設定されるにつれ︑徐々に具体的な問題点が浮かび上がってきた︒

従来は公海であった二

0

0 カイリ内の漁場から締め出された遠洋漁船団は︑二

00

カイリの外側に僅かに残された

( 1 3 )  

公海漁場において︑採算をとるために︑商業価値の高い底魚魚種を中心に︑漁獲努力を強めざるを得なかった︵いわ

ゆるドミノ現象︶︒また︑主要な公海漁場を規制する幾らかの地域的漁業機関では︑規制措置に合意することができ

( 1 4 )  

ないといった事態が生じていた︒そして実際に︑魚類資源の減少傾向が伝えられるや︑沿岸国はいよいよ危機感を強

( 1 5 )  

め︑公海漁業規制の強化が焦眉の課題となった︒

もっとも︑こうした状況を︑海洋法条約がまった<想定していなかったというわけではない︒第八七条一項国は︑

公海における漁獲の自由を認めているが︑﹁第二節に定める条件に従って﹂という制限が付されている︒この第二節

は︑﹁公海における生物資源の保存及び管理﹂と題され︑第一︱六条から第一︱九条が関係するが︑とりわけ︑第一

一六条⑯は︑すべての国が﹁特に第六三条二項から第六七条までに規定する沿岸国の権利︑義務及び利益﹂に従って

漁獲を行うと定めている︒すなわち︑公海漁業権は︑第一︱六条⑯に従ってのみ享有される権利である︒ここで問題

となっているのは︑二

0

カイリ制度の導入に伴って︑ 0

EEZ

内外に分布することとなった魚類資源である︒具体的

( 1 6 )

1 7 )

 

には︑ストラドリング魚類資源︵第六三条二項︶及び高度回遊性の種︵第六四条︶を指す︒公海漁業国は︑これらの

魚類資源を漁獲するに当たっては︑第一︱六条⑯に基づき︑第六三条二項及び第六四条に含まれる﹁沿岸国の権利︑ 関法

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ところが︑第六三条二項は︑沿岸国と公海漁業国が︑当該接続する水域において︑当該資源の保存のために必要な

措置について合意するよう努めることを定めるにすぎず︑また︑第六四条も︑当該資源を漁獲する国が︑ EEN

の 内

外を問わず当該地域全体において︑保存を確保しかつ最適利用の目的を促進するため︑直接に又は適当な国際機関を

通じて協力することを定めているにすぎない︒そのため︑公海漁業国としては︑かかる魚類資源について保存措置を

とる必要性に異論はなくとも︑どのような内容の協力をどこまで果たせば義務の履行となるのか︑すなわちその協力

義務の内容が明らかではなく︑さらに︑措置に合意できない場合の婦結が明らかにされていないため︑合意なき場合

には︑公海漁業国が独自に保存措置を決定して操業することを排除していない︒従って︑﹁ストラドリング魚種に関

する多数国間で採択された漁業規則と EEZ 内で適用される沿岸国の規則が併存することとなり⁝⁝時として両者の

( 1 8 )  

規則が積極的に抵触する﹂ことが十分に予想されるのである︒

このように︑海洋法条約は︑公海上で保存管理措置をとるに当たって︑関係国に協力義務を課してはいるものの︑

その詳細は明らかとは言えない︒そこで︑この協力義務の内容を明らかにするという文脈で︑どのように EEN

の 内

一 九

0 年代後半以降︑頻繁に論じられてきた︒これは︑いわ

ゆるストラドリング・ストックの問題と呼ばれ︑沿岸国と公海漁業国の間で鋭く見解が対立した︒以下では︑この問

題をめぐる沿岸国側に立つ論者と公海漁業国側に立つ論者のそれぞれの見解を見ていくこととする︒ 外で一体性のある措置を確保しうるかという問題が︑ 義務及び利益﹂に服する義務を負う︒

︵ 七

二 三

(8)

海漁業国が公海上の措置に合意できず︑乱獲を導いているという状況を敷術した上で︑﹁沿岸国が管轄権を一方的に︑

若しくは二国間で拡大することに代わる︑唯一の選択肢﹂として︑次のような﹁提案﹂を行う︒すなわち︑﹁︵海洋

法︶条約第一︱六条は︑公海において漁獲する権利が︑特に第六三条二項から第六七条に言及して︑沿岸国の権利︑

義務及び利益に従うことを宣言している︒従って︑少なくとも公海でストラドリング・ストックの漁獲を行う国は︑

それらの資源を保存し︑沿岸国と協力する義務を有する﹂︒そして︑﹁第一︱六条を実効的なものとするためには︑沿

岸国は︑公海漁業国が遵守する義務を負う保存措置を定めることによって︑その優越的権利を確保することが認めら

れるように解釈されなければならない⁝⁝さもなくば︑︵沿岸国の権利は︶空疎なものとなり︑公海国は他のいずれ

の国に対して負う義務とは異なる︑意味ある義務を何ら有しないであろう﹂と述べる︒このように︑第一︱六条⑯と

第六三条二項または第六四条をあわせ読む効果として︑公海における沿岸国の優越的な立場の存在を主張する︒この

優越した立場を根拠に︑﹁合意された措置がない場合には︑︵海洋法︶条約に基づき︑沿岸国は︑公海を含むストラド

( 2 0 )  

リング・ストックを漁獲する全ての国に適用する措置を定めることができる﹂という︒彼らの主張は︑後に︑若干の

( 2 1 )

2 2 )

 

ニュアンスの違いはあるものの︑多くの支持を受けた︒なお︑バーク教授は︑単独で執筆した八九年の論文の中で︑

次のように述べている︒すなわち︑﹁海洋法条約の基本政策は︑沿岸魚種の実効的な保存管理が単一の管理単位の承 ズとバーク

J

うした見解が世界的に広まる契機となったのが︑ ( 二 )

沿岸国側の見解

沿岸国側の論者は︑公海上の保存管理措置に合意できない場合には︑沿岸国が措置を講ずるべきであると主張する︒

一九八八年にモスクワで催されたシンポジウムにおいて︑マイル

( 1 9 )  

( E .  

L .  

M i

l e

s  

W .  

T .   B

u r

k e

)

が提出したペーパーであった︒彼らは︑様々な海域において︑沿岸国と公

関 法

第五0巻第四号

1 0

0  

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認を要求すること︑そして︑沿岸国は︑単一の管理単位として可能なときにはいつでも用いられるべき︑ということ

である﹂が︑﹁もし管理単位としての資源全体が単一の管轄権に該当しない場合には︑かかる管轄権を有する国は︑

必要とされる措置が資源全体に拡大されないかぎり︑管理目的を達成できない﹂︒つまり彼は︑資源の単一性を根拠

に︑公海上の措置に合意なき場合に︑沿岸国が

EEZ

内で採用する措置を公海にも適用することを正当化している︒

クウィアトコウスカ

( B .  

K w

i a

t k

o w

s k

a )

教授は︑まず公海水域における乱獲が

EEZ

内の同一資源に悪影響が及

( 2 3 )  

ぶということを認める国連大規模流し網漁業禁止決議を引用して︑二

0

カイリ水域内外で適用される措置の整合性 0

が確保されねばならない︑とする︒その文脈で︑条約第一︱六条⑯の﹁特に﹂という条項から︑公海漁業国の実行が

沿岸国の保存管理実行を損なうことが許されてはならないという意味で︑公海漁業に対して︑条約第五六条︑六一条

( 2 4 )  

及び六二条を適用する可能性を主張する︒さらに彼女は続ける︒﹁第六四条は︑沿岸国及び関係する他の国が︑﹃排他

的経済水域の内外を問わず当該地域全体において﹂保存及び最適利用の目的のために協力することを明示に義務づけ

て い

る こ

と か

ら ︑

一 ︱

0

カイリ水域内外のこれらの魚種に適用可能な﹃整合的で︑統一的な管理体制 0

( c o h e r e n

t , u

n  , 

i f i e

d   m

a n

a g

e m

e n

t   r

e g

i m

e )

の必要性を証明する﹂︒その帰結として︑﹁公海漁業国は︑沿岸国と協力することなしに︑

いかなる措置も一方的に採用する自由はなく……しかもこの結論は…•••ストラドリング・ストックについても同じで

( 2 5 )  

ある﹂︑と︒彼女の見解もまた︑

EEZ

内外の資源の単一性という観点から︑沿岸国の特別利害関係を背景に︑

E E

z 内の措置と整合性のある措置を公海上で定めることにより︑協力義務を両国間の協カ・調整の内容にまで拡大させ

( 2 6 )  

るというものである︒

これらの見解は︑資源の単一性に基づき︑措置に合意がない場合︑沿岸国の特別利害関係を根拠として︑

EEZ

︵ 七

二 五

(10)

公海漁業国側の論者は︑いわば発展的解釈をとる沿岸国側の論者とは対照的に︑海洋法条約第一︱六条⑯を厳格に

解釈して︑沿岸国の特別利害関係の存在を否定し︑公海上の保存措置に合意できない場合は︑公海自由原則が適用さ

れ る と 主 張 す る ︒

まず︑公海漁業国側に立つ論者は︑第一︱六条⑯と第六三条二項の関係について︑どのように捉えるのであろうか︒

高林博士は次のように述べる︒﹁第六三条二項は沿岸国と公海漁業国がストラドリング魚種の保存措置について︑合

( 2 7 )  

意するよう努力する義務を規定したものであって︑沿岸国に権利を与えたものではない﹂︒もっとも︑同条が沿岸国

に対して︑まった<権利を与えていないわけではないとする見解もある︒例えば︑ヘイ

( E .

H e

y )

は ︑

同 条

が ︑

﹁ 沿

岸 国

は ︑

EEZ

内において開発が行われているか否かに拘わらず︑そして公海において開発に従事していない場合で

( 2 8 )  

あっても︑自らの裁量において︑協力に参加するか否かを決定することができることを定めるものである﹂と指摘す

( 2 9 )  

る︒トレベス

( T .

T r

e v

e s

)

裁判官の言葉を借りれば︑沿岸国は︑﹁極めて謙虚な﹃特権的立場﹂﹂のみを有する︒同

様のことは︑第六四条についても言えよう︒同条は︑沿岸国と︑当該地域において当該種を漁獲する国が︑ EEN の

内外を問わず当該魚種が漁獲される地域全体で︑保存及び最適利用を促進するため協力することを規定しているにす

第 五

0 巻第四号

の措置を前提とする公海上の措置を決定することにより︑整合性を確保することを求めるものであるといえる︒なお︑

沿岸国の何らかの影響力を公海に拡大する主張が︑海洋法条約の関連規定を根拠に行われていることに注意が必要で

ある︒ここに︑従来なされてきた沿岸国の管轄権の一方的な拡大の主張とは異なる︑大きな特徴があると言えよう︒

公海漁業国側の見解 関法

1 0

二 ︵

七 二

六 ︶

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権利及び管轄権は︑第五七条に基づき︑沿岸国の権利は︑

EEZ

を超えて存在しないので︑︵第一︱六条に︶言及さ

( 3 0 )  

れる他の権利に該当しない﹂という︒兼原教授の言葉を借りれば︑第一︱六条の﹁特に﹂という文言は︑沿岸国の権

( 3 1 )  

利ではなく︑﹁混乱だけを生み出した﹂こととなる︒

従って︑公海漁業国側の論者は︑次のような帰結を導く︒すなわち︑ラゴニ教授は︑﹁関係国が接続する水域にお

いてストラドリング・ストックの保存に合意しない場合︑海洋法条約に定められる公海に関する漁業のための一般的

な制度が接続する水域において適用される︒従って︑その水域において自国民が漁獲を行うすべての国の権利は︑こ

( 3 2 )  

の場合において停止も終了もしない﹂︒小田裁判官も︑﹁︵海洋法︶条約は︑公海上の船舶が︑旗国の権威にのみ服す

( 3 3 )  

るという原則に矛盾する規定を含むようには思われない﹂と述べる︒さらに兼原教授は︑公海上の保存措置について

( 3 4 )  

合意がない場合には︑﹁一般国際法の下で︑漁獲の自由を享有する﹂という︒兼原教授の言うような︑保存措置に合

( 3 5 )  

一般国際法の下での漁獲の自由を有する︑とまで言えるかは定かではないが︑少なくとも第二節に

含まれる協力義務の内容は明らかではなく︑第八七条一項国と第一︱六条から第一︱九条までの規定が︑具体的にど

こまでの制約︑協力を求めるものなのかについては︑条約上︑必ずしも明らかではない︒

ところで︑沿岸国側の論者が主張する︑

EEZ

内外の資源を一体として捉え︑保存措置を整合性のあるものとする

意 な

き 場

合 に

は ︑

のように考えるのであろうか︒ラゴ 次に︑第一︱六条の﹁特に﹂条項に基づき︑第五六条や第六一条︑第六二条も含まれるといった解釈に対してはど い と い う こ と に な る ︒ ぎないからである︒いずれにせよ︑以上の解釈からは︑公海漁業国は︑単に沿岸国と協力する義務を負うにすぎずな

( R .  

L a

g o

n i

)

教授は︑﹁第五六条に定められた

EEZ

における沿岸国の主権的

1 0

︵ 七

二 七

(12)

第五

0

巻 第 四 号

一見正当な主張であるように思われるが︑

︵ 七

二 八

という考え方自体については︑公海漁業国側の論者は︑積極的な反対を提起していない︒ラゴニ教授も︑国際法協会

に提出した報告書を︑﹁

EEZ

内と接続する水域の保存措置の整合性

(c on si st en cy )

を達成させるよう試みるべきで

( 3 6 )  

ある﹂と結んでいる︒とはいえ︑沿岸国側の論者が主張するような整合性の確保方法に対しては︑公海漁業国側の立

場からは︑以下の点で問題があるといえよう︒第一に︑沿岸国が特別利害関係を有するとする解釈は︑受け入れるこ

とができない︒第二に︑第一︱九条は︑公海上のストラドリング魚類資源の保存措置について︑二

00

カイリ内でと

( 3 7 )  

られる保存措置を考慮に入れる必要性に言及していない︒最後に︑そして最も重要なことであるが︑沿岸国の論者の

主張には︑巧妙な﹁からくり﹂が存在する︒従来︑沿岸国は︑自国水域に隣接する公海からの資源の配分を拡大する

ために管轄権を拡大してきたが︑

EEN

の措置を前提とする整合性の主張は︑必ずしも資源の配分における拡大を求

めるものではない︒このことは︑沿岸国側の論者の主張が︑公海上の乱獲が沿岸国の資源に悪影響を及ぼすものであ

り︑その悪影響を回避することを目的としていることからも明らかである︒

その実︑公海資源を他国に獲らせないことにより︑沿岸国が既に

EEZ

内で確保している資源を確実なものとするこ

とが目的とされている︒つまり︑公海における保存措置は︑

EEZ

内の資源を確保するためのセーフガードとして利

用されるのと大差ない状況が生じうるおそれがある︒換言すれば︑公海漁業国の立場からは︑沿岸国側の主張が︑い

わば﹁獲るための管轄権﹂から︑﹁獲らせないための管轄権﹂の拡大に転換していると見ることができるのである︒

沿岸国は︑九 0 年以降︑公海における特別利害関係の承認と︑それに基づく

EEN

の措置を前提とする

EEZ

内外

の措置の整合性の確保の実現を︑国の政策として取り込み︑国連総会や多くの国際会議の場で積極的にこの主張の実

( 3 8 )  

現を求めた︒例えば︑本来環境問題を扱うはずである国連環境開発会議

( U

N C

E D

)

においても︑カナダなどの提

関法

1 0

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公 海

漁 業

実 施

協 定

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条 に

お け

る 一

貫 性

の 原

案により︑この問題が討議されることとなった︒しかしながら︑ UNCED 準備会合に並行する形で開かれていた︑

( 3 9 )  

責任ある漁業に関する国際会議が採択したカンクン宣言により︑回遊魚の問題について国際会議を持つとの合意が確

( 4 0 )  

保 さ れ た の を 受 け ︑ UNCED 本会議では事実上問題が先送りされ︑結局この問題は︑新たに設けられる国連協賛の

会議において議論されることとなった︒次章では︑この国連会議における沿岸国と公海漁業国の間の議論を振り返る

こ と

と す

る ︒

第三章

1 0

五 一九九三年四月から九五年八月まで︑計六会期開催された︒この会議の 国連公海漁業会議は︑国連本部において︑

( 4 1 )  

召集を決定した国連総会決議は︑その第三項で︑﹁会議の作業及び結果が︑国連海洋法条約の諸規定︑とりわけ沿岸

国と公海漁業国の権利及び義務に完全に合致するべきである﹂と述べるように︑会議はその討議内容に完全な自由が

与えられていたわけではなく︑あくまで海洋法条約の定める制度を前提に︑回遊魚の保存及び管理を有効に実施させ

うる制度を案出しなければならないという厳しい条件が付されていた︒こうした難題を扱う会議の議長に選出された

( S.  

N a n d

a n ,  

フ ィ ジ ー 大 使 ︶ であった︒彼は︑実質的に特別報告者の役割を果たし︑会期毎に﹁問

題の指針﹂︑﹁交渉テキスト﹂︑﹁改定交渉テキスト﹂︑﹁実施協定草案﹂︑﹁改訂実施協定草案﹂を作成し︑実施協定の採

EEZ

内外の資源をいかにして一体的に管理するかという問題は︑﹁保存管理措置の一貫性﹂と題する第七条にお

( 4 2 )  

いて扱われることとなるので︑以下では︑第七条︑とりわけ二項の起草過程を中心に考察する︒ 択

に 尽

力 し

た ︒

のが︑ナンダン

起 草 過 程

︵ 七

二 九

(14)

について次のような問題提起を行った︒ 認し︑かつ︑効果を与えること︑公海上の措置は

EEZ

内で関係沿岸国により適用される保存管理措置に整合させる 旧 ことを主張した︵附属書第三節い項詞及びい︶︒他方︑公海漁業国側に立つ欧州共同体︵以下︑

E C

)

も ︑

﹁ 資

源 管

は︑資源の分布範囲全体の中で︑資源の一体性という原則に基づくことが必要である﹂︵付属書第一節二項︶︑﹁保存

の目的は︑全ての関係国の権利を尊重しながら︑国の管轄の下にある水域において適用される措置と︑接続する水域

に適用される措置との間で︑﹃一致

( c

o n

c o

r d

a n

c e

) ﹄を確立することを要求する︒しかしながら︑その措置は︑異な

る法制度により規律されるので︑かかる﹃一致﹂は︑単に

EEN

において沿岸国によりとられる措置が︑国際水域に

おいてとられるために調節することを意味するのではない︒要求されているのは︑二つの水域における整合性

( 4 5 )  

( c

o h

e r

e n

c e

)

のある保存政策の定義である﹂︵同第二節第三項︶と述べていた︒

( 4 6 )  

議長は︑これらの提案をふまえて︑第二会期開催前に︑﹁問題の指針﹂を各国に配布し︑その中で︑ ること 1 第二会期における討議(‑九九三年七月︶

一 )

第七条の起草過程

九三年四月の組織会期は︑議長に対して︑会議が扱う主題と争点のリストアップを要請し︑また︑それを容易にす

( 4 3 )  

るため︑参加国に対しても提案を求めていた︒これに応じる形で提出された幾らかの国の書簡等は︑提案にとどまら

ず︑自国の立場の表明も行っている︒例えば︑沿岸国たるカナダは︑会議の結果が国際条約の形式とされるべきであ

︵本文︶︑公海におけるストラドリング魚類資源及び高度回遊性魚類資源に対する沿岸国の特別利害関係を承

関法第五

0

巻 第 四 号

1 0

︵ 七

0 )

一 貫 性 の 問 題

(15)

国連公海漁業実施協定第七条における一貫性の原則

1 0

七 同一資源の国内及び国際保存措置の一貫性及び整合性 圃国連海洋法条約において定められる︑排他的経済水域における生物資源に対する沿岸国の主権的権利を害することなく︑当 該水域における当該資源の保存のための最低限度の基準︵第六一条三項を見よ︶として沿岸国により採用されるための勧告と しても役立ちうる︑小地域又は地域の公海に適用されるストラドリング魚類資源及び裔度回遊性魚類資源を保存するための国 際

的 な

最 低

限 度

の 基

準 を

ど の

よ う

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め る

の か

このアイテム

V D I

の討議に際して︑議長は︑﹁誰が権利及び利益を有するか︑そして︑どこでその権利及び利益が行使

されるかに関する長い議論に入ることは︑何の目的にも役立たない︒この会議は︑沿岸国が

EEZ

における資源を利

用するための権利に不利な影響を与えることなく︑どのように一貫性のある制度を生み出すことができるかに集中す

( 4 7 )  

るべきである﹂︑と参加国に呼びかけた︒議長は︑沿岸国と公海漁業国の権利義務関係を扱うことを避けることを試

みたのである︒しかし︑特別利害関係をめぐる海洋法条約の解釈問題が︑この会議において再燃するのは避けられな

い状態であった︒例えば︑韓国代表が海洋法条約の解釈について論じようとした際︑議長は︑﹁今︑この問題を討議

( 4 8 )  

したくはない﹂として発言を遮る一幕さえあった︒それでも沿岸国側に立つ豪州は︑協力は EEN の制度に基づくべ

きであって︑公海漁業国は沿岸国の権利を尊重する必要があり︑公海上の措置は沿岸国に対して︑若しくは EEN の

( 4 9 )  

資源に対して不当な負担を課すべきではないと主張し︑ペルーも︑沿岸国と公海漁業国の権利を平等の下におくこと

( 5 0 )  

について反対し︑沿岸国の義務は公海漁業国のそれとは異なると念を押した︒他方︑日本は︑公海上の実行も沿岸国

の実行も他方に服させるべきではなく︑地域的又は小地域的な機関内での特別な取極を設けることを主張する︒同国

は ︑ EEZ

内外で同一の措置を適用することは賢明であるとしつつも︑かかる措置は地域ごとに異なるので︑特定の

( 5 1 )

5 2 )

 

措置を世界的な水準で適用することには懸念を表明した︒この会期中に︑幾らかの沿岸国グループは︑自国の立場を

︵ 七

三 一

(16)

とを明らかにした上で︑第四九項においては︑ 一貫性の確保に関して︑次のような規定を定めた︒ ︵第四八項︶が前提であるこ 交渉テキストはまず︑ 作成されたことが明記されている︒

第五

0

巻 第 四 号

︵ 七 三 ︱

( 5 ‑ ︶

4 )  

議長は︑第二会期の討議をふまえ︑同会期終盤に新たな作業草案

(w or ki ng dr af t)

を提出した︒この文書の詳細

は明らかではないが︑﹁公海における﹂保存措置について規定し︑その措置が﹁沿岸国に不当な責任を課すものとな

( 5 5 )  

らないこと﹂︑措置に合意できない場合には﹁沿岸国の措置に優越権が与えられる﹂規定が設けられたと言われる︒

この文書をめぐっても︑両陣営が激しく対立したことから︑米国代表は︑﹁すべての者がよりよい結果を得るために︑

すべての国が主権の一部を放棄すべきである︒公海漁業国は沿岸国の特別利害関係に服し︑沿岸国は自国の

EEZ

のストラドリング魚類資源及び高度回遊性魚類資源の管理について︑外部からの干渉を許容しなければならない﹂と

( 5 6 )

5 7 )

 

の提案を行っている︒まさに革命的な提案であったが︑主にラテンアメリカ諸国から不満の声が挙がったと言われる︒

このように︑第二会期の討議は︑議長の言葉を借りれば︑﹁一貫性の問題は︑議論の核心である︒措置を調和させる

( 5 8 )  

ことが不可欠であることには合意はあるが︑その実現方法には一致がない﹂という状況であった︒

交渉テキスト

︵ 一

九 九

三 年

︱ 一

月 ︶

( 5 9 )  

議長は︑第二会期の討議を基に︑新たに交渉テキストを提出した︒この文書は︑本文︱一節と二つの付属書からな

るが︑その序文において︑実質事項に関するいずれの代表の立場も害するものではなく︑単なる交渉用の文書として

一貰しかつ整合性のある保存管理措置を︑沿岸国と公海漁業国の双方が協力して達成するこ

とが義務であると位置づけ︵第四七項︶︑同時に沿岸国の主権的権利を損なわないこと 2 

( 5 3 )  

反映する条約案をそれぞれ作成し︑会議に提出している︒

関法

1 0

(17)

国連公海漁業実施協定第七条における一貫性の原則

1 0

一貫性のある措置の確保に当たっては︑公海におけ

49公海においてストラドリング魚類資源及び高度回遊性魚類資源の保存管理措置を決定するに当たり︑いずれの国も︑直接

に又は小地域的又は地域的機関又は取極を通じて︑次のことを行う︒

い措置が直接に又は間接的に︑保存行動の必要性に不均衡な責任を沿岸国に与える結果とならないことを確保すること︒

閲措置が国の管轄の下にある水域における海洋生物資源に対して︑不当に有害な影響を与える結果とならないことを確保 す る こ と

︒ い公海に関して定められた措置が︑当該資源に関して国の管轄の下にある水域において定められた措置よりも厳しいもの

で あ る こ と を 確 保 す る こ と ︒

いすべての関係国の利益及び次のものに妥当な考慮を払うこと︒

い沿岸国が自国の管轄の下にある水域においてとり又は提案する措置︒

い沿岸国及び公海において漁獲を行う国が当該資源に対して相対的に依存している程度︒

詞公海における漁業が資源及び国の管轄の下にある水域内の関連し及び依存する種に与える影響︒

屈地域の特殊性及び当該資源の生物学的特性︒

冒頭の︑﹁公海において﹂という文言からも明らかなように︑

る措置のみを対象とし︑かかる措置がい項からい項の要因を確保しあるいは考慮することにより決定するという仕組 みが取られている︒沿岸国は︑第五

0 項に基づき︑

EEZ 内の措置よりも厳しい措置が公海上で確保される場合に 限って︑公海上の措置と﹁効果において同等な保存管理措置を自発的に適用する﹂ことのみが求められる︒

第五一項では︑公海上の措置に合意に達しない場合の帰結について規定を設けているが︑合意に至らない場合には︑

( 6 0 )  

沿岸国の措置が前提となる公海上の措置を︑自発的にではあるにせよ適用しなければならないことを定めている︒

( 6 1 )  

交渉テキストは︑第三会期において︑非公式な協議において節毎の討議が加えられた︒その席上︑議長は︑このテ

︵ 七

三 三

(18)

第三会期における討議及び第三会期の末に議長が作成した作業草案に基づく非公式協議での討議を基礎に︑議長は︑

( 6 8 )  

第三会期終了前日の九四年三月三 0 日付の﹁改訂交渉テキスト﹂を公表した︒同テキストは︑

第三節 c

先の交渉テキスト第四八項に定められていた︑国の管轄の下にある水域及び公海において漁獲される資源の構成物 が相互に依存することを認識するよう求める規定は︑改訂交渉テキストでは︑海洋法条約の第六三条二項及び第六四 条一項に沿った規定に変更され︵第六項︶︑両魚種の区別を維持することを明らかにしている︒続く第七項は︑

︵ 第 五 ー 八 項 ︶ に お い て い る ︒ まま条約として定式化するものであった︒ で

あ り

キストについて﹁公海と排他的経済水域の間の管轄権的区分と資源の本質的な生物学的一体性とを相容れさせるよう

( 6 2 )  

試みた﹂と述べたとされるが︑なお両陣営は激しく対立した︒公海漁業国が︑第四九項の﹁公海において﹂という文

言の削除を提案したのに対し︑沿岸国側は︑かかる提案が︑

EEZ

における主権的権利を否定する試みであり︑﹁海

( 6 3 )

6 4 )

 

洋法条約の再解釈﹂であること︑

EEN

の措置と公海の措置は同等に置くことができないとして応酬した︒ある公海

漁業国は︑第四九項に列挙される要因のうち︑確保事項に挙げられた三つは︑多数派の沿岸国の主張を反映したもの

( 6 5 )  

一方的な沿岸国優先として強く反発したと言われる︒

諸国を代表して︑

こうした漁業国側の反発を受けて︑カナダを初めとする沿岸国グループは︑会議が受け入れ可能な結果に達するこ

( 6 6 )  

とができなければ︑公海漁業を規制するために一方的措置をとると牽制し︑また最終日には︑多くのラテンアメリカ

( 6 7 )  

ェクアドルが条約草案を提出したが︑

改訂交渉テキスト

︵ 一

九 九

四 年

三 月

関法第五

0

巻 第 四 号

︱ 1

0  

一 貫

一貫性に関する規定を ︵ 七

三 四

一貫性についての規定に関しては交渉テキストの規定をその

(19)

国連公海漁業実施協定第七条における一貫性の原則 ついての具体的な方法を定めていないからである︒ ストラドリング魚類資源及び高度回遊性魚類資源について一貫性のある保存管理措置が実現される態様︑その性質及び範 囲を決定するに当たり︑いずれの国も︑国の管轄の下にある水域において条約に従って採用されたいずれの保存管理措置を 尊 重 す る も の と し ︑ か つ ︑ 次 の こ と を 行 う ︒ 0 当該資源の生物学的特性︑当該資源の分布及び当該漁業並びに関係地域の地理的特殊性の間の関係︵当該資源の存在す る 範 囲 及 び 当 該 資 源 が 国 の 管 轄 の 下 に あ る 水 域 内 で 漁 獲 さ れ る 程 度 を 含 む ︒ ︶ を 考 慮 す る こ と ︒

⑯沿岸国及び公海において漁獲を行う国が当該資源に対して相対的に依存している程度を考慮すること︒

伺措置が当該海洋生物資源の全体に対して不当に有害な影響を与える結果とならないことを確保すること︒

囮公海に関して定められた措置が︑当該資源に関して国の管轄の下にある水域において条約に従って定められた措置より

も 厳 し い も の で あ る こ と を 確 保 す る こ と ︒

顕著な変更が見られるのは︑﹁公海において﹂という限定が削除されている点である︒この変更により︑公海上の

措置のみを操作して一貫性を確保するというスタンスが改められたように思われる︒但し︑その結果︑

ように確保するのかという点が不明確なものとなったともいえる︒なぜなら︑公海という限定が削除されたことによ

り ︑ EEN

の措置も適合を受けると考えられるが︑ここで定められているのは︑双方の措置の間で一貫性のある保存

管理措置の態様︑その性質及び範囲を決定する際に参考とされる基準にすぎず︑どのようにそれらを一貫させるかに

こうした列挙要因のうち︑公海漁業国が強く反発していた﹁措置が直接にまたは間接的に︑保存行動の必要性に不

均衡な責任を沿岸国に与える結果とならないことを確保する﹂という文言は削除され︑また﹁国の管轄の下にある水 7  性の確保に関して︑次のような規定を定めた︒

︵ 七

三 五

一貫性をどの

(20)

改訂するという作業が行われた︒ 一貫性のある措置を決定する際の考慮要因に関しては︑沿岸国側は︑ 一 般 的 に 賛 成

以上から︑改訂交渉テキストでは︑列挙された考慮要因が︑沿岸国の事情を反映することに偏らないように注意が

配られる一方で︑公海における措置が︑沿岸国の

EEZ

内の措置よりも厳しいものであるという要請を残すことで︑

一貫性のある措置に合意に至らない場合の帰結については︑改訂交渉テキストでは︑第八節に規定される紛争解決 規定への付託を義務化した︵第八項︶︒但し︑紛争解決過程が終了するまでの間︑複数の沿岸国により

EEZ

内で調

整された措置が合意されている場合︵同項い︶︑もしくは︑沿岸国が一カ国のみであり︑当該沿岸国が当該資源の保

存管理措置を採用している場合︵同項⑯︶には︑公海漁業国は︑

EEZ

において適用される措置と効果において同等

な保存管理措置を遵守することが定められており︑少なくとも紛争が解決されるまでの間︑公海上の措置は︑沿岸国

の措置を前提としたものを適用するという仕組みが維持されている︒

第四会期では︑改訂交渉テキストについて各国代表が一般的な声明を述べたのち︑節毎に検討が加えられてさらに 双方の主張のバランスをとろうとしたことが伺われる︒ て

い る

︵ 同 項 い ︶ が 求 め ら れ

関 法

第 五

0 巻第四号

域内の海洋生物資源に対して不当に有害な影響を与える結果とならないこと﹂という文言も︑﹁国の管轄の下にある

水域内の﹂という部分は削除され︑

EEZ 内の事情よりも︑生物資源全体への考慮に注意を配る方向で修正が施され

たと考えられる︒他方︑沿岸国が

EEZ 内でとる措置は︑それが海洋法条約に従って採用されたものという限定付き で︑﹁尊重する﹂ことが第七条のシャポーに含まれ︑公海に関して定められた措置が同一資源に関して国の管轄の下 にある水域において条約に従って定められた措置よりも厳しいものであることを確保すること

︵ 七

三 六

(21)

国 連 公 海 漁 業 実 施 協 定 第 七 条 に お け る 一 貫 性 の 原 則 したが︑公海漁業国側は︑依然バランスがとられていないとして反発した︒それは︑第七項の規定の一般的な趣旨︑

( 7 0 )  

とりわけ同項のシャポー︑伺項︑ぃ項並びに公海漁業に課される暫定的な措置に関して集中したといわれる︒たとえ

ば︑ポーランドは︑沿岸国が

EEZ

内でとる措置を尊重することを求める第七項シャポーの結びの一文に反対を表明

( 7 1 )  

した︒韓国は︑沿岸国の措置よりも厳しい公海上の措置を求める固項の規定は︑公海の措置が沿岸国の措置と同様に

( 7 2 )  

厳しいものであることを確保するように修正されるべきであると主張した︒

場合についての帰結をめぐっても︑公海漁業国は異議を唱えた︒公海漁業国側は紛争解決手段に持ち込んでも︑この

︵第七項の︶基準が裁判所の裁判基準となり全く勝ち目がなくなるとの認識の下︑絶対受け入れられないとの強い姿

( 7 3 )  

勢を共同してとったといわれる︒

実施協定草案(‑九九四年八月︶

( 7 4 )  

第四会期の終了までの期間を僅かに残す九四年八月二三日︑議長は全体討議において実施協定草案を提出した︒こ

の草案は︑その名が示すとおり︑法的に拘束力のある文書を意図するものであり︑議長は初めて︑会議の最終的結果

( 7 5 )  

を条約形式で提示した︒

一貫性に関する規定は︑第七条に定められ︑両魚種の保存管理制度上の区別を設ける規定は第一項に︑

保に関する規定は第二項に定められた︒第二項は︑次のように定める︒ 4 

~ ︵ 七

︳ ︱ ‑ 七

一貫性の確

2 公 海 に 対 し て と ら れ た 保 存 管 理 措 置 と ︑ 国 の 管 轄 の 下 に あ る 水 域 に お い て と ら れ た 保 存 管 理 措 置 と は ︑ 当 該 資 源 の 全 体 の

保 存 及 び 管 理 を 確 保 す る た め に ︑ 一 貫 性 の あ る も の と す る ︒ こ の た め ︑ 沿 岸 国 及 び 公 海 に お い て 漁 獲 を 行 う 国 は ︑ ス ト ラ ド

リ ン グ 魚 類 資 源 及 び 高 度 回 遊 性 魚 類 資 源 に 関 し ︑ 措 置 の 一 貫 性 を 達 成 す る た め に 協 力 す る 義 務 を 負 う ︒ い ず れ の 国 も ︑ 一 貫 一貫性のある保存管理措置に合意がない

(22)

第五 0 巻 第 四 号

︵ 七

三 八

性 の

あ る

保 存

管 理

措 置

を 決

定 す

る に

当 た

り ︑

次 の

こ と

を 行

う ︒

国沿岸国が自国の管轄の下にある水域において当該資源に関して定める保存管理措置を考慮して︑公海に対して定められ

た 措

置 が

沿 岸

国 が

自 国

の 管

轄 の

下 に

あ る

水 域

に お

い て

当 該

資 源

に 関

し て

定 め

る 措

置 の

効 果

を 害

さ な

い こ

と を

確 保

す る

こ と

佃当該資源の生物学的一体性その他の特性並びに当該資源の分布︑当該樵業及び地域の地理的特殊性の間の関係︵当該資

源 の

存 在

す る

範 囲

及 び

当 該

資 源

が 国

の 管

轄 の

下 に

あ る

水 域

内 で

漁 獲

さ れ

る 程

度 を

含 む

︒ ︶

を 考

慮 す

る こ

と ︒

団 沿 岸 国 及 び 公 海 に お い て 漁 獲 を 行 う 国 が そ れ ぞ れ 当 該 資 源 に 対 し て 依 存 し て い る 程 度 を 考 慮 す る こ と ︒

切措置が当該海洋生物資源の全体に対して不当に有害な影響を与える結果とならないことを確保すること︒

先の文書では︑措置の一貫性を達成することが義務であるという記述は落とされていたが︑この協定草案で復活し︑

それが沿岸国と公海漁業国が負う義務であると明記された︒以後︑この文言は削除されることなく︑最終草案まで残

されることとなる︒ところで︑沿岸国が

EEZ

内で採用する措置を尊重することを求める改訂交渉テキスト第七項の

シャポーは︑協定草案第七条二項では削除され︑公海に対してとられる保存管理措置と国の管轄の下にある水域にお

いてとられる保存管理措置との双方が︑当該資源全体の保存及び管理を確保するために一貫性のあるものとすると改

められた︒これは︑公海漁業国側の批判が集中した︑沿岸国の措置の尊重義務をシャポーから外すことで︑第二項で

列挙される要因全体に対して︑沿岸国のとった措置の尊重義務の影響が及ぶことを回避していると解される︒但し︑

沿岸国が

EEZ

内でとる措置は︑考慮要因の︱つに含められ︑国項に移された︒また︑同項には︑改訂交渉テキスト

で批判があった︑沿岸国の措置﹁よりも厳しい措置を確保する﹂︵い項︶という要因が︑沿岸国の措置﹁の効果を害

さないことを確保する﹂と改められた上で︑あわせて規定されることとなった︒

他の要因については︑改訂交渉テキスト第七項国の規定が︑実施協定草案七条二項⑯に移動し︑﹁生物学的特性﹂ 関法

︱ ︱

(23)

国 連

公 海

漁 業

実 施

協 定

第 七

条 に

お け

る 一

貰 性

の 原

第四会期末︑各国は︑実施協定草案に関してコメントを述べる機会が与えられたが︑沿岸国側が反対にまわる傾向

( 7 7 )  

が見られる︒例えば︑

EEN

における沿岸国の権利が十分に反映されていない︵アイスランド︶︑改訂交渉テキスト

( 7 8 )  

のバランスが︑一貫性に関して変更されている︵オーストラリア︶︑改訂交渉テキストにおいてみられたような有益

( 7 9 )  

な考えが無くなった︵アルゼンチン︶︒他方で︑公海漁業国は︑バランスはとられているが︑さらなる改訂を必要と

し︑条約化に反対︵日栢︶︑拘束的な協定草案に反対した︵ポーランド︑韓国︶︒しかしながら︑第五会期の議論は︑

会期直前に発生したエスタイ号事件の影響を大きく受け︑もはやこうした主張が考慮されうる環境ではなかった︒か

くして︑これ以降︑漁業国は条約の交渉を受け入れ︑他方︑沿岸国は自らの

EEN

において公海漁業の管理のために

( 8 2 )  

保存管理措置を適用することに同意する︑という妥協が行われたと言われる︒

改訂実施協定草案(‑九九五年四月︶ いてとるという考えは︑とられていない︒ る手続きに訴えるものとし

次 に

︱ ︱

( 7 6 )  

という語は︑﹁生物学的一体性その他の資源の特性﹂という文言に修正された︒さらに︑実施協定草案七条二項ぃで

一貫性のある措置が︑当該海洋生物資源﹁全体

( a s

a  w

h o

l e

) ﹂に不当に有害な影響を与える結果とならないよ

うにすることが求められている︒このように︑実施協定草案では︑公海漁業国側の主張する

EEN

の 内

外 の

資 源

を 一

体として取り扱うという考えが︑より強く反映されている︒

ま ︑,

9  

一貫する保存管理措置に合意がない場合に関しても︑幾らかの変更がみられる︒すなわち︑合意なき場合に

は︑暫定取決めを結ぶことを定め︑それにも合意できない場合には協定草案第三 0 条に定められる暫定措置を決定す

︵第六項︶︑もはや合意なき場合に沿岸国の

EEZ

内の措置を前提とする措置を公海にお

︵ 七

三 九

(24)

第 五

0 巻第四号

( 8 3 )  

第五会期終了前日︑議長は新たに改訂実施協定草案を提出した︒

︵ 七

0 )

とんど変化はなく︑僅かな修正が行われるにとどまる︒まず︑国項は︑考慮要因である沿岸国の保存管理措置は︑海

洋法条約第六一条に従って定められるものであるという修正が加えられた︒これは日本の提案に基づくものであり︑

その趣旨は︑﹁沿岸国の

EEZ

内の措置が非科学的なもの︑恣意的なもの

も の

であった場合には︑公海上でその効果を害さない措置をとる必要はないという考えを反映させるため﹂である

( 8 4 )  

と説明される︒また︑第七条二項⑯では︑関係沿岸国及び公海において漁獲を行う国が既に合意して︑当該資源に関

し条約に従って公海に対して定める措置を考慮することが︑新たに追加された︒この規定の趣旨は︑

置を決定する際に︑ストラドリング魚類資源に関して既に合意されている公海上の措置を考慮することを求めるもの

と思われる︒第六会期では︑遵守及び取締り︑そして公海の飛び地の問題に焦点が移り︑もはや︑

公海漁業実施協定(‑九九五年八月︶ 一貫性のある措

( 8 5 )  

かくして︑会議は最終日を迎え︑議長は︑新たな実施協定案を会議に提出した︒このテキストでは︑僅かながら︑

幾らかの修正が加えられている︒まず︑第七条第二項において︑新たに﹁小地域的又は地域的な漁業管理のための機

関又は取極が既に合意して︑当該資源に関し条約に従って定め及び適用している措置を考慮すること﹂ (C 項︶とい

う考慮要因が加えられた︒この規定は︑同条二項⑯に含まれた考慮要因と対をなし︑高度回遊性魚類資源について︑

( 8 6 )  

既に合意されている措置を考慮することを念頭に置くものであると解される︒

テキストは︑議長の意向により︑投票に付されることなく︑第六会期最終日の一九九五年八月四日︑ 6  いて︑特筆すべき議論は行われていない︒

関 法

コ ン

セ ン

サ ス

一 貫

性 の

問 題

に つ

︵例えば︑公海漁業の追い出しのみを図る 一貫性に関する第七条の規定は︑先の文書からほ

︱ ︱

(25)

国 連 公 海 漁 業 実 施 協 定 第 七 条 に お け る 一 貫 性 の 原 則

の 基

準 は

︑ EEZ

内の措置にも関係を有する︒ その代わりに︑第七条二項は︑ しかしながら︑第二点として︑

︱ ︱

EEZ

内外の資源を一体的に管理するという問題に対して︑会議はどのように答えたのだろうか︒この点について︑

ま ず

︑ EEZ

内外の措置の一貫性を協力して達成することが︑沿岸国と公海漁業国の義務であるとした︒海洋法条

約上︑明らかではなかった協力義務の内容を一歩明確化したものとして︑評価することができよう︒

一貰性のある保存措置の定義︑具体的な一貫性の確保方法は明らかにされなかった︒

一貫性のある措置の決定に当たって︑参考とされるべき基準を列挙するという手法を

選択したのである︒公海上の措置のみを調整するという考えは︑改定交渉テキスト以降否定されているので︑これら

そして︑第三点として︑最大の争点となるはずであった︑沿岸国の特別利害関係については︑議題にすることすら

避けられたために︑肯定も否定もされず︑実施協定において明示の規定が置かれることもなかった︒

こうした解決方法は︑とりもなおさず︑会議の作業と結果が︑﹁海洋法条約の枠内で﹂行われることが義務づけら

れていたことを如実に反映するものである︒ところが︑

関係が肯定も否定もされなかったことは︑実施協定の解釈に少なからず影響を与えているように思われる︒実際︑実

施協定採択後に公表された幾らかの論考においては︑沿岸国がこの会議で実現を求めた︑公海における特別利害関係 起草過程からは︑次のことが確認できるにとどまる︒

に )

括 により採択された︒

一貫性の確保方法が具体的に示されなかったこと︑特別利害

︵ 七

四 一

参照

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