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(1)

質 : 資産保有形態に関する分析を中心として

著者 角井 正幸

雑誌名 經濟學論叢

巻 64

号 3

ページ 881‑916

発行年 2013‑03‑20

権利 同志社大學經濟學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013757

(2)

【論 説】

南北戦争以前期の合衆国北部における 手作地主の特質

―資産保有形態に関する分析を中心として―

角 井 正 幸  

は じ め に

 合衆国における小作研究の端緒は,1880年センサスにある.この年のセンサ スで初めて経営形態が明示的に調査され,合衆国全体の小作率が25.6%である ことが明らかとなった(Goldedweiser and Truesdell, 1924, p.23, Table 2).この値が衝撃 を持って受け止められたのは,「19世紀,土地を欲する者だれもが土地を手に入 れることができるという,アメリカ農業史において広く受け入れられてきた信 念」(Atack, 1988, p.6)が存在していたからであり,「土地がより豊富でフロンティ アの未入植地が存在していた時期には,小作はまるで一般的ではない(存在しな い)」(Atack, Bateman and Parker, 2000, p.317)と考えられていたからである.それは,

公有地を「より安く,より多くの人に」分配し,大量の独立自営農民を創出す ることを目的とした19世紀合衆国の政策理念を否定するものであった1).  さて,合衆国における小作関連の研究は,その後多方面へと拡散していく.

たとえばAtack, Bateman and Parker (2000)は,経営形態に関する展望2)におい

1) 合衆国の公有地分配法の変遷については,角井(2001)26―27ページ,および角井(2005)18ペー ジにまとめている.

2) Atack, Bateman and Parker (2000)は,‘ The Tenant Farmer and the Yeoman’という節において先 行研究を展望している.

(3)

て,(1)農場開設に必要な資金に関する研究,(2)小作率の変遷や地域的な分 布に関する研究,(3)農業階梯説に関する実証研究などを先行研究として取 り上げている.このうち(1)は,「より安く,より多くの人に」を目的とする 公有地分配政策のもとで実際に自作になり得る機会が存在したのかという問 題意識のもとに展開された議論である.したがって,農場開設時の資金不足 によって小作とならざるを得ない農家が存在したことが示されるのであれば,

(農業労働者を除く)農業階梯の第1段階として小作が機能していたという意味 で,(3)の農業階梯説の議論につながるものである.またYang (1992)は,「小 作化」の要因を「農業階梯説」のみならず「投機家説」との論争の中で小作 研究が展開されてきたと整理している.このうち「農業階梯説」はBogueや

Danhofに代表される論者が展開しており,農業労働者から自作への階梯を上

昇するために合理的に選択されたものとされている.一方の「投機家説」は

GatesやShannonに代表され,投機家と大土地所有者が,土地所有の集中と

小作の搾取をするために連邦土地制度(公有地分配政策)を活用したと主張す るものである(Yang, 1992, p.136).その上でYang (1992)は,合衆国北部の小作 に関する先行研究が個別の州などの限られた地域のみを対象としていること を指摘し,より広く合衆国北部を分析対象として,経営形態選択モデルを用 いた「小作化」の要因分析を行っている3)

 このように,合衆国の小作問題については豊富な先行研究が存在している が,その一方で,農場の貸し手の存在はほとんど顧みられてこなかった.た とえば,1880年より以前の小作を取り上げる場合,センサスにおいて経営形 態が調査されていなかったことから,小作を同定する方法がいくつか検討さ れてきた.折原(1999)の整理によると,Bogueによるイリノイ州およびアイ オワ州のいくつかのタウンシップを対象とした分析では,

  (1)人口センサスにおいて農民としている

3) なお,Yang (1992)は,合衆国における小作研究のもうひとつの方向としていわゆる「マーシャ

ルの非効率性」問題を取り上げ,1860年の合衆国北部では西部の小作の総要素生産性が自作よ りも低くなるとしている.

(4)

  (2)不動産を保有していない

  (3)農業センサスに財産額(資産額)が記載されていない の3点を満たす者が小作と定義されている.

 また,Curtiは人口センサスのみを用いて小作を同定しようとしたGatesの 方法を批判する目的で,

  (1)人口センサスの職業欄が農民となっている

  (2)農業センサスにその家計が存在する(記載されている)

  (3)農業センサスに開墾地と他の農場資産を報告している の3条件を満たす者を小作としている.

 これらを受けて折原(1999)は,

  (1)Curtiの3条件を満たしている

  (2)人口センサスで不動産を保有していない 者が小作であると結論づけている.

 このように,小作の同定にはセンサスにおいて人口センサスと農業センサ スの併用が必須であることが示されるわけであるが,Atack and Bateman (1987) では,

  (1)人口センサスで不動産(実物資産:real property)保有額が0である   (2)農業センサスで経営面積(総土地面積)が正である

農家家計が小作であると規定すると同時に,

  (1)人口センサスで不動産保有額が正である

  (2)人口センサスの不動産保有額が農業センサスの農場価値額(value of

farm)よりも小さい

農家を自小作とし,新たな農場の借り手の存在を同定した.そしてそれ以外 を自作としていることから,

  (1)人口センサスで不動産保有額が正である

  (2)人口センサスの不動産保有額が農業センサスの農場価値額に等しい か大きい

(5)

農家が自作となる(Atack and Bateman, 1987, p.110).

 このように,農場の借り手としての小作(自小作を含む)の同定には数多く の分析が行われ,一定のコンセンサスを得るに至っている.しかし,これら の分析いずれにおいても農場の貸し手がまったく登場しない.

 そこで,Atack and Bateman (1987)において農場の借り手(小作と自小作)の 残余として同定された自作について,「(2)人口センサスの不動産保有額が農 業センサスの農場価値額に等しいか大きい」農家のうち,「不動産保有額=農 場価値額」の農家と「不動産保有額>農場価値額」の農家を分けて考えてみ よう.ここで,前者は純粋な自作と考えられる.そして,後者である「人口 センサスの不動産保有額が農業センサスの農場価値額より大きい」農家は農 場の貸し手(手作地主)であるとみなせる.なぜなら,たとえば自小作が「不 動産保有額<農場価値額」ということをもってその差を借り入れていると規 定しているのであるから4),「不動産保有額>農場価値額」の場合には,その 差額を貸し出していると考えることが自然となるからである.

 この点を考慮して,角井(2005)では経営形態の分類をより詳細に行った.

それに若干の修正を加えた上で第 1 表として再掲しておこう.ここでの修正 は以下の通りである.まず,角井(2005)の第1表では地主の定義を「不動産 保有額が正で農場価値額と一致し,経営面積が0である家計」としていたが,

不動産保有額と農場価値額が一致しているとすれば土地の貸し出しが行われ てないことになり,これを地主とすることは明らかに不適切である.そこで,

その部分を本稿において訂正している(地主を「不動産保有額が正で農場経営を 行っていない(農場価値額と経営面積がともに0である)農家」と規定).次に,こ れまで先行研究にならって農場経営主体であるか否かを判断するための条件 として経営面積が正である農家家計という指標を利用してきたが,たとえば 地主と分類される標本のうち経営面積が0であるにもかかわらず(経営)農場

4) 不動産保有額=0で経営面積(と農場価値額)が正である小作についても,当然ながら不動

産保有額が農場価値額より小さく,その差額(実際には農場価値額そのもの)だけ農場を借り 入れている.

(6)

価値額が正となっている家計や,小作に分類された家計のうち経営面積が正 であるにもかかわらず農場価値額が0となっている標本が存在する.したがっ て本稿では,農場経営主体であること(小作,自小作,手作地主,自作のいずれか)

を判断する指標として,農場価値額と経営面積がともに正であることを条件 とする.同様に,農場経営主体ではないこと(地主もしくは農業労働者)を判断 するためには双方がともに0であることを条件としている.

 さて,このように経営形態をより詳細に同定することによって,これまでほ とんど顧みられてこなかった農場の貸し手を明示的に扱う分析が可能となる.

たとえば角井(2005)では,経営形態別の記述統計量を用いて,(160エーカー以 下層のみについて)手作地主の平均不動産保有額が自作と比べて極めて高いこと

(東部で1.9倍,西部で1.6倍)6)を明らかにしている(角井,2005,27―28ページ)7). そこで本稿では,「農民自身が農場の貸し手として機能していたこと」を明ら かにするために,手作地主の資産保有のあり方から分析・検討を行うことに

経営形態 不動産保有額 不動産保有額との関係 農場価値額と経営面積

小作 0 ともに+

自小作 + (<農場価値額) ともに+

手作地主 + (>農場価値額) ともに+

地主 + ともに0

自作 + (=農場価値額) ともに+

農業労働者 0 ともに0

第 1 表 経営形態の区分方法5)

5) 説明の都合上,本稿の第1表では,角井(2005)の第1表と経営形態の順序を入れ替えた.

6) 自小作との差はさらに大きく,東部で2.8倍,西部で2.5倍である.小作は不動産を保有して

いない層として定義されているので比較できない.

7) 角井(2005)ではその他に,平均家族数(子供も含む)はどの経営形態でもほぼ同程度(4~6人)

手作地主の最大経営規模の農家はそれほど大きくないこと(経営規模が最大の農家は,東部・

西部ともに自作),ただし161エーカー以上層が占める割合は手作地主が最も高いこと,平均経 営面積は自作,自小作とほぼ同水準である(西部の小作のみが自作の約80%とやや小さい)こ とを明らかにしている.

(7)

する.

 以上の問題意識のもとに,本稿の構成は以下の通りとなっている.まず,

第1章において標本の整理を行い,本稿で用いる標本を確定する.つづく第 2章では,農場の貸し手の中心的存在である手作地主の資産保有が他の経営 形態よりも大きいことを再確認し,第3章において手作地主の資産保有者が 同一家計内に複数存在し,しかもそれが複数世代にわたる資産分割であると いう手作地主家計の極めて興味深い特質を抽出する.そして最後の第4章で は,これら手作地主の資産保有形態の特質がもつ意味について言及する.

1 標本の整理

 本稿で用いる標本は,Bateman and Foust (1973)の「1860年北部農家家計 の農業および人口記録」(以下,ICPSR 7420とする)8)である.ここには,北部 20州からランダムに抽出された102タウンシップのセンサス情報が全戸にわ たって記載されており,収録されている家計総数は21,118戸,そのうち農家 家計は11,940戸である.

 まず,農家家計のうち世帯主の年齢=0もしくは99(欠損値扱い)の家計,

農業生産品目=0の家計,開墾率=0の家計を省く.これらのいずれかに該 当する標本数は739戸である.また,第1表に示された各経営形態のいずれ にも含まれない「経営形態不明」となる63戸を分析から省き,それに加えて 農業労働者家計101戸を分析から捨象する9)

 以上のとおりに標本の整理を行った結果,いくつかのタウンシップにおい て標本数(農家総数)が極めて少ない個所が存在することが明らかとなった.

試みに,農家総数が20戸未満のタウンシップについて,Atack (1988)の総小

8) 本データの詳細は,Bateman and Foust (1974)に紹介されている.それをまとめた角井(2006)

も参照のこと.

9) 農業労働者と分類された農家が実際に農業労働者であるのかについては角井(2005)におい て疑義を示しておいたが,本稿の分析では農業労働者が農場貸借市場に影響を与えない存在で あることに鑑み,分析から捨象しても問題はない.

(8)

作率10)の推計と対応させた第 2 表を作成した.この15ヵ村のほとんどは北 辺から西辺にかけてのフロンティア(入植間もない地域)に立地している.さて,

ここに示されている15ヵ村の総小作率にはある特徴が見られる.それは,総

小作率が10%未満のタウンシップが全体の過半数である8ヵ村ある一方,逆

に総小作率が極めて高い(40%以上)タウンシップも4ヵ村あり,総小作率が

10) Atack (1988)は,先行研究において自小作の存在が無視されてきたことを看破し,農場の借

り手を考える上では小作率と自小作率を合計した総小作率(overall tenancy rate)を用いるべき としている.しかしその一方で,その直後に「この後の分析のほとんどでは,私も彼ら(自小作)

を無視して進める」(Atack, 1988, p.18.(  )内は角井が補足)と記述しており,タウンシッ プの小作率を表したFigure 2(Atack, 1988, p.22)が総小作率をもとに作成されているかどうか は判然としない.しかし,州内に1タウンシップのみが抽出されているVermont州の例を見ると,

州単位での小作率が5%,自小作率が10%であり,総小作率は16%となっている(Atack, 1988, p.19 Table 2).そしてFigure 2ではVermont州から抽出されたタウンシップの小作率が10%台と記 されていることから,この図がタウンシップレベルでの総小作率(本稿の表現では「借り手比率」)

の分布を表していると判断できよう.

村コード 州(state) 郡(county) 村(township) 総小作率

T141111 Pennsylvania Forest Barnet 10%未満

T010303 Illinois Brown Ripley 10%台

T050101

Michigan Emmett La Croix 10%未満

T050404 Huron Rubicon 10%未満

T090202

Wisconsin Douglas Nemadjo 10%未満

T090404 Juneau Clearfield 10%未満

T030606 Iowa Pottawatomie Silver Creek 10%台

T040404

Kansas Nemeha Clear Creek 10%未満

T040808 Chase Bazaae 30%台

T060220

Minnesota

Cottonwood 全村 40%台

T060620 Manomin 全村 50%以上

T060720 Murray 全村 40%台

T060820 Polk 全村 10%未満

T060909 Renville Birch Cooly 10%未満

T061011 St. Louis Fon Du Lac 40%台

第 2 表 農家総数20戸以下のタウンシップと総小作率

(出所)総農家数20戸以下の導出はICSPR7420による.総小作率はAtack (1988) Figure 2による.

(9)

二極化しているという点である.その背景としては,15ヵ村のうち12ヵ村 で手作地主,小作,自小作,自作のいずれかが存在していないことがあげら れる.もちろん,農家総数が20戸以上のタウンシップにも経営形態の分布が 極端な村も存在するが,農家総数20戸以下のタウンシップでは,標本数が少 ないがゆえに総小作率が大きく変動している可能性を否定できない.したがっ て,本稿ではこれら15ヵ村を分析から除くことにする.その結果,各地域に 含まれるタウンシップ数は,ニューイングランド地域6ヵ村,東部大西洋岸 地域22ヵ村(東部合計28ヵ村),五大湖周辺地域41ヵ村,西部フロンティア 地域18ヵ村(西部合計59ヵ村)となる11).以上の結果,本稿の分析に含まれ る標本総数は10,899戸である.

2 手作地主の資産保有分布

 「はじめに」に示したように,手作地主の不動産保有額は他の経営形態に 比べて大きい.本稿ではより詳細に手作地主の資産保有の大きさを検討する ために,角井(2005)における平均値のみの分析から発展させ,資産保有の 分布について考察する.また,不動産保有額のみでは(不動産を保有していな いと定義される)小作が分析に含まれないことから,動産(個人資産:personal

property)の分布についても検討する.

 まず,地域別・経営形態別の不動産保有額の分布について,手作地主,自 作,自小作の不動産保有額の分布を相対度数と累積相対度数で求め(付表1), それを第 1 図~第 4 図として図示した.ここでは,棒グラフで各階級の相対 度数を表し,折れ線グラフで累積相対度数を表している.いずれの地域にお いても,最大階級である不動産保有額10,000ドル以上の層で手作地主の相対 度数が他の経営形態より高く,2,000ドル未満の階級の割合が3つの経営形態 の中で最も低いことと対照をなしている(西部フロンティア地域を除く).  一方の累積相対度数分布グラフでは,グラフの線がより高い位置にあるほ

11) 各地域に含まれる州については,角井(2010)の脚注21を参照.

(10)

第1図

第2図 0 20 40 60 80 100

手作地主相対 自 作相対 相対 手作地主累積相対 自 作累積相対 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主相対 自 作相対 相対 手作地主累積相対 自 作累積相対 累積相対 第 1 図 経営形態別「不動産保有額」の相対度数と累積相対度数(ニューイングランド)第1図

第2図 0 20 40 60 80 100

手作地主相対 自 作相対 相対 手作地主 累積相対 自 作累積相対 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主相対 自 作相対 相対 手作地主累積相対 自 作 累積相対 累積相対

第 2 図 経営形態別「不動産保有額」の相対度数と累積相対度数(東部大西洋岸)

(11)

第3図

第4図 0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 手作地主 累積相対 作 累積相対 累積相対 第3図

第4図 0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 自 小 作 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対 第 3 図 経営形態別「不動産保有額」の相対度数と累積相対度数(五大湖周辺)

第 4 図 経営形態別「不動産保有額」の相対度数と累積相対度数(西部フロンティア)

(出所) 1図~第4図:ICSPR 7420より作成.

(12)

ど不動産保有が小さな階級により多くの家計が含まれていることになる.た とえば,第1図(ニューイングランド地域の不動産保有額の分布)において,不動

産保有が3,000ドル未満の自小作が全体のおよそ80%であるのに対して,自

作は約75%,手作地主では約50%となっている.逆に言えば,3,000ドル以

上の不動産を保有する層が自小作では2割程度に過ぎないが,手作地主では

半数が3,000ドル以上の不動産を保有していることになるのである.

 これらの図から明らかなように,いずれの地域においても上から順に自小 作,自作,手作地主の累積相対度数分布グラフが描かれおり,手作地主の不 動産保有額は他の2形態と比較してより高い階層に多く分布している.この ような不動産保有の分布のあり方が,手作地主の平均不動産保有額の高さを もたらしているのである.

 また,動産の分布に関しても同様の傾向が見られ,第 5 図~第 8 図に示す ように,いずれの地域においても最大階級の3,000ドル以上層の手作地主の 割合は他の経営形態よりも高く,300ドル未満の階級では最も低くなっている.

その結果,手作地主の動産保有の累積相対度数分布グラフは最も下に位置し,

ここでも手作地主の動産保有の分布が他の3形態よりもより高階層に偏って いることが示される(動産保有の相対度数と累積相対度数の分布は付表 2に示して いる).

 以上の結果から,不動産と動産を合計した総資産に関しても,手作地主の 資産保有の分布が他の経営形態と比して高階層により多く分布していること が当然の帰結として導かれる12)

12) なお,いずれの地域においても,自作と自小作の動産保有額の分布についてはほとんど違い がないという点が不動産の分布とは異なる点であるが,本稿の主題は手作地主に焦点をあてて いるのでここではとくに深く言及しない.また,小作の動産保有は他の3形態に比べて圧倒的 に小さいが,これは小作に相当割合で存在する動産保有額=0の家計が影響しているという点 についても指摘しておこう.

(13)

第5図

第6図 0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対 累積相対

第5図

第6図 0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対 累積相対

第 6 図 経営形態別「動産保有額」の相対度数と累積相対度数(東部大西洋岸)

第 5 図 経営形態別「動産保有額」の相対度数と累積相対度数(ニューイングランド)

(14)

第7図

第8図 0 20 40 60 80 100

手作地主 相対 作 相対 自 小 作 相対 作 相対 手作地主 累積相対 作 累積相対 自 小 作 累積相対 作 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主 相対 作 相対 自 小 作 相対 作 相対 手作地主 累積相対 作 累積相対 自 小 作 累積相対 累積相対

第7図

第8図 0 20 40 60 80 100

手作地主 相対 作 相対 自 小 作 相対 相対 手作地主累積相対 作 累積相対 自 小 作 累積相対 作 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主 相対 作 相対 相対 作 相対 手作地主 累積相対 作 累積相対 自 小 作 累積相対 作 累積相対

第 7 図 経営形態別「動産保有額」の相対度数と累積相対度数(五大湖周辺)

第 8 図 経営形態別「動産保有額」の相対度数と累積相対度数(西部フロンティア)

(出所) 5図~第8図:ICSPR 7420より作成.

(15)

3 手作地主の世帯主年齢分布と家計内の資産分割

 さて,第2章で明らかにしたような手作地主の資産保有の大きさはどのよ うに形成されたのであろうか.ひとつの可能性としては,手作地主がより長 期の農場経営により資産を蓄積したことや,Gregson (1996)のいう「早期入植 プレミアム」13)によってより大きな資産を蓄積できたことが考えられる.しか し,残念ながら,センサスには農場の経営期間や居住期間に関する情報が記 載されていない.そこで本稿では,まず,通常の農業階梯説の分析に用いら れる世帯主年齢の分布から分析を始める.

 第 9 図~第 12 図に示すように,ニューイングランド地域では手作地主と 自作(さらには自小作)の世帯主年齢の累積相対度数分布グラフはほぼ重なっ ている.また,東部大西洋岸地域と五大湖周辺,西部フロンティアの3地域 では手作地主の累積相対度数分布グラフが自作の累積相対度数分布グラフの 線をやや下回っているものの,いずれにせよ手作地主の世帯主年齢の分布は,

資産保有(不動産・動産)で見られたような明らかな高い階級への偏りは見ら れない14)

13) 早期入植プレミアム(early arrival premium)とは,

  (1)より早く入植することによって低価格で農場を購入することができる   (2)リカード的な差額地代を獲得することができる

 といった資本(資産)蓄積の有利性や,

  (3)生産性の高い優等地を獲得してより効率的な農業生産が可能となる

  (4) より長く居住することによって得られる「その土地に適した人的資本」による生産力の

高さ

 を総合したものである(Gregson, 1996, p.524)

  ここで「その土地に適した人的資本」(location-specific human capital)とは,気候・地質な どに適応した農法などの情報,その地域の生産物価格および投入財価格の情報,資金源の情報,

生産物の買い取り人の情報などを指す.

  早期入植プレミアムの存在はMissouri州以外の地域についても確認されているが(Gregson,

1996, pp.526―527),とくにGregson (1996)は居住期間の長さによる所得獲得力の高さを二段階 最小二乗法でコントロールした上で,早期入植者の資産保有額が有意に大きいことを実証して いる(pp.526―527).

14) 年齢階層の相対度数と累積相対度数の分布は付表 3に示している.

(16)

第9図

第10図 0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対 累積相対

第9図

第10図 0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主相対 相対 相対 相対 手作地主累積相対 累積相対 累積相対 累積相対

第 9 図 経営形態別「世帯主年齢」の相対度数と累積相対度数(ニューイングランド)

第 10 図 経営形態別「世帯主年齢」の相対度数と累積相対度数(東部大西洋岸)

(17)

第11図

第12図 0 20 40 60 80 100

手作地主 相対 作 相対 自 小 作 相対 作 相対 手作地主 累積相対 作 累積相対 自 小 作 累積相対 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主 相対 作 相対 自 小 作 相対 作 相対 手作地主 累積相対 作 累積相対 自 小 作 累積相対 作 累積相対

第11図

第12図 0 20 40 60 80 100

手作地主 相対 作 相対 自 小 作 相対 作 相対 手作地主 累積相対 作 累積相対 自 小 作 累積相対 作 累積相対

0 20 40 60 80 100

手作地主 相対 作 相対 自 小 作 相対 作 相対 手作地主 累積相対 作 累積相対 自 小 作 累積相対 作 累積相対

第 11 図 経営形態別「世帯主年齢」の相対度数と累積相対度数(五大湖周辺)

第 12 図 経営形態別「世帯主年齢」の相対度数と累積相対度数(西部フロンティア)

(出所) 9図~第12図:ICSPR 7420より作成.

(18)

 この結果は,手作地主が他の経営形態よりも長期にわたって農場経営をし ていることを否定しているように見える.しかし,ここで手作地主の年齢構 成と資産保有構造を結合して考察すると,他の経営形態とは異なる特質が浮 かび上がる.

 実は,第 3 表に示すように,家計内に複数の資産保有者を有する割合は,

他の経営形態と比較して手作地主家計において圧倒的に大きい15).自作,自 小作,小作の3形態においてその割合が高くとも10%程度であるにもかかわ らず,手作地主では22%~33%の家計が2人以上の資産保有者を有している.

この点は,手作地主である農家家計の極めて重要な特質を表している.そこで,

世帯主ではない資産保有者に関する分析が必要となるが,すべてについて分 析することは煩雑に過ぎるので,「世帯主」と「世帯主以外の資産保有者のう

15) ここでの資産保有は動産も含んでいるため,小作家計にも資産保有者が存在する.

資産保有者数

(人)

ニューイングランド地域 資産保 有者数(人)

五大湖周辺地域 自作 手作

地主 自小作 小作 自作 手作

地主 自小作 小作

0 0.0 0.0 0.0 61.5 0 0.0 0.0 0.0 14.2

1 96.0 71.4 97.7 34.6 1 95.1 71.3 87.8 82.3

2 3.6 26.2 2.3 3.9 2 4.1 23.5 9.0 3.3

3 0.2 2.4 0.0 0.0 3 0.8 4.5 2.9 0.0

4以上 0.2 0.0 0.0 0.0 4以上 0.0 0.7 0.3 0.2

資産保有者数

(人)

東部大西洋岸地域 資産保 有者数(人)

西部フロンティア地域 自作 手作

地主 自小作 小作 自作 手作

地主 自小作 小作

0 0.0 0.0 0.0 17.1 0 0.0 0.0 0.0 23.2

1 91.4 67.1 92.3 76.6 1 89.2 77.3 88.5 70.1

2 7.1 25.3 5.7 5.7 2 8.4 17.2 7.3 6.3

3 1.2 5.8 1.6 0.5 3 1.8 3.9 3.1 0.0

4以上 0.4 1.8 0.5 0.0 4以上 0.6 1.6 1.0 0.5

第 3 表 経営形態別資産保有者数の分布(相対度数:%)

(出所)IPCSR 7420より作成.

(19)

ち最初に登場する資産保有者」16)との関係を中心に見ていきたい.

 ICPSR 7420には,各家計の資産保有者の個人的属性情報が記載されている

(非資産保有者の個人的属性情報も記載されている).たとえば,世帯主に関して年 齢,性別,人種などが記載されているのと同様に,「世帯主以外の第1資産保 有者」(本稿における第2資産保有者,以下同様)についても属性データが示され ているのである.そこで,「手作地主家計であり資産保有者が2名の家計」に

16) ICPSR 7420では,世帯主以外で最初に登場する資産保有者を「世帯主以外の第1資産保有者」

(First-Mentioned Property-holder who was not the head-of-household)と記載しているが,本稿 では世帯主を第1資産保有者ととらえて,「世帯主以外の第1資産保有者」を「第2資産保有者」

と表記している.世帯主が資産保有者である保証はないが,世帯主のうち97.7%が資産保有者 であり,資産保有者でない世帯主のうち84.0%が小作である.

-14 -19 -24 -29 -34 -39 -44 -49 -54 -59 -64 -69 -74 -79 -84 -89 -94 95- 1

4 1 - 0 15-19歳

1 1

1

4 2 - 0 2

1

9 2 - 5 2

1 1 1

4 3 - 0 3

1 1

2

9 3 - 5 3

1

4 4 - 0 4

1 1 1

9 4 - 5 4

1

4 5 - 0 5

1

9 5 - 5 5 60-64歳

1

9 6 - 5 6

2

4 7 - 0 7 75-79歳 80-84歳

1

9 8 - 5 8 90-94歳 95歳以上

-14 -19 -24 -29 -34 -39 -44 -49 -54 -59 -64 -69 -74 -79 -84 -89 -94 95- 1

4 1 - 0

1

9 1 - 5 1

20-24歳 1 1 2 6 3 2 1 1 1

2 3 2 4 3 3 2 2

9 2 - 5 2

1 1 2 1 3 2

4 3 - 0 3

1 2 1 1 1 3

9 3 - 5 3

1 1 1 2 1 3 1 1 1

4 4 - 0 4

1 1 1

2

9 4 - 5 4

1 1 1

4 5 - 0 5

1 1 1 3

1 3

9 5 - 5 5

60-64歳 2 1 1 2

65-69歳 1 3 3 1

1 1 1

2 1

4 7 - 0 7

1 2

9 7 - 5 7

1

4 8 - 0 8 85-89歳 90-94歳 95歳以上

ニューイングランド

東部大西洋岸

世帯主年齢(歳)

世帯主年齢(歳)

第 4 表 手作地主の世帯主と第2資産保有者の年齢に関するクロス表

(20)

ついて,世帯主と第2資産保有者の年齢階層のクロス表を作成し,第 4 表と した.そして,このクロス表上において対角線近くに現れる標本を点線で囲 み「G」と表した.これらの標本は世帯主と第2資産保有者の年齢階層がほ ぼ同じとなっているので,その関係はきょうだいもしくは夫婦であると考え られる(後掲の第 5 表を参照)17)

17) 第5表の年齢差15歳未満の列では,世帯主と第2資産保有者の性別が男性と女性である割

合が36%~60%とそれほど高くない.したがって,4表の「G」は夫婦関係である場合以外に,

きょうだい関係である場合が相当数含まれていると考えられる.

(出所) ICPSR 7420より作成.

-14 -19 -24 -29 -34 -39 -44 -49 -54 -59 -64 -69 -74 -79 -84 -89 -94 95-

0-14歳 1 1 1

2 1 1 2

1 3

9 1 - 5 1

20-24歳 1 2 1 5 4 10 6 3 6 3 2

25-29歳 2 5 4 5 6 5 7 6 6 3 1

30-34歳 2 1 4 6 4 2 2 2

1 2 1 1 2 3 2 1 2

9 3 - 5 3

1 3 2 1 1

4 4 - 0 4

45-49歳 1 1 1 1

2 1 1 1

1

4 5 - 0 5

1 2

1

9 5 - 5 5

60-64歳 1 5 2 1 1 1

1 1

3 1

9 6 - 5 6

1 1

4 7 - 0 7

2

9 7 - 5 7

1

4 8 - 0 8 85-89歳

1 1

4 9 - 0 9 95歳以上

-14 -19 -24 -29 -34 -39 -44 -49 -54 -59 -64 -69 -74 -79 -84 -89 -94 95-

0-14歳 1

1 1 1 1 1

9 1 - 5 1

20-24歳 1 3 2 1 7 6 2 3

1 2 1 3 5 5 2 3 1

9 2 - 5 2

2 1

2

4 3 - 0 3

1 2 2 1

9 3 - 5 3

1 1 1 1

4 4 - 0 4

1 1

9 4 - 5 4

1 1

4 5 - 0 5

1 1

1

9 5 - 5 5

60-64歳 1 1 2

1

9 6 - 5 6

1

4 7 - 0 7

1

9 7 - 5 7

1

4 8 - 0 8 85-89歳 90-94歳 95歳以上

五大湖周辺

西部フロンティア

世帯主年齢(歳)

世帯主年齢(歳)

第 4 表 手作地主の世帯主と第2資産保有者の年齢に関するクロス表(つづき)

(21)

 さて,ここで注目すべきは,その層に入らない多くの標本である.それら について,対角線付近よりも右上に存在する層を実線で囲み,それぞれ,多 くの標本を有している個所に「A」「B」「C」と付した.これらのグループは,

世帯主年齢が第2資産保有者よりもおおよそ1世代もしくは2世代高くなっ ている.たとえば「A」では,世帯主年齢が40歳代~50歳代で第2資産保有 者年齢が10歳代~30歳代となっており,世帯主が親世代,第2資産保有者 が子世代と考えられる.同様に「B」は,世帯主年齢が60歳代以上であるの に対して第2資産保有者年齢が30歳代~50歳代であり,ここでも世帯主が 親世代,第2資産保有者が子世代であることが想定される.そして「C」では,

世帯主が60歳代以上で第2資産保有者がほぼ30歳代未満となっているので,

この第2資産保有者は世帯主の孫世代であると考えられる.

 一方,対角線付近よりも左下に存在する標本は,世帯主年齢が第2資産保 有者年齢よりも低い層である.ここで,比較的多くの標本が存在する部分を 網掛けの実線で囲んで,それぞれ「D」「E」「F」とグループ名を付した.こ の場合は,世帯主年齢が第2資産保有者年齢よりも高い「A」「B」「C」のグ ループとは逆の関係になり,「D」は第2資産保有者が親世代(40歳代~60歳代)

で世帯主が子世代(20歳代~30歳代),「E」も第2資産保有者が親世代(60歳 代以上)で世帯主が子世代(40歳代~50歳代),「F」の世帯主(20歳代~30歳代)

が第2資産保有者(60歳代以上)の孫世代となっている.

 4地域いずれにおいても,最も標本数の多さが目立つグループは世帯主年 齢が第2資産保有者年齢よりも高い「A」~「C」の層である.また,それほ ど支配的な数があるわけではないが,第2資産保有者が世帯主よりも年齢層 が高いグループである「D」~「F」の層も相当数存在する.これらのグルー プは,手作地主の特質である複数の資産保有者の存在(ここでは2人目の資産保 有者の存在)が,複数世代にわたる資産保有者を有することによって実現して いることを示しており,その点で注目に値する.

 そこで,世帯主と第2資産保有者との年齢階層の構成を世代間の資産分割に

(22)

注目して整理した.第5表は世帯主と第2資産保有者との年齢差が「15歳以上 である場合」と「15歳未満である場合」に分けたものである.これは15歳以上 の年齢差がある場合を世代が異なると想定したものであり,世帯主と第2資産 保有者との年齢差が15歳未満である部分が,おおよそ第4表の「G」に相当する.

 第5表の合計の部分を見ると,いずれの地域においても世帯主と第2資産

ニューイングランド 年齢差

15歳以上 15歳未満

男性と女性 4 6

男性と男性 8 4

女性と女性 0 0

合   計 12 10

東部大西洋岸 年齢差

15歳以上 15歳未満

男性と女性 18 20

男性と男性 59 17

女性と女性 0 0

合  計 77 37

五大湖周辺 年齢差

15歳以上 15歳未満

男性と女性 20 27

男性と男性 98 40

女性と女性 3 2

合   計 121 69

西部フロンティア 年齢差

15歳以上 15歳未満

男性と女性 13 9

男性と男性 45 16

女性と女性 0 0

合   計 58 25

第 5 表 手作地主の2名の資産保有に関する分割表

(出所)ICPSR 7420より作成.

(注)西部フロンティア地域には世帯主の性別不明家計が1戸存在する.

(23)

保有者との年齢差が15歳以上である家計の方が多く,とくに東部大西洋岸,

五大湖周辺,西部フロンティアの3地域では,その数が年齢差15歳未満の家 計の約2倍に達している.さらに,世帯主と第2資産保有者の性別も考慮し て分割すると,いずれの地域においても「年齢差15歳以上で世帯主も第2資 産保有者も男性である場合」が最も多く,ここでも東部大西洋岸,五大湖周辺,

西部フロンティアの3地域では全体の半数以上がこのカテゴリーに含まれる.

 また,この表で「男性と女性」としている部分には「世帯主=男性,第2 資産保有者=女性」の場合と,「世帯主=女性,第2資産保有者=男性」の場 合の双方を含んでいる.詳しい結果を示していないが,「世帯主年齢が第2資 産保有者より15歳以上低い家計」29戸のうち,「世帯主=男性,第2資産保 有者=女性」の家計が27戸と圧倒的に多い.これは,母親(や祖母)が一部 の資産を保持しつつ,息子(や孫)に世帯主を任せている状況である.

 これらの点を綜合すると,手作地主において複数の資産保有者が存在して いるという状況は,相続によって資産が分割されているために生じていると 考えてよい.この事実は,手作地主家計において,世代を超えた長期的・継 続的な農場経営が行われていたことを示している18)

 手作地主において資産保有者が複数存在することの特異性は,世帯主と資 産を保有していない家族成員との関係を明らかにすることによってより一層 鮮明になる.そこで,同じく資産保有者が2名いる手作地主家計において,

世帯主と第1非資産保有者(First-Mentioned Non-Property-holder in the household

who was not the head-of-household)の年齢の関係からその点を明らかにしよう.

18) ただし,ここに現れる標本には親世代や祖父母世代が死亡した後に子世代や孫世代が農場を 相続したケースが含まれていない.もしそのような標本を確定できるのであれば,ここでの結 論はより強力になるが,データの性質上,そのような分析は不可能である.一方,親世代や祖 父母世代から子世代・孫世代に相続が完了し,高年齢世代が家計成員として含まれているにも かかわらず複数の資産保有者が存在しないことになっている場合もここには含まれていない.

もし,手作地主以外の経営形態においてそのようなケースがより多く存在しているとすれば,

手作地主が他の経営形態より長期にわたって(世代間の継承を通じて)農場を継続的に経営し ていたという本稿の結論は再考を迫られることになるが,手作地主が複数世代にわたって資産 保有者を有しているという顕著な特質を実証したという結論部分は変わらない.

(24)

 第 6 表は,世帯主年齢と第1非資産保有者年齢とのクロス表である.この 表ではグルーピングの枠を示してはいないが,いずれの経営形態においても 明らかに表の対角線付近の度数が大きくなっている.

 また,第5表にならって,年齢差15歳以上か否かによって分割した度数を 表したものが第 7 表である.この表において圧倒的多数を占めるのは,「年齢 差15歳未満で世帯主と第1非資産保有者が男性と女性の場合」である.ここ でも結果を詳しく示してはいないが,このカテゴリーに入るすべての家計は,

-14 -19 -24 -29 -34 -39 -44 -49 -54 -59 -64 -69 -74 -79 -84 -89 -94 95- 1

4 1 - 0 15-19歳

1

4 2 - 0 2

1

9 2 - 5 2

1

4 3 - 0 3

1 1

9 3 - 5 3

1

4 4 - 0 4

2 3

9 4 - 5 4

3

4 5 - 0 5

1

9 5 - 5 5

1

4 6 - 0 6

2

9 6 - 5 6 70-74歳 75-79歳 80-84歳 85-89歳 90-94歳 95歳以上

-14 -19 -24 -29 -34 -39 -44 -49 -54 -59 -64 -69 -74 -79 -84 -89 -94 95- 1 2

1 1

4 1 - 0

2 2 1

9 1 - 5 1

20-24歳 2 2 1 1

1 1 2 1 1 4

9 2 - 5 2

1 1

1 5 2

4 3 - 0 3

1 5

2 2 1

9 3 - 5 3

1 8 6

4 4 - 0 4

1 5 4 3

9 4 - 5 4

1 1 1 1 7

4 5 - 0 5

1 2 3 1

9 5 - 5 5

2 2 2 1

4 6 - 0 6

3 3 1

9 6 - 5 6

1 1 1

4 7 - 0 7 75-79歳

1

4 8 - 0 8 85-89歳 90-94歳 95歳以上

1

ニューイングランド 世帯主年齢(歳)

1

東部大西洋岸 世帯主年齢(歳)

第 6 表 手作地主の世帯主と第1非資産保有者の年齢に関するクロス表

参照

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