Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Autonomic nervous activity of patients with gagging
problems during dental mirror insertion
Author(s)
坂本, 豊明
Journal
歯科学報, 118(1): 58-59
URL
http://hdl.handle.net/10130/4468
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 歯科における絞扼反射の発現は,生理的要因と心理的要因が考えられるが,両要因とも自律神経系が関与す る可能性が考えられる。また,延髄孤束核で嘔吐中枢と血管運動中枢は近接しており,絞扼反射の発現は,心 機能へ影響する可能性も考えられる。絞扼反射問題を有する患者が来院した場合は早期に病態を把握し,歯科 治療時の患者管理方針を決める必要がある。早期に患者管理方法を決める手段として,当診療科で考案した絞 扼反射問題の重症度分類 classification of gagging problem(CGP)の応用がある。CGP は,口腔内診査時の反 応によって絞扼反射問題の重症度を5群する分類で,特に臼歯部の診察の可否により,薬物を応用するか否 か,脱感作が可能か否かを2分(G1,G2と G3,G4,G5)できる可能性がある。本研究は,歯科における 絞扼反射問題を有する患者を対象とし,臼歯部の診察が可能な CGP の G2患者と不可能な G3患者の歯鏡挿 入前後の自律神経活動を比較するとともに健常者についても検討し,その違いを調査した。 2.研 究 方 法 対象者は,絞扼反射のために歯科受診が困難であることを主訴として初診来院し,調査に同意が得られた患 者で,初診時に CGP にしたがい G2群に分類された12名,G3群に分類された12名,さらにコントロール群 として同時期に当科へ初診来院し,無作為に選択された調査に同意が得られた健常患者15名とし比較した。さ らに,初診時に起立時の自律神経機能を測定し,交感神経の緊張が認められないものは,対象から除外した。 自律神経機能は,瞬時心拍変動時間領域周波数領域同時解析自律神経反射モニターを使用した。心電図から直 前30秒の R-R 間隔データを分析し,心拍1拍毎に値をリアルタイムに表現するモニターである。評価項目は, 高周波成分の計算値(CCVHF=√HF/AVG(RR)×100:副交感神経活動に関連),低周波成分と HF の比 LF/ HF(L/H:交感神経活動に関連),R-R 間隔変動係数(CVRR:自律神経活動に関連)および心拍数(HR)であ る。測定方法は患者を5分間水平位に保った後,歯鏡を下顎臼歯部舌側に歯肉と舌に接触するように挿入し, その前後1分間にわたって連続して自律神経活動の変動を記録し,平均値を算出した。 3.研究成績および結論 CGP 分類2度の患者は歯鏡挿入刺激に対して,自律神経活動への影響が認められなかった。一方,CGP 分 類3度の患者では歯鏡の挿入によって副交感神経,交感神経両成分の増加がみられた。しかしながら,心機能 氏 名(本 籍) さか もと とよ あき
坂
本
豊
明
(和歌山県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 2000 号(甲第1241号) 学 位 授 与 の 日 付 平成25年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Autonomic nervous activity of patients with gagging problems during dental mirror insertion
掲 載 雑 誌 名 Special Care in Dentistry 第36巻 2号 80−84頁 2016年
doi:10.1111/scd.12148 論 文 審 査 委 員 (主査) 櫻井 薫教授 (副査) 一戸 達也教授 山下秀一郎教授 田 雅和教授 石田 瞭教授 歯科学報 Vol.118,No.1(2018) 58 ― 58 ―
への影響は大きくなかった。 論 文 審 査 の 要 旨 臨床における CGP の有用性を検討するために,歯科における絞扼反射問題を有する患者を対象とし,臼歯 部の診察が可能な CGP の G2患者と不可能な G3患者の歯鏡挿入前後の自律神経系の変化を比較した。さら に,健常者についても検討し,その違いを調査した。その結果,CGP の G2の患者は歯鏡挿入刺激に対し て,自律神経活動への影響が認められなかったが,CGP の G3の患者では歯鏡の挿入によって副交感神経, 交感神経両成分の増加がみられた。 本審査委員会では,⑴本研究における目的が曖昧である。⑵臨床的な意義が不明瞭である。⑶心拍変動解析 における呼吸の影響。⑷体動があった場合,解析に影響があるのではないか。⑸統計方法の妥当性と,統計ソ フトの記載がない。⑹評価項目に CVRR を選択した理由。⑺起立試験で除外した者はどのような理由で除外 したのか。また,緊張状態が原因だとしたら,事前に休んでもらえばいいのではないか。⑻刺激部位の選択理 由は何であったのか。⑼今後の展望は。⑽嘔吐中枢と血管運動中枢が近いために影響があると述べているが, 延髄にはその他にも中枢が存在し,その影響はないのか。⑾自律神経解析の方法の妥当性について。⑿絞扼反 射と嘔吐反射の違いはなにか。などの質問があった。これらの質問に対する回答として,⑴目的の修正,加筆 をした。⑵G2と G3および健常者の歯鏡挿入時の自律神経の変化を調査し,その違いを把握した。⑶呼吸性 の不整脈に影響する高周波成分は0.15Hz から0.4Hz の範囲であり,呼吸数9∼24回/分の範囲であれば影響は 少ないと考えられる。⑷影響があるほどの体動はみられなかったことを追記した。⑸Student-Newman-Keuls test でも問題ないと考えられるが,より一般的な Tukey s test で再度統計して,使用した統計ソフトを追記 した。⑹評価を周波数解析だけでなく時間領域解析を応用し,評価に幅をもたせた。⑺自律神経に異常がある とまではいえないが,起立試験時に L/H が上昇しない者は正常に測定出来ない可能性があると考え除外し た。測定時には5分間安静にしていた。⑻通常の口腔内診査時に触れる部位を選んだ。⑼歯科治療中の絞扼反 射を抑制する方法がいくつか報告されているがその機序は明らかにされていない。自律神経活動を調べること により,機序を解明していけると考えている。⑽延髄にはその他にも咳の中枢や,唾液の中枢などもあり,絞 扼反射と相互に関係する可能性はあるが,今回は調査していない。⑾短時間調査に適したメムカルク法による 周波数解析と,時間領域解析を併用し,また1分毎に再測定できる本測定は,瞬時の測定に適していると考え られる。⑿絞扼反射は咽頭反射ともよばれ,いわゆる空嘔吐の状態,嘔吐反射は実際に吐瀉物を伴う反射であ るとされている。などと説明された。また,論文の記述,図表の訂正などの指摘があり,修正が行われた。 以上より,本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値す るものと判定した。 歯科学報 Vol.118,No.1(2018) 59 ― 59 ―