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学位論文題名 rvIolecular Phylogeny,Phylogeographyand Gene Evolution in the Subgenus Mus

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Academic year: 2021

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博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 島 田 朋 史

     学位論文題名

  rvIolecular Phylogeny ,Phylogeography and Gene Evolution in the Subgenus Mus

(ハツカネズミ亜属における分子系統・系統地理および遺伝子進化)

学位論文内容の要旨

  ハツカネズミ(Mus musculus)は農業作物被害や伝染病媒介の害獣としてだ けでなく、実験動物用マウスとして、農学・医学・遺伝学など様々な分野で重 要な 研究対象と なっている。ハツカネズミ(Mus)亜属において、ハツカネズ ミとその近縁種との系統関係や進化的背景が徐々に明らかにされているが、

2003年以 降3つの 新種が報告されるをど、その種数、系統関係ともに、未解 明な部分がある。ゲノム解読以降、マウスの利用価値がますます高まっている ものの、ハツカネズミ亜属を活用したポストゲノムの潜在的な学問的価値や有 用性については見落とされている。

  本研究では、ハツカネズミ亜属の今後の有効的な活用において、その土台と なる系統学的背景を明らかにすることを目的とした。まず、ハツカネズミ亜属 について、ミトコンドリアと核の中立的遺伝マーカーを用いて包括的な分子系 統学的解析を行なった。インドシナ半島を中心に東南アジアに広く生息してい るオキナワハツカネズミ(Mus caroli)において、ミトコンドリアの遺伝子を 用いて系統地理学解析を行なった。さらに、ハツカネズミ亜属での毛色変化に 関連している遺伝子であるMCIR (melanocortin‑l‑receptor)の進化の傾向につ いてイタチ類と比較し解明を試みた。

  分子系統学的解析の結果、ハツカネズミ亜属が4っの主な系統からなってい ることがわかった。これら4系統は、概ね生息地域ごとの近縁種からなってい た。現在インドシナ半島のみで生息が確認されている1種(M. fragilicauda) はインド亜大陸の種と同一の系統であった。また、ミャンマー産の個体のうち 1つ(M. Iepidoides)は、他の3系統とは別の独自の系統であることがわかっ た。もう1つのミャンマー産個体(M. nitidulus)は東南アジアではなくインド亜 大陸の系統に属することも示された。これらのことはミャンマー産の2種は「再 発見種」として新たにハツカネズミ亜属に加わる可能性を示唆している。また、

分岐 年代の推定 から、これら4っの系統は今から約200―300万年前のほぼ同 時期に形成されたことがわかった。このことから鮮新世前期における地球的規 模での寒冷化と乾燥化という環境変動が4つの系統を確立するための大きな要 因であったと推察される。また、インドと東南アジアの境界に位置するミャン マーは、ハツカネズミ亜属の多様化の中心的な舞台となっている可能性も示唆 している。

(2)

  東 南 ア ジ アの ほ ぼ 全 域 に 生息す るオ キナ ワハ ツカ ネズ ミ(Mus caroli)に お いて 、東 南ア ジア 大陸 での陸 生小 型哺 乳類 の系統地理学的パターンとその要因 並び に島 嶼で のヒ トに よる分 散さ れた 集団 と昔からの残存集団を区別するため に、ミトコンドリアのチトクローム遺伝子を用いて解析を行なった。その結果、

オキ ナワ ハツ カネ ズミ は5っ の主 な系 統か らな るこ とから わか り、 その 分化の 程 度 は ハ ツ カネ ズ ミ(Mus musculus)に おけ る亜 種間 のレ ベル に匹 敵す るも の であ った 。ま た、 これ らの系 統の 分岐 は更 新世中期と推定された。台湾とジャ ワ島 の明 確な2系統 の形 成に つい ては 、海 面や 気候 の変動 など の古 地理 学的要 因に よる もの と考 えら れる。 系統 の分 岐が 比較的短時間であることから東南ア ジア 大陸 内の 系統 につ いては 分断 では なく 、分散後、地域ごとに系統分化して いったものと推察される。また、沖繩とラオスの系統が遺伝的に近いことから、

沖 繩 の 系 統 につ い て は ヒ ト による 導入 によ るも ので ある こと が示 唆さ れた 。   ネ ズ ミ 類10種 と イ タ チ 類12種 のMCIR遺 伝 子 の エ ク ソ ン 領 域 前 半 部 分 (498bp)に お い て 塩 基 置 換 の 非 同 義 置 換 率 と 同 義 置 換 率 の 比(dN/dS)お よ びコ ドン バイ アス を比 較検討 した 。コ ドン 頻度を考慮した塩基置換モデルでは 非 同 義 置 換 と同 義 置 換 の 比 率はネ ズミ 類で0.23、イ タチ 類で0.35であ った 。 こ れ に 対 し てコ ド ン 頻 度 の 偏りを 考慮 しな いモ デル では 、ネ ズミ 類で は0.35 で あ っ た の に対 し 、 イ タ チ 類では1.02であ った 。こ のこ とは イタ チ類 のMCIR 遺伝子では、ネズミ類に比べて強いコドンバイアスがあることを示唆している。

この結果は、さらにイタチ類では有効なコドンの数(effective number of codon) が イ タ チ 類(30)で は 、 ネ ズ ミ 類(40)よ り も 低 い こ と か ら も 裏 付 けら れ た 。 ま た 、 ネ ズ ミ 類(G/Cか らA/T)お よ ぴ イ タ チ 類(A/Tか らG/C)で み ら れ た 塩基 置換 の方 向性 が、 コドン バイ アス の強 さとの関連も示唆された。さらにネ ズミ 類で は膜 貫通領域の非同義置換と同義置換の比率(0.13)が、それ以外の 領域 (0.30) よりも低く、この領域では負の淘汰圧が強くかかっている可能性 が 推 察 さ れ た。 ま た 、MusmusculusとMus caroliに お い ては 、塩 基置 換の 方 向性に種特異性が認められた。

  以 上の よう に、 ハツ カネズ ミ亜 属は 種問 および種内ともに過去の気候変動と 関連 しな がら 適応 的な 進化を して きた と考 えられ、今回得られた材料およぴ知 見は 機能 的遺 伝子 の進 化様式 を把 握す る研 究において今後大いに貢献できるも のと思われる。

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   助教授   鈴木   仁 副 査    教 授    木村 正人 副 査    教 授    東    正剛

    学位論文題名

    Molecular Phylogeny,Phylogeography     and Gene Evolution in the Subgenus Mus

(ハツカネズミ亜属における分子系統・系統地理および遺伝子進化)

ハツ カネズミ(Mus musculus)は農 業作物被害 や伝染病媒 介の害獣としてだけで なく、実験動物用マウスとして、農学・医学・遺伝学など様々な分野で重要な研究 対象 となってい る。ハツカ ネズミ(Mus)亜属において、ハツカネズミとその近縁 種との系統関係や進化的背景が徐々に明らかにされているが、その種数・系統関係 ともに、未解明な部分がある。ゲノム解読以降、マウスの利用価値がますます高ま っているものの、ハツカネズミ亜属を活用したポストゲノムの潜在的な学問的価値 や有用性については見落とされている。本研究では、ハツカネズミ亜属の今後の有 効的な活用において、その土台となる系統学的背景を明らかにすることを目的とし た。まず、ハツカネズミ亜属にっいて、ミトコンドリアと核の中立的遺伝マーカー を用いて包括的な分子系統学的解析を行なった。インドシナ半島を中心に東南アジ アに広く生息しているオキナワハツカネズミ(M. caroli)において、ミトコンドリア の遺伝子を用いて系統地理学解析を行なった。さらに、ハツカネズミ亜属での毛色 変化に関連している遺伝子であるMCIR (melanocortin‑l‑receptor)の進化の傾向につ いてイタチ類と比較し解明を試みた。

  第1章では核遺伝子を含めた3っのマーカーを用いて分子系統学的解析を行い、

ハツカネズミ亜属が4つの主な系統からなることを明らかにした。4系統は、概ね 生息地域ごとの近縁種グループからなることがわかった。現在インドシナ半島のみ で生息が確認されているM. frag〃めaudaはインド亜大陸の種と同一の系統であった。

また、ミャンマー産種M.卸耐〇^ゴesは、他の3系統とは別の独自の系統であること がわかった。もう1っのミャンマー産個体M.n窟た山んsは東南アジアではなくインド 亜大陸の系統に属することも示された。これらのことはミャンマー産の2種は「再 発見種」として新たにハツカネズミ亜属に加わる可能性を示唆している。また、分 岐年代の推定から、5っの系統分化は地球的規模での寒冷化と乾燥化が進んだ鮮新

(4)

世(約200−300万年前)のほば同時期に起きたことが示唆された。また、東南ア ジァは、ハツカネズミ亜属の多様化の中心的な役割を担っている可能性を示唆した。

  第2章では、東南アジアのほば全域に生息するオキナワハツカネズミ(M. caroli) において、東南アジア大陸での陸生小型哺乳類の系統地理学的関係を明らかにする ために、ミトコンドリアのチトクローム遺伝子を用いて解析を行なった。その結果、

オキナワハツカネズミは5っの主な系統からなることから分かり、その分化の程度 はハツカネズミ(M. musculus)における亜種間のレベルに匹敵するものであった。

また、これらの系統の分岐は更新世中期と推定された。系統の分岐が比較的短時間 であることから東南アジア大陸内の系統については分断ではなく、分散後、地域ご とに系統分化していったものと推察された。

  第3章 で は、 ネ ズミ 類10種 と イタ チ 類12種のMCIR遺 伝子 の エキ ソ ン領 域 前 半 部分(498bp)にお いて塩基置 換の非同義 置換率と同 義置換率の比(dN/dS)およ びcodon biasのレベルを比較検討した。コドン頻度を考慮した塩基置換モデルでは 非同義置換と同義置換の比率はネズミ類で0.23、イタチ類で0.35であった。これに 対してコドン頻度の偏りを考慮しないモデルでは、ネズミ類では0.35であったのに 対し、イタチ類では1.02であった。このことはイタチ類のMCIR遺伝子では、ネズ ミ類に比べて強しヽ codon biasがあることを示唆している。この結果は、さらにイタ チ 類では有効 をコドンの 数(effecivenumberofcodon)が イタチ類は約30で、ネ ズミ類の約40よりも低いことからも裏付けられた。また、ネズミ類(G′CからA汀)

船よぴイタチ類(〜TからG/C)でみられた塩基置換の方向性が、Codonbiasの強 さとの関連も示唆された。さらにネズミ類では膜貫通領域のdN′dSは0.13であり、

それ以外の領域では0.30と低く、膜貫通領域では負の淘汰圧が強くかかっている可 能性が示された。

  第1章で得 られた、新 発見種1種、再発見種2種を含むハツカネズミ亜属の系統 関係及ぴ分岐年代の結果は、ユーラシア大陸における哺乳類の進化史、過去の気候 変動や生態系の変遷を知るうえで重要な手がかりとなる知見である。第2章で明ら かにされたオキナワハツカネズミ系統地理学的結果から、東南アジアは、種内レベ ルにおいても、多様性を生み出す機構を備えていることが示唆された。第1章と第 2章の知見は、異なる時間的スケールにおいて、東南アジアが小型哺乳類の多様性 創出の中心的地域であることを強く支持するものである。第3章の知見は、マウス ゲノム情報の有効活用という点で、ハツカネズミとその近縁種を用いることの有用 性を示すものであり、今後の機能的遺伝子の進化及ぴその歴史的背景を解明してい く 上 で 、 こ の 分 類 群 の 貢 献 が 大 い に 期 待 で き る こ と を 示 し て い る 。   審査委員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心で あり、大学院博士課程における研鑽や習得単位などもあわせ、申請者は、博士(地 球 環 境科 学 )の 学 位を 受 ける の に 充分 な 資格 を有するも の.と判定 された。

参照

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