博 士 ( 文 学 ) 杉 山 太 子
学 位 論 文 題 名
青年層による発話表現の文法的特徴の研究 学位論文内容の要旨
本 論 文は 現 代(2000A.D.闘 の 日 本 語の 談 話 文 法 の動 態 を 見 る ため に 収 集 し た デー タ ( テ レ ビの 談 話番組 働0lo代 し や べ り 場 』 の 文 字 化 資 料 ) に 基 づ ぃ て 、2000A.D.頃 に 文法 を 確 立 し た 世代 の 話 し 方 の実 態 の 一 端 を 示 し たも の で あ る 。
本 論 文 は 、1文 末 表 現 と 性 差、2「 じ や ん」 「 や ん 」 、3「 っ て 」 の3章 と 資 料 (放 送 発 話 文 字化 資 料 ) か ら な り 、 総 字数 約20000で あ る 。
今 回 所 用 の 資 料 は 、 膜 剣10代 し ゃ べ り 場 』 の 第6期 の 第1回か ら 第6回 まで(2001年11〜 12月 放 送 分)
で あ る 。
【文末 表現 と性差 】
文末表 現の 性差に ついて は、先 行研 究によ って提 示された「用言文( 男性性)」と「体言文(゜女性性)」
とに分 けて分 析す る方法 がとら れてい る。
先 行 研 究 のフ ィ ク シ ョ ンの 科 白 を 資 料 とし たr籌 む念 的な性 差」で は性 差が明 瞭に認 識され る女性 性用 言 文(行 くわ。 雨だ わ。) と男性 性体言 文(雨 か。 雨さ。 )がか なり見 られ たが、 今次の 資料で は、男女ともに その使 用がほ とん ど見ら れなか った。
女性男性 用言文 41.652.2
体言 文( か ・さ )1 .52.5
´餌ぐ言.文 37 .729 .5 用言 文( わ ) 0 .
2 0.0で す ・ ま す
19.
115.8先 行 研 究 で は 、性 差 は 「 異 性性 の 文 を 使 うべ き で な ぃ 」と い う 観 念 に よっ て い る と し、 男 性 性 指 標を ioox用 言 文 等 / (用 言 文 等 十 体言 文 等 十 丁 寧文 ) 、 女 性 性 指標 をioox体言文 等/( 用言文 等十 体言文 等)
と し 、 フ ィク シ ョ ン の 科白 の 平 均 値 (メ デ ィ ア 伺 は 女 性 の 科 白 m/f: 20/75
男 性 の 科 白 m/f: 76/05 で あ るが 、 今 次 の 資料 で 平 均 値は
銚 と の 発 話m/f:42/47 男 性 の発 話 m/f: 52/35
で あり 、 性 差 は 明瞭 で は な い 。た だ し 、 個 別に 指標 を算出 すれぱ
− 26―
. m
昇 順
T‑N f 21/32 O‑Y m 25/74 T‑K f 36/61 T‑Yr f 37/56 T‑Yk f 39/55 O‑S m 39/48 N‑A m 51/49 K‑Y f 52/45 S‑A f 56/43 T M f 57/43 N‑Z m 57/35 Y‑N m 60/22 K‑H m 67/26f降順
O‑Y m25/74 「 んじ ゃ ない の・ と 思うのね」 多用
′r‐K f36/61 1、−Yrf3リ56 T‐Ykf39/s5
N‑A m O‑S m K‑Y f S‑A f T‑M f N‑Z m T‑N f K‑H m Y‑N m
51/49 39/48 52/45 56/43 57/43 57/35
21/32 ‑C‑t .ます多用 67/26
60/22 K―Mm 73/04. ― ー −1
Y‑Km84/16ー 一 一 一 ― ー‑ Y‑km84/16 Lー ― ― ― ーK・Mm 73/04
と な り 、 「 異 性 性 の 文 を 多 用 し な い 」 傾 向 は 認め ら れる 。 【 「 じや んJ「 やん 」 】
今 次 の資 料に よ れぱ 、fじ やんJ「や んJは 、 とも に用 言 と体 言を 承ける。恐 らく「だろう亅. 「でしょう」
の代 替 表現 とし て 使わ れ. 「 じや んJ『 や. ん 」自 身は 用 言と して 働いている 。上に来る語が異 なるのは「な い( 打消しの助動詞)十 じやん」と「ん( 打消しの助動詞) 十やん」で、「じや ん」「やん」の使 用が地域性に 由来 す るこ とを 示 して いる 。 また 「の ( 形式 名詞)十やん 」は見られるが、「 の十じゃん」は例 が無い。「や ん」 の 後に は「 かJ「 ね 」の 終助 詞 が付 く( 「 んJで 終わ るた め 「よ 」は 付 かな い) が 、「じゃ んか」は使用 が 避 け ら れ て い る ら し く 、 今次 の資 料 では 例が な い。 終助 詞 が付 かな い ため 「じ ゃ ん」 自体 が 終助 詞的 に 使 わ れ て い る と も 言 う こ と が出 来る 。 文末 表現 に 「じ ゃん ・ やん 」を 使 用す る割 合 は、 個人 別 には 女性 は 5 ^‑‑50% 、 男 性 は0〜51% 、 平 均 で 女 性15% 、 男 性19% と 、 か な り の 量 で あ り 、 性 差 は 認 め が た い 。 【って1
「 っ てJ( 「てJとも )は 助 詞「 と」 と 同じ よう に 働き なが ら 、時 とL厂 く、 自 身が 動調 め よう に働 く 語で ある 。 今次 の資 料 では 「っ てJの上に 来るのは「と」と 同様に多櫚艮渣 る 。後忙来る語聡「 っで誇う』『ーコ て思う」「て か」と「と」と同様 の承接が多いが、 「ってーこと」「ってニ人Jのようを漣鯏鰯膨もかなゆあり,`
少 な い な が ら 連 用 形 「 て っ て 」 も あ る ( 今 回 は 仮 定 形 「 っ て ば 」 は 例 が な か っ た 。)¥o
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学位論文審査の要旨 主査 教 授 宮澤 俊雅 副査 教 授 冨田 康之 副査 助教授 佐藤知己
学 位 論 文 題 名
青年層による発話表現の文法的特徴の研究
本論文は現代(2000A.D.頃)の日本語の談話文法の動態を見るために収集したデータ(テレビの談話番組 の文字化資料うに基づぃて、2000A.D.頃に文法を確立した世代の話し方の実態の一端を示したものである。
一般に現代日本語の文 法は書き言葉を中心にして行なわれているが、この書き言葉は、1880A.D.ころの 言文一致運動期に、それまで900〜 1100A.D.以来使われていた書き言葉(漠文訓読文・和文・候文・和漢混 淆文)を廃して、当時のしゃべり言葉を復古化して構築されたものであり、従ってそれを規範とする文法論 では、往々にして現代の しゃべり言葉を「正しい日本語」ではなく、省略・訛りの激しい、ぞんざぃで間 違いの多い女子供の喋り 方という文法外事項の元に説明し位置付ける傾向が強い。しかしながら言文一致 運動以後既に1世紀を経 て復古的な書き言葉と現代青 少年のしゃべり言葉の間には既に300年の実年代差 が生じており、しやぺり 言葉自体の文法を省略・訛り・ぞんざぃ・間違い・女言葉という文法外事項で処 理することはできなくなっている。
本論文は、現代日本語 の「しやべり言葉」の文法を知るための基礎資料となる相当量の発話資料を構築 することを目的とし、現時点で、その階梯の一端を示すべく、特に、多くの文法研究者が、訛り・間違い・
女言葉と見なして顧慮しなぃであろう「しやべり言亨藺の文法の若干のテーマを取り上げたものである。筆 者は、発話資料として今 次使用分の数倍の文字化を目指しており、完遂すれぱ特殊なテーマに限らず、当 たり前のテーマ(例、「しゃべり言葉」文法の連用機能、連体機能、助詞・助動詞の承接、等)にも検証資料 として有用であろう推測される。
本論文は発話資料によ って現代日本語の記述文法を検証することの可能性を明らかにしており、今後、
同様の研究が多く行われ るようになるであろう端緒となっている。この意味で本論文は日本語の文法研究 を進展させるものである。審査担当者は全員一致して杉山太子氏に博士(文学)の学位を授与するのが至当 であるとの結論に達した。
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