41-1 1.研究の背景と目的 人口減少と高齢化が問題となって久しい我が国で は、地域の住環境を取り巻く状況が変わりつつある。 その代表として、都市機能の集約を目指す立地適正化 計画注 1)に象徴されるように行政サービスやインフラ のコンパクト化が進められようとしている。この趨勢 で縮小する地域において今後の実質的な公的サービス の拡充は見込めず、都市運営の主体が行政から民間へ 移っていく流れがある。これに対し、縮減期を迎えた 地域では今後の暮らしを維持するために住民自身で地 域運営に取り組む必要がある。 我が国の多くの住宅市街地には地域コミュニティの 代表組織として自治会や町内会などの地縁組織があ り、地域運営の中心的役割が期待されている。しかし ながら、高齢化や人口減少が進行する地区では、後継 人材の減少や活動の縮小、構成組織の脱退などが進ん でおり、こうした組織的問題を抱えながら空家や空宅 地の増加と劣化すなわち土地利用の空洞化による住環 境問題への対応を迫られる状況にある。加えて、地域 の様相は開発経緯や地形、権利関係及び人口減少の程 度などによって多様であり、地域の実状に応じた取り 組みが求められる。 以上より本研究では、北九州市八幡東区枝光二区を 対象に、自治区会や町会の組織運営と住環境の実態を 捉え、縮減期を迎えた住宅市街地の地域運営と住環境 保全に関する知見を得ることを目的とする。 2. 研究の方法 2-1. 研究対象地区の概要 本研究の対象地区である北九州市八幡東区枝光二区 は 1901 年の官営八幡製鐵所の操業以降、労働者の住 宅需要を受け形成された斜面住宅地である。製鐵所の 東隣に位置し、標高 5 ~ 120 mに及ぶ。しかし、1959 年に始まった製鉄企業の再編・合理化によって労働人 口が流出し、モータリゼーションの進展や郊外住宅地 の拡大に伴って住民の減少や高齢化が進行した。空家 や空宅地が増加し、管理の停滞と劣化の進行による住 環境の悪化が問題となっている。加えて、2017 年に 市が公表した立地適正化計画では地域の大半が居住誘
縮減期の斜面市街地における地域運営と住環境保全に関する研究
ー北九州市八幡東区枝光二区におけるケーススタディー
安東 美咲 図 1. 調査対象地区の概要 導区域を外れた。今後、更なる縮減が予想される中で、 いかに地域の再編に取り組むかが課題といえる(図1)。 2-2. 研究の流れ まず、自治区会の運営記録資料を収集整理し、加入 世帯の推移と町会組織の変化を捉えた。次に、自治区 会との共同調査 注 4) で把握した空家・空宅地の発生量 と管理状態をもとに、町会エリアの空洞化と住環境悪 化の推移を捉え、町会の立地条件等との関係を分析し た。続いて、地区の上方に位置し、町会運営が異なる 4 町会を重点調査エリアとして、現地踏査と町会長等 へのヒアリング調査を行い、町会運営と住環境保全の 実態を把握し、今後のあり方について考察した。 2-3. 対象地区の地域住民組織の構成 北九州市では「町会」を単位自治会、「自治区会」(以 下、区会)を概ね校区単位での町会の連合体と位置付 けている注 3) 。地域住民は任意で町会に世帯単位で加 入し、町会が区会に加入している場合、町会への加入 と区会加入は同義となる。また、町会ごとに加入世帯 数や面積に応じた近隣単位で「組」を設けている。 枝光二区では 2018 年度現在、区会は 23 町会で構成 され、1 町会あたり 1 ~ 16 組、各組およそ1~ 20 世 N 400(m) 100 0 凡 例 町会区域 枝光市民センター 居住及び都市機能誘導区域 居住誘導区域 80 20 40 60 (m) ※総人口、総世帯数、高齢化率は国勢調査町丁目別調査値を町会面積で按分して求めた。 枝光本町 1 枝光本町 1 諏訪 1-1諏訪 1-1 諏訪 1-3 諏訪 1-3 諏訪 1-2 諏訪 1-2 諏訪 2-1 諏訪 2-1 諏訪 2-2 諏訪 2-2 諏訪 2-3 諏訪 2-3 諏訪 1-4 諏訪 1-4白川 1白川 1 白川 2 白川 2 白川 3白川 3 枝光本町 2 枝光本町 2 枝光本町 3 枝光本町 3 日の出 1-1日の出 1-1 日の出 1-2 日の出 1-2 大宮町 大宮町 日の出 2-2 日の出 2-2 日の出 2-4 日の出 2-4 日の出 2-5 日の出 2-5 日の出 3-1 日の出 3-1 日の出 2-3 日の出 2-3 日の出 1-3 日の出 1-3 日の出 3-4 日の出 3-4 日の出 3-2 日の出 3-2 日の出 3-3日の出 3-3 日の出 2-1 日の出 2-1 藤見町 藤見町 枝光二区の概要(2015 年) 宅地総面積:52.5ha 総人口:5,565 人 総世帯数:2,513 世帯 高齢化率:35.5% 町会加入世帯数:1,631 世帯(加入世帯率 64.9%)41-2 り組みに差異がある。 3-3. 町会長の位置付けの変遷 次に、町会長の在任年数の変化を見ると、1970 年 代までは任期が 3 年以上の町会長の割合が高いが、そ れ以降 2010 年頃まで 1、2 年任期の割合が高くなり、 近年は再び長期化する傾向にある(図 2)。 この背景として、1960 年代頃までは町会長は名誉 職として地域の有力者が務めており、この時期は 7 町 会で任期が 20 年を超えるものが見られる。その後は 1970 年頃の産業構造の転換及び有力者の引退と地域 の小中学校 PTA 関連行事の増加に伴い、子育て世代が 地域運営に参加するようになり、1,2 年任期の輪番制 をとる町会が増加した。近年は少子高齢化の進行に伴 う町会長の担い手不足や後任不在が任期の長期化につ ながっている。 4. 町会エリア別の空洞化 次に、区会との共同調査(2014 年、2018 年)で把握 した空家・空宅地の実態から、町会エリア別の空洞化 と住環境悪化の動向を捉える。指標として、市営住宅 など管理が行政管轄の部分を除くネット面積のうち、 空家及び空宅地などの未利用地の面積割合(以下、空 洞率)、管理不全または劣化した未利用地の面積割合 (以下、悪化率)を算出した(図 3)。空洞率と悪化率に は相関が見られ、ともに大半の町会で増加傾向にある。 また、両指標ともに平均を上回る町会は 1 町会を除い て平均標高 40m 以上に位置している。 一方、空洞率、悪化率が低下した町会では老朽空家 の除却や未利用地の草刈り等の管理向上、あるいは未 利用地の駐車場や菜園への転用が起きている。中でも 日の出 3-4 町会では 4、5、6 組周辺の借地で、転居に 伴う家屋の除却、その後の地権者による空宅地の管理 によって悪化率の上昇が抑制されている。 5. 重点調査エリアにおける町会運営と住環境の実態 続いて、縮減が著しい地区の上方に位置し、町会運 帯で組成される。 3. 自治区会の変遷 3-1. 構成世帯の変化 1963 年以降の区会の加入世帯と組織構成の変遷を 図2に示す。2018年の加入世帯数及び人口は1,363世帯、 3,151 人注 4)で、加入人口における高齢化率は 45.7%、 高齢者の約 2 割を単身者が占める。1970 年代、八幡製 鉄所の東田高炉群の操業停止や八幡地区の製鋼設備の 停止以降、加入世帯数は減少傾向が続き、2018 年度 にはピーク時の約 4 割となっている。 一方、組数、町会数は区会加入世帯数に比べて緩や かに減少してきたが、2000年以降の変化が顕著である。 3-2. 地域コミュニティの空洞化 また、近年の加入世帯数減少には人口減少に加えて 町会及び組毎の脱会が影響している。特に、戸建て住 宅エリアよりも、管理体制の違いや利害の不一致から 集合住宅団地で棟毎の脱会が多くみられる。それに伴 い、加入世帯密度はピークの 1968 年の 63.8 世帯 /ha から 2018 年では 29.5 世帯 /ha に減少し、住民の親睦 や相互扶助、情報共有等の町会活動に支障をきたしつ つある。 これに対し、運営効率化のために隣組の統合再編(以 下、組再編)を行う町会が近年増加している。1963 年 の平均組世帯数は 10.2 ~ 21.3 世帯、2018 年は 4.0 ~ 13.5 世帯で加入世帯数に比べてやや緩やかに減少し ており、組再編によりの減少が抑制されている。一方 で、平均組世帯数が 4 世帯以下に減少した 3 町会では 1980 年以降組再編はみられず、町会毎に組再編の取 図 2. 枝光第二自治区会の変遷 図 3. 各町会の住環境の変容 0 20 40 60 80 100 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 0.0 50.0 100.0 150.0 200.0 250.0 300.0 350.0 19 63 19 65 19 67 19 69 19 71 19 73 19 75 19 77 19 79 19 81 19 83 19 85 19 87 19 89 19 91 19 93 19 95 19 97 19 99 20 01 20 03 20 05 20 07 20 09 20 11 20 13 20 15 20 17 20 18 26 町会 26 町会 2525 2626 2727 2525 24 24 2323 26 26 (年度) (%) (%) (組) (十戸) 町会数 町会加入エリア面積割合 (%) 加入世帯数 ( 十戸 ) 組数 ( 組 ) 凡例 左軸 右軸 50% 1~2 年目 3~5 年目 6~10 年目 11 年目以上 町会長在任年数別割合(%) 1972. 東田高炉群、操業停止 1979. 八幡地区のすべての製鋼設備を停止 1990. 本事務所が八幡から戸畑へ移転 1994. スペースワールド開園 2001. 枝光中と枝光北中が統合、 枝光台中学校が開校 1963. 北九州市、発足 枝光二区周辺の様子 八幡製鉄所関連 その他 2003. 大場谷小と山の口小が統合、 ひびきが丘小学校が開校 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0% ※日の出 2-2( 市営住宅が主 ) は除く 凡 例 2014 年 2018 年 平均標高 (m) 調査年度 0 ~ 19 20 ~ 39 40 ~ 59 60 ~ 79 80 ~ 悪化率 空洞率 2014 年平均 2018 年平均 日の出3-2 日の出3-1 日の出3-3 日の出3-4
41-3 営が異なる 4 町会(日の出 3-1、3-2、3-3、3-4)を取り 上げ、町会運営と住環境保全の実態を詳しく捉える。 5-1. 組単位に見る空洞の変化 日の出 3 丁目の 4 町会について、空洞率と悪化率の 推移を見ると、空洞率は全ての町会で増加しており、 3-3 町会を除く 3 町会で特に進行が早い。これら 3 町 会は、地権者がまとまった土地を所有しているエリア があり、地権者の意向や経済的な耐力が反映している ものと考えられる(図 5)。一方、悪化率の推移には町 会ごとに違いが見られ、3-1 と 3-4 は減少傾向にあり、 3-2 と 3-3 では増加している(図 4)。 組単位で空洞率と悪化率を見ると、同一町会でも分 布幅が広く、特に空洞率は 3-1、悪化率は 3-3 町会で 開きが大きい。そこで、この 2 町会の 2014 年と 2018 年の空洞率、悪化率の推移を見ると、組毎に異なる動 きをしていることが分かる(図 6)。両町会はともに悪 化率が減少した組があるが、これは地域内で管理者が 不明だった空家や未利用地の管理者情報が得られたこ とが大きい。情報収集は町会長が日常生活の中で管理 者に遭遇した際、直接聞き取りをしたケースや、回覧 板や点検活動などの地域活動の折に、未利用地や空家 図 5. 日の出 3 丁目の概要(2018 年現在) 図 4. 各町会の組毎の空洞率、悪化率の分布 図 6. 日の出 3-1 と日の出 3-3 における組の住環境 :就任年不明 凡例 町会加入世帯数(戸) 組数(組) 町会長任期(年) 0 5 10 15 20 0 50 100 150 200 1963 1968 1973 1978 1983 1988 1993 1998 2003 2008 2013 2018 日の出 3-1 規定任期:なし 0 5 10 15 20 0 50 100 150 200 1963 1968 1973 1978 1983 1988 1993 1998 2003 2008 2013 2018 日の出 3-3 規定任期:2 年 (年度) 世 帯 数 (戸) 世 帯 数 (戸) 組 数 町 会 長 任 期 (組) (年) (年度) 組 数 町 会 長 任 期 (組) (年) 図 7. 日の出 3-1 と日の出 3-3 の町会運営の変遷 空洞率 悪化率 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0% 45.0% 50.0% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 空洞率 悪化率 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0% 45.0% 50.0% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 2014 年平均 2018 年平均 2014 年平均 2018 年平均 1 2 3 4 5 6 7 1 2,6,9 3 4 5 7 8 10 ※2,6,9組は各年、両指標とも0% ※1組は2014年度、両指標とも0% 凡例 2014 年 2018 年 日の出 3-1 日の出 3-3 P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P PP P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P G G G G G G G G 広場 公園 公園 日の出 3-1 日の出 3-1 日の出 3-2 日の出 3-2 日の出 3-3 日の出 3-3 日の出 3-4 日の出 3-4 日の出台団地集会所 (現状、町会での利用は不可)日の出台団地集会所 (現状、町会での利用は不可) 日の出南団地集会所 日の出南団地集会所 日の出三丁目公園 日の出三丁目公園 町会域 日の出 3-1 日の出 3-1 日の出 3-2 日の出 3-2 日の出 3-3 日の出 3-3 日の出 3-4 日の出 3-4 ② ① ③ ④⑤ ⑥ ⑨ ⑩ ⑦ ⑧ 1 2 3 4 5 21 3 4 5 6 7 1 2 3 4 5 6 凡 例 未利用地 悪化未利用地 G 菜園 悪化空家 組境界 空家 P 駐車場 道を境界としない場合 道を境界とする場合 活動拠点 N 0 40 80m 3-1(①3、②4、③6、④1、⑤2、⑥4、⑦5、⑧7、⑨6、⑩2 計 40 世帯) 町内を東西に走る道を谷筋とした地形で、標高が最高 82m、最低 38mである。6、7、 8、9 組周辺を 1937 年までに、それ以外は 1969 年までに開発された。組割について は道を介して形成されている場合が多い。加えて、過去には長屋が多くあり、現在は 町内の駐車場の多くを同一の地権者が所有している。接道面積率は 73.9%である。 各町会の特徴 ※町会名横の数字は組名及びその組の世帯数 3-2(①7、②10、③15、④7、⑤8 計 47 世帯) 標高が最高 62m、最低 38mの西向きの斜面で、接道面積率は 76.1%である。5 組は 1937 年までに、その他大部分は 1969 年以降に開発された。3 組は市営住宅のみで構 成されており、ほぼ全戸が町会に加入している。また、4、5 組にまたがって地権者 が同じエリアがある。 3-3(①8、②8、③7、④14、⑤3、⑥13、⑦7 計 60 世帯) 最高標高 88m、最低 62mの南西の斜面である。1937 年までに町会の大部分が「新文 化街」という分譲住宅地として開発され、持ち家が多く、道路を境界として分かれて いる場合が多い。道路については過去の町会長が町内の道路を市へ移換した経歴があ り、接道面積率は 88.2%である。平成 29 年の豪雨災害により、5 組の 3 世帯が被害 を受けた。また町会南側のマンションは 2001 年建設当時から町会未加入。 3-4(①5、②6、③9、④3、⑤1、⑥5 計 29 世帯) 最高標高 88m、最低 62mの北西向きの斜面で、接道面積率は 87.6%である。大部分 が 1969 年までに開発され、北側の市営住宅は 1993 年に建てられた。町内が土地所 有の違いにより 3 つのエリアに分けられる。1、2 組と 3 組の一部は戸建て住宅地で 居住者が各々住戸、宅地及び前面道路を所有する場合が多い。3 組の一部と 4、5、6 組の一帯は同一の地権者の所有で、市道が通る。また市営住宅は 2014 年までは 7、 8、9 組として町会に加入していたが現在は脱会している。 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 空洞率 悪化率 凡 例 日の出 3-1 日の出 3-2 日の出 3-3 日の出 3-4※各マーク付近の数字は組名 全組平均 1 2,6,9 3 5 4 7 8 10 1 2 4 5 1 2 3 4 5 6 7 1 2 3 4 5 6
41-4 の近隣住民から得たケースがある。ここから、町会長 の空家、空き地対策への関心の高まりや、情報収集に おける組の有用性が伺える。 5-2. 日の出 3 丁目の町会運営 枝光二区全体で組織の変化が顕著な 2000 年以降の 組再編の回数に着目すると、3-1 では組再編はなく、 3-2 と 3-3 は加入世帯減少に伴う組再編をそれぞれ 1、 2 回行っている。また、3-4 は市営住宅団地の脱会に よる町会領域の縮小と組数減少が起きている(図 7)。 また、町会によって組再編の方針に違いが見られ、 3-3 では 1 組当たりの世帯数を 8 ~ 13 世帯とする目安 を設け、かつ、組の分割や飛び地を作らないように組 を再編している。これは従前の近隣関係へ配慮すると ともに日常的な地域活動が可能な規模を維持するた めである。一方、3-4 では複数組に及ぶ土地を所有す る地権者及び住民の意向に配慮して組再編を避けてお り、1 世帯となった組の世話は他組の組長が兼任する 状況が見られる。 町会長の任期は、3-1、3-4 は 1963 年から現在まで 1 ~ 4 年前後の輪番制であるのに対し、3-2、3-3 は再任 を複数回経て地域住民の信頼のもと、10 年を超えて 務める場合がある。町会長は円滑な町会運営のため、 自主的な対策を講じており、3-3 と 3-4 では町会独自 のニュースレターを市報等とともに配布し、生活面で の注意喚起や町内外の出来事の情報伝達をしている。 加えて、3-3 では現町会長から親睦行事の企画、高齢 単身者のゴミ捨てや草刈りの援助を始め、空家・空き 地対策では問題空家の所有者への連絡や庭木の自主剪 定、未利用地の菜園転用の仲介など、地域互助活動の 延長線上で個別に対応が進みつつある。 5-3. 区会レベルの地域運営に関する取り組み 区会や町会は原則、加入世帯を対象に情報発信や見 守りを行っているが、昨今の脱会増加に伴い、脱会エ リア内の要支援世帯への連絡・支援が弱まることが懸 念されている。これに対し、区会は地域福祉の担い手 である民生委員注 5) と担当町会との連携強化に取り組 んでいる。具体的には、枝光二区には 10 の民生区が あり、概ね1 ~ 3町会の範囲で設定されている。そこで、 自治区会との空家・空き地の共同調査で担当区域の民 生委員にも参加を要請、町会長と地域の住環境の実態 を把握するとともに区会の死角である未加入世帯や要 支援者の情報共有を図るものである。 近年生じた空家、空宅地は高齢単身者の施設入所な どで不在住化したものが発端となった場合が多い。そ のため民生委員と連携して高齢世帯などの見守りと情 報共有を図ることは将来の不在住化と空家化までを見 据えた住環境保全に通じる。 また、今後地域の縮減が進行すれば、町会レベルで の組織再編が予想され、民生区単位での情報共有や連 帯強化は今後起こりうる組織再編への備えともなる。 これについて区会長からは、民生委員との連携に加え、 将来は地区社会福祉協議会等とも連携を強め、地域福 祉と住環境保全の相互の問題に共同で取り組む場づく りが必要だとの考えが聞かれた。 6. まとめ 本研究で対象とした枝光二区では、空家、空宅地の 増加による土地利用の空洞化が進む中で、管理不全が 懸念される箇所や管理放棄された箇所も増加してい る。これらは地権者の意向が反映する面が強いが、町 会長は地域活動の中で、組を媒介にしながら情報収集 し、管理不全の管理不全の進行抑止や備えをしている ケースが見られる。また、空家等に対する軽微な手入 れや菜園利用などが互助活動の延長で進みつつある。 一方、土地利用だけでなく、町会加入世帯の減少や 高齢化からコミュニティの空洞化も進行しつつある。 この対策として、区会と町会では組再編や情報共有の 工夫、民生委員や他の地域住民組織との連携を図って いる。しかしながら、今後の更なる未加入世帯の増加 や役員の高齢化及び後任の不在といった地域住民組織 の縮減によって、地域互助活動の延長線上では対応が 難しくなると予想される。これに対し、枝光二区では 地域福祉と住環境保全の統合を図っていく機運が高 まっており、このような地域独自の活動を支援する施 策が必要だと考えられる。 補注 注 1)国土交通省によると、居住機能や医療・福祉・商業、公共交通等の様々な都市 機能の誘導により、高齢者をはじめとする住民が公共交通によりこれらの生活利便 施設等にアクセスできるなど、福祉や交通なども含めて都市全体の構造を見直すこ とを目的としたマスタープランを指す。 注 2)自治区会行事。九州大学の学生と町会長が町内の問題や改善点、空家空き地を 点検し、情報をまとめたマップを作成。後日座談会を開き、地域で意見交換を行う。 注 3)北九州内でもそれぞれの組織の名称や組織体系、エリア設定などが異なる。 注 4)2018 年 9 月末、枝光第二自治区会提供資料より 注 5)全国民生委員児童委員連合会によると、民生委員法に基づき非常勤の地方公務 員に位置付けられ、区会加入未加入に関わらず担当民生区の高齢者及び児童の福祉 的サポートを担っている。 参考文献 1)志賀勉(2014)「密集住宅市街地における地域主体のまちづくり手法に関する研究」 2) 吉 武 俊 一 郎・ 高 見 沢 実・ 渕 井 達 也(2017)「 大 都 市 圏 郊 外 都 市 に お け る 地 域 コ ミ ュ ニ テ ィ 関 与 に よ る 空 き 地 マ ネ ジ メ ン ト の 可 能 性 に 関 す る 研 究 - 横 須 賀 市 縮 減 市 街 地 に お け る ケ ー ス ス タ デ ィ を 通 し て -」, 日 本 都 市 計 画 学 会 都 市 計 画 論 文 集 ,Vol.52,No.3,pp.1036-1043 3)饗庭伸ほか(2016)立地適正化計画の検討状況からみる都市のたたみ方の研究 , 日 本建築学会大会学術講演梗概集 ,pp.49-52 4)大野秀敏ほか(2018)『コミュニティによる地区経営 - コンパクトシティを超えて -』 5)小林秀樹(2011)「縮小社会における都市・家族・住まいのゆくえ」住総研研究論文 集 No.38,pp.5-21 6)大月敏雄 + 東京大学建築計画研究室(2018)『住宅地のマネジメント -「まちネット」 から学ぶまちづくりの知恵』