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健康生成論に基づく地域住民の健康実態に関する疫学的研究−健康保持能力Sence of Coherence(SOC;首尾イ一貫感覚)が高い集団の特性を探る− [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)健康生成論に基づく地域住民の健康実態に関する疫学的研究 ∼健康保持能力 Sense of Coherence (SOC;首尾一貫感覚)が高い集団の特性を探る∼ キーワード:Sense of Coherence (SOC) 健康生成論. 所 属. メンタルへルス. 行動システム専攻 健康科学コース 氏 名 中川(本城)薫子. 1 調査研究の目的 SOC(Sense of coherence・首尾一貫感覚)のような、感覚. あるいは維持する能力が高いことになる。. 的なものや周囲の世界に対する志向性がストレス対処の成. 3 SOC に関する先行研究. 功を左右し、健康維持—破綻の決定要因のひとつであること. ① SOC の標準値について. を示したい。. 【表−1 SOC 平均得点率について】. そこで、研究の第一段階として、どのような健康実態(意 識・行動・習慣・QOL・内的要因等)の特性をもった人々の. 調査対象. 集団が、健康生成論の中核概念である健康保持能力 SOC が. 日本 (国内全域). 67.8%. 1026. 2003. 高いのかを、フィールドにおける横断的調査によって明ら. 日本 (東京・秋田農村). 63.2%. 323. 2002. かにした。. 日本 (一般成人). 66.0%. スウェーデン (一般住民). 75.2%. 148. 1995. 2 SOC とは. ポーランド (一般住民). 65.4%. 60. 1994. 健康生成論の前提は、心理社会的ストレッサーや病原因子. イスラエル (一般住民). 67.2%. 297. 1982. 平均得点率. 人数. 年度. 1997. は遍在的であり、その撲滅は不可能だという見方にある。 つまり、健康生成論が問うのは、ストレッサーやリスクに. ② SOC と精神的健康との関連性について. 取り囲まれた現実が存在するにもかかわらず健康が成立す. 全体的な先行研究の結果としては、SOC は精神的健康(不. るための条件、すなわち人々の健康を生み出し、保つ能力. 安・抑うつ・愁訴など)と強い相関関係があることが示唆. である。. されている。. こうしたストレス対処・健康保持能力を、医療社会学者ア ーロン・アントノフスキー(Aaron Antonovsky 1923-1994). ③ SOC と身体的健康との関連性について. は首尾一貫感覚 Sense of Coherence(SOC)とよび現在では. 先行研究の傾向からは、いわゆる客観的な健康(疾病の発. 健康社会学などの分野では広く普及した概念になりつつあ. 生や有無)を予測する因子としては、SOC はあまり有効では. る。. ないように考えられる。. アントノフスキーの定義によると、 「SOCとは、その人に. しかし近年では、. 浸みわたった、ダイナミックではあるが持続する確信の感. ・慢性疾病(2 型糖尿病)の発生を予測する因子として SOC. 覚によって表現される世界(生活世界)規模の志向性のこ. が影響し、労働裁量が低い人の場合、SOC が低い群では. とである。それは、第1に、自分の内外で生じる環境刺激. 高い群より 3.7 倍発生率が高かった. は秩序づけられた、予測と説明が可能なものであるという. ・暴力や虐待を受けた経験のある女性の一般的症候群(不. 確信、第2に、その刺激がもたらす要求に対応するための. 定愁訴、痛みなど)は、SOC が高いか普通の場合は 2.44. 資源はいつでも得られるという確信、第3に、そうした要. 倍なのに対し、SOC が低い場合 11.13 倍の高い発生率に. 求は挑戦であり、心身を投入し、かかわるに値するという. なる. 確信から成る」とされる。. といった、特定のストレス要因との組み合わせなどにより、. まとめると、. SOC の高低が身体的健康の予測を可能とする研究もみられ. SOCとは、①把握可能感 ②処理可能感 ③有意味感の. るようになっている。. 3つの構成要素からなる人生に対する志向性 である。 人がストレッサーに直面したときに、その緊張処理を成功. ④ SOC と QOL(クオリティ・オブ・ライフ)との関連性. させるのがSOCの強さであるとされ、SOCの強い人ほ. について. ど、健康—健康破綻の連続体上において、健康の極側へ移動. ・ポジティブな精神的健康指標(Well-being や生活への満.

(2) 足感)と SOC 値との間には正の相関がある. など)がたくさん絡むため、SOC によって直接的に説明で. ・深刻な外傷を負った入院患者において、入院時・退院時・ 1 年後のそれぞれの同時点で調査した SOC と人生満足度 とは密接な関連があった. きないものと考察された。 ②. SOC が「高い」という評価の判定基準. SOC 得点率の日本人平均の目安はあるが、 「高い」と評価. ・高い社会的・経済的ステイタスは、SOC と正の相関がある. する明確な基準はわが国にはまだない。今回、このフィ. どの先行研究も、良好な QOL 要素と SOC の正の相関関係が. ールドにおいて得られた結果を利用し、どこからが高い. あり、SOC が自己と周囲をとりまく生活環境を強く反映する. と評価できるのか、客観的な基準を検討した。前述の1. ものであることが示唆される。. における GHQ 得点との相関性に着目し、ストレス対処能 力・健康保持能力の現われとして SOC が高い場合はメン. ⑤ SOC と健康行動との関連性について. タルヘルスを損ないにくいと合理的に考えられるので、. ・学生の SOC の高低と飲酒・喫煙は関係なかったが、身体. GHQ 尺度において確立されている正常・異常の区別ライン. 活動は強い SOC と関連があった. (7 点以上)を基準とした。方法としては、ROC 曲線を用. ・身体活動のスコアが高い人は、疾患や障害の有無で SOC. いてメンタルヘルス正常の感度が 80%前後になる SOC 得. の差を生じることはないが、身体活動のスコアが低い人. 点(61 点に決定)を探し、それより上の得点の人々を「SOC. は、疾患や障害を持つことで SOC が低くなる. の高い集団」と判定した。. SOC と健康行動そのものの関連に言及する実証研究はわず かで、一致した見解は得られていない。. ③. SOC が高い集団の特性 (1) SOC 得点に関連する変数の検定. 4 調査方法. T 検定及びカイ二乗検定において有意差がみられた変数. 佐賀県三瀬村に住む 40 歳∼69 歳までの全ての住民 (618 名). は、職業・身体障害・健康不安・テレビ視聴時間・運動. に対する記名式アンケート調査。9 月上旬に地区の自治会を. 習慣の有無・主観的健康感・生理的満足度・経済的満足. 通じて配布し、9月末までに九大宛に直接返送する回収方. 度・仕事満足度・総合的生活満足度・幸福感・ソーシャ. 法。. ルサポート人数、であった。. 回収率は 58.1%。電話での事後ヒアリングで欠損を補足で. 属性や健康意識・飲酒喫煙等の行動はあまり関連せず、. きないため無効になったものを除いた有効回答数は 337 通. 職業・生活習慣や満足感等の QOL が強く関連していた結. (54.5%) 。. 果となった。 SOC の高い人々に共通の意識や行動パターン. 【アンケート内容】. はないものとみられ、内的世界や精神的・身体的な充実. 「人生の志向性に関する質問票日本語版 13 項目」. 感が SOC を支えていると考えられた。. (SOC 測定). また、身体活動(運動習慣、テレビ視聴時間、座業時間). 「GHQ30 尺度」 (メンタルヘルス測定). に関する項目が、それらの頻度や時間数の違いによって. 「生活と健康に関するアンケート 24 項目」. SOC 得点の高低に有意差や傾向があることが確かめられ た。本研究は横断的な研究であるため、すでに形成され. 5 結果と考察. ているSOCが高い人は自然と活動的だという結果なのか、. ①. 活動的だから SOC が高まっていくのかはわからない。し. 客観的健康に対する SOC の予測力 健康生成論によれば、 SOC が高ければ健康を維持しやすい. かし、身体活動を活発にする意識的行動や余暇活動によ. はずである。今回の調査では、 「疾病の有無」については、. って、SOC が高まる余地がある可能性があり、今後は介入. SOC 得点との有意な関連はみられなかった。 しかし、 GHQ30. 研究等も行う価値があると考えられた。. によるメンタルヘルス得点とは有意な負の相関 r=−.509 (SOC 得点が高いほど GHQ 得点は低くなる=精神的健康. (2) SOC が高い集団に関係する項目の抽出. が保たれている(うつ傾向がない) )があった。. 前述(1)の関連があった変数をロジスティック回帰分. 《後記 図−1 参照》. 析にかけ、SOC が高い群に入る確率(オッズ比)を求め、. これは、①生活環境中のストレス等→②不調感・疲労感・. 有意に関連している変数を絞り込み、 「SOC が高い集団の. 不定愁訴(うつ傾向による内分泌系や免疫系の混乱)→. 持つ特性」を明らかにした。. ③明確な疾病の発生、というメカニズムを仮定すると、. 男性では「幸福感・運動習慣・職業・身体障害」 、女性で. ②から③に至るには他の要因(遺伝・リスクファクター. は「主観的健康感・経済的満足度」が特性として抽出さ.

(3) れた。 《後記 表−2 及び表−3 参照》. 6 今後の課題. SOC の高い女性は直接的な身体感覚や生活感覚が良好で. いずれにしても、今回は横断的な研究であり、何が SOC. あることが世界観を左右する傾向にあるかもしれない。. の要因或いは結果なのか、といった因果関係までは解明. 一方、SOC の高い男性は、社会関係における相対的な自己. できないので、今後は縦断的調査、あるいは質的ヒアリ. を意識する傾向があるかもしれないと考えられた。. ング調査などを進めていきたい。. 【図-1. SOC スコアと GHQ スコアの相関関係図】. 90 80 70 60 50 40 30. SOC. 20. 得 点 10 - 10. 0. G H Q 7 点. GHQ得点. 【表-2. 10. 20. 30. SOC の高い男性群の特性(全数 146 人中 SOC 高群 66 人)】. 変数. 回答. 回帰係数. 有意確率. オッズ比. 幸福感. 有り. 2.058. .000. 7.829. 2.481−24.701. 運動習慣. 有り. .743. .050. 2.102. 1.000−4.419. 働き方. 障害有無. 無収入. 信頼区間. .110. 給与所得. .781. .244. 2.184. .587−8.123. 非給与所得. 1.344. .051. 3.833. .994−14.790. −1.471. .074. .230. .046−1.152. 有り.

(4) 【表-3 変数. SOC の高い女性群の特性(全数 181 人中 SOC 高群 69 人) 】 回答. 回帰係数. 有意確率. オッズ比. 主観的健康. 健康である. 1.509. .000. 4.523. 2.074−9.863. 経済的満足. 満足している. .591. .094. 1.806. .904−3.609. 7 参考文献 1.. 平野(小原)裕子、熊谷秋三:健康支援学の新たな視 点−健康観の転換と健康生成論,現代のエスプリ,特 集:健康支援学 ―ヘルスプロモーションの最前線 ―, 2004(印刷中). 2.. 山崎喜比古、戸ヶ里泰典:日本人における Sense of Coherence(SOC)と生活ストレス (第一報)SOC −13スケールの標準化,第 12 回日本健康教育学会 報告,2003. 3.. 清水準一、住川陽子、山崎喜比古:一般住民における Sense of Coherence とセルフ・エフィカシーの関連要 因の検討,第 12 回日本健康教育学会 報告,2003. 4.. 山崎喜比古、高橋幸枝、他:健康保持要因 Sense of Coherence の研究(1)SOC日本語版スケールの開 発と検討,日公衛誌,44(10) ,243,1997. 5.. アーロン・アントノフスキー著:健康の謎を解く−ス トレス対処と健康保持のメカニズム−,94,有信堂, 東京,2001. 6.. Karlsson I, Berglin E, Larsson P: Sense of coherence: quality of life before and after coronary artery bypass surgery—a longitudinal study: Journal of Advanced Nursing 31 6: 1383-1392 2000. 7.. Sandan-Eriksson B: Coping with type 2 diabetes: the role of sense of coherence compered with active management. Journal of Advanced Nursing 31 6: 1393-1397 2000. 8.. Feldt T: Sense of Coherence, Structure, Stability and Health Promoting Role in Working Life. Jyvaskyla studies in education, psychology and social research 158 2000. 9.. 信頼区間. Agardh EE, Ahlbom A, Andersson T, et al: Work stress and low sense of coherence is associated with. type 2 diabetes in middle-aged Swedish women.. Diabetes Care 26 3: 719-724 2003 10. Krantz G, Ostergren P: The association between violence victimization and common symptoms in Swedish women.. Journal of Epidemiology and. Community Health 54 : 815-821 2000 11. Motzer S, Stewart B: Sense of coherence as a predictor of quality of life in persons with coronary heart disease surviving cardiac arrest. Research in Nursing and Health 19: 287-298 1996 12. Snekkevik H, Anke A, Stanghelle J, Meyer A: In sense of coherence stable after multiple trauma?. Clinical Rehabilitation 17 : 443-453 2003 13. Kuuppelomaki M, Utriainen P: A 3 year follow-up study of health care students’ sense of coherence and related smoking, drinking and physical exercise factors. International Journal of Nursing Studies 40 4 : 383-388 2003 14. 本江朝美、山田牧、平吹登代子、熊倉美穂子:わが国 における 60 歳以上の活動的高齢者の Sense of coherence の実態と関連要因の探索, 日本看護研究学 会雑誌 26 1: 123‐136 2003 15. 桝本妙子:健康生成論に基づく地域住民の健康実態, 立命館産業社会論集 36 4 :53-73 2001 他多数 以上.

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参照

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