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児童のメンタルヘルス変容に及ぼす組織キャンプ体験の影響 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)児童のメンタルヘルス変容に及ぼす組織キャンプ体験の影響 キーワード:組織キャンプ,児童,因果モデル,エンジョイメント. 所属 行動システム専攻健康科学コース 氏名 西田 順一. 1. 問題と目的. 子どもの非社会的行動を予防・抑制する意味において、. 少子化社会を迎えた現在のわが国では、子どもを取り巻. 組織キャンプをメンタルヘルスの改善・向上方略として捉. く環境は大きく変化している。激しい全国的な都市化や地. え、その有効性や変容メカニズムを探索することには積極. 域開発によって子どもの遊び場が消失し、友だちの絶対数. 的な意義が見出せるものと思われる。. が減少したことによって子どもの人間関係が極端に希薄化. 本研究の目的は、健常児童を対象として、組織キャンプ. し、さらにアミューズメント機器の利用による遊びの質の. 体験に伴うメンタルヘルスへの影響を検討し、さらにエン. 変化によって座位中心の引きこもりがちなライフスタイル. ジョイメントを媒介要因としてメンタルヘルス変容のメカ. へ急速にシフトしている。これらの環境の変化と対応し、. ニズムを解明することである。具体的には、1)児童のメン. 子どもたちのいじめや不登校、引きこもりなどといった非. タルヘルスをポジティブな側面とネガティブな側面から捉. 社会的行動が表出する傾向が多く示されている。学校や家. えることのできる尺度を作成し、信頼性・妥当性の確認を. 庭において、このような状況は憂慮すべき、深刻な問題と. 行うこと、2)組織キャンプ場面固有の体験評価尺度および. なっている。. エンジョイメント尺度を作成し、信頼性・妥当性の確認を. 非社会的行動を表出する要因は一様ではなく、極めて多. 行うこと、3)組織キャンプ体験によるメンタルヘルスへの. くの要因が複雑に絡み合っている。中でも、非社会的行動. 効果を明確にすること、さらに、4)組織キャンプ体験に伴. の共通的な要因としてメンタルヘルスの問題が挙げられ、. うメンタルヘルス変容の媒介要因としてのエンジョイメン. その悪化は種々の非社会的行動に結びつくことが数多くの. トの役割を検討することである。最後に、以上の検討を通. 研究で示唆されている。それゆえ、メンタルヘルスの悪化. して、児童のメンタルヘルス改善・向上のための組織キャ. を改善し、向上させるための方略を提示することが学校や. ンプ適用のあり方について言及する。. 家庭、地域において、強く望まれている。. 本研究のデザインを以下に示す。まず本研究では、第一. このような背景の中、本研究ではメンタルヘルス改善・. のステップとして、組織キャンプによるメンタルヘルスへ. 向上の方略として組織キャンプに着目している。組織キャ. の影響を検討する(図 1) 。第二のステップでは、組織キャ. ンプは、グループ場面における仲間との交流や屋外という. ンプ体験に伴うメンタルヘルスの変容を媒介する要因とし. ロケーションにおける自然の中での活動、そして達成的な. て、エンジョイメントに注目し、モデルを構築し(図 2) 、. 活動などを経験する体験学習の場として考えられている。. 構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling:. 組織キャンプではこれらの体験を重ねながら、他者と楽し. SEM)により、その妥当性を検証する。. みを共有するプロセスにおいて、結果として自身のメンタ ルヘルスへのポジティブな影響が期待できる。しかし、残 念ながら、組織キャンプのメンタルヘルスへの有効性に関.   <事後テスト>. <事前テスト> 体験群. メンタルヘルス. 対照群. メンタルヘルス. 組織キャンプ. メンタルヘルス. する研究は、これまでにいくつかみられるが、それほど多 くなく、未だ統一した結果は得られていない。ましてや、 メンタルヘルス変容のメカニズムについて実証的に検証し た研究は見当たらない。. メンタルヘルス.   図1 児童の組織キャンプ体験によるメンタルヘルス変容の検討.

(2) 3. 組織キャンプ場面で用いる心理的評価尺度の作成 <分析の枠組> (主体). 児童用組織キャンプ体験評価尺度の作成. (客体) 組織キャンプ. 組織キャンプ体験. メンタルヘルス変容. 本研究は、児童の組織キャンプでの体験内容を評価する 尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討することを目的 とした。組織キャンプへ参加した 425 名の児童を対象とし、. エンジョイメント. 分析を行なった結果、 「自然との触れあい体験」 「挑戦・達 成体験」 「他者協力体験」 「自己開示体験」 「自己注目体験」. 図2 児童の組織キャンプ場面におけるメンタルヘルス変容の因果モデル. の5因子20項目から構成される児童用組織キャンプ体験評 価尺度(Inventory of Organized Camp Experience for Children: IOCE-C)が作成された。Cronbach のα係数お. 2. 児童用メンタルヘルス診断検査の作成. よび折半法による信頼性係数の検討から、本尺度の信頼性. 本研究では、児童のメンタルヘルスをポジティブな側面 とネガティブな側面から同時に評価する尺度を作成し、そ の信頼性と妥当性を検討することを目的とした。研究 1 で は 1018 名を対象として分析を行なった結果、 「怒り感情」 「疲労」 「生活の満足感」 「目標・挑戦」 「引きこもり」 「自 信」の 6 因子 30 項目からなる児童用精神的健康パターン診 断検査(Mental Health Pattern for Children: MHPC)が 作成された(図 1-1) 。Cronbach のα係数と再検査法によ る信頼性の検討から、本尺度の信頼性が確認された。そし て、代表項目との関連の検討と項目の分類から本尺度の妥 当性が確認された。また、児童のメンタルヘルスの特徴が 性差と学年差の観点から示された。さらに「やる気次元」 得点と「ストレス反応次元」得点の 2 つの側面から、4 つ のメンタルヘルスパターンに分類された。研究 2 において は、168 名を対象として複数の尺度との関連を分析した結 果、基準関連妥当性が確認された。2 つの研究から MHPC は高い信頼性と妥当性を有していることが明らかにされた。 メンタルヘルスの関連要因の探索や介入の効果測定などへ の MHPC の利用は非常に意義深いものと思われる。 Low. やる気. はつらつ型. Dull. Vivid. Low. ふうふう型. Exhausted. Resisting. 児童用組織キャンプ・エンジョイメント尺度の作成 本研究は、児童の組織キャンプ場面でのエンジョイメン トを評価する尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討す ることを目的とした。259 名の児童を対象として、分析を 行なった結果、 「成就感」 「課題遂行の面白さ」の 2 因子・ 11 項目から構成される児童用組織キャンプ・エンジョイメ ント尺度(Children!s Organized Camp Enjoyment Scale: COCES)が作成された。Cronbach のα係数の検討および 検証的因子分析の検討から、高い信頼性、妥当性を有する ことが確認された。このことから、比較的少ない項目で児 童の組織キャンプ場面におけるエンジョイメントの測定可 能性を示した。. 4. 組織キャンプ体験がメンタルヘルスに及ぼす影響 本研究では、健常児童を対象に組織キャンプ体験による メンタルヘルスへの効果を検討した。そのところ、組織キ. 意な変化が認められた。体験後に「だらだら」 「ふうふう」 型に占める割合が減少し、最もメンタルヘルスの良好な状 態である「はつらつ」型に占める割合が顕著に増加した(図. ストレス反応 へとへと型. 場面との比較から、本尺度の妥当性が確かめられた。. ャンプの体験により、児童のメンタルヘルスパターンに有. High. だらだら型. が確認された。また、組織キャンプの日数および日常生活. 3-1) 。さらに、対照群に比べ、体験群は組織キャンプ後に、 やる気の「生活の満足感」が高まり、ストレス反応の「怒 り感情」 「疲労」が低下した(表 3-2) 。. High 図1-1 児童の4つの精神的健康パターン. これらのことから、組織キャンプ体験に伴い児童のメン タルヘルスがポジティブに変容することを検証した。.

(3) 「はつらつ型」 「ふうふう型」. 「だらだら型」 「へとへと型」. 55.6. 体験前. 29.6. 自然との 触れあい体験. e2. 挑戦・達成体験. e3. 他者協力体験. e4. 自己開示体験. 14.8. 7.4 3.7. 88.9. 体験後. e1. .69* .70* .77*. 組織キャンプ 体験. .65*. d2. .02n.s.. .74* e5. .71* 生活の満足感 変 容. e8. .68* 目標・挑戦 変 容. e9. 自己注目体験. 図3-1 組織キャンプ体験前後のメンタルへルスパターン. やる気 変容. .79*. .74*. Pre. Post. Pre. Post. 14.2 (3.45) 13.6 (2.95) 11.9 (2.79). 16.9 (3.46) 15.1 (2.94) 12.7 (3.08). 14.4 (4.05) 14.6 (3.80) 12.4 (2.43). 14.6 (4.52) 14.4 (3.81) 12.0 (2.64). 8.5 (2.75) 8.0  疲労 (2.28) 6.5  引きこもり (1.53) Note: (   )内はSD を示す. 6.7 (2.20) 6.6 (2.65) 5.8 (1.37). 7.8 (3.10) 9.0 (3.30) 6.4 (2.40). 7.2 (2.43) 8.9 (3.30) 6.2 (1.73).  目標・挑戦  自信 ストレス反応次元  怒り感情. 時間. 群. 交互作用. 12.34**. 1.13. 9.57**. 1.99. 0.02. 3.60. 0.32. 0.01. 2.21. 19.06**. 0.01. 4.57*. 6.33*. 4.59*. 4.91*. 6.30*. 0.08. 3.09. e10. .48*. 表3-2 体験群、対照群におけるMHPCの平均値、標準偏差および分散分析結果 体験群(n =27) 対照群(n =23) 分散分析 (F 値) やる気次元  生活の満足感. 自 信 変 容. .93*. 成就感. e6. 遂行課題の 面白さ. e7. エンジョイ メント. d1. .67*. GFI= .940 CFI= .957 RMSEA= .072. 図4-4 エンジョイメントによる媒介効果の因果分析(やる気次元) 矢印に付された数字は、標準化係数を示した(*p<.05 ). *p <.05 **p <.01. 表4-5 組織キャンプ体験からメンタルヘルス変容への効果. 5. 組織キャンプ体験に伴うメンタルヘルス変容の因果モ デル―エンジョイメントを媒介とした検討― 本研究の目的は、メンタルヘルス変容の要因として組織. やる気変容 *. 直接効果 .02 .52. 間接効果 .38 -.71. ストレス反応変容  *Note: ただし、本モデルには2つの誤差相関を設けている. 総合効果 .40 -.19. キャンプ場面での体験内容を取り上げ、また媒介要因とし てのエンジョイメントの有用性を検討することであった。 その結果、やる気が変容するプロセスでは、組織キャン プ体験からやる気変容への直接効果は確認されず、エンジ ョイメントを介した間接効果によって大部分が説明される ことが明らかとなった。つまり、組織キャンプの体験の程 度が高くなるにつれて、エンジョイメントの程度が高くな. 6. 本研究からの示唆 本研究では、児童の組織キャンプ体験に伴うメンタルヘ ルスへの影響を検討するとともに、その変容メカニズムを 体験内容およびエンジョイメントという視点から検討した。 本研究の知見から以下のことが指摘できる。. り、ひいてはやる気が高まるという効果が明らかとなった (図 4-4;表 4-5) 。さらに、ストレス反応が変容するプロ セスでは、組織キャンプ体験からストレス反応変容へのパ スは示されず、エンジョイメントを介した際の間接効果の みが確認された。つまり、組織キャンプ体験の程度が高く なるにつれて、エンジョイメントの程度が高められ、その ことを通じて、ストレス反応が間接的に影響されるという 可能性が示唆された。 これらのことから、組織キャンプ場面におけるメンタル ヘルス変容の介入枠組みが明確になった。. 1)組織キャンプにより「自然との触れあい体験」 「挑戦・ 達成体験」 「他者協力体験」 「自己開示体験」 「自己注目体 験」を多く積ませることが可能である 2)組織キャンプの体験は、児童のメンタルヘルスを改善・ 向上に導く可能性がある 3)組織キャンプにて児童のメンタルヘルスを改善・向上さ せるには、エンジョイメントが重要な役割を果たす.

(4) 橋本公雄・徳永幹雄 1999 メンタルヘルスパターン診断. 7.公表論文 西田順一・橋本公雄・柳 敏晴 2002 児童用組織キャン プ体験評価尺度の作成および信頼性・妥当性の検討. 野外教育研究, 6(1), 49-61.. 検査の作成に関する研究(1)―MHP 尺度の信頼性と 妥当性― 健康科学, 21, 53-62. 飯田 稔・井村 仁・影山義光 1988 冒険キャンプ参加. 西田順一・橋本公雄・徳永幹雄・柳 敏晴 2003 組織キ ャンプ体験が児童のメンタルヘルスに及ぼす効果― とくに自己決定感を中心として―.スポーツ心理学研 究, 30(1), 20-32.. 児童の不安と自己概念の変容 筑波大学体育科学系紀 要, 11, 79-86. 飯田 稔・井村 仁・Betty VAV DER SMISSEN 1986 冒険キャンプにおける小中学生の自己概念と不安の変. 西田順一・橋本公雄・徳永幹雄 2003 児童用精神的健康 パターン診断検査の作成とその妥当性の検討.健康科 学, 25, 55-65.. 容 筑波大学体育科学系紀要, 9, 91-101. Motl, R.W., Berger, B.G., & Leuschen, P.S. 2000 The role of enjoyment in the exercise-mood relationship.. 西田順一・橋本公雄・柳 敏晴・馬場亜紗子 2005 組織 キャンプ体験に伴うメンタルヘルス変容の因果モデ ル―エンジョイメントを媒介とした検討―.教育心理 学研究, 53, 196-208.. International Journal of Sport Psychology, 31, 347-363. 西田順一・橋本公雄・徳永幹雄 2000 児童の組織キャン プ体験がストレス反応に及ぼす影響―認知的評価との 関連から― 健康科学, 22, 151-157. Ulrich, R.S. 1984 View through a window may influence. 8.主要引用文献 Baron,. R.M.. &. Kenny,. D.A.. 1986. The. recovery from surgery. Science, 244, 420-421.. moderator-mediator variable distinction in social. Ulrich, R.S., Simons, R.F., Losito, B.D., Fiorito, E., Miles,. psychology research: Conceptual, strategic, and. M.A., & Zelson, M. 1991 Stress recovery during. statistical considerations. Journal of Personality and. exposure to natural and urban environments.. Social Psychology, 51, 1173-1182.. Journal of Environmental Psychology, 11, 201-230.. Briery, B.G., & Rabian, B. 1999 Psychosocial changes. Yancey, D., Greger, H.A., & Coburn, P. 1994 Effects of an. associated with participation in a pediatric summer. adult cancer camp on hope, perceived social support,. camp. Journal of Pediatric Psychology, 24(2),. coping, and mood states. Oncology Nursing Forum,. 183-190.. 21(4), 727-733..

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参照

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