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基礎の断熱工法の違いが居住性能および床下環境に及ぼす影響 [ PDF

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Academic year: 2021

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基礎の断熱工法の違いが居住性能および床下環境に及ぼす影響

岩﨑 祐加 1. 研究背景と目的 日本の戸建住宅における床下部分の断熱方法は,1 階床面で断熱し床下を換気する「床断熱工法」と基礎 外周の立ち上がり部で断熱する「基礎断熱工法」があ る。住宅が断熱されていなかった時代の建物と比べ て,床面に断熱材が入れられることにより,居住空間 からの貫流熱が減少し,床下空間の温度は低下する。 相対的に湿度が上昇するため,床断熱工法の場合,床 下の高湿化防止策として床下換気は必要不可欠とされ ている。基礎断熱は基礎で断熱されているため床下は 居住空間同様暖かく,屋内とみなされる。基礎コンク リートや地盤の蓄熱を利用した省エネルギー効果が期 待され,近年では温暖地でも普及してきている1) 本研究では,日本の住宅の大部分を占めている床断 熱工法と近年増加傾向にある基礎断熱工法の居住者の 温熱感や省エネルギー性,床下環境を比較して,基礎 断熱の優位性を明らかにすることを目的に,数値シミ ュレーションによるパラメータ感度解析を行う。 さらに,床断熱住宅の長年の課題である床下高湿化 の問題について,過去の研究では,もっとも一般的な 床下自然換気による床下環境の解析に,実測や CFD を用いており限定的な結果しか得られていなかった が,本研究ではネットワークエアーフローモデルを組 み込んだプログラムによる自然換気量の計算で,複数 の地域・パターンにおける床下高湿化の危険性を体系 的に評価する。 2. 計算内容および条件 計算には,熱・水分空気連成解析ソフト THERB for HAM2)を用いた。基礎コンクリートの蓄熱や,地盤面 からの放湿による床下環境への影響を考慮するため, 地盤温度は,床表面からの吸熱応答に加えて,(1)式 による各地域の年平均外気温度に応じた変動を与え, 地盤上面を飽和状態に設定した。 𝑇𝑔= 1.099 × 𝑇𝑜𝑚+ 8.439 × sin (2𝜋 ×𝑖𝑑𝑒 365− 2.262) (1) ただし,𝑇𝑔: 地盤温度,𝑇𝑜𝑚:年平均外気温度, 𝑖𝑑𝑒:1 月 1 日を起点とした日数である。 さらに,人体熱モデル COM3)を連成し,床からの接 触熱伝導を考慮することで,各工法が人体生理量に及 ぼす影響について検討する。人体は 1 階 LDK の南側 で,足を投げ出して座っている状態を想定している。 2.1. 各断熱工法の計算モデル 図 1 に計算対象建物の基礎伏図および 1 階平面図を 示す。計算モデルは,床下および 1 階空間を対象にし (a) 基礎伏図 (b) 1 階平面図 人体モデルの位置 図 1 計算対象建物の平面図 XPS断熱材 60mm XPS断熱材 20mm XPS断熱材 60mm 換気 図 2 計算モデルのイメージ THERB f or HAM 1年間(予備計算10ヶ月) 飯館(福島)、深浦(青森)、吉原(静岡)、 倉吉(鳥取)、福岡、鹿児島 拡張アメダス気象データ(標準年) 夏期 6~9月 温度27℃,相対湿度60% 冬期 12~3月 温度20℃,相対湿度40% 姿勢 座位 代謝量 1 met (58.2 W/m2 着衣量 0.7 clo 人体 計算地域 期間 シミュレーショ ンソフト 気象データ 設定温湿度 (LDK) 表 1 計算条件 断熱材 床下換気 標準 60mm 断熱1 30mm 断熱2 120mm 換気1 0回/h 換気2 5回/h 換気3 基礎パッキンによる自然換気 60mm 10回/h 床下換気 標準 0回/h 換気1 外気→LDK→床下→排気 断熱1 0mm 断熱2 床40mm 断熱3 底20mm 断熱4 底40mm 0回/h 断熱材 基礎外周 60mm 床20mm 表 2 床断熱における検討ケース 表 3 基礎断熱における検討ケース

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36-2 ており,床下の断熱方法以外は同様の躯体構成を使用 している。図 2 に各断熱工法の計算モデルイメージを 示す。床断熱は床下に押出法ポリスチレンフォーム (以下,XPS)断熱材を 60mm,基礎断熱は基礎立ち 上がり部の内側および床下にそれぞれ 60mm,20mm の XPS 断熱材を想定している。 2.2. 検討ケース 表 1 に計算条件,表 2,3 に各断熱工法における検 討ケースを示す。床断熱では断熱厚さおよび床下換気 量,基礎断熱では換気方式の違いと断熱箇所および厚 さが床下温湿度性状に与える影響について検討する。 また,外界気象条件による影響を検討するため,表 1 に示す 6 地域で計算した。 3. 床断熱における解析結果 3.1. 断熱厚さの検討 図 3 に深浦における床下温湿度の出現率を示す。断 熱厚さが増すほど床下温度の低温域の出現割合が増加 し,それに伴って相対湿度の高湿域が増加している。 一方,絶対湿度の差はみられず,床下の相対湿度は温 度によって決定されていることがわかる。床下相対湿 度が 90%を上回る時間割合について,断熱厚さによる 差はあまり見られず,いずれのケースも年間 20%弱の 時間帯で高湿になっている。 3.2. 換気量の検討 図 4 に深浦における床下温湿度の出現率を示す。換 気回数が増すごとに,床下温度の低温域の出現割合が 増加しているが,外気に比べ温度の分布域は小さく 0℃以下の温度が出現することはない。相対湿度の出 現率に対する 5 回換気と 10 回換気の間に大きな差は みられない。一方,0 回換気では床下相対湿度が年間 を通して 70~95%の間に収まっており,換気時に出現 した 95%以上になることはなかった。ただし,80%を 上回る時間割合が年間で 40%を上ることから,大部分 の時間で高湿な状態である。絶対湿度の出現率より, 換気をすることで外気の高湿な空気が流入することが 床下空間の高湿化の原因であると言える。 図 5 にネットワークエアーフローモデルを用いた床 下自然換気回数の月平均値を示す。計算結果から,深 浦と倉吉では冬期に換気量が多く,福岡は年間を通し て同程度の換気量があるなど地域による特色があるこ とがわかる。 4. 基礎断熱の解析結果 図 6,7 に深浦における床下温湿度の出現率と空調 0 20 40 60 80 100 外気 30mm 60mm 120mm LDK -10~ ~-5 ~0 ~5 ~10 ~15 ~20 ~25 ~30 ~35 ~40℃ 頻 度 [%] 0 20 40 60 80 100 外気 30mm 60mm 120mm LDK 0~ ~20 ~30 ~40 ~50 ~60 ~70 ~80 ~90 ~95 ~100% 頻 度 [%] 0 20 40 60 80 100 外気 30mm 60mm 120mm LDK 0~ ~2.5 ~5 ~7.5 ~10 ~12.5 ~15 ~17.5 ~20 ~22.5 ~25g/kg' 頻 度 [%] 図 3 床下温湿度の出現率(上から温度,相対湿度,絶対湿度) 0 20 40 60 80 100 外気 0th 5th 10th LDK -10~ ~-5 ~0 ~5 ~10 ~15 ~20 ~25 ~30 ~35 ~40℃ 頻 度 [%] 0 20 40 60 80 100 外気 0th 5th 10th LDK 0~ ~20 ~30 ~40 ~50 ~60 ~70 ~80 ~90 ~95 ~100% 頻 度 [%] 0 20 40 60 80 100 外気 0th 5th 10th LDK 0~ ~2.5 ~5 ~7.5 ~10 ~12.5 ~15 ~17.5 ~20 ~22.5 ~25g/kg' 頻 度 [%] 図 4 床下温湿度の出現率(上から温度,相対湿度,絶対湿度) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 深浦 6.1 7.1 6.5 5.8 6.3 3.9 4.2 5.1 3.9 4.5 5.9 6.7 倉吉 9.1 8.7 9.3 7.9 7.0 6.2 6.9 7.0 6.5 7.0 7.8 8.7 福岡 4.3 4.6 4.9 4.6 4.1 4.3 4.8 4.9 5.0 4.4 4.2 4.5 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 換 気 回 数 [回 /h ] 図 5 地域ごとの月平均自然換気量

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36-3 負荷を示す。基礎断熱では,同じ厚さの断熱材を用い ても,断熱箇所の違いにより床下環境への影響が異な ることがわかる。床下温度は基礎立ち上がり部の断熱 をすることで,床断熱のときに見られた 5℃以下の温 度の出現がなくなった。さらに基礎底面の断熱を追加 することで,10℃以下の出現率が下がり,床下温度は 居室温度に近づく。一方,床面に断熱材を追加すると 10℃以下の出現率が増え,相対湿度も 80~90%の出現 割合が増加した。いずれの断熱仕様であっても,基礎 断熱の場合には,外気が高湿であっても,床下空間の 温かさと気密性により,床下相対湿度は常に 90%未満 になった。断熱材を追加することで,いずれの場合も 空調負荷は夏期に増加するが,年間では減少する。ま た,基礎底面に断熱するよりも床面で断熱するが断熱 効果が高いと言える。 5. 断熱工法の比較 5.1. 床下温湿度性状 図 8,9 に深浦,倉吉,福岡における床下温湿度の出 現率を示す。夏期は,外気が高湿になるため,床断熱 では深浦,倉吉で 95%以上になる期間があり,福岡で も 90%を超える場合がある。基礎断熱では深浦では 80%,倉吉,福岡では 70%未満に収まっている。冬期 は,外気の湿度が下がるためいずれの地域の床断熱も 90%未満になった。一方,基礎断熱は温度が下がった ことにより相対湿度の上昇がみられるが,深浦で 90%,倉吉,福岡で 80%未満に収まっている。 5.2. 温熱感比較 図 10,11 に各地域の床表面温度の期間平均値と出 現率を示す。いずれの場合も,床断熱の方が表面温度 は高くなっている。また,吉原が倉吉よりも温度が高 く出ているのは,日射量の影響である。 図 11,12 に各地域の COMSET*の期間平均値と出 現率を示す。いずれの場合も基礎断熱が上回ってお り,中間期においては吉原・福岡・鹿児島で,冬期に 0 20 40 60 80 100 外気 0mm 床20 床40 底20 底40 LDK -10~ ~-5 ~0 ~5 ~10 ~15 ~20 ~25 ~30 ~35 ~40℃ 頻 度 [%] 0 20 40 60 80 100 外気 0mm 床20 床40 底20 底40 LDK 0~ ~20 ~30 ~40 ~50 ~60 ~70 ~80 ~90 ~95 ~100% 頻 度 [%] 0 20 40 60 80 100 外気 0mm 床20 床40 底20 底40 LDK 0~ ~2.5 ~5 ~7.5 ~10 ~12.5 ~15 ~17.5 ~20 ~22.5 ~25g/kg' 頻 度 [%] 図 6 床下温湿度の出現率(上から温度,相対湿度,絶対湿度) 0mm 床20 床40 底20 底40 年間 9,133 8,838 8,676 8,876 8,748 冬期 8,961 8,621 8,442 8,689 8,549 夏期 171 218 233 188 198 171 218 233 188 198 8,961 8,621 8,442 8,689 8,549 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10,000 夏期 冬期 顕 熱 負 荷 [k J /pe ri od ] 図 7 断熱箇所および厚さによる顕熱負荷の比較 0 20 40 60 80 100 基礎 福岡 床 外気 基礎 倉吉 床 外気 基礎 深浦 床 外気 -10~ ~-5 ~0 ~5 ~10 ~15 ~20 ~25 ~30 ~35 ~40℃ 頻 度 [%] 頻 度 [%] 0 20 40 60 80 100 基礎 福岡 床 外気 基礎 倉吉 床 外気 基礎 深浦 床 外気 0~ ~20 ~30 ~40 ~50 ~60 ~70 ~80 ~90 ~95 ~100% 頻 度 [%] 頻 度 [%] 0 20 40 60 80 100 基礎 福岡 床 外気 基礎 倉吉 床 外気 基礎 深浦 床 外気 -10~ ~-5 ~0 ~5 ~10 ~15 ~20 ~25 ~30 ~35 ~40℃ 頻 度 [%] 頻 度 [%] 頻 度 [%] 0 20 40 60 80 100 基礎 福岡 床 外気 基礎 倉吉 床 外気 基礎 深浦 床 外気 0~ ~20 ~30 ~40 ~50 ~60 ~70 ~80 ~90 ~95 ~100% 頻 度 [%] 頻 度 [%] 頻 度 [%] 図 8 夏期における床下温湿度の出現率(上:温度,下:相対湿度) 図 9 冬期における床下温湿度の出現率(上:温度,下:相対湿度)

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36-4 おいては鹿児島で,SET*と温熱感覚の指標に照らし 合わせた場合の「快適」域を上回る結果となった。 図 14 に各地域の顕熱負荷の比較を示す。いずれの 地域も,両断熱工法による負荷の差はわずかである。 6. 総括 本研究では,数値シミュレーションにより,床断熱 工法と基礎断熱工法の床下環境および居住者の温熱感 を明らかにした。さらに,ネットワークエアーフロー モデルにより床下自然換気量を算出した。 得られた知見を以下に示す。 a. 床断熱の場合,床下高湿化の原因は高湿外気の流 入と温度低下の 2 つであり,床下空間が十分に乾 燥した後は,換気をしないことで高湿化を防ぐこ とができる。 b. 床断熱材を厚くした場合,年間での空調負荷は減 少する。また,床下空間が低温になるため高湿に なる時間割合が増す。 c. 床下自然換気では,深浦・倉吉で冬期に換気量が 多く福岡は1年を通して,同程度の換気量がある ことを確認した。 d. 基礎断熱の場合,立ち上がり部以外の断熱箇所の 違いにより,断熱厚さが同じでも床下環境が異な る。床断熱を併用した場合,床下空間温度が下が るため,相対湿度が上昇するが,寒冷地の深浦に おいても 90%以下に収まっており,高湿化の可 能性は低いと言える。 e. 床断熱と基礎断熱を比較すると,空調負荷や床表 面温度は床断熱がわずかに優位であるが,居住者 の温熱感は基礎断熱が安定している。 【参考文献】 1) フラット 35 住宅仕様実態調査結果報告(在来木造工法の 戸建住宅), http://www.jhf.go.jp/about/research/tech_flat35_siyou.html 2) 尾崎 明仁,熱・水分・空気連成を考慮した建築の温湿度・熱

負荷計算,Technical Papers of Annual Meeting of IBPSA-Japan, pp.19-26 ,2005 3) 田辺ら,温熱環境評価のための人体熱数値計算モデル COM の開発,日本建築学会環境系論文集,第 599 号, pp.31-38,2006 年 1 月 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0 22.0 24.0 26.0 28.0 30.0 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 飯館 深浦 吉原 倉吉 福岡 鹿児島 冬期 夏期 中間期 床 表 面 温 度 [℃ ] 0 20 40 60 80 100 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 飯館 深浦 吉原 倉吉 福岡 鹿児島 10~ ~12 ~14 ~16 ~18 ~20 ~22 ~24 ~26 ~28 ~30 頻 度 [%] 図 10 床表面温度の期間平均値 図 11 床表面温度の出現率 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0 22.0 24.0 26.0 28.0 30.0 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 飯館 深浦 吉原 倉吉 福岡 鹿児島 冬期 夏期 中間期 COMS E T * [℃ ] 0 20 40 60 80 100 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 飯館 深浦 吉原 倉吉 福岡 鹿児島 10~ ~12 ~14 ~16 ~18 ~20 ~22 ~24 ~26 ~28 ~30 頻 度 [%] 61 72 63 73 255 263 221 233 385 394 449 450 2161 21052395 2340 1155 1128 1617 1580 1198 1176 913 899 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 基礎 床 飯館 深浦 吉原 倉吉 福岡 鹿児島 夏期 冬期 顕 熱 負 荷 [k W h /p e ri o d ] 図 12 COMSET*の期間平均値 図 13 COMSET*の出現率 図 14 顕熱負荷の比較

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