台北地下鉄 信義松山線車両
※上
うえ田
だ徹
とおる※※小
お倉
ぐら善
よし和
かず※※※森
もり内
うち正
まさ記
き写真 1 外観 要旨 台北地下鉄では、新たな路線となる信義線及び松山線の建設を進めており、川崎重工業株式会社(川崎重工)で は、これら線区に投入する新形車両(信義松山線車両)を 2012 年から納入を開始し、2013 年 11 月から信義線で 営業運転が開始された。信義線の沿線である信義地区は、台北市の中でも新しく開発された商業地区であり、高 さ 509.2 m 地上 101 階建てのランドマークタワー台北 101 を始めとして、デパート、映画館、公園などが整備さ れ、多くの観光客でにぎわっている地区である。また、2014 年末に松山線が開業されれば、台北市内の松山空 港へのアクセスなど更に利便性が向上する。本車両は、台北地下鉄の 5 次車となる車両で、1 次車及び 4 次車な どの既存車両の設計を踏襲しつつ、先頭形状、室内デザインを刷新した新形車両となっている。また、乗客の利 便性及び快適性を考慮した設備も新たに搭載している。以下に、その概要を紹介する。 (編集部注:台北地下鉄 4 次車は、本誌 232 号 2006 年 9 月台北市捷運局 CK371 車両参照) 1 はじめに 台北地下鉄(臺たいぺいしょううん北捷運)は、台北市政府捷運工程局が建設 並びに信号設備、車両設備及び変電所設備の調達を行い、 運営は、台北捷運公司が行っている。台北地下鉄は、1996 年の淡水線開業以来、路線網の拡大を急ピッチで進め、新 店線、中和線、南港線、板橋線、土城線、新荘線、蘆洲線 などの多くの地下鉄路線を営業している。今回、新路線と なる信義線及び松山線は、台北市を東西に走る板南線(南 港線、板橋線及び土城線の総称)に次ぐ、第 2、第 3 の東 西方向の路線となる。 [編集部注:捷運とは、中華民国(台湾)の主要都市とそ の近郊を走行する地下鉄(高運量)、新交通システム(中運 量)による大量高速鉄道システムを表す。] 川崎重工は、1996 年に開業した淡水線向け車両(1 次車: 132 両)、2011 年に開業した新荘線及び蘆州線向け車両(4 川崎重工業㈱ 車両カンパニー 技術本部 ※海外第二設計部、※※台車設計部、※※※システム設計部 写真 2 室内
会社・車両形式 台北地下鉄 使用線区 信義線、松山線及び既存線 軌間(㎜) 1 435 基本編成 4M2T 使用線区の最急勾配 30 ‰ 用途 地下鉄車両 電気方式 直流 750V、第三軌条方式 車体製作会社 川崎重工業㈱ 製造初年 2010 年 台車製作会社 川崎重工業㈱ 1次製作両数 144 主回路装置製作会社 三菱電機㈱ 車両技術の掲載号 248 基本編成及び 主な機器配置 凡例 ●;駆動軸 ○;付随軸 VVVF;主制御装置 SIV;補助電源装置 CP;空気圧縮機 B/C;蓄電池充電器 BT;蓄電池 ▼;集電装置 ◎;車椅子スペース 連結器 ▽;密着 □;自動 +;半永久 *;電気連結器 個別の車種形式 1500 2500 3500 車種記号(略号) DM1 T M2 空車質量(t) 40.1 34.8 39.2 定員(人) 370 370 370 うち座席定員(人) 23 66 66 特記事項 車両性能 最高運転速度(㎞/h) 営業 80、設計 90 加速度(m/s2) 1.0(3.6 ㎞/h/s) 減速度 (m/s2) 常用 1.0(3.66 ㎞/h/s) 非常 1.3(4.76 ㎞/h/s) ユニット 当りの定格 ユニット構成 DM1 + T + M2 出力(kW) 1 400 速度(㎞/h) - 引張力(kN) ブレーキ制御方式 回生ブレーキ併用電気指令 式空気ブレーキ装置(応荷 重・遅れ込め制御、2M1T ユニット制御) 制御回路電圧(V) 110 抑速制御 ATO による 運転保安装置 ATC / ATP 列車無線 TETRA 方式デジタル無線 非常時運転条件 空車編成で満車編成を救援 可能 その他 電気駆動系主要設備 集電 装置 形式 / 質量(㎏) D126488 / 36.2 方式 下面接触式第三軌条 制御 装置 形式 / 質量(㎏) -/ 910 制御方式 VVVF インバーター制御方式 仕様 台車制御 主電動機 形式 / 質量(㎏) MB-5113-A2 / 585 方式 三相かご形誘導電動機 1 時間定格(kW) 175 回転数(min-1) 特記事項 Class 200 絶縁、開放形 主回路標 準限流値 力行(A) ブレーキ(A) 電気ブレーキの方式 ブレーキ 抵抗器 形式 / 質量(㎏) -/ 310 補助電源設備 補助電 源装置 形式 / 質量(㎏) -/ 1 087 方式 IGBT インバータ 出力 140 kVA 三相 AC 380 V 60 Hz 蓄電池 種類 / 質量(㎏) ニッケル・カドミウム電池 容量(Ah) 130(5 時間率) 主な用途 制御用、非常時の照明 / 換気用 表 1 台北地下鉄 信義松山線車両 車両諸元
車体の構造・主要寸法 構体材料 / 構造 ステンレス鋼(SUS301L) / スポット溶接構造 車両の前面形状 非常用貫通扉付き 運転室 全室 長さ(㎜) 先頭車 23 205 中間車 22 740 連結面間 距離(㎜) 先頭車 23 710 中間車 23 500 心皿間距離(㎜) 16 500 車体幅(㎜) 3 180 高さ(㎜) 屋根高さ 3 585 屋根取付品上面 - 床面高さ(㎜) 1 150 車体特性・構造及び主要設備 相当曲げ剛性(MNm2) 相当ねじり剛性(MNm2/rad) 曲げ固有振動数(Hz) ねじり固有振動数(Hz) 内装材 FRP 側窓構造 グレー色ラミネートガラス 妻引戸 - 側扉 構造 両引戸 1 500 ㎜ 片側数 4 戸閉め装置 形式 - 方式 リニア方式 腰掛方式 ロングシート及びクロスシート 車体連結 装置 先頭車 密着連結器 中間車 半永久連結器、密着連結器 空調換気 システム 冷房方式 セパレート形空調装置 暖房方式 なし 換気方式 連続換気(空調装置組込み) 送風方式 天井ダクト:ラインフロー吹出し 室内灯 照明方式 直接照明 灯具方式 蛍光灯 移動制約者設備 車椅子スペース 便所 主要設備 - 汚物処理 - その他の主要設備 主幹制御器 形式/質量(㎏) -/21 方式 T 形ワンハンドル 速度計装置 車両情報制 御システム モニタ装置 TSIS モニタ表示器 TFT カラー液晶パネル 非常通報装置 インターコム 行先表示器 前面 カラー LED 側面 カラー LED 車内案内表示 17 インチ液晶ディスプレイ 放送 車内向け スピーカ 8 台 車外向け インタコム 4 台 車両間連結 電気系 ジャンパ線、電気連結器 (ユニット間) 空気管系 空気ホース、密着連結器 その他の主要設備 空調装置 形式/質量(㎏) RCU42NA3 / 802 方式 床下・天井セパレート形 容量(kW) 83 暖房装置 容量(kW) - 形式/質量(㎏) - 標識灯 前部標識灯 シールドビーム 後部標識灯 赤色 LED その他 オレンジ色 LED(識別灯)、 赤色 LED(点滅灯) その他 空気ブレーキ設備 電動空気圧 縮機 形式/質量(㎏) -/320 圧縮機容量 2 092 ㍑ /min 圧縮機方式 スクリュー式 空気タンク 元空気タンク 300 ㍑ 供給空気タンク 100 ㍑ ブレーキ制 御装置 形式/質量(㎏) - / 87 台 車 形式 動台車 KW-186 付随台車 KW-187 車体支持装置 ボルスタレス方式 けん引装置 Z リンク 枕ばね方式 空気ばね 上下枕ばね定数 / 台車片側(N/㎜) 動台車 290(空車時) 付随台車 280(空車時) 軸箱支持方式 ウイング式 軸ばね方式 円すいゴム式 上下軸ばね 定数 / 軸箱 (空車時) (N/㎜) コイルばね 動台車 - 付随台車 - ゴムばね 動台車 1 300(空車時) 付随台車 1 230(空車時) 総合 動台車 1 300(空車時) 付随台車 1 230(空車時) 軸距(㎜) 2 300 台車最大長さ(㎜) 4 267 車輪径(㎜) 850 基礎 ブレーキ 動台車 車輪側ディスクブレーキユニット 付随台車 車輪側ディスクブレーキユニット ブレーキ倍率 2.5 制輪子 動台車 合成樹脂製ブレーキパッド 付随台車 合成樹脂製ブレーキパッド ブレーキシリ ンダ×個数 動台車 4 付随台車 4 駆動方式 平行カルダン 歯数比(減速比) 6.31(101 / 16) 継手 WN 式(歯車形たわみ継手) 軸受 密封円すいころ軸受 質量(㎏) 動台車 7 830(先頭台車) 付随台車 5 750 記事
図
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2-1 形式図 1500
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2-2 形式図 2500
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2-3 形式図 3500
次車:321 両)に続き、信義線及び松山線向け車両(信義松 山線車両)を台北地下鉄の 5次車として、144両を受注し、 納入を開始した。 2 編成及び車両性能と主な特徴 信義松山線車両は、1 次車及び 4 次車(既存車両)と同様 に DM1 車 -T 車 -M2 車の 3 両 1 ユニットを 2 ユニット連結 した 6 両 1 編成の構成である(DM1-T-M2=M2-T-DM1)。 最高運転速度は、80 ㎞/h、加速度は、1.0 m/s2、減速度は 常用 1.0 m/s2、非常 1.3 m/s2である。編成の乗客定員数 は、最大 2 220 人(370 人 / 両)としている。 3 デザイン 3.1 エクステリアデザイン 先頭形状は、流線形にするため、エンドボンネット及び ウィンドシールド(前面窓ガラス)に 3 次元曲面を採用して いる。また、既存車両は、先頭部中央に配置した非常扉部 に窓を設けないデザインであったが、5 次車では、窓の代 わりに飾りガラスを配置することで、前面の質感を向上さ せるデザインとなっている。ステンレス製の外板には、信 義線と直通運転を行う既存の淡水線車両と同様に、ブルー マークを挿入した新しいデザインとしている。 3.2 インテリアデザイン インテリアデザインのコンセプトは、“曲面”である。出 入口の車体中心部に設けたスタンションポールに、弓形と 円形とを組み合わせた形状を採用したほか、側出入口両脇 の手すり及び腰掛の袖仕切り部のスタンションポールにつ いても、弓形及び曲面を感じさせるデザインを採用してい る。また、貫通路部のほろの室内パネルについても、可か撓と う 性をもたせた曲面パネルを採用することで、室内と統一し たイメージをもたせている。色彩は、既存車両と同様に、 青及び白を基調としたクールなイメージを保ち、清涼感を 与えるように配慮している。 4 車体構造 4.1 主要寸法 先頭車(DM1)の車体長は、流線形を考慮したデザイン とするため、既存車よりも車体長を 210 ㎜伸した 23 710 ㎜ とし、中間車(T、M2)の車長は、既存車両と同じ 23 500 ㎜としている。また、既存線区も走行するため、車体幅 3 180 ㎜、車体高さ 3 585 ㎜、床面高さ 1 150 ㎜と既存車両 と同じである。なお、天井高さは、床上面から、車両中央 図 3 車体断面
4.2 構体 構体は、SUS301L(JIS G 4304)を主材料として構成した ステンレス車体で、スポット溶接構造である。外板の仕上 げは、既存車両と同様の BG 仕上げとしている。また、端 台枠及び枕ばりは、耐候性高張力鋼(LAHT 鋼)を使用し た溶接構造である。既存車両と同様に、車両端部には、衝 突時に車体が浮き上がって、隣の車両に乗り上がることを 防止するアンチクライマを設けたほか、衝突エネルギー吸 収のために、メカニカルヒューズを台枠に取り付けるとと もに、クラッシャブルゾーンを設けている。構体が吸収で きる衝突エネルギーは、満車状態で速度 25 ㎞/h の衝突に 耐えられるものとなっている。 5 客室 5.1 客室構造 室内パネルは、FRP を採用している。天井構造は、空 調ダクトと天井パネルとを一体化した FRP 構造としてい る。室内照明は、省エネルギータイプの T5 蛍光灯を採用 している。室内の照度は、床面上 1 m の高さで 400 lx を 確保しており、既存車両と比べて明るい車内となってい る。[編集部注:T5 蛍光灯とは、インバータ方式で点灯す る直径が 15.9 ㎜(5/8 inch)と細い管径の蛍光灯で、欧州 諸国などで天井照明に用いられることがある。]
床構造は、ASTM E119(ASTM International)の耐火要 求を満足する耐火性能をもつ。床構造は、床敷物、プライ ウッド、セラミックファイバーの断熱材及びステンレス板 のサブフロアで構成されており、耐火要求と走行時の床下 からの車外騒音の防音効果とを考慮した構造としている。 5.2 室内設備 座席は、DM1 車は、ロングシート配置、T 車及び M2 車は、ロングシート及びクロスシートを混合した配置とな っている。腰掛は、FRP 製で、一人当たりの有効幅は 460 ㎜である。側引戸の脇にある腰掛の端部には、強化ガ ラス製の袖仕切りを配置している。立席者のため、車両の レール方向に水平手すり及びつり手を配置している。ま た、出入台には、三つまたのスタンションポールを設置し て、より多くの立席者がスタンションポールをつかむこと ができるようにしている。各出入台の上部には、LED 方 式の案内表示器及びドアの開閉音を鳴らすドアチャイムが 配置されている。メンテナンス時のサービス用として、 AC 110 V 電源を車両端部の機器ロッカー下部に設けた。 室内に使用している FRP パネル、腰掛、つり手などの 非金属材料は、火災対策として NFPA 130(National Fire Protection Association)、BS 6853(British Standards Institution)に準拠した難燃性材料を使用している。 5.3 窓及び扉 側引戸は、既存車両と同様に、外つり方式の両引戸で、 各車の片側当たり、4 箇所に設置している。ドア開口幅 は、1 500 ㎜を確保している。また、DM1 車には、運転室 側開戸を設けたほか、運転室と客室との間に仕切扉を設置 している。各車の側窓は、2 層構造のラミネートガラスを 採用している。 5.4 バリアフリー・ユニバーサルデザイン対応設備 DM1 車の運転室の背面には、車椅子スペースを設けて おり、同スペースには、付き添いの乗客が座れるように折 りたたみ式の腰掛を設けている。運転室の機器ロッカをメ ンテナンスする際には、この腰掛を折りたたむことで、作 業スペースを確保できる。また、優先座席を DM1 車に 8 席、T 車及び M2 車に 12 席を設け、側出入口の近くに配 置している。 6 運転室設備 運転室機器配置は、基本的に既存車両と同様に構成して いるが、運転士の利便性を考慮して、運転台の列車情報制 御装置のモニタ表示器の大形化、車両番号表示器の LED パネル化及び、車内に設置した CCTV カメラのモニタ表 示器を運転台横に配置している。運転室前面窓ガラスは、 ラミネート構造の 3 次元曲面ガラスを採用して、2.5 ㎏の 鉄球を 80 ㎞/h で衝突させても貫通しない強度をもたせ て、運転士の安全も確保している。また、運転席の腰掛 は、運転室側開戸からの乗降の妨げにならないように、折 りたたみ式としている。 なお、非常時の乗客脱出用として、先頭車前面に非常扉 を設けている。この非常扉は、縦方向に開いて、扉をスロ ープに利用(写真 5)して、軌道上に脱出する場合及び、横 方向に 180 度開いて、連結した救援車両に乗り移る場合の 2 種類のモードに対応している。 写真 3 三つまたのスタンションポール 写真 4 折たたみ式腰掛(車椅子スペース部)
7 機器配置 7.1 床下機器配置 DM1 車及び M2 車の床下には、主回路機器のほか、蓄 電池箱及び蓄電池充電器(バッテリチャージャ)を各 1 組ず つ 取 り 付 け て い る。T 車 の 床 下 に は、 補 助 電 源 装 置 (SIV)2 組のほか、空気圧縮機、除湿器及び元空気タンク を取り付けている。全車種に共通機器として、ブレーキ制 御装置、供給空気タンク、空気ばね用補助空気タンク及び 空調装置の室外機(コンプレッサ及びコンデンサーユニッ ト)2 組を取り付ている。また、DM1 車には、2 種類の ATO 用アンテナ及びフランジ塗油装置を取り付けてい る。なお、機器の取付は、機器の質量が機器取付ボルトに 掛からないセーフティハング方式を採用している。 7.2 車両間設備 車両間は、プラットホームからの転落防止のため、外ほ ろを取り付けている。DM1-T 車間及び T-M2 車間のほろ の室内パネルは、可撓式パネルを採用して、可動部の露出 をなくすように配慮している。また、M2-M2 車間のほろ は、スライド式パネルで構成して、3 両ユニットごとに、 車両間の切り離しが自動でできる構造としている。 先頭車の運転室側は、自動連結器を装備し、救援時に編 成どうしの連結ができるようになっている。車両間の連結 器は、半永久連結器を使用しているが、M2-M2 車間は、 及び車両衝突時に作動するエネルギー吸収用カートリッジ を装備している。 8 主要機器 8.1 主制御装置 主制御装置は、第三軌条 DC 750 V 方式で、メインスイ ッチ、高速遮断器、フィルタリアクトル、ブレーキ抵抗 器、VVVF インバータ箱及び主電動機から構成されてい る。VVVF インバータは、強制風冷方式を採用した 2C1M 構成の IGBT 2 レベルインバータ制御で、台車単位の制御 を行っており、故障時には、台車単位での開放が可能であ る。電気ブレーキは、回生ブレーキに加えて、発電ブレー キ用のブレーキ抵抗器を搭載しており、回生失効時及び高 速域でのブレーキ作用時に使用する。各主電動機には、主 制御装置用の速度センサを設けて、高精度な滑走制御を各 軸単位で実現している。力行・ブレーキレベルは、ATC 装置又はマスコンからの指令をエンコーダにて PWM 信 号に変換して、各車に指令している。 8.2 主電動機 主電動機は、Class 200 絶縁を確保した開放形の連続定 格 175 kW 三相かご形誘導電動機である。各主電動機は、 主制御装置用及びブレーキ装置用の速度センサを備え、さ らに DM1 車の第一台車に搭載する主電動機には、ATC 装置用の速度センサも備えている。 8.3 集電装置 集電装置は、下面接触式の集電くつを各台車の両側に設 置して、第三軌条から集電を行っている。集電装置は、台 写真 5 非常扉(スロープを広げた状態) 写真 6 外ほろ及び外つり方式両引戸 写真 7 ほろ(可撓式パネル)
光線よけ&シールド取付 光線よけ&シールド取付 光線よけ&シールド取付 光線よけ&シールド取付 シールドビーム灯(前部標識灯) 表示灯(後部標識灯) 図 4 運転室機器配置 写真 8 運転台
(DM1) (T) (M2)
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6 動台車
(KW-186)
写真
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8 カ行性能曲線
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が、障害物と衝突した場合は、アームのウィークリンク部 でアームが切断され、集電装置本体にダメージが及ばない 構造となっている。 なお、この集電装置は、圧縮空気によって、集電アーム を上下に操作することができ、第三軌条と集電くつとの接 触を切り離すことができる。この操作は、運転台から、前 方 3 両ユニット、後方 3 両ユニット又は全車両の選択をし て行う。 8.4 ブレーキ装置 ブレーキ制御装置は、各車に 1 台ずつを備え、車両単位 で制御をしている。各車のブレーキ制御装置間は、コント ロ ー ラ・ エ リ ア・ ネ ッ ト ワ ー ク[CAN( 編 集 部 注:ISO 11898 参照)]が採用されており、荷重情報などのブレーキ 制御に必要な情報通信を行っている。 常用ブレーキは、電気ブレーキ優先の遅れ込め方式を採 用しており、T 車分のブレーキ力も含めて、電気ブレーキ で最大限まかなう方式としている。空気ブレーキは、高速 域の電気ブレーキ力不足時及び停止直前の低速域のみ使用 する。停止直前の電空協調ブレーキは、4 ㎞/h で電気ブ レーキから空気ブレーキへと切り替わる。滑走防止弁は、 台車ごとに設け、台車単位で制御している。非常ブレーキ は、空気ブレーキのみで、滑走制御は行わない。 8.5 電動空気圧縮機 電動空気圧縮機は、低騒音を考慮してスクリュータイプ を採用した。また、除湿器は、ツインタワー式を採用して いる。それぞれの機器は、3 両ユニット当たり、1 台ずつ (2 台 /6 両編成)の構成とし、T 車の床下に設置した。 8.6 補助電源装置 補助電源装置は、強制風冷方式の 140 kVA/1 台の容量 をもつ IGBT 静止形インバータ(SIV)を採用して、三相 AC 380 V を出力している。三相 AC 380 V は、空調装置 及び空気圧縮機の電源として使用している。SIV は、3 両 ユニット当たり、2 台搭載され、1 台の SIV が故障した場 合は、延長給電用接触器が作動して、もう 1 台の健全な SIV から、各車へ給電を行う回路に切り替える。また、強 制風冷方式の蓄電池充電器に内蔵された回路によって、三 相 AC 380 V を DC 110 V に変換して、蓄電池の充電並び に制御回路及び直流低圧回路へ給電している。この蓄電池 充電器は、3 両ユニット当たり、2 台搭載しており、1 台 が故障した場合は、もう一方の蓄電池充電器だけで、全て の負荷を負担できるように、20 kW/1 台と十分な容量を 備えている。 8.7 蓄電池 蓄電池は、ニッケルカドミウムタイプの DC 110 V、76 セル、130 Ah のもので、事故又は故障などが原因で、主 電源がなくなった場合でも、非常換気、非常灯などの非常 時の負荷に対して、40 分間給電可能な容量としている。 8.8 空調装置及び暖房装置 空調装置は、セパレータ形のユニット方式で、各車端部 の天井内に室内機(エバポレータユニット)、床下に室外機 (コンプレッサ及びコンデンサ)を取り付け、各車にそれ ぞれ 2 組を搭載している。冷媒は、オゾン層破壊のおそれ のない、R407C を使用している。エバポレータユニット のリターングリル部には、煙検知器を設置し、車内火災が あれば運転室の運転士に警報で知らせるようになってい る。客室の空調ダクトは、天井中央部に設けてあり、空調 ディフューザを介して、車内に均一に冷気を拡散してい る。空調ダクトは、空調装置が 1 組故障した場合でも、車 両全長に冷気が届くように構成している。 8.9 戸閉め装置 戸閉め装置は、リニアモータ駆動の電気式駆動装置を使 用している。また、戸挟み検知装置が戸挟みを検知した場 合は、異物が除去されるまで、側引戸の開閉を繰り返す機 能をもっており、この繰り返し回数は、任意に設定でき る。また、駅での到着及び発車時に、プラットホームドア との同期を図って開閉するようになっている。 8.10 車両情報制御システム 車 両 情 報 制 御 シ ス テ ム は、TSIS(Train Supervising Information System)と呼ばれるシステムが搭載されてい る。DM1 車には、中央ユニット(CU)、T 車及び M 車に は、端末ユニット(LU)を設置し、各ユニット間の基幹伝 送には、Arcnet(編集部注:トークンパッシング式ネット ワークのプロトコルの一種)を採用している。各 CU 及び LU は、独立した 2 つの CPU を搭載した 2 重系システム となっており、冗長性を確保している。また、ユニットと 車両内の各サブシステムとのインターフェイスは、RS485 で通信を行い、動作状況及び故障情報を監視して、各 CU 及び LU に記録するとともに、運転台に配置したモニタ表 示器(DU)に表示する。DU は、TFT カラー液晶パネルを 採用し、タッチスクリーン方式による操作を行う。DU の 表示は、運転手モード及びメンテナンスモードの 2 つのモ ードがあり、メンテナンスモードでの使用は、パスワード の入力が必要となる。 TSIS は、各サブシステムの動作状況及び故障情報の監 視に加えて、故障記録、イベント記録、セルフテストなど の機能を装備し、またサブシステムの主要故障情報を、ラ ジオシステムを使って、オペレーションコントロールセン タ(OCC)へ送信する機能をもっている。 8.11 運転保安装置 運転保安装置は、軌道回路から速度信号を受信し、 ATO による自動運転を行い、地上子検知によるプログラ ムストップ(定点停止)機能を備える。自動運転のほか、車 内信号によるコードマニュアル運転モード、信号システム
なお、運転は、運転士のみの一人乗務である。 8.12 車内案内表示装置
車内案内表示装置は、側引戸かもい部に、赤色 LED 方 式の表示器を設置しており、音声の自動放送装置と連動し て、行先、次駅案内、乗換え案内などを行う。
ま た、VPIS(Visual Passenger Information System)と 呼ばれる広告用の 17 インチカラー LCD モニタが、1 両当 たり、6 台ずつ設置されている。配信データは、DM1 車 に設置した列車情報制御装置(TCCU)から、イーサーネッ トで各車に設置された情報配信装置(MDU)に伝送され、 MDU から 6 台の LCD モニタに分配される。M2-M2 車間 は、電気連結器で連結されているが、イーサーネット専用 ピンコンタクトを用いることで、信号ロスを抑えて伝送す ることが可能となっている。 8.13 行先表示器 行先表示器は、前頭部に路線カラーを表す LED 表示灯 及び LED 行先表示器を設置し、車側にもカラー LED 行 先表示器を設置した。 8.14 放送装置及び非常通報装置 放送装置は、前後運転室間の通話、非常通報装置との通 話、TETRA 方式によるデジタル無線及び自動放送の機能 をもっている。非常通報装置は、各車の側引戸付近に、合 計 4 箇所に設置されており、非常時に乗客と乗務員とが通 話できる。(編集部注:TETRA とは、欧州電気通信標準 協会が、公共保安用デジタル移動通信システムとして制定 した欧州統一規格である。) また、各車内の 4 箇所及び運転室内の 1 箇所に、CCTV カメラ装置を備える。CCTV カメラの映像は、各車に搭 載したデジタル記録装置(Digital Video Recorder)に記録 されるとともに、運転台に設けた CCTV 専用のモニタ表 示器に、マルチ画面で任意の映像を選択して表示すること が可能である。 9 台車 台車は、ウイングばね方式のボルスタレス台車を採用し ており、シンプルな構造でソフトな乗り心地を実現してい る。軸箱支持装置は、円すいゴムを用いたウイングばね方 式で、上下、左右及び前後の剛性を円すいゴムだけで保持 するシンプルな構造を採用している。車体支持装置は、ボ ルスタレスタイプを採用しており、けん引装置は、Z リン ク式である。レベリングバルブは、三点支持方式となって いる。また、ロール剛性を確保するため、アンチローリン グ装置を装備している。輪軸は、通常の中実軸とブレーキ ディスク付き車輪とで構成され、駆動台車には、歯車箱が 取り付けられている。車輪は、モノブロックタイプで、踏 面形状は、UIC510-2(鉄道国際連合)の標準形状を採用し ている。 駆動装置は、WN カップリングによる平行カルダン方式 であり、主電動機は、台車枠に固定される。基礎ブレーキ は、ディスクブレーキを採用しており、そのうち、半数 は、ばね駆動式のパーキングブレーキを装備している。 各編成の先頭軸は、空油混合式の噴射式フランジ塗油装 置が装備されており、レール及びフランジの摩耗対策のた めに使用する。このフランジ塗油装置は、カーブ走行時の 遠心力を検知した際に作動するよう制御されており、直線 走行時及び停車時は、作動しない。その他、先頭軸には、 ATC 用のレシーバーコイル及びトリップコックが設置さ れている。また、先に述べたように、各台車には、台車枠 側ばり下部に集電装置を 1台車当たり、2個設置している。 10 おわりに 信義松山線車両は、2013 年 11 月の信義線の開業以来、 多くの乗客に利用されている。台北地下鉄の最新車両とし て親しまれるとともに、今後も台北地下鉄の主要交通網を 支える車両として、台北市民及び利用客に貢献できること を期待する。最後に設計・製作・開業にあたりご指導ご協 力いただいた多くの皆様に感謝の意を表し結びとする。 写真 11 付随台車(KW-187)