• 検索結果がありません。

2014_IBA Guidelines on Conflict of Interest_Japanese

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "2014_IBA Guidelines on Conflict of Interest_Japanese"

Copied!
40
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

(公益社団法人日本仲裁人協会による日本語訳)

(Translation by the Japan Association of Arbitrators)

[翻訳者註]疑義がある場合には、原文英語版を参照して下さい。

[Translator's Note]Please refer to the original English version in the case of any questions.

国際仲裁における利益相反に関 するIBAガイドライン

IBA Guidelines on Conflicts of Interest

in International Arbitration

2014年10月23日木曜日 国際法曹協会理事会決議による採択

(2)

A Note on Translations

This document was originally prepared in English by a working group of the International Bar Association and was adopted by IBA Council Resolution.

In the event of any inconsistency between the English language versions and the translations into any other language, the English language version shall prevail.

Translated by: Yoshimi Ohara of Nagashima Ohno & Tsunematsu, Tokyo, Japan, Yoshimasa Furuta, Aoi Inoue and Shirayama Yumiko of Anderson Mori & Tomotsune, Tokyo, Japan, Kei Kato of Orrick, Tokyo, Japan, Yutaro Kawabata and Mihiro Koeda of Nishimura & Asahi, Tokyo, Japan and Maki Shiokawa of Momo-O, Matsuo & Namba, Tokyo Japan.

Reviewed by: Junyeon Park of Latham & Watkins, Tokyo, Japan.

(3)

(公益社団法人日本仲裁人協会による日本語訳)

(Translation by the Japan Association of Arbitrators)

[翻訳者註]疑義がある場合には、原文英語版を参照して下さい。

[Translator's Note]Please refer to the original English version in the case of any questions.

国際仲裁における利益相反に関 するIBAガイドライン

IBA Guidelines on Conflicts of Interest

in International Arbitration

2014年10月23日木曜日 国際法曹協会理事会決議による採択

(4)

国際法曹協会(International Bar Association)

4th Floor, 10 St Bride Street London EC4A 4AD

United Kingdom(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)

電話:+44 (0)20 7842 0090 FAX:+44 (0)20 7842 0091 www.ibanet.org

ISBN:978-0-948711-36-7

全ての権利を留保します。

(5)

著作権表示 International Bar Association 2014

[翻訳者註]上記の著作権表示は原文に関するものです。

(6)

目次

国際仲裁における利益相反に関する IBA ガイドライン 2014 年版 ... i

序文 ... 1

第 1 章:公正性、独立性及び開示に関する一般基準 ... 4

第 2 章:一般基準の実際の適用 ... 18

(7)

i

国際仲裁における利益相反に関する IBA ガイドライン 2014 年版

2004年の発行以来、国際仲裁における利益相反に関するIBAガイドライン(以下「本ガイドライン」とい

う。)1は国際仲裁のコミュニティーにおいて広く受け入れられてきた。仲裁人は、選任を受諾すべきかや開 示をするべきかに関する判断をする際に本ガイドラインを広く用いている。同様に、当事者やその代理人も、

仲裁人の公正性及び独立性を評価する際に本ガイドラインを頻繁に考慮しており、仲裁機関や裁判所 もまた仲裁人に対する忌避申立てに対する検討の際に本ガイドラインをしばしば参照している。10 周年を 迎えるに当たって、本ガイドラインが最初に採択された際に検討されていた通り、本ガイドラインの利用によ り蓄積された経験を反映し、明確化や改善が可能な分野を特定することが適切と考えられた。そのため、

2012 年、IBA 仲裁委員会は本ガイドラインのレビューを開始し、代理人、仲裁人及び仲裁の利用者を

含む、多様な法文化及び幅広い視点を代表する拡大利益相反小委員会(以下「本小委員会」とい

1 2004 年ガイドラインは、作業部会の 19 人の専門家により起草された:(1) Henri Alvarez、カナダ、(2) John Beechey、イングランド、(3) Jim Carter、アメリカ、(4) Emmanuel Gaillard、フランス、(5) Emilio Gonzales de Castilla、

メキシコ、(6) Bernard Hanotiau、ベルギー、(7) Michael Hwang、シンガポール、(8) Albert Jan van den Berg、ベルギ ー、(9) Doug Jones、オーストラリア、(10) Gabrielle Kaufmann-Kohler、スイス、(11) Arthur Marriott、イングランド、

(12) Tore Wiwen Nilsson、スウェーデン、(13) Hilmar Raeschke-Kessler、ドイツ、(14) David W. Rivkin、アメリカ、

(15) Klaus Sachs、ドイツ、(16) Nathalie Voser、スイス(報告担当者)、(17) David Williams、ニュージーランド、

(18) Des Williams、南アフリカ、及び(19) Otto de Witt Wijnen、オランダ(委員長)。

(8)

ii

う。)2によりレビューが実施された。本小委員会の委員長は David Ariasが務め、後に Julie Bédardが

共同委員長となった。レビュー・プロセスはPierre Bienvenu及びBernard Hanotiauのリーダーシップのもと

で行われた。

本ガイドラインは、もともとは商事仲裁と投資仲裁の両方への適用を意図していたが、レビュー・プロセスを 通じて、投資仲裁に適用するにあたっての不明確さが残っていたことが確認された。同様に、本ガイドライ ンの初版には、本ガイドラインは非法曹資格者の仲裁人へも適用される旨のコメントがあったが、この点に ついても不明確さが残っていた。本ガイドラインは、一般的には商事仲裁と投資仲裁の両方に適用され、

法曹資格者及び非法曹資格者の仲裁人両方に適用されるとの共通理解が形成された。

本小委員会は、例えばいわゆる「事前放棄」の効果の問題、相互の関連性はない案件だが法的な争

点が共通する事件において代理人と仲裁人を同時に務めることについての開示の要否すなわち issue

conflict の問題、仲裁の補助者の独立性及び公正性の問題及び第三者資金提供の問題等の 2004

2 拡大利益相反小委員会のメンバーは次のとおりである:(1) Habib Almulla、アラブ首長国連邦、(2) David Arias、

スペイン(共同委員長)、(3) Julie Bédard、米国(共同委員長)、(4) José Astigarraga、米国、(5) Pierre Bienvenu、カナダ(レビュー・プロセス共同委員長)、(6) Karl-Heinz Böckstiegel、ドイツ、(7) Yves Derains、フラン ス、(8) Teresa Giovannini、スイス、(9) Eduardo Damião Gonçalves、ブラジル、(10) Bernard Hanotiau、ベルギー

(レビュー・プロセス共同委員長)、(11) Paula Hodges、イングランド、(12) Toby Landau、イングランド、(13) Christian Leathley、イングランド、(14) Carole Malinvaud、フランス、(15) Ciccu Mukhopadhaya、インド、(16) 小原 淳見、日本、(17) Tinuade Oyekunle、ナイジェリア、(18) Eun Young Park、韓国、(19) Constantine Partasides、イ ングランド、(20) Peter Rees、オランダ、(21) Anke Sessler、ドイツ、(22) Guido Tawil、アルゼンチン、(23) Jingzhou Tao、中国、(24) Gäetan Verhoosel、イングランド(報告担当者)、(25) Nathalie Voser、スイス、(26) Nassib Ziadé、

アラブ首長国連邦、及び(27) Alexis Mourre。補助者として、(28) Niuscha Bassiri、ベルギー、(29) Alison Fitzgerald、カナダ、(30) Oliver Cojo、スペイン、及び(31) Ricardo Dalmaso Marques、ブラジル。

(9)

iii

年以降の国際仲裁実務において注目を集めた数多くの問題点を注意深く検討した。改正後の本ガイド ラインには、これらの問題点についての本小委員会の結論が反映されている。

本小委員会は、国際仲裁のグローバルな実務を発展させる見地から、仲裁人の開示義務について、より 厳しい基準を課す改正をすべきではないかについても検討した。改正後の本ガイドラインにおいては、2004 年ガイドラインの基本的アプローチは変更されるべきではないが、2004 年ガイドラインにおいては考慮されて いない状況下においても、開示が求められるべき場合がある、との結論をとっている。また、開示が求めら れるという事実又は仲裁人が開示したという事実は、その仲裁人の公正性又は独立性に疑義が存在す ることを示唆するものではないことを再確認することが重要である。実際、開示義務の範囲の基準は、忌 避の基準とは異なる。また、改正後の本ガイドラインは、大規模法律事務所又は団体に所属する弁護 士が仲裁人になることを抑制することを意図するものでは全くない。

本ガイドラインは2014年10月23日木曜日のIBA理事会の決議で採択された。本ガイドラインは、以

下からダウンロード可能である。

www.ibanet.org/Publications/publications_IBA_guides_and_free_materials.aspx

2014年10月23日木曜日 仲裁委員会共同委員長による署名

Eduardo Zuleta

(署名)

Paul Friedland

(署名)

(10)

iv

(11)

1

序文

1. 仲裁人及び代理人にとって、開示義務の対象となる事実の範囲が分からないことがしばしばある。

大型化した企業グループ及び国際的法律事務所を含む国際ビジネスの発展により、より多くの事 実が開示され、開示及び利益相反の問題の分析がより複雑化している。仲裁の当事者にとっては、

仲裁手続を遅延させるために仲裁人の忌避申立を利用する、又は相手方当事者の選択する仲裁 人の選任を拒否する機会が増している。いかに軽微又は重要な事実であるかにかかわらず、何らか の関係の開示は、根拠のない、あるいは不当な忌避申立てにつながる可能性がある。同時に、仲 裁判断が開示義務違反の主張によって取消しの申立てを受けることを防止するため、また、当事者 間及び国際仲裁に従事する代理人間の公平性を促進するため、より多くの情報に当事者をアクセ ス可能にしておくことは重要である。

2. 当事者、仲裁人、仲裁機関及び裁判所は、開示されるべき情報の範囲及び開示義務の範囲に

適用されるべき基準についての複雑な判断を迫られている。さらに、仲裁機関及び裁判所は、異議 申立て又は忌避申立てが開示後になされた場合にも困難な判断に直面する。公正な審問を受け る当事者の権利を守るための仲裁人の公正又は独立に疑いを生じさせる事情の開示を受ける権 利と、他方で、当事者が希望する仲裁人を選ぶ権利を守るために不要な忌避申立てを阻止する 必要性との間には、緊張が存在している。

3. 仲裁手続が仲裁人に対する正当な理由のない忌避申立てによって妨害されないこと並びに手続の

適法性が開示義務の範囲、異議及び忌避申立てに適用される基準の統一性の欠如及び不確実

(12)

2 性によって影響を受けないことは、国際仲裁コミュニティーの利益になる。2004 年ガイドラインは、当 時の基準はその適用において十分な明確さと統一性に欠けているとの見解を反映したものである。

そこで、本ガイドラインは、いくつかの「一般基準及び一般基準の解説」を規定した。さらに、不必要 な仲裁人に対する忌避申立て並びに仲裁人の辞任及び排除を回避し統一性を促進するため、本 ガイドラインは、開示の必要な範囲又は仲裁人の欠格事由を示す具体的な事情をリスト化した。

「レッド」、「オレンジ」及び「グリーン」で示された、このようなリスト(以下「本適用リスト」という。)は、

アップデートされて改正後の本ガイドラインの末尾に掲載されている。

4. 本ガイドラインは、以下の一般基準に記載された原則に深く根を下ろした、現在の最善の国際実

務についての IBA 仲裁委員会の理解を反映している。一般基準及び本適用リストは、代表的な

法域の制定法及び判例法並びに国際仲裁に関係する実務家の判断及び経験に基づいている。

2004年ガイドラインを見直すにあたって、IBA 仲裁委員会は、数多くの法域の法及び実務について

の分析をアップデートした。本ガイドラインにおいては、国際仲裁の高潔、評判及び効率性を確保す る責任を担う当事者、代理人、仲裁人及び仲裁機関の様々な利益の調整に努めた。2004 年の

作業部会及び2012/2014年の小委員会は、IBAの年次会議における公聴会や仲裁人及び実務

家との会議を通じて、主要な仲裁機関、企業内弁護士及びその他の国際仲裁に関係する者の見 解を求め、検討した。受領したコメントは詳細に検討され、その多くは採用された。IBA仲裁委員会 は、その提案に対して非常に多くの機関及び個人に真剣に検討していただいたことに、心より感謝し ている。

(13)

3 5. 本ガイドラインは、国際商事仲裁及び投資仲裁に適用され、当事者の代理人が弁護士か非弁護

士か、仲裁人が法律専門家であるか否かにかかわらず適用される。

6. 本ガイドラインは、法規ではないし、適用される国内法や当事者の選択した仲裁規則に優先するも

のでもない。しかしながら、2004年ガイドライン及び IBA 仲裁委員会の制定した他の規則及びガイ

ドラインと同様に、改正後の本ガイドラインが、国際仲裁コミュニティーの中で広く受け入れられるとと もに、公正性及び独立性についての重要な問題に対処する当事者、実務家、仲裁人、仲裁機関 及び裁判所において役に立つことを期待している。本ガイドラインが、健全な常識をもって、杓子定 規で過度に形式的な解釈をされずに適用されることを、IBA仲裁委員会は願っている。

7. 本適用リストは、実務において実際に頻繁に生じる様々な状況の多くを含んでいるが、網羅的であ

ることを意図したものではないし、網羅的とすることもできない。それでもなお、IBA 仲裁委員会は、

本適用リストが、一般基準を適用するに際しての具体的な指針として有益であると確信している。

IBA 仲裁委員会は、更なる改善を目指して、本ガイドラインの実際の使用状況について継続的に

調査する予定である。

8. 1987年、IBAは、国際仲裁人倫理規則(Rules of Ethics for International Arbitrators)を公表

した。当該倫理規則は、本ガイドラインよりも多くの事項を含んでおり、本ガイドラインで議論されてい ない事項に関しては引き続き有効である。本ガイドラインで取り扱われている事項に関しては、本ガイ ドラインが倫理規則に優先する。

(14)

4

1 章:公正性、独立性及び開示に関する一般基準

(1) 一般原則

全ての仲裁人は選任を受諾した時から最終仲裁判断を下す時又はその他の事由により手続が終局的 に終了する時まで公正かつ当事者から独立していなければならない。

一般基準 1 の解説:

本ガイドラインに通底する基本原則は、全ての仲裁人は、仲裁人の選任を受諾した時から、適用される 規則に基づく仲裁判断の訂正又は解釈の手続の期間(その期間が知られており認知可能なことが前 提である)を含む仲裁手続全体を通して、公正かつ当事者から独立していなければならないということで ある。

問題は、この義務が、裁判所における仲裁判断の取消手続の期間まで延長されるべきか否かである。適 用される法又は仲裁機関の規則に基づき当該仲裁判断を下した仲裁廷に事件が差し戻される可能性 がある場合でない限り、そのような義務の期間の延長はなされるべきではないというのが結論である。した がって、その意味での仲裁人の義務は、仲裁廷が最終仲裁判断を下し、適用される規則に基づき許容 される訂正若しくは解釈がなされ若しくはかかる手続の申立て期間が満了したとき、(例えば、和解した 場合のように)仲裁手続が終局的に終了したとき、又は仲裁人が管轄権を有しなくなったときに、終了 する。仲裁判断取消しその他の手続の後、当該紛争が同一の仲裁廷に差し戻された場合には、改めて 潜在的な利益相反事由の開示及び検討が必要となる可能性がある。

(15)

5

(2) 利益相反

(a) 仲裁人は、自身の公正性又は独立性に何らかの疑いがある場合には、選任を辞退し、又は既に

仲裁手続が開始されている場合には仲裁人としての活動の継続を拒絶するものとする。

(b) 関連する事実又は状況を認識している合理的な第三者の視点から、仲裁人の公正性又は独立

性に正当な疑いを生じさせる事実及び状況が存在した場合又は選任の後に生じた場合も、当事

者が一般基準 4 に規定されている要件にしたがって仲裁人を受け入れた場合を除き、同原則が適

用される。

(c) 関連する事実及び状況を認識している合理的な第三者が、仲裁人が結論を下すにあたり、事件に

関して当事者が提出する内容以外の要素により影響を受ける可能性があるとの結論に達するであ ろう場合には、その疑いは正当なものである。

(d) 放棄不可能なレッド・リストに記載されている事情の何れかが存する場合には、仲裁人の公正性又

は独立性に正当な疑いが必然的に存在する。

一般基準 2 の解説:

(a) 仲裁人が自己の公正性及び独立性に疑いを持った場合には、仲裁人は選任を辞退しなければな

らない。この基準は仲裁手続がいかなる段階にあるかにかかわらず適用される。これは、混乱を回避 し仲裁手続の信頼を育むため、本ガイドラインに明記された基本原則である。

(b) 可能な限り基準を統一的に適用するため、欠格基準は客観的なものとする。「公正性又は独立

(16)

6 性」という用語は、広く採用されている国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)モデル法

12条に由来するものであり、UNCITRALモデル法 12条(2)で規定されている仲裁人の公正性又

は独立性に対する正当な疑いに基づく外形テストは、客観的に適用されるものである(「合理的な

第三者のテスト」)。一般基準 3(e)の解説に記載されているように、仲裁手続の進行段階を問わ

ずこの基準が適用される。

(c) 正当な疑いの基準に依拠する法や規則がこの基準を定義していないことがしばしばある。この一般

基準は、この判断にあたってのいくばくかの示唆を提供しようというものである。

(d) 放棄不可能なレッド・リストは、仲裁人の公正性又は独立性に必然的に正当な疑いを生じさせる

状況を列挙している。例えば、いかなる者も自らに対する判断権者とはなり得ないから、仲裁人と 当事者が同一であってはならない。それゆえ、当事者は、かかる状況から生じる利益相反については、

放棄することもできない。

(3) 仲裁人による開示

(a) 当事者の目から見て仲裁人の公正性又は独立性に疑いを生じさせるであろう事実又は状況が存

するときは、仲裁人は、選任の受諾に先立って、又は受諾後それらを認識した後速やかに、当事者、

仲裁機関又は(存在し、かつ適用される機関の規則により義務付けられている場合には)その他 の仲裁人選任機関及び他の仲裁人に対して、そのような事実又は状況を開示するものとする。

(b) 将来発生し得る事実及び状況に起因する潜在的な利益相反に関する事前宣言又は事前放棄

(17)

7 は、一般基準3(a)に基づく仲裁人の継続開示義務を免責するものではない。

(c) 開示をした仲裁人が、開示した事実があるにもかかわらず自身を公正かつ当事者から独立しており、

したがって仲裁人としての職責を果たすことができると考えるときは、一般基準1及び2(a)に従う。そ

うでなければ、初めから指名又は選任を辞退するか、辞任することになる。

(d) 仲裁人がある事実又は状況を開示するべきか疑義がある場合には、開示する方向で解決されるべ

きである。

(e) 仲裁人は、仲裁人が開示するべき事実又は状況が存在するかを検討するにあたっては、仲裁手続

が初期段階であるか終盤であるかを考慮しないものとする。

一般基準 3 の解説:

(a) 一般基準3(a)に基づく仲裁人の開示義務は、当事者は、当事者から見て仲裁人の見解に関連し

得るいかなる事実又は状況についても十分に開示をうけることに利益を有するとの原則に基づいて

いる。したがって、一般基準3(d)は、ある事実又は状況が開示されるべきか否かに関するいかなる疑

いも、開示される方向で解決されるべきとしている。しかし、グリーン・リストに列挙されているような、

一般基準2に規定されている客観テストでは欠格事由になり得ない状況については、開示される必

要はない。一般基準 3(c)に反映されているように、開示がなされたことは、開示された事実が一般

基準2に基づき仲裁人の欠格事由に該当することを示唆するものではない。一般基準3(a)に基づ

く開示義務は、性質上、継続的なものである。

(b) IBA仲裁委員会は、「事前放棄」と呼ばれることもある、将来発生しうる事実又は状況及びその結

(18)

8 果発生しうる潜在的な利益相反に関する仲裁人候補者による宣言の使用の増加について検討し

た。かかる宣言は、一般基準 3(a)に基づく仲裁人の継続的な開示義務を免責するものではない。

しかし、いかなる事前宣言又は事前放棄の有効性及び効果も、当該事前宣言又は事前放棄の 文言、目下の具体的状況及び適用法の観点から評価されるべきものであるから、本ガイドラインに おいては、上記の点を除き事前宣言又は事前放棄の有効性及び効果について一定の見解を採る ことはしない。

(c) 開示がなされたことは、利益相反事由があることを示唆するものではない。当事者に対して開示をし

た仲裁人は、開示した事実の存在にもかかわらず自身は当事者に対して公正かつ独立していると 考えていることになり、そうでなければ指名を辞退するか辞任することになる。つまり、開示をした仲裁 人は、自身の義務を果たすことができると感じていることになる。仲裁人のかかる評価に同意するか 否かを判断する機会を当事者に与え、もし望むのであれば、さらに状況を究明することを可能とする のが開示の目的である。この一般基準の施行により、開示がなされたこと自体が仲裁人を欠格させ るに十分な疑いの存在を示唆するものであるとか、欠格事由の存在を推定させるといった誤った考

えが排除されることが望まれる。その反対に、いかなる忌避申立ても、上記一般基準 2 の客観テス

トを満たす場合にのみ認容されるべきである。「一般基準の実際の適用」のコメント 5 にあるように、

当事者の視点からは仲裁人の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実及び状況 の開示の懈怠は、必ずしも利益相反事由の存在を意味するものではなく、欠格事由が認められる ことになるものでもない。

(19)

9 (d) 開示されるべき事実を決定するにあたっては、仲裁人は自身が認識している全ての状況を考慮に入

れるべきである。仲裁人が、自身は開示をするべきであると考えるが守秘義務又はその他の実務上 のルール若しくは職務倫理規範によって開示ができない場合には、選任を受諾するべきではなく、又 は辞任するべきである。

(e) (一般基準2及び3に規定されている)開示又は欠格事由は、仲裁手続の特定の段階によって

異なるべきではない。仲裁人が開示、選任の辞退又は職務継続を拒絶するべきかを決定するため に関連するものは事実及び状況のみであり、手続の現在の状態や辞任による帰結ではない。実務 的な問題として、仲裁機関は、仲裁手続の段階によって区別を設けるかもしれない。裁判所も同 様に、異なる基準を適用するかもしれない。しかしながら、本ガイドラインにおいては、仲裁手続の段 階による区別は設けない。実務的な懸念はあるところであるが、仲裁手続の開始後に仲裁人が辞 任しなければならないとすると、仲裁手続の段階によって区別を設けることは、一般基準とは整合し ないことになる。

(4) 当事者による放棄

(a) 仲裁人による開示を受領した後又は当事者が仲裁人の潜在的な利益相反を構成し得る事実又

は状況を知った後30日以内に、当事者がその仲裁人について明示の異議申立てをなさない場合、

この一般基準の(b)項及び(c)項に従い、当事者は当該事実又は状況に基づく仲裁人のあらゆる 潜在的な利益相反を放棄したとみなされ、その後の段階において当該事実又は状況を理由とする

(20)

10 いかなる異議も申し立てることができない。

(b) ただし、放棄不可能なレッド・リストに記載されている事実又は状況が存在する場合には、当事者

によるいかなる放棄(一般基準3(b)にあるような宣言又は事前放棄を含む)も、また、その者を仲

裁人とする当事者間のいかなる合意も、無効とみなす。

(c) 放棄可能なレッド・リストに例示されているような利益相反が存在する者は、仲裁人となるべきでは

ない。しかし、以下の条件を満たす者は、仲裁人としての選任を受諾し、又は仲裁人としての活動 を継続することができる。

(i) 全ての当事者、全ての仲裁人及び仲裁機関又は(もし存在すれば)その他の仲裁人選任

機関が、当該利益相反事由についての十分な知識を有していること、及び

(ii) 全ての当事者が、当該利益相反事由にもかかわらずその者が仲裁人となることに明示的に同

意すること。

(d) 仲裁人は、仲裁手続のいかなる段階においても、調停その他の手続を通じて、紛争の和解による

解決に助力することができる。しかし、その前に、仲裁人は、そのように活動することが仲裁人としての 任務を継続する資格を喪失させる事由となるものではないことについて、当事者の明示の合意を得 るべきである。当該明示の合意は、当該手続への仲裁人の参加又は当該手続において仲裁人が 知り得る情報から生じ得るあらゆる潜在的な利益相反事由に対しての、有効な放棄となるものとす る。仲裁人の助力が事件の最終的な和解に結びつかない場合、当事者はその放棄に拘束され続 ける。しかし、一般基準 2(a)との一貫性から、当該合意にかかわらず、仲裁人は、和解手続への関

(21)

11 与の結果、自身が将来の仲裁手続において公正性又は独立性を維持することに疑いを持つに至っ た場合には、辞任するものとする。

一般基準 4 の解説:

(a) 一般基準4(a)に基づき、当事者は、30日以内に利益相反事由について異議を述べない場合には、

当該利益相反事由からのいかなる潜在的な利益相反も放棄したものとみなされる。この期限は、

開示手続を通じた場合を含め、当事者が関連する事実又は状況を認識した日から起算するべきで ある。

(b) 一般基準4(b)は、一般基準4(a)から、放棄不可能なレッド・リスト記載の事由を除外するものであ

る。将来生じ得る事実又は状況に関して当事者からの放棄を求める宣言をする仲裁人もいる。仲

裁人が求めるかかる放棄の有無にかかわらず、一般基準3(b)にしたがって、仲裁手続中に生じた事

実及び状況は、仲裁人の継続的開示義務の履行として、当事者に開示されるべきである。

(c) 放棄可能なレッド・リストに例示されているような深刻な利益相反事由が存在していたとしても、その

ような者に仲裁人として活動してもらいたいと当事者が望むことがある。ここでは、私的自治と公正 かつ独立した仲裁人のみを望む要請との調整が必要である。放棄可能なレッド・リストに例示されて いるような深刻な利益相反事由を抱える者は、当事者が完全なる情報開示を受けた上で明示の 放棄をした場合に限り仲裁人として活動できる。

(d) 仲裁手続中に紛争の和解による解決に仲裁廷が助力するとの概念が確立している法域もあれば、

そうでない法域もある。そのような手続の開始に先立つ当事者のインフォームド・コンセントは、潜在

(22)

12 的な利益相反の有効な放棄とみなされるべきである。かかる同意は当事者の署名のある書面であ ることが求められる法域もある。適用される法の要件を満たしているならば明示の合意で十分であり、

それが審問手続の議事録や発言記録に反映されることで足りる場合もあろう。加えて、仲裁人を 欠格させる手段として当事者が仲裁人を調停人として起用することを回避するため、一般基準にお いては、仮に調停が奏功しない場合であっても放棄は引き続き有効であることを明確化している。当 事者は、明示の同意をするに当たっては、仲裁人が辞任するリスクを含む、仲裁人が和解手続に 助力することの帰結を理解しておくべきである。

(5) 範囲

(a) 本ガイドラインは、選任方法にかかわらず、仲裁廷の長、単独仲裁人及び陪席仲裁人に等しく適

用される。

(b) 仲裁廷又は個々の仲裁人に対する補助者も、仲裁人と同様の公正性及び独立性に関する義務

を負う。かかる義務の履行を仲裁手続の全ての段階において確保することは仲裁廷の責務である。

一般基準 5 の解説:

(a) 仲裁廷の個々の仲裁人は公正かつ独立している義務を負うため、一般基準においては、単独仲裁

人、仲裁廷の長、当事者選任仲裁人又は仲裁機関によって選任された仲裁人による区別を設け ていない。

(b) 仲裁の補助者に対しても公正性及び独立性に関する宣言に署名させる仲裁機関もある。このよう

(23)

13 な要件の有無にかかわらず、仲裁廷の補助者は、(開示義務を含む)仲裁人と同様の公正性 及び独立性に関する義務を負う。かかる義務の履行を仲裁手続の全ての段階において確保するこ とは仲裁廷の責務である。さらに、かかる義務は、仲裁廷又は仲裁廷を構成する個々の仲裁人に 対する補助者に対しても適用される。

(6) 関係

(a) 仲裁人は、原則として所属する法律事務所と同一視されるが、潜在的な利益相反事由が存在す

るか、又は開示がなされるべきかを決定するために事実又は状況との関連性を検討するにあたって は、仲裁人が所属する法律事務所の活動(もしあれば)及び仲裁人とその法律事務所との関係 は、事案毎に個別に判断されるべきである。仲裁人の所属する法律事務所が当事者の一方に関 与する活動をしていたことは、必ずしも利益相反の原因となるものではなく、開示義務の原因となる ものでもない。同様に、当事者の一方が、仲裁人の所属する法律事務所と関係のある集団の一 員であった場合、そのような事実は事案毎に個別に判断されるべきであり、それのみをもって必ずしも 利益相反の原因を構成したり開示義務の原因となったりするものではない。

(b) 当事者の一方が法人である場合、その法人に支配的な影響力を有する又は仲裁手続において下

される判断について直接の経済的利益を有する若しくは当事者に対して補償義務を負ういかなる 法人又は自然人も、その当事者と同一とみなされることがある。

(24)

14

一般基準 6 の解説:

(a) 国際仲裁の今日の現実の一端として、法律事務所の大規模化が考慮されるべきである。大規模

法律事務所に所属するパートナー弁護士であったとしても、自己の選択する者を仲裁人として選任 する当事者の利益と、国際仲裁における仲裁人の公正性及び独立性を維持することの重要性と の調和を図る必要がある。仲裁人は、原則として、所属する法律事務所と同一視されなければな らないが、仲裁人が所属する法律事務所の活動が自動的に利益相反事由を構成するとされるべ きではない。法律事務所による業務の性質、時期及び範囲といった仲裁人の所属する法律事務 所の活動の(当該仲裁事件の事案との)関連性並びに仲裁人と法律事務所との関係が事案 毎に考慮されるべきである。当事者との関係は法律問題に関する代理行為以外の活動も含み得

るため、一般基準 6(a)は、「のために活動する」ではなく「に関与する」という用語を用いている。バリ

スターの「チェンバース」は、利益相反との関係では法律事務所と同視されるべきではなく、バリスター のチェンバースのための一般基準は規定しないが、バリスター、当事者又は代理人の間の関係の見 地からは、開示がなされるべき場合もあろう。仲裁の当事者が企業集団の一員であるときは、利益 相反に関して特別の問題が生じる。個々の企業の構成形態には非常に幅広い差異があることから、

一義的なルールは適切ではない。その反対に、同一の企業集団における他の構成主体との連携の 個々の状況及びかかる構成主体と仲裁人の所属する法律事務所との関係が、事案毎に考慮さ れるべきである。

(b) 国際仲裁の当事者が法人である場合、その法人に支配的な影響力を有する又は仲裁手続にお

(25)

15 いて下される判断について直接の経済的利益を有する若しくは当事者に対して補償義務を負う他

の法人及び自然人が存在することがある。各状況は個別に評価されるべきである。一般基準 6(b)

は、かかる法人又は自然人が実質的に当事者と同一視される場合があることを明確化している。

紛争に対する第三者資金提供者又は保険者も、仲裁判断に直接の経済的利益を有する場合が あり、同様に当事者と同一視される場合がある。この関係で、「第三者資金提供者」及び「保険者」

とは、事件の提起又は防御に対して資金の拠出その他の重要な支援を行い仲裁手続において下 される判断に直接の経済的利益を有する又は当事者に対して補償義務を負う自然人又は法人を 意味する。

(7) 仲裁人及び当事者の義務

(a) 当事者は、仲裁人、仲裁廷、相手方当事者及び仲裁機関又は(もしあれば)その他の仲裁人

選任機関に対して、仲裁人と当事者(若しくは同一企業集団に属する他の会社又は仲裁手続 の当事者の運営に影響力を有する個人)の間の直接若しくは間接の関係、又は仲裁手続におい て下される判断に直接の経済的利益を有する若しくは当事者に対して補償義務を負う自然人若 しくは法人と仲裁人の間の直接若しくは間接の関係について、知らせるものとする。当事者は、可 及的速やかに、率先してこれを行うものとする。

(b) 当事者は、仲裁人、仲裁廷、相手方当事者及び仲裁機関又は(もしあれば)その他の仲裁人

選任機関に対して、仲裁手続に出頭する代理人の情報及び代理人と仲裁人が同一のバリスター

(26)

16 の「チェンバース」の会員であることを含む、代理人と仲裁人のいかなる関係についても知らせるものと する。当事者は、可及的速やかに、また代理人のチームに変更がある毎に、率先してこれを行うもの とする。

(c) 当事者は、一般基準7(b)を遵守するため、合理的な調査を実施し、入手したあらゆる関連情報を

提供するものとする。

(d) 仲裁人は、利益相反事由及び仲裁人の公正性又は独立性に合理的疑いを生じさせるおそれのあ

るあらゆる事実又は状況を特定するための合理的な調査を実施する義務を負う。仲裁人がかかる 合理的調査を怠った場合には、仲裁人は、不知を理由として利益相反の不開示の責任を免れる ことはできない。

一般基準 7 の解説:

(a) 当事者は、仲裁人との間のいかなる関係も開示することが求められる。かかる関係の開示は、選任

後に知った情報に基づく仲裁人の公正性又は独立性に関する認容見込みのない忌避申立てのリ スクを減少させる。仲裁人と当事者(若しくは同一の企業集団に属する他の会社又は仲裁手続 の当事者に支配的な影響力を有する個人)の間の直接的又は間接的な関係の開示義務は、仲 裁手続に対して資金提供する者又は仲裁判断について当事者へ補償する義務を負う者のように、

仲裁手続において下される判断に直接の経済的利益を有する自然人又は法人との関係にも及ぶ。

(b) 仲裁手続に出頭する代理人、特に仲裁手続における当事者の代理行為に関与する者に関する情

報は、可及的速やかに、当事者によって明らかにされなければならない。仲裁手続に出頭する代理

(27)

17 人に関する情報についての当事者の開示義務は、当該当事者の代理人チームの全てのメンバーに 及び、仲裁手続の開始から生じる。

(c) 当事者は、開示義務を果たすためには、当事者にとって合理的な範囲で収集可能なあらゆる関連

する情報を調査する義務を負う。加えて、仲裁手続のあらゆる当事者は、仲裁手続の開始から手 続全体を通じて継続的に、一般基準を適用すれば仲裁人の公正性又は独立性に影響を与える おそれのある収集可能な情報を確認して開示する合理的な努力を払うことが求められる。

(d) 仲裁人は、本ガイドラインに基づく開示義務を果たすために、自身が合理的に収集可能なあらゆる

関連情報を調査することが求められる。

(28)

18

2 章:一般基準の実際の適用

1. 本ガイドラインが重要な実際上の影響を及ぼすのであれば、今日の仲裁実務において発生する可

能性の高い状況について触れるべきであり、いかなる事情が利益相反事由となるか否か、あるいは いかなる事情が開示されるべきか否かについて、仲裁人、当事者、仲裁機関及び裁判所に具体的 な指針を与えるべきである。そのような見地から、本ガイドラインでは、以下に記載する本適用リスト において、発生する可能性のある事情を分類した。これらのリストは全ての状況を網羅するものでは ない。いかなる場合にも、一般基準によって結論が導かれるべきである。

2. レッド・リストは、「放棄不可能なレッド・リスト」(一般基準 2(d)及び 4(b)参照)及び「放棄可能

なレッド・リスト」(一般基準4(c)参照)の2つの部分から構成される。これらのリストは、網羅的な

ものではなく、事案の事実関係によっては仲裁人の公正性及び独立性について正当な疑いをもたら す具体的な状況、すなわち、関連する事実及び状況に関する知識を有する合理的な第三者の視

点から客観的な利益相反事由が存在する状況(一般基準 2(b)参照)について例示列挙したも

のである。放棄不可能なレッド・リストは、何人も自分自身について裁くことはできないという大原則 から導かれる状況を列挙したものであり、そのような状況が受容されていたとしても利益相反の問題 は治癒されることはできない。放棄可能なレッド・リストは、放棄不可能なレッド・リストに比べ、深刻 とまでは言えないが重大な状況を列挙したものである。その重大性に鑑み、オレンジ・リストに列挙さ れている状況とは異なり、一般基準 4(c)に規定されているように、当事者が利益相反の状況を承

知した上でそのような者に仲裁人として活動して欲しい意向を明示的に表明した場合に限り、放棄

(29)

19 可能とみなされるべきである。

3. オレンジ・リストは、事案の事実関係によっては当事者の視点から仲裁人の公正性又は独立性につ

いて疑いを生じさせるおそれのある具体的な状況を例示列挙したものである。したがって、オレンジ・リ

ストは、一般基準 3(a)に該当するであろう状況を反映しており、その結果として、仲裁人はその状況

を開示する義務を負う。これら全ての状況において、仲裁人による開示後、適時に異議申立てがな

されない場合には、一般基準4(a)により、当事者はこれを承認したものとみなされる。

4. 開示がなされたことは、利益相反事由が存在することを示唆するものではなく、それ自体によって仲

裁人の欠格事由とされる、又は欠格事由を推定させるものとするべきでもない。開示の目的は、仲 裁人の公正性又は独立性についての正当な疑いがあるか否かについて、客観的に、すなわち、関 連する事実及び状況に関する知識を有する合理的な第三者の視点から決定するために、当事者 が更なる調査を希望する可能性のある状況を、当事者に知らせることである。正当な疑いはないと いう結論になれば、その者は仲裁人として活動することができる。放棄不可能なレッド・リストに列挙 されている状況の場合を除き、当事者から適時に異議申立てがなされない場合又は放棄可能なレ

ッド・リストに列挙されている状況において一般基準 4(c)に従った当事者による明示の承認がある場

合にも、同様に仲裁人として活動することができる。当事者が仲裁人の忌避申立てをしたとしても、

その忌避申立てについて判断する権限を有する機関が、その忌避申立ては欠格事由の客観的テス トの要件を満たさないと決定したときは、その者は仲裁人として活動することができる。

5. 仲裁人が当該事実又は状況を開示しなかったことを根拠とする後日の忌避申立ては、非選任、事

(30)

20 後的な欠格又は仲裁判断に対する異議の認容を自動的にもたらすべきではない。開示がなされな かったことそれ自体は、仲裁人が公正性又は独立性を欠くとする理由とすることはできず、仲裁人が 開示を怠った事実又は状況のみが、仲裁人が公正性又は独立性を欠くとする理由となり得る。

6. オレンジ・リストに列挙されていない状況又はオレンジ・リストに列挙されているうちの幾つかに規定の

ある期間制限を徒過した状況にあるものは、一般的には開示義務の対象とはならない。しかし、仲 裁人は、状況に応じてケース・バイ・ケースで、オレンジ・リストに列挙されていない状況であっても、自 身の公正性又は独立性に正当な疑いを生じさせるものであるか、評価する必要がある。なぜなら、

オレンジ・リストは、例示列挙であり、オレンジ・リストに列挙されていなかったとしても、状況に応じて、

仲裁人による開示が必要となる状況もあり得る。そのような状況の例としては、オレンジ・リストに規

定のある 3 年の期間より過去における同一の当事者若しくは代理人からの繰り返しの選任、又は

仲裁人が当該事件における法律問題と類似の法律問題を有する関連しない事案において同時に 代理人を務めていることがあり得よう。同様に、仲裁人が担当している継続中の案件と同一の当事 者又は代理人からの選任も、状況によっては開示されるべきであろう。本ガイドラインにおいては、仲 裁人が現在又は過去において他の仲裁人又は現在の事件の代理人の一人と同一の仲裁廷を構 成したことがあることを開示義務の対象とはしていないが、仲裁廷の他の仲裁人と頻繁に他の仲裁 事件において共に代理人として活動し又は他の仲裁事件において共に仲裁人として活動している 事実が、仲裁廷内の均衡を欠くものと見られる可能性があるかについて、仲裁人はケース・バイ・ケー スで判断するべきである。そのような可能性があると結論づけられる場合には、仲裁人は開示を検

(31)

21 討すべきである。

7. グリーン・リストは、客観的にみて、利益相反事由が存在するような外観が存在せず、実際にも存

在しない具体的な状況の非網羅的なリストである。したがって、仲裁人は、グリーン・リストに該当す

る状況を開示する義務はない。一般基準 3(a)の解説で既に述べたとおり、開示は合理性に基づい

て限定されるべきであり、状況によっては、客観的テストは、「当事者の視点」による全くの主観的テ ストより優先されるべきである。

8. 各リストに列挙されている事項の分類の境界線は微妙なものもあり、ある特定の状況があるリストで

はなく、別のリストに記載されるべきであるとの議論はあり得る。また、各リストは、様々な状況につい て、「重大な」及び「関連する」という一般的な用語を含んでいる。各リストは、国際原則及び最善 の実務を可能な限り反映したものであり、各事案の事実や状況に即して合理的に解釈されるべき 規範をこれ以上さらに定義することは、非生産的であろう。

1. 放棄不可能なレッド・リスト

1.1. 当事者と仲裁人とが同一であり、又は仲裁人が仲裁において当事者である法人の代表者若し

くは従業員である。

1.2. 仲裁人が、一方の当事者若しくは仲裁手続において下される判断に直接の経済的利益を有す

る組織の管理職、役員若しくは監督機関の構成員である又は当該これらに支配的な影響力を 有している。

(32)

22

1.3. 仲裁人が、一方の当事者又は事件の結果について、重大な財務的又は個人的な利害関係を

有している。

1.4. 仲裁人又はその所属する法律事務所が、当事者又は当事者の関係会社に対して定期的に助

言しており、仲裁人又はその法律事務所がこれにより重大な財務上の収入を得ている。

2. 放棄可能なレッド・リスト

2.1. 仲裁人と紛争との関係

2.1.1. 仲裁人が、一方の当事者又はその関係会社に対して、当該紛争について法的な助言を行

った、又は専門家証人としての意見を提供したことがある。

2.1.2. 仲裁人が、以前に当該事件に関わったことがある。

2.2. 仲裁人の当該紛争への直接又は間接の利害関係

2.2.1. 仲裁人が、持分が公開されていない一方の当事者又はその関係会社の持分を、直接又は

間接に保有している。

2.2.2. 仲裁人の近親者3が、紛争の結果に重大な財務上の利害を有している。

2.2.3. 仲裁人又はその近親者が、紛争に敗れた当事者側に補償責任を負う可能性がある当事

者ではない者との間に、親密な関係を有している。

3 本適用リストを通じて、「近親者」とは、配偶者、兄弟姉妹、子、親又は生涯のパートナーその他近しい関係のある 家族をいう。

(33)

23

2.3. 仲裁人と当事者又は代理人との関係

2.3.1. 仲裁人が、現在、一方の当事者若しくはその関係会社を代理している又はこれらに助言し

ている。

2.3.2. 仲裁人が、現在、一方の当事者の代理人である弁護士若しくは法律事務所を代理してい

る又はこれらに助言している。

2.3.3. 仲裁人が、一方の当事者の代理人と同じ法律事務所の弁護士である。

2.3.4. 一方の当事者の関係会社 4が仲裁において紛争となっている事項に直接に関係している場

合において、仲裁人が、当該関係会社の管理職、役員若しくは監督機関の構成員である 又はこれに支配的な影響力を有している。

2.3.5. 仲裁人の法律事務所が、過去において当該事件に関与したが、その関与は終了していて、

仲裁人自身はこれに関与したことがない。

2.3.6. 仲裁人の法律事務所が、現在、一方の当事者又はその関係会社との間で、重大な商業

上の関係を有している。

2.3.7. 仲裁人が、一方の当事者又はその関係会社に対して、定期的に助言をしているが、仲裁人

及びその法律事務所が、これによって重大な財務上の収入を得ているわけではない。

2.3.8. 仲裁人が、一方の当事者、一方の当事者若しくはその関係会社の管理職、役員若しくは

4 本適用リストを通じて、「関係会社」とは、親会社を含む企業集団を構成する全ての会社をいう。

(34)

24 監督機関の構成員である者若しくはこれらに支配的な影響力を有する者、又は当事者の 代理人の近親者である。

2.3.9. 仲裁人の近親者が、一方の当事者又はその関係会社について、重大な財務上又は個人

的な利害関係を有している。

3. オレンジ・リスト

3.1. 過去における当該事件における一方の当事者への役務提供又はその他の関わり

3.1.1. 仲裁人が、過去 3年以内に、選任しようとする当事者の一方とは無関係な事件につき、当

該一方の当事者若しくはその関係会社の代理人を務め、又は当該当事者若しくはその関 係会社に助言し若しくはこれらから相談を受けたが、仲裁人及び当該当事者又はその関係 会社は現在継続する関係を有していない。

3.1.2. 仲裁人が、過去3年以内に、無関係な事件につき、一方の当事者又はその関係会社の相

手方の代理人を務めた。

3.1.3. 仲裁人が、過去3年以内に、一方の当事者又はその関係会社から、2回以上仲裁人に選

任された5

3.1.4. 仲裁人の法律事務所が、過去 3 年以内に、無関係な事件につき、当該仲裁人が関与す

5 例えば海事仲裁、スポーツ仲裁又は商品取引仲裁のように、仲裁事件の種類によっては、少人数又は専門家の 集団の中から仲裁人を選任するのが実務上の取扱いとなっているものもある。そのような分野において、当事者が異 なる事件において同一の仲裁人を頻繁に選任することが実務慣行となっているのであれば、当該仲裁における全て の当事者がかかる実務慣行に親しんでいるであろうから、かかる事実の開示は不要である。

(35)

25 ることなく、一方の当事者若しくはその関係会社のため又はこれらの相手方のために活動し た。

3.1.5. 仲裁人が、一方の当事者又はその関係会社が関与する関連事項についての別の仲裁の仲

裁人を、現在務めている又は過去3年以内に務めた。

3.2. 一方の当事者への現在の役務提供

3.2.1. 仲裁人の法律事務所が、現在、その法律事務所との重大な商業上の関係を構築すること

なく、かつ当該仲裁人が関与することなく、一方の当事者又はその関係会社に役務を提供 している。

3.2.2. 仲裁人の法律事務所と多額の報酬その他の収入を分配し合っている法律事務所又はその

他の法律組織が、仲裁廷に係属する紛争の一方の当事者又はその関係会社に役務を提 供している。

3.2.3. 仲裁人又はその法律事務所が、定期的に仲裁の一方の当事者又はその関係会社を代理

しているが、現在の紛争には関与していない。

3.3. 仲裁人と他の仲裁人又は代理人との関係

3.3.1. 仲裁人と他の仲裁人とが、同じ法律事務所の弁護士である。

3.3.2. 仲裁人と他の仲裁人又は一方の当事者の代理人とが、同じバリスターのチェンバースの構成

員である。

(36)

26

3.3.3. 仲裁人が、過去 3 年以内に、当該仲裁における他の仲裁人又はいずれかの代理人と、共

同事業者その他提携関係にあった。

3.3.4. 仲裁人の法律事務所の弁護士が、一方の当事者、両当事者又は一方の当事者の関係

会社が関与する別の紛争の仲裁人である。

3.3.5. 仲裁人の近親者が、一方の当事者を代理している法律事務所の共同事業者又は従業員

であるが、当該紛争を補助していない。

3.3.6. 仲裁人と当事者の代理人の間に密接な個人的友好関係が存在している。

3.3.7. 仲裁人と当該仲裁に出頭する代理人との間に反目関係が存在している。

3.3.8. 仲裁人が、過去3年以内に、同じ代理人又は法律事務所から、4回以上選任された。

3.3.9. 仲裁人と当該仲裁における他の仲裁人又は一方の当事者の代理人が、現在又は過去 3

年以内に、共同代理人として活動した。

3.4. 仲裁人と仲裁の当事者及び他の関係者との関係

3.4.1. 仲裁人の法律事務所が、現在、一方の当事者又はその関係会社の相手方の側で活動し

ている。

3.4.2. 仲裁人が、例えば元従業員又は共同事業者等の専門家としての資格において、一方の当

事者又はその関係会社と関係を有していた。

3.4.3. 仲裁人と、一方の当事者の管理職、役員若しくは監督機関の構成員である者、仲裁手続

において下される判断に直接の経済的利益を有する団体、例えば支配株主のように一方の

(37)

27 当事者若しくはその関係会社に対して支配的な影響力を有する者、又は事実証人若しく は専門家証人との間に、密接な個人的友好関係が存在している。

3.4.4. 仲裁人と、一方の当事者の管理職、役員若しくは監督機関の構成員である者、仲裁手続

において下される判断に直接の経済的利益を有する団体、一方の当事者若しくはその関係 会社に対して支配的な影響力を有する者、又は事実証人若しくは専門家証人との間に、

反目関係が存在している。

3.4.5. 仲裁人が元裁判官である場合において、過去3年以内に、一方の当事者又はその関係会

社に関連する重大な事件を審理した。

3.5. その他の状況

3.5.1. 仲裁人が、上場されている一方の当事者又はその関係会社の株式を、数又は額面からみ

て重要な程度に、直接又は間接に保有している。

3.5.2. 仲裁人が、当該事件に関して、刊行物、講演その他手段を問わず、公に立場を表明した。

3.5.3. 仲裁人が、当該紛争につき仲裁人を選任する権限を有する機関において、一定の役職を

有している。

3.5.4. 一方の当事者の関係会社が仲裁において紛争となっている事項に直接に関係していない場

合において、仲裁人が、当該関係会社の管理職、役員若しくは監督機関の構成員である、

又はこれに支配的な影響力を有している。

(38)

28

4. グリーン・リスト

4.1. 過去に表明した法律意見

4.1.1. 仲裁人が、過去に、(例えば法律雑誌の記事又は講演等において)当該仲裁事件にお

いても生じる問題に関する法的見解を表明した(しかし、その見解は当該事件に焦点を合 わせたものではない)。

4.2. 現在における一方の当事者のための役務提供

4.2.1. 仲裁人の法律事務所と提携関係又は協力関係にあるが、多額の報酬又は収入を分配し

合っていない法律事務所が、無関係な事件につき、一方の当事者又はその関係会社に役 務を提供している。

4.3. 他の仲裁人又は一方の当事者の代理人との接触

4.3.1. 仲裁人が、他の仲裁人又は一方の当事者の代理人と、同じ専門家団体、社会的団体若

しくは慈善団体のメンバーシップを通じて、又はソーシャル・メディア・ネットワークを介して、関係 を有している。

4.3.2. 仲裁人と一方の当事者の代理人とが、過去に、共に仲裁人を務めた。

4.3.3. 仲裁人が、他の仲裁人若しくは一方の当事者の代理人と同じ学部若しくは学校で教鞭を

とっている、又は専門家団体、社会的団体若しくは慈善団体の役員を他の仲裁人若しくは 一方の当事者の代理人と共に務めている。

(39)

29

4.3.4. 仲裁人が他の仲裁人又は一方の当事者の代理人と共に、一つ若しくは複数の会議におい

て、講演者、司会者若しくは企画者を務め、又はセミナー、専門家団体、社会団体若しくは 慈善団体の作業部会に参加した。

4.4. 仲裁人と一方の当事者との接触

4.4.1. 仲裁人が、選任の前に、当事者又はその関係会社(若しくはこれらの代理人)と最初の

接触をしたが、当該接触は当該仲裁人の繁忙状況及び受任資格の確認又は仲裁廷の長 の候補者の氏名に限定され、当該事案の基礎的な理解を仲裁人に提供することを超えて、

紛争の本案又は手続の情報については言及していない。

4.4.2. 仲裁人が、上場されている一方の当事者又はその関係会社について、重大とはいえない量

の株式を保有している。

4.4.3. 仲裁人が、一方の当事者若しくは関係会社の管理職、役員若しくは監督機関の構成員で

ある者又はこれらに支配的な影響力を有する者と、共同の専門家証人として働いたことがあ る又は同一事件の仲裁人を含む他の専門家としての知見に基づき働いたことがある。

4.4.4. 仲裁人が、一方の当事者又はその関係会社と、ソーシャル・メディア・ネットワークを介して関

係を有している。

(40)

30

[翻訳者註]公益社団法人日本仲裁人協会・翻訳プロジェクトメンバー

[Translator's Note]Project Members of the Japan Association of Arbitrators (JAA)

井上葵Aoi Inoue

加藤啓 Kei Kato

河端雄太郎Yutaro Kawabata

小枝未優 Mihiro Koeda 小原淳見 Yoshimi Ohara 塩川真紀 Maki Shiokawa 白山裕美子 Yumiko Shirayama

鈴木毅(プロジェクトリーダー) Tsuyoshi Suzuki, Project Leader

手塚裕之(担当理事) Hiroyuki Tezuka, Director Responsible for Project

(アルファベット順 Alphabetical Order)

この日本語訳は、日本仲裁人協会が 2007年 1 月に作成した、国際仲裁における利益相反に関する

IBAガイドライン2004年版の日本語訳をベースにして作成されました。

This translation was prepared based on the translation of IBA Guidelines on Conflicts of Interest in International Arbitration 2004, which was prepared by the Japan Association of Arbitrators in January 2007.

参照

関連したドキュメント

* Department of Mathematical Science, School of Fundamental Science and Engineering, Waseda University, 3‐4‐1 Okubo, Shinjuku, Tokyo 169‐8555, Japan... \mathrm{e}

The exporter of the products covered by this document(Exporter Reference No XXXXXXX) declares that, except where otherwise clearly indicated, these products are of the European

54 Zero Emission Tokyo 2020 Update & Report Zero Emission Tokyo 2020 Update & Report 55

Customs ( Regional Headquarters ) ( Hakodate, Tokyo, Yokohama, Nagoya, Osaka, Kobe, Moji, Nagasaki, Okinawa ) ( 9 ).. Branch offices ( 68 ) ( 106 ) Customs guard posts (

(4S) Package ID Vendor ID and packing list number (K) Transit ID Customer's purchase order number (P) Customer Prod ID Customer Part Number. (1P)

I have been visiting The Nippon Foundation, Kashiwa Company, Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA), Ariake Water Reclamation Center, Tokyo University of Marine Science and

Building on the achievements of the Tokyo Climate Change Strategy so far, the Tokyo Metropolitan Government (TMG) is working with a variety of stakeholders in

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”