日
本
語
私
辞
典
いつもの朝、いつもの挨拶をして、いつもの人達に会って、いつものように笑って、いつものように寝る。
そうやっていつも当り前にある物や人が突然消えてしまった。…そんなこともいつもある。
それも日常ならば、当り前に「私」だと思っていた「私」が突然「私」ではなくなってしまう事だってあるだろう。
そうなると失って初めて気づく「私」には、さて、誰がいつ気付くのでしょう?
1
『日 本語 私辞 典』
平塚 直隆 登場 人物 役者 1 役者 2 役者 3 役者 4 役者 5 役者 6 役者 7 役者 8 役者 9 舞台 正面 の壁 には 白い 紙が 一面 に張 られ てい る。 役者 たち が出 てく る。 ひと りの 役者 が思 い出 した よう に、 役者 1 あ。 愛。 と言 うと
、白 い紙 に五 十音
(濁 音・ 半濁 音含 め) を墨 で書 いて 行く
。 役者 2 一生
。 役者 3 上。 役者 4 笑顔
。 役者 5 丘。 役者 6 牡蠣
。 役者 7 菊。 役者 8 口づ け。 役者 9 稽古
。 役者 2 コウ モリ 傘。 役者 3 サギ 師。 役者 4 白州
。 役者 5
…す
、… 水道 橋博 士! 役者 6 清楚
。 役者 7 ソナ タ。 役者 8 太鼓 持ち
。 役者 9 地下 鉄。 役者 2 通勤 手当
。 役者 3 テン ト。 役者 4 虎の 穴。 役者 5 ナイ ルワ ニ。 役者 6
…に
、… に、 二千 円… の犬
…。 役者 7
…盗 んだ お金
…。 役者 8 ねり もの
。 役者 9 脳波
。 役者 2 母の 日。
2
役者 3 皮膚
。 役者 4 故郷 は八 戸。 役者 5
…変 な逮 捕。 役者 6 ホッ キョ クグ マ。 役者 7 松の 実。 役者 8 ミニ マム
。 役者 9 娘。 役者 2 メモ
。 役者 3 靄。 役者 4 揶揄
。 役者 5 猶予
。 役者 6 夜空
。 役者 7 ラビ オリ
。 役者 8 リー ル。 役者 9 ルチ ャリ ブレ
。 役者 2 レト ロ。 役者 3 ロッ キー
、第 二話
。 役者 4 ワン コイ ン。 皆
…。 皆、 役者 5を 残し て去 る。 役者 5
「私
」は
、私 にと って
「私
」で あっ て、 他の 人が 私の 事を
「私
」と 言う 事は あり ませ ん。 同様 に「 私」 も、 他の 人 の事 を「 私」 と呼 ぶこ とは ない です
。稀 にち ょっ と偉 そう で初 対面 のお じさ んな んか が「 おい
、そ この 私」 と言 う事 は あり ます が… 役者 3 おい
、そ この 私。 役者 5
…私 です か? 役者 3 私は どう 思う んだ
? 役者 5 いや
、あ なた がど う思 うか はわ かり ませ ん。 役者 3 私じ ゃな い、 君だ
。 役者 5
…あ
、私 です か? 役者 3 うん
、だ から そう 言っ てる じゃ ない か。 役者 1 あ、
「私
」っ て、 もし かし て私 の事 です か? 役者 3 いや 君の 事じ ゃな い。 役者 1 私も 私な んで すけ ど。 役者 5 私も 私で す。 役者 3 もう いい 分か った ごめ ん。 役者 5 とい うよ うに
、な んだ かや やこ しい こと にな って しま うの で世 の中 のち ょっ と偉 そう で初 対面 のお じさ んは そう い う呼 び方 は止 めた 方が いい と思 いま す。 仮に この 世界 から
「た
」と いう 文字 が消 えて しま った 場合
、そ の言 葉の 概念 を も消 えて しま った とし たら
「私
」は
、そ の途 端「 わし
」と なっ て、
「わ し」 は普 通男 性の 呼び 方だ から
「私
」は もう 女性 では なく なっ てし まう ので
…、 役者 9 はい
、お じい ちゃ ん、 お茶
。 役者 5
(腰 を曲 げ) おー
、す まん のお
。 役者 9 ねえ おじ いち ゃん は、 いつ から おじ いち ゃん なの
? 役者 5 おじ いち ゃん はな あ、 お前 が産 まれ た時 から おじ いち ゃん にな った んじ ゃ。
3
役者 9 じゃ あお じい ちゃ んは
、お じい ちゃ んに なる 前は なん だっ たの
? 役者 5 おじ いち ゃん にな る前 か? なる 前は 女じ ゃ。 役者 9 女で もお じい ちゃ んに なれ るの
? 役者 5
(背 すじ を伸 ばし
)私 はお ばあ ちゃ んな らと もか く、 おじ いち ゃん には なり たく はな い。 あ! でも おじ いち ゃん の 事は 好き です よ、 私の
、は い。 えー
、な ので この 世の 中か ら「 た」 とい う文 字が 無く なっ た場 合「 私」 は「 私」 の事 を 役者 6 自分 はっ すね
。 役者 5 とか
、 役者 6 ウチ なあ
、 役者 5 とか
、 役者 6 あち きは
、 役者 5 とか
、 役者 6 ミー
? 役者 5 とか 言わ なけ れば なら なく なり ます
。し かし この 場合 呼び 方に よっ てキ ャラ クタ ーが どう して も変 化し てし まう の が嘆 かわ しい とこ ろで はあ りま すね
。 役者 6
(う なづ く)
…。 役者 5
「私
」は
、「 私」 にと って
「私
」と いう 存在 であ りま すが
、 役者 7、 隣に やっ てく る。 役者 5
「彼
」が 隣に 居た ら、
「私
」は
「彼 女」 とか
「恋 人」 と呼 ばれ る存 在に 変わ りま す。
「彼
」も 自分 の事 を「 私」 とか
「僕
」と か呼 ぶけ ど、 私か ら見 たら
「彼
」は
「好 きな 人」 とか
、「 大切 な人
」と か、 そう いう 存在 にな りま す。 役者 7
「僕
」は
、話 す人 によ って
「僕
」で はな くな る。 後輩 と喋 ると きは
「俺
」に なり
、上 司と 喋る 時は
「私
」と いう も のに なる
。し かし なが ら今 まで 生き てき て、
「拙 者」 とい う存 在に は一 度も なっ た事 はな い。
「俺
」、
「僕
」、
「私
」、 たい て いこ の三 つの うち のど れか の存 在に なっ てい る。 たま に彼 女の 前で 甘え たり なん かし たり する 場合 には
「僕 ちん
」、 など とい う存 在に もな った りも する が、 そう いう 場合 は「 彼女
」も
、 役者 8 おー
、ヨ チヨ チ。 役者 7 なん てい う変 なキ ャラ クタ ーに なっ てい る場 合が 多い
。 役者 5、 ゆっ くり と役 者7 を見 る。 役者 7、 役者 5を 見て
、や やあ って 視線 を戻 す。 役者 8、 ゆっ くり と役 者7 を見 る。 役者 7、 役者 8を 見て
、や やあ って 視線 を戻 す。 両側 から 目を 向け られ てい る恰 好の 役者 7。 役者 7 僕は 今、
「絶 対絶 命」 とい う存 在に なり まし た。 役者 4
「絶 体絶 命の 存在
」、 とい うと ブル ース
・ウ ィリ スの よう なか っこ いい 人物 像を イメ ージ して しま うの でや めて 頂 きた い。 役者 7 すい ませ ん。 役者 4
「こ の男
」は そん なか っこ いい 存在 では なく て、 ただ の「 二股 男」 であ る。 役者 7 僕は 今、
「二 股男
」と いう 存在 です
。 役者 5・ 8 彼は 今、
「二 股男
」と いう 存在 です
(前 を向 く)
。 役者 4 この
「二 股男
」を 助け るに は、 この 世界 から 仮に なん の文 字が 消え たら いい か、 皆さ んも 一緒 に考 えて みて くだ さ い。 役者 5 考え なく ても いい です
、時 間の 無駄 です から
。 役者 4 了解 しま した
。そ れで は仮 に、 この 世界 から
「ま
」と いう 文字 を消 して みま しょ う。 する と「 二股 男」 は、
「ふ た
4
た男
」に なり ます
。 役者 7 僕は 今、
「ふ たた 男」 とい う存 在で す。 役者 5
「ふ たた 男」
? 役者 4 これ で彼 は救 われ まし た。 役者 8
「ふ たた 男」 って なん です の? 役者 4 なん にで もふ たを する 男で す。 役者 7 よお ーし
、じ ゃあ とり あえ ず三 人で 鍋で もし よう か! 俺は ふた た男
、ふ たの 事は 任せ てく れ! 役者 4
「臭 いも のに は蓋 をす る」
、と いう 言葉 は、 臭い もの をそ のま まに
、蓋 をし てや り過 ごす
、つ まり
、「 その 場し のぎ をす る」
、と いう 意味 です
。 役者 5と 役者 8、 また 役者 7を 見る
。 役者 7 どう しま しょ う、 事態 は悪 化し てし まい まし た。 役者 2 それ では 私が 彼の 弁護 をし てみ まし ょう
。 役者 4 よろ しく お願 いし ます
。 役者 7 助か りま す。 役者 2 皆さ んか ら見 れば
、「 ふた た男
」は 最低 の男 に映 るか もし れま せん が、 家に 帰れ ば「 大黒 柱」
、そ して 私に とっ ては
「良 き夫
」と いう 存在 に変 わり ます
。お 帰り なさ い。 役者 5と 役者 8、 また 役者 7を 見る
。 役者 7
…ど うし まし ょう
、事 態は ます ます 悪化 の一 途を 辿っ てお りま す。 弁護 をし て下 さい
。 役者 9 お父 さん
! 役者 2 そし て「 夫」 はこ の子 から 見れ ば、
「お 父さ ん」 とい う存 在に 変わ りま した
。 役者 7 これ はも う収 拾不 可能 な状 況で す。 役者 3 お父 さん
! 役者 2 そし て「 二児 の父
」に なり まし た。 役者 7 それ では 私は この 辺で
。 役者 7、 逃げ るよ うに 去る
。 役者 2 これ であ の人 は「 逃亡 者」 とい う存 在に なり
、私 は「 バツ イチ
」と いう 存在 にな りま した
。こ のよ うに
、見 る角 度 が違 えば
、「 私」 は「 私」
、と いう 存在 だけ でな く、
「二 児の 母」 や、
「不 幸な 女」
、逆 に「 幸福 な女
」、 とい う存 在で もあ る訳 です 音 。 楽。 役者 2 では
「私
」と はな んな のか
…私 が私 であ ると いう 証拠 はど こに ある のか
(去 る)
。 以下 ひと りづ つ出 て来 て、 去っ てい く。 役者 4
「私
」は
、「 女」 です
。 役者 6
「私
」は
、「 娘」 です
。 役者 7
「僕
」は
、「 フリ ータ ー」 です
。 役者 5
「私
」は
、「 おね えち ゃん
」で ある
。
5
役者 9
「僕
」は
、「 役者
」で す。 役者 8
「私
」は
、「 まじ めな 人」 であ る。 役者 3
「私
」は
、「 おじ さん
」で ある
。 役者 1
「私
」は
、「 人間
」で ある
。 役者 2
「私
」は
、「 生き てい る」
。 役者 2、 手に は辞 書を 持っ てい る。 役者 2 神は 六日 で天 地を 創造 した らし いの です が、 これ は六 日で 私の 世界 が消 えて いく お話 です
。だ とす ると 七日 目は
、 明日 の為 の休 日に なり ます ね。 役者 2、 辞書 を役 者5 に渡 して 去る
。 目覚 まし 時計 の音
。
【一 日目
】 役者 5 おは よう ござ いま す。 朝で す。 目が 覚め ると 私は
、「 私」 であ る事 を無 意識 のう ちに 確認 しま す。 そし て顔 を洗 い、 歯を 磨き
、私 は「 私」 であ る事 を実 感し ます
。 役者 9 おは よう
。 役者 9、 椅子 を持 って 来て 腰掛 ける
。 新聞 を読 んで いる
。 役者 5 おは よう
。こ の人 は、
「お 父さ ん」 であ る。
「お 父さ ん」 を見 て、 私は
「娘
」で ある 事を 確認 する
。 役者 4 おは よう
。 役者 4、 食卓 の準 備。 役者 5 おは よう
。こ の人 は「 お母 さん
」。 これ で私 は、
「家 族の 一員
」で ある こと を確 認す る。 役者 4 はい
、ご 飯出 来た わよ
。 役者 5 いた だき まー す。 御飯
、納 豆、 焼き 魚、 おし んこ
、味 噌汁
。旅 館の 様な 朝ご 飯で ある
。お 父さ んは
、塩 鮭が 大好 物 であ る。 役者 9 うん
、お 父さ んは な、 塩鮭 があ れば
、ご 飯何 杯で も食 べら れる
。 役者 5 とい うの が口 癖で ある が、 たい てい 二杯 しか 食べ ない
。 役者 4 お母 さん ね、 わか らな い事 があ るの
。 役者 9 お、 どう した
? 役者 4 この 魚は
、「 しゃ け」 なの か「 さけ
」な のか
、ど っち なの
?「 さけ
」が 正式 名称 だと 思っ てた んだ けど ワー プロ で
「し ゃけ
」と 打っ ても ちゃ んと 漢字 に変 換さ れる のよ
。 役者 9 なる ほど な、 携帯 でも 変換 され るか い? 役者 4 やっ てみ て、 役者 9 うん
。 役者 5 朝か らホ ント
、ど うで もい い会 話で ある
。し かし こん など うで もい い会 話が 出来 る夫 婦っ てい いな あ、 と少 しほ っ こり した 気分 にな る。 役者 9 おお ー、 変換 され るね え。 役者 4 でし ょ。 ねえ
、ど っち が正 しい の? 役者 9 うー ん、 そお だな あ、
6
役者 5 行っ てき まー す。 役者 9と 役者 4、 去る
。 役者 5
「私
」は 家を 出る と「 いつ もの 道」 を歩 く。 これ で私 は「 娘で ある 私」 から
(役 者8 に辞 書を 渡し て去 る)
、 役者 8
「登 校す る私
」に なる
。だ がこ の場 合気 をつ けな けれ ばな らな いの は、 私は 必ず 制服 を着 て、 明ら かに
「登 校し て いる
」、 とい う歩 き方 をし なけ れば なら ない こと だ。 そう でな いと 私は ただ の「 歩い てい る人
」に なっ てし まう から で、 役者 1、 やっ てき て、 役者 1 おは よう
。 役者 8
…お はよ うご ざい ます
。 役者 1、 去る
。 役者 8
…今 の人 は毎 朝私 に挨 拶し てく るが
、誰 なの かわ から ない
。気 持悪 いが 無視 する と余 計怖 いの で一 応挨 拶だ けは し てい る。 役者 2、 やっ てき て、 役者 2 おい っす ー。 役者 8 おは よう
。 役者 2 なあ なあ
、明 日の 数学
、勉 強し とる
? 役者 8 この 人は 友人 の「 カナ コ」 であ る。 役者 2 もう ウチ
、数 学諦 めた わ、 もう ええ
。 役者 8 とか 言う 奴に 限っ て、 役者 2 うっ わー
、9 0点 も取 れと った
、全 然勉 強し てへ んの に。 役者 8 とか 言う ので ある
。 学校 のチ ャイ ム。 他の 生徒 達も やっ てく る。 役者 8
「登 校す る私
」は 学校 に着 いて しま えば
、 役者 6
(辞 書を 受け 取り
)「 登校 して しま った 私」 とな る。 同時 に「 高校 生で ある 私」 とな る訳 だが
、じ ゃあ 普段 は高 校 生で はな いの かと いう とそ うで はな い。 そう では ない が、 制服 を着 てい ない
「私
」は 私以 外の 人か ら見 たら
「高 校生 か もし れな い人
」と いう レベ ルで しか ない 訳で
、 役者 2 何独 りで 喋っ てん ねん
。 役者 6
「カ ナコ
」は こう 見え て「 学級 委員
」で ある
。 役者 2 次、 世界 史じ ゃん ねえ
、も ーイ ヤや わあ
。 役者 6 世界 史も 諦め たの
? 役者 2 ちゃ うち ゃう
、世 界史 がヤ って 訳や ない ねん
、世 界史 の花 田、 あい つ答 案配 る時 ツバ つけ るや ん、 もう あれ ホン ト 止め て欲 しい わ。 あの 答案 配ら れて くる だけ でや る気 無く す。 役者 9、 やっ て来 て、
7
役者 9 ガラ ガラ
。 役者 2 わ、 来た
…。 起立
、礼
、着 席。 生徒 達、 椅子 に座 る。 役者 9 えー
、今 から やる 世界 史の テス トな んで すけ ど、 えー 一つ ミス プリ があ りま して
「問 5」 の問 題な んで すが
、こ れ 問題 じゃ なく て答 えが 書か れて あり ます
。 生徒 達、
「え ー、 やっ たー
」な ど小 さく 声を 上げ る。 役者 9 なの で、 この 答え が導 き出 され る問 題を 書い て下 さい
。 生徒 達「 えー
?」 役者 9 いや いや いや
、こ れは こち らの ミス なの で、 好き なよ うに 考え て貰 って 構わ ない んで すよ
。例 えば イギ リス とい う 答え なら ば、
「四 文字 のカ タカ ナを 書き なさ い」 みた いな ね。 生徒 達「 わー い、 やっ たー
」と か喜 びの 声。 役者 9 じゃ あ答 案配 りま ーす
。 役者 9、 指を 舐め なが ら、 答案 を一 枚一 枚配 って 行く
。 うな だれ る生 徒達
。 役者 6 カナ コと 話を する んじ ゃな かっ た、 そん な事 言わ れた ら私 まで 気に して しま うじ ゃな いか
。 役者 9 はい
、じ ゃあ 始め
!は い、 終わ り! 答案 回収 しま す。 役者 9、 指を 舐め なが ら、 答案 を一 枚一 枚回 収し てい く。 役者 2 起立
、 役者 9 えー
、明 日は 数学 の鈴 木先 生の テス トで す。 みん なち ゃん と勉 強し てお くよ うに
。 役者 2 礼。 役者 9、 去る
。 役者 7 ちょ っと みん ない い? 自分
、今 まで みん なに 黙っ てた 事が ある んだ けど
、 他の 生徒 達、
「な に?
」と 顔を 向け る。 役者 7 実は 自分
、「 海賊
」な んだ
。だ から 自分 の夢 は「 海賊 王」 にな るこ と。 もう すぐ 夏休 みじ ゃん ね、 そし たら 自分
、 海に 出る んで
、も しか した らそ のま ま帰 って 来な いか もし れな い。 そう いう 訳な んで
、み んな 今ま であ りが とう
。 他
…。 ぞろ ぞろ と帰 って いく 生徒 達。
8
役者 6 当た り前 のこ とか もし れな いが
、私 以外 の人 は皆
、「 私」 では ない
。し かし
「私
」で はな い人 達の 中に も「 私」 と いう 世界 があ り、 そこ には
「私
」に は計 り知 れな い問 題を それ ぞれ 抱え てい る訳 でし て、 役者 6、 役者 4に 辞書 を渡 して 去る
。 役者 4 ユキ オ、 海賊 だっ たの
? 役者 7 うん
、今 まで 黙っ てて ごめ ん。 役者 4 うう ん…
。 役者 7 ほら 自分
、見 た感 じ海 賊ら しく ない じゃ んね
。だ から 信じ て貰 える 訳な いと 思っ てた んだ けど 良か った
、信 じて 貰 えて
。 役者 4 海賊 らし いの はま ずい と思 うよ
。 役者 7 え? 役者 4 あ、 うう ん。 気を つけ てね
。 役者 7 あり がと う。 役者 7、 去る
。 役者 4
「ユ キオ
」は
、「 海賊
」だ った
。私 のク ラス には
「海 賊」 が居 た。 役者 8、 やっ てき てテ ーブ ルを 拭く 仕草
。 役者 8 あり がと うご ざい まし たあ
。 役者 4
「私
」は 夜に なる と「 居酒 屋の 店員
」に なる
。あ りが とう ござ いま した あ。 役者 8 なん で海 賊が 居る んだ て。 役者 4 自分 で言 った んで す。
「自 分は 海賊
」な んだ って
。 役者 8 ワン ピー スの 読み 過ぎ なん だよ その 子。 だい たい 海賊 が自 分の 事海 賊な んて 言う 訳ね えじ ゃん
。海 賊っ ての は悪 い 人な んだ から ね。 最近 海賊 ブー ムな のか 知ら んけ ど、 なん か勘 違い しと るよ ね皆
。 役者 4 でも 海賊 って かっ こ良 いイ メー ジで すよ ね。 役者 8 じゃ あ山 賊の 立場 はど うな んの
? 役者 8、 表の
「ゆ
」と
「よ
」の 空白 の部 分に 手を 突っ 込ん で鎖 鎌を 取り 出す
。 役者 4 店長 ー、 ここ に山 賊が 居ま す。 警察 呼ん で下 さい
。 役者 8 冗談 冗談
(仕 舞う
)。 役者 4 そう です よね え、 町に はそ うい う類 の賊 居ま せん よね
。 役者 3、 やっ てき て、 役者 3 どう した
? 役者 8 あ、 なん でも ない でー す。 役者 3 あ、 もう こん な時 間だ
。上 がっ てい いよ
。 役者 8 お疲 れ様 でし たー
。 役者 8、 去る
。
9
役者 4 お疲 れ様 でし たー
。 役者 3 もう 遅い から
、気 をつ けて な。 役者 4 はい
。( 歩き なが ら) 私は 居酒 屋の 制服 を脱 いで 外に 出る と、
「夜 遅く まで ほっ つき 歩い てい る女
」と なる
。
「私
」達
(辞 書を 互い にリ レー しな がら
)し かし それ では おま わり さん に声 を掛 けら れて しま うの で私 は極 力「 バイ ト帰 りの 帰宅 する 私」 を装 って 歩く 事を 心が けて いる
。そ うで ない と「 君は 今か らど こに 行く んだ
?」 とお まわ りさ んか ら 声を 掛け られ てし まう のだ が、 しか しお まわ りさ んに して も制 服を 着て いな けれ ばお まわ りさ んだ とは 判ら ない 訳だ し、 おま わり さん とは わか らな い男 の人 から 声を 掛け られ たら それ は「 不審 者」 とな る訳 で、 役者 5 不審 者と 言え ば、 朝挨 拶し てく る「 あの 男」 だ。 私は 最近
、一 人で 歩い てい ると
「あ の男
」の 事が 頭を よぎ って し かた がな い。 だか らバ イト 帰り は「 いつ もの 道」 を歩 かな い事 にし てい る。 だけ ど今 日は 役者 1 やあ
、こ んば んは
。 役者 5 こ、 こん ばん は…
。 役者 1 偶然 です ね、 こん な時 間に
。 役者 5 どう も…
。 役者 1、 去る
。 役者 5 変え た道 でも 会っ てし まっ た…
。 役者 5、 役者 2に 辞書 を渡 して 去る
。 役者 2は
、役 者6 と電 話で 話し てい る。 役者 6 それ スト ーカ ーだ よ絶 対。 役者 2 やっ ぱり そう かな あ…
。 役者 6 お父 さん とか に相 談し てみ た? 役者 2 うん
、帰 って すぐ 言お うと 思っ たん だけ ど… 役者 9と 4、 紙の 裏に シル エッ トで 現れ て、 役者 9 そう か、 昔の 人は
「さ しす せそ
」の 発音 が苦 手だ った から
「シ ャケ
」と 呼ん でい たん だな
。 役者 4 でも
、身 が裂 け易 いか ら、
「サ ケ」 と言 うん じゃ ない の? 役者 9 うん
、そ れは どう も違 うみ たい なん だよ
。 役者 4 そう なの
?
**
* 役者 2 朝の シャ ケの 事を 夜に なっ ても 話し てた から 言い 出し にく くて
。 役者 6 何か あっ てか らじ ゃ遅 いん だか らね
。 役者 2 そう だね
…。 役者 6、 去る
。 役者 2 そこ で私 は、 私の 辞書 から
「す
」と いう 文字 を消 した
。こ れで 明日 から 大丈 夫! 役者 2、 辞書 を閉 じた
。 音楽
。
10
巨大 な五 十音 表か ら「 す」 の文 字が 切り 抜か れ、 ハラ リと 落ち る。 役者
5や って きて
、役 者2 から 辞書 を受 け取 る。 目覚 まし 時計 の音
。
【二 日目
】 役者 5 おは よう
!今 日も 一日 が始 まり まし た。 いつ もと 同じ よう に顔 を洗 って 歯を 磨い て、
「私
」は
「私
」で ある 事を 確 認し て、 リビ ング に行 く。 おは よう
! 役者 9 おは よう
。 役者 9は 立っ たま ま新 聞を 読ん でい る。 役者 5
…あ れ? 役者 9 ん? 役者 5 あ、 うう ん。 役者 5も 仕方 無く 立っ てい る。 役者 4、 食卓 の準 備。 役者 4 おは よう
。 役者 5 おは よう
! 役者 4 どう した の? イイ 事で もあ った
? 役者 5 え? 別に
? 役者 9 お前 まさ か、 彼氏 でも 出来 たん じゃ ない だろ うな
。 役者 5 何言 って んの
。 役者 4 はい
、ご 飯出 来た わよ
。 役者 5 いた だき ー。 役者 4
…。 役者 5 御飯
、納 豆、 焼き 魚、 おし んこ
、味 噌汁
。い つも の朝 食。 でも 毎日 食べ ても 飽き ない
、そ れが 朝ご 飯と いう もの
。 行っ て来 る! 役者 5、 家を 出る
。「 私の 辞書
」が 机に 置き っぱ なし で。 役者 4 あの 子…
、い つか らあ んな 乱暴 な口 の利 き方 にな った のか しら
。 役者 9 やっ ぱり つき あっ てる 男が 悪い んじ ゃな いの か。 役者 4 どん な子 と付 き合 って るの かし ら…
、 役者 9 許さ んぞ
、そ んな 男は 絶対 に許 さん
。 役者 4 もお こん な所 に辞 書置 いて
。ち ょっ とー
、ち ょっ と待 ちな さい
。
あ い う え お か き く け こ さ し せ そ た ち つ て と な に ぬ ね の は ひ ふ へ ほ ま み む め も
や ゆ よ
ら り る れ ろ
わ を ん
が ぎ ぐ げ ご ざ じ ず ぜ ぞ だ ぢ づ で ど ば び ぶ べ ぼ ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ
11
役者 5、
「す
」の 穴か ら顔 を出 し、 役者 5 辞書 持っ てな いで しょ ー? 役者 4 え…
? 役者 5 しっ かり しな さい よ。 役者 4 私も 母に そう 言わ れて
、今 は我 が子 にそ う言 って
…、 役者 5 行っ てら っし ゃい
。 役者 5、 顔を 引っ 込め る。 役者 4 私の 歩く 道は
、こ の先 あの 子も 歩く 道。 だけ ど「 私」 は「 私」 であ って
、「 母と して の私
」に はな れた けれ ど、
「私 の母
」に はけ して なれ ない 訳で
、 役者 9 じゃ あ母 さん
、私 も行 って 来る ね。 役者 4
…ね えあ なた
、 役者 9 ん、 どう した
? 役者 4 あの 子は
、私 達に とっ てな んで した
? 役者 9 わが 子だ ろ? 役者 4 女の 子の わが 子の 事を
、な んと 言っ てま した
? 役者 9 女の 子の わが 子? うー ん…
(考 え込 む) 役者 8、 鼻歌 を歌 いな がら 歩い て来 て、 役者 4か ら辞 書を 受け 取る
。 役者 8
「い つも の道
」を 今日 は鼻 歌混 じり で歩 いて 行け る。 とて も気 持ち がイ イ。 まさ か「 あの 男」 がこ こま で私 に精 神 的苦 痛を 及ぼ して いた とは 思わ なか った
。
「私
」達
、童 謡「 さん ぽ」 の歌 詞を 口ず さむ が、 ある とこ ろか らど うし ても 出て 来な い。 役者 8 この 後の 歌詞 がち っと も出 てこ ない
。な んだ った けな あ、 と考 えて いた ら、 役者 1、 やっ てき て、 役者 1 おは よう
。 役者 8
!…
…お
、お はよ う…
。 役者 1 今日 はと ても 気分 が良 さそ うだ ね。 何か イイ 事で もあ った
?僕 は最 近あ まり いい こと が無 くて ね、 例え ばほ ら、 今 みん なは
「靴
」を 履い てい るよ ね。 だけ どそ れは 演劇 のウ ソで 本当 は裸 足だ
。裸 足だ けど
「靴 を履 いて いる
」と いう 演 技を して いる 訳だ よね
。し かし 靴を 履い てい る演 技っ てな んだ と思 う? そん な演 技が 出来 る役 者が この 世に 居る のか わ から ない し、 そん な演 技が 出来 たと ころ であ まり 自慢 にな らな いと 思う から 僕は 特に
「靴 を履 いて いる
」と いう 事を 意 識し ては いな い。 役者 8
…。 役者 1 しか しだ
、み んな はそ の「 靴を 履い てい る態
」か もし れな いけ ど、 僕の 場合 は本 当に 裸足 なん だ。 靴を 履い てい な い。 それ がな ぜか とい う説 明を した かっ たん だが 君の 顔を 見て いた らそ んな 事は もう どう でも よく なっ てし まっ た。 ど うも あり がと う。 役者 1、 去る
。
12
役者 8
…な んだ った んだ 今の 話は
。そ れに なん だ…
、な んで まだ 居る の…
? 役者 2、 やっ てく る。 役者 2 おー い。 役者 8 あ、 おは よう
。 役者 2 なあ なあ
、ウ ガク の勉 強や った
? 役者 8
…ウ ガク
? 役者 2 もう うち ウガ ク諦 めた
。も うえ え。 役者 8 とか 言う 奴に 限っ て… 役者 2 うわ ー、 ウガ クの 試験 満点 やっ た。 全然 勉強 して へん のに い。 役者 8 もう ここ まで 来る とほ って おく しか ない
。そ れよ りも ウガ クっ てな んだ
…? 学校 のチ ャイ ム。 役者 8、 辞書 を役 者6 に。 役者 6 ねえ カナ コ、 次の 試験 って さ…
? 役者 2 なに い? あん たも 勉強 して へん のか いな
?必 修や でウ ガク
。 役者 6 ウガ クっ て何
? 役者 2 何言 って んね ん今 更、 ウガ クは
、ウ を学 ぶん やん
。 役者 6
「ウ
」っ て? 役者 2 鳥。 役者 6 あ、 鳥? 役者 2 は? 役者 6 え、 それ が必 修? 役者 2 当た り前 やん か、 商業 高校 は経 営学 や簿 記が 必修
、鵜 匠高 校に はウ ガク が必 修や ん。 役者 6 鵜匠
?鵜 飼の
? 役者 2 おい
、大 丈夫
? 役者 6
「私
」は この 時初 めて
、「 私」 が鵜 匠に なり たい 事を 知っ た。 これ で「 私」 は「 鵜匠 の卵
」と なっ た。 しか しよ り によ って
「鵜 匠」 とは
…。 もっ と他 にな りた いも のは なか った のか
。 役者 9、 やっ てく る。 役者 9 ガラ ガラ
。 役者 2 え? なん で花 田が
…? 役者 9 ん? 役者 2 あ、 起立
、礼
、着 席。 皆、 空気 椅子 状態
。 役者 6も
、違 和感 を感 じつ つ腰 を浮 かし てい る。 役者 9 えー
、今 日は 鵜学 担当 の先 生が 来て おり ませ んの で、 私が 試験 監督 であ る。 さっ そく であ るが
、答 案用 紙を 配り た いと 思う
。
13
役者 9、 指を 舐め なが ら、 答案 を一 枚一 枚配 って 行く
。 うな だれ る生 徒達
。 役者 6 ねえ
? 役者 2 なに
? 役者 6 いつ も、 こん なだ った っけ
? 役者 2 何が
? 役者 6 試験 受け る時 とか
、授 業受 けて る時 とか
。 役者 2 何言 うて んね んさ っき から
。 役者 9 はい
、じ ゃあ 始め
!は い、 終わ り! 答案 回収 して いく ぞ。 役者 9、 指を 舐め なが ら答 案を 一枚 一枚 回収 して いく
。 役者 6 は、 早く
…、 早く して 下さ い。 役者 2 起立
! 役者 9 えー
、明 日は 生物 の柏 原先 生の 試験 であ る。 みん なち ゃん と勉 強し てお くよ うに
。 皆、 安堵 の声 を上 げ立 ちあ がる
。 役者 2 礼。 役者 9、 去る
。 役者 7 ちょ っと みん ない い? 皆、
「今 度は 何?
」み たい に顔 を向 ける
。 役者 7 自分 昨日
、自 分は
「海 賊」 だ、 みた いな 事言 った じゃ んね
。実 はあ れ嘘 だか ら。 今ど き海 賊な んて 居る 訳ね えし
、 海賊 が鵜 匠に なり たい なん てお かし な話 だか んね
。だ って 海賊 って 言っ たら 大海 原で クジ ラと かク ラー ケン とか 相手 に して る人 達な のに
、川 で鵜 操っ てア ユ捕 まえ るっ てな んな んそ れ。 だか らみ んな これ から もよ ろし く。 他
…。 ぞろ ぞろ と帰 って いく 生徒 達。 役者 6、 辞書 を役 者4 に。 役者 4 ユキ オ、 海賊 じゃ なか った の? 役者 7 うん
、昨 日は 嘘つ いて ごめ ん。 役者 4 うう ん、 それ はい いん だけ ど…
。 役者 7 じゃ あ。 役者 7、 去る
。 役者 4
「ユ キオ
」は
、「 海賊
」で はな かっ た。 私の 教室 には
「海 賊」 は居 なか った
。 役者 8、 やっ てき てテ ーブ ルを 拭く 仕草
。
14
役者 8 当た り前 だが ね。 役者 8 そん なん 信じ る方 がど うか しと るて
。 役者 4 でも
、今 日の ユキ オ、 なん か変 だっ た…
、 役者 8 んな もん 変に 決ま っと るが
。「 自分 は海 賊」 なん て言 う奴 変以 外の 何者 でも ない でし ょ。 役者 4 そう じゃ なく て、 その
… 役者 8 一遍 連れ て来 やあ そい つ、 私が 直接 聞い たる
。 役者 4 先輩 が? 役者 8 一緒 に酒 飲み ゃわ かる でし ょそ んな の。 海賊 って のは ね、 酒飲 んで バカ 騒ぎ しと るだ けの 人種 なん だで ね。 その 点 山賊 は違 うよ
、 役者 8、 鎖鎌 を出 す。 役者 4 店長 ー、 また 山賊 が来 まし た。 警察 呼ん で下 さい
。 役者 8 冗談 冗談
(仕 舞う
)。 役者 4 もし かし たら ユキ オは 本当 は海 賊で
、誰 かに 口止 めさ れて るん じゃ ない かし ら。 役者 8 はあ
? 役者 3、 やっ てき て、 役者 3 どう した
? 役者 8 あ、 なん でも あり ませ ーん
。 役者 3 もう こん な時 間だ
、上 がっ てい いよ
。 役者 8 お疲 れ様 でし たー
。 役者 8、 去る
。 役者 4 あ、 先輩
…! 役者 8に 呼び かけ るが
、も う居 ない
。 役者 3 ん? どう した
? 役者 4 あ、 いえ
…、 役者 3 もう 遅い から 気を つけ てな
。 役者 4
…は い。 役者 3、 下が る。 役者 4、 辞書 を役 者5 に渡 して 去る
。 役者 5 今日 は先 輩と 一緒 に帰 ろう と思 った のに
…。
「私
」は
、「 いつ もの 道」 を避 けて
、「 昨日 の道
」も やめ て、
「初 めて の 道」 で帰 るこ とに した
。「 あの 男」 に朝 のよ うに 話し かけ られ たら たま らな い。 こん な事 なら 挨拶 だけ して くる 男の 方が まだ マシ だ。 役者 1、 出て きて
、
15
役者 1 やあ
、こ んば んは
。 役者 5
!… 役者 1 まさ かこ んな 所で 会う なん て驚 きだ ね。 今か らど こか に行 くの
?家 とは だい ぶ方 向が 違う よう に思 うけ ど、 大丈 夫? 役者 5
…ど
、ど うも
。 役者 1 もう じき 夏の 休日 だ。 夏と 言え ば冷 たく て美 味し い、 早く 食べ ない と溶 けて しま う食 べ物 が昨 日ま であ った よう に 思う んだ けど
、そ れが どう も無 くな って しま った んだ
。僕 はあ れが 大好 物だ った と思 うん だけ ど、 なん だっ たの かも う 思い 出せ ない んだ
。ソ フト クリ ーム はあ るん だけ ど、 あれ じゃ ない
。も っと 固い
、あ れは なん だっ たん だろ う? 僕の 想 像上 の食 べ物 だっ たん だろ うか
? 役者 5
…じ
、じ ゃあ
。 役者 1 気を つけ てね ー。 役者 1、 手を 振っ て去 る。 役者 5
…も おマ ジで ダメ だ。 どー らム カつ く、 なん であ いつ の好 物の 話を 聞か ない かん のだ
。あ ーも うど うし よう
、ど の 道通 って 帰っ たら いい かわ かん ない
…。 役者
5、 役者 2に 辞書 を渡 して 去る
。 役者 2は
、役 者8 と電 話で 話し てい る。 役者 8 その 話聞 いて ると 明ら かに
「つ きま とい 行為 を行 う人
」な んだ けど ね。 役者 2 でも 私、 辞書 から 一文 字消 した んだ よ。 もう 何が 消え たか も覚 えて ない けど
、消 した のは 確か なの
。 役者 8 お父 さん とか に相 談し てみ た? 役者 2 うん
、帰 って 即座 に言 おう と思 った んだ けど
… 役者 9と 4、 紙の 裏に シル エッ トで 現れ て、 役者 9 女の わが 子も そう だけ ど、 男の わが 子の 事は なん て言 うん だい
? 役者 4 でし ょ? 分か らな いの よ…
、 役者 9 でも あの 子が 私達 の子 供で ある 事に は変 わり はな いん だろ
? 役者 4 そう ね、 それ はそ う。 役者 9 あの 子が いず れ母 にな って も、 私達 にと って は「 わが 子」 だよ
。 役者 4 あな た! 見て 見て
、鳩
(影 絵で
)。 役者 9 おー
、鳩 だね え。
**
* 役者 2 二人 して ずっ と影 絵で 遊ん でた から 言い 出し にく くて
、 役者 8 子供 か。 役者 2 ねえ
、ど うし よう
? 役者 8 うー ん、 その 男は いつ もは 挨拶 だけ だっ たの に今 日は やた らと 話か けて 来た んだ よね
? 役者 2 うん
、な んか もう 滅茶 苦茶 どう でも イイ 話を だら だら と喋 るの
、そ れが なん か一 見爽 やか そう で気 持ち 悪い の。 役者 8 その 一文 字を 消し たこ とで
、そ の男 は、
「話 しを 行う 人」
、つ まり
「ト ーカ ー」 にな った のね
。 役者 2
(ち ょっ との 間) あ、 なる ほど
!
16
役者 8 いっ そ、
「と
」も
「か
」も 消し てみ たら
? 役者 2 え、 そん な事 して 大丈 夫? 役者 8 今日 一日 どう だっ た? 一文 字無 くな った 事で 何か 生活 に支 障が あっ た? 役者 2 いや
、特 には
…、 役者 8 じゃ あ大 丈夫 じゃ ない
? 役者 2 あ、 そう いえ ば、 試験 の時
、い つも はも っと 楽だ った よう に感 じた んだ けど
、と ても 辛か った
。い つも はも っと
、 腰を 低く して も、 支え てく れる よう な便 利な 物が あっ たよ うな 気が して るん だけ ど…
、 役者 8 ああ
、「 腰掛 け」 の事
? 役者 2 そう だ「 腰掛 け」 だ。
「腰 掛け
」が 無か った んだ
。 役者 8 イイ
?困 った ら、 別の 視点 で見 てみ なさ い。 役者 2 あり がと う! 役者 8、 去る
。 役者 2 これ で私 は気 兼ね なく
、「 と」 と「 か」 の二 文字 を消 した
。こ れで もう 大丈 夫。 役者 2、 辞書 を閉 じる
。 音楽
。 巨大 な五 十音 表か ら「 と」
「か
」の 文字 が切 り抜 かれ
、ハ ラリ と落 ちる
。 役者
5、 やっ てき て辞 書を 受け 取る
。 目覚 まし 時計 の音
。
【三 日目
】 役者 5 おは よう
!朝
。い つも 同じ 気持 ち良 い朝
。「 私」 は「 私」
。い つも 通り の準 備を して
、リ ビン グに 行く
。お はよ う! 誰も 居な い。 役者 5 おは よう
…。
…あ れ?
…お はよ う。
…誰 も居 ない
。家 には
、私 だけ
…? いつ もは
、私 は単 体で は生 きて はお らな ん だは ず。
「私
」は
、こ の家 に、 共同 で暮 らし てい た人 間が いた はず
。そ れが 誰だ った ろう
、思 い出 せな い。 私に は大 切な
、 それ を、 なん て言 って いた のだ ろう
…。 いつ もは 私、 朝ご 飯を 食べ てい て、 それ は誰 に作 って 貰っ てた んだ ろう
…? 役者 8、
「か
」の 空い た穴 から 顔を 出し
、 役者 8 イイ
?困 った ら、 別の 視点 で見 てみ なさ い。 役者 5
「父
」「 母」
…。 そう
、「 父」
「母
」だ
!
あ い う え お き く け こ さ し せ そ た ち つ て な に ぬ ね の は ひ ふ へ ほ ま み む め も
や ゆ よ
ら り る れ ろ
わ を ん
が ぎ ぐ げ ご ざ じ ず ぜ ぞ だ ぢ づ で ど ば び ぶ べ ぼ ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ
17
役者 9と 4、 出て くる
。 役者 9 おは よう
。 役者 5 あ…
、 役者 4 おは よう
。 役者 5 あー
…、 役者 5、 子供 のよ うに 泣き べそ をか いて いる
。 役者 9 ん? どう した
? 役者 5 父ー
!! 役者 4 さあ
、出 来た わよ
。 役者 5 母ー
!! 役者 4 何泣 いて るの よ、 ご飯 出来 たわ よ。 役者 9 お前
…、 これ は私 の想 像で はあ るが 男性 にも て遊 ばれ たの じゃ ある まい な! 役者 5 違う よお ー、 もお ー、 父の アホ ー! 役者 9 おい おい
、父 に向 けて なん だそ の言 い草 は。 役者 5 馬ア ンド 奈良 に居 る動 物ー
! 役者 9 なん なん だそ れは
。 役者 4 もう あな たっ たら
、無 駄な 詮索 はし ない の。 さあ
、早 く食 べな さい
。 役者 5 ご飯
、味 噌汁
、シ オジ ャケ
、お しん こ、 大豆 の腐 った の。 役者 9 お前 はい つも 大豆 の腐 った のな んて 出し てる の? 役者 4 えー
?! 役者 5 あー
、こ れな んて 言っ てた っけ ー? もー
。 役者 9 腐っ たも のな んて 食べ てる ので そん なに 小さ いの だな
…。 申し 訳な い、 父の 給料 が微 々た るも ので
…。 役者 4 あな た、 それ は違 うわ
。大 豆の 腐っ たの を購 入し てい た私 が悪 いの
。い やそ うじ ゃな いわ
、大 豆の 腐っ たの を売 っ てい る食 料品 店も 悪い わ。 なの であ なた はな んに も悪 くな い。 あな たは 何も
。 役者 9 お前
…。 役者 5 なん だよ この 夫婦 はー
!大 豆の 腐っ たの の話 だけ でこ んな に…
。ま った く絵 に描 いた よう な幸 せ夫 婦だ ちく しょ ー。 行っ て来 るね ー! 役者 5、 役者 8に 辞書 を渡 して 走り 去る
。 役者 8
「今 日の 私」 は、 大切 な事 実を 学ん だ。 失っ て初 めて 気づ く日 常の 光景 って 奴だ
。本 や歌 では 知っ てい たが
、自 分 で経 験し て初 めて 身に 沁み た。 見る もの 聞く もの
、何 気な い今 を大 切に しよ う。 そう 心に 刻み つけ てい たの に、 役者 1、 やっ てき て、 役者 1 おは よう
。 役者 8
…… お、 おは よう
。 役者 1 いや あ、 どう して こん なに も良 く会 うん だろ うね
。不 思議 だ。 今朝 は空 を見 上げ てね
、気 づい たん だ。 いつ もは 電 信柱 があ って
、そ の電 線な どで 休憩 して いた
、あ の、 平和 の象 徴ら しき 動物 が居 なく なっ てる んだ
。平 和の 象徴 らし き 動物 が居 ない この 町は
、は っき り言 って 平和 じゃ ない
。君 はど う思 う? 役者 8
(ペ コリ
)。 役者 1 また 今晩 会え る気 がし ない
?
18
役者 1、 去る
。 役者 8 もう ヤダ
…。 消え て欲 しく ない 人間 やモ ノは 消え るの に、 一番 消え て欲 しい 人間 が消 えな い。 悔し い。 悔し いし
、 この 気持 ちは なん だろ う、 許せ ない
…、 何が
?私 が? 役者 2、 やっ てき て、 役者 2 おは よう
。 役者 8
…あ あ、 おは よう
…( 涙ぐ む)
。 役者 2 どう した の? 役者 8 なん でも ない
…。 役者 2 そう
、う ん、 うれ しい わよ ね。 だっ て今 日で 試験 終わ りだ もの ね。 いよ いよ 夏の 休日 よ。 うれ しい わ。 役者 8 あれ
?な にや ら口 調が
…、 役者 2 え? 役者 8 あ、 うう ん。 役者 2 ねえ
、こ の大 腿部 の辺 り、 筋肉 痛じ ゃあ りま せん
? 役者 8 大腿 部? 役者 2 なぜ でし ょう
、昨 日以 来、 どう もこ の辺 りが
、 役者 8 あ、 それ 多分
、私 のせ いだ
。 役者 2 え、 大腿 部の 筋肉 痛が あな たに どう 繋が るの
? 役者 8 それ は言 えな いけ ど、 でも 今日 は大 丈夫
。今 日は ね、 楽に 腰を
…あ
…、 役者 2 え? 役者 8 うー ん、 腰を
、下 ろし て、 それ を、 支え る為 の物 が、 その
、 役者 2 は? 学校 のチ ャイ ム。 役者 8 あー
…、 皆口 々に
「お はよ う」 など と言 って やっ てく る。 役者 8、 辞書 を役 者6 に。 役者 6 昨日 より 今日 の方 が辛 い、 疲労 が蓄 積さ れて いる ので
。「 私」
、つ まり
「高 校生 の私 達」 には
、一 番辛 いタ イム が始 まる
。 役者 2 あー あ、 最後 生物 って いじ めだ わ。 私生 物だ けは 苦手 なの
。 役者 6 そう いう 奴に 限定 して
…、 あれ
? 役者 2 ん? 役者 6 ねえ
?… 名前
、 役者 2 ん? 役者 6
…名 前が
、 役者 2 名前
? 役者 6 ごめ ん、 名前 が出 てこ なく て、 急に
。 役者 2 私の
? 役者 6 うん
。
19
役者 2 私の
…、 名前
? 役者 2、 去ろ うと する
。 役者 6 あー
!ご めん
、い い! いい
!名 前な んて どう でも いい わ。 ごめ ん。 役者 2
(戻 り) なに
? 役者 6 あな たは
、「 学級 委員
」。 うん
。 役者 2 大丈 夫? 役者 6 うん
。う ん。 役者 9、 やっ て来 て、 役者 9 ガラ ガラ
。 役者 2
…え
?な んで
? 役者 9 ん? 役者 2 あ、 起立
、礼
、着 席。 皆、 空気 椅子 状態
。 役者 9 えー
、今 日は 生物 の先 生が 来て おり ませ んの で、 私が 試験 を、 仕切 る役 割で ある
。さ っそ くで ある が、 答え を記 し 入れ る為 の用 紙を 配り たい
。 役者 9、 指を 舐め なが ら、 答え を記 し入 れる 為の 用紙 を一 枚一 枚配 って 行く
。 うな だれ る学 生達
。 役者 6 ごめ んね
、み んな
、ご めん
…。 役者 2 何が
? 役者 6 別の 名称 が脳 裏に 浮遊 しな くて 私…
、 役者 2 何の 話? 役者 9 はい
、じ ゃあ 始め
!は い、 終わ り! 集め て行 くぞ ー。 役者 9、 指を 舐め なが ら、 答え を記 し入 れる 為の 用紙 を一 枚一 枚集 めて いく
。 役者 6 は、 早く
…、 早く
…。 役者 2 起立
! 役者 9 えー
、明 日は 終業 式で ある
。通 知表 を持 って くる ので 楽し みに して 下さ い。 皆、 安堵 の声 を上 げ立 ちあ がる
。 役者 2 礼。 役者 9、 下が る。 皆、 役者 7を 見る
。 役者 7
…ん
?
20
皆、
「あ
、う うん
…」 とい う素 振り で去 る。 役者 6、 役者 4に 辞書 を渡 して 去る
。 役者 4 ユキ オ…
、 役者 7 ん? 役者 4 昨日 の話 だけ ど…
、 役者 7 なん だっ け? 役者 4 ユキ オ、 実は 海の 賊じ ゃな いっ て話
…。 役者 7 ああ
…。 役者 4 ユキ オ、 悩み の種 があ った ら、 言っ てね
。私 で良 けれ ば、 話、 聞く よ。 役者 7
(う つむ く)
。 役者 4 私で よけ れば
。 役者 7
…あ んね
、… オヤ ジが
、昨 日、 海に 出た まま
、戻 って 来な いっ て、 決定 した のね
。 役者 4
…え
? 役者 7 つま りね
、オ ヤジ
、死 んだ の。 役者 4
…う ん。 役者 7 そう いう 訳な んで
、自 分は もう 海の 賊じ ゃな いん で、 てな 訳で
、も う自 分は 海に は出 ない んで
、… うん
。 役者 4
…ユ キオ
。 役者 7 自分 の夢 は、 海の 賊の 王に なる
、っ ても のだ った じゃ んね
。で も、 それ も海 のも ずく に消 えた んで
、う ん。 役者 4 も、 も屑
。 役者 7
…ん
? 役者 4 うう ん…
。 役者 7 ああ
、も 屑。 役者 4 あ、 うん
。 役者 7 もず くは あれ だ、 フク ロウ みた いな 奴だ ね。 役者 4
…フ クロ ウ? 役者 7 じゃ あま た明 日ね
。 役者 7、 笑顔 を残 して 去る が、 すぐ 戻っ て来 て、 役者 7 間違 えた
。 役者 4 え? 役者 7 それ ミミ ズク だ。 役者 4 あ、 ああ
…。 役者 7、 去る
。 役者 4
「ユ キオ
」は やっ ぱり
「海 の賊
」だ った
。け ど、 父親 が亡 くな った 昨日 を節 目に
「遺 族」 にな った
。 役者 8、 やっ てき てテ ーブ ルを 拭く 仕草
。 役者 8 なん で? なん でそ んな 状況 にな って まう
? 役者 4 実は
…、 私の 責任 であ りま して
、 役者 8 ん?
21
役者 4 私が 昨日
…、 いや
、ま あ言 って も信 じて 貰え ない 恐れ を多 分に 含ん でる んで
、ほ って おい て下 さい
。 役者 8 うん
、ま あ無 理し て言 わん でも いい けど さ、 でも 貯め 込む くら いな ら話 聞く よ。 役者 4 先輩
…。 役者 8 閉店 後に でも 飲も まい
。そ の子 も誘 って
。 役者 8、 鎖鎌 を取 り出 す。 役者 4 店長 ー、 山賊 また 来ま した ー。 警察 呼ん で下 さい
。 役者 8 冗談 冗談
(仕 舞う
)。 役者 3、 やっ てき て、 役者 3 どう した
? 役者 8 あ、 なん でも あり ませ ーん
。 役者 3 お前 らな に? 店長 の私 にな にや ら秘 密が ある の? 役者 8 え、 なん で? 役者 3 だっ てい つも 呼ば れる だけ で、 なん にも 教え てく れな いじ ゃん
。 役者 8 ああ
。 役者 3 それ にお 前さ
、敬 語で 話し てよ
。店 長な んだ よ。 役者 8 あ、 はー い。 オッ ツー
。 役者 8、 去る
。 役者 3 お前 は、 あん な風 にな らな いで よ。 御苦 労さ ま。 役者 4 あ、 はい
。あ
、先 輩…
! 役者 8に 呼び かけ るが
、も う居 ない
。 役者 4 あー
、し まっ た…
。 役者 3 ん? どう した
? 役者 4 あ、 いえ
…、 役者 3 気を つけ てな
。 役者 4
…あ
、じ ゃあ
…、 役者 3 ん? 役者 4 送っ て、 貰い たい の…
。 役者 3
…な に? 役者 4 あ! じょ
、冗 談で あり まし た! さよ うな ら! 役者 3
…。 役者 3、 下が る。 役者 4、 走り 去り なが ら役 者5 に辞 書を 渡す
。 役者 5 しま った
…、 変な 空気 にな って しま った
。ほ らみ ろ、 敬語 が使 用出 来な いの はい ろい ろ不 便じ ゃな いの よ。 店長 に 変な 思い 込み され たら どう しよ う…
。あ ー、 明日 行く のヤ ダな あ…
。あ
、ま ずい
、勢 いで 歩い て来 たら
、「 いつ もの 道」 に来 てし まっ た。
22
役者 1、 出て きて
、 役者 1 やあ
、や っぱ り会 えた ね。 毎日 遅く まで 大変 だ。 送り まし ょう
、家 まで
。 役者 5 そ、 そん な結 構! 結構 結構 コケ コッ コー
! 役者 1 それ はな んだ っけ
…、 なん の鳴 きマ ネ? なん だっ け? 役者 5 し、 失礼
…!
! 役者 5、 走り 出す
。 役者 1 また 明日 ー。 役者 1、 手を 振っ て去 る。 役者 5 ちっ くし ょー
!全 然上 手く 話せ ん。 言い たい よう に言 えん
。な んで 言い たく もな いダ ジャ レ言 わに ゃな らん のだ
。 もう ヤダ もお ー! 役者 5、 役者 2に 辞書 を渡 して 去る
。 役者 2は
、役 者4 と電 話で 話し てい る。 役者 4 えー
、じ ゃあ なん なん だそ いつ
? 役者 2 名前 聞い てみ るの は? で、 その 名前 を狙 い撃 ちし て消 去。 役者 4 えー
、そ んな 聞く 勇気 ある の? 役者 1、 紙の 裏に シル エッ トで 現れ て、 役者 1 こん ばん は。 役者 2、 モジ モジ しな がら
、 役者 2 あの お…
? 役者 1 わ、 驚い た! 君が 僕に 話し を投 げて くる なん て。 天変 地異 の前 触れ だね
。 役者 2 名前 を…
、 役者 1 え? 役者 2 あな たの
、名 前を
、教 えて 下さ い。 役者 1 しょ うが ない
、そ こま で僕 が気 にな るな らい いよ
、僕 の… 名前 は…
、 役者 2 ちょ おマ ジで キモ イ!
!!
!
**
* 役者 4 ほら そう なる でし ょ? 役者 2 無理 無理 無理
!絶 対無 理だ わ…
。 役者 4 そう いう のは 余計 調子 に乗 っち ゃっ て、 やや こし くな るだ け。 役者 2 うー ん、 じゃ あど うし たら いい
? 役者 4 それ 明白 にあ んた の行 動を 把握 して
、待 ち伏 せし てる んだ よ。 だっ たら
、「 まち ぶせ
」だ よ。
23
役者 2 え? 役者 4
「ま
」「 ち」
「ぶ
」「 せ」
。 役者 2 えー 大丈 夫? 四つ も一 気に 無く なっ て…
。 役者 4 イヤ なん でし ょ? だっ たら 思い 切ら なき ゃ。 だい たい 文字 なん てね
、実 はこ んな に要 らな いも のな のよ
。 役者 2 え? 役者 4 だっ て今 日な に困 った
? 役者 2 うー ん…
、あ
、そ うだ
、昨 日言 って た、 腰を 低く して も支 えて くれ る便 利な 物、 あれ がど うし ても 思い 出せ ない
。 あれ
、な んて 言っ てた っけ
? 役者 4 ああ
、「 チェ アー
」? 役者 2 そう だ「 チェ アー
」だ
!ど うし て「 チェ アー
」が 出て こな いん だ私 は…
! 役者 4 なん の為 に義 務教 育で 英語 習っ てる のよ
?今 役立 てな くち ゃ、 税金 の無 駄。 役者 2 日本 語私 辞典 って 言っ てる のに 英語
…。 まあ でも しょ うが ない
、う ん、 初め て英 語が 役に 立ち そう
! 役者 4 まだ まだ 文字 はあ るん だ、 大丈 夫。 私だ った らね
、さ らに
「ご きぶ り」
「け むし
」も 削る ね。 役者 2 ゴキ ブリ
、毛 虫? 役者 4 お願 いね
、ご きぶ りア ンド 毛虫
。こ うい うの は思 い切 りよ
。 役者 2 う、 うん
、承 知し た…
。よ し、 やっ てや る! 役者 4、 去る
。 役者 2 私は 思い 切っ て、
「ま
」「 ち」
「ぶ
」「 せ」
「ご
」「 き」
「り
」「 け」
「む
」「 し」 の十 文字 を消 した
。こ れで 明日 もあ いつ に会 った ら…
、一 体奴 は何 者な のだ
。… ほら ね、 台詞 がだ んだ ん時 代劇 臭く なっ てい くで しょ
? 役者
2、 辞書 を閉 じる
。 音楽
。 巨大 な五 十音 表か ら「 ま」
「ち
」「 ぶ」
「せ
」「 ご」
「き
」「 り」
「け
」「 む」
「し
」 の文 字が 切り 抜か れハ ラリ と落 ちる
。 私の 辞書 から は今
、「 す」
「と
」「 か」
「ま
」「 ち」
「ぶ
」「 せ」
「ご
」「 き」
「り
」「 け」
「む
」「 し」 の十 三文 字が 無い
。 役者 5、 やっ てき て辞 書を 受け 取る
。 目覚 まし 時計 の音
。
【四 日目
】 役者 5 おは よう
!朝
、「 ミー
」は 目を 開い て、
「ミ ー」 は「 ミー
」で ある
、そ う思 う! 我が 家の
「ミ ーの 部屋
」を 出て
、皆 が集 う部 屋に 下る
。お はよ う! 母、 おは よう
! 役者 4、 やっ てく る。 少し 元気 がな い。 役者 4 おは よう
…。 あ い う え お
く こ
さ そ
た つ て な に ぬ ね の は ひ ふ へ ほ み め も
や ゆ よ
ら る れ ろ
わ を ん
が ぎ ぐ げ ざ じ ず ぜ ぞ だ ぢ づ で ど ば び べ ぼ ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ