CT コロノグラフィ: CO 2 自動注入器を 使用した大腸拡張法の検討(続編)
〜撮影手技を中心に〜
*1、2、4医療法人岐陽会サンライズクリニック、*3東海記念病院放射線部
國枝栄二*1、 舟渡誠司*2、 服部真澄*3、 美濃輪博英*4
医療法人岐陽会サンライズクリニック外観
医療法人岐陽会
サンライズ クリニック
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2013年7月号(Vol.11 No.8)別刷り
特集1
Frontiers in CT Colonography 最新のCTCテクノロジー
Clinical Report
Vol.11 No.8
(2013) 3(41)はじめに
当院は平成23年、CTコロノグラフィ
(CTC)専門施設となるCT検査棟を建設、
同年9月より大腸がんCT検診を開始し ている。国立がん研究センターで開発を 進めてきたメディックサイト社製CO2自 動注入器(MedicCO2LONTM:薬事未承認)
を使用した大腸拡張法について検討し、
2012年、Rad Fan 7月号「CTコロノグラ フィ2012」で報告したが、今回更なる使 用方法の検討を行い、改良を加えたので 報告する。またMedicCO2LONTMの後継 機である日本メドラッド社が販売するCO2
自動注入器(RadiCO2lonTM:日本仕様、薬 事承認済み)についてもテストを行い臨 床上の有用性について検討した1〜6)。
使用機器
CO2自動注入器:MedicCO2LONTM(メデ ィックサイト社製)薬事未承認
CO2自動注入器:RadiCO2lonTM(日本メド ラッド販売)薬事承認済み
CO2注入チューブ(日本メドラッド販売): 薬事承認済み
圧力表示ソフトウェア:CO2注入レート 解析に使用(メディックサイト社製、
MedicCO2LONTM用)
画像解析:ziostation2
CO2自動注入器
図1はMedicCO2LONTMのメイン画面 である。画面左より「Target」は目標とす る注入圧設定画面、「Actual」は実際の CO2注入時の圧力変化表示画面、画面中 央にFLOW RATE(流量)設定画面があ り、当院では1.0(L/min)を固定とする。
また画面右下に実際のCO2注入量表示
「Volume.L」がある。
図2はRadiCO2lonTMのメイン画面。画 2012年、Rad Fan 7月号「CTコロノグラフィ2012」に投稿したCO2自動注入器を使用した大腸拡張法にさ らなる改良を加え、その有用性と当機の最適な使用方法について検討した。また日本メドラッド社から販売される
RadiCO2lonTM(薬事承認済み)の使用経験について報告する。
図1 CO2自動注入器 MedicCO2LONTM(メディックサイト社)メイン画面 図2 CO2自動注入器 RadiCO2lon™(日本メドラッド販売)メイン画面
CTコロノグラフィ:CO 2 自動注入器を 使用した大腸拡張法の検討(続編)
〜撮影手技を中心に〜
*1、2、4医療法人岐陽会サンライズクリニック、*3東海記念病院放射線部
國枝栄二*1、 舟渡誠司*2、 服部真澄*3、 美濃輪博英*4
特集1
Frontiers in CT Colonography
最新のCTCテクノロジーClinical Report
面左下は注入圧設定画面で5〜30mmHg の範囲で圧力値の設定可能。画面左上は 実測値の注入圧表示画面、画面中央に最 大注入速度(流量)設定画面、画面右に実 際のCO2注入量(L)表示画面がある。
MedicCO2LONTMは国立がん研究セン ターで日本人の体形に適したCO2送気と なるように改良が加えられ、その後継機 種のRadiCO2lonTMは、さらに本体の軽量 化に加え表示画面の日本語化、簡略化及 び操作性の向上が行われている。
MedicCO2LONTMの 使用方法
1. CO
2注入圧の設定
目標設定圧は20mmHgを基準とし、被 検者のBMI数値により上下調整すること が肝要と考える。筆者の経験よりBMI=20 以下を20mmHg、BMI=20〜24を25mmHg、
BMI=25以上を30mmHgとすることを推 奨する。BMIが高い被検者に20mmHgで CO2注入を行う場合、注入レート「Actual」
は大抵15mmHg前後の高い数値を示しな がら変動を繰り返し、容易に目標設定圧 に達しやすく、拡張不良を起こし易い。
またCO2注入時、注入レートが目標設定 圧に達する場合は送気が止まってしまう ため、随時目標設定圧を上げて調節を行 う必要がある。この場合は5mmHgずつ 設定圧を上げて圧力表示「Actual」が設定 圧を超えないようにする。また、腸管屈 曲部などで一時的に圧力表示「Actual」が 上昇する場合は深呼吸を繰り返すと腸管 が開放され圧力表示「Actual」は下がる。
さらにBMI=30〜40程度の極度肥満の被 検者ではCTC検査時、容易に注入レート
「Actual」が25mmHgを超えることがある が、目標設定圧が30mmHgまで設定可能 な当機では、このような場合も持続的な CO2注入が行え、良好な拡張を得やすい 利点がある。
2. CO
2注入レート
解析〜最適撮影タイミング
当院では鈴木1)らの方法によりCO2注入 開始からCT撮影終了まで持続的なCO2
注入を行い、検査施行途中での腸管のCO2
吸収分を補い、十分な腸管拡張を維持で きるようにしている。各社CT装置の撮影 手順(Delay Time)により撮影タイミング に若干ずれを生ずるが、MedicCO2LONTM では容易にCTC検査開始から終了まで 持続的なCO2注入が可能である。これに より良好な大腸拡張を得やすい利点があ る。図3、4は当院で圧力表示ソフトウェ アを使用し、仰臥位→腹臥位の順に撮影 しCO2注入レートを記録しながらCTC検 査を施行した1例である(詳細な解析は 2012年のRad Fan7月号に記載した「CO2
注入レート解析」を参照願いたい7))。仰 臥位→腹臥位の順に撮影、または腹臥位
→仰臥位の順に撮影のどちらの場合でも、
まず最初の片体位の撮影はCO2注入量 2.0L前後、次の体位ではCO2注入量3.0L 超える程度を基準にCT撮影を行うと、
CO2の小腸流出を限りなく抑えた形(被検 者の腹部膨満感を軽減した撮影)での撮 影が可能であると考える。そして、4Lを 超える大量のCO2注入は小腸へのガス流 出が多くなり被検者の苦痛感を増すこと 図3 CO2持続注入法によるCTC撮影
圧力(Actual)はCO2注入0.5Lでピーク(S-D junction通過時)となり、続いて注入1.5Lを越えたところで プラトー〔Plateau〕(回盲部まで拡張された状態)となる。
図4 CO2持続注入法によるCTC撮影
CO2注入時の時間(s)当たりの流入量(L)変化がわかる。CO2注入開始から400s(6分半)程度で検査を 終了している。
CO
2注入量(L)
CO
2注入時間(s)
圧力(mmHg)CO2注入量(L)
Vol.11 No.8
(2013) 5(43)になる。図5はMedicCO2LONTMを使用 し持続注入でCTC検査を施行した1例の 流量変化グラフである。MedicCO2LONTM は流量0.5L/minの穏やかな送気をメイン とし、当院設定の流量1L/minを最大と して実際の注入圧「Actual」の変動に合わ せ流量変化を繰り返す。この穏やかな送 気が持続的なCO2注入(持続注入法)を可 能にしていると考えられる。
手技上の注意点
(小腸へのCO2流出抑制法)
図6a(足方から見た回盲部:仰臥位時)
に示すようにバウヒン弁は上方をを向い て開口している。CO2注入時仰臥位で十 分な腸管拡張を得ようとする場合、ガス は上方に移動(上方に溜まりやすい)する ためCO2は小腸に流出し易くなる。小腸 へのガス流出が多くなれば被検者の腹部 膨満感は増すことになる。図6b(足方か ら見た回盲部:腹臥位時)の場合、バウ ヒン弁は下向きとなり(上方にガスは溜 まるため)小腸へのガス流出を抑えるこ とができる。
当院の経験では、CO2持続注入法によ り仰臥位で回盲部まで十分に炭酸ガスを 注入し良好な拡張を得ようとすると、先
に述べたように小腸への炭酸ガス流出が 増し、被検者は腹部膨満感を感じやすい ことがわかっている。しかし、腹臥位に 体位変換することで小腸への炭酸ガス流 出を防ぎ腹部膨満感を軽減できる。
また、当院の経験により一度腹臥位と して小腸へのガス流出を軽減してから仰 臥位とし撮影した場合の方が、同じ炭酸 ガス注入量でも被検者は腹部膨満感を感 じにくいことがわかっている。
当院では持続注入法によるCTC検査 開始当初、容易に良好な拡張を得やすい 仰臥位→腹臥位の順に撮影を行っていた が、仰臥位時に被検者が腹部膨満感によ る苦痛を訴えるケースが多くみられ、小 腸へのガス流出を抑え被検者の苦痛感を 軽減するため、国立がんセンターの手技 による腹臥位→仰臥位の順の撮影が理想 的と考え、現在は腹臥位→仰臥位の順に 撮影を行っている。
実際の撮影法
当院のCTC撮影手順を表1に示す。
CTC検査施行はCO2持続注入法(検査 開始から終了までCO2の送気をストップ しない方法)を基本とする。当院の経験 により、最初の腹臥位への体位変換のタ イミングは被検者のBMIを基準とし可変 する(表2)。図7はBMI=23の被検者、
目標設定圧25mmHgとしCTC撮影を行 い注入レートを解析した図になる。CO2
注入量1.5Lで腹臥位とし、注入量2.0L前 後で腹臥位撮影、その後仰臥位とし目標 設定圧を20mmHg、流量を0.5L/minに下 げ仰臥位撮影を行いCO2注入量2.7L程度 で検査を完了している。図8は今回の1 例の仮想大腸像(VR画像:図8a、b)であ り良好な拡張が得られている(通常、
MedicCO2LONTMでは仰臥位時に目標設 定圧と流量を下げても十分に良好な大腸 拡張が得られ、余分なCO2送気量を軽減 できる)。
また、腹臥位撮影時のスキャノグラム 像でS状結腸から下行結腸(S-D junction)、
上行結腸から回盲部、或いは大腸全体の 拡張不良が見られる場合がある。この場 合は速やかに被検者を仰臥位として仰臥 図5 CO2持続注入法によるCTC撮影
CO2注入時のMedicCO2LONTMの流量(L/min)変化を示すグラフ。CO2注入量2Lを越える腹臥位時に は拡張を維持する(腸管吸収分を補う)程度の流量変化「0.2(L/min)」になる。
図6 足方から見た仰臥位、腹臥位時のバウヒン弁の位置関係を示す 流量(1分間当たりのCO2注入量)
Flow Rate(LPM)
CO2注入量(L)
流量(L/min)
a b
CTコロノグラフィ:CO2自動注入器を使用した大腸拡張法の検討(続編)〜撮影手技を中心に〜
特集1
Frontiers in CT Colonography
最新のCTCテクノロジーClinical Report
位→腹臥位の順の撮影に変更する。腹臥 位で十分な拡張が得られない場合は仰臥 位に体位変換することでCO2送気が追加 され、大腸は十分な拡張となりやすい。
このタイミングで仰臥位撮影を行い、十 分な拡張を維持した状態で次に腹臥位撮 影を行うのが肝要である。先に述べたよ うに、一度腹臥位としてから仰臥位に体 位変換することで被検者は腹部膨満感を 感じにくいため、当院では必ず腹臥位→
仰臥位の順に撮影を試みる。
また、S状結腸から下行結腸(S-D junction)
の拡張不良の場合は、左側が上になるよ うに回転し仰臥位となり、上行結腸から 回盲部の拡張不良の場合は、右側が上に なるように回転し仰臥位となるとその後 の仰臥位時、大腸全体の均一な拡張が得 やすい。以上のように、当院では腹臥位
→仰臥位撮影を基本手順とし、最初の腹 臥位スキャノグラム撮影で拡張不良が見 られる場合は、速やかに仰臥位→腹臥位 撮影手順に切り替えてCTC検査を施行 し、被検者の腹部膨満感の軽減(被検者 の苦痛の軽減)に努めながら、かつ良好 な大腸拡張が得られるように工夫を行っ ている。
RadiCO2lonTMの使用経験 当院では、国立がん研究センターで研 究がなされ日本人に適したCO2送気速度 に改良が加えられたMedicCO2LONTMの 後継機種のRadiCO2lonTMを使用し、CTC 検査を施行しテストを行っている。40例 を超える当機の使用経験によって得られ た情報により、CTC検査時の最適な使用 方法について検討したので報告する。
使用方法は基本的にMedicCO2LONTM と同じである。図9a、bにRadiCO2lonTM を使用して持続注入法(腹臥位→仰臥位 の順に撮影)によりCTC検査を行い注入 レートを記録したグラフを示す。被検者 はBMI=20で目標設定注入圧20mmHg とする(図9a)。CO2注入量1.3Lで腹臥位 に体位変換し、1.7L前後でピークを向か え2.1L前後で腹臥位本番撮影、その後仰 臥 位 に 体 位 変 換 し、 目 標 設 定 圧 を 15mmHgに下げて3.3L前後で仰臥位本番 図8 図7の1症例の仮想大腸像(VR画像)を示す
表2 腹臥位への体位変換のタイミング
表1 当院、現在のCO2持続注入によるCTC撮影法
図7 CO2持続注入法によるCTC撮影
腹臥位→仰臥位の順にCTC検査を施行、CO2注入レートを示すグラフ。
① 被検者を左側臥位としCO2注入を開始する。
② CO2送気量が0.6Lに達したところで仰臥位とする。
③ 送気量が1.0Lに達したころに被検者にそろそろお腹が張ってくることを告げる。
④ 送気量1.1L〜1.8Lに達したところで被検者を腹臥位とし、
⑤ 送気量が1.6L〜2.2Lに達したところで腹臥位撮影を開始する。
⑥ 次に被検者を仰臥位とし目標設定圧を5mmHg下げる。また流量を0.5L/minと し送気量2.2L以上で仰臥位撮影をを開始する
(余分なガス注入による被検者の腹部膨満感を軽減するため、目標設定圧、流量 を下げCO2総注入量をコントロールする)。
⑦ 撮影が終了したら速やかにCO2注入器よりチューブを抜去する。
BMI 20以下 CO2注入量 1.1L 21〜24 1.2〜1.5L 25以上 1.6〜1.8L
*被検者のBMIにより腹臥位への体位変換のタイミングを変える。
a b
CO2注入量(L)
圧力(mmHg)
Vol.11 No.8
(2013) 7(45)撮影し検査を完了している。図9a、bの グラフから分かるようにMedicCO2LONTM とほぼ同じ注入レートを示し、持続的な CO2注入を可能としている。ここに示し
た1例のように、当院でのテストにより RadiCO2lonTMはMedicCO2LONTMとほぼ同 様な使用方法により良好な腸管拡張を得 ることが可能であることが分かった(図10)。
異なる点は事前に設定されている最低流 量 が1.0L/minでMedicCO2LONTM使 用 時 のように二体位目に流量を0.5L/minに落 とすことができないためCTC検査時の CO2総注入量がMedicCO2LONTMに比べ 0.5L程度増すことである。しかし、当院の RadiCO2lonTMの使用で検査後に腹部膨満感 を訴える被検者は少なく、CO2総注入量は 増す傾向にあるが問題なく使用できること が分かった。当院の経験により、RadiCO2lonTM ではCO2総注入量の目安を4.5L未満とす れば被検者の腹部膨満感による苦痛もな く、良好な拡張を得てCTC検査が可能で あると考えられる。また、RadiCO2lonTM もMedicCO2LONTM同様に目標設定注入 圧を30mmHgまで設定が行えるので、
BMI25以上の被検者に対しても良好な大 腸の拡張を行えることが確認できた。
まとめ
2012年のRad Fan7月号「CTコロノグ ラフィ2012」に投稿したMedicCO2LONTM 使用による大腸拡張法に、さらなる改良 と検討を加え報告した。日本メドラッド 社から販売されるMedicCO2LONTMの後 継機器RadiCO2lonTM(薬事承認済み)の使 用方法についても当院独自の検討を行い、
その有用性について報告したが、CO2自 動注入器を使用した大腸拡張はCTC検 査精度を左右し、良好な腸管拡張を得る ことは必修である。CTC検査を実施する 各施設において本稿が一助となれば幸い である。
<文献>
1) 鈴木雅裕ほか: CTCの前処置法、撮影法. 胃と腸 47(1): 25-32, 2012
2) 満崎克彦ほか: 腸管三次元CT診断の実際. 胃と腸 47(1): 55-64, 2012
3) 鈴木雅裕ほか: 腸管拡張法. INNERVISION 25
(3): 23-26, 2010
4) 鈴木雅裕ほか: 大腸がん検診におけるCTコロノグラ フィ; 今後の展開. アールティ 52: 6-11, 2011 5) 山﨑通尋: 二次スクリーニングでのCTコロノグラフィ
(注腸との比較). アールティ 52, 12-16, 2011 6) 今井 裕ほか: CT colonographyによる大腸がん検
診の可能性. 総合健診 40(2): 14-20, 2013 7) 國枝栄二ほか: CTコロノグラフィ: CO2自動注入器
を使用した大腸拡張法の検討.Rad Fan 10(8):
20-24, 2012 図10 RadiCO2lon™を使用しCTC検査を施行した症例の仮想大腸像と大腸展開像
a、b 仮想大腸像:VR画像 c、d 大腸展開像:VGP画像
a c
b d a b 図9 RadiCO2lon™を使用して持続注入法(腹臥位→仰臥位の順に撮影)によりCTC 検査を行った症例。
a CO2注入レートを示す。
b CO2注入時の時間(s)当たりの流入量(L)変化。
CO2注入量(L)
CO2注入時間(s)
CO2注入量(L)圧力(mmHg)
CTコロノグラフィ:CO2自動注入器を使用した大腸拡張法の検討(続編)〜撮影手技を中心に〜